説明

多孔質PTFE層の形成方法、ならびにこの形成方法により得られる多孔質PTFE層および成型品

【課題】表面にシワや変形を発生させることなく多孔質PTFE層を簡便に形成することができ、しかも気体透過量等の性状の調節を容易に行うことが可能となる、多孔質PTFE層の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質PTFE層の形成方法は、(1):1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムと、下記工程(2)における加熱条件に耐えうる支持体(メッシュ等からなる棒状または板状の支持体が好ましい)とを、所定の手段を用いて下記工程(2)の加熱の際にスベリが生じないように組み合わせる工程、および(2):工程(1)の結果物を150℃以上、PTFEフィルムの融点未満の温度で5〜120分間(工程(1)で熱可塑性樹脂繊維等を用いられている場合は、好ましくはその融点〜320℃の温度で10〜60分間)加熱する工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムからなる多孔質PTFE層の形成方法、ならびに当該形成方法により得られる多孔質PTFE層および多孔質PTFE層付き成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質PTFEフィルムは優れた機械的強度特性を有し、メンブレンフィルター、電線およびケーブルのための絶縁テープなどの用途に好適なフィルムである。また、固体高分子電解質型等の燃料電池のガス透過膜や、ガス拡散電極として使用することも提案されている(特許文献1および2等)。
【0003】
このような多孔質PTFEフィルムは一般的に、カレンダリング工程から得られたPTFEフィルム(押出加工物)を延伸することによりフィルムの多孔性および強度を増大させ、PTFEフィブリルを延伸方向に配向させて製造される。得られるフィルムの多孔性は、フィブリル間に存在する間隔の大きさに依存する。
【0004】
上記延伸によってフィルムに形成される微細孔は、そのままでは延伸後にフィルムの弾性(伸長性)が回復するとともに閉じてしまい、フィルムの多孔性が保持されない。そこで、延伸工程の後、PTFEの結晶融点(327℃)より高いがその熱分解温度(370℃)より低い温度にPTFEフィルムを加熱し、PTFEポリマーを焼結することにより、フィルムの弾性を低下させ、微細孔のサイズや多孔性を維持するようにしている。
【0005】
しかし、上記焼結時にフィルムが収縮することにより、フィルムには「しわ」が形成されやすい。この問題を抑制するためには、例えば特許文献3に記載されているように、一軸延伸フィルムを調製する際に延伸方向に張力をかけて寸法を固定しながら加熱・焼結しするといった、特別の手段が必要とされている。
【0006】
一方、PTFEフィルムを用いたチューブ等の成型品について、所望の機能性を発揮しうる積層構造をいかに形成するかが研究開発の課題とされている。
例えば、特許文献4には、熱可塑性樹脂チューブ(内層)の外周面に焼成または未焼成多孔質PTFE層(外層)を積層接着させた構造を有する複合チューブが開示されているが、層間接着の方法としては、加熱(好ましくはPTFEの融点以上)により内層と外層を一体的に熱融着させる方法や、内層と外層との間に接着剤層を介在させる方法が用いられている[0013]。
【0007】
特許文献5に開示された多孔質複層中空糸の製造方法は、多孔質延伸PTFEチューブ(支持層)の外周面上に凹凸を付与した後に、多孔質延伸樹脂シート(濾過層)を巻き付け、この巻き付けと同時あるいは巻き付け後に荷重をかけて当該多孔質延伸PTFEチューブと多孔質延伸樹脂シートとを密着させ、これらを焼結一体化することを特徴としている[請求項1]。そして、凹凸の付与によるチューブとシートとの位置ずれ防止および荷重によるシートの浮きの防止により、両者の密着性を高めることができ[0039]、さらに、焼結を多孔質延伸PTFEチューブおよび多孔質延伸樹脂シートの融点以上の温度(例:実施例1では350℃)で焼結することにより、両者をより強固に融着一体化できる[0040]と説明されている。
【0008】
特許文献6には、延伸膨張PTFE膜に未焼成PTFE粒子の分散液をスプレーコーテ
ィングした後、高温で加熱することにより、延伸膨張PTFE膜の上に延伸膨張を行っていない焼成多孔質PTFEの層が形成された多孔質複合材料を製造する方法が記載されている。より具体的には、軟鋼板に延伸膨張PTFE膜を巻いて覆い、これに未焼成PTFE粒子の分散液をスプレーコーティングした後、100℃で2時間、次いで280℃で0.5時間、最後に350℃で2時間加熱する製造方法が、実施例1に記載されている。
【0009】
上記引用文献4〜6に記載されたPTFEフィルム層の形成方法ではいずれも、PTFEフィルム層を密着させるためにPTFEの融点以上での加熱が行われているが(未焼成のPTFEフィルムが用いられていた場合は、結果的にこの際に焼成されることになる)、そのような高温で加熱すると多孔質PTFEの微細孔が崩れ易くなってしまい、孔径が変わるもしくは溶けて孔がふさがる可能性がある。
【0010】
