説明

多層セラミック基板およびその製造方法

【課題】複数のセラミック層を積層してなり、内部に焼成時の反りを抑制し、電気的に独立した金属層を有し、反りなどの変形が抑制されており、且つ電気的に信頼性の高い多層セラミック基板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】表面3および裏面4を有し、且つ複数のセラミック層s1〜s7を積層してなる基板本体2と、該基板本体2の厚み方向における表面3と裏面4との中間で且つ該基板本体2の平面方向に沿って位置する仮想の中間平面cfよりも、該基板本体2の表面3側に位置するセラミック層s1〜s4間に形成された平面状の配線層p1〜p3と、中間平面cfよりも基板本体2の裏面4側に位置するセラミック層s4〜s6間に形成され且つ電気的に独立した金属層m1,m2と、を備えた多層セラミック基板1aであって、該金属層m1,m2は、基板本体2の裏面4側における最外側のセラミック層s7とこれに隣接して積層されたセラミック層s6との間には、形成されていない、多層セラミック基板1a。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセラミック層を積層してなり、内部に焼成時の反りを抑制でき、電気的に独立した金属層を有する多層セラミック基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のグリーンシートを積層した後に行う焼成時の反りや変形を抑制するため、積層すべき複数のグリーンシートの少なくとも1枚に、セラミック多層基板となる製品部分に導体パターンと、その外側の不要部分に電気的に独立した所謂ダミーパターンと、をほぼ同じ印刷密度でスクリーン印刷するようにしてなるセラミック多層基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記セラミック多層基板の製造方法によれば、上記グリーンシートにおいて、導体パターンが位置する製品部分と、ダミーパターンが位置する不要部分との厚み差が少ないので、これを含む複数のグリーンシートを積層・圧着した際の加圧を均一化できると共に、焼成工程の昇温過程における収縮挙動のバランスが取れるため、焼成時の反りや変形を抑制できる、という効果が得られる。
【0003】
ところで、複数のセラミック層を積層する多層セラミック基板では、その厚み方向における一方の表面側のセラミック層間に平面状の配線層を形成する場合に、焼成時の反りや変形を抑制するため、厚み方向における他方の表面(裏面)側に上記配線層と同様なパターンで且つ電気的に独立した所謂ダミーパターンを、予め、上記の位置となるグリーンシートの表面に形成することが行われている。これによって、焼成時におけるグリーンシート積層体の厚み方向における導電体層の分布密度のバランスが取れ、上記反りなどを抑制することが可能である。
上記のように、多層セラミック基板の表面側に複数の配線層を配設し、その裏面側にも同数のダミーパターンを配設する場合、追って最下層のセラミック層となるグリーンシートでは、その表面に平面状のダミーパターンとなる導体ペーストが平面状に印刷され、且つその裏面には、複数の外部接続端子となる導体ペーストが所定の間隔を置いて、例えば、格子状にして印刷される。
【0004】
しかし、前記導体ペーストには、Wなどの金属粉末の他にメチルエチルケトン(以下、MEKと称する)などの揮発性の溶剤が含まれている。そのため、最下層のセラミック層となる上記グリーンシートは、溶剤成分の揮発による平面方向に沿った収縮作用によって、焼成工程の前に反りなどの変形が生じることがある。その結果、該反りを有するグリーンシートを含む複数のグリーンシートを積層・圧着し、更に焼成して得られる多層セラミック基板では、最下層のセラミック層とその上に積層されたセラミック層との間において、ビア導体相互の位置が不整合となって断線を生じたり、上記ダミーパターンがビア導体と不用意に接触して無用な電気的短絡を誘発するなどの不具合を招来する、というおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−260844号公報(第1〜6頁、図1〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、複数のセラミック層を積層してなり、内部に焼成時の反りを抑制し、且つ電気的に独立した金属層を有し、反りなどの変形が抑制されており、電気的に信頼性の高い多層セラミック基板、およびその製造方法を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、基板本体の表面側に配置する平面状の配線層に対して厚み方向で導電体層のバランスを電気的に独立した金属層を、裏面側の最外層のセラミック層とその直上に積層されたセラミック層との間には配置しない、ことに着想して成されたものである。尚、本発明において、基板本体の表面と裏面とは、互いに相対的な呼称である。
