説明

多層配線基板

【課題】 絶縁基体の表面に設けられた接続パッドの剥離を防止するとともに、貫通導体が絶縁基体の表面から大きく突出するのを抑制された多層配線基板を提供する。
【解決手段】 本発明は、複数のガラスセラミック絶縁層11、12、13、14からなる絶縁基体1の内部に内部配線層2および貫通導体3が設けられるとともに、絶縁基体1の表面に貫通導体3に接続するように貫通導体3の横断面よりも大きな面積の接続パッド4が設けられた多層配線基板であって、接続パッド4は、貫通導体3に接する第1の導体層41と、第1の導体層41の周縁部を覆う環状部431および貫通導体3の直上で交差する2本の帯状部432を含むガラスセラミック中間層43と、環状部431および帯状部432を除く領域で第1の導体層41と電気的に接続された第2の導体層42とからなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装部品や外部回路基板との接続のための接続パッドを有する多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び回路のデジタル化に伴い、高密度な多層配線基板が要求されるようになってきており、外部回路基板への実装の形態もBGA(ボールグリッドアレイ)タイプが主流となってきている。
【0003】
例えば、半導体素子が搭載される多層配線基板は、上面に半導体素子が搭載される搭載部を有するセラミックスからなる絶縁基体と、絶縁基体の半導体素子搭載部またはその周辺から下面にかけて導出される銅、銀、金等からなる貫通導体と、絶縁基体の下面に形成され、貫通導体と電気的に接続された複数個の接続パッドとを含む構成になっている。
【0004】
そして、上記の多層配線基板を外部回路基板に実装する場合には、半田ボールを用いて、外部回路基板の上面に設けられた接続パッドと多層配線基板の下面に設けられた接続パッドとをリフローにて半田接合している。
【0005】
ここで、多層配線基板の熱膨張係数が約4×10−6/℃〜12×10−6/℃であるのに対し、外部回路基板は一般にガラスエポキシ樹脂等の樹脂材で形成され、その熱膨張係数が約15×10−6/℃〜50×10−6/℃であることから、大きく相違する。
【0006】
したがって、半導体素子の作動時に発生する熱が多層配線基板および外部回路基板に繰り返し作用すると、両者の熱膨張差に起因して水平方向に大きな熱応力が繰り返し生じる。そして、この熱応力の繰り返しによって、接続パッドがその周縁から剥離してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、接続パッドがその外縁から剥離するのを防止するために、接続パッドの周縁部を絶縁膜で被覆した多層配線基板が提案されている(特許文献1および特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−310614号公報参照
【特許文献2】特開2002−198637号公報参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、ガラスセラミックスからなる絶縁基体を有する多層配線基板は、焼結前のガラスセラミックグリーンシート積層体の状態から焼結により体積が40〜50%程度収縮する。このとき、貫通導体に用いられる導体材料はその組成や原料粒子径を調整することにより、収縮率をガラスセラミックグリーンシートの収縮率に近づけ、同時焼成が可能となるように設計されている。
【0010】
ところが、一般にガラスセラミックグリーンシートの収縮率は異方性を持ち、多層配線基板の主面と平行な方向(平面方向)における収縮率と垂直な方向(厚み方向)の収縮率とに差が生じる場合がある。ここで、ガラスセラミックグリーンシートの厚み方向の収縮率が平面方向の収縮率に比べて大きい場合、ガラスセラミックグリーンシートの厚み方向の収縮率が貫通導体の厚み方向の収縮率よりも大きくなり、焼結後の貫通導体の厚みが絶縁基体の厚みより大きくなることによって、絶縁基体の表面から貫通導体が突出することになる。
【0011】
したがって、接続パッドの周縁部を絶縁膜で被覆することで、接続パッドの周縁からの剥離を防止したとしても、絶縁基体の表面から貫通導体が突出することで、表面実装部品の実装信頼性および外部回路基板との接合信頼性が低下するという問題が生じていた。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、絶縁基体の表面に設けられた接続パッドの剥離を防止するとともに、貫通導体が絶縁基体の表面から大きく突出するのを抑制された多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数のガラスセラミック絶縁層からなる絶縁基体の内部に内部配線層および貫通導体が設けられるとともに、前記絶縁基体の表面に前記貫通導体に接続するように前記貫通導体の横断面よりも大きな面積の接続パッドが設けられた多層配線基板であって、前記接続パッドは、前記貫通導体に接する第1の導体層と、該第1の導体層の周縁部を覆う環状部および前記貫通導体の直上で交差する2本の帯状部を含むガラスセラミック中間層と、前記環状部および前記帯状部を除く領域で前記第1の導体層と電気的に接続された第2の導体層とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1の導体層の周縁部がガラスセラミック中間層の環状部によって覆われていることで、まず第1の導体層の剥離が抑制される。そして、第2の導体層がその周縁部に近い領域で第1の導体層に接合されていることで、第2の導体層の剥離が抑制される。