また、PTFEフィルムの微細孔のサイズは、延伸の程度(支持体に巻き付ける前に予め延伸しておくことも、支持体に巻き付けながら延伸することも可能)に加えて、PTFEの融点以上で加熱した後に行われる急冷、除冷操作によっても変動するが、最終的な微細孔のサイズを所望のものとするためには、微妙な調整が必要とされる。
【0011】
このようなことから、従来の方法では、得られるPTFEフィルム層の気体透過量などの特性を自在に調節することは煩雑かつ困難であり、燃料電池のガス透過膜としての用途などに要求される所定の気体透過量を有するPTFEフィルム層の製造は実現されていなかった。
【特許文献1】特開2004−063200号公報
【特許文献2】特開2005−235519号公報
【特許文献3】特表平11−511707号公報
【特許文献4】特開平09−123302号公報
【特許文献5】特開2005−329405号公報
【特許文献6】特開平11−506987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、表面にシワや変形を発生させることなく多孔質PTFE層を簡便に形成することができ、しかもその気体透過量等の性状の調節を容易なものとする、多孔質PTFE層の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、1枚または必要に応じてFEP繊維で縫いつけるなどして仮接着した2枚以上の未焼成PTFEフィルムと支持体とを所定の手法により組み合わせ、未焼成PTFEの融点未満で加熱することにより、シワや変形を抑制しながらPTFEフィルム同士を「融着」させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
かかる本発明多孔質PTFE層の形成方法は、
(1)1枚または2枚以上の未焼成多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムと下記工程(2)における加熱条件に耐えうる支持体とを所定の方法で組み合わせる工程、および
(2)上記工程(1)の結果物を所定の条件で加熱する工程を有することを特徴とする。
【0015】
本発明における上記のPTFEフィルムと支持体とを組み合わせる工程(1)としては、典型的には以下の5つの態様が挙げられる。
1番目の態様は、支持体が板状である場合に、当該板状の支持体の片面に上記1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを積載し、当該PTFEフィルムの周縁の幅
1cm以上にわたる部分を当該支持体の裏側に回り込ませることにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程である。
【0016】
2番目の態様は、支持体が板状である場合に、上記1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを板状の支持体の片面に積載した後、部分的に圧着させることにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程である。
【0017】
3番目の態様は、支持体が板状である場合に、上記1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを板状の支持体の片面に積載した後、当該PTFEフィルムおよび板状の支持体を、熱可塑性樹脂繊維で縫い付けるか、またはバインダー樹脂で接着することにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程である。
【0018】
4番目の態様は、支持体が棒状である場合に、上記1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを当該棒状の支持体にスパイラル状に複数回巻き付ける工程である。
5番目の態様は、支持体が棒状である場合に、上記1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを当該棒状の支持体に巻き付けた後、当該PTFEフィルムおよび棒状の支持体を、熱可塑性樹脂繊維で縫い付けるか、またはバインダー樹脂で接着することにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程である。
【0019】
なお、上記1,2,および4番目の態様において、2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムは、あらかじめ、熱可塑性樹脂繊維で縫い付けられているか、またはバインダー樹脂で接着されていることが好ましい。
【0020】
一方、工程(2)では、150℃以上、PTFEフィルムの融点未満の温度で5〜120分間加熱することが好ましく、工程(1)の結果物に熱可塑性樹脂繊維またはバインダー樹脂が用いられている場合は、用いた樹脂繊維またはバインダー樹脂の融点〜320℃の温度で10〜60分間なされることがより好ましい。
【0021】
さらに、上述の熱可塑性樹脂繊維またはバインダー樹脂としては、「ネオフロンTMEFEP」(ダイキン工業(株)製)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、またはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)からなる繊維またはFEPまたはPFAを含有するバインダー樹脂などが好適であり、これらの繊維またはバインダー樹脂を用いた場合には、工程(2)の加熱は、200〜320℃の温度で10〜60分間なされることが好ましい。
