説明

変位計

【課題】被測定物が高速回転する場合であっても、その表面に傷等を付けることなく、2次元平面内変位を測定する。
【解決手段】変位計は、被測定物10の表面の第1スポットS1で反射されたビームに含まれる前記2次元平面内を通過するビームを、第1偏光反射ビーム40として受光するとともに、第2スポットS2で反射されたビームに含まれる前記2次元平面内を通過するビームを、第2偏光反射ビーム42として受光し、ビームスプリッタ600を介して、光軸に平行なビームが撮像手段の撮像面に結像するように形成されたテレセントリック光学系に導く。二つの光路には、前記第1、第2偏光ビームを前記2次元平面内と交差する方向に光学的に位置シフトさせるプリズム400,410が設けられ、更に第2の反射光路には、撮像面までの光学倍率を第2の反射光路の光学倍率と等価的に同一に補正する光学倍率補正光学系500が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の2次元平面内における被測定物の2次元変位を光学的に測定する変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、接触式プローブを用いて、被測定物の表面形状の変位を測定する装置が知られている。
【特許文献1】特開2005−172810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来装置では、接触式プローブを変位測定に用いる。このため、微小な表面形状の変位を観測しにくいという問題があり、さらに所定の回転軸を中心に高速回転する回転体を被測定物とし、その表面形状を測定しようとする場合に、被測定物を破損するリスクがあるという問題があった。
【0004】
本発明の一態様の目的は、被測定物の表面形状が微細に変位する場合であっても、その変位を精度よく測定することが可能な変位計を提供することにある。
【0005】
また、本発明の他の一態様の目的は、被測定物が所定の回転軸を中心に回転する回転体である場合、特に高速回転する回転体である場合であっても、その表面に接触傷等を付けることなく正確に変位測定可能な変位計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、
所定の2次元平面内における被測定物の2次元変位を光学的に測定する変位計において、
第1偏向測定ビーム及び第2偏光測定ビームを出射する測定光発生部と、
前記第1偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内に位置する前記被測定物の表面に入射させる第1の入射光路と、
前記第2偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内に位置する前記被測定物の表面の位置であって前記第1偏向測定ビームとは異なる入射位置に、前記第1偏向測定ビームとは異なる方向から入射させる第2の入射光路と、
前記被測定物の表面における前記第1偏向測定ビームの入射された第1スポットで反射されたビームに含まれる前記2次元平面内を通過するビームを、所与の方向から第1偏向反射ビームとして受光する第1の反射光路と、
前記被測定物の表面における前記第2偏向測定ビームの入射された第2スポットで反射されたビームに含まれる前記2次元平面内を通過するビームを、所与の方向から第2偏向反射ビームとして受光する第2の反射光路と、
光軸に平行なビームが撮像手段の撮像面に結像するように形成されたテレセントリック光学系と、
前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームが前記テレセントリック光学系の光軸と平行になるように、第1の反射光路及び第2の反射光路から出力される前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームを前記テレセントリック光学系に導く導光部と、
を含み、
第1の反射光路及び第2の反射光路の少なくとも一方は、
前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームの少なくとも一方を前記2次元平面内と交差する方向に光学的に位置シフトさせる位置シフト光学系と、
前記第1及び第2のスポットから、前記撮像手段の撮像面までの光学倍率を等価的に同一に補正する光学倍率補正光学系と、
を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、被測定物の第1スポット及び第2スポットで反射された所定の2次元平面内を通過するビームを、それぞれ所与の方向から第1偏向反射ビーム、第2偏向反射ビームとして受光し、導光路を介して、前記第1偏向反射ビーム及び第2偏向反射ビームがテレセントリック光学系の光軸と平行となるように、第1の反射光路及び第2の反射光路から出力される前記第1偏向反射ビーム及び第2偏向反射ビームをテレセントリック光学系に導く構成を採用する。
【0008】