即ち、本発明の多層セラミック基板(請求項1)は、表面および裏面を有し、且つ複数のセラミック層を積層してなる基板本体と、該基板本体の厚み方向における表面と裏面との中間で且つ該基板本体の平面方向に沿って位置する仮想の中間平面よりも、該基板本体の表面側に位置する上記セラミック層間に形成された平面状の配線層と、上記中間平面よりも基板本体の裏面側に位置する上記セラミック層間に形成され且つ電気的に独立した金属層と、を備えた多層セラミック基板であって、上記金属層は、上記基板本体の裏面側における最外側のセラミック層とこれに隣接して積層されたセラミック層との間には、形成されていない、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、前記基板本体の裏面側における最外側のセラミック層とこれに隣接して積層されたセラミック層との間には、電気的に独立した金属層が形成されていない。これに起因し、製造時において、複数の外部接続端子が裏面に形成されている上記最外側のセラミック層となったグリーンシートは、未焼成の上記外部接続端子を形成した際の導電性ペースト中に含まれる溶剤成分の揮発のみに基づき、平面方向に沿った収縮が抑制された状態で他のグリーンシートと積層・圧着され且つ焼成されている。そのため、基板本体の裏面側で上記最外側のセラミック層は、反りなどの変形の程度が少なくなっている。従って、かかる最外側のセラミック層とこれに隣接して積層されたセラミック層との間でのビア導体同士の不整合や不用意な前記短絡を可及的に抑制されているので、電気的に信頼性の高い多層セラミック基板とすることが可能である。
【0009】
尚、前記セラミック層は、少なくとも5層以上であり、且つ前記配線層および電気的に独立した所謂ダミーの金属層は、少なくともそれぞれ1層以上である。
また、前記セラミックは、アルミナなどの高温焼成セラミック、あるいは低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックを含む。
更に、前記基板本体の表面と裏面とは、互いに相対的な呼称であり、一方と他方とを入れ替えた形態も含まれる。
また、前記平面状の配線層は、ベタ状の接地層や電源層、あるいは、これに準じる比較的ベタ状パターンの配線層を含むものである。
加えて、前記仮想の中間平面は、複数のセラミック層のうち、厚み方向の中間に位置するセラミック層の内部を平面方向に沿って横切る形態のほか、厚み方向で隣接するセラミック層間を平面方向に沿って横切る形態も含む。後者の形態の場合には、中間平面が横切るセラミック層間に、焼成時の反りに影響が小さい配線層が形成されていても良い。
【0010】
また、本発明には、前記金属層は、該金属層が形成される前記セラミック層間の面積全体の80%以上を占めている、多層セラミック基板(請求項2)も含まれる。
これによれば、電気的に独立した単層または複数層の金属層は、形成される前記セラミック層間の面積全体の80%以上を占めているため、前記中間平面よりも基板本体の表面側に位置するセラミック層間に形成された平面状の配線層との間において、厚み方向の導電体層の分布バランスが容易に取られている。従って、製造された焼成時における収縮による反りなどの変形が更に抑制された多層セラミック基板となっている。
更に、本発明には、前記金属層が形成されない前記セラミック層間には、その面積全体の20%以下を占める配線層、ビアカバー導体、あるいは、ランド導体が形成されている、多層セラミック基板(請求項3)も含まれる。
これによれば、前記焼成時の反りを抑制されていると共に、前記中間平面よりも基板本体の表面側に形成された前記平面状の配線層と、最下層のセラミック層の裏面に形成された複数の外部接続端子との電気的導通を、ビア導体同士の間を接続する上記20%以下の範囲で形成されたビアカバー導体やランド導体、または小面積の配線層を介して確実に得ることできる。
