説明

多層光学補償フィルム

光学用途に好適な樹脂フィルムを作製する塗布及び乾燥装置を用いるフィルム作製方法を開示する。特に、低界面エネルギーを有する移動しているキャリヤ基体に多層液体層を同時塗付することにより樹脂フィルムを調製する。溶剤を除去した後、犠牲キャリヤ基体から樹脂フィルムを剥がす。本発明の方法によって調製されたフィルムは良好な寸法安定性および低面外リターデーションを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、樹脂フィルムの製造方法に関し、そしてより具体的には、光学デバイス、例えば液晶ディスプレイ及びその他の電子ディスプレイにおける電極基板、偏光子、補償板、及び保護カバーを形成するために使用される光学フィルムであって、良好な寸法安定性、並びに低い面内リターデーション及び低い面外リターデーションの両方を示す光学フィルムの改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の光学用途において、透明樹脂フィルムが使用される。具体的には、種々の電子ディスプレイにおいて、偏光子のための保護カバーシート、補償フィルム、及び電極基板として、樹脂フィルムが使用される。これに関して、光学フィルムは、軽量の可撓性ディスプレイ・スクリーンを製造するために、ガラスに取って代わることが意図される。これらのディスプレイ・スクリーンは、液晶ディスプレイ、OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ、並びに、例えば、パーソナル・コンピュータ、テレビ受像機、携帯電話、及び計器盤において見いだされるその他の電子ディスプレイを含む。
【0003】
電子ディスプレイ・スクリーン、例えば、液晶ディスプレイ(「LCD」)は、樹脂フィルムから形成することができる数多くの光学素子を含有することができる。反射性LCDの構造は、液晶セル、1つ又は2つ以上の偏光子板、及び1つ又は2つ以上の光学補償フィルムを含むことができる。液晶セルは、ねじれネマティック(TN)又は超ねじれネマティック(STN)材料を2つの電極基板の間に分散することにより、形成される。液晶セルの場合、ガラス基板に取って代わる軽量且つ可撓性の基板として、樹脂基板が提案されている。ガラスと同様に、樹脂電極基板は透明であり、極めて低い複屈折率を示し、そして透明導電性材料、例えば酸化インジウム錫をフィルム表面上に蒸着するのに必要な高い温度に耐えなければならない。電極基板のために提案される好適な熱安定性樹脂は、ポリカーボネート、スルホン、環状オレフィン、及びポリアリーレートを含む。
【0004】
偏光子板は典型的には、樹脂フィルムを含む多層要素であり、2つの保護カバーシートの間にサンドイッチされた偏光フィルムから成る。偏光フィルムは通常、透明且つ高均一な非晶質樹脂フィルムから調製される。続いて非晶質樹脂フィルムは、ポリマー分子を配向するように延伸され、そして二色性フィルムを製造するように色素で染色される。偏光子フィルムの形成に適した樹脂の例は、完全加水分解型ポリビニルアルコール(PVA)である。偏光子を形成するのに使用される延伸PVAフィルムは極めて脆弱であり、寸法不安定なので、支持性と耐摩耗性との両方を提供するためにPVAフィルムの両側に、保護カバーシートが通常ラミネートされる。偏光子板の保護カバーシートは、高い均一性、良好な寸法的及び化学的安定性、並びに高い透明性を有することが必要とされる。最初、保護カバーシートは、ガラスから形成されたが、しかし今は、数多くの樹脂フィルムを使用することにより、軽量且つ可撓性の偏光子が製造される。セルロース誘導体、アクリル誘導体、環状オレフィンポリマー、ポリカーボネート、及びスルホンを含む多くの樹脂が、保護カバーシートにおいて使用するように提案されているものの、アセチルセルロース・ポリマーが、偏光子板用保護カバーにおいて最も広く使用されている。アセチルセルロース・タイプのポリマーは、種々様々な分子量、並びにセルロース主鎖上のヒドロキシ基のアセチル置換度で、商業的に入手可能である。これらのうち、完全置換型ポリマー、トリアセチルセルロース(TAC)を一般に使用することにより、偏光子板用保護カバーシートにおいて使用するための樹脂フィルムが製造される。
【0005】
カバーシートは通常、PVA二色性フィルムとの良好な付着を保証するために、表面処理を必要とする。TACが偏光子板の保護カバー・フィルムとして使用されるときには、TACフィルムにはアルカリ浴中の処理を施して、TAC表面を鹸化することにより、PVA二色性フィルムとの好適な付着を可能にする。アルカリ処理は、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含有する水溶液を使用する。アルカリ処理後、酢酸セルロース・フィルムは典型的には弱酸性溶液で洗浄され、続いて水で濯がれ、そして乾燥させられる。この鹸化プロセスは、煩わしくしかも多くの時間がかかる。米国特許第2,362,580号明細書に記載された層状構造の場合、2つのセルロース・エステル・フィルムがそれぞれ、硝酸セルロースを含有する表面層を有し、そしてPVAフィルムの両側に改質PVAが付着させられる。特開平06-094915号公報に開示された偏光子板用保護フィルムの場合、保護フィルムは、PVAフィルムとの付着を可能にする親水性層を有する。
【0006】
いくつかのLCDデバイスは、画像の視野角を改善するための補償フィルムとしても役立つ保護カバーシートを有する偏光子板を有することができる。或いは、LCDデバイスは、補償フィルムとして役立つ1つ又は2つ以上の別個のフィルムを有することもできる。補償フィルム(すなわちリターデーション・フィルム又は位相差フィルム)は通常、非晶質フィルムから調製され、非晶質フィルムは、フィルムを一軸延伸することにより、又はフィルムに光学異方性層を塗布することによってもたらされる、制御された複屈折レベルを有する。延伸によって補償フィルムを形成するように提案される好適な樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、及びスルホンを含む。異方性層を塗布することによって調製される補償フィルムは通常、低複屈折を有する高透明フィルム、例えばTAC及び環状オレフィンポリマーを必要とする。
【0007】
保護カバーシートは、他の機能層(本明細書中では補助層とも呼ばれる)、例えば防幻層、反射防止層、スマッジ防止層、又は静電防止層の適用を必要とすることができる。一般に、これらの機能層は、樹脂フィルムの製造とは別個の工程段階で適用される。
【0008】
上記種々様々な光学成分を調製するために使用される前駆体樹脂フィルムは、これらの最終用途とは無関係に、高透明性、高均一性、及び低複屈折を有することが望まれる。さらに、これらのフィルムは、最終用途に応じた厚さ範囲内にあることが必要となる場合がある。
【0009】
一般に、樹脂フィルムは溶融押出法又は流延押出法によって調製される。溶融押出法は、溶融(100,000 cpオーダーの概算粘度)するまで樹脂を加熱し、次いで、高温溶融ポリマーを押出ダイを用いて高研磨金属バンド又はドラムに適用し、フィルムを冷却し、そして最後に金属基体からフィルムを引き剥がすことを伴う。しかし、多くの理由から、溶融押出によって調製されたフィルムは、一般に、光学用途に適していない。これらの理由のうちの主要なものは、溶融押出されたフィルムが、高い光学複屈折度を示すという事実である。多くのポリマーの場合、ポリマーを溶融するさらなる問題がある。例えば、高鹸化ポリビニルアルコールの融点は230℃と極めて高く、この温度は変色又は分解が始まる温度(〜200℃)を上回る。同様に、三酢酸セルロース・ポリマーの融点も270〜300℃と極めて高く、この温度は分解が始まる温度を上回る。加えて、溶融押出フィルムは、低平坦性、ピンホール及び包含物のような他のアーチファクトを被ることが知られている。このような欠陥は、光学フィルムの光学特性及び機械特性を犠牲にすることがある。これらの理由から、溶融押出法は、光学用途のために意図される多くの樹脂フィルムを製作するには、一般に適していない。むしろ、これらのフィルムを製造するためには、流延法が一般に用いられる。
【0010】
光学用途のための樹脂フィルムは、ほとんど専ら流延法によって製造される。流延法は、適切な溶剤中にポリマーを先ず溶解させて、50,000 cpオーダーの高い粘度を有するドープを形成し、次いで粘性ドープを押出ダイを通して連続的な高研磨金属バンド又はドラムに適用し、湿潤フィルムを部分的に乾燥させ、金属基体から部分乾燥したフィルムを引き剥がし、そして炉を通して、部分乾燥フィルムを搬送することにより、フィルムから溶剤をより完全に除去することを伴う。流延フィルムの最終乾燥厚は典型的には40〜200ミクロンである。一般に、引き剥がし工程中及び乾燥工程中の湿潤フィルムが脆弱であることにより、40ミクロン未満の薄いフィルムは、流延法によって製造するのが極めて難しい。厚さ200ミクロンを上回るフィルムはまた、最終乾燥工程において溶剤の除去に困難が伴うことにより、問題をはらむ。流延法の溶解工程及び乾燥工程が複雑さやコストを高めはするものの、流延フィルムは一般に、溶融押出法によって調製されたフィルムと比較して、より良好な光学特性を有し、また、高温での分解に伴う問題が回避される。
【0011】
流延法によって調製される光学フィルムの例は:1)米国特許第4,895,769号明細書(Land)及び同第5,925,289号明細書(Cael)、並びに、米国特許出願公開第2001/0039319号明細書(Harita)及び同第2002/001700号明細書(Sanefuji)のより最近の開示内容に開示されているような、偏光子を調製するために使用されるポリビニルアルコール・シート、2)米国特許第5,695,694号明細書(Iwata)に開示されているような、偏光子用保護カバーのために使用される三酢酸セルロース・シート、3)米国特許第5,818,559号明細書(Yoshida)及び同第5,478,518号明細書及び同第5,561,180号明細書(両方ともTaketani)に開示されているような、偏光フィルム用又はリターデーション板用の保護カバーのために使用されるポリカーボネート・シート、及び4)米国特許第5,611,985号明細書(Kobayashi)及び米国特許第5,759,449号明細書及び同第5,958,305号明細書(両方ともShiro)に開示されているような、偏光フィルム用又はリターデーション板用の保護カバーのために使用されるポリスルホン・シートを含む。
【0012】
流延法の1つの欠点は、流延されたフィルムが顕著な光複屈折を有することである。流延法によって調製されたフィルムの複屈折は、溶融押出法によって調製されたフィルムと比較すれば低くはあるが、複屈折は好ましくない高さのままである。例えば流延法によって調製された三酢酸セルロース・フィルムは、米国特許第5,695,694号明細書(Iwata)に開示されているように、可視スペクトル内の光に対して7ナノメートル(nm)の面内リターデーションを示す。流延法によって調製されたポリカーボネート・フィルムは、米国特許第5,478,518号明細書及び同第5,561,180号明細書(両方ともTaketani)には、17ナノメートル(nm)の面内リターデーションを有するものとして開示されている。米国特許出願公開第2001/0039319号明細書(Harita)の主張によれば、フィルム内部の幅方向位置間のリターデーションの差が元の未延伸フィルムにおいて5 nm未満である場合に、延伸されたポリビニルアルコール・シートの色不規則性が低減される。
【0013】
同一譲受人による米国特許出願公開第2003/0215658号、同第2003/0215621号、同第2003/0215608号、同第2003/0215583号、同第2003/0215582号、同第2003/0215581号、同第2003/0214715号の各明細書(Bermel)には、光学用途に適した、低い面内リターデーションを有する樹脂フィルムを調製するための塗布法が記載されている。Bermelは、面外リターデーションの重要性、又は低い面外リターデーション値を達成するための手段に関しては何も述べていない。Bermelのこれらの参考文献において、樹脂フィルムは、流延フィルムを調製するために通常使用されるものよりも低い粘度のポリマー溶液から、不連続の犠牲基体上に適用される。未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、及びアルミニウム(表面エネルギー値はそれぞれ47、49.4、及び49 erg/cm2)のような高い表面エネルギーを有するものを含む、種々様々な基体が開示されている。
【0014】
光学フィルムのいくつかの用途の場合、低い面内リターデーション値及び低い面外リターデーション値の両方が望ましい。具体的には、面内リターデーション及び面外リターデーションの値は10 nm未満であることが好ましい。
【0015】
製造作業中のポリマーの配向から、流延フィルムにおける複屈折が生じる。この分子配向は、フィルム平面内部の屈折率をある程度まで異なるものにする。複屈折の2つの成分は通常、光学フィルムの特徴付けに際して考慮される。これらの成分は両方とも、前記フィルムを含む光学デバイスの性能に種々異なる形で影響を与えることができる。面内複屈折は、フィルム平面に対して法線方向に、直角の方向において横切る偏光の屈折率間の差である。面外複屈折は、フィルム平面に対して法線方向に、2つの直角の方向において横切る光の2つの屈折率の平均と、フィルム表面に対して平行に横切る光の屈折率との差を表す。複屈折にフィルム厚を掛け算した絶対値は、面内リターデーションとして定義される。従って、面内リターデーション及び面外リターデーションは、フィルム平面内部の分子異方性の2つの独立した尺度である。
【0016】
流延プロセス中、ダイ内のドープに作用する剪断力、適用中に金属基体によってドープに作用する剪断力、引き剥がし工程中に部分乾燥フィルムに作用する剪断力、及び最終乾燥工程全体を通して、搬送中に自立しているフィルムに作用する剪断力を含む数多くの源から、分子配向が生じ得る。これらの剪断力はポリマー分子を配向し、そして最終的には、望ましくない高い複屈折又はリターデーション値を招く。剪断力を最小化し、そして最低複屈折フィルムを得るために、米国特許第5,695,694号明細書(Iwata)に開示されているように、流延プロセスが典型的には、1〜15 m/分という極めて低いライン速度で作業される。ライン速度を遅くすると、一般に、最高品質のフィルムが製造される。このアプローチは、面内リターデーションを最小化することができるが、しかし面外リターデーションは依然として極めて高い場合がある。面外リターデーションは、しばしば、付着しつつある表面の近傍で発生する乾燥応力によって引き起こされる。欧州特許公開第 0 380 02号(Machell及びGreener)に開示されているものによれば、バッチ流延法において基体に対する流延用溶液の付着力を低下させることにより、フィルムの面外リターデーションを低減することができる。このことは例えば、基体の表面エネルギーを低下させることにより達成することができる。
【0017】
流延法の別の欠点は、多層を正確に適用することができないことである。米国特許第5,256,357号明細書(Hayward)に記載されているように、コンベンショナルな多スロット流延ダイは、受け入れがたいほどに不均一なフィルムを形成する。具体的には線及び筋の不均一性は、従来技術の装置の場合、5%を上回る。米国特許第5,256,357号明細書(Hayward)に教示されているような特殊なダイ・リップ構成を採用することにより、受け入れられ得る2層フィルムを調製することはできるが、しかしその構成は複雑であり、3つ以上の層を同時に適用するには現実的ではない。
【0018】
流延法の別の欠点は、ドープ粘度に対する制約である。流延の実施において、ドープ粘度は50,000 cpオーダーである。例えば、米国特許第5,256,357号明細書(Hayward)には、粘度100,000 cpのドープを使用した実際的な流延例が記載されている。例えば米国特許第5,695,694号明細書(Iwata)に記載されているように、一般に、流延フィルムの調製の際に用いられるドープの粘度が低いと、不均一なフィルムが製造されることが知られている。米国特許第5,695,694号明細書(Iwata)において、流延試料を調製するために使用される最低粘度ドープは、約10,000 cpである。しかしこれらの高粘度値では、流延ドープは濾過及び脱ガスが難しい。繊維及び大きい破片は除去することができるのに対して、材料が軟質であればあるほど、例えばポリマー・スラグを、ドープ供給システム内に見いだされる高い圧力で濾過するのは難しくなる。粒子及び気泡のアーチファクトが、目立つ封入欠陥並びに筋を形成し、大量の廃棄物を生み出すことがある。
【0019】