これに加えて、第1の反射光路及び第2の反射光路の少なくとも一方に、前記第1及び第2のスポットから、前記撮像手段の撮像面までの光学倍率を等価的に同一に補正する光学倍率補正光学系を設ける構成を採用する。
【0009】
これにより、前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームは、前記テレセントリック光学系を介して前記撮像手段の撮像面上に、所定の2次元平面内における被測定物の2次元変位の各次元の変位量に関連付けた位置に結像することとなる。
【0010】
また、本発明によれば、前記第1偏向反射ビーム及び第2偏向反射ビームの少なくとも一方を、前記2次元平面内と交差する方向、好ましくは直交する方向に光学的に位置シフトさせる位置シフト光学系を設ける構成を採用する。
【0011】
これにより、前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームは、前記撮像手段の撮像面上に、互いに離れた位置に結像することとなり、各ビーム相互の干渉を大幅に低減することができる。
【0012】
以上のように、本発明によれば、撮像手段の撮像面上に、互いに分離した状態で、しかも被測定物の2次元変位の各次元の変位量に関連付けた位置に第1偏向反射ビーム及び第2偏向反射ビームが結像することになり、その結像位置に基づき、前記2次元平面内における被測定物の2次元変位を、各ビーム相互の干渉を受けることなく、正確に測定することが可能となる。
【0013】
加えて、本発明によれば、被測定物の2次元変位を、光学的に非接触で測定するため、仮に被測定物が高速で回転する回転体である場合であっても、その表面変位を精度よくかつ被測定物を損傷させることなく測定することが可能となる。
【0014】
また、本発明によれば前述したように、反射ビームを撮像手段の撮像面に結像するためにテレセントリック光学系を用いる。これにより、被測定物の第1及び第2スポットの位置が変化した場合でも、撮像面上にぼけの少ないより鮮明なスポットとして第1偏向反射ビーム及び第2偏向反射ビームを結像することが可能となり、係る面からも精度の高い測定を実現することが可能となる。
【0015】
更に、本発明によれば、一組のテレセントリック光学系及び撮像手段で、被測定物の第1スポット及び第2スポットから反射される2方向の偏向反射ビームを同時測定することができるため、この面から、変位計の小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0016】
なお、前記位置シフト光学系としては、前記2次元平面内と交差する方向、例えば前記2次元平面がXY平面である場合には、これと交差する方向、好ましくは直交するZ軸方向に反射ビームの少なくとも一方を光学的に位置シフトさせるよう配置されたプリズムなどを用いることが好ましい。
【0017】
また、第1偏向反射ビーム及び第2偏向反射ビームの双方を位置シフトさせる場合には、前記反射ビームのいずれか一方をZ軸方向の+軸方向に位置シフトさせ、他方をZ軸方向の−方向に位置シフトさせることにより、前記2つの反射ビームを、撮像手段の撮像面上にさらに分離した状態で結像させ、両反射ビームの相互の干渉をより低減し、さらに精度のよい測定を実行することが可能となる。
【0018】
また、本発明において、撮像手段として、光スポットの光量の重心位置を求めることができるセンサである光位置センサ(PSD)を用いてもよい。
【0019】
(2)また本発明において、
前記第1の入射光路は、
前記第1偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内を通過するビームとして、前記被測定物の表面に入射させ、
前記第2の入射光路は、
前記第2偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内を通過するビームとして、前記第1偏向測定ビームとは異なる方向から前記被測定物の異なる表面位置に入射するように構成してもよい。
【0020】
これにより、入射光路を形成する各入射光学系と、反射光路を形成する各反射光学系を、ほぼ同一面上に配置する構成を採用することができ、変位計の光学系をより小型でかつ操作性をよいものとすることができる。
【0021】
(3)また本発明において、
前記測定光発生部は、
測定ビームとしてマルチモードレーザビームを出力する光源と、
前記マルチモードレーザビームを平行光とするコリメートレンズと、
前記平行光を円偏光する1/4波長板と、
円偏光された測定ビームに含まれるS偏光成分を透過し前記第1偏向測定ビームとして出力し、P偏光成分を反射し前記第2偏向測定ビームとして出力するビームスプリッタ部と、
を含むようにしてもよい。
【0022】
このように、測定ビームとしてマルチモードレーザビームを用いることにより、被測定物の第1スポット及び第2スポットで反射された第1偏向反射ビーム及び第2偏向反射ビームの相互の干渉をさらに低減し、被測定物の変位の測定誤差をより低減することができる。
【0023】
(4)また本発明において、
前記第1の入射光路及び第2の入射光路は、