【0015】
また、ガラスセラミック中間層が貫通導体の直上で交差する2本の帯状部を含んでいることで、焼結の過程で2本の帯状部の交差する部分が貫通導体の突出を押さえ込むように作用し、貫通導体が絶縁基体の表面から大きく突出するのを抑制された多層配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の多層配線基板の一実施形態の概略断面図である。
【図2】図1に示す接続パッドの平面透視図である。
【図3】図2に示すA−A線矢視概略断面図である。
【図4】図2に示すB−B線矢視概略断面図である。
【図5】本発明の多層配線基板の他の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の多層配線基板の一実施形態の概略断面図であり、図1に示す多層配線基板は、複数のガラスセラミック絶縁層11、12、13、14からなる絶縁基体1の内部に内部配線層2および貫通導体3が設けられるとともに、絶縁基体1の表面に貫通導体3に接続するように貫通導体3の横断面よりも大きな面積の接続パッド4が設けられている。
【0019】
複数のガラスセラミック絶縁層11、12、13、14からなる絶縁基体1は、焼成後に結晶が析出する結晶性ガラス粉末とセラミックフィラーとを主成分とするガラスセラミックグリーンシートまたはペーストの焼結によって得られたものであって、結晶相と残留ガラスとを有している。なお、残留ガラスとは、焼成によって結晶性ガラスから結晶として析出しきれずにガラスとして残留したもののことである。
【0020】
ガラスセラミック絶縁層11〜14に含まれる結晶相としては、アルミナ、ジルコニア、クォーツ、クリストバライト、コーディエライト、ムライト、スピネル、ガーナイト、エンスタタイト、フォルステライト、アノーサイト、スラウソナイト、セルジアン、ディオプサイド、ハーディストナイト、モンティセライト、アケルマナイト、ウイレマイトやその固溶体、置換誘導体などを例示できる。これらの結晶相のうち、抗折強度を向上させるという点でアルミナ、ジルコニア、コーディエライト、セルジアンが好ましく、誘電率を低下させて高周波信号の伝送損失を低減させるという点でフォルステライト、クォーツ、ディオプサイドが好ましい。
【0021】
ここで、複数の結晶相は共存していてもよい。また、結晶相は焼成によって結晶性ガラス粉末から析出したものやセラミックフィラーとの反応によって析出したものであってもよく、原料(セラミックフィラー)の段階から結晶として含まれているものであってもよい。また、残留ガラス量は、10体積%以下、特に5体積%以下であることが多層配線基板の曲げ強度、誘電損失の観点から望ましい。この残留ガラス量は、XRD回折パターンからリートベルト解析により求めることができる。
【0022】
絶縁基体1の内部には、内部配線層2および貫通導体3が設けられている。内部配線層2および貫通導体3は、Cu、Ag、Au等の低抵抗導体を主成分として含むものであり、電気抵抗および熱伝導性を低下させない範囲で、他の金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等を含んでいてもよい。
【0023】
絶縁基体1の表面には、図2ないし図4に示すように、貫通導体3に接続した接続パッド4が設けられている。この接続パッド4は、貫通導体3の横断面よりも大きな面積に形成されていて、表面実装部品や外部回路基板との接続端子として機能するものである。
【0024】
接続パッド4は、貫通導体3に接する第1の導体層41と、第1の導体層41の周縁部を覆う環状部431および貫通導体3の直上で交差する2本の帯状部432を含むガラスセラミック中間層43と、環状部431および帯状部432を除く領域で第1の導体層41と電気的に接続された第2の導体層42とからなるものである。
【0025】
第1の導体層41および第2の導体層42は、内部配線層2、貫通導体3と同様の材料で形成され、Cu、Ag、Au等の低抵抗導体を主成分として含むものであり、通常は、接続される貫通導体3の直径の1.2〜2倍程度の直径の円板状に形成される。
【0026】
