説明

多段スイッチ

【課題】 スイッチの段数を増やしても、操作性の低下を抑えることができるとともに、小型化を図ることが容易な多段スイッチを提供する。
【解決手段】 多段スイッチとしての二段スイッチ10は、第一スイッチ21と、該第一スイッチ21の下方に位置する第二スイッチ22とを備える。第一スイッチ21は、一対の導電性フィルム17を有し、該第一スイッチ21に対する接触操作に伴って一対の導電性フィルム17間が電気的に接続される表面接触式スイッチ又は静電容量式スイッチからなる。第二スイッチ22は、一対の基板電極15を有し、該第二スイッチ22に対する下方への押込み操作に伴って一対の基板電極15間が電気的に接続されるメンブレンスイッチ又は押釦スイッチからなる。この二段スイッチ10では、第一スイッチ21が電気的に接続した状態で、第二スイッチ22の電気的接続が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向への押込み操作により、複数対の電極間の電気的接続が段階的に行われる多段スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、デジタルカメラに代表される情報端末機器や電子機器の入力操作部には、選択画面上での項目選択後に確定入力を行ったり、焦点合わせ後に撮影をしたりする等の機能が付与されている。このような機能を備えた入力操作部としては、一つの構造体で二段階の入力を行うことが可能な二段スイッチが知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
これらの二段スイッチは、下方への押込み操作に伴って電気的接続を行うメンブレンスイッチ等からなる第一スイッチと、下方への押込み操作に伴って電気的接続を行う押釦スイッチ等からなる第二スイッチとを備えている。さらに、これらの二段スイッチでは、第一スイッチの押込み操作よりも大きな押込み操作力で第二スイッチの押込み操作が行われるように、様々な工夫が施されている。例えば、特許文献1には、クリック板等の付勢部材により常に上方に付勢されている押釦スイッチを二段に重ねた構造の二段スイッチが開示され、特許文献2,3には、メンブレンスイッチと、押釦スイッチとを重ねた構造の二段スイッチが開示されている。
【特許文献1】特開2000−353449号公報
【特許文献2】特開平10−64364号公報
【特許文献3】特開2003−123587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、押釦スイッチを二段に重ねた構造の二段スイッチでは、第一スイッチの押込み操作後に第二スイッチへの押込み操作を行うため、第二スイッチの操作荷重は第一スイッチの必要操作荷重よりも大きく設定されていた。このため、第二スイッチの操作荷重が大きくなりすぎ、二段スイッチ全体の操作性が低下してしまうという問題があった。このような問題は、メンブレンスイッチと押釦スイッチとを二段に重ねた構造の二段スイッチであっても、程度の差はあるが同様に発生し得る。
【0005】
さらに、これらの二段スイッチでは、複数のスイッチが上下に配置されているため、スイッチの押圧方向(即ち、上下方向)に大きな寸法を必要とし、小型化を図ることが困難であった。特に、メンブレンスイッチ及び押釦スイッチはいずれも、上下の導電体間に所定の空間を形成する必要があるため、二段スイッチの高さを小さくすることは極めて困難であった。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、スイッチの段数を増やしても、操作性の低下を抑えることができるとともに、小型化を図ることが容易な多段スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の多段スイッチは、第一スイッチと第二スイッチとを備えた多段スイッチであって、前記第一スイッチは一対の第一電極を有し、該第一スイッチに対する接触操作に伴って前記一対の第一電極間が電気的に接続され、前記第二スイッチは一対の第二電極を有し、該第二スイッチに対する押込み操作に伴って前記一対の第二電極間が電気的に接続され、前記第一スイッチが電気的に接続した状態で、前記第二スイッチの電気的接続が行われることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の多段スイッチは、請求項1に記載の発明において、前記第一スイッチは前記第二スイッチの上方に配置され、前記第二スイッチは、該第二スイッチに対する下方への押込み操作に伴って、前記一対の第二電極間が電気的に接続されることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