【0011】
一方、本発明による多層セラミック基板の製造方法(請求項4)は、前記多層セラミック基板の製造方法であって、セラミック粉末を含む複数のグリーンシートのうち、これらを追って積層して形成される基板本体の厚み方向における中間で且つ該基板本体の平面方向に沿った仮想の中間平面よりも、該基板本体の表面側および裏面側のセラミック層となるグリーンシートごとの表面に、配線層あるいは電気的に独立した金属層を平面状に形成すると共に、該金属層は、追って基板本体の裏面側における最外層のセラミック層となるグリーンシートの表面と、該グリーンシートに隣接して積層され且つ上記中間平面よりも裏面側のセラミック層となるグリーンシートの裏面との間には、形成されない、導電体層の形成工程を含む、ことを特徴とする。
尚、上記導電体層は、上記配線層と金属層との総称である。
【0012】
これによれば、複数のグリーンシートのうち、中間平面よりも、該基板本体の表面側および裏面側のセラミック層となるグリーンシートごとの表面に、配線層あるいは電気的に独立した金属層が平面状に形成され、且つ裏面側で最外層のセラミック層となるグリーンシートの表面と、該グリーンシートに隣接して積層されるグリーンシートの裏面との間には、金属層が形成されない。そのため、裏面側で最外層となるグリーンシートは、裏面に形成された複数の外部接続端子を形成する際の溶剤からの揮発成分のみが揮発するため、焼成前の反りや変形を抑制できる。従って、前記のような電気的に高い信頼性を奏し得る多層セラミック基板を反りなどの変形を少なくして確実に製造することができる。
尚、前記グリーンシートは、少なくとも5層以上であり、且つ前記配線層および電気的に独立した所謂ダミーの金属層は、少なくともそれぞれ1層以上である。
また前記複数のグリーンシートは、相互の厚みに相違があっても良い。
更に、前記製造方法は、多数個取りの形態により行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による一形態の多層セラミック基板を示す垂直断面図。
【図2】本発明による異なる形態の多層セラミック基板を示す垂直断面図。
【図3】図1の多層セラミック基板を得るための一製造工程を示す概略図。
【図4】図3に続く製造工程を示す概略図。
【図5】図4に続く製造工程を示す概略図。
【図6】図5に続く製造工程および得られた多層セラミック基板を示す概略図。
【図7】図2の多層セラミック基板を得るための一製造工程を示す概略図。
【図8】図7に続く製造工程を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一形態の多層セラミック基板1aを示す垂直断面図である。
多層セラミック基板1aは、図1に示すように、表面3および裏面4を有し、複数のセラミック層s1〜s7を積層してなる基板本体2と、該基板本体2の厚み方向の中間で且つ該基板本体2の平面方向に沿って位置する仮想の中間平面cfよりも表面3側のセラミック層s1〜s4間に形成された平面状の配線層p1〜p3と、上記中間平面cfよりも裏面4側のセラミック層s4〜s6間に形成された平面状で且つ電気的に独立した金属層m1,m2とを備えている。
上記セラミック層s1〜s7は、厚みが約50〜500μmの範囲内にあり、アルミナなどの高温焼成セラミック、あるいは低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックからなる。
尚、上記中間平面cfは、基板本体2の厚み方向の中央に位置するセラミック層s4において、その厚さを2等分する位置で該セラミック層s4をその平面方向に沿って横切る部位に位置している。
【0015】
前記配線層p1〜p3は、厚みが約5〜25μmのW、Mo、Ag、またはCuなどの金属からなり、セラミック層s1〜s4間において、平面視でほぼ矩形を呈し、セラミック層s1〜s4間の面積の大部分(例えば、80%以上)を占める接地層あるいは電源層である。
また、前記金属層m1,m2も上記同様の金属からなり、セラミック層s4〜s6間において、平面視でほぼ矩形を呈し、セラミック層s1〜s4間ごとの面積の80%以上を占めると共に、上記配線層p1〜p3や次述するビア導体v1〜v7とは接続されず、電気的に独立した所謂ダミーの導電体層である。該金属層m1,m2は、本多層セラミック基板1aを製造する焼成時において、表面3側の配線層p1〜p3と厚み方向に沿った導電体層の分布バランスを取ることによって、基板本体2が反る事態を抑制するために配設されたものである。
