説明

変速比制御装置及び無段変速機

【課題】車両の運転者が加速中に受ける違和感を抑制すること。
【解決手段】ベルト式無段変速機は、プライマリシャフトの回転数の候補として通常目標回転数NINnを車両の加速要求の有無に関わらず求める通常目標回転数演算部と、プライマリシャフトの回転数の候補として加速用目標回転数NINaを通常目標回転数演算部とは異なる演算方法を用いて加速が要求された場合に求める加速用目標回転数演算部と、通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとに基づいてプライマリシャフトの最終的な目標回転数である最終目標回転数NINLINEを設定する最終目標回転数演算部と、プライマリシャフトの回転速度を最終目標回転数NINLINEになるよう変速比を制御する変速比制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速比制御装置及び無段変速機に関し、さらに詳しくは、加速中の運転者の違和感を抑制できる変速比制御装置及び無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機としてベルト式無段変速機やトロイダル型無段変速機などがある。例えば、ベルト式無段変速機は、入力軸に設けられるプライマリプーリと、出力軸に設けられるセカンダリプーリと、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリに巻き掛けられるベルトとを備える。ベルト式無段変速機は、前記プライマリプーリと前記ベルトとの接触半径と、前記セカンダリプーリと前記ベルトとの接触半径とを無段階に変化させる。これにより、ベルト式無段変速機は、変速比を無段階に調整できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、運転者により加速要求がなされたとき、目標駆動力が高められると共に、動力源の出力回転速度を高めることにより、要求出力量に対して無段変速機を搭載した車両から運転者が十分に高い加速感を得られる技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−51842号公報(段落番号0016)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無段変速機を搭載した車両を運転者が運転する際、運転者が車両に対して加速を要求し、アクセルペダルを踏み込んでいる状態であっても、運転者が車両の速度を微調整するためにアクセルペダルの踏み込みをわずかに緩めることがある。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、無段変速機の出力軸の目標回転速度がアクセル開度に基づいて設定されるため、運転者が車両の速度の微調整のためにアクセルペダルの踏み込みをわずかに緩めた場合、無段変速機は入力軸の目標回転速度を低く設定する。これにより、運転者は車両から受ける加速感に違和感を受けるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、加速中の運転者の違和感を抑制できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る変速比制御装置は、動力発生手段からの回転が入力される入力軸の回転速度の候補としての第1目標回転速度を車両の加速の要求の有無に関わらず求める第1目標回転速度演算手段と、前記入力軸の回転速度の候補としての第2目標回転速度を前記第1目標回転速度演算手段とは異なる演算方法を用いて、前記車両の加速が要求された場合に求める第2目標回転速度演算手段と、前記第1目標回転速度と前記第2目標回転速度とに基づいて前記入力軸の最終的な目標回転速度である最終目標回転速度を設定する最終目標回転速度演算手段と、前記入力軸の回転速度を前記最終目標回転速度になるように前記入力軸の回転速度と前記入力軸からの前記回転が伝達される出力軸の回転速度との比である変速比を制御する変速比制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、本発明に係る変速比制御装置は、それぞれ異なる演算方法によって求められる第1目標回転速度と第2目標回転速度とに基づいて最終目標回転速度が設定される。これにより、最終目標回転速度演算手段は、車両の加速の要求量や車速などの車両の走行状況によって、第1目標回転速度と第2目標回転速度とに基づいてより適した最終目標回転速度を設定できる。よって、本発明に係る変速比制御装置は、加速中の運転者の違和感を抑制できる。
【0009】
本発明の好ましい態様としては、前記第1目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求の有無に関わらず前記出力軸のトルクの候補である第1目標トルクと、燃費最適線とから前記第1目標回転速度を求めることが望ましい。
【0010】
本発明の好ましい態様としては、前記出力軸のトルクが前記車両の加速が要求された場合、前記変速比制御手段は、前記第1目標トルクよりも高いトルクである第2目標トルクとなるように、前記変速比と、前記入力軸に入力されるトルクと、のうち少なくとも一方を制御することが望ましい。
【0011】
本発明の好ましい態様としては、前記第2目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求前よりも高く前記第2目標回転速度を設定すると共に、前記第2目標回転速度を単位時間あたり所定の変化量で増加させることが望ましい。
【0012】
本発明の好ましい態様としては、前記最終目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求量が減少したときに、前記第1目標回転速度が前記第2目標回転速度よりも大きい場合、前記第1目標回転速度と前記第2目標回転速度との偏差に基づいて求められる回転速度の単位時間あたりの変化量と、前記第2目標回転速度の単位時間あたりの変化量と、を比較し、より大きい単位時間あたりの変化量を有する回転速度を前記最終目標回転速度として設定することが望ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様としては、前記最終目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求量が減少したときに、前記第1目標回転速度が前記第2目標回転速度よりも小さく、かつ前記車両の減速が要求されない場合、前記入力軸の回転速度と前記第2目標回転速度とに基づいて前記最終目標回転速度を求めることが望ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記最終目標回転速度演算手段は、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差が所定値以上の場合、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差に基づいて前記最終目標回転速度の単位時間あたりの変化量を求めることが望ましい。
【0015】
本発明の好ましい態様としては、前記最終目標回転速度演算手段は、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差が所定値未満の場合、前記第2目標回転速度の単位時間あたりの変化量を前記最終目標回転速度の単位時間あたりの変化量として設定することが望ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記第2目標回転速度演算手段は、前記車両の速度と、前記車両の速度変化と、前記車両のアクセル開度と、前記車両のアクセル開速度と、のうち少なくとも1つに基づいて前記第2目標回転速度を求めることが望ましい。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る無段変速機は、動力発生手段からの回転が入力される入力軸と、前記入力軸からの前記回転が伝達される出力軸と、前記入力軸の回転速度の候補としての第1目標回転速度を車両の加速の要求の有無に関わらず求める第1目標回転速度演算手段と、前記入力軸の回転速度の候補としての第2目標回転速度を前記第1目標回転速度演算手段とは異なる演算方法を用いて前記車両の加速が要求された場合に求める第2目標回転速度演算手段と、前記第1目標回転速度と前記第2目標回転速度とに基づいて前記入力軸の最終的な目標回転速度である最終目標回転速度を設定する最終目標回転速度演算手段と、前記入力軸の回転速度を前記最終目標回転速度になるように前記入力軸の回転速度と前記出力軸の回転速度との比である変速比を制御する変速比制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
上記構成により、本発明に係る無段変速機は、それぞれ異なる演算方法によって求められる第1目標回転速度と第2目標回転速度とに基づいて最終目標回転速度が設定される。これにより、最終目標回転速度演算手段は、車両の加速の要求量や車速などの車両の走行状況によって、第1目標回転速度と第2目標回転速度とに基づいてより適した最終目標回転速度を設定できる。よって、本発明に係る無段変速機は、加速中の運転者の違和感を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る変速比制御装置及び無段変速機は、加速中の運転者の違和感を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0021】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る内燃機関の模式的断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る動力発生手段としての内燃機関100は、乗用車やトラックなどの車両に搭載されて動力発生源となる。内燃機関100は、シリンダ121内を往復運動するピストン120が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4ストロークエンジンである。なお、本実施形態では、内燃機関100を、4ストロークエンジンとして説明するが、例えば、ピストンが1往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を行う、いわゆる2ストロークエンジンでもよい。
【0022】
内燃機関100は、円筒形状に形成されるシリンダ121の中心軸であるシリンダ軸線SL方向に往復運動するピストン120と、筒内燃焼空間101と、クランク室102と、を備える。空気と燃料との混合気が燃焼する空間である筒内燃焼空間101は、ピストン120を挟んでシリンダ軸線SL方向の一方側に設けられる。クランク室102は、筒内燃焼空間101とは反対側である他方側に設けられる。なお、クランク室102は、オイルパンを有し、オイルパン内にはオイルが収容されている。
【0023】
内燃機関100は、筒内燃焼空間101に接続される吸気ポート103及び排気ポート104と、筒内燃焼空間101内に燃料を噴射するインジェクタ105と、筒内燃焼空間101内の混合気に点火する点火プラグ106と、ピストン120の往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト107とを備える。さらに、内燃機関100は、シリンダヘッド108、シリンダブロック109及びクランクケース110を備える。なお、本実施形態では、内燃機関100は、燃焼室内に燃料を噴射する、いわゆる直接噴射型の内燃機関として説明するが、本実施形態はこれに限定されず、例えば、内燃機関100は、吸気ポート103内に燃料を噴射する、いわゆるポート噴射型の内燃機関でもよい。
