説明

多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置

【課題】多気筒内燃機関において、迅速に、空然比の異常のある気筒を特定すると共に、その気筒での空燃比がいずれの側にずれているのかを特定する。
【解決手段】本発明に係る多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置は、所定の対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量変更する燃料噴射量変更制御を実行する燃料噴射量変更制御手段と、前記所定の対象気筒に関する出力変動を表す値を導出する値導出手段と、該値導出手段により導出された前記燃料噴射量変更制御の非実行時の値と、該値導出手段により導出された前記燃料噴射量変更制御の実行時の値との比較結果に基づいて、前記所定の対象気筒に関する空燃比の異常および該異常の種類を検出する検出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒内燃機関の気筒間空燃比のばらつき異常を検出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、排気中有害成分の触媒による浄化を高効率で行うため、内燃機関で燃焼される混合気の空気と燃料との混合割合、すなわち空燃比のコントロールが欠かせない。こうした空燃比の制御を行うため、内燃機関の排気通路に空燃比センサを設け、これによって検出された空燃比を所定の目標空燃比に追従させるようフィードバック制御を実施している。
【0003】
一方、多気筒内燃機関においては、通常全気筒に対して同一の制御量を用いて空燃比制御を行うため、空燃比制御を実行したとしても実際の空燃比が気筒間でばらつくことがある。このときばらつきの程度が小さければ、空燃比フィードバック制御で吸収可能であり、また触媒でも排気中有害成分を浄化処理可能なので、排気エミッションに影響を与えず、特に問題とならない。
【0004】
しかし、例えば一部の気筒の燃料噴射系や吸気バルブの動弁機構が故障するなどして、気筒間の空燃比が大きくばらつくと、排気エミッションを悪化させてしまい、問題となる。このような排気エミッションを悪化させる程の大きな空燃比ばらつきは異常として検出するのが望ましい。
【0005】
例えば、特許文献1が開示する内燃機関では、まず、空燃比フィードバック制御の演算値に基づいて内燃機関の気筒間の空燃比がインバランス状態になっていることが判断される。当該内燃機関では排気通路の浄化触媒の上流側に設けられたA/Fセンサの検出結果に基づいてメイン空燃比フィードバック制御が実行され、そしてその浄化触媒の下流側に設けられたO2センサの検出結果に基づいてサブ空燃比フィードバック制御が実行される。このサブ空燃比フィードバック制御の演算値の平均値が通常値を超えたときに気筒間の空燃比がインバランス状態になっていると判断される。さらに、特許文献1の内燃機関では、そのようにして気筒間に空燃比異常があると判断したときに、各気筒のインジェクタの燃料噴射時間を所定時間ずつ短縮させる処理が実行され、それにより失火が生じた気筒が空燃比インバランスが生じている気筒であると特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−112244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
気筒間空然比ばらつき異常の検出時、異常のある気筒を特定することに加えて、気筒間空然比ばらつき異常があるときに、それに適した制御などを実行するため、例えば異常のある気筒で他の正常な気筒に比べて燃料が多く噴射されているのか、あるいは、燃料が少なく噴射されているのか、つまり異常の種類をも特定することが望まれる。しかし、そのためには、上記特許文献1の記載を参照すると、気筒間空然比ばらつき異常の検出処理、および、異常のある気筒を特定するための処理を段階的に行った後、さらに加えて、特許文献1に記されない異常の種類の特定処理を行うことが必要とされるであろう。これは、複数の段階的な処理を必要とするので、気筒間空然比ばらつき異常があるときにそれに適した制御などへの移行時間の点で改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は以上の事情に鑑みて創案され、その目的は、多気筒内燃機関において、迅速に、空然比の異常のある気筒を特定すると共に、その気筒での空燃比がいずれの側にずれているのかを特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様によれば、所定の対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量変更する燃料噴射量変更制御を実行する燃料噴射量変更制御手段と、前記所定の対象気筒に関する出力変動を表す値を導出する値導出手段と、該値導出手段により導出された前記燃料噴射量変更制御の非実行時の値と、該値導出手段により導出された前記燃料噴射量変更制御の実行時の値との比較結果に基づいて、前記所定の対象気筒に関する空燃比の異常および該異常の種類を検出する検出手段とを備えた、多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置が提供される。
【0010】
好ましくは、前記非実行時の値は、前記燃料噴射量変更制御の実行の直前または直後における前記所定の対象気筒に関する出力変動を表す値である。
【0011】