加えて、流延法は、生成物の変化に対して比較的順応性が無い場合がある。流延は高粘度ドープを必要とするので、生成配合物の変化は、供給システムをクリーニングして汚染の可能性を取り除くための大幅な中断時間を必要とする。特に問題なのは、適合性のないポリマー及び溶剤を伴う配合物の変化である。事実、配合物の変化は、流延法を用いる場合には時間がかかり且つ高価なので、たいていの製造機械は、専らただ1つのフィルム・タイプを生成するようになっている。
【0020】
流延法による樹脂フィルムの製造はまた、剥離作業及び搬送作業に関連する数多くのアーチファクトによって困惑させられる。剥離作業は例えば、筋のアーチファクトを形成することなしに、金属基体からのフィルムの引き剥がしを容易にするために、流延配合物中に改質助剤、例えば特殊な補助溶剤又は添加剤をしばしば必要とする。事実、剥離作業が問題をはらむので、いくつかのフィルム、例えばポリメチルメタクリレート・フィルムを流延法によって製造するためには、米国特許第4,584,231号明細書及び同第4,664,859号明細書(両方ともKnoop)に記載されたような特殊なコポリマーを採用することが常に必要となる。剥離アーチファクトに加えて、最終乾燥作業中に多数のローラを横切って搬送されている間に、流延フィルムが損傷されるおそれがある。例えば、米国特許第6,222,003号明細書(Hosei)に記載されているように、ポリカーボネート・フィルムにおいて、摩耗、引掻き傷及び皺のアーチファクトが指摘されている。搬送中の損傷を最小限に抑えるために、流延ポリカーボネート・フィルムは、滑剤又は表面改質剤として作用する特殊な添加剤を必要とし、或いは、保護ラミネート・シートを必要とし、或いは、刻み目付きエッジを必要とする。しかし特殊な添加剤はフィルムの透明性を犠牲にすることがある。さらに、ラミネーション装置及びエッジ刻み目付け装置は高価であり、しかも流延プロセスを複雑にしてしまう。
【0021】
最後に、流延フィルムは望ましくない襞又は皺を示すことがある。フィルムは薄ければ薄いほど、流延プロセスの引き剥がし・乾燥工程中、又は後続のフィルム取り扱い中に寸法上のアーチファクトを特に受けやすい。具体的には、樹脂フィルムから複合光学板を調製するためには、接着剤、圧力及び高い温度を加えることを伴うラミネーション・プロセスが必要となる。極めて薄いフィルムは、皺を作らずにこのラミネーション・プロセス時に取り扱うのが難しい。加えて、多くの流延フィルムは、水分の影響によって時間の経過とともに自然に歪んでくることがある。光学フィルムの場合、貯蔵中並びに後続の複合光学板製作中に、良好な寸法安定性が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
解決されるべき課題は、良好な寸法安定性、並びに低い面内複屈折及び低い面外複屈折の両方を示すポリマーフィルムを含む光学樹脂フィルム複合体、及びこのようなフィルムの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、面外リターデーション100 nm未満及び面内リターデーション20 nm未満の光学樹脂フィルムを形成する方法であって、
(a)表面エネルギー・レベルが35 erg/cm2未満の、ロールツーロール(roll-to-roll)プロセスにおいて移動中の不連続のキャリヤ基体の表面上に液状光学樹脂/溶剤混合物を適用し;
(b)液状樹脂/溶剤混合物を乾燥させることにより、溶剤を実質的に除去し、
キャリヤ基体に弱く付着させられた樹脂フィルムの複合体を生成し、樹脂フィルムは、キャリヤ基体に剥離可能に付着させられ、これにより樹脂フィルムがキャリヤ基体から引き剥がされるのを可能にし、そして
(c)基体からフィルムを除去し、形成されたフィルムが、100 nm未満の面外リターデーション及び20 nm未満の面内リターデーションを示す
各工程を含む、光学樹脂フィルムを形成する方法を提供する。
【0024】
本発明はまた、光学樹脂フィルム、複合体要素、偏光子板及びディスプレイ装置を提供する。本発明により調製された光学樹脂フィルムは、良好な寸法安定性、並びに低い面内複屈折及び面外複屈折を示す。
【0025】
これらの光学樹脂フィルムの製作は、乾燥プロセス全体を通して湿潤光学フィルム塗膜を支持し、そして従来技術において記載された流延法に必要となる、最終乾燥工程の前に金属ベルト又はドラムからフィルムを引き剥がすことの必要性をなくするキャリヤ基体によって促進される。むしろ、光学フィルムは、キャリヤ基体からの分離前に完全に乾燥させられる。実際に、光学フィルムとキャリヤ基体とを含む複合体要素は、好ましくは巻き取られてロールにされ、必要になるまで貯蔵される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の目的は、従来の流延方法の限界を克服し、そして面内及び面外両方の複屈折レベルが極めて低い非晶質高分子フィルムを調製するための新しいロールツーロール塗布方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、広範囲の乾燥厚にわたって高均一な高分子フィルムを製造する新しい方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、ロールツーロールプロセスにおいて移動中の基体に複数の層を同時に適用することにより、高分子フィルムを調製する方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、樹脂フィルムを支持用キャリヤ基体に、樹脂フィルムが実質的に乾燥するまで一時的に付着させ、そして続いて樹脂フィルムからキャリヤ基体を分離することにより、寸法安定性及び取り扱い可能性が改善された高分子フィルムを調製する新しい方法を提供することである。
【0028】
本発明の更なる目的は、不連続のキャリヤ基体上に塗布された樹脂フィルムを含む複合体要素であって、基体は低い表面エネルギーを有し、そして樹脂フィルムは20 nm未満の面内リターデーション及び100 nm未満の面外リターデーションを有し、樹脂フィルムは、付着強度約250 N/m未満で、キャリヤ基体に付着されている複合体要素を提供することである。本発明の別の目的は、塗布作業によって形成されたポリカーボネート層を含む樹脂フィルムであって、ポリカーボネート・フィルムが、20 nm未満の面内リターデーション及び100 nm未満の面外リターデーションを有する、樹脂フィルムを提供することである。本発明のさらに別の目的は、塗布作業によって形成されたセルロース・エステル層を含む樹脂フィルムであって、セルロース・エステル・フィルムが、20 nm未満の面内リターデーション及び20 nm未満の面外リターデーションを有する、樹脂フィルムを提供することである。
【0029】
簡略に述べるならば、本発明の前述の、そして数多くの他の特徴、目的及び利点は、本明細書中に示される詳細な説明、特許請求の範囲、及び図面を概観すれば容易に明らかとなる。これらの特徴、目的及び利点は、移動中の不連続のキャリヤ基体上に、塗布法によって、高分子樹脂を含有する低粘度流体を適用することにより、達成される。樹脂フィルムを流延するために典型的に使用される連続した金属ベルト又はホイールとは異なり、本発明において採用される不連続のキャリヤ基体は、長さ10メートル以上、好ましくは1000メートル以上の非連続的な基体である。キャリヤ基体は、表面エネルギーが35 erg/cm2未満となるように改質される。好ましくは表面エネルギーは、15〜35 erg/cm2である。表面エネルギーが35 erg/cm2を上回ると、低面外リターデーション・フィルムを達成するのが極めて難しい。表面エネルギーが約15 erg/cm2を下回ると、塗布、湿潤、及び基体に対する乾燥された樹脂フィルムの十分な付着力の提供という見地から、現実的でない。樹脂フィルムは、塗布されたフィルムが実質的に乾燥する(<10重量%の残留溶剤)までは、キャリヤ基体から分離されない。実際に、樹脂フィルムとキャリヤ基体とから成る複合体構造は、巻き取ってロールにし、必要になるまで貯蔵することができる。典型的には、これらのロールは長さ10メートル以上であり、好ましくはロールの長さは1000メートル以上である。こうして、キャリヤ基体は光学樹脂フィルムを支え、そして乾燥プロセス全体を通して搬送中に作用する剪断力に対してこれを保護する。さらに、樹脂フィルムはキャリヤ基体から最終的に引き剥がされたときには乾燥しており、また固形であるので、引き剥がしプロセスによってフィルム内部のポリマーに対して剪断力又は配向力が働くことはない。結果として、本発明によって調製されたフィルムが示す面内及び面外の複屈折レベルは極めて低い。
【0030】
本発明の方法によって、厚さ約1〜200ミクロンの高分子フィルムを形成することができる。40ミクロン未満の極めて薄い樹脂フィルムを、従来技術の方法を用いては可能ではないライン速度で、容易に製造することができる。極めて薄いフィルムの製作は、キャリヤ基体によって容易にされる。キャリヤ基体は、乾燥プロセス全体を通して湿潤フィルムを支持し、そして従来技術において記載された流延法に必要となる、最終乾燥工程の前に金属ベルト又はドラムからフィルムを引き剥がすことの必要性をなくする。むしろ、フィルムは、キャリヤ基体からの分離前に、完全にとは言わないまでも実質的に完全に乾燥させられる。すべての事例において、乾燥された樹脂フィルムの残留溶剤含有率は、10重量%未満である。本発明の好ましい態様の場合、残留溶剤含有率は5%未満であり、最も好ましくは1%未満である。従って、本発明は、従来技術の流延法を用いては可能ではない極めて薄いフィルムの調製を容易に可能にする。加えて、本発明の方法によって、40ミクロンを上回る厚いフィルムを調製することもできる。より厚いフィルムを製作するために、タンデム作業で、又は光学品質を含まないオフライン・プロセスで、フィルム−基体の複合体上に、追加の塗膜を適用することができる。こうして、本発明の方法は、より厚いフィルムの調製中の溶剤除去の限界を克服する。それというのは、最初に適用されたフィルムは、後続の湿潤フィルムの適用前に乾燥しているからである。このように本発明は、流延法を用いて形成し得る最終フィルム厚の範囲をより広くすることを可能にする。
【0031】
本発明の方法において、塗布用ホッパーのスライド面上に単層、又は好ましくは、低粘度のボトム層と、1つ又は2つ以上の中間層と、及び界面活性剤を含有する任意のトップ層とを含む多層複合体を形成し、多層複合体をスライド面に沿って下方に、塗布用ホッパーの塗布用リップに被さるように流し、そして多層複合体を、移動中の基体に適用することにより、樹脂フィルムが形成される。具体的には、本発明の方法の使用は、固有の組成を有するいくつかの液状層の適用を可能にすることが明らかである。塗布助剤及び添加物を特定の層内に配置することにより、フィルム性能を改善するか、又は製造堅牢性を改善することができる。例えば、多層の適用は、界面活性剤が湿潤フィルム全体にわたってではなく、必要とされる、頂面に広がるトップ層内に配置されることを可能にする。別の例の場合、最下層内のポリマーの濃度を調節して、低い粘度を達成し、そしてキャリヤ基体上への多層複合体の高速適用を容易にすることができる。従って、本発明は、或る特定の光学素子又は他の同様の素子のために必要とされるような多層複合フィルムの有利な製作方法を提供する。
【0032】
皺及び襞のアーチファクトが、キャリヤ基体を使用することにより本発明の方法を用いて最小限に抑えられる。樹脂フィルムのために剛性の裏層を提供することにより、キャリヤ基体は光学フィルムの寸法歪みを最小限に抑える。このことは、約40ミクロン未満の極めて薄いフィルムの取り扱い及び処理にとって特に有利である。さらに、流延法によって形成されることが知られている引掻き傷及び摩耗のアーチファクトも、本発明の方法を用いて回避される。それというのは、全ての乾燥作業中において、樹脂フィルムと、潜在的に摩耗性の搬送ローラとの間には、キャリヤ基体が位置しているからである。加えて、キャリヤ基体の拘束性は、水分レベルの変化の結果として経時的に歪むか又は襞を形成するという樹脂フィルムの傾向をも排除する。従って、本発明の方法は、調製中及び貯蔵中に、そして、光学素子の製作に必要な最終取り扱い工程中に高分子光学フィルムが寸法安定性であることを保証する。
【0033】
本発明の方法の実施において、基体は不連続のシート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。このシートは、長さ10メートル以上の基体から成るロールを繰り出すことにより、好都合に供給される。PETキャリヤ基体は、塗布表面層又は放電装置を用いて前処理することにより、その表面エネルギーを変えることができる。具体的には、塗布表面層を適用することにより、基体の表面エネルギーを低下させ、そして、低レベルの面外リターデーションをもたらしつつ、その後フィルムが基体から引き剥がされるのを可能にする。
【0034】
本発明は、スライド・ビード塗布作業を具体的に参照しながら論じるが、当業者には明らかなように、本発明は他の塗布作業によっても有利に実施することができる。例えば、単層又は多層スロット・ダイ塗布作業、及び単層又は多層カーテン塗布作業を用いて、面内及び面外リターデーションが低い自立型フィルムが達成できるようになっている。さらに、当業者には明らかなように、本発明は、別のキャリヤ基体で有利に実施することもできる。例えば、他の高分子基体[例えばポリエチレンナフタレート(PEN)、酢酸セルロース、PET]、紙基体、樹脂ラミネート型基体、及び金属基体(例えばアルミニウム)を用いて、これらの基体が低い表面エネルギーを有するように処理される限り、面内及び面外リターデーションが低いフィルムの引き剥がしが達成できるようになっている。
【0035】
本発明の実際の用途は、中でも光学フィルム、ラミネート・フィルム、リリース・フィルム、写真フィルム、及び包装用フィルムとして使用される高分子フィルムの調製を含む。具体的には、本発明の方法によって調製された樹脂フィルムを、電子ディスプレイ、例えば液晶ディスプレイの製造時に光学素子として利用することができる。例えば、液晶ディスプレイは、偏光子板、補償板及び電極基板を含む多数のフィルム要素から成る。偏光子板は、典型的には二色性フィルム(通常は、ヨウ素で処理された延伸ポリビニルアルコール)を有する多層複合体構造であり、各表面は、面内複屈折が極めて低い保護カバーに付着されている。本発明の方法により調製される樹脂フィルムは、好適な保護シートであり、また偏光子の形成のための前駆体フィルムとしても適している。本発明の方法により調製される樹脂フィルムは、補償板及び電極基板の製造にも適している。
【0036】
本発明の方法を用いて製造されたフィルムは、光学フィルムにとって特に有用である。製造されたままの状態では、本発明の方法を用いて形成されたフィルムの光透過率は、約85パーセント以上、好ましくは約90パーセント以上、そして最も好ましくは約95パーセント以上となる。さらに、製造されたままの状態では、フィルムの曇り値は、1.0未満となる。加えて、フィルムは平滑であり、その表面粗さ平均(Ra、ANSI標準B46.1、1985)は100 nm未満であり、最も好ましい表面粗さは、50 nm未満である。
【0037】
本明細書中に使用される「光学樹脂」及び「光学フィルム」という用語は、光透過率が高く(すなわち>85%)、そして曇り(haze)値が低い(すなわち<1.0%)高透明性フィルムを形成する任意の高分子材料を記述するために用いられる。光学樹脂の例は、本明細書中に記載されたもの、すなわち三酢酸セルロース(トリアセチルセルロース、TACとも呼ばれる)、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、及びポリビニルブチラールを含む。その他の可能な光学樹脂は、中でも、フルオロポリマー(ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びポリクロロチリフルオルエテン)、他のセルロース・エステル(例えば二酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、及び酢酸プロピオン酸セルロース)、ポリオレフィン(環状オレフィンポリマー)、ポリスチレン、芳香族ポリエステル(ポリアリーレート及びポリエチレンテレフタレート)、スルホン(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン)、及びポリカーボネートコポリマーを含むこともできる。
【0038】
1つの好ましい態様の場合、光学樹脂フィルムは、20 nm未満の面内リターデーション及び100 nm未満の面外リターデーションを有するポリカーボネート・フィルムである。最も好ましくは、面外リターデーションは80 nm未満である。ポリカーボネートは、一般構造:
【0039】
【化1】

