説明

変位/ひずみ計測装置

【課題】計測対象に対する撮像装置の相対的な位置や姿勢を一定に保つことが容易な、あるいは、計測対象に対する相対的な位置や姿勢を容易に調整できる変位/ひずみ計測装置を提供する。
【解決手段】撮像装置2と画像解析装置から構成されて、撮像装置2で計測対象物を撮像した画像を画像解析装置で解析して、当該計測対象物の変位又はひずみを算出する変位/ひずみ計測装置において、撮像装置2に、1個の固定当接部材13と、2個のマイクロメータ14を取り付けて、固定当接部材13とマイクロメータ14のスピンドル14bの先端を計測対象物に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置と画像解析装置から構成されて、計測対象物を撮像した画像を、前記画像解析装置で解析して、当該計測対象物の変位又はひずみを算出する変位/ひずみ計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先に、本願発明者らは、計測対象の物体を撮像した2枚の画像にデジタル画像相関法を適用して、当該物体のひずみを算出するひずみ計測方法及び装置を発明し、特許出願している(特願2009−204164号、以下「先行出願」という)。
【0003】
先行出願のひずみ計測装置は、計測対象物の表面を撮像する撮像装置と、該撮像装置で撮像された画像を解析して、変位又はひずみを算出する画像解析装置とから構成される。また、撮像装置にはCCDカメラが使用され、画像解析装置には、デジタル画像相関法による解析手法を記述したプログラムをインストールしたコンピュータが使用される。
【0004】
なお、デジタル画像相関法については、特許文献1ないし特許文献4にも開示されている。
【0005】
また、特許文献5には、撮像対象面に対して、所定の高さに位置するように調整する位置決め手段が取り付けられた画像検出装置を備える歪みゲージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−099012号公報
【特許文献2】特開2006−329628号公報
【特許文献3】特開2006−330772号公報
【特許文献4】特開2007−078659号公報
【特許文献5】特開平11−237217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行出願に開示された方法及び装置においては、計測対象を、同じ方向、同じ距離で撮像する必要がある。方向や距離の違いによって生じる画像の変化が、計測対象のひずみとして検出されるからである。また、良好な計測精度を得るためには、撮像手段が常に計測対象に正対するように、つまり、撮像手段の光軸が計測対象の表面に対して垂直になるように位置決めする必要がある。
【0008】
しかしながら、先行出願のひずみ計測装置は、撮像装置の計測対象に対する相対的な位置や姿勢を一定に保つ手段を欠いていたので、計測対象を、同じ方向、同じ距離で撮像することは難しかった。
【0009】
また、特許文献5に開示された歪みゲージも、撮像装置の高さを調整する位置決め手段を備えているが、撮像装置の姿勢を調節する手段を欠いていたので、撮像装置が計測対象に正対するように調節することは難しかった。
【0010】
本発明は、計測対象に対する撮像装置の相対的な位置や姿勢を一定に保つことが容易な、あるいは、計測対象に対する相対的な位置や姿勢を容易に調整できる変位/ひずみ計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の変位/ひずみ計測装置は、撮像装置と画像解析装置から構成されて、前記撮像装置で計測対象物を撮像した画像を前記画像解析装置で解析して、当該計測対象物の変位又はひずみを算出する変位/ひずみ計測装置において、前記撮像装置に取付けられて、前記計測対象物に当接する当接部材を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記当接部材は、1個の固定当接部材と、前記撮像装置の端部に進退自在に取付けられる2個の進退当接部材と、から構成されるようにしても良い。
【0013】
また、前記進退当接部材は、マイクロメータであって、前記マイクロメータのスピンドルの先端が前記計測対象物に当接するようにしても良い。
【0014】
また、前記固定当接部材は、前記計測対象物に取付けられた被嵌合部材と嵌合する嵌合部を有するようにしても良い。
【0015】