【0024】
シリンダヘッド108は、シリンダブロック109に締結され、クランクケース110は、シリンダヘッド108とは反対側のシリンダブロック109に締結される。シリンダブロック109の内部には、上述した円筒形状のシリンダ121が形成される。また、シリンダ121の内壁面であるシリンダ内壁面121aを、ピストン120が摺動する。
【0025】
クランクシャフト107は、クランクケース110に回転可能に支持される。ピストン120は、コネクティングロッド111の一端と回動可能に連結される。クランクシャフト107は、コネクティングロッド111において、ピストン120と連結される端部とは反対側の端部に回転可能に連結される。上記構成により、ピストン120の往復運動は、クランクシャフト107の回転運動に変換されて、内燃機関100の出力として取り出される。なお、クランクシャフト107は、その回転を滑らかにするため、その軸周りにカウンタウェイト107aを有する。
【0026】
筒内燃焼空間101は、シリンダヘッド108においてシリンダ121側の端面である筒内天井部101a及び、シリンダ121のシリンダ内壁面121a及び、ピストン120のクランク室102とは反対側の端面であるピストン頂部120aにより形成される空間である。
【0027】
シリンダヘッド108の筒内天井部101aには、上述した吸気ポート103及び排気ポート104が開口し、インジェクタ105及び点火プラグ106が突出している。吸気ポート103には吸気弁112が設けられ、吸気弁112は、吸気ポート103と筒内燃焼空間101とを連通する開口を所定のタイミングで開閉する。また、排気ポート104には排気弁113が設けられ、筒内燃焼空間101と排気ポート104とを連通する開口を所定のタイミングで開閉する。
【0028】
吸気ポート103には、吸気通路115が接続される。吸気通路115は、大気から吸気ポート103に空気を導く通路である。吸気通路115には、エアクリーナ123と、電子スロットル弁124とが設けられる。エアクリーナ123は、大気から導入された空気に含まれる塵を除去する。電子スロットル弁124、吸気ポート103を介して筒内燃焼空間101に導入される空気量を調整するための吸気量調整手段である。
【0029】
排気ポート104には、排気通路116が接続される。排気通路116は、筒内燃焼空間101から排出された排気ガスを大気へと導く通路である。排気通路116には、触媒装置125が設けられる。触媒装置125は、排気ガスに含まれる有害物質を除去する有害物質除去手段である。
【0030】
インジェクタ105は、筒内燃焼空間101内に吸気ポート103側から排気ポート104側に向けて燃料噴霧を噴射する。点火プラグ106は、筒内天井部101aの吸気ポート103と排気ポート104との間に設けられる。なお、インジェクタ105が設けられる位置及び、燃料を噴射する方向は限定されない。例えば、インジェクタ105を、点火プラグ106の近傍に設け、燃料をピストン頂部120aに向けて噴射してもよい。
【0031】
さらに、内燃機関100は、各種制御手段として、マイクロコンピュータを中心に構成されることにより内燃機関100の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)15を備える。ECU15は、点火プラグ106と電気的に接続される。これにより、ECU15は、点火プラグ106による燃料と空気との混合気への点火時期を制御する。またECU15は、電子スロットル弁124と電気的に接続される。これにより、ECU15は、筒内燃焼空間101へ導入される吸入空気量を制御する。また、ECU15は、インジェクタ105と電気的に接続される。これにより、ECU15は、燃料噴射時期及び燃料噴射量を制御する。
【0032】
ECU15は、例えば点火プラグ106による混合気への点火時期、または電子スロットル弁124による筒内燃焼空間101へ導入される吸入空気量を制御することにより、結果的に内燃機関100のクランクシャフト107から取り出せる回転のトルク及び回転速度を制御できる。
【0033】
インジェクタ105から燃料が噴射されると、吸気ポート103に接続された吸気通路115から吸入された空気とインジェクタ105から噴射された燃料とが混合して混合気が形成される。ピストン120がシリンダ121のクランク室102側へ、つまり下死点側へ移動すると、筒内燃焼空間101内に混合気が吸入される(吸気行程)。さらに、ピストン120が吸気行程下死点を経てシリンダ121内をシリンダヘッド108の筒内天井部101a側へ、つまり上死点側へ移動すると、混合気が圧縮される(圧縮行程)。
【0034】
さらに、ピストン120が圧縮行程上死点付近に近づくと、点火プラグ106により混合気に点火される。これにより、筒内燃焼空間101内で混合気が燃焼し、その燃焼圧力によりピストン120を下死点側へ移動させる(膨張行程)。燃焼後の混合気(排気ガス)は、ピストン120が下死点を経て上死点に向かって再び移動することで排気ポート104及び排気ポート104と連結される排気通路116を介して筒内燃焼空間101から排出される(排気行程)。上記構成により、本実施形態に係るピストン120を備える内燃機関100は、クランクシャフト107から出力として回転を発生させる。
【0035】
図2は、本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。ベルト式無段変速機Aは、動力の発生源としての内燃機関100と共に乗用車やトラックなどの車両に搭載される。なお、本実施形態では、無段変速機をベルト式の無段変速機として説明するが、本実施形態はベルト式の無段変速機に限定されない。本実施形態に係る無段変速機は、例えばトロイダル式の無段変速機でもよい。
【0036】
図2に示すように、車両10は、内燃機関100と、トランスアクスル20とで構成される。トランスアクスル20は、トランスミッションとデファレンシャルとを一体構成したもので、内燃機関100の出力側に設けられる。
【0037】
トランスアクスル20は、内燃機関100の出力側から順に、トランスアクスルハウジング21と、トランスアクスルケース22と、トランスアクスルリヤカバー23とによってケーシングが構成される。トランスアクスルハウジング21は、内燃機関100に取り付けられる。また、トランスアクスルケース22は、トランスアクスルハウジング21に取り付けられる。さらに、トランスアクスルリヤカバー23は、トランスアクスルケース22に取り付けられる。
【0038】
トランスアクスルハウジング21の内部には、トルクコンバータ30が収納される。トルクコンバータ30は、流体クラッチの一種であり、内燃機関100から取り出された回転を作動油を介してベルト式無段変速機Aに伝える。また、トルクコンバータ30は内燃機関100から取り出されたトルクを増幅する。
【0039】
トルクコンバータ30は、ポンプインペラ31と、タービンライナ32と、ステータ33と、ロックアップクラッチ34と、ダンパ装置35と、中空軸36と、フロントカバー37と、インプットシャフト38と、ワンウェイクラッチ39とを備える。インプットシャフト38は、内燃機関100のクランクシャフト107と同一の軸線を中心に回転する。なお、クランクシャフト107は、内燃機関100の出力軸である。タービンライナ32は、インプットシャフト38の内燃機関100側の端部に取り付けられている。また、ロックアップクラッチ34は、ダンパ装置35を介してインプットシャフト38に取り付けられている。
【0040】
フロントカバー37は、クランクシャフト107のトランスアクスル20側の端部にドライブプレート122を介して連結される。ドライブプレート122は、クランクシャフト107に取り付けられ、はずみ車として機能する。これにより、ドライブプレート122は、クランクシャフト107の回転を滑らかにする。さらに、フロントカバー37にポンプインペラ31が接続される。ポンプインペラ31は、タービンライナ32と対向する位置に設けられる。また、ポンプインペラ31及びタービンライナ32の内側にステータ33が設けられる。
【0041】
ステータ33は、ワンウェイクラッチ39を介して中空軸36が接続される。なお、ステータ33は、ポンプインペラ31からタービンライナ32へのオイルの流れを整流し、トルクを向上させる。また、ステータ33は、所定の速度域(カップリングレンジ)に到達すると、ワンウェイクラッチ39により空転する。これにより、トルクコンバータ30は、トルクがクラッチポイントを超え、過剰に向上することを抑制する。
【0042】
中空軸36の内部には、インプットシャフト38が設けられる。トルクコンバータ30のケーシングは、主にポンプインペラ31やフロントカバー37により構成される。なお、前記ケーシングの内部には、作動油が供給される。以下に、トルクコンバータ30の動作を説明する。
【0043】
まず、内燃機関100のトルクがクランクシャフト107からドライブプレート122を介してフロントカバー37に伝達される。ここで、ロックアップクラッチ34がダンパ装置35により解放されているとき、フロントカバー37に伝達されたトルクはポンプインペラ31に伝達される。そして、ポンプインペラ31とタービンライナ32との間を循環する作動油を介して、タービンライナ32にトルクが伝達される。タービンライナ32に伝達されたトルクは、インプットシャフト38に伝達される。
【0044】
トルクコンバータ30と後述する前後進切換機構40との間には、図2に示すオイルポンプ26が設けられる。オイルポンプ26は、ロータ27と、ハブ28と、オイルポンプケーシング29とから構成される。オイルポンプ26は、ロータ27により円筒形状のハブ28を介してポンプインペラ31に接続される。さらに、ハブ28は、中空軸36にスプライン嵌合される。上記構成により、内燃機関100から取り出されたトルクは、ポンプインペラ31を介してロータ27に伝達される。オイルポンプ26は、ロータ27に伝達された前記トルクにより駆動する。
【0045】
さらに、車両10は、トランスアクスルケース22及びトランスアクスルリヤカバー23の内部に、前後進切換機構40と、変速装置としてのベルト式無段変速機Aと、減速装置90と、差動装置70とが収納される。
【0046】
前後進切換機構40は、遊星歯車機構41と、フォワードクラッチ42と、リバースブレーキ43とによって構成される。前後進切換機構40は、トルクコンバータ30の内部のインプットシャフト38に伝達された内燃機関100からのトルクを、ベルト式無段変速機Aの後述するプライマリプーリ50に伝達する。
【0047】
遊星歯車機構41は、サンギア44と、プラネタリピニオン45と、リングギア46と、キャリア48とから構成される。サンギア44は、連結部材を介してプライマリプーリ50の回転軸としてのプライマリシャフト51にスプライン嵌合される。なお、プライマリシャフト51は、入力軸に対応する。これにより、サンギア44に伝達されたトルクは、プライマリシャフト51に伝達される。
【0048】
