説明

多段ダイアフラムポンプ

【課題】体積が小さく、搬送効率が高く、騒音が低く、有効寿命が長く、保守の容易な多段ダイアフラムポンプを得ること。
【解決手段】多段ダイアフラムポンプが、ポンプ体と、主軸1と、主軸1によって駆動される往復駆動機構と、往復駆動機構と接続され、ポンプ体の作業チャンバ内へ延びている駆動軸15と、作業チャンバ前端に配置された吸い込み逆止め弁及び排出逆止め弁とを含み、しかも、関連駆動軸15には、直列配置された複数の皿状ダイアフラム4が取り付けられ、各皿状ダイアフラム4の前方にはピストン6が固定され、隣接する皿状ダイアフラムの間には液圧媒体が充填され、最前部の皿状ダイアフラムの前方に配置されたピストンが、作業チャンバ内の液体材料と直接に接触しており、各ピストン6と作業チャンバ壁との間にシールリング5が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、特に、液体材料を搬送する多段ダイアフラムポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のダイアフラムポンプは、通常、空気駆動式ダイアフラム又は液圧駆動式ダイアフラムを採用しており、ダイアフラムは、通常、単段ダイアフラムだが、この種の単段ダイアフラムは、高圧に十分には耐えられない。ダイアフラムが損傷すると、正常には機能しなくなる。US 3,809,506には、その種の単段ダイアフラムポンプが開示されている。加えて、US 4,049,366には2重ダイアフラムポンプが開示されているが、2重ダイアフラムの欠点は、比較的高い負荷に耐えるには不適なことである。更に、ダイアフラムを往復動させる駆動機構には、通常、クランクレバー機構又はカム・リセットばね機構が採用されている。クランクレバー機構を採用した場合には、結果として体積が大となるため、設備に占領される空間及び負担費用が増大する。2004年9月24日付け提出の中国特許CN 1,587,697Aには、リセットばね付きの単段ダイアフラムポンプが開示されている。リセットばねが使用される場合、ばねが占める空間は小さいが、ばねが損傷しやすいので、頻繁に交換が必要である。ばねの頻繁な交換はポンプの正常な作業に影響しよう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
先行技術のポンプの欠点を考慮して、本発明の目的は、体積が小さく、搬送効率が高く、騒音が低く、有効寿命が長く、保守の容易な多段ダイアフラムポンプを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明により得られた多段ダイアフラムポンプは、ポンプ体と、主軸により駆動される往復駆動機構と、往復駆動機構に接続されポンプ体の作業チャンバ内へ延びる駆動軸と、作業チャンバ前端に配置された吸い込み逆止め弁及び排出逆止め弁とを含み、この場合、関連駆動軸上には、直列配置された複数の皿状ダイアフラムが配置され、各皿状ダイアフラムの前方にはピストンが固定され、隣接皿状ダイアフラムの間には液圧媒体が充填されており、最も前方の皿状ダイアフラムの前方に配置されたピストンは、作業チャンバ内の液体材料と直接に接触しており、各ピストンと作業チャンバ壁との間にシールリングが配置されている。
【0005】
この場合、往復駆動機構は、主軸に取り付けられた偏心軸と、軸受けを介して偏心軸に取り付けられた駆動板と、数個(この数は実際の必要に応じて決めることができる)の関節された軸受けと、ブリッジ板とを含んでいる。前記関節された軸受けは、駆動板とブリッジ板との間に配置され、ブリッジ板の他端は、主軸に固定された中央関節軸受けに取り付けられている。関連駆動軸が、関節軸受けの1つと結合され、駆動板に形成された穴を貫通して延びている。したがって、駆動軸は皿状ダイアフラム及びピストンを駆動できる。
駆動板とブリッジ板との衝突を緩衝し、騒音を抑えるために、前記関節軸受けには弾性体が備えられている。
ピストンの両側での圧力差により生じる液体損を自動的に回復させるために、各ピストンには逆止め弁が備えられている。
【0006】
主軸の前端と主軸の加圧カバーとの間で、伝動システムの良好な遊びばめを維持し、多段ダイアフラムポンプが長時間作動中に自動調節されるように、主軸の軸受け遊びを調節するための弾性体が備えられている。
主軸に取り付けられた偏心軸は、主軸の回転により揺動回転し、主軸の回転を、駆動板と関節軸受けとを介して駆動軸の線形往復運動に変換し、したがって、駆動軸上の複数ピストンと皿状ダイアフラムとは一緒に往復動し、最終的に作業チャンバ内の吸い込み逆止め弁と排出逆止め弁とが液体材料の搬送を実現する。
各図面では、等しい構成部材には等しい符号が付されている。
