説明

外部カチオン電荷を含み、中断された(interrupted)アルキレン鎖を含むチオール/ジスルフィド蛍光着色剤を含有する染色用組成物、および前記着色剤を使用してケラチン物質を明色化する方法

本発明は、外部カチオン電荷及び中断されたアルキレン鎖を含むピリジニウムチオール/ジスルフィド蛍光着色剤を含む染色用組成物、および前記組成物を使用する、ケラチン物質、特にケラチン繊維、特に髪などのヒトのケラチン繊維の、明色化効果を有する着色方法に関する。本発明は、新規のチオール/ジスルフィド蛍光着色剤、およびケラチン物質を明色化するためのその使用にも関する。前記組成物は、暗色ケラチン繊維に対して特に落ちにくく目に見える明色化効果をもたらすことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部カチオン電荷及び中断された(interrupted)アルキレン鎖を含むピリジニウムチオール/ジスルフィド蛍光染料を使用するケラチン繊維の染色に関する。
【背景技術】
【0002】
直接染色によりケラチン繊維、特にヒトのケラチン繊維を染色することは公知の習慣である。直接染色に従来使用されている方法は、ケラチン繊維に対して親和性を有する着色された分子または着色性分子である直接染料をケラチン繊維に塗布する段階と、それらを拡散させておく段階と、次いでその繊維をリンスする段階とを含む。
【0003】
従来使用されている直接染料は、例えば、ニトロベンゼン種の染料、アントラキノン染料、ニトロピリジン染料、またはアゾ種、キサンテン種、アクリジン種、アジン種もしくはトリアリールメタン種の染料である。
【0004】
直接染料の使用の結果生じる着色は一時的着色または半永久的着色であるが、その理由は、直接染料をケラチン繊維に結合させる相互作用の性質ならびにその繊維の表面および/または芯からの該染料の脱離が、該染料の弱い染色力ならびに洗浄作業に対する耐性不良または耐汗性不良の原因となるからである。
【0005】
さらに、従来の直接染料を使用するケラチン繊維の着色では、ケラチン繊維を有意に明色化することはできない。
【0006】
ケラチン繊維、より詳細には、暗色ケラチン繊維の色を、より明るい色合いに、場合によりその色合いを変えることにより明色化することは、重要な要望となっている。
【0007】
従来、より明るい着色を得るためには、化学的脱色法が使用される。この方法は、通常アルカリ媒体中で、通常過酸化水素からなる強酸化システムを、できる限り過酸基塩と組み合わせて使用して、ケラチン繊維、特に、髪などのケラチン物質を処理する段階を含む。
【0008】
この脱色システムは、ケラチン物質、特にケラチン繊維、特に髪などのヒトのケラチン繊維を損傷する欠点およびそれらの化粧料特性に悪影響を及ぼす欠点を有する。実際、この繊維は、粗くなり、解くのがより困難になり、より脆弱になる傾向を有する。最後に、酸化剤を使用してケラチン繊維を明色化または脱色することと、特に整髪処理の際の、前記繊維の形状を変える処理とは両立しない。
【0009】
別の明色化技法は、蛍光直接染料を暗色の髪に塗布する段階を含む。特に文献FR2830189およびWO2004/091473に記載のこの技法によって、その処理中ケラチン繊維の質を保持することは可能となるが、使用される蛍光染料はシャンプー作業に対して十分な耐性を示さない。
【0010】
直接染料の堅牢度を高めるために、共有結合により直接染料を髪に固定することは公知の習慣である。例えば、反応基を含む染料とケラチン繊維中の非常に多数のシスチンまたはシステイン残基とを反応させることは公知の習慣であり、例えば、Journal of the Society of Dyers and Colourists、GuiseおよびStapleton、91、259〜264頁(1975)、Journal of Cosmetic Chemistry、42、1〜17頁(1991)、CA2024509を参照されたい。
【0011】
さらに、髪にグラフトされる分子中に含有されるチオール官能基(複数も)を保護してからそれらを前記髪に塗布することは公知の習慣である(WO99/51194)。しかしながら、この塗布は、髪を染色または明色化するための蛍光染料の使用について言及していない。
【0012】
ケラチン繊維を染色するための公知の他のジスルフィド染料は、アミノチオフェノール誘導体のジスルフィド誘導体である。このような染料は、例えば、特許FR1156407に記載されている。これらの染料は、比較的温和な条件下で、若干減少した媒体の存在下でまたは髪の前処理剤が低減した後に使用できる。しかしながらこれらの染料は、塗付中に色の変化をもたらす恐れがある。
【0013】
最後に、文献WO2005/097051には、ケラチン繊維を直接染色するためのアザイミダゾリウムジスルフィド染料が記載されている。
【特許文献1】FR2830189
【特許文献2】WO2004/091473
【特許文献3】CA2024509
【特許文献4】WO99/51194
【特許文献5】FR1156407
【特許文献6】WO2005/097051
【特許文献7】DE19951134
【特許文献8】FR2586913
【非特許文献1】Journal of the Society of Dyers and Colourists、GuiseおよびStapleton、91、259〜264頁(1975)
【非特許文献2】Journal of Cosmetic Chemistry、42、1〜17頁(1991)
【非特許文献3】Massonにより出版されている、Charles Zviakによる書籍「Science des traitements capillaires」[Hair treatment sciences]、1988、215〜278頁
【非特許文献4】「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Willey & Sons publisher、NY、1981、193〜217頁
【非特許文献5】「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005、5章
【非特許文献6】「Thiols and organic Sulfides」、「Thiocyanates and Isothiocyanates,organic」、Ullmann’s Encyclopaedia、Wiley-VCH、Weinheim、2005
【非特許文献7】Advanced Organic Chemistry、J.March、第4版、John Willey & Sons、1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、既存の脱色方法の欠点を有さない、ケラチン物質、特にヒトのケラチン繊維、特に髪を染色するための新規システムを提供することである。特に、本発明の目的の1つは、継続的なシャンプー作業に対する耐性があり、ケラチン繊維を損傷せず、ケラチン繊維の化粧料特性に悪影響を及ぼさない、特に、生来または人工的に暗色のケラチン繊維に対して明色化効果を得るための直接染色システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、本発明を使用して達成され、その主題は、ケラチン物質、特にケラチン繊維、特に髪などのヒトのケラチン繊維、より詳細には、暗色の髪を染色する方法であって、以下の式(I)及び(II)の染料
【0016】
【化1】