好ましくは、前記燃料噴射量変更制御手段は、前記燃料噴射量変更制御として、前記所定の対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量増量変更する燃料噴射量増量制御を実行し、前記検出手段は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きにリッチ異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリッチ異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きにリーン異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリーン異常であると判定する判定部を含む。この場合、排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるように空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段がさらに備えられ、前記燃料噴射量変更制御手段は、該空燃比フィードバック制御が実行されているとき、前記燃料噴射量変更制御として、前記燃料噴射量増量制御を実行し、前記検出手段の前記判定部は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きに第1所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリッチ側にずれている異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きに第2所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリーン側にずれている異常であると判定するとよい。
【0012】
あるいは、前記燃料噴射量変更制御手段は、前記燃料噴射量変更制御として、前記所定の対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量減量変更する燃料噴射量減量制御を実行し、前記検出手段は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きにリッチ異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリッチ異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きにリーン異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリーン異常であると判定する判定部を含むとよい。この場合、排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるように空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段がさらに備えられ、前記燃料噴射量変更制御手段は、該空燃比フィードバック制御が実行されているとき、前記燃料噴射量変更制御として、前記燃料噴射量減量制御を実行し、前記検出手段の前記判定部は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きに第3所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリッチ側にずれている異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きに第4所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリーン側にずれている異常であると判定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の概略図である。
【図2】触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。
【図3】回転変動を表す値を説明するためのタイムチャートである。
【図4】回転変動を表す別の値を説明するためのタイムチャートである。
【図5】燃料噴射量を増量したときの回転変動の変化を説明するための一例としてのグラフである。
【図6】燃料噴射量の増量による回転変動の変化の仕方を説明するための概念的なグラフである。
【図7】図6に関連した図であり、所定の対象気筒のインバランス率と、該気筒での燃料噴射量の増量に伴う回転変動を表す値の変化との関係を表した概念的な図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。まず、第1実施形態が説明される。
【0015】
図1に本第1実施形態に係る内燃機関を概略的に示す。図示される内燃機関(エンジン)1は自動車に搭載されたV型8気筒火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)である。エンジン1は第1のバンクB1と第2のバンクB2とを有し、第1のバンクB1には奇数番気筒すなわち#1,#3,#5,#7気筒が設けられ、第2のバンクB2には偶数番気筒すなわち#2,#4,#6,#8気筒が設けられている。#1,#3,#5,#7気筒が第1の気筒群をなし、#2,#4,#6,#8気筒が第2の気筒群をなす。
【0016】
各気筒にインジェクタ(燃料噴射弁)2が設けられる。インジェクタ2は、対応気筒の吸気通路、特に吸気ポート(図示せず)内に向けて燃料を噴射する。また各気筒には、筒内の混合気に点火するための点火プラグ13が設けられる。なお、エンジン1での点火順序は#1、#8、#7、#3、#6、#5、#4、#2気筒の順である。
【0017】
吸気を導入するための吸気通路7は、前記吸気ポートの他、集合部としてのサージタンク8と、各気筒の吸気ポートおよびサージタンク8を結ぶ複数の吸気マニホールド9と、サージタンク8の上流側の吸気管10などによって区画形成されている。吸気管10には、上流側から順にエアフローメータ11と電子制御式スロットルバルブ12とが設けられている。エアフローメータ11は吸気流量に応じた大きさの信号を出力する。
【0018】
第1のバンクB1に対して第1の排気通路14Aが設けられ、第2のバンクB2に対して第2の排気通路14Bが設けられる。これら第1および第2の排気通路14A,14Bは下流触媒コンバータ19の上流側で合流されている。この合流位置より上流側の排気系の構成は両バンクで同一なので、ここでは第1のバンクB1側についてのみ説明し、第2のバンクB2側については図中同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