前記前記被測定物に対し、前記2次元平面内において互いに直交する方向から、前記第1偏向測定ビーム及び前記第2偏向測定ビームを入射するように光路が形成するように構成してもよい。
【0024】
係る構成を採用することにより、2次元平面内における各座標軸方向に対する被測定物の変位量を、簡単な演算で測定することが可能となる。
【0025】
(5)また本発明において、
前記導光部は、
前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームが前記テレセントリック光学系の光軸と平行になるように、第1の反射光路及び第2の反射光路から出力される前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームを前記テレセントリック光学系に透過または反射するビームスプリッタ部とする構成を採用してもよい。
【0026】
(6)また本発明の変位計は、
前記撮像手段の撮像面上における、前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームの結像位置に基づき、前記被測定物の2次元変位の各次元の変位量を演算する変位量演算手段を含む構成を採用してもよい。
【0027】
(7)また本発明において、
被測定物の2次元変位を光学的に測定する前記2次元平面を、回転軸を中心に回転する被測定物の前記回転軸に直交する方向に設定し、
前記変位量演算手段は、
回転軸を中心に回転する前記被測定物の軸ぶれ量を前記2次元平面内の表面変位量として演算する構成を採用してもよい。
【0028】
本発明によれば、被測定物が所定の回転軸を中心に高速回転する回転体であっても、当該被測定物の軸ぶれ量を、非接触で精度よく高速で測定することが可能となる。
【0029】
特に、回転体である被測定物の表面が円筒形状をしているような場合にあっては、当該回転体の軸ぶれを回転体表面の2次元平面内の二軸方向への変位量として精度よく測定することが可能となり、従って本発明を、例えば高精度の加工を行うための高速回転ドリル等の軸ぶれ検出用に用いることにより、当該ドリルの回転中心からの変位量を瞬時に正確に検出し、この軸ぶれ補正を行い、精度の高い加工を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の好適な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0031】
(1)原理説明
図4には、本発明に係る変位計の基本原理及びその構成が示されている。
【0032】
本実施例の変位計は、所定の2次元平面内における被測定物10の2次元変位を光学的に測定する。ここでは、図4に示すx,y平面が、被測定物10の2次元変位を光学的に測定するための所定の2次元平面を表す。
【0033】
実施例の変位計は、測定光発生部100と、第1の入射光学系120と、第2の入射光学系130と、被測定物の各反射スポットからの反射光をそれぞれテレセントリック光学系300−1、300−2に導くための第1の反射光路200−1及び第2の反射光路200−2と、前述したテレセントリック光学系300−1、300−2と、撮像部330a、330bとを含む。
【0034】
前記第1、第2の入射光学系120、130、第1、第2の反射光路200−1、200−2、テレセントリック光学系300−1、300−2、撮像部330a、330bは、図4に示すxyの2次元平面内に光学的に配置されている。
【0035】
そして、本実施例の変位計は、被測定物10のこのxy2次元平面内におけるx方向及びy方向の2次元変位量を、第1の偏向測定ビーム30及び第2の偏向測定ビーム32が、被測定物10の表面の互いに異なる測定ポイントで反射することによって得られる第1の偏向反射ビーム40、第2の偏向反射ビーム42の、撮像部330a、330bの撮像面上における結像位置に基づき測定する。
【0036】
実施例の測定光発生部100は、第1の偏向測定ビーム30及び第2の偏向測定ビーム32を出射するように構成されている。この測定光発生部100は、マルチモード発振することによりマルチモードレーザビーム20を出力する光源としてのレーザダイオード110と、コリメートレンズ112と、絞り116と、1/4波長板118と、偏向ビームスプリッタ119とを含む。
【0037】
そして、レーザダイオード110から出力されるマルチモードレーザビーム20は、コリメートレンズ112で平行光となり、さらに絞り116を通過することによりビーム径が制限され、さらに1/4波長板を通過することにより円偏向され偏向ビームスプリッタ119へ入射される。
【0038】
偏向ビームスプリッタ119は、この入射光に含まれるS偏向成分を、第1の偏向測定ビーム30として直線的に透過出力し、入射光に含まれるP偏向成分を第2の測定偏向測定ビーム32として反射し、90度進行方向を変化させて出力する。
【0039】
第1の入射光学系120は、第1の偏向測定ビームが通過する第1の入射光路を形成する。具体的には、偏向ビームスプリッタ119を透過出力された第1の偏向測定ビーム30を、ミラー122を用いて90度進行方向を変化させ、被測定物10の側面に入射させる。