【0017】
[式(I)において、
およびR’は、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル基、アミノ基、(C〜C)アルキルアミノ基もしくは(C〜C)ジアルキルアミノ基で置換されていてもよいアリール(C〜C)アルキル基または(C〜C)アルキル基を表し、前記アルキル基は、それらの基を結合している窒素原子と共に、窒素と異なっても同一であってもよい別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む複素環を形成してもよく、好ましくはRおよびR’は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい(C〜C)アルキル基、またはベンジル基を表し、
およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよいアリール(C〜C)アルキル基もしくは(C〜C)アルキル基を表し、特に、RおよびR’は、水素原子または(C〜C)アルキル基またはベンジル基を表し、
、R’、R”、R”’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)ジアルキルアミノまたはトリフルオロメチルの各基、アシルアミノ、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルキルカルボニルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルカルボニルアミノまたは(C〜C)アルキルスルホニルアミノの各基、または(C〜C)アルキル基を表し、
、R’、R”、およびR”’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、(C〜C)ジアルキルアミノまたは(C〜C)アルキルカルボニルアミノの各基、アシルアミノまたは(C〜C)アルキルスルホニルアミノの各基または(C〜C)アルキル基を表し、特に、R、R’、R”、およびR”’は、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、
そうでなければ、2つの隣接した炭素原子に結合している2つの基RおよびR’、R”およびR”’、RおよびR’、R”およびR”’は、一緒になってベンゾ環もしくはインデノ環または縮合複素環式アルキル基もしくは縮合ヘテロアリール基を形成し;そのベンゾ環、インデノ環、複素環式アルキル環もしくはヘテロアリール環は、ハロゲン原子、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)ジアルキルアミノ、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、アシルアミノ、C〜Cアルコキシ、C〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、(C〜C)アルキルカルボニルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニルまたは(C〜C)アルキルカルボニルアミノの各基、アシルアミノ、カルバモイルもしくは(C〜C)アルキルスルホニルアミノの各基、アミノスルホニル基、または(C〜C12)アルコキシ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、アミノ、(C〜C)アルキルアミノおよび(C〜C)ジアルキルアミノから選択される基で置換されていてもよい(C〜C16)アルキル基で置換されていてもよく、そうでなければそのアミノ基の窒素原子に結合している2つのアルキル基が、その窒素原子と同一かもしくは異なる別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む複素環を形成してもよく、特に、RおよびR’、R”およびR”’は、一緒になってベンゾ基を形成してもよく、
、R’、R”およびR”’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、特に水素原子を表し、
、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルコキシ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシルまたは(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノの各基を表し、前記アルキル基は、それらの基を結合している窒素原子と共に、窒素と異なっても同一であってもよい別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む複素環を形成してもよく、特に、R、R、RおよびRは、水素原子または(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノ基、好ましくはR、R、R’およびR’は水素原子を表し、ならびにR、R、R’またはR’は水素原子または(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノ基を表し、nまたはn’が1を超える場合には、(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノ基は特に、TまたはT結合に関してα位置に存在し、特に、R、R、R’およびR’は水素原子またはアミノ基を表し、そしてRおよびRの基の一つのみおよび/またはR’およびR’の基の一つのみが、アミノ基のみを表してもよく、nまたはn’が1を超える場合には、前記アミノ基は好ましくはTおよび/またはT結合に関してα位置に存在しており、より特には、R、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は水素原子であり、
およびTは、同一でも異なっていてもよく、−SO−、−O−、−S−、−N(R)−、−CO−(Rは、水素原子、C〜Cアルキル基もしくはC〜Cヒドロキシアルキル基またはアリール(C〜C)アルキルを表す)から選択される基の組合せを表し、特に、−C(O)−N(R)−および−N(R)−C(O)−から選択される基を表し、
m、m’、nおよびn’は、同一でも異なっていてもよく、0〜6の両端を含めた整数を表し、m+nおよびm’+n’は、同一でも異なっていてもよく、1〜10の両端を含めた整数を表し、特に、m+n=m’+n’の合計は4〜6の両端を含めた整数であり、
M’は、アニオン性対イオンを表し、
Yは、i)水素原子、ii)アルカリ金属、iii)アルカリ土類金属、iv)アンモニウム基:Nαβγδもしくはホスホニウム基:Pαβγδ[Rα、Rβ、RγおよびRδは、同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは(C〜C)アルキル基を表す]、またはv)チオール官能基保護基を表し、
式(I)または(II)の化合物が他のカチオン性部分を含有する場合、1つまたは複数のアニオン性対イオンと結合するため、式(I)または(II)は電気的中性を達成できることが理解される]
その有機酸塩または鉱酸塩、それらの光学異性体および幾何異性体、ならびに水和物などのその溶媒和物から選択される、外部カチオン電荷を含む少なくとも1つのピリジニウムチオール蛍光染料を化粧料として適切な媒体中に含む染料組成物をそのケラチン物質に塗付する段階を含む方法である。
【0018】
本発明の別の主題は、上記で定義した式(I)または(II)の染料から選択される少なくとも1つの蛍光染料を適切な化粧料用媒体中に含み、場合により還元剤も含む染料組成物である。
【0019】
本発明の主題は、上記で定義した式(I)または(II)の新規蛍光染料でもある。
【0020】
本発明による染色方法によって、暗色ケラチン物質、特にヒトの暗色ケラチン繊維、特に暗色髪を明色化することが可能になる。
【0021】
さらに、本発明の方法によって、ケラチン物質、特にヒトのケラチン繊維、特に髪の着色を、シャンプー作業、日常的侵襲(太陽光、発汗)、および髪の他の処理に関して長く続く前記物質を損傷せずに達成することが可能になる。本発明の方法によって、ケラチン繊維、特に暗色ケラチン繊維、より詳細には暗色髪などのケラチン物質の明色化を達成することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明では、用語「暗色ケラチン物質」は、C.I.E.L*a*b*システムで測定されるL*の明度が、L*=0が黒色に等しくL*=100が白色に等しいことも考慮して、45以下、好ましくは40以下を示す物質を意味することが意図される。
【0023】
本発明では、表現「生来または人工的に暗色の髪」は、色調の高さが6以下(ダークブロンド色)、好ましくは4以下(赤茶色)である髪を意味することが意図される。
【0024】
髪の明色化は、式(I)または(II)の化合物を塗付する前または塗付した後の「色調の高さ」の変化量によって評価される。
【0025】
「色調」の概念は自然な色合いの分類に基づき、1つの色調により、各色合いがそのすぐ次のまたはそのすぐ前の色合いから区別される。この定義および自然な色合いの分類は、ヘアスタイリングの専門家に周知であり、Massonにより出版されている、Charles Zviakによる書籍「Science des traitements capillaires」[Hair treatment sciences]、1988、215〜278頁に公開されている。
【0026】
色調の高さは1(黒色)〜10(非常に明るいブロンド色)の範囲にあり、一単位は1つの色調に相当し、その数が高ければ高いほどその色合いはより薄い。
【0027】
人工的に着色した髪は、染色処理、例えば直接染料または酸化染料を使用した染色により変えられた色の髪である。
【0028】
好ましくは、この組成物を髪に塗付した後、例えば赤茶色の髪に塗付した後、以下の結果に至るはずである。
400〜700ナノメートルの波長範囲内の可視光で髪が照射される場合の髪の反射性能レベルに関心を集中させる。
次いで、波長、本発明の組成物で処理した髪および未処理の髪の関数としての反射率曲線を比較する。
処理した髪に相当する曲線は、未処理の髪に相当する曲線より高い、500〜700ナノメートルの波長範囲内の反射率を示すはずである。
このことは、540〜700ナノメートルの波長範囲内に、処理した髪に相当する反射率曲線が、未処理の髪に相当する反射率曲線より高い少なくとも1つの範囲があることを意味する。用語「より高い」は、少なくとも0.05%、好ましくは少なくとも0.1%の反射率の差を意味することが意図される。それでもやはり、540〜700ナノメートルの波長範囲内に、処理した髪に相当する反射率曲線が、未処理の髪に相当する反射率曲線に重なるかまたはそれより低い少なくとも1つの範囲があってもよい。
【0029】
処理した髪の反射率曲線と未処理の髪の反射率曲線との差が最大となる波長は、500〜650ナノメートルの波長範囲内、好ましくは550〜620ナノメートルの波長範囲内にあることが好ましい。
【0030】
本発明では、特に指示しない限り:
「アリール」基もしくは「ヘテロアリール」基は、
〜C16、好ましくはC〜Cのアルキル基、
塩素、フッ素または臭素などのハロゲン原子、
ヒドロキシル基、
〜Cアルコキシ基、
〜Cアルキルチオ基、
〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基、
アミノ基、
同一でも異なっていてもよく、
i)1つのヒドロキシル基、
ii)1つのアミノ基
を場合により少なくとも1つ結合している1つまたは2つのC〜Cアルキル基で置換されているアミノ基、
R基が、水素原子または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により結合しているC〜Cアルキル基であり、R’基がC〜Cアルキル基であるアシルアミノ(−NR−COR’)基、
R基が、同一であってもなくてもよく、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により結合しているC〜Cアルキル基を表すカルバモイル((R)N−CO−)基、
R基が、水素原子または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により結合しているC〜Cアルキル基を表し、R’基がC〜Cアルキル基を表すアルキルスルホニルアミノ(R’SO−NR−)基、
R基が、同一であってもなくてもよく、水素原子または少なくとも1つのヒドロキシル基を場合により結合しているC〜Cアルキル基を表すアミノスルホニル((R)N−SO−)基、
酸形態または塩化形態のカルボキシル基(好ましくは、アルカリ金属またはアンモニウムを有し、置換されているまたは置換されていない)、
シアノ基、
1〜6個の炭素原子および同一でも異なっていてもよい1〜6個のハロゲン原子を含有する、例えばトリフルオロメチルであるポリハロアルキル基
から選択される、炭素原子に結合している少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、
非芳香族基の環式部分または複素環式部分は、
ヒドロキシル、