の多段スイッチは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第一スイッチの電気的接続は前記第二スイッチの電気的接続よりも上方で行われ、前記第二スイッチは、該第二スイッチに対する下方への押込み操作に伴って、前記一対の第二電極間が電気的に接続されることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の多段スイッチは、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記一対の第一電極は横方向に並んで配置され、該両第一電極間には第一ギャップが形成され、前記一対の第二電極は横方向に並んで配置され、該両第二電極の上方又は下方には導電部が設けられ、前記両第二電極間には第二ギャップが形成され、前記第一ギャップの下方に前記第二ギャップが位置していることを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の多段スイッチは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記多段スイッチは、前記第二スイッチの下方にさらに第三スイッチを備え、該第三スイッチは一対の第三電極を有し、該第三スイッチに対する下方への押込み操作に伴って前記一対の第三電極間が電気的に接続され、該第三スイッチの電気的接続に必要な押込み操作力は、前記第二スイッチの電気的接続に必要な押込み操作力よりも大きく設定され、前記第二スイッチが電気的に接続した状態で、前記第三スイッチの電気的接続が行われることを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の多段スイッチは、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記第一スイッチは、表面接触式スイッチ又は静電容量式スイッチからなることを要旨とする。
【0013】
請求項7に記載の多段スイッチは、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記第二スイッチは、メンブレンスイッチ又は押釦スイッチからなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の多段スイッチは、ユーザーの指等の導電体による接触操作に伴って電気的に接続される第一スイッチと、押込み操作に伴って電気的に接続される第二スイッチとを備えているため、第一及び第二スイッチに対する電気的接続を行う際の操作性を向上することができる。即ち、ユーザーにとっては、一般に、押込み操作を行う際の押圧荷重を段階的に調節することよりも、接触操作と押込み操作とを区別することの方がはるかに操作しやすい。よって、この多段スイッチでは、スイッチの段数が増えても、押込み操作すべきスイッチの段数は、全体のスイッチの段数よりも1つ少なくなる。従って、スイッチの段数を増やしても、操作性の低下を抑えることが容易となる。
【0015】
さらに、この多段スイッチでは、第一スイッチは一対の第一電極を有し、該第一スイッチに対する接触操作のみにより、それら第一電極間が電気的に接続されるため、第二スイッチの押圧方向に関し、第一スイッチの寸法を小さく形成することが可能となる。即ち、押込み操作される必要のない第一スイッチは、多段スイッチの押圧方向に沿って移動する必要がないため、該方向に沿って広い空間を設ける必要がない。従って、第一スイッチの小型化を図ることが容易となり、結果的に多段スイッチ全体の小型化を図ることが容易となる。
【0016】
請求項2に記載の多段スイッチでは、第一スイッチが第二スイッチの上方に配置されている。また、請求項3に記載の多段スイッチでは、第一スイッチの電気的接続が第二スイッチの電気的接続よりも上方で行われる。即ち、これらの多段スイッチは、第一スイッチに対する接触操作を行いながら、該第一スイッチを下方に押圧することにより、第二スイッチに対する押込み操作を容易に行うことができるような構造を有している。従って、ユーザーにとっては、第一スイッチ及び第二スイッチの両方に対する操作を一連の動きの中で容易に行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の多段スイッチでは、左右の第一電極間に形成された第一ギャップと、左右の第二電極間に形成された第二ギャップとが上下に重なる位置に配置されている。このため、例えば、第一スイッチの右側の第一電極のみを下方に押圧した場合、第二スイッチの右側の第二電極と導電部とが当接し、該導電部と左側の第二電極とは当接しない。従って、第一スイッチが電気的に接続していない状態で、第二スイッチが電気的に接続されること、即ち誤動作を防止することができる。