【0040】
第2の入射光学系130は、第2の偏向測定ビーム32が通過する第2の入射光路を形成するものである。具体的には、偏向ビームスプリッタ119から出力される第2の偏向測定ビーム32を、ミラー132を用いて90度進行方向を変化させ、被測定物10の側面に、第1の偏向測定ビーム30とは異なる方向から入射させる。
【0041】
より具体的には、被測定物10に対して、第1の偏向測定ビーム30は、xy2次元平面のy軸方向に沿って入射され、第2の偏向測定ビーム32は、被測定物10に対しx軸方向に沿って(第1の偏向測定ビーム30に対し90度と異なる方向から)入射されるように光路が形成されている。
【0042】
加えて、第1の偏向測定ビーム30及び第2の偏向測定ビーム32は、被測定物10の異なる位置を測定ポイントとして入射するように、第1の入射光学系120及び第2の入射光学系130のそれぞれの光路が形成されている。
【0043】
なお、被測定物10に対する第1の偏向測定ビーム30及び第2の偏向測定ビーム32の入射角は90度に設定することが好ましいが、180度の整数倍以外の入射角度であるならば、90度と異なる角度に設定してもよい。
【0044】
被測定物10の側面において、第1の偏向測定ビーム30及び第2の偏向測定ビーム32がそれぞれ入射される測定スポットS1、S2では、ビームがそれぞれ乱反射される。
【0045】
前記各テレセントリック光学系300−1、300−2は、被測定物10の各測定スポットS1、S2で乱反射された反射光に含まれる前記xyの2次元平面内を通過する反射ビームを、所与の方向から受光するように光学配置され、加えて被測定物10が基準位置にある場合に、反射スポットS1、S2から撮像部330a、330bの受光面までの光路長の距離が等価的に等しくなるように配置されている。
【0046】
図4に示す原理図では、テレセントリック光学系300−1、300−2の光軸は、基準位置にある被測定物10の測定スポットS1、S2を指し示すように、図4に示すxy2次元平面内に配置されている。
【0047】
そして、被測定物10の測定スポットS1、S2で乱反射された光成分のうち、x,y2次元平面内を通過しかつ各テレセントリック光学系300−1、300−2の光軸方向に反射される反射ビームは、第1の偏向反射ビーム40、第2の偏向反射ビーム42としてテレセントリック光学系300−1、300−2を介して撮像部330a、330bの受光面上に結像することになる。
【0048】
この撮像部330a、330b上における第1の偏向反射ビーム40、第2の偏向反射ビーム42の結像位置は、被測定物10が図中実線で示す基準位置である場合には、P、Qの基準位置に結像するが、例えば図中破線で示す位置10′まで被測定物10が移動すると、第1の偏向反射ビーム40、第2の偏向反射ビーム42の結像位置は、テレセントリック光学系300−1、300−2により、そのy方向、x方向への変位量に応じた位置P′、Q′に結像することになる。
【0049】
従って、撮像部330a、330bの基準位置P、Qに対する、第1の偏向反射ビーム40、第2の偏向反射ビーム42の結像位置P′、Q′の位置を測定することにより、xy2次元平面内における被測定物10のy方向、x方向への変位量を測定することができる。
【0050】
ここにおいて、前記各テレセントリック光学系300−1、300−2は、それぞれテレセントリックレンズとしての凸レンズ310a、310bと、該レンズの焦点位置に設けられた絞り312a、312bとを有し、光学系の光軸と平行に入射されてくる第1及び第2の偏向反射ビーム40、42を絞り312aを介して、撮像部330a、330b上の撮像面にぼけの少ないビームとして結像させることができる。
【0051】
従って、被測定物10は、図4のxy平面内を、図中実線で示す位置から破線で示す位置Q′まで変位した場合を想定すると、撮像部330aの撮像面上における基準位置Pに対する反射ビームの結像位置P′は、被測定物10のy軸方向への変位に対応し、撮像部330bの受光面上における基準位置Qに対する反射ビーム42の結像位置Q′は、被測定物10のx軸方向への変位量に対応する。
【0052】
よって、例えば回転軸を中心に高速回転する通常の回転体、具体的には工作機械のドリル等を被測定物10と想定した場合に、このドリルの回転軸に対し、図4に示すxy2次元平面が直交となるように図4に示す変位計の光学系を設置し、かつ第1の偏向測定ビーム30及び第2の偏向測定ビーム32がドリルの回転軸と交差する方向に入射するように変位計の光学系を設置する。これにより、高速回転するドリルの回転軸に対する軸ぶれ量を、ドリル側面の表面変位量として非接触で高精度に演算し、高速回転するドリルに軸ぶれがあるか否かを正確に判断し、軸ぶれがある場合にはその軸ぶれ量を補正が正確に行われたかを判断し、当該ドリルを用いた加工の高精度化を実現することが可能となる。
【0053】