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシ、
〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、
〜Cアルキルチオ基、
R’基が、水素原子またはC〜Cアルキル基であり、R基が、水素原子、C〜Cアルキル基または同一でも異なっていてもよい2つのC〜Cアルキル基で置換されているアミノ基であるRCO−NR’−(前記アルキル基は、窒素と異なっていても同一であってもよい少なくとも1つの別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員環を含む、置換されていてもよい飽和または不飽和の複素環を、それらの基に結合している窒素原子と共に形成してもよい)、
R基が、C〜Cアルキル基または同一でも異なっていてもよい2つのC〜Cアルキル基で置換されているアミノ基であるRCO−O−(前記アルキル基は、窒素と異なっていても同一であってもよい少なくとも1つの他のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む、置換されていてもよい飽和または不飽和の複素環を、それらの基に結合している窒素原子と共に形成してもよい)、
R基が、C〜Cアルキル基または同一でも異なっていてもよい2つのC〜Cアルキル基で置換されているアミノ基であるRO−CO−(前記アルキル基は、窒素と異なっていても同一であってもよい少なくとも1つの他のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む、置換されていてもよい飽和または不飽和の複素環を、それらの基に結合している窒素原子と共に形成してもよい)
の各基から選択される、炭素原子に結合している少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、
アリールまたはヘテロアリール基の環式基もしくは複素環式基または非芳香族部分は、1つまたは複数のオキソ基またはチオキソ基でも置換されていてもよく、
「アリール」基は、6〜22個の炭素原子を含有する、縮合したまたは縮合していない単環式基または多環式基を表し、その少なくとも1つの環は芳香族であり、好ましくは、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニルまたはテトラヒドロナフチルであり、
「ジアリールアルキル」基は、ジフェニルメチルまたは1,1−ジフェニルエチルなどの、同一でも異なっていてもよい2つのアリール基をアルキル基の同じ炭素原子上に含む基を表し、
「ヘテロアリール基」は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1〜6個のヘテロ原子を含み5〜22員を含む、場合によりカチオン性で縮合したまたは縮合していない単環式基または多環式基を表し、その少なくとも1つの環は芳香族であり、好ましくは、ヘテロアリール基は、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾビストリアゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾピリダジニル、ベンゾキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリジニル、テトラゾリル、ジヒドロチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、ナフトイミダゾリル、ナフトオキサゾリル、ナフトピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾロピリジル、フェナジニル、フェノオキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリリル、ピラゾイルトリアジル、ピリジル、ピリジノイミダゾリル、ピロリル、キノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チアゾロピリジニル、チアゾイルイミダゾリル、チオピリリル、トリアゾリル、キサンチリルおよびそのアンモニウム塩から選択され、
「ジヘテロアリールアルキル」基は、ジフリルメチル、1,1−ジフリルエチル、ジピロリルメチルまたはジチエニルメチルなどの、同一でも異なっていてもよい2つのヘテロアリール基をアルキル基の同じ炭素原子上に含む基を表し、
「環式基」は、1つまたは複数の不飽和を含んでもよい、5〜22個の炭素原子を含有する縮合したまたは縮合していない単環式または多環式の非芳香族シクロアルキル基であり、特にその環式基はシクロヘキシルであり、
「立体障害環式」基は、立体効果または立体障害により妨害され6〜14員を含み、架橋されてもよい、置換されているまたは置換されていない芳香族環式基または非芳香族環式基であり、立体障害基としては、ビシクロ[1.1.0]ブタン、1,3,5−トリメチルフェニルなどのメシチル、1,3,5−トリ−tert−ブチルフェニル、1,3,5−イソブチルフェニル、1,3,5−トリメチルシリルフェニルおよびアダマンチルを挙げることができ、
「複素環式基」は、窒素、酸素、硫黄およびセレンから選択される1〜6個のヘテロ原子を含む、5〜22員を含有する縮合したまたは縮合していない単環式または多環式の非芳香族基であり、
「アルキル基」は、直鎖状または分枝状のC〜C16、好ましくはC〜Cの炭化水素を主体とする基であり、
アルキル基に割り当てられる表現「置換されていてもよい」は、前記アルキル基が、i)ヒドロキシル、ii)C〜Cアルコキシ、iii)アシルアミノ、iv)1つもしくは同一でも異なっていてもよい2つのC〜Cアルキル基で置換されていてもよいアミノ(前記C〜Cアルキル基は、窒素と異なっても同一であってもよい別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む複素環を、それらの基を結合している窒素原子と共に形成してもよい)の各基から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよいことを示し、
「アルコキシ基」は、そのアルキル基が、直鎖状または分枝状の、C〜C16、好ましくはC〜Cの炭化水素を主体とする基であるアルキルオキシまたはアルキル−O−基であり、
「アルキルチオ基」は、そのアルキル基が、直鎖状または分枝状の、C〜C16、好ましくはC〜Cの炭化水素を主体とする基であるアルキル−S−基であり、
数値範囲の程度を定める境界値は、この数値範囲に含まれ、
「有機酸塩または鉱酸塩」は、より詳細には、i)塩酸HCl、ii)臭化水素酸HBr、iii)硫酸HSO、iv)メチルスルホン酸、エチルスルホン酸などのアルキルスルホン酸Alk−S(O)OH、v)ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸Ar−S(O)OH、vi)クエン酸、vii)コハク酸、viii)酒石酸、ix)乳酸、x)メトキシスルフィン酸、エトキシスルフィン酸などのアルコキシスルフィン酸Alk−O−S(O)OH、xi)トルエンオキシスルフィン酸、フェノキシスルフィン酸などのアリールオキシスルフィン酸、xii)リン酸HPO、xiii)酢酸CHCOOH、xiv)トリフルオロメタンスルホン酸CFSOH、およびxv)テトラフルオロホウ酸HBFから誘導される塩から選択され、
「アニオン性対イオン」は、染料のカチオン電荷と結合するアニオンまたはアニオン性基であり、より詳細には、アニオン性対イオンは、i)塩化物または臭化物などのハロゲン化物、ii)硝酸塩、iii)スルホン酸メチルまたはメシル酸塩、スルホン酸エチルなどのC〜Cスルホン酸アルキルAlk−S(O)を含めたスルホン酸塩、iv)ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩またはトシル酸塩などのスルホン酸アリールAr−S(O)、v)クエン酸塩、vi)コハク酸塩、vii)酒石酸塩、viii)乳酸塩、ix)硫酸メチル、硫酸エチルなどの硫酸アルキルAlk−O−S(O)O、x)硫酸ベンゼン、硫酸トルエンなどの硫酸アリールAr−O−S(O)O、xi)メトキシ硫酸塩、エトキシ硫酸塩などのアルコキシ硫酸塩Alk−O−S(O)、xii)アリールオキシ硫酸塩Ar−O−S(O)、xiii)リン酸塩、xiv)酢酸塩、xv)トリフルオロメタンスルホン酸塩、およびxvi)テトラフルオロホウ酸塩などのホウ酸塩から選択される。
【0031】
式(I)または(II)の蛍光染料は、250〜700nmの波長λabsのUV放射線領域内または可視光領域内で吸収可能であり、400〜700nmの放射波長λemの可視光領域内で再放射可能である化合物である。
【0032】
式(I)または(II)の蛍光化合物は、400〜700nmの可視光領域λabs内で吸収可能であり、500〜650nmの可視光領域λem内で再放射可能である染料であることが好ましい。より特に、蛍光染料は、420nm〜550nmの波長λabsで吸収可能であり、550〜620nmの波長λemでの可視光領域内で再放射可能である染料である。
【0033】
具体的な実施形態は、SY官能基を含む(Yは水素原子またはアルカリ金属を表す)式(I)または(II)の蛍光染料に関する。有利には、Yは水素原子を表す。
【0034】
本発明の式(II)の蛍光化合物は、Yの性質および媒体のpHに応じて共有結合形態−S−Yまたはイオン形態−Sとなり得るSY官能基を含有する。
【0035】
本発明の別の具体的な実施形態によれば、上述の式(II)では、Yは、当業者に知られる保護基であり、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Willey & Sons publisher、NY、1981、193〜217頁、「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005、5章の書籍に記載されている保護基である。
【0036】
Yがチオール官能基保護基を表す場合は特に、Yは、以下の基:
(C〜C)アルキルカルボニル、
(C〜C)アルキルチオカルボニル、
(C〜C)アルコキシカルボニル、
(C〜C)アルコキシチオカルボニル、
(C〜C)アルキルチオチオカルボニル、
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノチオカルボニル、
フェニルカルボニルなどのアリールカルボニル、
アリールオキシカルボニル、
アリール(C〜C)アルコキシカルボニル、
ジメチルアミノカルボニルなどの(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、
(C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル、
カルボキシル、
がナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属を表すSO;M(そうでなければ式(II)のM’およびMが存在しない)、
フェニル、ジベンゾスベリルまたは1,3,5−シクロヘプタトリエニルなどの置換されていてもよいアリール、
以下の、1〜4個のヘテロ原子を含むカチオン性または非カチオン性ヘテロアリールを特に含めた、置換されていてもよいヘテロアリール:
i)フラニルもしくはフリル、ピロリルもしくはピリル、チオフェニルもしくはチエニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサゾリウム、イソオキサゾリル、イソオキサゾリウム、チアゾリル、チアゾリウム、イソチアゾリル、イソチアゾリウム、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリウム、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−トリアゾリウム、1,2,4−オキサゾリル、1,2,4−オキサゾリウム、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリウム、ピリリウム、チオピリジル、ピリジニウム、ピリミジニル、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニル、ピリダジニウム、トリアジニル、トリアジニウム、テトラジニル、テトラジニウム、アゼピン、アゼピニウム、オキサゼピニル、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウム、イミダゾリル、イミダゾリウムなどの5、6もしくは7員を含む単環式、
ii)インドリル、インドリニウム、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリウム、ジヒドロベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアゾリウム、ピリドイミダゾリル、ピリドイミダゾリウム、チエノシクロヘプタジエニルなどの8〜11員を含む二環式(これらの単環式基もしくは二環式基は、(C〜C)アルキル、例えばメチル、もしくはポリハロ(C〜C)アルキル、例えばトリフルオロメチルなどの1つまたは複数の基で置換されていてもよい)、
iii)または、以下の三環式ABC
【0037】
【化2】