プラネタリピニオン45は、サンギア44の周囲に複数個設けられる。本実施形態では、例えば3個のプラネタリピニオン45がサンギアの周囲に設けられる。各プラネタリピニオン45は、サンギア44に噛み合わされ、キャリア48によって支持される。キャリア48は、各プラネタリピニオン45を自転可能かつサンギア44を中心に公転可能に支持する。また、キャリア48は、キャリア48の外周の端部でリバースブレーキ43に接続される。
【0049】
リングギア46は、キャリア48に支持される各プラネタリピニオン45に噛み合わされる。また、リングギア46は、フォワードクラッチ42を介してトルクコンバータ30の内部のインプットシャフト38に接続される。
【0050】
フォワードクラッチ42は、インプットシャフト38の中空部に供給された作動油によりON/OFF制御される。なお、車両が前進走行時には、フォワードクラッチ42がON、リバースブレーキ43がOFFにされる。また、車両が後進走行時には、フォワードクラッチ42がOFF、リバースブレーキ43がONにされる。これにより、前後進切換機構40は、トルクの回転方向を切り替える。
【0051】
次に、前後進切換機構40によって回転方向を切り替えられた前記トルクは、プライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機Aに伝達される。ベルト式無段変速機Aのプライマリシャフト51に伝達されたトルクは、ベルト80を介して出力軸としてのセカンダリシャフト61に伝達される。ここで、プライマリシャフト51に入力された回転数は、ベルト式無段変速機Aにより所望の変速比に調節され、セカンダリシャフト61に伝達される。なお、ベルト式無段変速機Aの詳細な説明は後述する。また、ここで用いる回転数とは、単位時間あたりの回転数のことをいい、回転速度と同意である。
【0052】
ここで、プライマリシャフト51には、プライマリシャフト51の回転数、つまり入力回転数を検出するプライマリシャフト回転数センサD01が設けられる。また、セカンダリシャフト61には、セカンダリシャフト61の回転数、つまり出力回転数を検出するセカンダリシャフト回転数センサD02が設けられる。
【0053】
セカンダリシャフト61において、セカンダリプーリ60とトランスアクスルリヤカバー23との間には、パーキングギア66が設けられる。パーキングギア66は、スプラグが歯車に挿入されることにより、トルクの伝達を機械的にロックする。
【0054】
次に、セカンダリシャフト61に伝達されたトルクは、減速装置90に伝達される。セカンダリシャフト61の内燃機関100側には、カウンタドライブピニオン92が設けられる。また、カウンタドライブピニオン92の両側には、セカンダリシャフト61を回転可能に支持する軸受87、軸受88が設けられる。
【0055】
ここで、カウンタドライブピニオン92に伝達されたトルクは、減速装置90によって減速される。減速装置90は、インターミディエイトシャフト91と、カウンタドライブピニオン92と、カウンタドリブンギア93と、ファイナルドライブピニオン94とを備える。インターミディエイトシャフト91は、軸受85、軸受86により回転可能に支持される。また、インターミディエイトシャフト91とセカンダリシャフト61とは、互いに平行に設けられる。
【0056】
インターミディエイトシャフト91は、カウンタドリブンギア93と、ファイナルドライブピニオン94とをインターミディエイトシャフト91の軸上に有する。カウンタドリブンギア93は、カウンタドライブピニオン92に噛み合わされる。ファイナルドライブピニオン94は、後述する差動装置70のリングギア79に噛み合わされる。
【0057】
上記構成により、セカンダリシャフト61に伝達されたトルクは、順にカウンタドライブピニオン92、カウンタドリブンギア93、インターミディエイトシャフト91、ファイナルドライブピニオン94、差動装置70のリングギア79に伝達される。次に差動装置70の構成を説明する。なお、差動装置70は、車両10が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の車輪11と、外側の車輪11との速度差を吸収し、各車輪11に同等のトルクを与える。
【0058】
差動装置70は、デフケース71と、ピニオンシャフト72と、ピニオン73、ピニオン74と、サイドギア75、サイドギア76とを備える。なお、デフケース71は、内部が中空に形成される。デフケース71は、軸受77、軸受78により回転可能に支持される。リングギア79は、デフケース71の外周に設けられ、上述したようにファイナルドライブピニオン94と噛み合わされる。
【0059】
ピニオンシャフト72は、デフケース71の中空部に取り付けられる。ピニオン73及びピニオン74は、ピニオンシャフト72に設けられる。サイドギア75、サイドギア76は、車輪11が取り付けられるドライブシャフト12及びドライブシャフト13にそれぞれ連結される。なお、車輪11には車速センサD04が設けられる。車速センサD04は、車両10の速度を検出する。なお、車速センサD04が設けられる位置は、車輪11に限定されない。例えば、後述するセカンダリシャフト61に設けられるセカンダリシャフト回転数センサD02の検出結果に基づいて、車速を求めてもよい。
【0060】
リングギア79に伝達されたトルクは、デフケース71を回転させる。デフケース71の回転にともなってピニオン73及びピニオン74が、サイドギア75及びサイドギア76へトルクを伝達する。これにより、サイドギア75に伝達されたトルクは一方のドライブシャフト12へ伝達され、サイドギア76に伝達されたトルクは他方のドライブシャフト13へ伝達される。
【0061】
上記構成により、減速装置90に伝達されたトルクは、差動装置70を介して、ドライブシャフト12、ドライブシャフト13に伝達される。ドライブシャフト12、ドライブシャフト13に伝達されたトルクは、車輪11に伝達され、車両が走行する路面に伝達されることにより、車両が走行する。
【0062】
なお、上記のように構成されたトランスアクスルケース22の内部には、トランスアクスルケース22の底部に設けられるオイルパンに潤滑油が収容される。前記潤滑油は、回転するリングギア79によって掻き上げられてファイナルドライブピニオン94、カウンタドリブンギア93、カウンタドライブピニオン92の噛み合い面に供給される。これにより、前記潤滑油は、差動装置70の各構成部材、例えばドライブシャフト12、インターミディエイトシャフト91、セカンダリシャフト61や軸受83〜軸受88等を潤滑する。
【0063】
図3は、本実施形態に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリ側の構成を示す断面図である。以下、ベルト式無段変速機Aの概略構成について図2及び図3を用いて説明する。なお、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とはほぼ同様の構成であるため、プライマリプーリ50側を詳細に説明する。ベルト式無段変速機Aは、図2に示すように、プライマリプーリ50と、プライマリプーリ軸としてのプライマリシャフト51と、セカンダリプーリ60と、セカンダリプーリ軸としてのセカンダリシャフト61と、を備える。
【0064】
プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によってインプットシャフト38の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。セカンダリシャフト61は、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
【0065】
プライマリシャフト51には、プライマリプーリ50が設けられる。プライマリプーリ50は、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、図3に示すスプライン54とを備える。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周にプライマリシャフト51と一体に、もしくはプライマリシャフト51に固定して設けられる。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51にプライマリシャフト51上をプライマリシャフト51の軸線方向に慴動可能に設けられる。具体的には図3に示すように、プライマリ可動シーブ53はスプライン54によってプライマリシャフト51にスプライン嵌合される。つまり、プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51上でプライマリ固定シーブ52と対向して位置する。
【0066】
上記構成により、プライマリ固定シーブ52及びプライマリ可動シーブ53の対向面間には、V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を慴動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。
【0067】
さらに、プライマリプーリ50は、プライマリ可動シーブ摺動機構55を備える。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリシャフト51に設けられる。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させ、プライマリ固定シーブ52に接近またはプライマリ固定シーブ52から離隔させる。以下、図3を用いて、プライマリ可動シーブ摺動機構55について説明する。
【0068】
プライマリ可動シーブ摺動機構55は、油圧モータ550と、運動方向変換機構551とを備える。油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させるための駆動源である。運動方向変換機構551は、油圧モータ550の回転方向の力をプライマリシャフト51の軸線方向の力に変換する。
【0069】
本実施形態では、油圧モータ550としてインナーロータとの相対回転により生じたアウターロータの回転を駆動力とする構造のモータ、例えば羽根式油圧モータを適用できる。羽根式油圧モータは、アウターロータを構成するモータケース550b内に少なくとも二つの羽根を有する。これにより、前記羽根によってモータケース550b内に少なくとも二つの油室が形成される。前記二つの油室に作動油を流入させ、この作動油の油圧により各羽根を相対回転させることで、羽根式油圧モータは駆動力を発生する。なお、本実施形態はこれに限定されず、プライマリ可動シーブ摺動機構55は、油圧モータ550に代えて電動モータを備えてもよい。
【0070】
油圧モータ550は、モータシャフト550aと、モータケース550bと、軸受550cとを有する。モータシャフト550aは、油圧モータ550の回転軸であり、プライマリシャフト51と共に回転する。モータケース550bは、油圧モータ550を構成する要素を収容するケーシングである。軸受550cは、モータケース550bに設けられ、モータシャフト550aを回転可能に支持する。
【0071】
運動方向変換機構551は、例えば、アウターロータの回転力をその軸線方向の力に変換する多条ネジや滑りネジなどの運動ネジを適用できる。運動方向変換機構551は、図3に示すように、第1運動方向変換機構構成部551aと、第2運動方向変換機構構成部551bとにより構成される。第1運動方向変換機構構成部551aは、モータケース550bの外周面に設けられる。また、第2運動方向変換機構構成部551bは、プライマリ可動シーブ53の延設部の内周面にスプライン551cを介してスプライン嵌合される。