以下の記述で、「前方」、「後方」の用語は、それぞれ図の「右側」、「左側」を指す。
【0007】
図1に示すように、多段ダイアフラムポンプは、ポンプ体と、主軸1と、偏心軸16と、駆動板2と、数個の関節軸受け14と、ブリッジ板13と、駆動軸15と、作業チャンバ内に配置された皿状ダイアフラム4及びピストン6と、弁板7と、ポンプカバー9とを含んでいる。偏心軸16は主軸1に取り付けられ、駆動板2は軸受けを介して偏心軸に16に取り付けられている。主軸1と、偏心軸16と、駆動板2とは、揺動回転機構を構成し、この機構が、潤滑オイルを充填された作業チャンバ内に配置されている。関節軸受け14は、駆動板2とブリッジ板13との間に配置されている。ブリッジ板13は、中央関節軸受け12を介して主軸1に取り付けられている。ブリッジ板13は、中心部に貫通穴を備えている。この貫通穴を主軸1が貫通して延びている。ブリッジ板13の両側にも貫通穴が形成され、これらの貫通穴を駆動軸15が貫通して延在している。駆動軸15の一端は、関節軸受け14に結合され、駆動軸15の他端は、皿状ダイアフラム4とピストン6とにはめ合わされているため、主軸1の回転は揺動回転機構を介して駆動軸15の線形運動に変換される。
【0008】
弁板7とポンプカバー9とは、ポンプ体の前端に配置されており、弁板7には吸い込み逆止め弁と排出逆止め弁8とが配置されている。
駆動軸15には、複数の皿状ダイアフラム4が直列配置されている。各皿状ダイアフラム4の前方にはピストン6が固定されている。隣接ダイアフラムと作業チャンバ壁とにより、液圧媒体を充填されるャンバが形成されている。最前方の皿状ダイアフラム4の前方に配置されたピストン6は、作業チャンバ内の液体材料と直接に接触している。ピストン6と作業チャンバ壁との間には、シールリング5が配置されている。ピストン6には逆止め弁11が取り付けられている。
【0009】
駆動板2とブリッジ板13との衝突を緩衝し、騒音を低減するために、弾性体3が、前記関節軸受け14内に配置されている。前記弾性体3は、減摩・耐浸食性材料製である。ポンプの吸い込み中、駆動板2は、中央部に弾性体がサンドイッチ状に挟み込まれた関節軸受け14の一方の側を押圧し、関節軸受け14の他方の側はブリッジ板13を押圧する。ブリッジ板13は、また一方で、中央関節軸受け12を介して下方の関節軸受け14を押圧し、これによりシステムが完全なものとなる。駆動軸15は、前記関節軸受けにより駆動板2と同時的に運動させられ、したがって駆動軸15は騒音なしに往復動できる。
【0010】
伝動システムの良好な遊びばめを維持し、多段ダイアフラムポンプの長時間作動中に自動的な調節を実現させるために、主軸1の前端と主軸の加圧カバーとの間に主軸の軸受け遊びを調節するための弾性体10が配置されている。前組み立て状態で、弾性体10にはボルトその他によって公知の形式で予荷重が加えられるので、弾性体10は前変形される。作動中、弾性体10は、一定範囲内で主軸の軸受け遊びを自動的に調節するので、保守費用を低減でき、装置の有効寿命が延長される。弾性体10は、弾性体3の材料と等しい材料製であるのが好ましい。
【0011】
ピストンの両側での圧力差で生じる液体損失を自動的に回復するために、各ピストン6には逆止め弁11が備えてある。本発明の装置の操作、特に逆止め弁11の操作を、図1、図3、図4について説明する。先ず、搬送される液体材料は、最初に作業チャンバ内へ吸い込まれる。吸い込み中、ピストン6の逆止め弁11は開弁できない。なぜなら、吸い込み圧が標準的な1気圧を超えることがなく、そのような吸い込み圧では逆止め弁11は開弁できないからである。したがって、吸い込み中、該逆止め弁の存在は吸い込み処置に影響は与えない。排出処置は、吸い込み処置に続いて行われ、液体材料の排出中、駆動板2は弾性体3の左の関節軸受け14に加圧し、関節軸受け14は駆動軸15へ直接に動力を伝達する。
【0012】
液体材料排出中にダイアフラム及びピストンに加わる圧力は、吸い込み処置中に加わる圧力よりはるかに大であり、吸い込み処置中の方向とは反対方向なので、逆止め弁11は閉じられる。結果として、逆止め弁11の存在は排出処置に影響を与えない。逆止め弁の機能は次の通りである:異常な圧力又はキャビテーションによる衝撃を受けた場合、ピストン上のシールリングから漏れる液圧媒体は、ピストン左側のチャンバに溜まるので、左側チャンバ内の圧力が増大する。左側チャンバ内の圧力が1標準気圧を超える圧力に高まると、逆止め弁11が開き、液圧媒体が右側チャンバへ戻り、圧力低下後、逆止め弁11は閉じるので、ダイアフラムを保護できる。
【発明の効果】
【0013】