【0038】
(式中、2つの環A、Cは、ヘテロ原子を場合により含み、環Bは、5、6もしくは7員、特に6員の環であり、少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、例えばピペリジルもしくはピラニルである)、
場合によりカチオン性の置換されていてもよい複素環式アルキルであって、その基が、ジ/テトラヒドロフラニル、ジ/テトラヒドロチオフェニル、ジ/テトラヒドロピロリル、ジ/テトラヒドロピラニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロチオピラニル、ジヒドロピリジル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラメチルピペリジニル、モルホリニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロアゼピニルもしくはジ/テトラヒドロピリミジニルなどの、酸素、硫黄および窒素から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、特に飽和もしくは部分飽和の5、6もしくは7員単環式基を表す複素環式アルキル(これらの基は、(C〜C)アルキル、オキソもしくはチオキソなどの1つもしくは複数の基で置換されていてもよい)か、またはその複素環が、以下の基:
【0039】
【化3】

【0040】
(式中、R’、R’、R’、R’、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは(C〜C)アルキル基を表し、そうでなければ2つの基R’およびR’かつ/もしくはR’およびR’はオキソもしくはチオキソ基を形成し、そうでなければR’およびR’は、一緒になってシクロアルキルを形成し、vは、1〜3の両端を含めた整数を表し、好ましくはR’〜R’は水素原子を表し、Anは対イオンを表す)
を表す複素環式アルキル、
R’、R’、R’およびR’が、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、好ましくはR’〜R’が水素原子を表し、Anが対イオンを表すイソチオウロニウム−C(NR’R’)=NR’R’;An
R’、R’およびR’が上記で定義した通りであるイソチオ尿素−C(NR’R’)=NR’
(C〜C)アルキル、メトキシなどの(C〜C)アルコキシ、ヒドロキシル、(C〜C)アルキルカルボニルまたはジメチルアミノなどの(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノから特に選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい、9−アントラセニルメチル、フェニルメチルまたはジフェニルメチルなどの置換されていてもよい(ジ)アリール(C〜C)アルキル、
置換されていてもよい(ジ)ヘテロアリール(C〜C)アルキルであって、そのヘテロアリール基が、アルキル、特にメチルなどの1つまたは複数の基で置換されていてもよい、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピリジル、4−ピリジルN−オキシドもしくは2−ピリジルN−オキシドなどのピリジルN−オキシド、ピリリウム、ピリジニウムまたはトリアジニルの各基などの、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含み5または6員を含む、特にカチオン性または非カチオン性の単環式である(ジ)ヘテロアリール(C〜C)アルキル(この(ジ)ヘテロアリール(C〜C)アルキルは、(ジ)ヘテロアリールメチルまたは(ジ)ヘテロアリールエチルであることが有利である)、
、RおよびRが、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子または
(C〜C)アルキル、
(C〜C)アルコキシ、
(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシもしくはヒドロキシルなどの1つもしくは複数の基で置換されていてもよい、フェニルなどの置換されていてもよいアリール、
(C〜C)アルキル基で置換されていてもよい、チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラニルもしくはピリジルなどの置換されていてもよいヘテロアリール、
R’およびR’が、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル、(C〜C)アルコキシもしくはアルキル基を表し、R’がヒドロキシル基もしくは(C〜C)アルコキシ基を表し、Zが酸素原子もしくは硫黄原子を表すP(Z)R’R’R’
から選択される基を表すCR
アダマンチル基などの立体障害環式基、ならびに
メトキシメチル(MOM)、エトキシエチル(EOM)またはイソブトキシメチルなどの置換されていてもよいアルコキシ(C〜C)アルキル
から選択される。
【0041】
具体的な実施形態によれば、式(II)の保護チオール蛍光染料は、i)オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、1,2,4−トリアゾリウム、1,2,3−トリアゾリウム、1,2,4−オキサゾリウム、1,2,4−チアジアゾリウム、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウム、テトラジニウム、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウムもしくはイミダゾリウムなどの、酸素、硫黄および窒素から選択される1〜4個のヘテロ原子を含むカチオン性の5もしくは6員単環式芳香族ヘテロアリール基、ii)インドリニウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリウムもしくはベンゾチアゾリウムなどのカチオン性8〜11員二環式ヘテロアリール基(これらの単環式もしくは二環式ヘテロアリール基は、アルキル、例えばメチルもしくはポリハロ(C〜C)アルキル、例えばトリフルオロメチルなどの1つもしくは複数の基で置換されていてもよい)、iii)または以下の複素環式基
【0042】
【化4】

【0043】
(式中、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは(C〜C)アルキル基を表し、好ましくはR’〜R’はメチルなどの(C〜C)アルキル基を表し、Anは対イオンを表す)
である基Yを含む。
【0044】
特に、Yは、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、1,2,4−トリアゾリウム、1,2,3−トリアゾリウム、1,2,4−オキサゾリウム、1,2,4−チアジアゾリウム、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウム、イミダゾリウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリウムおよびベンゾチアゾリウムから選択される基を表し、これらの基は、1つまたは複数の(C〜C)アルキル基、特にメチルで置換されていてもよい。
【0045】
特に、式(II)の染料は、アルカリ金属または
メチルカルボニルもしくはエチルカルボニルなどの(C〜C)アルキルカルボニル、
フェニルカルボニルなどのアリールカルボニル、
(C〜C)アルコキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、
アリール(C〜C)アルコキシカルボニル、
ジメチルアミノカルボニルなどの(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、
(C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル、
置換されていてもよい、フェニルなどのアリール、
ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウムもしくはイミダゾリウムなどのカチオン性の5もしくは6員単環式ヘテロアリール(これらの基は、1つもしくは複数の、同一もしくは異なる、メチルなどの(C〜C)アルキル基で置換されていてもよい)、
ベンゾイミダゾリウムもしくはベンゾオキサゾリウムなどのカチオン性8〜11員二環式ヘテロアリール(これらの基は、1つもしくは複数の、同一もしくは異なる、メチルなどの(C〜C)アルキル基で置換されていてもよい)、
以下の式
【0046】
【化5】

【0047】
のカチオン性複素環、
イソチオウロニウム−C(NH)=N;An
イソチオ尿素−C(NH)=NH、
がナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属を表すSO;M(そうでなければ式(II)のM’およびMが存在しない)
などの保護基を表す基Yを有する。
【0048】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明の蛍光染料は、そのピリジニウム部分とそのフェニルとをオルトまたはパラ位で、即ち2−4’、4−2’、4−4’位で連結しているエチレン基をそれぞれ有する式(Ia)または(IIa)である。
【0049】
【化6】

【0050】
式(Ia)及び(IIa)は、前記に定義したように、R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、m、n、Y、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R”、R”’、R”、R”’、R”、R”’、m’、n’を有する。
【0051】
本発明の別の具体的な実施形態は式(I)または(Ia)の対称ジスルフィド染料に関し、即ち、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R、R、R、T、mおよびnは、それぞれ、R’、R’、R”、R”’、R”、R”’、R”、R”’、R’、R’、R’、R’、T、m’およびn’と同一である。
【0052】
チオール蛍光染料の例としては、以下の染料
【0053】
【表1A】

【0054】
【表1B】

【0055】
【表1C】

【0056】
【表1D】

【0057】
(M’、Anは、同一でも異なっていてもよく、アニオン性対イオンを表す)
を特に挙げることができる。
【0058】
M’およびAnは、同一でも異なっていてもよく、特に、例えば塩化物や臭化物などのハロゲン化物、硝酸塩、メチルスルホン酸つまりメシル酸塩およびエチルスルホン酸などのようなC〜Cアルキルスルホン酸(Alk−(S(O))のスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸やトルエンスルホン酸つまりトシル酸塩のようなアリールスルホン酸(Ar−(S(O))、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、メチル硫酸やエチル硫酸のようなアルキル硫酸塩(Alk−O−S(O)O)、ベンゼン硫酸やトルエン硫酸のようなアリール硫酸塩(Ar−O−S(O)O)、メトキシ硫酸やエトキシ硫酸のようなアルコキシ硫酸塩(Alk−O−S(O))、アリールオキシ硫酸塩(Ar−O−S(O))、リン酸塩、酢酸塩、トリフラート、およびテトラフルオロホウ酸のようなホウ酸塩のような対イオンを表す。
【0059】
式(II)の保護チオール染料は、2段階で合成することができる。第1段階は、当業者に知られる方法、例えば「Thiols and organic Sulfides」、「Thiocyanates and Isothiocyanates,organic」、Ullmann’s Encyclopaedia、Wiley-VCH、Weinheim、2005に従って非保護チオール染料を調製する段階からなる。さらに、第2段階は、式(II)の保護チオール染料を作製するための、当業者に知られる従来の方法に従ってチオール官能基を保護する段階からなる。チオール染料のチオール官能基−SHを保護する例としては、「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Willey & Sons ed.、NY、1981、193〜217頁、「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005、5章の書籍の方法を使用してもよい。
【0060】
この方法は、i)(I)などの、ジスルフィド官能基−S−S−を有する2色発色団蛍光染料の還元によりチオール蛍光染料を生成する段階、ii)式(II’)の化合物の前記チオール官能基を従来の方法に従って保護することにより式(II”)の保護チオール蛍光染料を得る段階からなる方法によって例示できる:
【0061】
【化7】

【0062】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、T、m、nおよびM’は上記で定義した通りであり、Rはヌクレオヒュージ(nucleofuge)脱離基、例えばメシル酸塩、トシル酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩またはハロゲン化物を表し、Y’はチオール官能基保護基を表す。
【0063】
別の可能性によれば、上述の書籍に記載されている手順の1つに従って調製される、上記で定義した保護基Y’により保護された、少なくとも1つの求核官能基を含むチオール化合物(b)は、十分な量の、好ましくは等モル量の「反応性蛍光発色団」またはそのような「反応性蛍光発色団」を含む化合物(a)と反応し得る。言い換えれば(a)は、以下で概略的に示されるように、Σ共有結合を形成するようにヌクレオヒュージ官能基を含む:
【0064】
【化8】

【0065】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、Y’、m、n、およびM’は上記で定義した通りであり、Nuは第1級アミン、ヒドロキシルまたはチオールのようなアミノ化されたもしくは酸化された求核基を表し、Eはカルボニル、またはハロゲン化アシル、チオハロゲン化アシルのようなチオカルボニル、エステルまたはチオエステルを含む求電子基を表す。Σは、−SO−、−O−、−S−、−N(R)−及び−CO−から選択される一連の基を表し、ここでRは、水素原子、C〜Cアルキル基またはC〜Cヒドロキシアルキル基、またはアリール(C〜C)アルキルを表しており、特にΣは、−C(O)−N(R)−、−C(O)−O−、−C(S)−O−、−C(O)−S−、−C(S)−S−または−C(S)−N(R)−から選択される基を表す条件に従う。
【0066】
Y基を含むチオール反応物Y−SHも使用してもよく、その求核SH官能基は、蛍光発色団(a’)が持つハロゲン原子に対し、α位の炭素原子と反応することにより、式(II)の保護チオール蛍光染料を与えることができる;
【0067】
【化9】