【0018】
請求項5に記載の多段スイッチでは、第二スイッチに対する押込み操作を行う際の押圧荷重よりも高い押圧荷重により第三スイッチに対する押込み操作が行われる三段スイッチ又は四段以上のスイッチが提供される。従って、スイッチの段数を増やしても、操作性の低下を抑えることができるとともに、小型化を図ることが容易な多段スイッチを提供することができる。
【0019】
請求項6に記載の多段スイッチでは、第一スイッチが表面接触式スイッチ又は静電容量式スイッチからなるため、該第一スイッチに対する接触操作に伴って、一対の第一電極間の電気的接続を容易に行うことができる。また、請求項7に記載の多段スイッチでは、第二スイッチがメンブレンスイッチ又は押釦スイッチからなるため、該第二スイッチに対する押込み操作に伴って、一対の第二電極間の電気的接続を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を二段スイッチに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び図2(a)に示すように、多段スイッチとしての二段スイッチ10は、絶縁体からなる板状(本実施形態では四角板状)の基板11と、該基板11の周縁に沿って設けられた枠状のスペーサ12と、基板11の上方に配置された板状の樹脂フィルム13とを備えている。樹脂フィルム13は、絶縁性及び可撓性を有する樹脂により形成され、且つ基板11と同じ大きさ及び形状を備えており、スペーサ12の上面に配置されている。基板11の上面と樹脂フィルム13の下面との間には、スペーサ12によって空間14が形成されている。
【0021】
基板11の上面中央部には、板状(本実施形態では長四角板状)の一対の基板電極15(第二電極)が設けられている。両基板電極15は、基板11の上面で左右に並ぶように配置されている。両基板電極15の間には、第二ギャップ14aが形成されている。両基板電極15は、基板11の上面及び上方において、絶縁性の基板11及び第二ギャップ14aによって電気的に絶縁されている。各基板電極15は、図示しない電子機器内における第1の電気回路にそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
樹脂フィルム13の下面中央には、導電部としての導電層16が設けられている。この導電層16は、導電性を有する金属板や金属箔、或いは導電性を有するインク等により構成されている。本実施形態の導電層16は、図2(a)に示すように楕円形状に形成されている。この導電層16の下面は、両基板電極15の上面に対し、空間14を隔てて対向している。導電層16と各基板電極15とは、基板11と樹脂フィルム13との間において、空間14によりそれぞれ電気的に絶縁されている。
【0023】
樹脂フィルム13の上面には、該樹脂フィルム13の対向する側縁に沿って延びる板状(本実施形態では長四角板状)の一対の導電性フィルム17(第一電極)が設けられている。各導電性フィルム17は、導電性及び可撓性を有する樹脂により構成されており、接点電極としての役割を果たす。これら導電性フィルム17は、0.01mm以上の厚さを有していることが好ましい。両導電性フィルム17は、樹脂フィルム13の上面で左右に並ぶように配置されている。両導電性フィルム17の間には、第一ギャップ18が形成されている。両導電性フィルム17は、樹脂フィルム13の上面及び上方において、絶縁性の樹脂フィルム13及び第一ギャップ18によって電気的に絶縁されている。また、各導電性フィルム17は、図示しない電子機器内における第2の電気回路にそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
本実施形態の第一スイッチ21は、表面接触式スイッチからなり、第一ギャップ18を介して左右に対向する一対の導電性フィルム17により構成される。図1(a)に示すように、第一スイッチ21では、左右の導電性フィルム17間を跨ぐように、ユーザーが指90で接触操作することにより、両導電性フィルム17同士が前記指90を介して電気的に接続される。なお、第一スイッチ21を電気的に接続する際には、前記接触操作に伴って両導電性フィルム17を下方に押圧する必要はない。
【0025】
本実施形態の第二スイッチ22は、メンブレンスイッチからなる。第二スイッチ22は、基板11、樹脂フィルム13、一対の基板電極15及び導電層16により構成される。図1(b)に示すように、第二スイッチ22では、第一スイッチ21に対する下方への押込み操作に伴って、樹脂フィルム13の中央部が下方に膨出するように変形する。それによって、導電層16の下面が両基板電極15の上面に同時に当接し、該導電層16を介して両基板電極15同士が電気的に接続される。