【0072】
第1運動方向変換機構構成部551aの外周面は、周方向のネジ部分が形成される。一方、第2運動方向変換機構構成部551bの内周面にも周方向のネジ部分が形成される。また、油圧モータ550は、モータシャフト550aがプライマリシャフト51に固定されるため、軸線方向に移動しない。これにより、運動方向変換機構551のモータケース550bが回転すると、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51の軸線方向に摺動する。
【0073】
例えば、モータケース550bが回転すると、この回転力は、運動方向変換機構551を介してプライマリ可動シーブ53を摺動させるための油圧モータ550の推力となる。ここで、推力に対する反力は軸受550cに作用する。しかしながら、軸受550cは、モータシャフト550aを介してプライマリシャフト51に固定されている。よって軸受550c及びモータケース550bは、前記反力の方向に移動しない。上記構成により、プライマリ可動シーブ53は油圧モータ550に対して相対的に移動する。つまり、プライマリ可動シーブ53はプライマリ固定シーブ52に対して相対的に移動する。次に、上述した油圧モータ550における油路について説明する。
【0074】
図4は、本実施形態に係る油圧モータを図3に示すX−X線から見た断面図である。図4に示すように、プライマリシャフト51には、油路51bと、油路51cとが形成される。油路51bは、各第1油室550dに開口し、第1油室550dに作動油を供給する、または各第1油室550dから作動油を排出する通路である。油路51cは、各第2油室550eに開口し、各第2油室550eに作動油を供給する、または各第2油室550eから作動油を排出する通路である。
【0075】
図5は、本実施形態のベルト式無段変速機における油圧回路構成を説明する模式図である。図6−1は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。図6−2は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1及び第2の油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。図6−3は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
【0076】
図5に示すように、油路51b及び油路51cは、変速比制御用切替バルブ56に接続される。また、変速比制御用切替バルブ56には、順にオイルポンプOP、レギュレータバルブ59、挟圧力調整バルブ58を介してオイルタンクOTから作動油が供給される。なお、オイルポンプOPとレギュレータバルブ59とは油路59aによって接続される。レギュレータバルブ59と挟圧力調整バルブ58とは油路58aによって接続される。挟圧力調整バルブ58と変速比制御用切替バルブ56とは油路56aによって接続される。
【0077】
オイルポンプOPは、オイルタンクOTから作動油を吸引し、油路59aを介してレギュレータバルブ59へ作動油を送る。レギュレータバルブ59は、油圧調整手段として機能し、油路58aに送り出す油圧を適正な範囲に調整する。ここで、前記適正な範囲とは、ベルト式無段変速機Aのプライマリ可動シーブ53を慴動させるのに必要な油圧の範囲である。
【0078】
レギュレータバルブ59から送り出された作動油は、油路58aを介して挟圧力調整バルブ58へ導入される。挟圧力調整バルブ58は、油圧調整手段として機能し、油路56aに送り出す油圧を、ECU15が要求した圧力に調整する。
【0079】
挟圧力調整バルブ58から送り出された作動油は、油路56aを介して変速比制御用切替バルブ56へ導入される。変速比制御用切替バルブ56は、複数の油路が形成され、バルブの位置を切り替えることにより、作動油の供給対象である第1油室550d、または第2油室550eの切り替えを行う。この切り替えは、シリンダの内部に配置された図6−1から図6−3に示すバネ56bの反発力とその内部に供給する空気や作動油等の流体の圧力との差分を調節することで行われる。前記流体の圧力の制御は、後述するECU15によって行われる。
【0080】
変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブの位置を制御する圧力であるバルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも小さく設定されると、図6−1に示すように、第1油室550dに作動油を供給する。これにより、油圧モータ550は正回転する。また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも大きく設定されると、図6−3に示すように、第2油室550eに作動油が供給される。これにより、油圧モータ550は逆回転する。
【0081】
上記構成により、油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に慴動させる。つまり、プライマリ可動シーブ53を、プライマリ固定シーブ52に対して接近、または遠離させる。これにより、プライマリ溝80aとベルト80との接触半径と、セカンダリ溝80bとベルト80との接触半径とが変化する。これにともなって変速比も変化する。
【0082】
具体的には、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して接近すると、変速比は小さくなる。つまり、ベルト式無段変速機Aから取り出される回転数は上昇し、ベルト式無段変速機Aから取り出されるトルクは減少する。一方、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して遠離すると、変速比は大きくなる。つまり、ベルト式無段変速機Aから取り出される回転数は減少し、ベルト式無段変速機Aから取り出されるトルクは上昇する。
【0083】
また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧をバネ56bの反発力とつり合うように設定し、切替弁を所定の位置に留めておくことにより、図6−3に示すように、第1油室550d及び第2油室550eに同圧の作動油を供給する。これにより油圧モータ550の回転が停止する。油圧モータ550の回転を停止させることにより、ベルト式無段変速機Aの変速比を固定できる。
【0084】
なお、図2に示すように、セカンダリプーリ60は、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65と、セカンダリ溝80bとを備える。上述したように、セカンダリプーリ60はプライマリプーリ50とほぼ同様の構成であり、セカンダリ固定シーブ62はプライマリ固定シーブ52と、セカンダリ可動シーブ63はプライマリ可動シーブ53と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65はプライマリ可動シーブ摺動機構55と、セカンダリ溝80bはプライマリ溝80aとそれぞれ対応する。次に、変速比制御装置1について説明する。
【0085】
図7は、本実施形態に係る無段変速機制御装置の構成を示す概念図である。ECU15は、図1に示すインジェクタ105、点火プラグ106、電子スロットル弁124、図5に示す変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59、その他にも内燃機関100の各制御対象に電気的に接続され、これらインジェクタ105、点火プラグ106、電子スロットル弁124、変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などの制御対象の動作を制御する。また、図2に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD04、図5に示すアクセル開度センサD03、その他にも内燃機関100の各検出手段類に電気的に接続され、これらの検出手段から各種の情報を取得する。なお。アクセル開度センサD03は、車両の加速の要求及び車両の加速の要求量を判定する手段である。
【0086】
図7に示すように、変速比制御装置1は、ECU15の中央演算部(Central Processing Unit)Epに組み込まれて構成されている。ECU15は、中央演算部Epと、記憶部Emと、入力ポートINp及び出力ポートOUTpと、入力インターフェースIFin及び出力インターフェースIFoutとから構成される。なお、ECU15とは別個に、本実施形態に係る変速比制御装置1を用意し、これをECU15に接続してもよい。
【0087】
変速比制御装置1は、第1目標回転速度演算手段としての通常目標回転数演算部2と、第2目標回転速度演算手段としての加速用目標回転数演算部3と、最終目標回転速度演算手段としての最終目標回転数演算部4と、変速比制御手段としての変速比制御部5と、情報取得部6と、比較判定部7とを含んで構成される。
【0088】
通常目標回転数演算部2は、プライマリシャフト51の回転数の候補である第1目標回転速度としての通常目標回転数NINnを求める。加速用目標回転数演算部3は、車両の加速が要求された場合に、プライマリシャフト51の回転数の候補である第2目標回転速度としての加速用目標回転数NINaを通常目標回転数演算部2とは異なる演算方法で求める。最終目標回転数演算部4は、最終的にプライマリシャフト51が目標とする最終目標回転速度としての最終目標回転数NINLINEを求める。
【0089】
なお、通常目標回転数演算部2は、車両10に対する運転者の加速の要求の有無に関わらず通常目標回転数NINnを求める。つまり、通常目標回転数演算部2は、車両10に対する運転者の加速の要求がない場合、及び車両10に対する運転者の加速の要求がある場合のいずれであっても、通常目標回転数NINnを求める。一方、加速用目標回転数演算部3は、車両の加速が要求された場合に、加速用目標回転数NINaを求める。
【0090】
変速比制御部5は、セカンダリシャフト61の回転数が、最終目標回転数NINLINEとなるようにベルト式無段変速機Aの変速比を制御する。情報取得部6は、図2に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、アクセル開度センサD03、車速センサD04などの検出手段が検出した結果、後述する記憶部Emに格納された情報、機関制御部8が有する情報、などを取得する。比較判定部7は、各検出手段から得た数値や記憶部Emに格納された数値を比較する。
【0091】
中央演算部Epには、上述の変速比制御装置1以外に、機関制御部8が含まれる。機関制御部8は、内燃機関100の運転制御を行う。中央演算部Epと、記憶部Emとは、バスBcとにより接続される。中央演算部Epと入力ポートINpとは、バスBaとにより接続される。中央演算部Epと出力ポートOUTpとは、バスBbとにより接続される。
【0092】
変速比制御装置1の情報取得部6は、機関制御部8が有する内燃機関100の運転制御データを取得し、これを利用する。また、変速比制御装置1は、この本実施形態に係るベルト式無段変速機Aの変速比を制御する手順を、機関制御部8があらかじめ備えている内燃機関100の運転制御ルーチンに割り込ませてもよい。
【0093】