【0068】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、T、Y、m、nおよびM’は上記で定義した通りであり、Halは、臭素、ヨウ素または塩素などのヌクレオヒュージハロゲン原子を表す)。
【0069】
チオ酸(α)(例えばチオ酢酸)も使用してよく、それは蛍光発色団(a’)が有するハロゲン化物と反応する。
【0070】
【化10】

【0071】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、m、n、TおよびM’は上記で定義した通りであり、R’は(C〜C)アルキル基を表す。
【0072】
より詳細には、ヌクレオヒュージ脱離基は、イソチオウロニウムが生成するようにチオ尿素基(S=C(NRR)NRR)で置換されていてもよい。例えば、チオ尿素基がチオイミダゾリウム(β)である場合、反応スキームは、以下となる:
【0073】
【化11】

【0074】
(R、R、R、R、R、R、R’、R’、R、R’、R、R’、R、R’、m、n、T、AnおよびM’は上記で定義した通りである)。
【0075】
ある変法は、蛍光発色団(a’)を含むハロゲン化物の代わりに、トシル酸塩またはメシル酸塩などの別の種類のヌクレオヒュージを含む発色団を使用することである。
【0076】
別の変法によれば、式(II””)の染料を与えるために、反応物R−Lgでアルキル化した後に、蛍光発色団(a’)およびチオイミダゾリン(b’)を含むハロゲン化物を用いて、イミダゾリン中間体を生成することが可能であり、ここでRはアルキル基、Lgは例えば塩化物、臭化物またはヨウ化物などのハロゲン化物のような脱離基、あるいはメシル酸塩もしくはトシル酸塩を表す。
【0077】
【化12】

【0078】
ヌクレオヒュージ脱離基をチオ硫酸塩(例えば、チオ硫酸ナトリウムもしくはチオ硫酸カリウム)で置換して、ブンテ塩(−SSO、NaまたはK)を生成することもまた可能である。
【0079】
【化13】

【0080】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、m、n、TおよびM’は上記で定義した通りであり、Mはナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属を表す。
【0081】
別の可能性によれば、ある種の保護チオール蛍光染料(II”)は、保護チオール化合物とヌクレオヒュージ官能基またはハロゲン化アシルのタイプ(d)のカルボニル官能基を有する化合物を反応させることによって得ることが可能であり、ハロゲン化アシル(d)は、第1級もしくは第2級アミンのタイプの求核官能基(c)を有する蛍光発色団と反応する。
【0082】
【化14】

【0083】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、T、Y、m、n、M’、Nuおよび(II”)は上記で定義した通りであり、Eはカルボニルあるいはハロゲン化アシル、チオハロゲン化アシル、エステルまたはチオエステルのようなチオカルボニルを含む求電子基を表す。Σは、−SO−、−O−、−S−、−N(R)−、−CO−から選択される一連の基を表し、ここでRは、水素原子、C〜Cアルキル基またはC〜Cヒドロキシアルキル基、またはアリール(C〜C)アルキルを表しており、特にΣは、−N(R)−C(O)−、−O−C(O)−、−O−C(S)−、−S−C(O)−、−S−C(S)−または−N(R)−C(S)−から選択される基を表す条件に従う。
【0084】
ある変法は、スチリルピリジニウム発色団(c’)が有するアミノ基からの求核攻撃を受け得るチオラクトンを使用することであって、それにより、以下のスキームによって例示されるように、染料(II”)および(II”met)をそれぞれ与えるために保護され得るかまたはメタル化され得る、チオール蛍光染料(II’)を与えることが可能となる。
【0085】
【化15】

【0086】
別の可能性によれば、式(II)の保護チオール蛍光染料は、Y基で保護されているチオール基およびヌクレオヒュージ脱離基、例えばメシル酸塩、トシル酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩またはハロゲン化物に予め活性化されているヒドロキシル基を含む化合物(d’)と、Rが水素原子もしくは第2級アミンを表す場合に求核官能基が第1級アミンを有する蛍光発色団(c’)との反応によって得ることができる;
【0087】
【化16】

【0088】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、T、Y、m、n及びMは上記で定義した通りであり、Eは例えばメシル酸塩、トシル酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩またはハロゲン化物であるヌクレオヒュージ基を表す。
【0089】
別の可能性によれば、本発明による式(II)のチオール蛍光染料は、上記で定義した保護チオール基および求電子基を含む化合物(f)と求核基を含む化合物との反応によって得てもよい。例としては、Gが酸素原子を表す場合のアルデヒドまたはケトンは、エチレン結合>C=C<を生成するようにアルキルピリジニウムなどの「活性化メチレン」(e)と縮合し得る。この反応は、「クネーフェナーゲル(Knoevenagel)」縮合として一般に知られている。用語「活性化メチレン」は、例えば特許DE19951134に挙げられているものを意味することが意図され、特に、1,2−ジアルキルピリジニウム、特に1,2−ジメチルピリジニウムが挙げられ得る;
【0090】
【化17】

【0091】
(R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、T、Y、m、nおよびM’は上記で定義した通りであり、Gは、酸素もしくは硫黄原子またはR”が水素原子もしくはアルキル基を表すNR”基を表す)。
【0092】
この反応スキームの別の変法は、続いて「クネーフェナーゲル」カップリング反応を行うことであり、すなわち、中間体(f’)を用いることであって、アミノ基R’NHが1当量の反応物E−(CR)−Eと反応することができる結果、(j’)アルデヒド中間体を与えるためにY’SH保護チオール誘導体とそれ自身反応することが可能な(i’)を与えることが可能となる。この中間体は、アルキルピリジニウムと「クネーフェナーゲル」縮合反応を受けることにより、保護チオール蛍光染色(II”)を与えることが可能である。
【0093】
【化18】

【0094】
(R’、R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、E、m、n、Y’およびM’は上記で定義した通りであり、Σは特に−N(R)−C(O)−、または−N(R)−C(S)−を表す。
【0095】
上述の方法に使用される操作条件に関してさらに詳細には、Advanced Organic Chemistry、「Reactions, Mechanisms and structures」、J.March、第4版、John Willey & Sons、1992またはT.W.Greene「Protective Groups in Organic Synthesis」の書籍を参照してもよい。
【0096】
形成されるチオール蛍光染料は、従来の保護基を使用して−SHチオールを保護することにより−SY’保護チオール蛍光染料に転換してもよい。チオール蛍光染料は、当業者に周知の従来的な方法を用いてメタル化してもよく、そのような方法は、Advanced Organic Chemistry、「Reaction, Mechanisms and Structures」, J. March, 4th ed. John Willey & Sons, NY, 1992に記載されている。
【0097】
保護チオール染料は、従来的な手順によって脱保護することが可能であって、そのような手順は、「Protective Groups in Organic Synthesis」, T.W. Greene, Jone Willey & Sons ed., NY, 1981; 「Protecting Groups」, P.Kocienski, Thieme, 3rd ed., 2005 の書籍に記載されている。
【0098】
出発反応物は商業的に入手可能であるか、または当業者に周知の従来的な手段によって入手できる。例として、ジスルフィド官能基−S−S−(I’)を有する2つの発色団の蛍光染料を合成するために、ヌクレオヒュージ基G−Rを1位(1−position)に含む二官能性反応物(k)から出発することが可能であって、Rは(C1〜C4)アルキル、メシル酸塩、トシル酸塩またはトリフルオロメタンスルホン酸塩の基を表しており、Gは酸素原子または硫黄原子またはフッ素、塩素もしくはヨウ素などのハロゲン化物を表しており、2位もしくは4位にアルデヒドまたはチオアルデヒドの求電子基を含む。2当量のこの反応物はジアミン−ジアルキル−ジスルフィド(l)と反応して、縮合後に、ジケトン−チオアルケトン−ジスルフィド(m)を与えることができ、この(m)が2当量のアルキルピリジニウム(e)と縮合することによって化合物(I’)を形成することが可能である。
【0099】
【化19】

【0100】
上述の方法に使用される操作条件に関してさらに詳細には、Advanced Organic Chemistry、J.March、第4版、John Willey & Sons、1992またはT.W.Greene「Protective Groups in Organic Synthesis」の書籍を参照してもよい。
【0101】
式(I)の非対称ジスルフィド染料は、式(I)のジスルフィド染料を形成するように、非保護チオール蛍光染料と保護チオール蛍光染料とを反応させることによって一段階で合成できる:
【0102】
【化20】