【0026】
なお、第二スイッチ22では、第一ギャップ18と第二ギャップ14aとが上下に重なる位置に配置されている。より具体的には、右側の導電性フィルム17の左側縁が、右側の基板電極15の左側縁の上方に位置し、左側の導電性フィルム17の右側縁が、左側の基板電極15の右側縁の上方に位置している。このため、例えば、指90が右側の導電性フィルム17のみを押圧しているときに、導電層16の下面が左右の基板電極15の上面と同時に当接することはない。従って、第一スイッチ21が電気的に接続されている状態でのみ、第二スイッチ22の電気的接続が可能である。
【0027】
また、第二スイッチ22において、各基板電極15の上面と導電層16の下面との隙間は、0.05mm以上であることが好ましい。この場合、第一スイッチ21の電気的接続のみを意図する接触操作に伴って、第二スイッチ22が電気的に接続されること、即ち誤動作することを抑制することが容易となる。さらに、前記隙間が0.05mm以上であると、第二スイッチ22の押込み操作時に、該押込み操作に伴う特異的な感覚(例えばクリック感)が指90に伝わりやすくなるという利点も有する。
【0028】
第一スイッチ21において、両導電性フィルム17の対向する側面間の間隔、(即ち、第一ギャップ18の横方向の長さ)は、一対の導電性フィルム17間を確実に導通するために、指90の先端部(第一関節よりも先端側)の最大幅よりも小さいことが好ましく、指90の先端部(第一関節よりも先端側)の最小幅よりも小さいことがより好ましい。第二スイッチ22における左右の基板電極15の対向する側面間の間隔(即ち、第二ギャップ14aの横方向の長さ)は、前記第一ギャップ18の横方向の長さに対応するように設定されればよい。
【0029】
さて、この二段スイッチ10を用いて、二段階の電気的接続を行う際には、まず、図1(a)に示すように、第一スイッチ21の左右の導電性フィルム17間を跨ぐように、両導電性フィルム17の上面に指90を接触させる。このとき、第一スイッチ21において、指90を介して左右の導電性フィルム17同士が電気的に接続され、それによって該第一スイッチ21の電気的接続が行われる。
【0030】
続いて、前記両導電性フィルム17の上面に接触している指90に力を加え、該指90で両導電性フィルム17の上面をそのまま下方に押込む。この押込み操作により、図1(b)に示すように、樹脂フィルム13の中央部が下方に膨出するように変形し、それによって導電層16の下面が両基板電極15の上面に当接する。このとき、第二スイッチ22において、導電層16を介して左右の基板電極15同士が電気的に接続され、それによって該第二スイッチ22の電気的接続が行われる。
【0031】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の二段スイッチ10は、表面接触式スイッチからなる第一スイッチ21と、該第一スイッチ21の下方に位置する第二スイッチ22とを備え、該第二スイッチ22はメンブレンスイッチからなる。このため、この二段スイッチ10では、スイッチの段数を二段に増やしても、一段スイッチ(図示略)とほぼ同等の操作性を有している。なお、前記一段スイッチとは、一段階の電気的接続のみを行うためのスイッチであって、例えば、本実施形態の二段スイッチ10において、両導電性フィルム17を省略した構造を有している。
【0032】
本実施形態の第一スイッチ21の接触操作においては、該第一スイッチ21に対して指90による荷重をかける必要がない。さらに、第二スイッチ22の押込み操作においては、メンブレンスイッチからなる一段スイッチと同等の押圧荷重を加えることにより、該第二スイッチ22の電気的接続を行うことが可能である。従って、第一及び第二スイッチ21,22に対する電気的接続を行う際の操作性を向上することができる。
【0033】
即ち、ユーザーにとっては、押込み操作を行う際の押圧荷重を段階的に調節しなければならない従来の二段スイッチよりも、接触操作と押込み操作とを区別して行う本実施形態の二段スイッチ10の方がはるかに操作しやすい。よって、この二段スイッチ10では、スイッチの段数が二段ではあるが、押込み操作すべきスイッチの段数は一段(第二スイッチ22)のみである。従って、スイッチの段数を増やしても、操作性の低下を抑えることが容易となる。
【0034】
・ 本実施形態の二段スイッチ10は、両導電性フィルム17を省略した構造を有する一段スイッチとほぼ同じ大きさに形成することが可能であるため、該二段スイッチ10の小型化を図ることが容易である。即ち、この二段スイッチ10では、第一スイッチ21が接触操作のみにより電気的に接続される構造を有しているため、該第一スイッチ21の上下の寸法を小さく形成することが可能となる。即ち、押込み操作される必要のない第一スイッチ21は、二段スイッチ10の押圧方向に沿って移動する必要がないため、該方向に沿って広い空間を設定する必要がない。従って、第一スイッチ21の小型化を図ることが容易となり、結果的に二段スイッチ10全体の小型化を図ることが容易となる。