【0040】
を有する縮合ポリマーであり、上記式中、Rは、単量体ジオールから誘導された有機部分である。最も一般的なポリカーボネートは、ビスフェノールAモノマー[2,2ビス(4ヒドロキシ-フェニル)プロパン]から誘導されるが、しかし、他のモノマーを単独で、又は他のジオールとの組み合わせで使用することにより、数多くのポリカーボネート構造を形成することができる。芳香族主鎖構造を有するほとんどのポリカーボネートは、固有複屈折材料である。これらの材料は流延されたフィルムにおいて、高レベルの面外リターデーション、典型的には、TAC樹脂よりも著しく高い面外リターデーションをもたらす。
【0041】
別の好ましい態様の場合、光学樹脂フィルムは、20 nm未満の面内リターデーション及び20 nm未満の面外リターデーションを有するセルロース・エステル・フィルムである。好ましくは、面外リターデーションは10 nm未満であり、最も好ましくは5 nm未満である。
【0042】
図1に目を転じると、本発明の方法の実施に適した、よく知られたロールツーロール塗布・乾燥システム10の例の概略が示されている。塗布・乾燥システム10は典型的には、移動中の基体12に極めて薄いフィルムを適用し、続いて乾燥器14内で溶剤を除去するために使用される。システム10がただ1つの塗膜適用点及びただ1つの乾燥器14を有するように、単一の塗布装置16が図示されているが、しかし、対応する乾燥区分を有する2つ又は3つ以上(6つの場合さえある)の追加の塗膜適用点が、複合薄型フィルムの製作において知られている。順次適用・乾燥プロセスは、タンデム型塗布作業として当業者に知られている。
【0043】
塗布・乾燥装置10は、巻き出しステーション18を含むことにより、バックアップ・ローラ20を巡るように、移動中の基体12をフィードする。バックアップ・ローラ20において、塗布装置16によって塗膜が適用される。塗布されたウェブ22は次いで、乾燥器14を通って進む。本発明の実施に際して、基体12上に樹脂フィルムを含む最終的な乾燥フィルム24は、巻き上げステーション26で巻き取られてロールにされる。
【0044】
図示のように、一例としての4層塗膜が、移動中のウェブ12に適用される。各層の塗布用液が、それぞれの塗膜供給容器28, 30, 32, 34内に保持される。塗布用液は、塗膜供給容器から塗布装置16へ、それぞれ導管44, 46, 48, 50を介して、ポンプ36, 38, 40, 42によって送達される。加えて、塗布・乾燥システム10は、放電装置、例えばコロナ又はグロー放電装置52、又は極性電荷支援装置54を含むことにより、塗膜適用前に基体12を改質することもできる。
【0045】
次に図2に目を転じると、別の巻き取り作業を伴う、図1に示されたものと同じ塗布・乾燥システム10例の概略が示されている。従って、図面は、巻き取り作業までは同一の符号が付けられている。本発明の実施において、樹脂塗膜が適用されたキャリヤ基体(樹脂フィルム、紙、樹脂塗布紙又は金属であってよい)を含む乾燥フィルム24は、互いに対向するローラ56, 58の間に運ばれる。樹脂フィルム60は、基体12から引き剥がされ、光学フィルムは巻き取りステーション62へ、そして基体12は巻き取りステーション64へ進む。本発明の好ましい態様の場合、基体12としてポリエチレンフタレート(PET)が使用される。基体12は、下塗り層で前処理することにより、基体12の表面エネルギーを変えることができる。
【0046】
移動中の基体12に塗布用流体を供給するために使用される塗布装置16は、多層アプリケーター、例えば米国特許第2,761,791号明細書(Russell)に教示されているようなスライド・ビード・ホッパー、又は米国特許第3,508,947号明細書(Hughes)に教示されているようなスライド・カーテン・ホッパーであってよい。或いは、塗布装置16は、単層アプリケーター、例えばスロットダイ・ビード・ホッパー又はジェット・ホッパーであってよい。本発明の好ましい態様の場合、塗布装置16は、多層スライド・ビード・ホッパーである。
【0047】
上述のように、塗布・乾燥システム10は乾燥器14を含む。乾燥器14は典型的には、塗布されたフィルムから溶剤を除去するための乾燥炉となる。本発明の方法において使用される乾燥器14の一例は、第1乾燥区分66、及びこれに続く、温度及び空気流を独立して制御することができる8つの追加の乾燥区分68〜82を含む。乾燥器14が9つの独立した乾燥区分を有するものとして示されてはいるものの、より数少ない区画を有する乾燥炉がよく知られており、これを使用して本発明の方法を実施することもできる。本発明の好ましい態様の場合、乾燥器14は、2つ以上の独立した乾燥ゾーン又は乾燥区分を有している。
【0048】
好ましくは、乾燥区分68〜82のそれぞれは、独立した温度制御部及び空気流制御部を有している。各区分において、温度は5℃〜150℃で調節することができる。湿潤フィルムの表面硬化又はスキニングから生じる乾燥欠陥を最小化するために、乾燥器14の初期区分において、最適な乾燥速度が必要となる。初期乾燥ゾーン内の温度が不適切である場合に形成される数多くのアーチファクトがある。例えば、ゾーン66, 68及び70内の温度が25℃に設定されると、ポリカーボネート・フィルムのカブリ又はブラッシングが観察される。このブラッシング欠陥は、塗布用流体中に高い蒸気圧の溶剤(塩化メチレン及びアセトン)が使用されると、特に問題をはらむ。攻撃的に高い温度は、他のアーチファクト、例えば表面硬化、網目パターン、及び樹脂フィルム内のミクロボイドとも関連する。本発明の好ましい態様の場合、第1乾燥区分66が、約25℃以上、95℃未満の温度で操作され、この場合、塗布されたウェブ22の湿潤塗膜に対する直接的な空気の衝突はない。本発明の方法の別の好ましい態様の場合、乾燥区分68及び70も、約25℃以上、95℃未満の温度で操作される。乾燥区分66, 68における実際の乾燥温度は、当業者によってこれらの範囲内で実験に基づいて最適化することができる。
【0049】
ここで図3を参照すると、塗布装置16の一例の概略が詳細に示されている。側方断面で概略的に示された塗布装置16は、前区分92、第2区分94、第3区分96、第4区分98、及び後板100を含む。ポンプ106を介して第1計量スロット104に塗布用液を供給することにより、最下層108を形成する第2区分94内への入口102がある。ポンプ114を介して第2計量スロット112に塗布用液を供給することにより、層116を形成する第3区分96内への入口110がある。ポンプ122を介して計量スロット120に塗布用液を供給することにより、層124を形成する第4区分98内への入口118がある。ポンプ130を介して計量スロット128に塗布用液を供給することにより、層132を形成する後板100内への入口126がある。各スロット104, 112, 120, 128は、横方向分配キャビティを含む。前区分92は傾斜スライド面134と塗布用リップ136とを含む。第2区分94の上側には、第2傾斜スライド面138がある。第3区分96の上側には、第3傾斜スライド面140がある。第4区分98の上側には、第4傾斜スライド面142がある。後板100は傾斜スライド面142よりも上方に延びており、これにより後ろ側のランド面144を形成する。塗布装置又はホッパー16に隣接して、塗布用バックアップ・ローラ20が存在している。塗布用バックアップ・ローラ20を巡って、ウェブ12が搬送される。塗布層108, 116, 124, 132が多層複合体を形成する。多層複合体は、リップ136と基体12との間に塗布用ビード146を形成する。典型的には、塗布用ホッパー16は、非塗布位置から、塗布用バックアップ・ローラ20に向かって、そして塗布位置に移動可能である。塗布装置16は、4つの計量スロットを有するものとして示されてはいるが、より数多くの計量スロット(9つ又は10個以上の場合もある)を有する塗布用ダイがよく知られており、これらを使用して本発明の方法を実施することもできる。
【0050】
塗布用流体は主として、好適な溶剤中に溶解された高分子樹脂から成る。好適な樹脂は、透明フィルムを形成するために使用することができる任意の高分子材料を含む。光学フィルムを形成するために現在使用される樹脂の好適な例は、偏光子のためのポリビニルアルコール、ガラス積層板のためのポリビニルブチラール、保護カバー及び基体としてのアクリル誘導体、及びポリスチレン、並びに、保護カバー、補償板、及び電極基板のためのセルロース・エステル、ポリカーボネート、及びポリアリーレート、ポリオレフィン、フルオロプラスチック(例えばポリフッ化ビニル及びポリフッ化ビニリデン)、スルホンを含む。本発明の使用において、光学フィルムを形成するために使用することができるポリマーのタイプ又はポリマーのブレンドに関して、具体的な制限はない。
【0051】
上述の樹脂材料のための溶剤に関して、好適な溶剤は例えば、塩素化溶剤(塩化メチレン及び1,2ジクロロエタン)、アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール、及びシクロヘキサノール)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、及び酢酸n-ブチル)、芳香族化合物(トルエン及びキシレン)、及びエーテル(テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、及び1,5-ジオキサン)を含む。溶剤として水を使用することもできる。上記溶剤のブレンドで、塗布用溶液を調製することもできる。
【0052】
塗布用流体は、改質助剤として作用するための添加剤を含有することもできる。改質助剤は、可塑剤及び界面活性剤を含み、そしてこれらの添加剤は、ポリマーフィルムのタイプに対して概ね特異的である。例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、及び三酢酸セルロース・フィルムに適した可塑剤は、フタル酸エステル(ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、及びブチルオクチルフタレート)、アジピン酸エステル(ジオクチルアジペート)、及びリン酸エステル(トリクレシルホスフェート、及びトリフェニルホスフェート)を含む。他方において、水溶性ポリビニルアルコールに適した可塑剤は、多価アルコール、例えばグリセリン及びエチレングリコール、並びにアミンアルコール、例えばエタノールアミンを含む。可塑剤を改質操作における塗布助剤としてここで使用することにより、塗布用ホッパーにおける時期尚早のフィルム固化を最小限に抑え、そして、湿潤フィルムの乾燥特性を改善することができる。本発明の方法では、可塑剤は、乾燥作業中の樹脂フィルムの膨れ、カール及び層間剥離を最小限に抑えるために使用することができる。本発明の好ましい態様の場合、最終樹脂フィルムの欠陥を軽減するために、ポリマーの濃度に対して最大50重量%の総濃度で、塗布用流体に可塑剤を添加することができる。
【0053】
低複屈折ポリマーのための塗布用配合物は、1種又は2種以上のUV吸収化合物を含有することにより、UVフィルター・エレメント性能を提供し、そして/又は低複屈折ポリマーフィルムのUV安定剤として作用することもできる。紫外線吸収化合物は一般に、紫外線吸収剤を含有しないポリマー100重量部を基準として、0.01〜20重量部の量でポリマー中に含有され、そして好ましくは0.01〜10重量部の量、特に0.05〜2重量部の量で含有される。種々の高分子要素中での使用に関して記載されている種々の紫外線吸収化合物のいずれか、例えばヒドロキシフェニル-s-トリアジン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ホルムアミジン、又はベンゾフェノン化合物を、本発明の高分子要素中に採用することができる。同時係属中の同一譲受人による、2002年5月5日付けで出願された米国特許出願第10/150,634号明細書に記載されているように、上に挙げたような第2のUV吸収化合物と組み合わせて、ジベンゾイルメタン紫外線吸収化合物を使用すると、UV線スペクトル領域と可視線スペクトル領域との間の吸収を鋭くカットオフすること、また、UVスペクトルのより多くの範囲にわたって保護を増大させることに関して、特に有利であることが見いだされている。採用することができる追加の可能なUV吸収剤は、サリチル酸塩化合物、例えば4-t-ブチルフェニルサリチレート;及び[2,2'チオビス-(4-t-オクチルフェノレート)]n-ブチルアミンニッケル(II)を含む。最も好ましいのは、ジベンゾイルメタン化合物と、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、又はヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール化合物との組み合わせである。
【0054】
採用することができるジベンゾイルメタン紫外線吸収化合物には、式(IV) の化合物が含まれる。
【化2】