そして、図1に示すように、最下層のセラミック層s7とその上に積層されたセラミック層s6との間には、上記同様の金属層mxが形成されていない。
【0016】
更に、図1に示すように、配線層p1〜p3間には、セラミック層s2,s3を貫通するビア導体v2,v3が形成され、基板本体2の表面3における中央付近に形成された複数のパッド5と最上層の配線層p1との間には、セラミック層s1を貫通するビア導体v1が形成され、これらの間の導通を可能としている。上記パッド5は、追って表面3上に搭載されるICチップなどの電子部品(図示せず)との導通に活用される。
一方、最下層の配線層p3と、基板本体2の裏面4の周辺部に形成された複数の外部接続端子6との間には、セラミック層s4〜s7の周辺部を貫通するビア導体v4〜v7、およびこれらの間に挟まれるようにセラミック層s4〜s7間に形成されたビアカバー導体vcを介して導通可能とされている。
【0017】
上記複数の外部接続端子6は、本多層セラミック基板1aを実装するプリント基板などのマザーボード(図示せず)との導通に活用される。上記ビア導体v4〜v7やビアカバー導体vcは、金属層m1,m2とは、接触せず、且つ所定の間隔を置いて離間している。
尚、セラミック層s6,s7間の上記ビアカバー導体vcは、該セラミック層s6,s7間の面積全体の20%以下を範囲内おいて形成されている。
また、前記パッド5、外部接続端子6、ビア導体v1〜v7、およびビアカバー導体vcも、前記同様の金属からなる。
【0018】
以上のような多層セラミック基板1aによれば、基板本体2の裏面4側における最外(下)側のセラミック層s7とこれに隣接して積層されたセラミック層s6との間には、電気的に独立した金属層mxが形成されていない。これに起因し、製造時において、複数の外部接続端子6が裏面4に形成されている上記最外(下)側のセラミック層s7となったグリーンシートは、外部接続端子6を形成した際の導電性ペースト中に含まれる溶剤成分の揮発のみによる平面方向に沿った収縮が抑制された状態で、他のグリーンシートと積層・圧着され且つ焼成されている。そのため、基板本体2の裏面4側で上記最外側のセラミック層s7は、反りなどの変形の程度が少なくなっている。
従って、該最外側のセラミック層s7とこれに隣接して積層されたセラミック層s6との間でのビア導体v6,v7間の不整合や、ビアカバー導体vcと金属層m2などとの不用意な短絡を可及的に低減されているので、本多層セラミック基板1aの電気的な信頼性を高く安定させることができる。
【0019】
図2は、前記と異なる形態の多層セラミック基板1bを示す垂直断面図である。
多層セラミック基板1bは、図2に示すように、前記同様の基板本体2、中間平面cf、配線層p1〜p3、ビア導体v1,v2、および該表面3の中央部に形成された複数のパッド5を備え、且つ最下層のセラミック層s7とその真上に積層されたセラミック層s6との間には、上記同様の金属層mxが形成されていない構造を有している。
該多層セラミック基板1bが前記多層セラミック基板1と相違するのは、上記中間平面cfよりも裏面4側のセラミック層s4〜s6間ごとで、それらの面積の80%以上を占めて形成され、且つ電気的に独立した金属層m1,m2が、上記セラミック層s4〜s6の周辺部に形成されている構造である。
そして、上記金属層m1,m2の中央部の抜き部(空隙)に、前記同様のビア導体v4〜v7が貫通し、これらの間にビアカバー導体vcが挟持されていると共に、これらを介して、裏面4の中央付近に形成された複数の外部接続端子6と、配線層p1〜p3およびパッド5とが導通可能とされている。
【0020】
以上のような多層セラミック基板1bにおいても、前記同様に基板本体2の裏面4側における最外(下)側のセラミック層s7とこれに隣接して積層されたセラミック層s6との間には、電気的に独立した金属層mxが形成されていないため、上記最外側のセラミック層s7は、反りなどの変形の程度が少なくなっている。
従って、該最外側のセラミック層s7とこれに隣接して積層されたセラミック層s6との間でのビア導体v6,v7間の不整合や、ビアカバー導体vcと金属層m2などとの不用意な短絡を可及的に抑制されているので、電気的な信頼性を高く安定している本多層セラミック基板1bとなっている。