【0022】
また、前記支持体の好ましい態様としては、メッシュ、不織繊維、組紐または織物からなる、板状または棒状の支持体が挙げられる。
上述のような多孔質PTFE層の形成方法により、シワや変形がなく、未焼成多孔質PTFEフィルム同士が融着して固定化された(さらには所定の気体透過量等の好ましい物性を有する)多孔質PTFE層や、支持体と該支持体表面に形成されたそのような多孔質PTFE層とからなる成型品が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シワや変形のない、1枚または2枚以上のPTFEフィルムからなる多孔質PTFE層を、大がかりな装置を用いず容易に、任意の形状の支持体上に形成することが可能となる。また、複数枚のPTFEフィルムを予め簡便な手法で仮接着しておくことにより、支持体へ一度に設置(巻き付け等)することができ、しかも従来よりも低温での加熱処理によりそれらを固定化(融着)することが可能であるため、製造工程の効率化が図れる。
【0024】
さらに、本発明によれば、複数枚のPTFEフィルムを用いて容易に積層多孔質フィルムを製造できるようになるため、複数枚のPTFEフィルムを用いて気体透過量等を調節することが行いやすくなる。複数枚のPTFEフィルムを用いた場合、例えばフィルムの調製過程で多少のイレギュラー(部分的に孔径が極端に大きくまたは小さくなる等)が発生したとしてもその影響を限定的なものにでき、また、性能の恒久性にも優れる。そのため、フィルムの膜厚、孔形状、気孔率およびフィルムの積層枚数等を適切に組み合わせて選択することにより、従来よりも安定的に所望の気体透過量を実現できるようになり、さらには、PTFEフィルムを1枚だけを用いたのでは実現できなかった性状を実現可能なものとし、各種の用途、例えば気液分離用途において有用な(これまで得られなかったような)性状を有する多孔質PTFE層および成型品を効率的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下の説明において、本発明で用いられる未焼成多孔質PTFEフィルムを単に「PTFEフィルム」とよぶことがある。
また、「多孔質PTFE層」は、1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムからなる層を指し、本発明の所定の工程に従って処理することにより、これらのPTFEフィルム同士は「融着」した状態になる。本発明においてPTFEフィルムが「融着する」とは、未焼成PTFEを融点未満の温度で加熱することにより、PTFEフィルム同士が固定化され、実用上問題ない程度に剥離しなくなることであり、従来の、未焼成PTFEの融点以上の温度での加熱による、いわゆる溶融一体化とは区別された状態を意味する。
【0026】
原材料
<未焼成多孔質PTFEフィルム>
本発明で用いる未焼成多孔質PTFEフィルムは特に限定されるものではなく、膜厚、孔形状、気孔率等の性状は適宜選択することが可能であり、各種延伸法により延伸されたものでもよい。未焼成多孔質PTFEフィルムは、一般的には、膜厚は30〜100μm程度であり、細孔直径は0.05〜30μm程度であり、気孔率は20〜95%程度であ
る。所定の性状を有する未焼成多孔質PTFEフィルムは、公知の方法により調製することが可能であり、商品として入手することも可能である。
【0027】
また、多孔質PTFE層をなすPTFEフィルムの枚数も特に限定されるものではないが、十分に融着させることを考慮すると、通常は1〜10枚程度であり、好ましくは2または3枚である。
【0028】
上述のような未焼成多孔質PTFEフィルムの性状およびその枚数の組み合わせ方は、最終的に得ようとする多孔質PTFE層またはその成型品の用途に適した所望の性状、例えば気体−液体分離膜として好ましい所定の範囲の気体透過量などが実現されるよう、適宜調整することが可能である。
【0029】
本発明において、上述した未焼成多孔性PTFEフィルムを2枚以上積層させる場合、これらのPTFEフィルム同士を「仮接着」しておくことは、PTFEフィルムの融着をより強固なものにすることができ、また、複数枚のPTFEフィルムを一回で支持体上に設置することができることから、好ましいことといえる。
【0030】
ここで「仮接着」するとは、複数枚のPTFEフィルムが容易に分離しない程度にフィルム同士を連結することを指す。この仮接着は、例えばテープ状のフィルムの長手方向の一端や、シート状のフィルムの周縁部のように、PTFEフィルムの一部に施せば十分であり、全面的に施す必要はない。
【0031】
本発明における仮接着のための手段は特に限定されないが、例えば、(a)熱可塑性樹脂繊維で縫い付ける方法や、(b)バインダー樹脂(ディスパージョン、接着剤)を塗布する方法などによることが好ましい。これらの仮接着のために用いる樹脂は、PTFEフィルムよりも融点が低いものが望ましい。これらの方法については、公知の材料、装置、手法等を適宜利用することが可能である。
【0032】