【0055】
上記式中、R1〜R5はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ニトロ、又はヒドロキシル、又はさらに置換された又は置換されていないアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、アシルオキシ、エステル、カルボキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミン、アリールアミン、アルキルニトリル、アリールニトリル、アリールスルホニル、又は5-6員複素環基である。好ましくは、このような基のそれぞれの炭素原子数は20以下である。さらに好ましくは、式IVのR1〜R5は、式IV-Aに従って配置される。
【0056】
【化3】

【0057】
特に好ましいのは、R1及びR5が、炭素原子数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表し、そしてR2〜R4が水素原子を表すような式IV-Aの化合物である。
【0058】
本発明の要素に従って用いることができる式(IV)の代表的な化合物は、下記のものを含む:
(IV-1):4-(1,1-ジメチルエチル)-4'-メトキシジベンゾイルメタン(PARSOL(商標)1789)
(IV-2):4-イソプロピルジベンゾイルメタン(EUSOLEX(商標)8020)
(IV-3):ジベンゾイルメタン(RHODIASTAB(商標)83)
【0059】
本発明の要素において使用することができるヒドロキシフェニル-s-トリアジン化合物は、例えば、米国特許第4,619,956号明細書に記載されているようなトリス-アリール-s-トリアジン化合物の誘導体であってよい。このような化合物は式Vによって表すことができる:
【0060】
【化4】

【0061】
上式中、X、Y及びZはそれぞれ、3つ未満の6員環の芳香族炭素環式基であり、そしてX、Y及びZのうちの少なくとも1つが、トリアジン環との結合点に対してオルトでヒドロキシ基によって置換されており;またR1〜R9のそれぞれが、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、スルホン酸、カルボキシ、ハロ、ハロアルキル、及びアシルアミノから成る基から選択される。特に好ましくは、式V-Aのヒドロキシフェニル-s-トリアジンである:
【0062】
【化5】

【0063】
上記式中、Rは水素、又は炭素原子数1〜18のアルキルである。
【0064】
本発明の要素において使用することができるヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール化合物は、例えば式VIによって表される化合物の誘導体となることができる:
【0065】
【化6】

【0066】
上記式中、R1〜R5は独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、又はさらに置換された又は置換されていないアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、モノ又はジアルキルアミノ、アシルアミノ、又は複素環式基であってよい。本発明に従って使用することができるベンゾトリアゾール化合物の具体例は、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール;オクチル5-tert-ブチル-3-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシベンゼンプロピオネート;2-(ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-3'-ドデシル-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;及び2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールを含む。
【0067】
本発明の要素において使用することができるホルムアミジン化合物は、例えば米国特許第4,839,405号明細書に記載されたホルムアミジン化合物であってよい。このような化合物は、式VII又は式VIIIによって表すことができる:
【0068】
【化7】

【0069】
(上記式中、R1は、炭素原子数1〜約5のアルキル基であり;YはH、OH、Cl、又はアルコキシ基であり;R2は、炭素原子数1〜約9のフェニル基又はアルキル基であり;Xは、H、カルボアルコキシ、アルコキシ、アルキル、ジアルキルアミノ及びハロゲンから成る群から選択され;そしてZは、H、アルコキシ及びハロゲンから成る群から選択される);
【0070】
【化8】