【0035】
・ 本実施形態の二段スイッチ10において、第一スイッチ21の電気的接続は、右側の導電性フィルム17の上面と、左側の導電性フィルム17の上面との間で行われ、第二スイッチ22の電気的接続は、左右の基板電極15の上面と導電層16の下面との間で行われる。つまり、第一スイッチ21の電気的接続が実質的に行われる場所(導電性フィルム17の上面の高さ)は、第二スイッチ22の電気的接続が実質的に行われる場所(基板電極15の上面の高さ)よりも上方に位置している。このため、この二段スイッチ10では、第二スイッチ22に対する押込み操作を行う方向に第一スイッチ21を押込むことにより、第一及び第二スイッチ21,22に対する電気的接続を行うことができるため、これら一連の操作に無駄な動きが少ない。従って、ユーザーにとっては、第一及び第二スイッチ21,22の両方に対する操作を一連の動きの中で容易に行うことができる。
【0036】
・ 本実施形態の二段スイッチ10では、左右の導電性フィルム17間を隔てる第一ギャップ18と、左右の基板電極15間を隔てる第二ギャップ14aとが上下に揃った位置に配置されている。このため、例えば、第一スイッチ21が電気的に接続しないように、故意に右側の導電性フィルム17のみを下方に押圧した場合、右側の基板電極15と導電層16とが当接し、該導電層16と左側の基板電極15とが当接しない状態となる。従って、第一スイッチ21が電気的に接続していない状態で、第二スイッチ22が電気的に接続すること、即ち誤動作を効果的に防止することができる。
【0037】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 導電性を有する金属箔や導電性を有するインク等により導電性フィルム17を構成してもよい。
【0038】
・ 基板電極15を、例えば図2(b)に示すような形状に形成してもよい。即ち、導電層16の真下には、長四角板状に形成された複数の基板電極15が、互い平行に延びるように基板11上に固定されている。これらの基板電極15の幾つかの端部は、導電層16の右端部よりも右側に延設されるとともに、それらの端部はまとまって図示しない電子機器内における第1の電気回路に電気的に接続されている。残りの基板電極15の端部は、導電層16の左端部よりも左側に延設されるとともに、それらの端部はまとまって図示しない電子機器内における第1の電気回路に電気的に接続されている。
【0039】
・ 図3(a)に示すように、第二スイッチ22において、導電層16を省略し、その代わりに、金属皿バネのような導電性を有する付勢部材31を設けてもよい。この付勢部材31は、中央部が上方に膨出する弧状の断面を有し、その周縁を基板11の上面に当接させた状態で、空間14内に収容されている。付勢部材31の中央部は、両基板電極15から離間し、それら基板電極15の上方に位置している。指90により導電性フィルム17が下方に押圧されると、付勢部材31の中央部は、樹脂フィルム13の下面を介して下方に押圧される。その結果、付勢部材31の中央部下面が、左右の基板電極15の上面に同時に当接し、それによって両基板電極15間が電気的に接続される。なお、この変形例において、導電性を有する付勢部材31は、導電部を構成している。
【0040】
従って、この二段スイッチ10では、付勢部材31による付勢力に抗しながら第二スイッチ22の押込み操作が行われるため、該押込み操作における操作感覚が増すという利点がある。さらに、金属皿バネからなる付勢部材31が装着された二段スイッチ10では、第二スイッチ22に対する押圧力が所定の閾値を超えると、金属皿バネが反転してその中央部が下方に膨出する。この瞬間に、第二スイッチ22が電気的に接続される。従って、金属皿バネを備えた二段スイッチ10では、第二スイッチ22の押込み操作に伴うクリック感が得られる。
【0041】
・ 図3(b)に示すように、第二スイッチ22において、一対の基板電極15を樹脂フィルム13の下面に設け、導電層16を基板11の上面に設けてもよい。
・ 図3(b)に示すように、第一スイッチ21において、右側の導電性フィルム17の左側縁は、右側の基板電極15の右側縁よりも右側に配置されてもよい。同様に、左側の導電性フィルム17の右側縁は、左側の基板電極15の左側縁よりも左側に配置されてもよい。この場合、一対の導電性フィルム17を備えた第一スイッチ21の下方に、第二スイッチ22が設けられている。