また、前記撮像装置の視野内に配置されるとともに、前記撮像装置から見える表面に図形パターンが形成された基準平板と、前記撮像装置に固定されて、前記基準平板を揺動自在に支持する連結部材を備えて、前記連結部材は、前記基準平板を前記撮像装置から前記計測対象物に向かう方向に付勢して前記基準平板を前記計測対象物に押し付ける押圧手段を有するようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計測対象物に当接する当接部材が撮像装置に取付けられているので、計測対象物に対する撮像装置の相対的な位置と姿勢を一定に保つことができる。
【0017】
また、当接部材を1個の固定当接部材と、撮像装置の端部に進退自在に取付けられる2個の進退当接部材で構成すれば、計測対象物に対する撮像装置の相対的な位置と姿勢を調整して、撮像装置が計測対象物に正対させることができる。
【0018】
また、基準平板の裏面を計測対象物に当接させて、基準平板の表面を撮像装置で撮像した画像を解析すれば、計測対象物に対する撮像装置の傾きを知ることができる。
【0019】
以上の効果は、最終的には変位/ひずみ計測の精度向上をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す変位/ひずみ計測装置の概念的な構成図である。
【図2】変位/ひずみ計測装置を構成する撮像装置の構成図である。
【図3】固定当接部材およびマイクロメータの変形例を示す構成図である。
【図4】変位/ひずみ計測装置を構成するコンピュータの概念的な構成図である。
【図5】変位/ひずみ計測プログラムによる処理の概略を示すフローチャートである。
【図6】デジタル画像相関法による変位/ひずみ計測の原理を示す概念図である。
【図7】実験に使用した供試体の外形図である。
【図8】変位/ひずみ計測装置による軸方向ひずみの計測値とひずみゲージによる計測値の関係を示す図である。
【図9】変位/ひずみ計測装置による供試体のポアソン方向ひずみの計測値とひずみゲージによる計測値の関係を示す図である。
【図10】変位/ひずみ算出装置による軸方向ひずみの計測値のばらつきを示す図である。
【図11】従来の撮像装置をよって得られた軸方向ひずみの計測値のばらつきを示す図である。
【図12】撮像装置の変形例を示す構成図であり、(a)は一部を断面図示した側面図であり、(b)は(a)のAA’線で切断した断面図である。
【図13】基準平板と連結部材の構成を示す外形図であり、(a)及び(b)は側面図であり、(c)は基準平板の平面図である。
【図14】基準平板と連結部材の構成を示す斜視図である。
【図15】基準平板の作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示した変位/ひずみ計測装置1は本発明の実施形態の一例であり、撮像装置2とコンピュータ3とから構成されていて、撮像装置2で撮像した計測対象物4の画像をコンピュータ3で解析して、計測対象物4の変位又はひずみを求める装置である。
【0023】
また、撮像装置2は、図2に示すように、カメラ5と遮光筒6とから構成されている。
【0024】
カメラ5は、公知のいわゆるデジタルスチルカメラであり、カメラ本体7とテレセントリックレンズ8から構成される。また、カメラ本体7の内部には、CCD素子、シャッタ装置、記憶装置、入出力インターフェイス等(いずれも図示せず)を備え、CCD素子上に結像する画像を電気信号(=画像信号)に変換し、記憶装置に記憶させ、あるいは入出力インターフェイスを介して、外部装置(例えばコンピュータ3)に画像信号を出力することができる。
【0025】
テレセントリックレンズ8は、レンズの後側焦点に開口絞り(図示しない)を備えて、主光線がレンズ光軸に対して平行になるようにした公知のレンズ系である。このため画角が限り無く0度に近く、ディストーション(歪曲収差)が小さく、計測対象物4の寸法や位置を正確に捉える事ができる。また、テレセントリックレンズ8と計測対象物4の距離の大小に関わらず、一定の大きさの画像が得られる。
【0026】
遮光筒6は、テレセントリックレンズ8と計測対象物4の間にあって、カメラ5に固定されて、テレセントリックレンズ8に入射する外光を遮蔽する円筒である。ここで外光とは、計測対象物4以外からテレセントリックレンズ8に入射する自然光あるいは人工光である。なお、図2では、説明の便宜のために遮光筒6を断面図示している。
【0027】
また、遮光筒6の内部には、LEDランプ9を備えて、これを撮像用の照明光源としている。LEDランプ9の明るさは、照明用電源コントローラ10によって調整される。
【0028】
また、LEDランプ9の前方側(図2において、左側)、つまり計測対象物4側には、拡散板11を備える。拡散板11はLEDランプ9の発光を拡散させて、計測対象物4を均等に照明する一種のフィルタであり、本実施形態では、表面をサンドペーパーで荒らして微細な凹凸を付けた透明なアクリル板を複数枚積層した物を使用している。