【0071】
(上記式中、Aは−COOR、−COOH、−CONR'R''、−NR'COR、−CN、又はフェニル基であり;そしてRは、炭素原子数1〜約8のアルキル基であり;R'及びR''はそれぞれ独立して、水素、又は炭素原子数1〜約4の低級アルキル基である)。
【0072】
本発明に従って使用することができるホルムアミジン化合物の具体例は、米国特許第4,839,405号明細書に記載された化合物、及び具体的には4-[[(メチルフェニルアミノ)メチレン]アミノ]-エチルエステルを含む。
【0073】
本発明の要素中に使用することができるベンゾフェノン化合物は、例えば、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン及び2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノンを含むことができる。
【0074】
塗布用配合物は、塗布後の流れに関連するアーチファクトを制御するための塗布助剤として、界面活性剤を含有することができる。塗布後の流れ現象によって形成されるアーチファクトは、斑点、剥離、ミカン肌(Bernardセル)、及びエッジ後退を含む。有機溶剤中に溶解される高分子樹脂の場合、塗布後の流れのアーチファクトを制御するために使用される界面活性剤は、シロキサン及びフルオロケミカル化合物を含む。シロキサン・タイプの商業的に入手可能な界面活性剤の例は、下記のものを含む:1) ポリメチルシロキサン、例えばDow CorningのDC200 Fluid、2) ポリ(ジメチル、メチルフェニル)シロキサン、例えばDow CorningのDC510 Fluid、及び3) ポリアルキル置換型ポリジメチルシロキサン、例えばDow CorningのDC190及びDC1248、並びにUnion CarbideのL7000 Silwetシリーズ(L7000、L7001、L7004、及びL7230)、及び4) ポリアルキル置換型ポリ(ジメチル、メチルフェニル)シロキサン、例えばGeneral ElectricのSF1023。商業的に入手可能なフルオロケミカル界面活性剤の例は下記のものを含む:1) フッ素化アルキルエステル、例えば3M CorporationのFluoradシリーズ(FC430及びFC431)、2) フッ素化ポリオキシエチレンエーテル、例えばDu PontのZonylシリーズ(FSN、FSN100、FSO、FSO100)、3) アクリレート:ポリペルフルオロアルキルエチルアクリレート、例えばNOF CorporationのFシリーズ(F270及びF600)、及び4) ペルフルオロアルキル誘導体、例えばAsahi Glass CompanyのSurflonシリーズ(S383, S393及びS8405)。
【0075】
水性溶剤中に溶解される高分子樹脂の場合、適切な界面活性剤は、数多くの刊行物{例えば、「界面活性剤:液状フィルム塗膜におけるYMトリコットによる静的及び動的表面張力(Surfactants: Static and dynamic surface tension by YM Tricot in Liquid Film Coating)」第99-136頁、SE Kistler及びPM Schweitzer編、Chapman及びHall[1997]参照}に記載されているような水性塗膜に適したものを含む。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性タイプを含んでよい。実際の界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンエーテル、例えばポリオキシエチレン(8)イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル、及びフッ素化ポリオキシエチレンエーテル、例えばDu Pontから商業的に入手可能なZonylシリーズを含む。
【0076】
本発明の方法において、使用される界面活性剤のタイプに関して、特定の制限はない。本発明の方法において、界面活性剤は一般に、非イオン性タイプである。本発明の好ましい態様において、フィルムが有機溶剤で調製される場合には、シロキサン又はフッ素化タイプの非イオン性化合物が最上層に添加される。
【0077】
界面活性剤の分布に関して、界面活性剤は、多層塗膜の最上層内に存在すると最も効果的である。最上層において、界面活性剤の濃度は、好ましくは0.001〜1.000重量%であり、最も好ましくは0.010〜0.500重量%である。加えて、より少量の界面活性剤を上から2番目の層に使用することにより、最上層からの界面活性剤の拡散を最小限に抑えることができる。上から2番目の層内の界面活性剤の濃度は、好ましくは0.000〜0.200重量%であり、最も好ましくは0.000〜0.100重量%である。界面活性剤は最上層内で必要であるにすぎないので、最終乾燥されたフィルム内に留まる界面活性剤の量全体は小さい。
【0078】
本発明の方法を実施するために界面活性剤が必要とされるわけではないが、界面活性剤は塗布されたフィルムの均一性を改善する。具体的には、界面活性剤の使用によって、斑点不均一性が低減される。透明酢酸セルロースの場合、斑点不均一性は平常の検査中に、容易には視覚化されない。斑点アーチファクトを視覚化するために、最上層に有機色素を添加することにより、塗布されたフィルムに色を加えることができる。これらの色素含有フィルムの場合、不均一性を見て定量化するのは容易である。こうして、最適なフィルム均一性のために、効果的な界面活性剤タイプ及びレベルを選ぶことができる。
【0079】
次に図4〜図7に目を転じると、本発明の方法によって調製される種々のフィルム形態の断面図が示されている。図4には、表面エネルギーが35 erg/cm2未満になるように改質されたキャリヤ基体152から部分的に引き剥がされた状態で、単層光学フィルム150が示されている。光学フィルム150は、キャリヤ基体152に液状の単層を適用すること、又は層間で実質的に同じ組成を有する多層複合体を適用することにより、形成することができる。或いは図5において、基体の表面エネルギーを35 erg/cm2未満に改質する塗布表面層156で、キャリヤ基体154を前処理することもできる。図6は、組成上別個の4つの層から成る多層フィルム160を示している。これらの層は、表面エネルギーが35 erg/cm2未満になるように改質されたキャリヤ基体170に最も近い最下層162と、2つの中間層164, 166と、最上層168とを含む。図6はまた、多層複合体160全体を、キャリヤ基体170から引き剥がすことができることも示している。図7は、キャリヤ基体182に最も近い最下層174と、2つの中間層176, 178と、最上層180とを含む多層複合フィルム172を、キャリヤ基体182から引き剥がされた状態で示している。キャリヤ基体182は、基体182の表面エネルギーを改質するために、塗布表面層184で処理されている。塗布表面層156及び184は、表面エネルギー35 erg/cm2未満を提供する任意の高分子材料から成っていてよい。これらの例は:フッ素化及び塩素化ポリマー及びラテックス、例えばポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(トリフルオロエチレン)、フッ化ビニリデン・インターポリマー、塩化ビニリデン・インターポリマー、及びポリ(トリフルオロクロロエチルエチレン);ポリスチレン;ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン;シリコーンポリマー;及びその他のものを含む。塗布表面層は、水性又は有機溶剤塗布法、溶融押出塗布法、真空塗布法、又はよく知られたその他の表面塗布法によって適用することができる。塗布表面層内で使用される材料を、当業者により実験に基づいて最適化して選択することによって、所望の表面エネルギーを達成することができる。
【0080】
本発明の方法は、樹脂フィルムとキャリヤ基体とから成る、予め調製された複合体上に塗布する工程を含むこともできる。例えば、図1及び図2に示された塗布・乾燥システム10を使用することにより、既存の光学フィルム/基体複合体に、第2の多層フィルムを適用することができる。後続の塗膜を適用する前にフィルム/基体複合体が巻き取られてロールにされる場合、このプロセスはマルチパス型塗布作業と呼ばれる。塗布・乾燥作業が、複数の塗布ステーション及び乾燥炉を有する機械上で順次行われる場合、このプロセスはタンデム型塗布作業と呼ばれる。このようにして、厚いフィルムを高いライン速度で調製することができ、しかもこの場合、極めて厚い湿潤フィルムから多量の溶剤を除去することに関する問題が生じることはない。さらに、マルチパス型又はタンデム型塗布の実施はまた、他のアーチファクト、例えば深刻な筋、深刻な斑点、及びフィルム全体の不均一性を最小限に抑えるという利点を有する。
【0081】
タンデム型又はマルチパス型塗布の実施は、第1パスのフィルムとキャリヤ基体との間に若干の最小レベルの付着力を必要とする。いくつかの事例において、付着力の貧弱なフィルム/基体複合体は、マルチパス作業時に第2又は第3の湿潤塗膜が適用された後に、膨れが観察される。膨れ欠陥を回避するために、第1パス層とキャリヤ基体との間の付着力は約0.3 N/mを上回らなければならない。この付着力レベルは、種々の下塗り層及び種々の電子放電処理を含む種々様々なウェブ処理によって達成することができる。しかし、適用されたフィルムと基体との間の過剰な付着力も望ましくない。それというのも、後続の引き剥がし作業中にフィルムが損傷されることがあるからである。フィルム/基体複合体が250 N/mを上回る付着力を有すると、うまく剥がれないことが判った。このような過剰に強く付着させられた複合体から引き剥がされたフィルムは、フィルムの裂断に起因する、そして/又はシート内部の凝集破壊に起因する欠陥を示す。本発明の好ましい態様の場合、樹脂フィルムとキャリヤ基体との間の付着力は、250 N/m未満である。最も好ましくは、樹脂フィルムとキャリヤ基体との間の付着力は0.5〜25 N/mである。
【0082】
本発明の方法は、種々のキャリヤ基体、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン、三酢酸セルロース及びその他の高分子フィルムに樹脂塗膜を適用するのに適している。高分子基体は、非延伸、一軸延伸、又は二軸延伸フィルム又はシートであってよい。追加の基体は、紙、紙と高分子フィルムとから成る積層体、ガラス、布地、アルミニウム、及びその他の金属基体を含むことができる。いくつかの事例では、基体は、下塗り層又は放電デバイスで前処理することができる。基体は、種々のバインダー及び添加物を含有する機能層で前処理することもできる。基体の厚さに関して特定の要件はない。ここで調製される光学樹脂フィルムの場合、基体は、厚さ100又は175 μmのPETである。本発明の方法は、厚さ5〜500 μmの基体を使用して実施することができる。
【0083】
従来の樹脂フィルム流延方法が図8に示されている。図8に示されているように、粘性高分子ドープが、加圧されたタンク204からポンプ206によって、フィード導管200を通って、押出ホッパー202に送達される。ドープは、高研磨金属ドラム208上に流延される。高研磨金属ドラム208は、乾燥炉212の第1乾燥区分210内部に配置されている。流延フィルム214は、移動中のドラム208上で部分乾燥させておかれ、次いで、ドラム208から引き剥がされる。次いで流延フィルム214を最終乾燥区分216に搬送することにより、残留溶剤を除去する。次いで最終乾燥されたフィルム218を巻き上げステーション220で巻き取ってロールにする。従来技術の流延フィルムの厚さは典型的には40〜200 μmである。
【0084】
塗布法は流延法とは、それぞれの技術に必要な工程段階によって区別される。これらの工程段階は、数多くの有形のもの、例えば各方法にとって独自の流体粘度、改質助剤、基体、及びハードウェアに影響を与える。一般に、塗布法は、薄い可撓性基体に希釈低粘度液を適用し、乾燥炉内で溶剤を蒸発させ、そして乾燥されたフィルム/基体複合体を巻き取ってロールにすることを伴う。これに対して、流延法は、高研磨金属ドラム又はベルトに、濃縮粘性ドープを適用し、金属基体上で湿潤フィルムを部分乾燥させ、基体から部分乾燥されたフィルムを剥離し、乾燥炉内で部分乾燥されたフィルムから追加の溶剤を除去し、そして乾燥されたフィルムを巻き取ってロールにすることを伴う。粘度に関して、塗布法は、5,000 cp未満の極めて低粘度の液体を必要とする。本発明の方法の実施において、塗布された液体の粘度は一般には、2000 cp未満となり、1500 cp未満となることが最も多い。さらに本発明において、高速塗布用途の場合、最下層の粘度は200 cp未満であることが好ましく、最も好ましくは100 cp未満である。これに対して、流延法は、実際的な作業速度の場合、10,000〜100,000 cpのオーダーの粘度を有する高濃縮ドープを必要とする。改質助剤に関して、塗布法は一般に、塗布後の流れのアーチファクト、例えば斑点、剥離、ミカン肌、及びエッジ後退を制御するための改質助剤として界面活性剤を使用することを伴う。これに対して、流延法は界面活性剤を必要としない。その代わりに、改質助剤は、流延法においては剥離作業及び搬送作業を補助するために使用されるに過ぎない。例えば、乾燥炉を通る搬送中に摩耗アーチファクトを最小限に抑えるために、流延光学フィルム内に改質助剤として、低級アルコールが使用されることがある。基体に関して、塗布法は一般に、薄い(10〜250 μm)の可撓性基体を利用する。これに対して、流延法は厚い(1〜100 mm)の連続した高研磨金属ドラム又は剛性ベルトを採用する。工程段階のこれらの相違の結果、塗布において使用されるハードウェアは、流延において使用されるハードウェアとは、図1及び図7にそれぞれ示された概略図を比較することにより判るように、顕著に異なる。
【0085】
図9は、種々異なる表面エネルギーを有する種々様々な基体上に塩化メチレン溶液から流延されたポリカーボネート樹脂フィルムのフィルム厚に対する、面外リターデーションの依存関係を示す図である。これらのポリカーボネート・フィルムの面内リターデーションは全て事実上ゼロに等しい。リターデーション及び表面エネルギーは、下に概要を示すように測定される。
【0086】
リターデーション
樹脂フィルムのリターデーションは、波長370〜1000 nmにおいて、Woollam M-2000V 分光偏光解析器を使用して、ナノメーター(nm)で測定された。面内及び面外リターデーションを下記式によって定義する。
【0087】
【数1】

【0088】
上記式中、Reは、590 nmにおける面内リターデーションであり、ROOP(又はOPR)は、590 nmにおける面外リターデーションであり、nxは、機械方向に沿った、引き剥がされたフィルムの屈折率であり、nyは、横方向に沿った、引き剥がされたフィルムの屈折率であり、nzは、フィルム平面に対して平行なフィルムの屈折率であり、そしてdは、引き剥がされたフィルムの厚さ(ナノメートル(nm))である。このように、Reは、引き剥がされたフィルムの機械方向と横方向との間の屈折率差に、フィルム厚を掛け算した絶対値である。ROOPも同様に、機械方向及び横方向の屈折率の平均と、フィルム平面に対して平行な屈折率との差に、フィルム厚を掛け算した値である。
【0089】
表面エネルギー
固体表面の表面エネルギーは、 Girifalco-Good-Fowkes等式を使用して測定される。この等式は、固体表面と液滴との接触角、並びに、液体の表面張力、分散力、及び極性力の測定を必要とする。本発明の測定は、蒸留水(極性液体)及びヨウ化メチレン(非極性液体)を使用して行われた。2種の液体の表面張力、分散力、及び極性力を下記表に挙げる。
【0090】
【表1】