【0103】
(R、R’、R、R’、R、R’、R”、R”’、R、R’、R”、R”’、R、R’、R”、R”’、R’、R、R’、R、R’、R、R’4、m、m’、n、n’、T、TおよびM’は上記で定義した通りであり、Y’はチオール官能基保護基を表す)。
【0104】
本発明の組成物は、式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含有する。式(I)または(II)の蛍光染料が少なくとも1つ存在する他に、本発明の組成物は、還元剤も含有してもよい。この還元剤は、チオール、例えばシステイン、ホモシステインまたはチオ乳酸、これらのチオールの塩、ホスフィン、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオグリコール酸、さらにそのエステルも、特にモノチオグリコール酸グリセロール、およびチオグリセロールから選択することができる。この還元剤はまた、ホウ化水素およびその誘導体、例えばホウ化水素の塩、シアノホウ化水素の塩、またはトリアセトキシホウ化水素もしくはトリメトキシホウ化水素の塩、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、第4級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウムまたはベンジルトリエチルアンモニウム)塩、カテコールボランからも選択することができる。
【0105】
本発明に使用できる染料組成物は、一般に、式(I)または(II)の蛍光染料をその組成物の全重量に対して0.001%〜50%の量で含有する。この量は、その組成物の全重量に対して、好ましくは0.005重量%〜20重量%、さらにより好ましくは0.01重量%〜5重量%である。
【0106】
この染料組成物は、追加の直接染料も含有してもよい。これらの直接染料は、例えば、中性、酸性またはカチオン性のニトロベンゼン直接染料、中性、酸性またはカチオン性のアゾ直接染料、テトラアザペンタメチン染料、中性、酸性またはカチオン性キノン、特にアントラキノン染料、アジン直接染料、トリアリールメタン直接染料、インドアミン(indoamine)直接染料および天然直接染料から選択される。
【0107】
天然直接染料には、ローソン、ジュグロン、アリザリン、プルプリン、カルミン酸、ケルメス酸、プルプロガリン、プロトカテキュアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン(spinulosin)およびアピゲニニジンを挙げることができる。これらの天然染料、特に湿布剤またはヘナ主成分抽出物を含有する抽出物または煎じ汁も使用してもよい。
【0108】
この染料組成物は、1つもしくは複数の酸化塩基および/またはケラチン繊維を染色するのに従来使用される1つもしくは複数のカップラーを含有してもよい。
【0109】
酸化塩基には、パラ−フェニレンジアミン、ビスフェニルアルキレンジアミン、パラ−アミノフェノール、ビス−パラ−アミノフェノール、オルト−アミノフェノール、複素環式塩基、およびそれらの付加塩を挙げることができる。
【0110】
これらのカップラーには、メタ−フェニレンジアミン、メタ−アミノフェノール、メタ−ジフェノール、ナフタレンのカップラー、複素環式カップラー、およびそれらの付加塩を特に挙げることができる。
【0111】
カップラー(複数も)は、それぞれ、一般に、染料組成物の全重量の0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.005%〜6%の量で存在する。
【0112】
染料組成物中に存在する酸化塩基(複数も)は、それぞれ、一般に、染料組成物の全重量の0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.005重量%〜6重量%の量で存在する。
【0113】
一般に、本発明の背景で使用できる酸化塩基の付加塩およびカップラーの付加塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、および酢酸塩などの、酸を有する付加塩、ならびに、ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、アミンまたはアルカノールアミンなどの、塩基を有する付加塩から特に選択される。
【0114】
染料担体とも称される、染色に適する媒体は、一般に、水または水と少なくとも1つの有機溶媒との混合液で構成される化粧料用媒体である。有機溶媒としては、例えば、エタノールおよびイソプロパノールなどのC〜C低級アルカノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのポリオールおよびポリオールエーテルを挙げることができ、さらにベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールなどの芳香族アルコールも、ならびにそれらの混合液を挙げることができる。
【0115】
この溶媒は、存在する場合、染料組成物の全重量に対して、好ましくは約1重量%〜約40重量%、さらにより好ましくは約5重量%〜約30重量%の比率で存在することが好ましい。
【0116】
この染料組成物は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性もしくは両性イオン性界面活性剤またはそれらの混合界面活性剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性もしくは両性イオン性ポリマーまたはそれらのブレンド、無機または有機増粘剤、特にアニオン性、カチオン性、非イオン性および両性会合性ポリマー増粘剤、抗酸化剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、香料、緩衝液、分散剤、例えば変性または未変性の揮発性または不揮発性アミノシリコーンなどのシリコーンなどの調整剤、被膜剤、セラミド、保存料、乳白剤あるいは導電性ポリマーなどの、髪染色用組成物に従来使用されている種々の補助剤も含有してもよい。
【0117】
上記補助剤は、一般に、補助剤それぞれに関して、組成物の重量に対して0.01重量%〜20重量%の量で存在する。
【0118】
当然、本発明による染料組成物に本質的に関連した有利な特性が、想定される追加(複数も)により損なわれないまたは実質的に損なわれないように、このまたはこれらの可能な追加の化合物は、当業者によって入念に選択されよう。
【0119】
染料組成物のpHは、一般に、約4〜約14、好ましくは約5〜約11である。これは、ケラチン繊維の染色に通常使用される酸性化剤または塩基性化剤によって、そうでなければ従来の緩衝液系によって所望値に調整することができる。
【0120】
酸性化剤には、例として、塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸などの鉱酸または有機酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸もしくは乳酸、またはスルホン酸を挙げることができる。
【0121】
塩基性化剤には、例として、アンモニア水、アルカリ炭酸塩、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、またそれらの誘導体も、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムならびに以下の式(γ)
【0122】
【化21】

【0123】
(式中、Wは、ヒドロキシル基またはC〜Cアルキル基で置換されていてもよいプロピレン残基であり、Ra1、Ra2、Ra3およびRa4は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C〜Cアルキル基またはC〜Cヒドロキシアルキル基を表す)
の化合物を挙げることができる。
【0124】
この染料組成物は、液体、クリームもしくはジェルの形態、またはケラチン繊維、特に髪を染色するのに適する任意の他の形態などの種々の形態であってもよい。
【0125】
本発明の染色方法は、本発明の組成物を、ケラチン物質、特に髪、より特には暗色の髪などのヒトのケラチン繊維に塗布することにあり、本発明の染色組成物は、式(I)または(II)の少なくとも1つの蛍光染料を含む。
【0126】
本発明の方法における具体的な実施形態によれば、還元剤は、式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含有する組成物を塗付する前に前処理として塗付してもよい。
【0127】
この還元剤は、チオール、例えばシステイン、ホモシステインまたはチオ乳酸、これらのチオールの塩、ホスフィン、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオグリコール酸、さらにそのエステルも、特にモノチオグリコール酸グリセリルおよびチオグリセロールから選択してもよい。この還元剤は、ホウ化水素およびその誘導体、例えばホウ化水素の塩、シアノホウ化水素の塩、トリアセトキシホウ化水素の塩、またはトリメトキシホウ化水素の塩、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、第4級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム)塩、カテコールボランからも選択してもよい。
【0128】
この前処理の時間は、短くてもよく、上述の還元剤を使用した場合、特に0.1秒間〜30分間、好ましくは1分間〜15分間であってもよい。
【0129】
別の方法によれば、式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含む組成物はまた、上記に記載の還元剤を少なくとも1つ含む。この組成物は次いで髪に塗布される。
【0130】
式(I)または(II)のチオール蛍光染料がチオール官能基保護基Yを含む場合、本発明の方法では、SH官能基をその場で復元することを目的とする脱保護段階を先に行ってもよい。
【0131】
例としては、以下のようにpHを調整することによって、Y保護基を有するS−Y官能基を脱保護することができる。
【0132】
【表2】

【0133】
この脱保護段階は、髪前処理段階中、例えば髪の還元前処理中にも行うこともできる。
【0134】
別の染色方法によれば、式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含む組成物は、上記で定義した還元剤も少なくとも1つ含む。次いで、この組成物は髪に塗付される。
【0135】
一変法によれば、還元剤は、使用時に式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含む染料組成物に添加される。
【0136】
別の変法によれば、還元剤は、式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含有する組成物を塗付した後、後処理として塗付される。還元剤を使用する後処理の時間は、短くてもよく、上記の還元剤を使用した場合、例えば0.1秒間〜30分間、好ましくは1分間〜15分間であってもよい。具体的な実施形態によれば、還元剤は、上記のようなチオール種またはホウ化水素種の作用物質である。
【0137】
本発明の具体的な実施形態は、式(I)または(II)の蛍光染料が、還元剤を使用せず、還元前処理または還元後処理なく髪に直接塗布できる方法に関する。
【0138】
酸化剤を使用する処理を、場合により組み合わせてもよい。当分野で常用されている任意の種類の酸化剤を使用してもよい。したがって、それは、過酸化水素、過酸化尿素、臭素酸アルカリ金属、過ホウ酸塩および過硫酸塩などの過酸基塩から、さらに酵素からも選択してもよく、それらのものには、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼなどの2電子オキシドレダクターゼおよびラッカーゼなどの4電子オキシゲナーゼを挙げることができる。過酸化水素の使用は、特に好ましい。
【0139】
この酸化剤は、式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含有する組成物を塗布する前または塗布した後の繊維に塗布してもよい。
【0140】
本発明による染料組成物の塗付は、一般に、周囲温度で行われる。しかしながら、その塗付は、20〜180℃の範囲の温度で行ってもよい。
【0141】
本発明の主題は、第1区画が、式(I)または(II)の複素環式蛍光染料を少なくとも1つ含む染料組成物を含有し、第2区画が、ケラチン物質のジスルフィド官能基を還元し得る還元剤を含有する多区画デバイスまたは染色用キットでもある。
【0142】
これらの区画の1つは、直接染料種または酸化染料種の他の染料も1つまたは複数含有してもよい。
【0143】
本発明は、第1区画が、式(I)または(II)の蛍光染料を少なくとも1つ含む染料組成物を含有し、第2区画が、ケラチン物質のジスルフィド結合を還元し得る還元剤を含有し、第3区画が、酸化剤を含有する多区画デバイスにも関する。
【0144】
他の変法は、多区画染料デバイス、つまり染料「キット」に関し、式(II)の保護蛍光染料を少なくとも1つ有する組成物を含む第1区画、およびベース(base)のような脱保護剤を含む組成物を含む第2区画を含む。
【0145】
上述のデバイスの各々は、例えば、特許FR2586913に記載されているデバイスなどの、所望の混合物を髪へ送達する手段を備えてもよい。
【0146】
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たすが、これに限定されるものではまったくない。以下では、実施例の蛍光染料の特性を、従来の分光法および分光測定法によって決定した。
【実施例】
【0147】
合成実施例
(実施例1)
4−((E)−2−{4−[(4,13−ジメチル−17−{4−[(E)−2−(1−メチルピリジニウム−4−イル)ビニル]−フェニル}−5,12−ジオキソ−8,9−ジチア−4,13,17−トリアザオクタデカ−1−イル)(メチル)アミノ]フェニル}ビニル)−1−メチルピリジニウム塩[1]の合成
【0148】
【化22】