尚、前記金属層m1,m2は、セラミック層s4〜s6間でそれらの面積の80%以上を占め、且つ電気的に独立していれば、例えば、図1に示した形態と図2に示した形態を併用するように、相互の形態が異なっていても良い。
【0021】
以下において、前記多層セラミック基板1aの製造方法について説明する。
予め、アルミナ粉末、所定の有機バインダ、および溶剤などを、所要量ずつ秤量・混合してセラミックスラリを製作し、これにドクターブレード法を施して、シート状を呈する7層のグリーンシートg1〜g7に成形した。
次に、図3に示すように、追って前記基板本体2で最上層のセラミック層s1となるグリーンシートg1の中央部、これに隣接して積層されるセラミック層s2,s3となるグリーンシートg2,g3における所定の位置、および前記中間平面cfが厚み方向の中間に位置するセラミック層s4やこれよりも基板本体2の裏面4側のセラミック層s5〜s7となるグリーンシートg4〜g7の周辺部ごとに対し、打ち抜き加工を施して、内径が約60〜200μmのビアホールhを形成した。
次いで、図3の左側で例示するように、上記ビアホールhごとに、W粉末やMEAKやその他の溶剤などを含む導電性ペーストを充填して未焼成のビア導体v1〜v7を形成した。
【0022】
次に、図4に示すように、前記グリーンシートg1の表面の中央部に対し、前記同様の導電性ペーストをスクリーン印刷して、未焼成で且つ平面視がほぼ円形である複数のパッド5を前記ビア導体v1と個別に接続させて形成した。また、前記グリーンシートg2〜g4の表面に対し、それらの周辺部を除いて前記同様の導電性ペーストをスクリーン印刷して、平面視がほぼ矩形で且つ未焼成の配線層p1〜p3を、前記ビア導体v2〜v4と個別に接続させて形成した。
更に、図4に示すように、前記グリーンシートg5,g6の表面に対し、それらの周辺部を除き且つ該表面ごとの80%以上の面積率で、前記同様の導電性ペーストをスクリーン印刷して、平面視がほぼ矩形で且つ未焼成の金属層m1,m2を形成した(導電体層の形成工程)。同時に、該グリーンシートg5,g6の表面における金属層m1,m2の周辺の外側で、且つ前記ビア導体v5,v6の上端面が露出する位置ごとに、上記同様の導電性ペーストをスクリーン印刷して、未焼成で且つ平面視がほぼ円形のビアカバー導体vcを個別に形成した。
【0023】
加えて、図4に示すように、最下層となる前記グリーンシートg7の表面の周辺部に前記同様の導電性ペーストをスクリーン印刷して、該表面の面積の20%以下の範囲で未焼成のビアカバー導体vcを形成すると共に、上記グリーンシートg7の裏面の周辺部に対し、前記同様の印刷行って、未焼成である複数の外部接続端子6を形成した。
前記導電性ペーストは、MEKのような揮発性の溶剤を含んでいるため、比較的広い面積で形成された形成された未焼成の配線層p1〜p3や、未焼成の金属層m1,m2から上記溶剤成分が、前記印刷直後より揮発した。その際、最下層となる上記グリーンシートg7は、表面の周辺部のみにビアカバー導体vcが形成され且つ、且つその裏面に未焼成の外部接続端子6が形成されたので、従来のように、該グリーンシートg7の表面にも、電気的に独立した未焼成の金属層mxが形成された場合に比べ、図4中の黒い矢印で示すように、平面方向に沿って生じた収縮力が、追って隣接して積層されるグリーンシートg6とほぼ同様の低いレベルとなった。その結果、グリーンシートg7の表面側が凹むような反りなどの変形に抑制されていた。
【0024】
次いで、図4中で白抜きの矢印で示すように、前記のようなグリーンシートg1〜g7を積層した後、これらを厚み方向に沿って圧着した。
その結果、図5に示すように、表面3および裏面4を有し、グリーンシートg1〜g7を積層してなる未焼成の基板本体2、前記中間平面cfよりも表面3側に位置する未焼成の配線層p1〜p3、上記中間平面cfよりも裏面4側に位置し、且つ電気的に独立した未焼成の金属層m1,m2、および未焼成のビア導体v1〜v7やビアカバー導体vcを内設するグリーンシート積層体Saが形成された。
そして、上記グリーンシート積層体Saに対し、所定の焼成工程を施した。
その結果、図6に示すように、表面3および裏面4を有し、セラミック層s1〜s7を積層してなる基板本体2と、前記中間平面cfよりも表面3側に位置する平面状の配線層p1〜p3と、上記中間平面cfよりも裏面4側に位置し、且つ電気的に独立した金属層m1,m2と、ビア導体v1〜v7やビアカバー導体vcを内設すると共に、表・裏面3,4にパッド5や外部接続端子6が形成された多層セラミック基板1aが得られた。