ところで、この図4に示す原理図の構成を採用した変位計では、同図に示すように2組のテレセントリック光学系300−1、300−2と、2組の撮像部330a、330bが必要となり、変位計自体が高価でかつ大型のものとなってしまうという問題がある。
【0054】
次に、このような図4に示す原理図の構成を採用した場合の課題を解決し、1組のテレセントリック光学系及び撮像部を用い、図4に示す変位計と同様な精度で被測定物10の変位量測定を行うことができる本実施の形態の変位計の実施例を説明する。
【0055】
(2)実施例
図1には、本発明の好適な実施例が示されている。なお、図4に示す原理図と対応する部材には、同一を付しその説明は省略する。
【0056】
特に、実施例の変位計の測定光発生部100と、第1の入射光学系120と、第2の入射光学系130の構成は、図4に示す構成と同一であるので、その説明は省略する。
【0057】
本実施の形態では、図4に示す原理図の構成と同様に、第1の反射光路200−1上に、前記テレセントリック光学系300−1、撮像部330aと同様な構成をもつ、テレセントリック光学系300及び撮像部330を設けている。
【0058】
そして、被測定物10の測定スポットS1とテレセントリック光学系300までの間に位置する第1の反射光路200−1上に、第1の偏向反射ビーム40をテレセントリック光学系300に向けて直線的に透過する導光部としての偏向ビームスプリッタ600を設置する。
【0059】
さらに、本実施例では、第2の反射光路200−2は、第2スポットS2で反射されたビームに含まれるxy2次元平面内を通過する第2の偏向反射ビーム42を、プリズム410、ミラー210−2を用いてその進行方向を変化させ、前記偏向ビームスプリッタ600に45度の角度で入射するように構成されている。
【0060】
これにより、導光部としての偏向ビームスプリッタ600は、第1の偏向反射ビーム40及び第2の偏向反射ビーム42が、前記テレセントリック光学系300の光軸と平行となるように、第1の反射光路200−1を介して入力される第1の偏向反射ビーム40をそのまま透過し、第2の反射光路200−2を介して入力される第2の偏向反射ビーム42を、進行方向と90度異なる方向に反射する。
【0061】
このとき、第1の反射光路200−1における偏向ビームスプリッタ600までの光路長と、第2の反射光路200−2における偏向ビームスプリッタ600までの光路長が異なるため、双方の光学倍率が等価的に等しくなるよう補正するための手段が設けられている。すなわち基準位置にある被測定物10の測定スポットS1、S2から撮像部330の受光面332までの光学倍率を等価的に同一に補正する光学倍率補正光学系500が、第2の反射光路200−2上に設けられている。
【0062】
ここでは、光学倍率補正光学系500は、凹レンズ510及び凸レンズ512の組み合わせとして構成され、撮像部330の受光面332上に、図1(B)に示すように結像するビームS20のビーム径が、同受光面332上に結像する第1の偏向反射ビーム40のビームS10と同一径となるように、その倍率調整を行う倍率調整機能を有する。
【0063】
これにより、撮像部330の受光面332上には、図4に示す原理図と同様に、P、Qを基準にした、被測定物10のx軸方向、y軸方向の変位量に対応した位置P′、Q′に、第1の偏向反射ビーム40及び第2の偏向反射ビーム42のビームS10、S20が結像することになる。
【0064】
ところで、撮像部330の受光面332上において、第1及び第2の偏向反射ビーム40、42が互いに重なって結像すると、両ビーム光が互いに干渉して、正確な位置検出を行うことができない。
【0065】
このため、本実施例では、第1の反射光路200−1の偏向ビームスプリッタ600の手前側に、図2に示すプリズム400が、位置シフト光学系として設けられている。
【0066】
図2に示すように、このプリズム400は、第1の偏向反射ビーム40を、図1に示すxy2次元平面と直交するz軸の−方向に−z1だけ変位させた平行光線として出力する。
【0067】
加えて、第2の反射光路200−2に設けたプリズム410も、位置シフト光学系として形成している。具体的には、図3に示すように、入射する第2の偏向反射ビーム42を、z軸の+方向に+z1の距離だけシフトしたビームとして反射するプリズムとして形成されている。
【0068】
この結果、偏向ビームスプリッタ600に入射される第1の偏向反射ビーム40と、第2の偏向反射ビーム42は、z軸方向に2z1の距離だけ離れたビームとなる。
【0069】
これにより、偏向ビームスプリッタ600を介してテレセントリック光学系300に対し、その光軸と平行となるように透過または反射された第1の偏向反射ビーム40、第2の偏向反射ビーム42は、撮像部330の受光面332上に図1(B)に示すように結像する。具体的には、前記z軸方向の方向への離間距離2z1に対応した距離だけ離れた移動経路334−1、334−2を各ビームS10、S20が移動するように結像することになり、両ビームS10、S20が受光面332上で互いに交わることが防止される。
【0070】