【0149】
合成スキーム
【0150】
【化23】

【0151】
段階1:4−{メチル−3−(メチルアミノ)プロピル]−アミノ}ベンズアルデヒドの合成
4−フルオロベンズアルデヒド8.64ml、炭酸カリウム13.36gおよびN−メチルピロリジノン(NMP)30mlを、撹拌しながら混合して110℃で加熱する。1,3−ビス(メチルアミノ)プロパン11.9mlを反応媒体に液滴で添加して、撹拌しながら3日間110℃で加熱する。反応混合溶液を濃縮して、54gの油を回収した。
【0152】
段階2:1−メチル−4−[(E)−2−(4−{メチル[3−(メチルアミノ)プロピル]アミノ}フェニル)ビニル]ピリジニウム酢酸塩の合成
25gの4−{メチル−[3−(メチルアミノ)プロピル]−アミノ}ベンズアルデヒド入りイソプロパノール30mlとピロリジン10.9mlを大気温度で10分間撹拌する。酢酸7.6mlを反応媒体に添加し、20℃で20分間撹拌し続ける。イソプロパノール20mlで希釈した26.55gの1,4−ジメチルピリジニウムメチルスルファートを添加する。反応媒体を大気温度で5日間撹拌し続ける。得られる混合溶液をジクロロメタン(DCM)で3回抽出し、水/ブタノール、液体クロマトグラフィーで、濃縮してから精製する。真空下でのピュアフラクション(pure fraction)の濃縮後に、3.4gの赤色粉末を回収した。
【0153】
段階3:4−((E)−2−{4−[(4,13−ジメチル−17−{4−[(E)−2−(1−メチルピリジニウム−4−イル)ビニル]フェニル}−5,12−ジオキソ−8,9−ジチア−4,13,17−トリアザオクタデカ−1−イル)−(メチル)アミノ]フェニル}ビニル)−1−メチルピリジニウム塩の合成
1.63gの1−メチル−4−[(E)−2−(4−{メチル[3−(メチルアミノ)プロピル]アミノ}フェニル)ビニル]ピリジニウム酢酸塩を5mlのアセトニトリル(ACN)に溶解する。600ulのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、420mgの3,3’−ジチオ−プロパン酸、およびそれから1.09gの(1H−1,2,3−ベンゾ−トリアゾール−1−イルオキシ)(トリピロリジン−1−イル)ホスホニウムヘキサ−フルオロリン酸塩を混合溶液に添加する。大気温度で24時間撹拌した後に、この混合溶液を濃縮してからシリカゲルクロマトグラフィーで精製させる(C18グラフト逆相、溶出 水/ACN/0.1% トリフルオロ酢酸)。このピュアフラクションを炭酸水素ナトリウムを加えることによって結合および中和化させ、真空下で濃縮させ、得られる固体はアセトン/CAN混合溶液中に溶解させる。ろ過後、溶媒の蒸発により、1.77gの質量の赤色固体が得られる。この解析により、得られる生成物は、予想される構造に適合している。An対イオンは、トリフルオロ酢酸塩および炭酸水素塩の混合物から構成される。
LCMS:陽イオン m/z=383、256および192、それぞれ[M/2]2+、[M+H]3+および[M+2H]4+に相当する。λmax468nm
【0154】
(実施例2):1−メチル−4−{(E)−2−[4−(メチル{3−[メチル(3−スルファニルプロパノイル)−アミノ]プロピル}−アミノ)フェニル]ビニル}ピリジニウム塩[2]の合成
【0155】
【化24】

【0156】
合成スキーム
【0157】
【化25】

【0158】
段階1:1−メチル−4−{(E)−2−[4−(メチル−{3−[メチル(3−スルファニルプロパノイル)アミノ]プロピル}アミノ)−フェニル]ビニル}ピリジニウム塩[2]の合成
1−メチル−4−{(E)−2−[4−(メチル−{3−[メチル(3−スルファニルプロパノイル)アミノ]プロピル}アミノ)−フェニル]ビニル}ピリジニウム塩60mgを、水/エタノール混合液(1:1)10ml中に溶解する。水1ml中に溶解している2当量の3−[ビス(2−カルボキシエチル)ホスフィノ]プロパン酸塩酸塩水和物および水1ml中に溶解している4当量の重炭酸ナトリウムをその混合溶液に添加する。不活性雰囲気下で、40℃で30分間攪拌した後、分析から、この混合物は予想される生成物[2]を極めてほとんど含有することが示される。
【0159】
LC−MS分析:LC−DAD(400〜700nm)
カラム:Waters XTerra MS C18 5μm(4.6×50)mm
移動相:A:水+0.1%ギ酸/B:ACN
直線勾配:T(分)A%/B%:0分95/5;8分0/100
流速:1ml/分
検出:UVダイオードアレイλ=400〜700nm
MS(ESI+)は、予想される生成物[2]のモノカチオンについての質量ピークに相当する
【0160】
染色実施例
(実施例1)
染色方法−化合物[1]
【0161】
【表3】

【0162】
【表4】

【0163】
使用時に、組成物A(9ml)およびB(1ml)を混合し、次いで、得られた混合物を、周囲温度で30分間、暗色(色調の高さ4)の髪1gの房に塗付する(この房を、15分後にひっくり返し再度染み込ませる)。
【0164】
流水でリンスし乾燥した後、そのように処理した髪の明色化が認められ、色調の高さ4の房は、未処理の対照房より視覚的に明るくなった。
【0165】
(実施例2)
−化合物[2]を使用する染色方法
合成実施例の化合物[2]の新鮮な溶液10mlを、周囲温度で30分間ボウルの底に置いた色調の高さ4の髪1gの房に塗付する(この房を、15分後にひっくり返し再度染み込ませる)。次いで、この房を、流水でリンスし、乾燥する。
【0166】
染色後、色調の高さ4の房は、未処理の対照房より視覚的に明るくなった。
【0167】
継続的なシャンプー作業に対する残留度:
そのように処理した房を2つに分け、各半分を、その房を水で濡らす段階、従来のシャンプーで洗浄する段階、水でリンスする段階、次いで乾燥する段階を含むサイクルによる5回の継続的なシャンプー作業にかける。
【0168】
目視観測
シャンプー作業中、目に見えるにじみはなく、シャンプーの泡およびリンス水は、着色されていない。
【0169】
認められる色は保持され、そのように処理した色調の高さ4の髪に対する明色化効果は、依然として見られるままである。
【0170】
L*a*b*システムでの結果:
5回の洗浄前後の房の色を、MINOLTA(登録商標)CM 2600D分光光度計(光源D65)によるL*a*b*システムで評価した。
【0171】
このL*a*b*システムでは、L*は明度を表し、a*は緑色/赤色軸を示し、b*は青色/黄色軸を示す。Lの値が高ければ高いほど、色はより明るくまたはより弱くなり、逆にLの値が低ければ低いほど、色はより暗くまたはずっと強くなる。a*の値が高ければ高いほど、色合いはより赤くなり、b*の値が高ければ高いほど、色合いはより黄色くなる。
【0172】
TH4(色調の高さ4)の染色した髪の房と洗浄した髪の房との着色の変化を、以下の等式:
【0173】
【数1】

【0174】
に従って(ΔE)によって測定する。
【0175】
この等式では、L*、a*およびb*は、染色した後に測定される値を表し、L*、a*およびb*は、染色(またはシャンプー)する前に測定される値を表す。
【0176】
ΔEの値が大きければ大きいほど、TH4の房と着色した房との色の差はより大きくなる。
【0177】
【表5】

【0178】
上表中の結果から、5回のシャンプー作業の後では色はほとんど変わらないことが示される。したがって、髪に対する着色効果および明色化効果は実質的に変化しないままであることから、本発明の染料の非常に良好な耐シャンプー性が示される。
【0179】
反射率の結果:
本発明による組成物の明色化の効率および継続的なシャンプー作業に対する前記組成物の残留度も、髪の反射率の関数として表現した。これらの反射率を、色調の高さTH4の未処理の髪の房の反射率と比較する。
【0180】
反射率は、KONICA MINOLTA(登録商標)CM 2600d分光色差計装置によって、400〜700ナノメートルの波長範囲内の可視光を使用して髪を照射した後に測定する。
【0181】
【表6】

【0182】
本発明による組成物を使用して処理した髪の房の反射率は、未処理の髪より高いことがまず第1に認められる。したがって、処理した房は、より明るいように見える。
【0183】
さらに、この結果から、本発明の組成物を使用して処理した色調の高さ4の髪の房の反射率は、5回のシャンプー作業の後ほとんどまったく変化しないことが示される。したがって、髪に対する着色効果および明色化効果は実質的に変化しないままであることから、本発明の染料の、シャンプー作業に対する耐性が非常に良好であることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)または(II)の蛍光染料
【化1】