【0025】
以上のような多層セラミック基板1aの製造方法によれば、前記グリーンシートg1〜g7のうち、中間平面cfよりも、基板本体2の表面3側および裏面4側のセラミック層s2〜s6となるグリーンシートg2〜g6ごとの表面に、配線層p1〜p3あるいは電気的に独立した金属層m1,m2が平面状に形成され、且つ裏面3側で最外層のセラミック層s7となるグリーンシートg7の表面と、該グリーンシートg7に隣接して積層されるグリーンシートg6の裏面との間には、金属層mxを形成しなかった。その結果、裏面4側で最外層となるグリーンシートg7では、その表面の周辺部のみに形成したビアカバー導体vcと、その裏面に形成された複数の外部接続端子6とを形成する際に、前記導電性ペーストに含まれた溶剤成分からMEKなどが揮発したので、焼成前の反りや変形が抑制されていた。従って、ビア導体v6,v7間などにおいて、高い接続信頼性を奏する多層セラミック基板1aを反りなどの変形を少なくして確実に製造することができた。
【0026】
以下においては、前記多層セラミック基板1bの製造方法について説明する。
予め、前記同様にして7層のグリーンシートg1〜g7に成形した。
次に、図7に示すように、追って前記基板本体2で最上層のセラミック層s1となるグリーンシートg1の中央部と、これに隣接して積層されるセラミック層s2,s3となるグリーンシートg2,g3における所定の位置とに対し、打ち抜き加工を施し、前記同様のビアホールhを形成した。また、前記中間平面cfが内部に位置するセラミック層s4やこれよりも基板本体2の裏面4側のセラミック層s5〜s7となるグリーンシートg4〜g7の中央部ごとに対し、打ち抜き加工を施し、前記同様のビアホールhを形成した。
次いで、図7の左側で例示するように、上記ビアホールhごとに、W粉末やMEAKその他の溶剤などを含む導電性ペーストを充填して未焼成のビア導体v1〜v7を形成した。
【0027】
次に、図8に示すように、前記グリーンシートg1の表面の中央部に前記同様のパッド5を、前記グリーンシートg2〜g4の表面に前記同様の配線層p1〜p3を、前記同様の導電性ペーストをスクリーン印刷により形成した。
更に、図8に示すように、前記グリーンシートg5,g6の表面に対し、それらの中央部および周辺部を除き且つ該表面ごとの80%以上の面積率で、前記同様の印刷を施し、平面視がほぼ矩形で且つ未焼成の金属層m1,m2を形成した(導電体層の形成工程)。同時に、該グリーンシートg5,g6の表面における金属層m1,m2の抜け部の内側で、且つ前記ビア導体v5,v6の上端面が露出する位置ごとに、上記同様の印刷を施して、未焼成で且つ平面視がほぼ円形のビアカバー導体vcを個別に形成した。
【0028】
加えて、図8に示すように、最下層となる前記グリーンシートg7の表面の中央部と共に、その裏面の中央付近に対し、前記同様の印刷を施して、未焼成のビアカバー導体vcおよび外部接続端子6を個別に形成した。
上記導電性ペーストも、MEKのような揮発性の溶剤を含んでいるため、比較的広く形成された未焼成の配線層p1〜p3や、未焼成の金属層m1,m2から上記溶剤成分が、前記印刷直後から揮発した。その際、最下層となる上記グリーンシートg7は、その表面の中央部にのみ未焼成のビアカバー導体vcを形成し、且つ、その裏面に未焼成の外部接続端子6を平面方向に沿って形成した。
その結果、従来のように、該グリーンシートg7の表面にも、電気的に独立した未焼成の金属層mxが形成された場合に比べ、図8中の黒い矢印で示すように、平面方向に沿って生じた収縮力が、追って隣接して積層されるグリーンシートg6とほぼ同様の低いレベルとなった。そのため、グリーンシートg7の表面側が凹むような反りなどの変形に抑制されていた。
【0029】
これ以降は、図8中で白抜きの矢印で示すように、前記のようなグリーンシートg1〜g7を積層・圧着した後、得られたグリーンシート積層体(Sb)に対し前記同様の焼成工程を施した。その結果、前記図2で示した多層セラミック基板1bが得られた。
以上のような多層セラミック基板1bの製造方法においても、前記多層セラミック基板1aの製造方法と同様な効果が得られていた。