【0029】
また、遮光筒6の内部には、赤外線放射温度計12を備える。赤外線放射温度計12は、計測対象物4の表面温度を非接触で計測する公知の温度計測手段であり、図示しない入出力インターフェイスを備えて、計測結果を外部装置(例えばコンピュータ3)に出力することができる。
【0030】
さて、遮光筒6の計測対象物4側の端部には、1個の固定当接部材13と、2個のマイクロメータ14があって、計測対象物4に向かって突出している。
【0031】
固定当接部材13は計測対象物4に当接して、撮像装置2を計測対象物4に対して位置決めする部材である。固定当接部材13の遮光筒6の端部からの突出高さは、固定当接部材13を計測対象物4に当接すると、テレセントリックレンズ8の焦点が合う(カメラ本体7の内部のCCD素子上に像を結ぶ)ように選ばれる。つまり、カメラ5と計測対象物4の間が正規の距離になるような寸法が選ばれる。
【0032】
マイクロメータ14は、遮光筒6に固定される固定部14aと、固定部14aに螺合するスピンドル14bからなる進退当接部材であり、スピンドル14bを回転させるとスピンドル14bは固定部14aに対して進退する。スピンドル14bの進退長さは回転角度に比べて小さいから、スピンドル14bを回転させて、スピンドル14bの固定部14aに対する進退長さを微調整できる。
【0033】
計測対象物4の表面の変形や凹凸が無視できる程度に小さい場合、つまり計測対象物4の表面が十分に平坦な場合は、固定当接部材13と2本のスピンドル14bの遮光筒6端部からの突出高さを等しくして、固定当接部材13と2本のスピンドル14bを計測対象物4に当接させれば、撮像装置2は計測対象物4に正対する。つまりカメラ5(テレセントリックレンズ8)の光軸は計測対象物4の表面に対して垂直になる。
【0034】
計測対象物4の表面が平坦ではない場合は、マイクロメータ14のスピンドル14bを回転させて、スピンドル14bの遮光筒6端部からの突出高さ(スピンドル14bの固定部14aに対する進退長)を調整して、撮像装置2が計測対象物4に正対するように、つまりカメラ5(テレセントリックレンズ8)の光軸が計測対象物4の表面に対して垂直になるように、撮像装置2の姿勢を調整することができる。
【0035】
なお、固定当接部材13およびマイクロメータ14は、図3に示すように構成されてもよい。すなわち、固定当接部材13の先端に嵌合部13aを形成して、嵌合部13aを計測対象物4の表面に固定された被嵌合部材15に嵌合する。また計測対象物4の表面に位置決め部材16を固定して、マイクロメータ14のスピンドル14bの先端側面を位置決め部材16の側面に当接させるようにしてもよい。
【0036】
このように、計測対象物4の表面に被嵌合部材15と位置決め部材16を固定して、固定当接部材13とマイクロメータ14のスピンドル14bをこれらに嵌合・当接させることによって、計測対象物4に対する撮像装置2の相対位置の再現性が向上する。つまり計測対象物4の特定の部位を繰り返し撮像することが容易になる。
【0037】
コンピュータ3は、例えば、図4に示すように構成される。すなわち、中央処理装置3a、記憶装置3b、通信インターフェイス(I/F)3c、キーボード3d、モニタ3e等を備える。また、コンピュータ3はキーボード3dによって操作されて、記憶装置3bに記録されたプログラムを中央処理装置3aが実行する。また、中央処理装置3aは、該プログラムにしたがって、通信インターフェイス(I/F)3cを介して撮像装置1からデータを読み出し、所定の処理を行って、その結果をモニタ3eに表示し、記憶装置3bに記録する。また、通信インターフェイス(I/F)3cを介して、当該処理の結果を図示しないプリンタに出力することができる。あるいは、当該処理の結果を図示しない他のコンピュータに送信することができる。
【0038】
コンピュータ3の記憶装置3bには、デジタル画像相関法による変位/ひずみ算出の手順を記述したプログラムが記録される。中央処理装置3aは該プログラムに従って、おおよそ、図5に示すような処理を実行する。すなわち、まず、被測定物(計測対象物4)に荷重を加える前に、該被測定物の特定の部位を撮像装置2で撮像して、初期画像P1を取得し、記憶装置3bに記憶する(ステップS1)。
【0039】
次に、該被測定物に荷重を加えて、前記特定の部位を撮像装置2で再度撮像して、事後画像P2を取得し、記憶装置3bに記憶する(ステップS2)。
【0040】
次に、初期画像P1上の異なる2点AおよびBを選び、点A及びBをそれぞれ包含する微小領域a及びbの画像(図6参照)を抽出する(ステップS3)。