第1の排気通路14Aは、#1,#3,#5,#7の各気筒の排気ポート(図示せず)と、これら排気ポートの排気ガスを集合させる排気マニホールド16と、排気マニホールド16の下流側に設置された排気管17などにより区画形成されている。そして排気管17には上流触媒コンバータ18が設けられている。上流触媒コンバータ18の上流側および下流側(直前および直後)にそれぞれ、排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサである触媒前センサ20および触媒後センサ21が設置されている。このように、一方のバンクに属する複数の気筒(あるいは気筒群)に対して、上流触媒コンバータ18、触媒前センサ20および触媒後センサ21が各一つずつ設けられている。なお、第1および第2の排気通路14A,14Bを合流させないで、これらに個別に下流触媒コンバータ19を設けることも可能である。
【0020】
エンジン1には各種制御手段(制御装置)および各種検出手段(検出部)などとしての各機能を担う電子制御ユニット(以下ECUと称す)100が設けられている。ECU100は、何れも図示されないCPU、ROMおよびRAMを含む記憶装置、並びに入出力ポート等を含むものである。ECU100には、前述のエアフローメータ11、触媒前センサ20、触媒後センサ21のほか、エンジン1のクランク角を検出するためのクランク角センサ22、アクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ23、エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ24、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU100は、各種センサの検出値等に基づき、所望の出力が得られるように、インジェクタ2、点火プラグ13、スロットルバルブ12等を制御し、燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期、スロットル開度等を制御する。
【0021】
このようなECU100は、燃料噴射制御手段、点火制御手段、吸入空気量制御手段、空燃比制御手段等のそれぞれの機能を担う。そして、エンジン1には後で詳述するように気筒間空燃比ばらつき異常検出装置が装備されていて、ECU100は、燃料噴射量変更制御手段、所定の対象気筒に関する出力変動を表す値を導出する値導出手段、所定の対象気筒に関する空燃比の異常および該異常の種類を検出する検出手段の各機能を実質的に担う。
【0022】
また、スロットルバルブ12にはスロットル開度センサ(図示せず)が設けられ、スロットル開度センサからの信号がECU100に送られる。ECU100は、通常、アクセル開度に応じて定まる開度に、スロットルバルブ12の開度(スロットル開度)をフィードバック制御する。
【0023】
またECU100は、エアフローメータ11からの信号に基づき、単位時間当たりの吸入空気の量すなわち吸入空気量を検出する。そしてECU100は、検出したアクセル開度、スロットル開度および吸入空気量の少なくとも一つに基づき、エンジン1の負荷を検出する。
【0024】
ECU100は、クランク角センサ22からのクランクパルス信号に基づき、クランク角自体を検出すると共にエンジン1の回転数を検出する。ここで「回転数」とは単位時間当たりの回転数のことをいい、回転速度と同義である。本実施形態では1分間当たりの回転数rpmのことをいう。なお、ECU100の値導出手段として実質的に機能する部分は、本実施形態では、出力検出手段としてのクランク角センサ22からの出力つまり信号に基づいて出力変動を表す値を算出する(導出する)。
【0025】
そして、ECU100は、通常、吸入空気量およびエンジン回転速度つまりエンジン運転状態に基づいて、予め記憶装置に記憶するデータ等を用いて、燃料噴射量(または燃料噴射時間)を設定する。そして、その燃料噴射量に基づいて、インジェクタ2からの燃料の噴射が制御される。なお、このような通常時の燃料噴射制御による燃料噴射量をここでは通常時燃料噴射量と称し得る。
【0026】
ところで、触媒前センサ20は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図2に触媒前センサ20の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ20は、検出した排気空燃比(触媒前空燃比A/Ff)に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.5)であるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
【0027】
他方、触媒後センサ21は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。図2に触媒後センサ21の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比(触媒後空燃比A/Fr)がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ21の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。概して排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧Vrはストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧Vrはストイキ相当値Vrefrより高くなる。
【0028】
上流触媒コンバータ18および下流触媒コンバータ19はそれぞれ三元触媒からなり、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx、HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
【0029】
そこで、エンジン1の通常運転時、上流触媒コンバータ18に流入する排気ガスの空燃比をストイキ近傍に制御するための空燃比制御(ストイキ制御)がECU100により実行される。この空燃比制御は、触媒前センサ20によって検出された排気空燃比が所定の目標空燃比であるストイキになるように混合気の空燃比(具体的には燃料噴射量)をフィードバック制御する主空燃比制御(主空燃比フィードバック制御)と、触媒後センサ21によって検出された排気空燃比がストイキになるように混合気の空燃比(具体的には燃料噴射量)をフィードバック制御する補助空燃比制御(補助空燃比フィードバック制御)とからなる。具体的には、主空燃比フィードバック制御では、触媒前センサ20の出力に基づいて検出される現状の排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるために、第1補正係数を演算して、この第1補正係数に基づいてインジェクタ2からの燃料噴射量を調整するような制御が実行される。そして、さらに補助空燃比フィードバック制御では、触媒後センサ21の出力に基づいて、第2補正係数を演算し、主空燃比フィードバック制御にて得られた第1補正係数を修正するような制御が実行される。ただし、本実施形態において、上記所定の目標空燃比つまり空燃比の基準値(目標値)はストイキであり、このストイキに相当する燃料噴射量(ストイキ相当量という)が燃料噴射量の基準値(目標値)である。但し、空燃比および燃料噴射量の基準値は他の値とすることもできる。