【0030】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記セラミック層やグリーンシートは、アルミナ以外の高温焼成セラミック、あるいは低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックからなるものとしても良い。
また、本発明の多層セラミック基板は、少なくとも5層以上のセラミック層やグリーンシートを積層する形態であれば、適用することができる。即ち、基板本体が5層のセラミック層を積層した形態の場合、その中間平面から表面側に2層の配線層を形成し、中間平面から裏面側に1層の金属層を形成すると共に、基板本体の裏面を有する最下層のセラミック層とこれに隣接して積層されたセラミック層との間には、金属層を形成しない多層セラミック基板とされる。
【0031】
更に、本発明において、基板本体の表面と裏面は、相対的な呼称である。そのため、前記中間平面よりも基板本体の裏面側のセラミック層間に前記平面状の配線層が形成され、上記中間平面よりも基板本体の表面側のセラミック層間に電気的に独立した前記金属層が形成されていると共に、基板本体の表面側で最外層のセラミック層とこれに隣接して積層されたセラミック層との間には、上記金属層が形成されていない形態の多層セラミック基板も含まれる。
加えて、前記電気的に独立した金属層は、これが形成される同じセラミック層間において、80%以上の面積率でほぼ平面状で形成されていれば、該セラミック層で2個以上に分割して形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、反りが抑制された基板本体を有し、電気的にも信頼性の高い多層セラミック基板を実用性を含めて広く提供するものである。
【符号の説明】
【0033】
1a,1b…多層セラミック基板
2……………基板本体
3……………表面
4……………裏面
s1〜s7…セラミック層
p1〜p3…配線層
m1,m2…金属層
cf…………中間平面
vc…………ビアカバー導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面を有し、且つ複数のセラミック層を積層してなる基板本体と、
上記基板本体の厚み方向における表面と裏面との中間で且つ該基板本体の平面方向に沿って位置する仮想の中間平面よりも、該基板本体の表面側に位置する上記セラミック層間に形成された平面状の配線層と、
上記中間平面よりも基板本体の裏面側に位置する上記セラミック層間に形成され且つ電気的に独立した金属層と、を備えた多層セラミック基板であって、
上記金属層は、上記基板本体の裏面側における最外側のセラミック層とこれに隣接して積層されたセラミック層との間には、形成されていない、
ことを特徴とする多層セラミック基板。
【請求項2】
前記金属層は、該金属層が形成される前記セラミック層間の面積全体の80%以上を占めている、
ことを特徴とする請求項1に記載の多層セラミック基板。
【請求項3】
前記金属層が形成されない前記セラミック層間には、その面積全体の20%以下を占める配線層、ビアカバー導体、あるいは、ランド導体が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多層セラミック基板。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の多層セラミック基板の製造方法であって、
セラミック粉末を含む複数のグリーンシートのうち、これらを追って積層して形成される基板本体の厚み方向における中間で且つ該基板本体の平面方向に沿った仮想の中間平面よりも、該基板本体の表面側および裏面側のセラミック層となるグリーンシートごとの表面に、配線層あるいは電気的に独立した金属層を平面状に形成すると共に、
上記金属層は、追って基板本体の裏面側における最外層のセラミック層となるグリーンシートの表面と、該グリーンシートに隣接して積層され且つ上記中間平面よりも裏面側のセラミック層となるグリーンシートの裏面との間には、形成されない、導電体層の形成工程を含む、
ことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−138833(P2011−138833A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296458(P2009−296458)
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】