【0041】
次に、微小領域a及びbの画像と事後画像P2の間にデジタル画像相関法を適用して、微小領域aとの相関性が最大になる微小領域a’、及び微小領域bとの相関性が最大になる微小領域b’を事後画像P2から抽出する(ステップS4)。なお、デジタル画像相関法の詳細については、先行出願及び特許文献1ないし特許文献4に開示されているので、説明を省略する。
【0042】
次に、微小領域a’に対する相対位置が、微小領域aに対する点Aの相対位置と等しくなるような、微小領域a’内の点A’を決定する。同様に微小領域b’に対する相対位置が、微小領域bに対する相対位置と等しくなるような、微小領域点b’内の点B’を決定する(ステップS5)。なお、図6に示した例では、点A及びBがそれぞれ微小領域a及びbの中心位置するように微小領域a及びbを定めているので、微小領域a’及び微小領域b’の中心が点A’及びB’になる。
【0043】
次に、線分ABの長さl及び線分A’およびB’の長さl’を算出する(ステップS6)。
【0044】
最後に、l及びl’の値を次式に代入して、変位d及びひずみεを求める(ステップS7)。
【0045】
d=l−l’,ε=d/l
【0046】
[実施例]
この変位/ひずみ計測装置1を使用して、ひずみを計測する実験を行なったので、その計測結果を従来技術よる計測結果と比較して示す。
【0047】
実験に使用した供試体17は、図7に示すような幅150mm高さ150mm長さ530mmのH型鋼であり、全体を赤茶色の防錆塗料で塗装し、計測対象部位17aに白色の塗料をスプレーして、直径0.1mmないし1.0mm(平均0.2mm)程度の不規則な水玉模様を形成している。
【0048】
計測対象部位17aは、おおよそ20mm角の矩形の領域であり、撮像装置2でこの計測対象部位17aを撮像して、600万(3000×2000)画素からなる初期画像P1及び事後画像P2を取得した。
【0049】
計測対象部位17aの周縁には4枚のひずみゲージ17bを貼付して、ひずみゲージ17bによる計測値と変位/ひずみ計測装置1による計測値を比較した。
【0050】
また、供試体17の長さ方向の1軸圧縮荷重を加えて、荷重の大きさを変えながら、ひずみを算出した。なお、以下では荷重方向(つまり、供試体17の長さ方向)のひずみを「軸方向ひずみ」といい、荷重方向に直交する方向に生じるひずみを「ポアソン方向ひずみ」と呼ぶ。
【0051】
供試体17の軸方向ひずみを変位/ひずみ計測装置1を使って計測した結果を縦軸に取り、ひずみゲージ17bを使って計測した結果を横軸に取って、プロットすると図8のような図が得られる。変位/ひずみ計測装置1の計測値とひずみゲージ17bによる計測値が等しい場合に、計測結果は図中の破線で示した対角線上にプロットされる訳だが、図8によれば計測結果は該対角線の近くに並んでいる。つまり両者は良く一致している。
【0052】
図8と同様にして、変位/ひずみ計測装置1によるポアソン方向ひずみの計測結果をひずみゲージ17bによる計測結果と比較して示すと図9のようになる。ポアソン方向ひずみについても、変位/ひずみ計測装置1の計測値とひずみゲージ17bによる計測値は良く一致している。
【0053】
なお、ポアソン方向ひずみは軸方向ひずみに比べて小さいので、一般的にデジタル画像相関法による計測は難しい。つまりデジタル画像相関法によるポアソン方向ひずみの計測精度は悪いが、変位/ひずみ計測装置1では、軸方向ひずみの場合と同程度の良い結果が出ていることが解る。
【0054】
変位/ひずみ計測装置1による供試体17の軸方向ひずみ計測を複数回行って、その結果を図8と同様に纏めると図10のようになる。最大値と最小値の差が小さい、つまり計測値のばらつきが小さい事が解る。
【0055】
一方、従来の、つまり非テレセントリックレンズを備える撮像装置を使って供試体17を撮像した画像にデジタル画像相関法を適用して、軸方向ひずみを複数回計測した結果を、ひずみゲージ17bによる計測結果と比較すると、図11のようになる。非テレセントリックレンズを備える撮像装置による計測値は、ひずみゲージによる計測値から大きく乖離し、ばらつきも大きいことが解る。つまり、図10と図11を比較すれば、テレセントリックレンズ8を備える撮像装置2を備える変位/ひずみ計測装置1によれば、従来の装置に比べて、精度の高い計測を行えることが理解できる。
【0056】
なお、撮像装置2に備えた赤外線放射温度計12は温度差に起因する成分を計測値から控除するために使用される。例えば、初期画像P1を撮像した時の供試体17の温度T1と、事後画像P2を撮像した時の供試体17の温度T2を、赤外線放射温度計10で計測し、温度差dT(=T2−T1)に供試体17の線膨張係数を乗じたものを計測値から減じて、温度差に起因する成分を控除する。