【0091】
接触角測定は、白色光源を有するRame-Hartゴニオメーターを使用して、室温20℃において、清浄表面上で行われた。アセトン、イソプロパノール及び蒸留水で繰り返し濯ぐことにより、表面を清浄化した。蒸留水又はヨウ化メチレンの液滴を清浄表面上に置き、それぞれの液体につき2-3滴の液滴の各側で、接触角を測定した。
【0092】
本発明によれば、低い表面エネルギーを有するキャリヤ基体、100 nm未満の面外リターデーション及び20 nm未満の面内リターデーションを有する光学樹脂フィルム、及び前記光学樹脂フィルム上に適用された1つ又は2つ以上の補助層を含む複合体要素を調製することができる。1つ又は2つ以上の補助層は、光学樹脂フィルムと同時に適用することができ、或いは、別個の塗布作業で適用することもできる。本発明における使用に適した補助層は、PVA付着促進層、耐摩耗性硬質コート層、防幻層、スマッジ防止層又はステイン防止層、反射防止層、低反射層、静電防止層、視野角補償層、及び水分バリヤ層を含む。任意には、本発明の複合体要素は、複合体要素の、キャリヤ基体とは反対側に、剥離可能な保護層を含むこともできる。
【0093】
本発明における使用にとって特に効果的な耐摩耗層は、輻射線硬化型又は熱硬化型組成物を含み、好ましくは、組成物は輻射線硬化型である。紫外線(UV)及び電子ビーム線の照射が、最も広く採用される輻射線硬化法である。UV硬化性組成物が、本発明の耐摩耗層を形成するのに特に有用であり、硬化化学反応、フリーラジカル化学反応及びカチオン化学反応のうちの2つの主要タイプを利用して、硬化させることができる。アクリレート・モノマー(反応性希釈剤)及びオリゴマー(反応性樹脂及びラッカー)が、フリーラジカル系配合物の主成分であり、硬化された塗膜にその物理特性のほとんどを与える。UV線エネルギーを吸収し、分解してフリーラジカルを形成し、そしてアクリレート基のC=C二重結合を攻撃して重合を開始するためには、光重合開始剤が必要となる。カチオン化学反応は、脂環式エポキシ樹脂及びビニルエーテル・モノマーを主成分として利用する。光重合開始剤がUV光を吸収することにより、ルイス酸を形成し、ルイス酸はエポキシ環を攻撃して重合を開始する。UV硬化とは、紫外線硬化を意味し、波長280〜420nm、好ましくは320〜410nmのUV線の使用を伴う。
【0094】
本発明において有用な耐摩耗層のために使用できるUV線硬化性樹脂及びラッカーの例は、光重合可能なモノマー及びオリゴマー、例えば多官能性化合物、例えば(メタ)アクリレート官能基(例えばエトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物)を有する多価アルコール及びこれらの誘導体のアクリレート及びメタクリレート・オリゴマー(本明細書中の(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを意味する)から誘導されたもの、及び低分子量ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、スピロアセタール樹脂、エポキシアクリレート、ポリブタジエン樹脂、及びポリチオール-ポリエン樹脂など及びこれらの混合物から誘導されたアクリレート及びメタクリレート・オリゴマー、及び比較的多量の反応性希釈剤を含有する電離線硬化性樹脂である。本明細書中で使用可能な反応性希釈剤は、単官能性モノマー、例えばエチル(メタ)アクリレート、エチルへキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン及びN-ビニルピロリドン、及び多官能性モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを含む。
【0095】
本発明の実施において好都合に使用されるUV線硬化性樹脂の例は、Sartomer CompanyのCN 968(商標)である。本発明の耐摩耗層は典型的には、(鉛筆試験ASTM D 3363による硬度の標準試験法を用いて)鉛筆硬度2H以上、好ましくは2H〜8Hの層を提供する。
【0096】
本発明の複合体要素は、防幻層、低反射層、又は反射防止層を含有することもできる。このような層は、特に明るい周囲光内で観察されたときのディスプレイの観察特性を改善するために、LCDにおいて採用される。
【0097】
防幻塗膜は、粗面化又はテキスチャ加工された表面を提供する。この表面は、正反射を低減するために使用される。望ましくない反射光の全てがまだ存在するが、しかし、この反射光は正反射させられるのではなく、散乱させられる。防幻塗膜は好ましくは輻射線硬化型組成物を含む。輻射線硬化型組成物は、有機又は無機(艶消し)粒子を添加することにより、又は表面をエンボス加工することにより得られる、テキスチャ加工又は粗面化された表面を有する。耐摩耗層のための上記輻射線硬化型組成物は、防幻層においても効果的に採用される。輻射線硬化型組成物に艶消し粒子を添加することにより、表面粗さが好ましく得られる。好適な粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物、又はハロゲン化物を有する無機化合物を含み、金属酸化物が特に好ましい。金属原子としては、Na, K, Mg, Ca, Ba, Al, Zn, Fe, Cu, Ti, Sn, In, W, Y, Sb, Mn, Ga, V, Nb, Ta, Ag, Si, B, Bi, Mo, Ce, Cd, Be, Pb及びNiが好適であり、そして、Mg, Ca, B及びSiがより好ましい。2つのタイプの金属を含有する無機化合物を使用することもできる。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、つまりシリカである。
【0098】
防幻層に適した追加の粒子は、2003年10月21日付けで出願された同一譲受人による米国特許出願第10/690,123号明細書に記載された層状粘土を含む。最適な層状粘土は、高アスペクト比の板形状を成す材料を含む。アスペクト比は、非対称粒子における短方向に対する長方向の比である。好ましい層状粒子は天然粘土、特に天然スメクタイト粘土、例えばモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ソボッカイト、スチーブンサイト、スビンフォルダイト、ハロイサイト、マガジアイト、ケニアイト及びバーミキュライト、並びに層状複水酸化物又はヒドロタルカイトである。最も好ましい粘土材料は、これらの材料の商業的な入手可能性に基づいて、天然モンモリロナイト、ヘクトライト及びヒドロタルカイトを含む。
【0099】
本発明の防幻層において使用するための追加の粒子は、当業者に知られたポリマー艶消し粒子又はビードを含む。ポリマー粒子は固形又は多孔質であってよいが、好ましくはこれらは架橋型ポリマー粒子である。防幻層において使用するための多孔質ポリマー粒子は、2003年11月18日付けで出願された同一譲受人による米国特許出願第10/715,706号明細書に記載されている。
【0100】
防幻層において使用するための粒子の平均粒子サイズは、2〜20マイクロメートル、好ましくは2〜15マイクロメートル、最も好ましくは4〜10マイクロメートルである。これらの粒子は層内に、2 wt%以上、50 wt%未満、典型的には約2〜40 wt%、好ましくは2〜20 %、最も好ましくは2〜10 %である。
【0101】
防幻層の厚さは一般に、約0.5〜50マイクロメートル、好ましくは1〜20マイクロメートル、より好ましくは2〜10マイクロメートルである。
【0102】
好ましくは、本発明に使用される防幻層のASTM D523に基づく60°光沢値は、100未満、好ましくは90未満であり、また、ASTM D-1003法及びJIS K-7105法に基づく透過曇り値は、50%未満、好ましくは30%未満である。
【0103】
本発明の別の態様の場合、低反射層又は反射防止層が、耐摩耗性硬質コート層又は防幻層との組み合わせで使用される。低反射塗膜又は反射防止塗膜は、耐摩耗層又は防幻層の上側に適用される。典型的には、低反射層が提供する平均正反射率(分光光度計によって測定し、波長領域450〜650 nmにわたって平均する)は、2%未満である。反射防止層が提供する平均正反射値は、1%未満である。
【0104】
本発明における使用に適した低反射層は、屈折率1.48未満、好ましくは屈折率約1.35〜1.40のフッ素含有ホモポリマー又はコポリマーを含むことができる。好適なフッ素含有ホモポリマー及びコポリマーは:フルオロオレフィン(例えばフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、(メタ)アクリル酸の部分フッ素化又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体、及び完全フッ素化又は部分フッ素化ビニルエーテルなどを含む。この層の効果は、塗膜内部に間質空気ボイドを誘発するサブミクロン・サイズの無機粒子又はポリマー粒子を内蔵することにより、改善することができる。この技術はさらに、米国特許第6,210,858号明細書及び同第5,919,555号明細書に記載されている。2003年11月18日付けで出願された、同一譲受人による米国特許出願第10/715,655号明細書に記載されているように、サブミクロン・サイズのポリマー粒子の内部粒子空間に空気ボイドを制限することにより、塗膜曇りの不利益が低減されるので、低反射層の効果をさらに改善することができる。
【0105】
低反射層の厚さは、0.01〜1マイクロメートルであり、好ましくは0.05〜0.2マイクロメートルである。
【0106】
反射防止層は、単層又は多層を含んでよい。単層を含む反射防止層は典型的には、(450〜650 nmのより広い範囲内の)単一の波長だけで1%未満の反射率値を提供する。本発明における使用に適した、一般に採用される単層反射防止塗膜は、金属フッ化物、例えばフッ化マグネシウム(MgF2)の層を含む。層は、よく知られた真空蒸着技術又はゾル・ゲル技術によって適用することができる。典型的には、このような層は、反射率最小値が望まれる波長において、ほぼ4分の1波長の光学的厚さ(すなわち層の屈折率と層厚との積)を有する。
【0107】
単層は極めて狭い波長範囲内の光の反射を効果的に低減することができるが、互いに重ね合わされたいくつかの(典型的には金属酸化物系の)透明層を含む多層を使用することにより、幅広い波長領域にわたる反射を低減する(すなわち広帯域反射制御)ことの方が多い。このような構造の場合、半波長層を4分の1波長層と交互に配置することにより、性能を改善する。多層反射防止塗膜は、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の層を含んでよい。この多層の形成は、典型的には、それぞれが所定の屈折率と厚さとを有する層の数に相当する多数の蒸着処置又はゾル・ゲル塗布を含む複雑なプロセスを必要とする。これらの干渉層には、各層の厚さの正確な制御が必要とされる。本発明における使用に適した多層反射防止塗膜の構成は特許文献及び技術文献においてよく知られており、また、種々のテキスト、例えばH. A. Macleod, 「薄膜光学フィルター(Thin Film Optical Filters)」, Adam Hilger, Ltd., Bristol 1985、及びJames D. Rancourt, 「光学薄膜ユーザー・ハンドブック(Optical Thin Films User's Handbook)」, Macmillan Publishing Company, 1987に記載されている。
【0108】
本発明の複合体要素は、水分バリヤ層を含有することができる。水分バリヤ層は、疎水性ポリマー、例えば塩化ビニリデン・ポリマー、フッ化ビニリデン・ポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、フッ素化ポリオレフィン、ポリカーボネート、及び透湿性が低いその他のものを含む。好ましくは、疎水性ポリマーは塩化ビニリデンを含む。より好ましくは、疎水性ポリマーは70〜99重量パーセントの塩化ビニリデンを含む。有機溶剤系又は水性の塗布用配合物を適用することにより、水分バリヤ層を適用することができる。効果的な水分バリヤ特性を提供するために、層の厚さは、1マイクロメートル以上、好ましくは1〜10マイクロメートル、最も好ましくは2〜8マイクロメートルであるべきである。水分バリヤ層は、ASTM F-1249に基づく水蒸気透過速度(MVTR)が1000 g/m2/日未満、好ましくは800 g/m2/日未満、最も好ましくは500 g/m2/日未満である。本発明の光学樹脂フィルム上にこのようなバリヤ層を使用することにより、湿度の変化に対する光学フィルム抵抗性が改善される。
【0109】
本発明の複合体要素は、透明静電防止層を含有することもできる。静電防止層は、複合体要素及び光学フィルムの製造中及び使用中に発生するおそれのある静電荷を制御するのを助ける。本発明の複合体要素は、キャリヤ基体からの光学樹脂の引き剥がし中に、特に摩擦電気を帯びやすい。樹脂フィルムと基体との分離から生じる、いわゆる「分離電荷(separation charge)」は、抵抗率約1 × 1011Ω/□未満、好ましくは1 × 1010Ω/□未満、そして最も好ましくは1 × 109Ω/□未満の静電防止層によって効果的に制御することができる。
【0110】
静電防止層において採用される導電性材料は、イオン伝導性又は電子伝導性であってよい。イオン伝導性材料は、単純な無機塩、界面活性剤のアルカリ金属塩、アルカリ金属塩を含有する高分子電解質、及びコロイド状金属酸化物ゾル(金属塩によって安定化)を含む。これらのうち、イオン伝導性ポリマー、例えばスチレンスルホン酸コポリマーのアニオン性アルカリ金属塩、及び米国特許第4,070,189号明細書のカチオン性第四アンモニウムポリマー、及びシリカ、酸化錫、チタニア、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、アルミナで塗布されたシリカ、アルミナ、ベーマイト、及びスメクタイト粘土を含むイオン伝導性コロイド金属酸化物ゾルが好ましい。
【0111】
本発明において採用される静電防止層は、好ましくは、湿度及び温度とは独立した導電性を有することにより、電子伝導性材料を含有する。好適な材料は下記のものを含む:
(1)ドナーでドープされた金属酸化物、酸素欠乏を有する金属酸化物、及び導電性窒化物、炭化物、及び臭化物を含む電子伝導性金属含有粒子。特に有用な粒子の具体例は、導電性SnO2、In2O、ZnSb2O6、InSbO4、TiB2、ZrB2、NbB2、TaB2、CrB、MoB、WB、LaB6、ZrN、TiN、WC、HfC、HfN、及びZrCを含む。これらの電子伝導性粒子を記載する特許明細書の例は、米国特許第4,273,103号;同第4,394,441号;同第4,416,963号;同第4,418,141号;同第4,431,764号;同第4,495,276号;同第4,571,361号;同第4,999,276号;同第5,122,445号;及び同第5,368,995号の各明細書を含む;
【0112】
(2)例えば、米国特許第4,845,369号明細書及び同第5,166,666号明細書に記載されているような、非導電性チタン酸カリウム・ホイスカー上に塗布されたアンチモン・ドープ型酸化錫、米国特許第5,719,016号明細書及び同第5,731,119号明細書に記載されているような、アンチモン・ドープ型酸化錫のファイバー又はホイスカー、及び米国特許第4,203,769号明細書に記載されている銀ドープ型五酸化バナジウム・ファイバーを含むファイバー状電子伝導性粒子;及び
【0113】
(3)電子伝導性ポリアセチレン、ポリチオフェン、及びポリピロール、好ましくは米国特許第5,370,981号明細書に記載された、Bayer CorpからBaytron(商標)Pとして商業的に入手可能なポリエチレンジオキシチオフェン。
【0114】
静電防止層において使用される導電性物質の量は、採用される導電性物質に応じて幅広く変化することができる。例えば、有用な量は、約0.5 mg/m2〜約1000 mg/m2、好ましくは約1 mg/m2〜約500 mg/m2である。静電防止層は、高い透明性を保証するために、0.05〜5マイクロメートル、好ましくは0.1〜0.5マイクロメートルの厚さを有する。
【0115】
コントラスト、色再現及び安定なグレースケール強度が、液晶技術を採用する電子ディスプレイのための重要な品質属性である。液晶ディスプレイのコントラストを制限する主要ファクターは、光が、暗又は「黒」画素状態にある液晶要素又はセルを通って「漏れる」傾向である。さらに、漏れ、ひいては液晶ディスプレイのコントラストはまた、ディスプレイ・スクリーンがどの方向から観察されるか、その方向に依存する。典型的には、最適なコントラストは、ディスプレイに対する法線入射を中心とする狭い視野角内でしか観察されず、そして、観察方向がディスプレイ法線から逸れるのに伴って急速に低下する。カラー・ディスプレイの場合、漏れの問題はコントラストを劣化させるだけでなく、色又は色相のずれをも引き起こし、これには色再現の劣化が伴う。
【0116】
LCDの品質を測定する主要ファクターの1つは、視野角特性である。視野角特性は、異なる視野角からのコントラスト比の変化を表す。大きく変化する視野角から同じ画像を見ることができることが望ましく、またこの可能性は、液晶ディスプレイ装置には不足している。視野角特性を改善する1つの方法は、米国特許第5,583,679号、同第5,853,801号、同第5,619,352号、同第5,978,055号、及び同第6,160,597号の各明細書に開示されているように、PVA二色性フィルムと液晶セルとの間に適正な光学特性を有する視野角補償層(補償層、リターダー層、又は位相差層とも呼ばれる)を採用することである。負の複屈折を有するディスコティック液晶に基づいた、米国特許第5,583,679号明細書及び同第5,853,801号明細書による補償フィルムが幅広く使用されている。
【0117】
本発明において有用な視野角補償層は、光学異方性層である。光学異方性視野角補償層は、正の複屈折材料又は負の複屈折材料を含んでよい。補償層は光学的に一軸性又は光学的に二軸性であってよい。補償層は、層に対して垂直な平面内で傾斜したその光軸を有してよい。光軸の傾斜は層厚方向で一定であってよく、又は光軸の傾斜は層厚方向で変化してもよい。
【0118】
本発明において有用な光学異方性視野角補償層は、米国特許第5,583,679号明細書及び同第5,853,801号明細書に記載された負の複屈折のディスコティック液晶;米国特許第6,160,597号明細書に記載された正の複屈折のネマティック液晶:同一譲受人による米国特許出願公開第2004/0021814号明細書及び2003年12月23日付けで出願された米国特許出願第10/745,109号明細書に記載された負の複屈折の非晶質ポリマーを含んでよい。
【0119】
本発明の補助層は、2004年5月4日付けで出願された同一譲受人による米国特許出願第10/838,841号明細書に記載されたPVA付着促進層を含んでもよい。
【0120】
本発明の補助層は、数多くのよく知られた液体塗布技術のいずれか、例えば浸漬塗布、ロッド塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、マイクログラビア塗布、リバースロール塗布、スロット塗布、押出塗布、スライド塗布、カーテン塗布によって、又は真空蒸着技術によって適用することができる。液体塗布の場合、湿潤層は一般に、シンプルな蒸発によって乾燥させられる。この蒸発は既知の技術、例えば対流加熱によって加速することができる。補助層は、光学樹脂フィルムと同時に適用することができ、或いは、光学樹脂フィルムの塗布及び乾燥後に適用することもできる。いくつかの異なる補助層を、スライド塗布によって同時に塗布することができ、例えば静電防止層を水分バリヤ層と同時に塗布することができ、或いは、水分バリヤ層を視野角補償層と同時に塗布することもできる。Research Disclosure 308119(1989年12月発行)第1007〜1008頁には、既知の塗布法及び乾燥法がさらに詳細に記載されている。
【0121】
本発明の光学フィルムは、種々様々なLCDディスプレイ様式、例えばねじれネマティック(Twisted Nematic(TN))、超ねじれネマティック(Super Twisted Nematic(STN))、光学補償屈曲(Optically Compensated Bend(OCB))、面内切換え(In Plane Switching(IPS))、又は垂直配向(Vertically Aligned(VA))液晶ディスプレイとともに使用するのに適している。これら種々の液晶ディスプレイ技術は、米国特許第5,619,352号明細書(Koch他)、同第5,410,422号明細書(Bos)、及び同第4,701,028号明細書(Clerc他)に概説されている。
【0122】
前述の詳細な説明に基づいて明らかなように、補助層の種々のタイプ及び配列を有する種々様々な複合体要素及び光学フィルムを調製することができる。本発明に基づいて考えられ得る構造のうちのいくつかを、下記非限定的例によって示す。
【0123】
複合体C1:

TAC
ポリエチレン
PET
【0124】
100マイクロメートル厚のポリエチレンテレフタレート(PET)基体をコロナ処理し、これに、25マイクロメートル厚のポリエチレン層{「付着及び凝集(Adhesion and Cohesion)」、Philip Weiss編、第190頁、Elsevier Publishing Company, Amsterdam, 1962に報告された結果に基づいて、ポリエチレンは表面張力31 erg/cm2を有する}を押出塗布する。ポリエチレン表面上に、塩化メチレン溶液からトリアセチルセルロース(TAC)塗布用配合物を適用する。乾燥されたTACフィルムは厚さ20マイクロメートルであり、11 wt%のトリフェニルホスフェート可塑剤、1 wt%のTINUVIN(商標) 8515 UV吸収剤(2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールと、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジtert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールとの混合物、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)、及び約0.1 wt%のPARSOL(商標) 1789 UV吸収剤(4-(1,1-ジメチルエチル)-4'-メトキシジベンゾイルメタン、Roche Vitamins Inc.から入手可能)を含有する。
【0125】
複合体C2:

耐摩耗層
TAC
ポリエチレン
PET
【0126】
複合体C2を複合体C1と同様に調製する。ただしここでは、ウレタンアクリレート・オリゴマー(Sartomer CompanyのCN 968(商標))を塗布し、乾燥させ、次いでUV硬化させることにより調製される耐摩耗層を、乾燥されたTACフィルム上に適用する。
【0127】
複合体C3:

低反射層
耐摩耗層
TAC
ポリエチレン
PET
【0128】
複合体C3を複合体C2と同様に調製する。ただしここでは、フッ素化オレフィンポリマーを含む厚さ0.1マイクロメートルの低反射層を、耐摩耗層上に適用する。
【0129】
複合体C4:

低反射層
耐摩耗層
TAC
ポリスチレン
PET
【0130】
複合体C4を複合体C3と同様に調製する。ただしここでは、ポリエチレンテレフタレート基体は、ポリエチレン層ではなく、0.5マイクロメートル厚のポリスチレンを有する{「付着及び凝集(Adhesion and Cohesion)」、Philip Weiss編、第190頁、Elsevier Publishing Company, Amsterdam, 1962に報告された結果に基づいて、ポリスチレンは表面張力33 erg/cm2を有する}。
【0131】
複合体C5:

耐摩耗層
静電防止層
水分バリヤ層
TAC
ポリエチレン
PET
【0132】
複合体C5を複合体C1と同様に調製する。ただしここでは、78重量%の塩化ビニリデンを含有するポリ(塩化ビニリデン-コ-アクリロニトリル-コ-アクリル酸)を含む5マイクロメートル厚の水分バリヤ層を、TAC層上に適用する。ポリ(塩化ビニリデン-コ-アクリロニトリル-コ-アクリル酸)バインダー中にBaytron(商標)P(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート、Bayer Corpから入手可能)を含む静電防止層を水分バリヤ層上に適用する。静電防止層は、3 mg/m2のBaytron(商標)Pを含有し、約1 × 108Ω/□の表面抵抗率を有する。静電防止層上に、複合体C1中に採用した耐摩耗層を適用する。
【0133】
複合体C6:

耐摩耗層
静電防止層
水分バリヤ層
ポリカーボネート
ポリエチレン
PET
【0134】
複合体C6を複合体C5と同様に調製する。ただしここでは、ポリカーボネート、ビスフェノールA型ホモポリマーの20マイクロメートル厚の層を、低複屈折ポリマーフィルムとしてTACの代わりに使用する。
【0135】
ガード型カバーシート複合体C7:

TAC
ポリエチレン基体
【0136】
ガード型カバーシート複合体C7を複合体C1と同様に調製する。ただしここでは、ポリエチレン押出塗布型層を有するPET基体の代わりに、キャリヤ基体は100ミクロン厚のポリエチレン・フィルムである。
【0137】
特定の好ましい態様を具体的に参照しながら、本発明を詳細に説明してきたが、本発明の思想及び範囲内で変更及び改変を加え得ることは言うまでもない。
【0138】
以上から判るように、本発明は、明らかなその他の利点、及び装置に固有のその他の利点とともに、上記目標及び目的の全てを達成するように十分に適合されたものである。
【0139】
言うまでもなく、或る特定の構成要件及び下位の組み合わせが有用であり、これらを他の構成要件及び下位の組み合わせとの関連において採用することができる。このことは、特許請求の範囲によって、そして特許請求の範囲内で考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、本発明の方法を実施する際に使用することができるロールツーロール塗布・乾燥装置例を示す概略図である。
【図2】図2は、基体から分離された樹脂ウェブが別個に巻き取られるステーションを含む、図1のロールツーロール塗布・乾燥装置例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の方法を実施する際に使用することができる多スロット塗布装置の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の方法によって形成された樹脂フィルムを、低表面エネルギーのキャリヤ基体から部分的に引き剥がされた状態で示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の方法によって形成された樹脂フィルムを、低表面エネルギーの下塗り層が上に形成されたキャリヤ基体から部分的に引き剥がされた状態で示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の方法によって形成された多層樹脂フィルムを、低表面エネルギーのキャリヤ基体から部分的に引き剥がされた状態で示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の方法によって形成された多層樹脂フィルムを、低表面エネルギーの下塗り層が上に形成されたキャリヤ基体から部分的に引き剥がされた状態で示す断面図である。
【図8】図8は、樹脂フィルムを流延するために従来技術において使用された流延装置を示す概略図である。
【図9】図9は、種々異なる表面エネルギーを有する種々様々な基体上に塩化メチレン溶液から流延された固形ポリカーボネート樹脂のフィルム厚に対する、面外リターデーションの依存関係を示す図である。
【符号の説明】
【0141】
10 乾燥システム
12 移動中の基体/ウェブ
14 乾燥器
16 塗布装置
18 巻き出しステーション
20 バックアップ・ローラ
22 塗布されたのウェブ
24 乾燥フィルム
26 巻き上げステーション
28 塗膜供給容器
30 塗膜供給容器
32 塗膜供給容器
34 塗膜供給容器
36 ポンプ
38 ポンプ
40 ポンプ
42 ポンプ
44 導管
46 導管
48 導管
50 導管
52 放電装置
54 極性電荷支援装置
56 対向するローラ
58 対向するローラ
60 樹脂フィルム
62 巻き取りステーション
64 巻き上げステーション
66 乾燥区分
68 乾燥区分
70 乾燥区分
72 乾燥区分
74 乾燥区分
76 乾燥区分
78 乾燥区分
80 乾燥区分
82 乾燥区分
92 前区分
94 第2区分
96 第3区分
98 第4区分
100 後板
102 入口
104 計量スロット
106 ポンプ
108 最下層
110 入口
112 第2計量スロット
114 ポンプ
116 層
118 入口
120 計量スロット
122 ポンプ
124 層
126 入口
128 計量スロット
130 ポンプ
132 層
134 傾斜スライド面
136 塗布用リップ
138 第2傾斜スライド面
140 第3傾斜スライド面
142 第4傾斜スライド面
144 後ろ側のランド面
146 塗布用ビード
150 樹脂フィルム
152 キャリヤ基体
154 キャリヤ基体
156 塗布表面層
158 樹脂フィルム
160 多層フィルム
162 最下層
164 中間層
165 中間層
166 中間層
168 最上層
170 キャリヤ基体
172 複合フィルム
174 最下層
176 中間層
178 中間層
180 最上層
182 キャリヤ基体
184 塗布表面層
200 フィード導管
202 押出ホッパー
204 加圧されたタンク
206 ポンプ
208 金属ドラム
210 乾燥区分
212 乾燥炉
214 流延フィルム
216 最終乾燥区分
218 最終乾燥されたフィルム
220 巻き上げステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面外リターデーション(OPR)が100 nm未満の光学樹脂フィルムを形成する方法であって、
(a)表面エネルギー・レベルが35 erg/cm2未満の移動中の不連続のキャリヤ基体の表面上に液状光学樹脂/溶剤混合物を適用すること;
(b)該液状樹脂/溶剤混合物を乾燥させることにより、該溶剤を実質的に除去し、該キャリヤ基体に弱く付着させられた樹脂フィルムの複合体を生成すること、該樹脂フィルムは、該キャリヤ基体に剥離可能に付着させられ、これにより該樹脂フィルムが該キャリヤ基体から引き剥がされるのを可能にする、そして
(c)該基体から該フィルムを除去すること、該形成されたフィルムは、100 nm未満のOPR及び20 nm未満の面内リターデーションを示す、
各工程を含んで成る光学樹脂フィルムを形成する方法。
【請求項2】
該液状樹脂/溶剤混合物が、長さ10 m以上の不連続のキャリヤ基体上に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該液状樹脂/溶剤混合物が、ロールツーロール法を用いて適用される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該液状樹脂/溶剤混合物が、スライド・ビード塗布用ダイを使用して適用され、該ダイのスライド面上に多層複合体が形成される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該多層複合体の各液状層の粘度が、5000 cp未満である請求項2に記載の方法。
【請求項6】
該キャリヤ基体が、ポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該キャリヤ基体が、塗布表面に適用された表面層を有し、そして前記層の該表面エネルギーが、35 erg/cm2未満である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該多層複合体の最上層が、界面活性剤を含有する請求項2に記載の方法。
【請求項9】
該多層複合体の少なくともトップ層が、ポリシロキサン界面活性剤を含有する請求項2に記載の方法。
【請求項10】
該不連続のキャリヤ基体から該光学樹脂フィルムを引き剥がす前に、該複合体を巻き取って少なくとも1つのロールにする工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(a)該乾燥工程直後に該キャリヤ基体から該樹脂フィルムを分離すること;そして
(b)該光学樹脂フィルムを巻き取って少なくとも1つのロールにすること
の各工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該複合体の少なくとも1つのロールの少なくとも一部を巻き出すこと;そして
該キャリヤ基体から該樹脂フィルムを分離すること
の各工程をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記光学樹脂が、セルロース・エステルを含み、そして面外リターデーションが、20 nm未満である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該樹脂フィルムが、付着強度約250 N/m未満で、該キャリヤ基体に付着させられる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該分離工程前に、該光学樹脂フィルム中の残留溶剤を10重量%未満まで低減する工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
該分離工程前に、該光学樹脂フィルム中の残留溶剤を10重量%未満まで低減する工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
該多層複合体の少なくともトップ層が、フッ素化界面活性剤を含有する請求項2に記載の方法。
【請求項18】
該樹脂フィルムが、10 nm未満の面内リターデーション及び10 nm未満のOPRを有する請求項1に記載の方法。
【請求項19】
該樹脂フィルムが、0.5〜5 nmの面内リターデーション及び0.5〜5 nmのOPRを有する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
該乾燥工程後に該複合材料に少なくとも1つの追加の樹脂層を適用する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
該樹脂フィルムの厚さが、1〜100 μmである請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記フィルムが、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリオレフィン、アクリル誘導体、スチレン誘導体、ポリアミド及びポリエステルアミドから成る群から選択された樹脂を含む請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記不連続のキャリヤ基体の塗布面が、フッ素化ポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記不連続のキャリヤ基体の塗布面が、ポリオレフィンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記不連続のキャリヤ基体の塗布面が、シリコン系ポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記光学樹脂が、トリアセチルセルロースを含む請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記光学樹脂フィルムが、1種又は2種以上のUV吸収剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項28】
不連続のキャリヤ基体上に塗布された樹脂フィルムを含んで成る複合体要素であって、該樹脂フィルムの厚さが、1〜100 μmであり、該樹脂フィルムが、20 nm未満の面内リターデーション及び20 nm未満のOPRを有し、該樹脂フィルムが、付着強度約250 N/m未満で該キャリヤ基体に付着されている。
【請求項29】
該樹脂フィルムが、10 nm未満の面内リターデーション及び10 nm未満のOPRを有する請求項28に記載の複合体要素。
【請求項30】
該樹脂フィルムが、0.5〜5 nmの面内リターデーション及び0.5〜5 nmのOPRを有する請求項28に記載の複合体要素。
【請求項31】
該樹脂フィルムが、付着強度約0.3 N/m以上で、該キャリヤ基体に付着されている請求項28に記載の複合体要素。
【請求項32】
該樹脂フィルムが、該キャリヤ基体から引き剥がし可能である請求項28に記載の複合体要素。
【請求項33】
該樹脂フィルムが、多層複合体である請求項28に記載の複合体要素。
【請求項34】
該多層複合体の少なくともトップ層が、界面活性剤を含む請求項33に記載の複合体要素。
【請求項35】
該光学樹脂フィルム内に、可塑剤が内蔵されている請求項28に記載の複合体要素。
【請求項36】
該光学樹脂フィルム内に、1種又は2種以上のUV吸収剤が内蔵されている請求項28に記載の複合体要素。
【請求項37】
該樹脂フィルムが、セルロース・エステルを含む請求項28に記載の複合体要素。
【請求項38】
不連続のキャリヤ基体上に塗布された長さ10メートル以上のポリカーボネート樹脂フィルムを含んで成る複合体要素であって、該樹脂フィルムの厚さが、1〜100 μmであり、該樹脂フィルムが、20 nm未満の面内リターデーション及び100 nm未満の面外リターデーションを有し、該樹脂フィルムが、付着強度約250 N/m未満で、該キャリヤ基体に付着されている。
【請求項39】
該樹脂フィルムが、0.5〜5 nmの面内リターデーション及び80 nm未満の面外リターデーションを有する請求項38に記載の複合体要素。
【請求項40】
該樹脂フィルムが、付着強度約0.3 N/m以上で、該キャリヤ基体に付着されている請求項38に記載の複合体要素。
【請求項41】
該樹脂フィルムが、該キャリヤ基体から引き剥がし可能である請求項38に記載の複合体要素。
【請求項42】
該樹脂フィルムが、多層複合体である請求項38に記載の複合体要素。
【請求項43】
該多層複合体の少なくともトップ層が、界面活性剤を含む請求項38に記載の複合体要素。
【請求項44】
該光学樹脂フィルム内に、可塑剤が内蔵されている請求項38に記載の複合体要素。
【請求項45】
該光学樹脂フィルム内に、1種又は2種以上のUV吸収剤が内蔵されている請求項38に記載の複合体要素。
【請求項46】
塗布作業によって形成された樹脂の層を含む樹脂フィルムであって、該樹脂フィルムの厚さは1〜100 μmであり、該樹脂フィルムは、20 nm未満の面内リターデーション及び20 nm未満の面外リターデーションを有する。
【請求項47】
該光学樹脂フィルムが、10 nm未満の面内リターデーション及び10 nm未満の面外リターデーションを有する請求項46に記載の樹脂フィルム。
【請求項48】
該樹脂フィルムが、0.5〜5 nmの面内リターデーション及び0.5〜5 nm未満の面外リターデーションを有する請求項46に記載の複合体要素。
【請求項49】
塗布作業によって形成された樹脂の層を含む樹脂フィルムを含んで成る液晶ディスプレイであって、:
該樹脂フィルムの厚さは1〜100 μmであり、該樹脂フィルムは、20 nm未満の面内リターデーション及び20 nm未満の面外リターデーションを有する。
【請求項50】
該樹脂フィルムが、10 nm未満の面内リターデーション及び10 nm未満のOPRを有する請求項49に記載の液晶ディスプレイ。
【請求項51】
該樹脂フィルムが、0.5〜5 nmの面内リターデーション及び0.5〜5 nmのOPRを有する請求項49に記載の液晶ディスプレイ。
【請求項52】
該多層複合体の少なくともトップ層が、フッ素化界面活性剤を含む請求項49に記載の複合フィルム。
【請求項53】
塗布作業によって形成されたポリカーボネート樹脂の層を含む樹脂フィルムを含んで成る液晶ディスプレイであって、
該樹脂フィルムの厚さは5〜100 μmであり、該樹脂フィルムは、20 nm未満の面内リターデーション及び100 nm未満の面外リターデーションを有する。
【請求項54】
該樹脂フィルムが、10 nm未満の面内リターデーション及び80 nm未満のOPRを有する請求項53に記載の液晶ディスプレイ。
【請求項55】
該多層複合体の少なくともトップ層が、フッ素化界面活性剤を含む請求項54に記載の複合フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−514468(P2008−514468A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534646(P2007−534646)
【出願日】平成17年9月19日(2005.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/033551
【国際公開番号】WO2006/039140
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】