[式(I)および(II)において、
およびR’は、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル基またはアミノ基、(C〜C)アルキルアミノ基もしくは(C〜C)ジアルキルアミノ基で置換されていてもよいアリール(C〜C)アルキル基または(C〜C)アルキル基を表し、前記アルキル基は、それらの基を結合している窒素原子と共に、窒素と異なっても同一であってもよい別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む複素環を形成してもよく、
およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよいアリール(C〜C)アルキル基もしくは(C〜C)アルキル基を表し、
R’は、水素原子、置換されていてもよいアリール(C〜C)アルキル基またはC〜Cアルキル基を表し、
、R’、R”およびR”’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)ジアルキルアミノまたはトリフルオロメチルの各基、アシルアミノ、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルキルカルボニルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルカルボニルアミノまたは(C〜C)アルキルスルホニルアミノの各基、または(C〜C)アルキル基を表し、
、R’、R”およびR”’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、(C〜C)ジアルキルアミノまたは(C〜C)アルキルカルボニルアミノの各基、アシルアミノまたは(C〜C)アルキルスルホニルアミノの各基または(C〜C)アルキル基を表し、
そうでなければ、2つの隣接した炭素原子に結合している2つの基RおよびR’、R”およびR”’、RおよびR’、R”およびR”’は、一緒になってベンゾ環もしくはインデノ環または縮合複素環式アルキル基もしくは縮合ヘテロアリール基を形成し;そのベンゾ環、インデノ環、複素環式アルキル環もしくはヘテロアリール環は、ハロゲン原子、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)ジアルキルアミノ、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、アシルアミノ、C〜Cアルコキシ、C〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、(C〜C)アルキルカルボニルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニルまたは(C〜C)アルキルカルボニルアミノの各基、アシルアミノ、カルバモイルもしくは(C〜C)アルキルスルホニルアミノの各基、アミノスルホニル基、または(C〜C12)アルコキシ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、アミノ、(C〜C)アルキルアミノおよび(C〜C)ジアルキルアミノから選択される基で置換されていてもよい(C〜C16)アルキル基で置換されていてもよく、そうでなければそのアミノ基の窒素原子に結合している2つのアルキル基が、その窒素原子と同一かもしくは異なる別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む複素環を形成してもよく、
、R’、R”およびR”’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、
、R、R、R、R’、R’、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルコキシ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシルまたは(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノの各基を表し、前記アルキル基は、それらの基を結合している窒素原子と共に、窒素と異なっても同一であってもよい別のヘテロ原子を場合により含み5〜7員を含む複素環を形成してもよく、
およびTは、同一でも異なっていてもよく、−SO−、−O−、−S−、−N(R)−、−CO−(Rは、水素原子、C〜Cアルキル基もしくはC〜Cヒドロキシアルキル基またはアリール(C〜C)アルキルを表す)から選択される基の組合せを表し、
m、m’、nおよびn’は、同一でも異なっていてもよく、0〜6の両端を含めた整数を表し、m+nおよびm’+n’は、同一でも異なっていてもよく、1〜10の両端を含めた整数を表し、
M’は、アニオン性対イオンを表し、
Yは、i)水素原子、ii)アルカリ金属、iii)アルカリ土類金属、iv)アンモニウム基:Nαβγδもしくはホスホニウム基:Pαβγδ[Rα、Rβ、RγおよびRδは、同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは(C〜C)アルキル基を表す]、またはv)チオール官能基保護基を表し、
式(I)または(II)の化合物が他のカチオン性部分を含有する場合、1つまたは複数のアニオン性対イオンと結合するため、式(I)または(II)は電気的中性を達成できることが理解される]
その有機酸塩または鉱酸塩、それらの光学異性体および幾何異性体、ならびに水和物などのその溶媒和物。
【請求項2】
およびTが−C(O)−N(R)−または−N(R)−C(O)−を表す場合における、請求項1に記載の式(I)または(II)の蛍光染料。
【請求項3】
Yが水素原子またはアルカリ金属を表す、請求項1または2に記載の式(II)の蛍光染料。
【請求項4】
Yが保護基を表す、請求項1または2に記載の式(II)の蛍光染料。
【請求項5】
Yが、以下の基:
(C〜C)アルキルカルボニル、
(C〜C)アルキルチオカルボニル、
(C〜C)アルコキシカルボニル、
(C〜C)アルコキシチオカルボニル、
(C〜C)アルキルチオチオカルボニル、
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノチオカルボニル、
アリールカルボニル、
アリールオキシカルボニル、
アリール(C〜C)アルコキシカルボニル、
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、
(C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル、
カルボキシル、
がアルカリ金属を表すSO;M(そうでなければ式(II)のM’およびMが存在しない)、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
場合によりカチオン性の、置換されていてもよい複素環式アルキル、
R’、R’、R’およびR’が、同一でも異なっていてもよく、水素原子またはアルキル基を表すイソチオウロニウム−C(NR’R’)=NR’R’;Anであって、好ましくはR’からR’が水素原子およびAnがアニオン性対イオンを表し、
R’、R’およびR’が上記で定義した通りであるイソチオ尿素−C(NR’R’)=NR’
置換されていてもよい(ジ)アリールアルキル、
置換されていてもよい(ジ)ヘテロアリールアルキル、
R’、R’およびR’が、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子あるいは
アルキル、
アルコキシ、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
R’’およびR’’が、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル、アルコキシもしくはアルキル基を表し、R’’が、ヒドロキシル基もしくは(C〜C)アルコキシ基を表し、Zが、酸素原子もしくは硫黄原子を表すP(Z)R’’R’’R’’
から選択される基
を表すCR’R’R’
立体障害環式基、ならびに
置換されていてもよいアルコキシアルキル
から選択される保護基を表す、請求項4に記載の式(I)の蛍光染料。
【請求項6】
Yが、アルカリ金属または
(C〜C)アルキルカルボニル、
アリールカルボニル、
(C〜C)アルコキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、
アリール(C〜C)アルコキシカルボニル、
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、
(C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル、
置換されていてもよいアリール、
5もしくは6員単環式ヘテロアリール、
ベンゾイミダゾリウムまたはベンゾオキサゾリウムのようなカチオン性8〜11員二環式ヘテロアリールであって、これらの基は、同一でも異なっていてもよい、置換されていてもよい1つまたは複数の(C〜C)アルキル基、
以下の式
【化2】

のカチオン性複素環、
イソチオウロニウム−C(NH)=N,An
イソチオ尿素−C(NH)=NH、および
がアルカリ金属を表すSO;M(そうでなければ式(II)のM’およびMが存在しない)
から選択される保護基を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の蛍光染料。
【請求項7】
ピリジニウム部分とフェニルとをそのオルトまたはパラ位で、即ち2−4’、4−2’、4−4’位で連結しているエチレン基をそれぞれ有する、式(Ia)または(IIa)の蛍光染料から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の蛍光染料
【化3】

(式(Ia)及び(IIa)は、請求項1から6のいずれか一項に定義したように、R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、m、n、Y及びR’、R’、R’、R’、R’、R’、R”、R”’、R”、R”’、R”、R”’、m’及びn’を有する)。
【請求項8】
対称性である、請求項1から7のいずれか一項に記載の式(I)または(Ia)の蛍光染料。
【請求項9】
以下の染料
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

(M’およびAnは、同一でも異なっていてもよく、アニオン性対イオンを表す)
から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の蛍光染料。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の蛍光染料を適切な化粧料用媒体中に含む染料組成物。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の少なくとも1つの蛍光染料および少なくとも1つの還元剤を適切な化粧料用媒体中に含む染料組成物。
【請求項12】
前記還元剤が、システイン、ホモシステイン、チオ乳酸、これらのチオールの塩、ホスフィン、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオグリコール酸、さらにそのエステル、ホウ化水素およびその誘導体、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、第4級アンモニウム塩、ならびにカテコールボランから選択される、請求項11に記載の染料組成物。
【請求項13】
ケラチン物質のジスルフィド結合を還元し得る還元剤が場合により存在する下で、請求項1から9のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の少なくとも1つの蛍光染料を適切な化粧料用媒体中に含む、染料組成物が、該ケラチン物質に塗布される、ケラチン物質の染色方法。
【請求項14】
式(II)のチオール蛍光染料が保護基Yを含む場合、塗布する前に脱保護段階を行う、請求項13に記載の染色方法。
【請求項15】
前記ケラチン物質が、6以下の色調の高さを有する暗色ケラチン繊維であることを特徴とする、請求項14に記載のケラチン物質の染色方法。
【請求項16】
前記還元剤が、式(I)または(II)の蛍光染料の塗付前または塗布後に塗布される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記式(I)または(II)の蛍光染料が前記還元剤と同時に塗付される、請求項13から15のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項18】
前記組成物が酸化剤を含む、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ケラチン繊維に酸化剤を塗付することからなる追加の段階を含む、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記式(I)または(II)の蛍光染料が、前記組成物の全重量に対して、0.001重量%から50重量%の間の量で存在する、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第1区画が、請求項1から9に記載の蛍光染料を含む染料組成物を含有し、第2区画が、ケラチン物質のジスルフィド結合を還元し得る還元剤を含有する、多区画デバイス。
【請求項22】
酸化剤を含有する第3区画を含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
6以下の色調の高さを有する暗色である、ヒトの暗色ケラチン繊維を染色するための、請求項1から9に記載の蛍光染料の使用。
【請求項24】
6未満の色調の高さを有する暗色ケラチン繊維を明色化するための、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2009−534301(P2009−534301A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500903(P2009−500903)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050999
【国際公開番号】WO2007/110533
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】