本発明では、上記熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、「ネオフロンTMEFEP」(ダイキン工業(株)製、ETFE系フッ素樹脂)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)またはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)からなる繊維が好適であり、また、バインダー樹脂としては、FEP,PFAを含有するバインダー樹脂が好適であるが、その他の樹脂を利用した繊維またはバインダー樹脂を使用することも可能である。
【0033】
なお、詳細は後述するが、PTFEフィルム同士だけでなく支持体(不織布等)も一緒にPTFEフィルムと仮接着させる態様も本発明に含まれ、かかる場合には、本発明の工程(2)におけるスベリを抑制するととともに、PTFEフィルムと支持体との結合をより強固なものとすることができる。
【0034】
<支持体>
本発明で用いる支持体は、本発明の形成方法の加熱工程(2)においてPTFEフィルムが収縮する際にシワや変形が起きないようにする役割を果たすと共に、支持体と多孔質PTFE層とからなる成型品に所定の物性や機能をもたらすものである。より詳細には、流体・固体が透過可能な孔・空隙を有し、金属・有機化合物・無機化合物のいずれかまたはこれらの複合物から構成され、使用条件に合う任意形状からなる支持体であるが、その材質や形状などの態様は、成型品の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0035】
支持体の材質としては、例えば、ステンレス(SUS)等の金属、セラミック、またはポリマー(PTFE繊維であってもよい)などからなるメッシュ、あるいはガラス繊維などを用いた不織布、不織繊維、繊維束や、組紐、織物などが挙げられる。上記メッシュの網目サイズや、支持体の厚さなどに制限はなく、PTFEフィルムの圧損を防止できるよう適宜選択することができる。
【0036】
また、本発明における支持体の形状としては「棒状」および「板状」が代表的であるが、その形状は特に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で自由に改変することが可能である。例えば、棒状の支持体を用いた場合は、得られるチューブ様の成型品の内部を気体が流通することも可能となる。
【0037】
上記「板状」の支持体とは、PTFEフィルムを積載する面の縦、横等の長さに比べて、当該支持体の厚さが比較的小さいような支持体をいう。その厚さや固さは特に限定されず、例えば、不織布のようなシート状の支持体も本発明の「板状」の支持体に該当する。
【0038】
一方、上記「棒状」の支持体とは、その断面形状が(略)円形、(略)楕円形、(略)多角形等であり、長手方向に一定の長さを有するような支持体をいう。また、このような棒状の支持体は、中空であっても(断面の中心周辺が空いている)そうでなく中が詰まった状態でもよい。
【0039】
このような支持体のなかでも、メッシュ、不織繊維、組紐または織物からなる、板状または棒状の支持体は、PTFEフィルムとも十分に融着し、多孔質PTFE層のシワや変形を抑制することができ、しかも産業上有用な成型品が得られることなどから、本発明に
おける好ましい支持体といえる。
【0040】
なお、本発明の多孔質PTFE層の形成方法では、後述するように、通常150℃以上の温度での加熱処理がなされるので、支持体の材質はこのような加熱条件に耐えうる(溶融、変形しない)ものから選択される。支持体として不織布を用いる場合は、加熱によりバインダーが溶融または燃焼してしまうおそれがあるため、バインダーが入っていない不織布を選択することが望ましい。
【0041】
また、表面に銀メッキ処理を施した銅線のような「心材」を支持体とし、工程(2)の後にこの心材を分離除去するようにして、多孔質PTFE層からなる中空のチューブを製造することも可能である。上記心材として伸び性の高い材質(銅、軟銅、銀、金等)からなるものを用いれば、心材を引張して細くすることにより、多孔質PTFE層から容易に分離除去できる。
【0042】
積層多孔質フィルムの形成方法
本発明による積層多孔質フィルムの形成方法は、少なくとも、以下に述べるような工程(1)および工程(2)を有するが、所望によりその他の工程を組み合わせて行うことも可能である。
【0043】
<工程(1)>
本発明の積層PTFE多孔質フィルムの形成方法では、まず、1枚または2枚以上の未焼成PTFEフィルムと支持体上とを所定の方法で組み合わせる工程が行われる。この工程は、主として、工程(2)の加熱の際にPTFEフィルムのスベリ(シワ発生の原因となる)を抑制することを目的として行われる工程である。かかる工程(1)としては、典型的には以下の5つの態様が挙げられる。1〜3番目は支持体が板状である場合について、4〜5番目は支持体が棒状である場合についてのものである。
【0044】
1番目の態様は、1枚または2枚以上のPTFEフィルムを板状の支持体の片面に積載し、当該PTFEフィルムの周縁部を当該支持体の裏側に回り込ませるものである(図1参照)。このような方法を用いるだけでも、PTFEフィルムと支持体との摩擦等により、工程(2)でのスベリを抑制することが可能である。PTFEフィルムのどの程度を裏側に回り込ませるかは、用いるPTFEフィルムや支持体に応じて適宜設定することができるが、一般的には、PTFEフィルムの周縁の幅1cm以上にわたる部分を支持体の裏側に回り込ませればよい。