【0057】
[変形例]
さて、以上説明したような構成に加えて、さらに、図12に示すように、撮像装置2の遮光筒6の先端に基準平板18と連結部材19を取付ければ、撮像装置2の計測対象物4に対する相対的な位置や姿勢を容易に調整することができる。以下、この撮像装置2の変形例の構成と作用を説明する。
【0058】
さて、図12(a)は撮像装置2の側面図であり、図12(b)は撮像装置2を図12(a)のAA’線で切断した断面図である。図12(a)及び図12(b)に示すように、撮像装置2の遮光筒6の先端には。2個の基準平板18が連結部材19を介してそれぞれ取付けられている。また、図12(b)から明らかなように、2個の基準平板18の一方は、その長手方向がX軸に平行になるように配置され、2個の基準平板18の他方はY軸に平行になるように配置されている。また、2個の基準平板18は、撮像装置2の視野(撮像範囲)に配置されている。また、基準平板18は連結部材19に軸支されて、揺動軸P回りに自在に揺動する。
【0059】
また、基準平板18と連結部材19は図13及び図14に示すように構成されている。すなわち、連結部材19は、固定片20と可動片21からなり、固定片20は遮光筒6に固定される。可動片21はロッド22、23を備えて、ロッド22、23は固定片20に対して自在に摺動するので、可動片21はZ軸方向に自在に移動できる。また、固定片20と可動片21の間にはコイルばね24が架け渡されて、可動片21を遮光筒6(撮像装置2)から計測対象物4に向かう方向に付勢している。そのため、図13(b)に示すように、可動片21を上方に押し上げると、コイルばね24は可動片21を下方(計測対象物4に向かう方向)に押し戻す方向に働く。また、基準平板18はロッド22の先端にボルト25を介して軸支されて、揺動軸P回りに自在に揺動する。
【0060】
又、図13(c)は、基準平板18を図13(a)のA方向から見た図、言い換えれば撮像装置2から見た平面図である。図13(c)に示すように、基準平板18の撮像装置2から見える平面にはランダムなモザイク状の図形パターンが形成されている。
【0061】
このように構成されているので、撮像装置2を計測対象物4に載置すると、基準平板18は計測対象物に当接して、計測対象物4に倣って傾く。計測対象物4が撮像装置2に対して相対的に傾いている場合、基準平板4は計測対象物4と同じだけ傾く。したがって、基準平板18の傾きが分かれば、計測対象物4の傾きが分かる。
【0062】
さて、前述したように、基準平板18の撮像装置2側の表面にはモザイク状の図形パターン(図13(c)参照)が形成されているので、撮像装置2で基準平板18を撮像した画像にデジタル画像相関法を適用することができる。
【0063】
ここで、基準平板18上に固定された線分を仮想する。撮像装置2から該線分を見たときの「見かけの長さ」は、基準平板18が撮像装置2に対して相対的に傾くと変化する。したがって、撮像装置2で基準平板18を撮像した画像にデジタル画像相関法を適用して、該線分の「見かけの長さ」の変化を知れば、基準平板18の撮像装置2に対する相対的な傾斜角を知ることができる。つまり計測対象物4の撮像装置2に対する相対的な傾斜角を知ることができる。
【0064】
例えば、図15に示すように、撮像装置が計測対象物に対して正立している、つまり撮像装置2の光軸が計測対象物4の表面に対して垂直になるように位置決めした状態(図15(a))で、撮像装置で基準平板を撮像した画像(以下「基準画像」という)と、撮像装置2が計測対象物4に対して正立の位置から角度θだけ傾斜した状態(図15(b))で、撮像装置で基準平板を撮像した画像(以下「傾斜画像」という)を考える。また、基準平板18に固定された線分ABを仮想して、基準画像と傾斜画像にデジタル画像相関法を適用すれば、線分ABの「見かけの長さ」がLからL’に変化したこと知ることができる。
【0065】
図15(c)に示すように、見かけの長さL,L’と角度θの間には次式の関係があるから、見かけの長さL,L’が分かれば角度θの大きさを知ることができる。
【0066】
cosθ=L’/L
【0067】
また、図12に示したように、撮像装置2はX軸及びY軸に平行に配置された2枚の基準平板18を備えているので、計測対象物4の撮像装置2に対するX軸およびY軸回りの相対的な傾斜角を知ることができる。
【0068】
このようにして得られた計測対象物4の撮像装置2に対する傾斜角は、撮像装置2の姿勢の補正に利用することができる。
【0069】