すなわち、受光面332上に結像する前記第1及び第2の偏向反射ビーム40、42は、図1(B)に示す図中一点鎖線で示す移動経路334−1、334−2上をそれぞれ移動し、これら各移動経路334−1、334−2は前記2z1の距離に対応した距離分だけ離れた移動経路となる。
【0071】
従って、1つの受光面332上において2つの反射ビームを結像した場合でも、結像した反射ビームが違いに干渉することがなく、それぞれ独立したビームの位置として検出することができる。
【0072】
これにより、1組のテレセントリック光学系300及び撮像部330を用いた場合でも、被測定物10のxy2次元平面内におけるx方向及びy方向への表面の変位量を正確に測定することが可能となる。
【0073】
そして、撮像部330の受光面332上に、図1(B)に示すように結像したビームS10、S20の位置に基づき、処理部400が、被測定物の基準位置に対するx方向、y方向への変位量を被測定物10の表面変位量として演算する。
【0074】
従って、被測定物10として、前述したように高速で回転するドリルの回転軸に対する変位を、リアルタイムで精度よくドリル側面の表面変位量として検出することができる。
【0075】
以上のように、本実施例によれば、1組のテレセントリック光学系300及び撮像部330を用いて変位計の光学系を構成することができるため、光学系全体の構成を簡単かつ安価なものとして、かつ小型のものとすることができる。
【0076】
なお、図1に示す実施例では、回転軸を中心回転する被測定物の表面変位量をリアルタイムで測定する場合を例に取り説明したが、図1に示すxy2次元平面を、回転軸方向のうちz軸方向に少しずつシフトし、その際のデータを取得し各位置における被測定物表面変位量を順次測定することにより、回転軸を中心に回転する回転体の3次元形状を把握することも可能となる。
【0077】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で各種の変形実施が可能である。
【0078】
前記実施例においては、撮像部としてPSD、すなわち光のスポットの光量の重心位置を求めることができる光位置センサを用いてもよく、これ以外にも、例えばCCDカメラ及びその他の撮像手段を用いてもよい。
【0079】
また、前記実施例では、位置シフト光学系としてのプリズムを、第1の反射光路200−1及び第2の反射光路200−2の双方に設ける場合を例に取り説明したが、必要に応じていずれか一方の反射光路にのみ設ける構成を採用してもよい。
【0080】
また、本発明は、回転体以外の被測定物の変位測定を行うことも可能である。
【0081】
また、前記実施例では、光源からマルチモードレーザビームを出力する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限らず、他の種類のビームを出力する光源を用いてもよい。例えば、シングルモードレーザビームを出力する光源を用いる場合には、前記測定光発生部は、測定ビームとしてシングルモードレーザビーム(例えば、TEM00モードレーザビーム)を出力するレーザ光源と、前記シングルモードレーザビームを平行光とするコリメートレンズと、前記平行光を円偏光する1/4波長板と、円偏光された測定ビームに含まれるS偏光成分を透過し前記第1偏向測定ビームとして出力し、P偏光成分を反射し前記第2偏向測定ビームとして出力するビームスプリッタ部と、を含むように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は本発明が適用される変位計の一実施例の説明図である。
【図2】本実施例に用いられる位置シフト光学系の一例としてのプリズムの説明図である。
【図3】本実施例に用いられる位置シフト光学系の一例を示すプリズムの説明図である。
【図4】本発明の変位系の原理説明図である。
【符号の説明】
【0083】
10 被測定物
30 第1の偏向測定ビーム
32 第2の偏向測定ビーム
40 第1の偏向反射ビーム
42 第2の偏向反射ビーム
100 測定光発生部
110 レーザダイオード
112 コリメートレンズ
116 絞り
118 1/4波長板
119 偏向ビームスプリッタ
120 第1の入射光学系
130 第2の入射光学系
200−1 第1の反射光路
200−2 第2の反射光路
300 テレセントリック光学系
302 光軸
310 凸レンズ
312 絞り
330 撮像手段としての光位置センサ
332 受光面
334−1、334−2 各ビームスポットS10、S20の移動経路
400、410 位置シフト光学系としてのプリズム
500 光学倍率補正光学系
510 凹レンズ
512 凸レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の2次元平面内における被測定物の2次元変位を光学的に測定する変位計において、
第1偏向測定ビーム及び第2偏光測定ビームを出射する測定光発生部と、
前記第1偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内に位置する前記被測定物の表面に入射させる第1の入射光路と、