【0045】
2番目の態様は、1枚または2枚以上のPTFEフィルムを板状の支持体の片面に積載した後、当該PTFEフィルムと支持体とを部分的に圧着させるものである。圧着する部位や圧力等の条件は、工程(2)でのスベリが生じないよう、用いるPTFEフィルムや支持体に応じて適宜設定することができる。例えば、i)PTFEフィルムを板状の支持
体の片面に積載する、ii)ロ字型の金型を上記PTFEフィルムの上に設置する、iii)
「支持体/PTFEフィルム/金型」がずれないよう、さらに周部にガイドを設けてもよい、iv)「支持体/PTFEフィルム/金型」一体物の上下に金属板を設ける、v)上記ivで設けた金属板を、例えばC型クランプで締め付ける、という手段を採用することがで
きる(図2参照)。C型クランプ等締め付ける際の圧力は、通常0.01〜2.0kg/cm2であり、例えばFEPディスパージョンの融着補助とする(下記3番目の態様との組
み合わせ、詳細は後述)場合などには0.5〜2.0kg/cm2が好ましい。なお、この
2番目の態様を採用する場合は、装置、器具等を用いてPTFEフィルムと支持体との一部を圧着させたままの状態で、工程(2)における加熱処理を行う。
【0046】
3番目の態様は、1枚または2枚以上のPTFEフィルムを板状の支持体の片面に積載
した後、当該PTFEフィルムおよび板状の支持体を、前述の「仮接着」で用いる手段と同様に、熱可塑性樹脂(好ましくは「ネオフロンTMEFEP」、FEP、PFA)からなる繊維で縫い付けるか、または、バインダー樹脂(好ましくはFEPまたはPFAを含有するもの)で接着するものである(図3参照)。このようにして、PTFEフィルム同士だけでなく板状の支持体とも固定化することによって、工程(2)でのスベリを抑制することが可能である。
【0047】
4番目の態様は、1枚または2枚以上のPTFEフィルムを棒状の支持体にスパイラル状に複数回巻き付けるものである(図4参照)。このようにして巻き付けた場合、工程(2)の加熱の際に、棒の長手方向への収縮よりも棒を締め付ける方向への収縮を起こし、棒の形状に合わせてPTFEフィルムが収縮するため、スベリは生じずシワもできない。したがって、PTFEフィルムと棒状の支持体とを縫い付け等により固定化する必要はないが、巻き付けた後に支持体の端面のみを縫いつけることが望ましい。
【0048】
5番目の態様は、1枚または2枚以上のPTFEフィルムを棒状の支持体に巻き付けた後、当該PTFEフィルムおよび棒状の支持体を、前記「仮接着」や3番目の態様と同様、熱可塑性樹脂(好ましくは「ネオフロンTMEFEP」、FEP、PFA)からなる繊維で縫い付けるか、または、バインダー樹脂(好ましくはFEPまたはPFAを含有するもの)で接着するものである(図5参照)。上述のように、PTFEフィルムを棒状の支持体にスパイラル状に巻き付けた場合はこのような固定化のための手段はなくてもよいが、図5に示したようにPTFEフィルムを「のり巻き状」に棒状の支持体に巻き付けた場合などに用いることで、工程(2)におけるスベリを防止することができる。
【0049】
上述のような各態様での処理(巻き付け等)は、公知の適切な手段を用いて行うことが可能である。
さらに、本発明において、上記1,2,3番目の態様で示した手段を併用することはより好ましい。例えば、上記1番目および2番目の態様の手段を併用し、PTFEフィルムの周縁部を板状の支持体の裏側に回り込ませた上で、支持体のPTFEフィルムを積載した面の縁を圧着させると、より確実にスベリを防止しシワを抑制することが可能となる。
【0050】
なお、工程(1)において2枚以上のPTFEフィルムを支持体と組み合わせる場合(上記1,2,4番目の態様など)、これらは前述のようにして仮接着されていても、仮接着されていなくてもよく、いずれの場合にも下記工程(2)における加熱により融着した多孔質PTFE層が得られる。また、棒状の支持体にスパイラル状に巻き付けるのであれば、積層構造において「糊代」を揃えるようにするといった観点からは、1枚ずつ複数回にわたってではなく、複数枚のPTFEフィルムを一度に支持体上に設置するようにすることが望ましい。
【0051】
<工程(2)>
続いて、上記工程(1)の結果物(所定の方法により組み合わされた支持体および1枚または2枚以上のPTFEフィルム)を所定の温度で加熱する工程が行われる。この工程(2)による加熱は、PTFEフィルムを融着させると共に、PTFEフィルムの孔を調節する(ヒートセット)役割を果たす。
【0052】
工程(2)における加熱は、PTFEフィルムの融点未満の温度で行われる。ここで、「未焼成多孔質PTFEの融点」とは、一般的には約340℃であるが、用いる未焼成多孔質PTFEの性状等によって微妙に変動しうるものであり、実際の融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて決定することができる。
【0053】
一方、延伸加工により得られた未焼成多孔質PTFEフィルムは、その製造時の温度以
上で加熱すると収縮し、融着に寄与すると考えるが、加熱温度が低いと仮接着させた仮接着フィルム同士、あるいはPTFEフィルムと支持体との融着が弱くなる場合もあるので、加熱温度の下限に留意し、適切に調整する必要がある。
【0054】