【0042】
・ 図3(b)に示すように、第一スイッチ21において、各導電性フィルム17の上面に、同一形状の金属板32を配置してもよい。これらの金属板32は、0.01mm以上の厚さに形成されていることが好ましい。また、金属板32は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の導電性を有する金属により構成され、80μm程度の厚さのステンレス鋼により構成されていることが特に好ましい。これらの金属板32は、導電性フィルム17の腐食や傷付きを抑えることにより導電性フィルム17を保護する目的で設けられるとともに、二段スイッチ10の外観を向上させる。
【0043】
・ 第一スイッチ21を静電容量式スイッチに変更してもよい。静電容量式スイッチとは、スイッチ表面に複数の導電部からなる電極(図3(c)では一対の導電性フィルム17)が設けられており、それらの電極間には、予め所定の静電容量の電荷が蓄えられている。そして、これらの電極間を跨ぐように指90を接触させることにより、それら電極間に蓄えられていた静電容量が変化し、その静電容量の変化を検知することによって、電極間を電気的に接続させる。なお、図3(c)に示すように、静電容量式スイッチからなる第一スイッチ21を備えた二段スイッチ10において、各導電性フィルム17の上面及び側面には、静電容量を調整するための保護膜33(図3(c)参照)が形成されていることが好ましい。
【0044】
・ 図4(a)に示すように、上記実施形態の第二スイッチ22を押釦スイッチ22aに変更してもよい。この押釦スイッチ22aは、上記実施形態の可撓性を有する樹脂フィルム13の代わりに、可撓性を有さない絶縁板41を備えている。さらに、この絶縁板41の下面には、一対の基板電極15と、可撓性を有するゴム又は樹脂製の弾性部材42とが設けられている。弾性部材42は、絶縁板41の周縁に沿って延びる枠状の支持部43を備えている。支持部43の内周縁には、二段スイッチ10の中央部に向かって斜め下方に延びるロート状の弾性変形部44が設けられている。弾性変形部44の内周端には、絶縁板41と平行に延びる板状の受圧部45が連結されている。この受圧部45の上面には、両基板電極15の下面と対向するように、導電層16が設けられている。
【0045】
この押釦スイッチ22aを備えた二段スイッチ10では、第一スイッチ21を下方に押圧すると、弾性変形部44が変形し、それによって両基板電極15の下面と導電層16の上面とが当接する。このとき、受圧部45は下方に移動せず、代わりに絶縁板41全体が下方に移動する。従って、この二段スイッチ10では、弾性変形部44による付勢力に抗しながら押釦スイッチ22aの押込み操作を行うため、該押込み操作に伴うクリック感が得られる。
【0046】
・ 図4(b)に示すように、図3(a)に示す第二スイッチ22と、図3(b)に示す第一スイッチ21とを組み合わせるとともに、第二スイッチ22の上方の樹脂フィルム13を切除することにより、二段スイッチ10を構成してもよい。即ち、この二段スイッチ10では、上記実施形態の二段スイッチ10において、導電層16を省略し、その代わりに導電性の付勢部材31が設けられている。さらに、第一スイッチ21において、右側の導電性フィルム17の左側縁は、付勢部材31の右側部よりも右側に配置され、左側の導電性フィルム17の右側縁は、付勢部材31の左側部よりも左側に配置されている。なお、前記導電性フィルム17の上面に、金属板32を設けてもよい。
【0047】
・ 図4(c)に示すように、図4(b)に示す二段スイッチ10における導電性の付勢部材31の上端部を、導電性フィルム17の上面よりも上方に突出するように配置してもよい。但し、前記導電性フィルム17の上面は、基板電極15の上面よりも上方に配置され、好ましくは基板電極15の上面の高さに付勢部材31の厚みを加えた高さよりも上方に配置されている。この場合、第一スイッチ21の電気的接続は実質的に左右の導電性フィルム17の上面で行われ、第二スイッチ22の電気的接続は実質的に左右の基板電極15の上面で行われる。このため、この二段スイッチ10では、第一スイッチ21に対する接触操作に引き続いて、第二スイッチ22に対する押込み操作を行うことができる。従って、第一及び第二スイッチ21,22に対する電気的接続を行う際の一連の操作に無駄な動きを少なくすることができる。
【0048】
なお、各導電性フィルム17の上面に金属板32を設ける場合には、付勢部材31の上端部は、金属板32の上面よりも上方に突出するように配置される。この場合、金属板32の上面が、基板電極15の上面よりも上方に配置されていればよく、基板電極15の上面の高さに付勢部材31の厚みを加えた高さよりも上方に配置されていることが好ましい。