そして、第1の導体層41と第2の導体層42との間には、環状部431および帯状部432を有するガラスセラミック中間層43が設けられている。ガラスセラミック中間層43は、接続パッド4の周囲の絶縁基体1表面から形成されたセラミック被膜のうち、接続パッド4に含まれる領域のことをいい、絶縁基体1の形成材料と同様の材料で形成されたものである。
【0027】
具体的には、第1の導体層41の周縁部を覆うように環状部431が設けられている。この環状部431は、製造時および使用時の第1の導体層41の剥離を抑制するためのものである。第1の導体層41と第2の導体層42との導通(電気特性)の点および第1の導体層41の剥離抑制の点から、環状部431の内径は、第1の導体層41の外径(環状部431の外径)の75〜90%であるのが好ましい。
【0028】
また、第1の導体層41の環状部431で覆われていない領域の上には、貫通導体3の直上で交差する2本の帯状部432が設けられている。この2本の帯状部432は焼結の過程で2本の帯状部の交差する部分が貫通導体3の突出を押さえ込むように作用し、貫通導体3が絶縁基体1の表面から大きく突出するのを抑制するためのものである。帯状部432が1本ではなく2本であって、貫通導体3の直上で交差していることで、十分な突出抑制効果が得られる。ここで、第1の導体層41と第2の導体層42との導通(電気特性)の点および貫通導体3の突出抑制の点から、帯状部432の幅は、貫通導体3の横断面の直径の30〜50%であるのが好ましい。
【0029】
なお、2本の帯状部432は、第1の導体層41のどの部分からの剥離も均等に抑制する点から、図1に示すように直交するように設けられているのが好ましい。
【0030】
ガラスセラミック中間層43の上に第2の導体層42が設けられていて、第2の導体層42は環状部431および帯状部432を除く領域で第1の導体層41と電気的に接続されている。環状部431および帯状部432を除く領域は、第2の導体層42の周縁部に近い領域であることから、例えば中心付近で貫通導体に接続される場合に比べて、第2の導体層42の剥離は抑制される。
【0031】
ここで、図5に示すように、第1の導体層41は第2の導体層42より大きな面積であり、環状部431の内周と第2の導体層42の外周とが上から見てほぼ一致している場合には、第2の導体層42のより周縁部に近い部分で第1の導体層41と接合されることとなり、第2の導体層42の剥離はさらに抑制される。
【0032】
なお、接続パッド4とは、上から見て第1の導体層41または第2の導体層42のどちらか大きいほうの外周までの領域のことをいい、通常は第1の導体層41の外周までの領域のことをいう。また、絶縁基体1の表面には、接続パッド4の他に表面配線層が設けられていてもよい。
【0033】
次に、上記の多層配線基板の製造方法について説明する。
【0034】
まず、焼成後にガラスセラミック絶縁層11、12、13、14となるガラスセラミックグリーンシートを作製する。ガラスセラミックグリーンシートは、結晶性ガラス粉末30〜100質量%とセラミックフィラー0〜70質量%とを主成分とする材料で形成されている。
【0035】
ガラス粉末としては、SiOを20〜60質量%と、Alを10〜25質量%と、MgOを8〜35質量%、BaOを10〜20質量%と、B、Y、CaO、SrO、NaO、SnO、P、ZrOおよびLiOから選ばれる少なくとも1種を0〜20質量%とからなり、ディオプサイド、ハーディストナイト、セルシアン、コージェライト、アノーサイト、ガーナイト、ウィレマイト、スピネル、ムライト、フォルステライト、スーアナイトのうち少なくとも1種の結晶を形成するものが好ましい。また、セラミックフィラーとしては、Al、SiO、MgTiO、CaZrO、CaTiO、BaTi、MgSiO、SrTiO、ZrTiO、ZrO、TiO、AlN、Siから選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0036】
この材料を主成分として、焼成途中で容易に揮発する揮発性有機バインダー、有機溶剤および必要に応じて可塑剤とを混合してスラリー化し、このスラリーを用いてリップコーター法やドクターブレード法などによってテープ成形を行い、所定寸法に切断してガラスセラミックグリーンシートが作製される。
【0037】
次に、得られたガラスセラミックグリーンシートにレーザー、パンチング、エッチング等の方法などによって所望の形状の貫通孔を形成する。そして、貫通孔内に貫通導体用ペーストを充填する。貫通導体用ペーストとして、Cu粉末、Ag粉末、Au粉末などに、有機バインダー、有機溶剤、必要に応じて有機物や無機物の添加剤を加えて3本ロールで混練したものを用いる。充填には、貫通孔に対応する箇所に穿孔されたメタルマスク、あるいはエマルジョンメッシュスクリーンマスクを用いて、スクリーン印刷する方法を用いる。このとき、マスクを通して貫通導体用ペーストを押し出す方法として、通常のポリウレタン製等の板状(あるいは剣状)のスキージを用いる方法でもよく、ペースト押し出し式のスキージヘッドを用いて加圧注入する方法でもよい。また、貫通導体用ペーストの粘度や印刷条件を調整して、充填した貫通導体用ペーストが貫通孔上でガラスセラミックグリーンシートの表面から突出するように過充填する。その後、必要に応じて、突出した貫通導体用ペーストをプレスして、貫通孔に押し込む。