入力ポートINpには、入力インターフェースIFinが接続されている。入力インターフェースIFinには、図2に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD04、図5に示すアクセル開度センサD03、その他各種検出手段が接続されている。これらの各種検出手段から出力される信号は、入力インターフェースIFin内のアナログ/デジタルコンバータADCやディジタル入力バッファDIBにより、中央演算部Epが利用できる信号に変換されて入力ポートINpへ送られる。これにより、中央演算部Epは、ベルト式無段変速機Aの変速比の制御や、内燃機関100の制御に必要な情報を取得できる。
【0094】
出力ポートOUTpには、出力インターフェースIFoutが接続されている。出力インターフェースIFoutには、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65、インジェクタ105、点火プラグ106、電子スロットル弁124、その他内燃機関100における制御対象が接続されている。出力インターフェースIFoutは、制御回路Ifouta、制御回路Ifoutbなどを備えており、中央演算部Epで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記検出手段からの出力信号に基づき、ECU15の中央演算部Epは、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65、インジェクタ105、点火プラグ106、電子スロットル弁124を制御する、つまり、ベルト式無段変速機Aの変速比及び内燃機関100の出力を制御する。換言すると、ECU15は、プライマリシャフト51へ入力する回転数と、セカンダリシャフト61から出力される回転数と、内燃機関100が出力するトルクとを制御する。
【0095】
記憶部Emには、ベルト式無段変速機Aの変速比を制御する手順を含むコンピュータプログラムや制御データマップが格納されている。記憶部Emは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
【0096】
上記コンピュータプログラムは、中央演算部Epへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、ベルト式無段変速機Aの変速比を制御する手順を実現できるものであってもよい。また、この変速比制御装置1は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、同等の機能を実現するものであってもよい。
【0097】
図8は、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aの変速比を制御する手順を示すフローチャートである。ステップST101において情報取得部6は、アクセル開度センサD03からアクセル開度PAPを取得する。次に、ステップST102において情報取得部6は、車速センサD04から車速Cvを取得する。なお、ステップST102をステップST101よりも先に行ってもよい。
【0098】
次にステップST103において通常目標回転数演算部2は、アクセル開度PAPと車速Cvとに基づいて第1目標トルクとしての通常目標トルクFORCEnを求める。以下に通常目標トルクFORCEnの算出方法を説明する。
【0099】
図9は、本実施形態に係る通常目標トルクを求めるためのマップである。図9に示すマップm01において、縦軸は通常目標トルクFORCEn、横軸は車速Cvを示す。マップm01は、各アクセル開度PAPにおける車速Cvと通常目標トルクFORCEnとの関係を記述したものである。なお、マップm01は、記憶部Emに格納されている。情報取得部6は、ECU15の記憶部Emからマップm01を取得する。次に、通常目標回転数演算部2は、情報取得部6が取得したマップm01に基づいて通常目標トルクFORCEnを求める。なお、本実施形態では、通常目標回転数演算部2はマップm01を用いて通常目標トルクFORCEnを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。通常目標回転数演算部2は、マップm01に相当する数式に基づいて通常目標トルクFORCEnを求めてもよい。
【0100】
次に、図8に示すステップST104において通常目標回転数演算部2は、通常目標出力POWERnを求める。通常目標回転数演算部2は、ステップST103で求めた通常目標トルクFORCEnとステップST102で情報取得部6が取得した車速Cvとの乗算により通常目標出力POWERnを求める。次に、ステップST105において通常目標回転数演算部2は、通常目標回転数NINnを求める。以下に通常目標回転数NINnの算出方法を説明する。
【0101】
図10は、本実施形態に係る通常目標回転数を求めるためのマップである。図10に示すマップm02において縦軸は通常目標回転数NINn、横軸は通常目標出力POWERnを示す。マップm02は、各通常目標出力POWERnに基づいて通常目標回転数NINnを記述したものである。ここで、マップm02は、内燃機関100から取り出されるトルクと、内燃機関100の機関回転数とに基づく燃費最適線によって導き出される。なお、燃費最適線は、最も燃費効率が良く機関を運転できるトルクと、機関回転数との関係を表すグラフである。
【0102】
なお、マップm02は、記憶部Emに格納されている。よって、情報取得部6は、記憶部Emからマップm02を取得する。次に、通常目標回転数演算部2は、情報取得部6が取得したマップm02に基づいて通常目標回転数NINnを求める。なお、本実施形態では、通常目標回転数演算部2はマップm02を用いて通常目標回転数NINnを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、通常目標回転数演算部2は、マップm02に相当する数式に基づいて通常目標回転数NINnを求めてもよい。
【0103】
次に、図8に示すステップST106において比較判定部7は、車両10の加速の要求の有無を判定する。なお、以下、車両10に対する運転者の加速の要求が有る場合を「加速要求あり」といい、車両10に対する運転者の加速の要求が無い場合を「加速要求なし」という。具体的には、記憶部Emに格納された所定値αを情報取得部6が取得し、ステップST101でアクセル開度センサD03から取得したアクセル開度PAPと所定値αとを比較する。なお、所定値αは、アクセル開度PAPがその値よりも大きいとき、加速要求ありと判定できる値である。なお、所定値αは、例えばアクセル開度が全開である場合を100%とするときの20%である。
【0104】
なお、本実施形態ではステップST106で用いるアクセル開度PAPとして、ステップST101で取得したアクセル開度PAPを用いたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップST106の直前に情報取得部6が再度アクセル開度PAPをアクセル開度センサD03から取得し、このアクセル開度PAPと所定値αとを比較してもよい。また、本実施形態ではアクセル開度PAPに基づいて加速要求の有無を判定したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、単位時間あたりのアクセル開度PAPの変化量、つまりアクセル開速度PAPvに基づいて加速要求の有無を判定してもよい。
【0105】
ステップST106で、アクセル開度PAPが所定値αよりも大きい、つまり加速要求ありと判定されると(ステップST106、Yes)、次に、ステップST107において加速用目標回転数演算部3は、第2目標トルクとしての加速用目標トルクFORCEaを求める。以下に加速用目標トルクFORCEaの演算方法を説明する。
【0106】
図11は、本実施形態に係る加速用目標トルクを算出するためのマップである。図11に示すマップm03において、縦軸は第2目標トルクとしての加速用目標トルクFORCEa、横軸は車速Cvを示す。マップm03は、各アクセル開度PAPと車速Cvとに基づいて加速用目標トルクFORCEaを記述したものである。なお、破線が通常目標トルクFORCEnを示し、実線が加速用目標トルクFORCEaを示す。図11に示すように、加速用目標回転数演算部3は、加速用目標トルクFORCEaを通常目標トルクFORCEnよりも高く設定する。
【0107】
次に、ステップST108において情報取得部6は、アクセル開度センサD03からアクセル開速度PAPvを取得する。なお、アクセル開速度PAPvは、単位時間あたりのアクセル開度の変化量である。次に、加速用目標回転数演算部3は、ステップST109として加速用目標回転数NINaを求める。以下に加速用目標回転数NINaの演算方法を説明する。
【0108】
図12は、本実施形態に係るアクセル開度の変化にともなう通常目標回転数と加速用目標回転数との変化を説明する図である。図12において、横軸は時間軸であり領域AR01から領域AR05までの5つの領域に分けて説明する。なお、領域AR01では、アクセル開度PAPが所定値α以下、つまり車両10の加速要求なしと判定される。領域AR02では、アクセルが車両10の運転者によって踏み込まれ、アクセル開度PAPが所定値αより大きい、つまり車両10に対する運転者の加速の要求が有ると判定される。
【0109】
領域AR03では、車両10の運転者はアクセルの踏み込みを所定値αを超えた状態で一定に保っている。領域AR04で、車両10の運転者は、車両10の車速Cvを微調節するためにアクセルの踏み込みを緩めている。領域AR05では、車両10の運転者は、アクセルの踏み込みを緩めた状態で一定に保っている。なお、ここで車両10の運転者はアクセルの踏み込みを緩めているが、これは車両10の減速判定には至らない。つまり、車両10の運転手は加速要求ありの範囲内でアクセルを緩めているものとする。
【0110】
アクセル開度PAPが領域AR02で所定値αを超えると、加速用目標回転数演算部3は、加速用目標回転数NINaを求める。ここで、加速用目標回転数演算部3は、アクセル開度PAP、アクセル開速度PAPv、車速Cvに基づいて加速用目標回転数NINaを求める。具体的には、加速用目標回転数演算部3は、加速要求時基本目標回転数NINLINE0を求める。加速要求時基本目標回転数NINLINE0は、加速要求ありと判定されたときの基本目標回転数であり、車速Cvに基づいて求められる。なお、加速要求時基本目標回転数NINLINE0は、車速Cvと加速要求時基本目標回転数NINLINE0との関係を記述したマップによって求められる。具体的には、前記マップをECU15の記憶部Emに格納し、情報取得部6が前記マップを記憶部Emから取得する。加速用目標回転数演算部3は、情報取得部6が取得した前記マップから加速要求時基本目標回転数NINLINE0を求める。
【0111】
前記マップにおいて、加速要求時基本目標回転数NINLINE0は車速Cvの増加にともなって増加する。なお、本実施形態では、加速要求時基本目標回転数NINLINE0を車速Cvと加速要求時基本目標回転数NINLINE0との関係を記述したマップを用いて求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、前記マップに相当する数式を用いて車速Cvから加速要求時基本目標回転数NINLINE0を求めてもよい。
【0112】