【0049】
・ 図5(a)に示すように、一方の基板電極15を省略するとともに、導電性の付勢部材31を第2の電気回路に電気的に接続してもよい。この場合、導電性の付勢部材31と一つの基板電極15とにより、第二スイッチ22が構成される。
【0050】
また、図5(a)に示す変形例では、図4(c)に示す二段スイッチ10における一方の導電性フィルム17が省略され、導電性の付勢部材31が第1の電気回路に電気的に接続される。この場合、付勢部材31の上面と前記導電性フィルム17の上面とを跨ぐように指90を接触させることにより、第一スイッチ21の電気的接続が行われる。
【0051】
但し、前記導電性フィルム17の上面は、基板電極15の上面よりも上方に配置され、好ましくは基板電極15の上面の高さに付勢部材31の厚みを加えた高さよりも上方に配置されている。この場合、第一スイッチ21の電気的接続は実質的に付勢部材31に最も近接する導電性フィルム17の端部の上面で行われ、第二スイッチ22の電気的接続は実質的に基板電極15の上面で行われる。このため、この二段スイッチ10では、第一スイッチ21に対する接触操作に引き続いて、第二スイッチ22に対する押込み操作を行うことができる。従って、第一及び第二スイッチ21,22に対する電気的接続を行う際の一連の操作に無駄な動きを少なくすることができる。
【0052】
なおこのとき、前記導電性フィルム17の上面に金属板32を設けてもよいが、この場合には、金属板32の上面が、基板電極15の上面よりも上方に配置されていればよく、基板電極15の上面の高さに付勢部材31の厚みを加えた高さよりも上方に配置されていることが好ましい。
【0053】
・ 図5(b)に示すように、基板11と、該基板11の上面に設けられる1つの基板電極15と、基板11の上面に設けられる左右一対の導電性の付勢部材31とにより、二段スイッチ10を構成してもよい。各付勢部材31の中央部は、いずれも基板電極15の上面と当接可能に配置されている。さらに、導電性を有する付勢部材31の一方又は両方は、第2の電気回路に電気的に接続されている。これにより、第二スイッチ22が構成される。また、第一スイッチ21は、横方向に並んで配置される一対の導電性の付勢部材31により構成される。各付勢部材31は、第1の電気回路にそれぞれ電気的に接続されている。
【0054】
この二段スイッチ10では、左右の付勢部材31の中央部同士を跨ぐように指90を接触させることにより、第一スイッチ21の電気的接続が行われる。続いて、両付勢部材31の上面に接触している指90に力を加え、該指90で両付勢部材31の上面をそのまま下方に押込むことにより、両付勢部材31の下面と基板電極15の上面とがそれぞれ当接し、第二スイッチ22の電気的接続が行われる。
【0055】
・ 上記実施形態の二段スイッチ10に代えて、図5(c)に示す三段スイッチ50を提供することが可能である。この三段スイッチ50は、図3(b)に示す第一スイッチ21及び第二スイッチ22と、該第二スイッチ22の下方に位置する第三スイッチ51とを備えている。前記第二スイッチ22では、図3(b)に示す基板11の代わりに、樹脂フィルム13が設けられている。第三スイッチ51は、図4(b)に示す第二スイッチ22と同様に構成されている。即ち、この三段スイッチ50は、表面接触式スイッチからなる第一スイッチ21と、メンブレンスイッチからなる第二スイッチ22と、導電性の付勢部材31が設けられたメンブレンスイッチからなる第三スイッチ51とを備えている。なお、前記第三スイッチ51に設けられる一対の基板電極15は、第三電極として機能し、図示しない電子機器内における第3の電気回路にそれぞれ電気的に接続されている。
【0056】
ちなみに、この第三スイッチ51の下方に第四スイッチ(図示略)を形成することにより、四段スイッチ(図示略)を提供することも可能であり、さらに、五段スイッチ、六段スイッチ等の多段スイッチを提供することも可能である。これらの多段スイッチにおいては、第一スイッチを表面接触式スイッチ又は静電容量式スイッチ、第二スイッチをメンブレンスイッチ又は押釦スイッチとし、第三スイッチ以降については、付勢部材を備えたメンブレンスイッチ又は押釦スイッチとすることが好ましい。
【0057】
なお、前記付勢部材は、導電性を有する付勢部材31によって構成されることが好ましいが、導電性を有さない付勢部材によって構成されていても構わない。また、前記第二スイッチには、付勢部材が設けられていないことが好ましい。このような三段以上の多段スイッチにおいては、下方に位置するスイッチほど押込み操作に必要な荷重が段階的に大きくなるように、即ち付勢部材による付勢力を段階的に大きくするように構成されることが好ましい。