仮接着フィルムの仮接着が、前述の3番目または5番目の態様のように「ネオフロンTMEFEP」、FEP、PFA等の繊維またはディスパージョンを用いてなされた場合、それらの樹脂の融点以上の温度で加熱することは、樹脂の融解がPTFEフィルム同士、またはPTFEフィルムと支持体との固定化に寄与するため、一層望ましい。上記各樹脂の融点は、FEP:約260℃、PFA:約310℃、「ネオフロンTMEFEP」:155〜200℃である。
【0055】
これらのことから、本発明の工程(2)の加熱温度は、通常は150℃以上、PTFEフィルムの融点未満の温度であるが、仮接着や、PTFEフィルムと支持体との組み合わせにおいて、熱可塑性樹脂やバインダー樹脂が用いられている場合には、用いた樹脂繊維またはバインダー樹脂の融点〜320℃が好ましく、200〜320℃がより好ましい。
【0056】
また、この工程の加熱時間は適宜調整することが可能であるが、通常5〜120分間、好ましくは10〜60分間である。加熱後は、公知慣用の手法を用いて、徐冷または急冷により除熱すればよい。
【0057】
なお、上述のような加熱によりPTFEフィルム同士が「融着」する原理の詳細は明らかにされていないが、一つには静電気が関与しているものと考えられる。また、本発明の方法によればPTFEフィルムはシワを形成することなく自己収縮するため、シワによりできている膜間の空気層がなくなり、より密着した状態を生み出すこと(自然圧着)も、上記「融着」に寄与していると考えられる。
【0058】
<その他の工程>
本発明では、上記工程(1)および(2)以外に、その他の工程を適宜設けることが可能である。
【0059】
例えば、上記工程(1)および(2)の後、必要に応じて、得られた多孔質PTFE層全体を加圧するための工程を設けてもよい。上述のような加熱による融着のみでも十分に固定化された多孔質PTFE層が形成されるが、さらに加圧することでPTFEフィルム間の空気層がより残存しにくくなり、融着力を一層向上させることができる。この際の加圧は、多孔質PTFE層の孔が潰れることのないよう圧力を適切に調節して行えばよいが、特に流体(気体・液体)を用いて加圧すると、孔を潰すことなく多孔質PTFE層を支持体の形状に沿うよう変形させて密着させることができるため好適である。
【0060】
また、本発明の方法に従って得られた成型品は、通常は圧力のかかる条件下で使用するためPTFEフィルムと支持体とを分離せずに使用するが、融着した多孔質PTFE層のみを支持体から分離することも可能であり、そのための工程を設けてもよい。支持体と多孔質PTFE層との分離は容易に行うことができ、例えば、FEPなどの縫い付けによる仮接着が施されていない部分を打ち抜くようにすればよい(この仮接着が施された部分は、融解したFEPにより比較的強固に物理的に結合している)。
【0061】
なお、FEPなどの縫い付けによる仮接着が施されていない場合には、重力等により多孔質PTFE層と支持体とが分離しないようにするための手段を別途に施してもよい。例えば、前述の加圧工程において、多孔質PTFE層と支持体とを全面的に、あるいは周辺部等のみ部分的に、シール材や接着剤を用いて加圧接着させ、これらが一体化したものを成型品として提供することができる。
【0062】
積層多孔質フィルムおよび成型品の用途
上述のような本発明の多孔質PTFE層の形成方法を用いることにより、板状または棒状の支持体上に1枚または2枚以上のPTFEフィルムからなる多孔質PTFE層を形成することができるとともに、そのような支持体と多孔質PTFE層とからなる成型品が得られる。
【0063】
例えば、板状のステンレス(SUS)メッシュを支持体とした場合は、その上に多孔質PTFE層が形成されたシート状の成型品となり、一方、棒状の不織繊維を支持体とした場合には、多孔質PTFE層に該不織繊維が内包されたチューブ状の成型品(繊維内包型積層PTFE多孔質チューブ)となる。
【0064】
また、不織布または不織繊維と多孔質PTFE層とが融着した成型品は、ガス流通によるPTFEフィルムの圧損(微細孔の変形)を防止でき、単位時間あたりの透過ガス量を長期にわたり一定に保つ機能を備えていることなどから有用である。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
1枚の二軸延伸多孔質PTFEフィルム(YMT社製、サンプル品。厚さ30μm、寸法16cm×16cm。)をSUS板(厚さ1.5mm)の片面(表)に載せ、このPT
FEフィルムの四方の周縁部をSUS板の裏に折り返した後、表を上側にして電気炉にて250℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後、多孔質PTFE層をSUS板から一旦分離して直径約23mmの円形に打ち抜き、別途同じ寸法に加工したSUSメッシュ板(厚さ250μm、周囲のみドーナツ状に非メッシュ部がある)と重ね合わせて成型品とした。上記の熱処理後のPTFEフィルムの表面にシワは形成されなかった。
【0066】
[実施例2]
実施例1に記載の方法において、二軸延伸多孔質PTFEフィルムの枚数を1枚から3枚に変更し、それ以外は同様にして成形品を得た。実施例1と同様、熱処理後のPTFEフィルムの表面にシワは形成されなかった。
【0067】
[実施例3]