加えて、加速用目標回転数演算部3は、目標回転数補正量NLDPAPSTHを求める。目標回転数補正量NLDPAPSTHは、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、アクセル開速度PAPvに基づいて求められる。加速用目標回転数演算部3は、アクセル開速度PAPvと目標回転数補正量NLDPAPSTHとの関係を記述したマップから目標回転数補正量NLDPAPSTHを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から目標回転数補正量NLDPAPSTHを求めてもよい。なお、目標回転数補正量NLDPAPSTHは、アクセル開速度PAPvの増加にともなって増加する。
【0113】
加えて、加速用目標回転数演算部3は、目標回転数補正量NLPAPHを求める。目標回転数補正量NLPAPHは、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、車速Cvとアクセル開度PAPとに基づいて求められる。加速用目標回転数演算部3は、車速Cvとアクセル開度PAPと目標回転数補正量NLPAPHとの関係を記述したマップから目標回転数補正量NLPAPHを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から目標回転数補正量NLPAPHを求めてもよい。なお、目標回転数補正量NLPAPHは、車速Cv及びアクセル開度PAPの増加にともなって増加する。
【0114】
加えて、加速用目標回転数演算部3は、目標回転数補正変化量ΔNLPAPH+目標回転数変化量ΔNLSPDHを求める。目標回転数補正変化量ΔNLPAPHは、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、アクセル開度PAPの変化に基づいて求められる。なお、以下、単位時間あたりの変化量のことを勾配という。つまり、アクセル開度PAPの単位時間あたりの変化量は、アクセル開度PAPの勾配と同意である。
【0115】
目標回転数補正変化量ΔNLPAPHは、アクセル開度PAPの勾配に基づいて求められる目標回転数補正量の単位時間あたりの変化量である。加速用目標回転数演算部3は、アクセル開度PAPの勾配と目標回転数補正変化量ΔNLPAPHとの関係を記述したマップから目標回転数補正変化量ΔNLPAPHを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から目標回転数補正変化量ΔNLPAPHを求めてもよい。なお、目標回転数補正変化量ΔNLPAPHは、アクセル開度PAPの勾配の増加にともなって増加する。
【0116】
さらに、加速用目標回転数演算部3は、目標回転数変化量ΔNLSPDHを求める。目標回転数変化量ΔNLSPDHは、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、車速Cvの変化に基づいて求められる。目標回転数変化量ΔNLSPDHは、車速Cvの勾配に基づいて求められる目標回転数NINaの勾配である。加速用目標回転数演算部3は、車速Cvの勾配と目標回転数変化量ΔNLSPDHとの関係を記述したマップから目標回転数変化量ΔNLSPDHを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から目標回転数変化量ΔNLSPDHを求めてもよい。なお、目標回転数変化量ΔNLSPDHは、車速Cvの勾配の増加にともなって増加する。
【0117】
加速用目標回転数演算部3は、目標回転数補正変化量ΔNLPAPHと目標回転数変化量ΔNLSPDHとに基づいて目標回転数補正変化量ΔNLPAPH+目標回転数変化量ΔNLSPDHを求める。具体的には、加速用目標回転数演算部3は、例えば、目標回転数補正変化量ΔNLPAPHと目標回転数変化量ΔNLSPDHとを加算することにより目標回転数補正変化量ΔNLPAPH+目標回転数変化量ΔNLSPDHを求める。
【0118】
ここで、図12に示すように、アクセル開度PAPと車速Cvとの増加に対して目標回転数補正変化量ΔNLPAPH+目標回転数変化量ΔNLSPDHが増加するように加速用目標回転数NINaの勾配を設定する。これにより、プライマリシャフト51の目標回転数が、所定の勾配を有して増加する。プライマリシャフト51の回転数の上昇にともなって、クランクシャフト107の回転数も上昇する。つまり、プライマリシャフト51の回転数の上昇にともなって、内燃機関100の機関回転数も上昇する。よって、車両10の運転者がアクセルを踏み込んだ際に、内燃機関100の機関回転数が上昇し、車両10の運転者は車両10から加速感を得ることができる。
【0119】
加速用目標回転数演算部3は、上記の演算方法によって求めた、加速要求時基本目標回転数NINLINE0、目標回転数補正量NLDPAPSTH、目標回転数補正量NLPAPH、目標回転数補正変化量ΔNLPAPH+目標回転数変化量ΔNLSPDHとに基づいて、領域AR02、つまり車両10のアクセルが踏み込まれるときにおける加速用目標回転数NINaを求める。本実施形態では、例えば加速要求時基本目標回転数NINLINE0、目標回転数補正量NLDPAPSTH、目標回転数補正量NLPAPH、目標回転数補正変化量ΔNLPAPH+目標回転数変化量ΔNLSPDHとを全て加算して、これを領域AR02における加速用目標回転数NINaとする。次に、領域AR03、つまり車両10の運転者が、アクセルの踏み込みを所定値αを超えた状態で一定に保つときの加速用目標回転数NINaの演算方法を説明する。
【0120】
領域AR03において、加速用目標回転数演算部3は、目標回転数変化量ΔNLSPDHを求める。目標回転数変化量ΔNLSPDHは、上述のように、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、車速Cvの変化に基づいて求められる。加速用目標回転数演算部3は、目標回転数変化量ΔNLSPDHを、領域AR03における加速用目標回転数NINaの勾配とする。つまり、車両10の運転者が、アクセルの踏み込みを所定値αを超えた状態で一定に保つとき、目標回転数変化量ΔNLSPDHは車速Cvの変化に基づいて変化する。
【0121】
ここで、目標回転数変化量ΔNLSPDHは、上述したように車速Cvの増加にともなって増加するように勾配が設定される。これにより、車両10の運転者は、車速Cvの増加にともなって車両10から加速感を得ることができる。なお、領域AR04及び領域AR05においても、加速用目標回転数演算部3は、領域AR02及び領域AR03における加速用目標回転数NINaと同様に加速用目標回転数NINaを求める。
【0122】
上述の演算方法により、図8に示すステップST109において加速用目標回転数演算部3は、加速用目標回転数NINaを求める。次に、図8に示すステップST110において比較判定部7は、通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとを比較する。
【0123】
図13は、本実施形態に係るアクセル開度の減少が相対的に小さいときの最終目標回転数を示す図である。図14は、本実施形態に係るアクセル開度の変化が相対的に大きく実入力回転数と加速用目標回転数との偏差が比較的に大きいときの最終目標回転数を示す図である。図15は、本実施形態に係るアクセル開度の変化が相対的に大きく実入力回転数と加速用目標回転数との偏差が比較的に小さいときの最終目標回転数を示す図である。なお、図13から図15の太線は最終目標回転数NINLINEを示す。また、図14及び図15の破線は実入力回転数NINを示す。
【0124】
ここで、以下のステップST111からステップST116までは、図13に示す領域AR04及び領域AR05における最終目標回転数NINLINEを求める工程である。通常目標回転数NINnが加速用目標回転数NINa以上と判定されると(ステップST110、Yes)、ステップST111において最終目標回転数演算部4は、通常目標回転数勾配DNINnを求める。
【0125】
通常目標回転数勾配DNINnは、通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとの偏差とに基づく目標回転数の単位時間あたりの変化量である。最終目標回転数演算部4は、DNINnを、通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとの偏差とに基づいて求める。最終目標回転数演算部4は、例えば通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとの偏差と、通常目標回転数勾配DNINnとの関係を記述したマップから通常目標回転数勾配DNINnを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から通常目標回転数勾配DNINnを求めてもよい。なお、通常目標回転数勾配DNINnは、通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとの偏差の増加にともなって増加する。
【0126】
ステップST112において最終目標回転数演算部4は、加速用目標回転数勾配DNINaを求める。加速用目標回転数勾配DNINaは、加速用目標回転数NINaの単位時間あたりの変化量である。最終目標回転数演算部4は、加速用目標回転数NINaの単位時間あたりの変化量を加速用目標回転数勾配DNINaとする。なお、本実施形態では、ステップST111よりも先にステップST112を行ってもよい。
【0127】
次に、ステップST113において比較判定部7は、通常目標回転数勾配DNINnと加速用目標回転数勾配DNINaとを比較する。通常目標回転数勾配DNINnが加速用目標回転数勾配DNINa以上である場合(ステップST113、Yes)、ステップST114において最終目標回転数演算部4は、最終目標回転数勾配DNINに通常目標回転数勾配DNINnを代入する。また、加速用目標回転数勾配DNINaが通常目標回転数勾配DNINnより大きい場合(ステップST113、No)、ステップST115において最終目標回転数演算部4は、最終目標回転数勾配DNINに加速用目標回転数勾配DNINaを代入する。つまり、最終目標回転数演算部4は、通常目標回転数勾配DNINnと加速用目標回転数勾配DNINaとのうち、より大きい方の値を最終目標回転数勾配DNINに代入する。
【0128】
次に、ステップST116において最終目標回転数演算部4は、前回の最終目標回転数NINLINE(i−1)を、最終目標回転数勾配DNINで増加させ、この結果を今回の最終目標回転数NINLINEとする。次に、ステップST117において変速比制御部5は、プライマリ可動シーブ摺動機構55及びセカンダリ可動シーブ摺動機構65を制御し、プライマリシャフト51の回転数が最終目標回転数NINLINEとなるようにベルト式無段変速機Aの変速比を変更する。
【0129】
次に、ステップST118において機関制御部8は、セカンダリシャフト61のトルクが、加速用目標トルクFORCEaとなるように内燃機関100の出力を制御する。具体的には、機関制御部8は、図1に示すインジェクタ105、点火プラグ106、電子スロットル弁124を制御して内燃機関100から取り出される出力を制御する。
【0130】
なお、本実施形態では、変速比制御装置1はECU15に含まれて構成され、内燃機関100を協調制御するが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップST107を省略し、プライマリシャフト51の回転数のみを制御してもよい。これにより、車両10の加速中にプライマリシャフト51の回転数が低下し、運転者に違和感を与えるおそれを抑制できる。