【0058】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 右側に配置される前記第一電極の左側部は、右側に配置される前記第二電極の左側部の上方に位置し、左側に配置される前記第一電極の右側部は、左側に配置される前記第二電極の右側部の上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の多段スイッチ。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)は一実施形態の二段スイッチの第一スイッチを接触操作する様子を示す斜視図、(b)は二段スイッチを押込み操作して第二スイッチを電気的に接続させる様子を示す斜視図。
【図2】(a)は図1(a)の2a−2a線から見た二段スイッチの平断面図、(b)は変形例の二段スイッチの平断面図。
【図3】(a)から(c)はいずれも、変形例の二段スイッチを示す断面図。
【図4】(a)から(c)はいずれも、変形例の二段スイッチを示す断面図。
【図5】(a)から(c)はいずれも、変形例の二段スイッチを示す断面図。
【符号の説明】
【0060】
10…多段スイッチとしての二段スイッチ、14a…第二ギャップ、15…第二電極としての基板電極、16…導電部としての導電層、17…第一電極としての導電性フィルム、18…第一ギャップ、21…第一スイッチ、22…第二スイッチ、22a…押釦スイッチ、31…導電部を構成する付勢部材、50…多段スイッチとしての三段スイッチ、51…第三スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一スイッチと第二スイッチとを備えた多段スイッチであって、
前記第一スイッチは一対の第一電極を有し、該第一スイッチに対する接触操作に伴って前記一対の第一電極間が電気的に接続され、
前記第二スイッチは一対の第二電極を有し、該第二スイッチに対する押込み操作に伴って前記一対の第二電極間が電気的に接続され、
前記第一スイッチが電気的に接続した状態で、前記第二スイッチの電気的接続が行われることを特徴とする多段スイッチ。
【請求項2】
前記第一スイッチは前記第二スイッチの上方に配置され、
前記第二スイッチは、該第二スイッチに対する下方への押込み操作に伴って、前記一対の第二電極間が電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の多段スイッチ。
【請求項3】
前記第一スイッチの電気的接続は前記第二スイッチの電気的接続よりも上方で行われ、
前記第二スイッチは、該第二スイッチに対する下方への押込み操作に伴って、前記一対の第二電極間が電気的に接続されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多段スイッチ。
【請求項4】
前記一対の第一電極は横方向に並んで配置され、該両第一電極間には第一ギャップが形成され、
前記一対の第二電極は横方向に並んで配置され、該両第二電極の上方又は下方には導電部が設けられ、前記両第二電極間には第二ギャップが形成され、
前記第一ギャップの下方に前記第二ギャップが位置していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多段スイッチ。
【請求項5】
前記多段スイッチは、前記第二スイッチの下方にさらに第三スイッチを備え、
該第三スイッチは一対の第三電極を有し、該第三スイッチに対する下方への押込み操作に伴って前記一対の第三電極間が電気的に接続され、該第三スイッチの電気的接続に必要な押込み操作力は、前記第二スイッチの電気的接続に必要な押込み操作力よりも大きく設定され、
前記第二スイッチが電気的に接続した状態で、前記第三スイッチの電気的接続が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多段スイッチ。
【請求項6】
前記第一スイッチは、表面接触式スイッチ又は静電容量式スイッチからなる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多段スイッチ。
【請求項7】
前記第二スイッチは、メンブレンスイッチ又は押釦スイッチからなる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の多段スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−236694(P2006−236694A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47543(P2005−47543)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】