前記第2偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内に位置する前記被測定物の表面の位置であって前記第1偏向測定ビームとは異なる入射位置に、前記第1偏向測定ビームとは異なる方向から入射させる第2の入射光路と、
前記被測定物の表面における前記第1偏向測定ビームの入射された第1スポットで反射されたビームに含まれる前記2次元平面内を通過するビームを、所与の方向から第1偏向反射ビームとして受光する第1の反射光路と、
前記被測定物の表面における前記第2偏向測定ビームの入射された第2スポットで反射されたビームに含まれる前記2次元平面内を通過するビームを、所与の方向から第2偏向反射ビームとして受光する第2の反射光路と、
光軸に平行なビームが撮像手段の撮像面に結像するように形成されたテレセントリック光学系と、
前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームが前記テレセントリック光学系の光軸と平行になるように、第1の反射光路及び第2の反射光路から出力される前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームを前記テレセントリック光学系に導く導光部と、
を含み、
第1の反射光路及び第2の反射光路の少なくとも一方は、
前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームの少なくとも一方を前記2次元平面内と交差する方向に光学的に位置シフトさせる位置シフト光学系と、
前記第1及び第2のスポットから、前記撮像手段の撮像面までの光学倍率を等価的に同一に補正する光学倍率補正光学系と、
を含む変位計。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の入射光路は、
前記第1偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内を通過するビームとして、前記被測定物の表面に入射させ、
前記第2の入射光路は、
前記第2偏向測定ビームを、所与の光路を介して前記2次元平面内を通過するビームとして、前記第1偏向測定ビームとは異なる方向から前記被測定物の異なる表面位置に入射させることを特徴とする変位計。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかにおいて、
前記測定光発生部は、
測定ビームとしてマルチモードレーザビームを出力する光源と、
前記マルチモードレーザビームを平行光とするコリメートレンズと、
前記平行光を円偏光する1/4波長板と、
円偏光された測定ビームに含まれるS偏光成分を透過し前記第1偏向測定ビームとして出力し、P偏光成分を反射し前記第2偏向測定ビームとして出力するビームスプリッタ部と、
を含むことを特徴とする変位計。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記第1の入射光路及び第2の入射光路は、
前記前記被測定物に対し、前記2次元平面内において互いに直交する方向から、前記第1偏向測定ビーム及び前記第2偏向測定ビームを入射するように光路が形成されたことを特徴とする変位計。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記導光部は、
前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームが前記テレセントリック光学系の光軸と平行になるように、第1の反射光路及び第2の反射光路から出力される前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームを前記テレセントリック光学系に透過または反射するビームスプリッタ部であることを特徴とする変位計。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記撮像手段の撮像面上における、前記第1偏向反射ビーム及び前記第2偏向反射ビームの結像位置に基づき、前記被測定物の2次元変位の各次元の変位量を演算する変位量演算手段を含むことを特徴とする変位計。
【請求項7】
請求項6において、
被測定物の2次元変位を光学的に測定する前記2次元平面を、回転軸を中心に回転する被測定物の前記回転軸に直交する方向に設定し、
前記変位量演算手段は、
回転軸を中心に回転する前記被測定物の軸ぶれ量を前記2次元平面内の表面変位量として演算することを特徴とする変位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−2248(P2010−2248A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160063(P2008−160063)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】