【0131】
変速比制御装置1は、上記ステップST101からステップST118までの各工程を終えると、再度ステップST101から各工程を行う。
【0132】
以上、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aの最終目標回転数演算部は、車両の加速の要求量が減少したときに、通常目標回転数が加速用目標回転数よりも大きい場合、通常目標回転数と加速用目標回転数との偏差に基づいて求められる回転速度の勾配と、加速用目標回転数の勾配と、を比較し、より大きい勾配を有する回転速度を最終目標回転数として設定する。
【0133】
上記構成により、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、加速要求ありと判定中に、減速要求に至らない範囲でアクセルが戻されても、入力軸としてのプライマリシャフト51の目標回転数は減少しない。つまり、プライマリシャフト51とロックアップされたクランクシャフト107の回転数も減少しない。よって、内燃機関100の機関回転数も減少しない。これにより、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、ベルト式無段変速機Aを搭載する車両10を操作する運転者に対して加速中に与える違和感を抑制できる。
【0134】
ここで、ステップST106において、否定的な判定がなされたときの制御手順を説明する。なお、ステップST106において、否定的な判定がなされたときとは、図13から図15に示す領域AR01を示す。ステップST106において、比較判定部7によりアクセル開度PAPが所定値α未満であると判定されると(ステップST106、No)、つまり加速要求がないと判定されると、ステップST124において最終目標回転数演算部4は、通常目標回転数NINnを最終目標回転数NINLINEとして設定する。
【0135】
ここで、ステップST110において、否定的な判定がなされたときの制御手順を説明する。なお、ステップST110において、否定的な判定がなされるときとは、図14及び図15の領域AR04で通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとが交わってから以降の領域を示す。比較判定部7により加速用目標回転数NINaが通常目標回転数NINnよりも大きいと判定されると(ステップST110、No)、ステップST119において情報取得部6は、プライマリシャフト回転数センサD01から実入力回転数NINを取得する。実入力回転数NINは、プライマリシャフト51の実際の回転数である。
【0136】
次に、ステップST120において比較判定部7は、実入力回転数NINと加速用目標回転数NINaとの偏差と、所定値βとを比較する。ここで、図14の破線は実入力回転数NINを示す。通常、プライマリシャフト51の実入力回転数は、プライマリシャフト51の最終目標回転数NINLINEの変化に追いつこうと変化する。つまり、実入力回転数NINが最終目標回転数NINLINEと等しくなるのにタイムラグが発生する。ステップST120において比較判定部7は、この実入力回転数NINと加速用目標回転数NINaとの偏差と所定値βとを比較する。なお、所定値βは、実入力回転数NINと加速用目標回転数NINaとの偏差が所定値β以上であった場合と、所定値β未満であった場合とで最終目標回転数NINLINEの演算方法を異ならせる必要があると判断できる閾値である。
【0137】
実入力回転数NINと加速用目標回転数NINaとの偏差が所定値β以上の場合(ステップST120、Yes)、ステップST121において最終目標回転数演算部4は、最終目標回転数勾配DNINを求める。ここで、最終目標回転数勾配DNINは、実入力回転数NINと加速用目標回転数NINaとの偏差に基づいて求める。最終目標回転数演算部4は、例えば、実入力回転数NINと加速用目標回転数NINaとの偏差と、最終目標回転数勾配DNINとの関係を記述したマップから最終目標回転数勾配DNINを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から最終目標回転数勾配DNINを求めてもよい。
【0138】
次に、ステップST122において最終目標回転数演算部4は、前回の最終目標回転数NINLINE(i−1)を、最終目標回転数勾配DNINで増加させ、この結果を今回の最終目標回転数NINLINEとする。次に、変速比制御部5は、プライマリシャフト51の目標回転数を最終目標回転数NINLINEとなるようにステップST117を実行する。次に、機関制御部8は、セカンダリシャフト61のトルクが加速用目標トルクFORCEaとなるように、ステップST118を実行する。
【0139】
以上、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aの最終目標回転数演算部は、車両の加速の要求量が減少したときに、通常目標回転数が加速用目標回転数よりも小さく、かつ車両の減速が要求されない場合、プライマリシャフト51の回転速度と加速用目標回転数とに基づいて最終目標回転数を求める。
【0140】
また、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aの最終目標回転数演算部は、プライマリシャフト51の実回転速度と加速用目標回転数との偏差が所定値以上の場合、プライマリシャフト51の実回転速度と加速用目標回転数との偏差に基づいて最終目標回転数の勾配を求める。
【0141】
上記構成により、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、加速要求ありと判定中に、減速要求に至らない範囲でアクセルが戻されても、プライマリシャフト51の目標回転数は急激に減少しない。つまり、プライマリシャフト51とロックアップされたクランクシャフト107の回転数も急激に減少しない。よって、内燃機関100の機関回転数も急激には減少しない。これにより、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、ベルト式無段変速機Aを搭載する車両10を操作する運転者に対して加速中に与える違和感を抑制できる。
【0142】
ここで、ステップST120において、否定的な判定がなされたときの制御手順を説明する。なお、ステップST120において、否定的な判定がなされるときとは、図15の領域AR04で通常目標回転数NINnと加速用目標回転数NINaとが交わってから以降の領域を示す。ステップST120において、比較判定部7により実入力回転数NINと加速用目標回転数NINaとの偏差が所定値β未満の場合(ステップST120、No)、ステップST123において最終目標回転数演算部4は、加速用目標回転数勾配DNINaを最終目標回転数NINLINEとする。
【0143】
次に、変速比制御部5は、プライマリシャフト51の目標回転数を最終目標回転数NINLINEとなるようにステップST117を実行する。次に、機関制御部8は、セカンダリシャフト61のトルクが加速用目標トルクFORCEaとなるように、ステップST118を実行する。
【0144】
以上、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aの最終目標回転数演算部は、プライマリシャフト51の回転速度と加速用目標回転数との偏差が所定値未満の場合、加速用目標回転数の勾配を最終目標回転数の勾配として設定する。
【0145】
上記構成により、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、加速要求ありと判定中に、減速要求に至らない範囲でアクセルが戻されても、プライマリシャフト51の目標回転数は急激に減少しない。つまり、プライマリシャフト51とロックアップされたクランクシャフト107の回転数も急激に減少しない。よって、内燃機関100の機関回転数も急激には減少しない。これにより、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、ベルト式無段変速機Aを搭載する車両10を操作する運転者に対して加速中に与える違和感を抑制できる。
【0146】
以上、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、内燃機関100からの回転が入力される入力軸としてのプライマリシャフト51の回転速度の候補として通常目標回転数を車両の加速の要求の有無に関わらず求める第1目標回転数演算手段としての通常目標回転数演算部2と、プライマリシャフト51の回転速度の候補として加速用目標回転数を通常目標回転数演算部2とは異なる演算方法を用いて車両の加速が要求された場合に求める第2目標回転数演算手段としての加速用目標回転数演算部3と、通常目標回転数と加速用目標回転数とに基づいてプライマリシャフト51の最終的な目標回転速度である最終目標回転数を設定する最終目標回転数演算手段としての最終目標回転数演算部4と、プライマリシャフト51の回転速度を最終目標回転数になるようにプライマリシャフト51の回転数と出力軸としてのセカンダリシャフト61の回転数との比である変速比を制御する変速比制御部5と、を備える。
【0147】
上記構成により、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、それぞれ異なる演算方法によって求められる通常目標回転数と加速用目標回転数とに基づいて最終目標回転数が設定される。これにより、最終目標回転数演算部4は、車両10に対する運転者の加速の要求量や車速Cvなどの車両の走行状況によって、通常目標回転数と加速用目標回転速度との2つのパラメータに基づいてより適した最終目標回転数を設定できる。よって、本実施形態に係るベルト式無段変速機Aは、加速中の運転者の違和感を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上のように、本発明に係る変速比制御装置及び無段変速機は、無段変速機の変速比を制御するのに有用であり、特に、加速中の運転者の違和感を抑制できる変速比の制御に適している。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本実施形態に係る内燃機関の模式的断面図である。
【図2】本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。
【図3】本実施形態に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリ側の構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る油圧モータを図3に示すX−X線から見た断面図である。
【図5】本実施形態のベルト式無段変速機における油圧回路構成を説明する模式図である。
【図6−1】本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
【図6−2】本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1及び第2の油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