実施例1に記載の方法において、二軸延伸多孔質PTFEフィルムの枚数を1枚から5枚に変更し、それ以外は同様にして成形品を得た。実施例1と同様、熱処理後のPTFEフィルムの表面にシワは形成されなかった。
【0068】
[実施例4]
1枚の二軸延伸多孔質PTFEフィルムをガラス製不織布(厚さ300μm、寸法15cm×15cm)の片面(表)に積載し、このPTFEフィルムの四方の周縁部1cmをガラス製不織布の裏に折り返した後、電気炉にて150℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後、多孔質PTFE層とガラス製不織布を一緒に直径約23mmの円形に打ち抜き、成型品とした。上記の熱処理後のPTFEフィルムの表面にシワは形成されなかった(図6参照)。
【0069】
[実施例5]
実施例4に記載の方法において、二軸延伸多孔質PTFEフィルムの枚数を1枚から3枚に変更し、それ以外は同様にして成形品を得た。実施例4と同様、熱処理後のPTFEフィルムの表面にシワは形成されなかった。
【0070】
[比較例1]
1枚の二軸延伸多孔質PTFEフィルムをSUS棒に掛けて棒の両側に垂らし、加熱に対し自由に収縮できるような状態で電気炉内に設置し、250℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後、多孔質PTFE層を直径約23mmの円形に打ち抜き、同じ寸法に打ち抜いたSUSメッシュ板と重ね合わせて成型品とした。上記の熱処理後のPTFEフィルムの表面にはシワが形成されていた(図7参照)。
【0071】
[比較例2]
比較例1に記載の方法において、二軸延伸多孔質PTFEフィルムの枚数を1枚から3枚に変更し、それ以外は同様にして成形品を得た。なお、比較例2により得られた多孔質PTFE層は融着していなかったので、フィルムを打ち抜いた後に重ね合わせたものを成型品に用いた。比較例1と同様、熱処理後のPTFEフィルムの表面にはシワが形成されていた。
【0072】
[試験例1:CO2透過量測定試験]
実施例1〜5および比較例1〜2により得られた成形品を用いて、CO2の透過量を測
定した。結果は表1の通りである。
【0073】
【表1】

【0074】
[試験例2:耐メタノール圧評価試験]
実施例5により得られた多孔質PTFE層を単独で直径約23mmの円形に打ち抜き、同じ寸法に打ち抜いたSUSメッシュ板と重ね合わせて成型品とし、種々の濃度のメタノール溶液について耐圧限界を評価した。試験は室温下で行い、メタノール溶液をCO2
スにて加圧した。CO2ガスによる一定加圧条件下で、フィルム背面へメタノールが染み
出した圧力を耐圧限界とした。結果は表2の通りである。
【0075】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、工程(1)の1番目の態様において、PTFEフィルム2を板状の支持体1aの片面に積載し、当該PTFEフィルムの周縁部を当該支持体の裏側に回り込ませる様子[a]と、そのようにして組み合わせた後の様子[b]を示す(いずれも裏面から見た状態)。
【図2】図2は、工程(1)の2番目の態様において、PTFEフィルム2を板状の支持体1aの片面に積載し、ロ字型金型3、金属板4およびC型クランプ5を用いて、PTFEフィルムと支持体の周縁部を部分的に圧着する様子[a]を示す。この態様では、さらに周部にロ字型のガイド6を設けるようにしてもよい[b]。
【図3】図3は、工程(1)の3番目の態様において、PTFEフィルム2を板状の支持体1aの片面に積載し、これらをFEP等からなる繊維で縫いつける(仮接着する)様子を示す。
【図4】図4は、工程(1)の4番目の態様において、3枚のPTFEフィルム1を仮接着し[a]、これらを棒状の支持体1bにスパイラル状に複数回巻き付ける[b]様子を示す。
【図5】図5は、工程(1)の5番目の態様において、PTFEフィルム1を棒状の支持体1bに巻き付け[a]、これらをFEP等からなる繊維で縫いつける(仮接着する)[b]様子を示す。
【図6】図6は、実施例4で得られた、シワが形成されなかったPTFEフィルムの写真である。
【図7】図7は、比較例1で得られた、シワが形成されたPTFEフィルムの写真である。
【符号の説明】
【0077】
1a…支持体(板状)
1b…支持体(棒状)
2…PTFEフィルム
3…ロ字型金型
4…金属板
5…C字クランプ
6…ロ字型ガイド
10(点線部)…仮接着部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1枚または2枚以上の未焼成多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを、下記工程(2)における加熱条件に耐えうる板状の支持体の片面に積載し、当該PTFEフィルムの周縁の幅1cm以上にわたる部分を当該支持体の裏側に回り込ませることにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程、および
(2)上記工程(1)の結果物を150℃以上、PTFEフィルムの融点未満の温度で5〜120分間加熱する工程を有することを特徴とする、多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項2】