【0038】
次に、内層に配置されるガラスセラミックグリーンシートの一方主面には、内部配線層2を形成するための導体ペーストをスクリーン印刷法などによって塗布し、表層に配置されるガラスセラミックグリーンシートの一方主面には、接続パッド4を構成する第1の導体層41を形成するための導体ペーストをスクリーン印刷法などによって塗布する。ここで導体ペーストは、金粉末、銀粉末、銅粉末、アルミニウム粉末のいずれかに、有機バインダー、有機溶剤、必要に応じて有機物や無機物の添加剤を加えて3本ロールで混練したものであり、貫通導体用ペーストと同様または粘度などを異ならせて調製している。
【0039】
また、第1の導体層41を形成するための導体ペーストをスクリーン印刷法などによって塗布したガラスセラミックグリーンシートには、第1の導体層41を形成するための導体ペーストの上に、環状部431と帯状部432とで構成されるガラスセラミック中間層43を形成するためのガラスセラミックペーストをスクリーン印刷などによって塗布する。なお、ガラスセラミックペーストは、接続パッド4となる領域以外の領域にも塗布され、その塗布の領域は接続パッド4の周囲のみならず、ガラスセラミックグリーンシートの主面全域にわたっていてもよい。
【0040】
さらに、ガラスセラミックペーストの塗布されたガラスセラミックグリーンシートには、第2の導体層42を形成するための導体ペーストを、第2の導体層42の外周が少なくとも環状部431の内周より大きくなるようにスクリーン印刷法などによって塗布する。なお、第2の導体層42を形成するための導体ペーストは、第1の導体層41を形成するための導体ペーストと同様のものが用いられる。
【0041】
このようにして得られたそれぞれのガラスセラミックグリーンシートを所定の配置で積層してガラスセラミックグリーンシート積層体を作製した後、焼成する。具体的には、400〜750℃で加熱処理してガラスセラミックグリーンシート積層体中の有機成分を分解除去した後、十分に焼結させるとともに過焼結を防止する点から、800〜1000℃で焼成する。また、導体ペーストとしてAg粉末を主成分とする場合は酸化性雰囲気、Cu粉末を主成分とする場合は非酸化性雰囲気というように、焼成雰囲気は適宜選択される。
【0042】
本発明によれば、焼成に際して、ガラスセラミックグリーンシートの収縮率の異方性から、貫通導体用ペーストがガラスセラミックグリーンシート積層体の表面から大きく突出しそうになるのを、帯状部432となる焼結しはじめたガラスセラミックペーストが押さえ込むように作用する。したがって、焼成後の貫通導体3の絶縁基体1からの突出を抑制することができ、表面実装部品の実装性および外部回路基板との接続信頼性を良好なものとすることができる。
【実施例】
【0043】
ガラスセラミックグリーンシートの形成材料として、23.8質量%のSiO、8.4質量%のAl、15.4質量%のMgO、26.5質量%のBaO、17.9質量%のB、4.9質量%のCaO、0.4質量%のSrO、1.0質量%のSnO、1.7質量%のZrOからなる平均粒径2.5μmのガラス粉末60質量%と、平均粒径2.5μmのAlフィラー40質量%を用意した。
【0044】
このガラスセラミックグリーンシート形成材料に、アクリル有機バインダー、可塑剤、有機溶剤を添加して、スラリーを作製し、ドクターブレード法により薄層化し、ガラスセラミックグリーンシートを作製した。このとき、セラミックグリーンシートの厚みは、125μmとなるように作製した。
【0045】
次に、Ag粉末に、β石英、バリウムホウ珪酸ガラス及び有機ビヒクルを添加し、これらを攪拌した後、銀粉末及び有機バインダーの凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合し、ペースト化し、導体ペーストを作製した。有機ビヒクルは、有機バインダーとしてエチルセルロースを5質量部、有機溶剤としてα−テルピネオールを95質量部とから構成し、この有機ビヒクルを、銀粉末100質量部に対して15質量部添加した。
【0046】
次に、ガラスセラミックグリーンシートにレーザーによって直径75μmの貫通孔を形成し、上記の導体ペーストをこの貫通孔に充填した。導体ペーストの充填には、ペースト押出式のヘッドを備えたオンコンタクト印刷機を用いた。
【0047】
次に、貫通孔に導体ペーストを充填したガラスセラミックグリーンシートを平板金型でプレスし、導体ペーストのガラスセラミックグリーンシート表面から突出した部分を貫通孔に押し込んだ。
【0048】
上記の貫通孔に導体ペーストを充填した複数のガラスセラミックグリーンシートのうち、後述のガラスセラミックグリーンシート積層体の内層に配置されるガラスセラミックグリーンシートに、内部配線層として上記の導体ペーストをスクリーン印刷により塗布した。