【図6−3】本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
【図7】本実施形態に係る無段変速機制御装置の構成を示す概念図である。
【図8】本実施形態に係るベルト式無段変速機Aの変速比を制御する手順を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態に係る通常目標トルクを求めるためのマップである。
【図10】本実施形態に係る通常目標回転数を求めるためのマップである。
【図11】本実施形態に係る加速用目標トルクを算出するためのマップである。
【図12】本実施形態に係るアクセル開度の変化にともなう通常目標回転数と加速用目標回転数との変化を説明する図である。
【図13】本実施形態に係るアクセル開度の減少が相対的に小さいときの最終目標回転数を示す図である。
【図14】本実施形態に係るアクセル開度の変化が相対的に大きく実入力回転数と加速用目標回転数との偏差が比較的に大きいときの最終目標回転数を示す図である。
【図15】本実施形態に係るアクセル開度の変化が相対的に大きく実入力回転数と加速用目標回転数との偏差が比較的に小さいときの最終目標回転数を示す図である。
【符号の説明】
【0150】
A ベルト式無段変速機
1 変速比制御装置
2 通常目標回転数演算部
3 加速用目標回転数演算部
4 最終目標回転数演算部
5 変速比制御部
6 情報取得部
7 比較判定部
8 機関制御部
10 車両
11 車輪
12 ドライブシャフト
13 ドライブシャフト
15 ECU
100 内燃機関
101 筒内燃焼空間
105 インジェクタ
106 点火プラグ
107 クランクシャフト
120 ピストン
121 シリンダ
122 ドライブプレート
124 電子スロットル弁
20 トランスアクスル
21 トランスアクスルハウジング
22 トランスアクスルケース
23 トランスアクスルリヤカバー
26 オイルポンプ
27 ロータ
28 ハブ
29 オイルポンプケーシング
30 トルクコンバータ
31 ポンプインペラ
32 タービンライナ
33 ステータ
34 ロックアップクラッチ
35 ダンパ装置
36 中空軸
37 フロントカバー
38 インプットシャフト
39 ワンウェイクラッチ
40 前後進切換機構
41 遊星歯車機構
42 フォワードクラッチ
43 リバースブレーキ
44 サンギア
45 プラネタリピニオン
46 リングギア
48 キャリア
50 プライマリプーリ
51 プライマリシャフト
52 プライマリ固定シーブ
53 プライマリ可動シーブ
54 スプライン
55 プライマリ可動シーブ摺動機構
550 油圧モータ
551 運動方向変換機構
56 変速比制御用切替バルブ
58 挟圧力調整バルブ
59 レギュレータバルブ
60 セカンダリプーリ
61 セカンダリシャフト
62 セカンダリ固定シーブ
63 セカンダリ可動シーブ
65 セカンダリ可動シーブ摺動機構
66 パーキングギア
70 差動装置
71 デフケース
72 ピニオンシャフト
73、74 ピニオン
75、76 サイドギア
77、78 軸受
79 リングギア
80 ベルト
81〜88 軸受
90 減速装置
91 インターミディエイトシャフト
92 カウンタドライブピニオン
93 カウンタドリブンギア
94 ファイナルドライブピニオン
Em 記憶部
Ep 中央演算部
Cv 車速
D01 プライマリシャフト回転数センサ
D02 セカンダリシャフト回転数センサ
D03 アクセル開度センサ
D04 車速センサ
DNIN 最終目標回転数勾配
DNINa 加速用目標回転数勾配
DNINn 通常目標回転数勾配
FORCEa 加速用目標トルク
FORCEn 通常目標トルク
NIN 実入力回転数
NINa 加速用目標回転数
NINLINE 最終目標回転数
NINLINE0 加速要求時基本目標回転数
NINn 通常目標回転数
NLDPAPSTH 目標回転数補正量
NLPAPH 目標回転数補正量
ΔNLPAPH 目標回転数補正変化量
ΔNLSPDH 目標回転数変化量
OP オイルポンプ
OT オイルタンク
PAP アクセル開度
PAPv アクセル開速度
POWERn 通常目標出力
SL シリンダ軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力発生手段からの回転が入力される入力軸の回転速度の候補としての第1目標回転速度を車両の加速の要求の有無に関わらず求める第1目標回転速度演算手段と、
前記入力軸の回転速度の候補としての第2目標回転速度を前記第1目標回転速度演算手段とは異なる演算方法を用いて、前記車両の加速が要求された場合に求める第2目標回転速度演算手段と、
前記第1目標回転速度と前記第2目標回転速度とに基づいて前記入力軸の最終的な目標回転速度である最終目標回転速度を設定する最終目標回転速度演算手段と、
前記入力軸の回転速度を前記最終目標回転速度になるように前記入力軸の回転速度と前記入力軸からの前記回転が伝達される出力軸の回転速度との比である変速比を制御する変速比制御手段と、
を備えることを特徴とする変速比制御装置。
【請求項2】
前記第1目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求の有無に関わらず前記出力軸のトルクの候補である第1目標トルクと、燃費最適線とから前記第1目標回転速度を求めることを特徴とする請求項1に記載の変速比制御装置。
【請求項3】
前記車両の加速が要求された場合、前記変速比制御手段は、前記出力軸のトルクが前記第1目標トルクよりも高いトルクである第2目標トルクとなるように、前記変速比と、前記入力軸に入力されるトルクと、のうち少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項2に記載の変速比制御装置。
【請求項4】
前記第2目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求前よりも高く前記第2目標回転速度を設定すると共に、前記第2目標回転速度を単位時間あたり所定の変化量で増加させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の変速比制御装置。
【請求項5】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求量が減少したときに、前記第1目標回転速度が前記第2目標回転速度よりも大きい場合、前記第1目標回転速度と前記第2目標回転速度との偏差に基づいて求められる回転速度の単位時間あたりの変化量と、前記第2目標回転速度の単位時間あたりの変化量と、を比較し、より大きい単位時間あたりの変化量を有する回転速度を前記最終目標回転速度として設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の変速比制御装置。
【請求項6】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求量が減少したときに、前記第1目標回転速度が前記第2目標回転速度よりも小さく、かつ前記車両の減速が要求されない場合、前記入力軸の回転速度と前記第2目標回転速度とに基づいて前記最終目標回転速度を求めることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の変速比制御装置。
【請求項7】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差が所定値以上の場合、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差に基づいて前記最終目標回転速度の単位時間あたりの変化量を求めることを特徴とする請求項6に記載の変速比制御装置。
【請求項8】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差が所定値未満の場合、前記第2目標回転速度の単位時間あたりの変化量を前記最終目標回転速度の単位時間あたりの変化量として設定することを特徴とする請求項6に記載の変速比制御装置。
【請求項9】
前記第2目標回転速度演算手段は、前記車両の速度と、前記車両の速度変化と、前記車両のアクセル開度と、前記車両のアクセル開速度と、のうち少なくとも1つに基づいて前記第2目標回転速度を求めることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の変速比制御装置。
【請求項10】
動力発生手段からの回転が入力される入力軸と、
前記入力軸からの前記回転が伝達される出力軸と、
前記入力軸の回転速度の候補としての第1目標回転速度を車両の加速の要求の有無に関わらず求める第1目標回転速度演算手段と、
前記入力軸の回転速度の候補としての第2目標回転速度を前記第1目標回転速度演算手段とは異なる演算方法を用いて前記車両の加速が要求された場合に求める第2目標回転速度演算手段と、
前記第1目標回転速度と前記第2目標回転速度とに基づいて前記入力軸の最終的な目標回転速度である最終目標回転速度を設定する最終目標回転速度演算手段と、
前記入力軸の回転速度を前記最終目標回転速度になるように前記入力軸の回転速度と前記出力軸の回転速度との比である変速比を制御する変速比制御手段と、
を備えることを特徴とする無段変速機。
【請求項11】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求量が減少したときに、前記第1目標回転速度が前記第2目標回転速度よりも大きい場合、前記第1目標回転速度と前記第2目標回転速度との偏差に基づいて求められる回転速度の単位時間あたりの変化量と、前記第2目標回転速度の単位時間あたりの変化量と、を比較し、より大きい単位時間あたりの変化量を有する回転速度を前記最終目標回転速度として設定することを特徴とする請求項10に記載の無段変速機。
【請求項12】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記車両の加速の要求量が減少したときに、前記第1目標回転速度が前記第2目標回転速度よりも小さく、かつ前記車両の減速が要求されない場合、前記入力軸の回転速度と前記第2目標回転速度とに基づいて前記最終目標回転速度を求めることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の無段変速機。
【請求項13】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差が所定値以上の場合、前記入力軸の実回転速度と前記第2目標回転速度との偏差に基づいて前記最終目標回転速度の単位時間あたりの変化量を求めることを特徴とする請求項12に記載の無段変速機。
【請求項14】
前記最終目標回転速度演算手段は、前記入力軸の回転速度と前記第2目標回転速度との偏差が所定値未満の場合、前記第2目標回転速度の単位時間あたりの変化量を前記最終目標回転速度の単位時間あたりの変化量として設定することを特徴とする請求項12に記載の無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−103224(P2009−103224A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275624(P2007−275624)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】