(1)1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを、下記工程(2)における加熱条件に耐えうる板状の支持体の片面に積載した後、部分的に圧着させることにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程、および
(2)上記工程(1)の結果物を150℃以上、PTFEフィルムの融点未満の温度で5〜120分間加熱する工程を有することを特徴とする、多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項3】
前記2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルム同士が、あらかじめ、熱可塑性樹脂繊維で縫い付けられているか、またはバインダー樹脂で接着されており、
前記工程(2)の加熱が、用いた樹脂繊維またはバインダー樹脂の融点〜320℃の温度で10〜60分間なされることを特徴とする、請求項1または2に記載の多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項4】
(1)1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを、下記工程(2)における加熱条件に耐えうる板状の支持体の片面に積載した後、当該PTFEフィルムおよび板状の支持体を、熱可塑性樹脂繊維で縫い付けるか、またはバインダー樹脂で接着することにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程、および
前記工程(2)の加熱が、用いた樹脂繊維またはバインダー樹脂の融点〜320℃の温度で10〜60分間なされることを特徴とする、多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項5】
(1)1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを、下記工程(2)における加熱条件に耐えうる棒状の支持体にスパイラル状に複数回巻き付けることにより、当該PTFEフィルムと棒状の支持体とを組み合わせる工程、および
(2)上記工程(1)の結果物を150℃以上、PTFEフィルムの融点未満の温度で5〜120分間加熱する工程を有することを特徴とする、多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項6】
前記2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムが、あらかじめ、熱可塑性樹脂繊維で縫い付けられているか、またはバインダー樹脂で接着されており、
前記工程(2)の加熱が、用いた樹脂繊維またはバインダー樹脂の融点〜320℃の温度で10〜60分間なされることを特徴とする、請求項5に記載の多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項7】
(1)1枚または2枚以上の未焼成多孔質PTFEフィルムを、下記工程(2)における加熱条件に耐えうる棒状の支持体に巻き付けた後、当該PTFEフィルムおよび棒状の支持体を、熱可塑性樹脂繊維で縫い付けるか、またはバインダー樹脂で接着することにより、当該PTFEフィルムと板状の支持体とを組み合わせる工程、および
前記工程(2)の加熱が、用いた樹脂繊維またはバインダー樹脂の融点〜320℃の温度で10〜60分間なされることを特徴とする、多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項8】
前記繊維またはバインダー樹脂が、「ネオフロンTMEFEP」(ダイキン工業(株)製)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、またはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)からなる繊維
またはFEPまたはPFAを含有するバインダー樹脂であり、
前記工程(2)の加熱が、200〜320℃の温度で10〜60分間なされることを特徴とする、請求項3、4、6または7のいずれかに記載の多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項9】
前記板状または棒状の支持体がメッシュ、不織繊維、組紐または織物からなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質PTFE層の形成方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法により得られることを特徴とする多孔質PTFE層。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法により得られることを特徴とする、支持体と当該支持体表面に形成された多孔質PTFE層とからなる成型品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−110562(P2008−110562A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295753(P2006−295753)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】