1.故障なしに作動する時間が極めて長く、特殊な流体、例えば微粒の砂等を含有する稠密な破壊性オイル等に対し特別の機能を発揮する。作業チャンバ内のダイアフラムは液体材料と接触せず、遮蔽型のピストンを使用することで、ダイアフラムは液体に起因する損傷に対して保護される。ダイアフラム及びダイアフラム間の空隙は液体により駆動され、ピストン両側での圧力差に起因する液体損は、自動的に回復できる。多段ダイアフラムが使用されているので、ポンプは、高い安全係数と長時間耐疲労性を有し、高圧に耐えられ、単個のダイアフラムが損傷しても正常作動は影響されない。
【0014】
2.この多段ダイアフラム弁の構造は高度である。この構造では、特に、弾性体が2つの位置に配置され、関節軸受け内の弾性体3は、駆動板とブリッジ板とに挟み付けられ、弾性体10は、主軸の端部と主軸の加圧カバーとの間に配置され、主軸の軸受け遊びの調節に使用される。2つの位置に弾性体を配置したことで、伝動システムの長時間の作動中、特に潤滑油の充填された作業チャンバ内での作動中、確実に遊びが常に比較的小さく維持される結果、騒音が低減され、漏れ止め特性が得られ、有効寿命が長くなる。
【0015】
3.本発明では、2種類の多段ダイアフラム組み合わせシステムが得られ、一方のシステムは、図5に示すように、ピストン保護機能を有する多段ダイアフラム組み合わせシステムであり、他方は、図6に示すように、ピストン保護機能なしの多段ダイアフラム組み合わせシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による多段ダイアフラムポンプの断面図。
【図2】図1のダイアフラムポンプの左端面図。
【図3】逆止め弁が閉じた状態を示す拡大図。
【図4】逆止め弁が開いた状態を示す拡大図。
【図5】ピストン保護機能を有する多段ダイアフラム組み合わせシステム。(実施例1)
【図6】ピストン保護機能なしの多段ダイアフラム組み合わせシステム。(実施例2)
【符号の説明】
【0017】
1 主軸
2 駆動板
3 弾性体
4 ダイアフラム
5 シールリング
6 ピストン
7 弁板
8 吸い込み逆止め弁、排出逆止め弁
9 ポンプカバー
10 弾性体
11 逆止め弁
12 中央関節軸受け
13 ブリッジ板
14 関節軸受け
15 駆動軸
16 偏心軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段ダイアフラムポンプにおいて、前記多段ダイアフラムポンプが、
ポンプ体と、主軸(1)と、主軸(1)によって駆動される往復駆動機構と、往復駆動機構に接続され、ポンプ体の作業チャンバ内へ延びている駆動軸(15)と、更に作業チャンバ前端に配置された吸い込み逆止め弁及び排出逆止め弁とを含み、しかも、関連駆動軸(15)には、直列配置された複数の皿状ダイアフラム(4)が取り付けられ、各皿状ダイアフラム(4)の前方にはピストン(6)が固定され、隣接する皿状ダイアフラムの間には液圧媒体が充填されており、最前部の皿状ダイアフラムの前方に配置されたピストンが、直接に作業チャンバ内の液体材料と接触しており、各ピストン(6)と作業チャンバ壁との間にシールリング(5)が配置されている、多段ダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記往復駆動機構が、主軸(1)に取り付けられた偏心軸(16)と、軸受けを介して偏心軸に取り付けられた駆動板(2)と、中央の関節軸受け(12)を介して主軸(1)に取り付けられたブリッジ板(13)と、駆動板(2)とブリッジ板(3)との間の数個の関節軸受け(14)とを含む、請求項1に記載された多段ダイアフラムポンプ。
【請求項3】
前記各関節軸受け(14)が弾性体(3)を備えている、請求項2に記載された多段ダイアフラムポンプ。
【請求項4】
前記弾性体(3)が、減摩性かつ耐浸食性の材料で作られている、請求項3に記載された多段ダイアフラムポンプ。
【請求項5】
各ピストンの一方の側に逆止め弁(11)が配置されている、請求項1に記載された多段ダイアフラムポンプ。
【請求項6】
主軸(1)の前端と主軸(1)の加圧カバーとの間に、主軸(1)の軸受け遊びを調節するための弾性体(10)が配置されている、請求項1に記載された多段ダイアフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−2450(P2008−2450A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−221276(P2006−221276)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(506276963)
【出願人】(506276985)
【Fターム(参考)】