【0049】
また、上記の貫通孔に導体ペーストを充填した複数のガラスセラミックグリーンシートのうち、後述のガラスセラミックグリーンシート積層体の表層に配置されるガラスセラミックグリーンシートに、第1の導体層として上記の導体ペーストをスクリーン印刷により直径100μmに塗布した。
【0050】
そして、第1の導体層となる導体ペーストの上に、ガラスセラミック中間層としての環状部および帯状部となるガラスセラミックペーストをスクリーン印刷により塗布した。ガラスセラミックペーストは上記ガラスセラミックグリーンシートの形成材料と同じスラリーを用いた。なお、環状部は内径75μm、外径100μmに形成し、2本の帯状部は十字状に交差するように、帯状部の線幅を20、30、40μm(試料No.1、2、3)と変化させて作製した。また、帯状部のないもの(試料No.4)についても作製した。
【0051】
さらに、第1の導体層となる導体ペーストおよびガラスセラミック中間層の上に、中心軸をあわせて、第2の導体層となる導体ペーストをスクリーン印刷により直径100μmに塗布した。
【0052】
なお、帯状部および環状部が無く、第2の導体層が無いもの(試料No.5)についても作製した。
【0053】
次に、これらのガラスセラミックグリーンシートを位置合わせした後、4層積層してガラスセラミックグリーンシート積層体を作製し、これを大気中400℃で脱バインダー処理した後、大気中900℃で焼成して、多層配線基板を作製した。
【0054】
得られた多層配線基板において、表面の凹凸を3次元レーザー変位計で測定した。測定範囲は多層配線基板中央部の接続パッドが形成されている3mm×3mmの範囲とし、得られた測定データのうち、最低点と最高点との差を突出量(突起高さ)とした。その結果を表1に示す。なお、表1には5つの多層配線基板を測定した結果における突出量(突起高さ)の最高値を記し、突出量25μm未満を良品とした。
【0055】
また、得られた多層配線基板において、240℃でリフローすることで半田接続した接続パッドの剥離強度を半田引っ張り試験により評価した。その結果を表1に示す。表1には20回の引っ張り試験による剥離強度の平均値を記し、剥離強度69N/cm以上を良品とした。なお、表1に示す全ての試料において、剥離は第1の導体層と絶縁基体との間で生じた。
【0056】
また、得られた多層配線基板において、貫通導体で電気的に接続された上面の接続パッドと下面の接続パッドとの間の直流抵抗を電流計にて求めた。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1によれば、本発明範囲内の試料No.1〜3は、突出量が17μm以下であり、引っ張り試験による剥離強度が74N/cm以上であり、突出量および剥離強度の良好な結果が得られた。なお、帯状部の幅が大きくなることによって、剥離強度が増していることがわかる。
【0059】
これに対し、環状部、帯状部および第2の導体層の形成されていない本発明範囲外の試料No.5では、突出量が25μmと大きく、剥離強度が3.7μmと低い結果となった。
【0060】
また、環状部および第2の導体層は形成されているが、帯状部の形成されていない本発明範囲外の試料No.4では、剥離強度は問題ない範囲であるが、突出量が25μmと大きくなった。
【0061】
なお、全ての試料について測定した直流抵抗値から、帯状部の幅が狭いほうが抵抗値が小さいことがわかる。実質的な伝送経路が長くなるためであると考えられる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・絶縁基体
11、12、13、14・・・ガラスセラミック絶縁層
2・・・内部配線層
3・・・貫通導体
4・・・接続パッド
41・・・第1の導体層
42・・・第2の導体層
431・・・環状部
432・・・帯状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラスセラミック絶縁層からなる絶縁基体の内部に内部配線層および貫通導体が設けられるとともに、前記絶縁基体の表面に前記貫通導体に接続するように前記貫通導体の横断面よりも大きな面積の接続パッドが設けられた多層配線基板であって、前記接続パッドは、前記貫通導体に接する第1の導体層と、該第1の導体層の周縁部を覆う環状部および前記貫通導体の直上で交差する2本の帯状部を含むガラスセラミック中間層と、前記環状部および前記帯状部を除く領域で前記第1の導体層と電気的に接続された第2の導体層とからなることを特徴とする多層配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−232257(P2010−232257A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75750(P2009−75750)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】