なお、以上説明した実施形態は本発明の具体的な実施形態の例示であって、本発明の技術的範囲は上記実施形態に示された装置方法に限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自由に変形、応用、あるいは改良して実施することができる。
【0070】
例えば、上記実施形態では、照明手段の光源としてLEDランプ9を使用する例を示したが、本発明の照明手段の光源はLEDランプには限定されない。公知のあるいは将来出現する各種の光源を自由に選択して、本発明を実施することが出来る。
【0071】
また、上記実施形態では、拡散板11の具体例として、表面をサンドペーパーで荒らして微細な凹凸を付けた透明なアクリル板を複数枚積層した物を示したが、本発明の拡散板はかかる部材には限定されない。本発明の拡散板は照明手段の光源が発する光を透過させ、拡散板を透過した光の方向をランダムに変えて、計測対象物をまんべんなく照明できれば十分であり、その素材や形状あるいは機械的構成は自由に選択することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、進退当接部材の具体例として、マイクロメータ14を示したが、本発明の進退当接部材はマイクロメータには限定されない。本発明の進退当接部材は遮光筒に固定される固定部と、該固定部に進退自在に取付けられた当接部を備えて、該当接部の端部が計測対象物に当接するよう構成されていれば十分であり、その素材や形状あるいは機械的構成は自由に選択することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、画像解析装置の具体例として、デジタル画像相関法による解析手法を記述したプログラムをインストールしたコンピュータ3を示したが、本発明の画像解析装置はこのようなコンピュータには限定されない。例えば、該プログラムの全部又は一部をハードウェアに置き換えて画像解析装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 変位/ひずみ計測装置
2 撮像装置
3 コンピュータ
4 計測対象物
5 カメラ
6 遮光筒
7 カメラ本体
8 テレセントリックレンズ
9 LEDランプ
10 照明用電源コントローラ
11 拡散板
12 赤外線放射温度計
13 固定当接部材
14 マイクロメータ
15 被嵌合部材
16 位置決め部材
17 供試体
18 基準平板
19 連結部材
20 固定片
21 可動片
22 ロッド
23 ロッド
24 コイルばね
25 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と画像解析装置から構成されて、前記撮像装置で計測対象物を撮像した画像を前記画像解析装置で解析して、当該計測対象物の変位又はひずみを算出する変位/ひずみ計測装置において、
前記撮像装置に取付けられて、前記計測対象物に当接する当接部材を備える
ことを特徴とする変位/ひずみ計測装置。
【請求項2】
前記当接部材は、
1個の固定当接部材と、
前記撮像装置の端部に進退自在に取付けられる2個の進退当接部材と、から構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の変位/ひずみ計測装置。
【請求項3】
前記進退当接部材は、マイクロメータであって、前記マイクロメータのスピンドルの先端が前記計測対象物に当接する
ことを特徴とする請求項2に記載の変位/ひずみ計測装置。
【請求項4】
前記固定当接部材は、前記計測対象物に取付けられた被嵌合部材と嵌合する嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の変位/ひずみ計測装置。
【請求項5】
前記撮像装置の視野内に配置されるとともに、前記撮像装置から見える表面に図形パターンが形成された基準平板と、
前記撮像装置に固定されて、前記基準平板を揺動自在に支持する連結部材を備えて、
前記連結部材は、前記基準平板を前記撮像装置から前記計測対象物に向かう方向に付勢して、前記基準平板を前記計測対象物に押し付ける押圧手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の変位/ひずみ計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−185725(P2011−185725A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50956(P2010−50956)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】