【0030】
空燃比制御はバンク単位で若しくはバンク毎に行われる。例えば第1のバンクB1側の触媒前センサ20および触媒後センサ21の検出値は、第1のバンクB1に属する#1,#3,#5,#7気筒の空燃比フィードバック制御にのみ用いられ、第2のバンクB2に属する#2,#4,#6,#8気筒の空燃比フィードバック制御には用いられない。逆も同様である。あたかも独立した直列4気筒エンジンが二つあるように、空燃比制御が実行される。また空燃比制御においては、同一バンクに属する各気筒に対し同一の制御量が一律に用いられる。
【0031】
さて、例えば全気筒のうちの一部の気筒(特に1気筒)において、インジェクタ2の故障等が発生し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生することがある。例えば第1のバンクB1について、インジェクタ2の閉弁不良により#1気筒の燃料噴射量が他の#3,#5,#7気筒の燃料噴射量よりも多くなり、#1気筒の空燃比が他の#3,#5,#7気筒の空燃比よりも大きくリッチ側にずれる場合である。
【0032】
このときでも、前述の空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ20に供給されるトータルガス(合流後の排気ガス)の空燃比をストイキに制御できる場合がある。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#3,#5,#7気筒がストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつき異常を検出する装置が装備されている。
【0033】
ここで、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す指標値としてインバランス率なる値を用いる。インバランス率とは、複数の気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ズレを起こしている場合に、その燃料噴射量ズレを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ズレを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量即ち基準噴射量(上記通常時燃料噴射量に相当)からズレているかを示す値である。インバランス率をIB(%)、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量即ち基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qs×100で表される。インバランス率IBが正負に関わらず大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ズレが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
【0034】
他方、本実施形態においては、所定の対象気筒の燃料噴射量をアクティブに若しくは強制的に増量し、このように変更したときの、つまり、少なくとも増量後の所定の対象気筒の回転変動に基づき、ばらつき異常を検出する。
【0035】
まず、回転変動について説明する。回転変動とは、エンジン1の出力変動に含まれ、エンジン回転速度あるいはクランクシャフト回転速度の変化をいう。そして本明細書では、回転変動を表す値つまり回転変動の程度を表した値を回転変動量と称する。例えば、クランクシャフトが所定角度回転するのに要する時間を計測し、その計測値を演算処理することで求められる値(量)が回転変動量として用いられることができる。以下の図3および図4を用いた説明で、種々の値を回転変動量として用いることができることが理解されるであろう。
【0036】
図3には回転変動を説明するためのタイムチャートを示す。図示例は直列4気筒エンジンの例であるが、本実施形態のようなV型8気筒エンジンにも適用可能であることが理解されよう。図3の直列4気筒エンジンでの点火順序は#1,#3,#4,#2気筒の順である。
【0037】
図3において、(A)はエンジンのクランク角(°CA)を示す。1エンジンサイクルは720(°CA)であり、図には逐次的に検出される複数サイクル分のクランク角が鋸歯状に示されている。
【0038】
図3(B)は、クランクシャフトが所定角度だけ回転するのに要した時間、すなわち回転時間T(s)を示す。ここでは所定角度が30(°CA)であるが、他の値(例えば10(°CA))としてもよい。回転時間Tが長いほどエンジン回転速度は遅く、逆に回転時間Tが短いほどエンジン回転速度は速い。この回転時間Tはクランク角センサ22の出力信号に基づきECU100により検出される。
【0039】
図3(C)は、後に説明する回転時間差ΔTを示す。図中、「正常」とは、いずれの気筒にも空燃比ずれが生じていない正常な場合を示し、「リーンずれ異常」とは、#1気筒のみにインバランス率IB=−30(%)のリーンずれが生じている異常な場合を示す。リーンずれ異常は例えばインジェクタの噴孔詰まりや開弁不良により生じ得る。
【0040】
まず、各気筒の同一タイミングにおける回転時間TがECUにより検出される。ここでは各気筒の圧縮上死点(TDC)のタイミングにおける回転時間Tが検出される。この回転時間Tが検出されるタイミングを検出タイミングという。
【0041】
次いで、検出タイミング毎に、当該検出タイミングにおける回転時間T2と、直前の検出タイミングにおける回転時間T1との差(T2−T1)がECUにより算出される。この差が(C)に示す回転時間差ΔTであり、ΔT=T2−T1である。
【0042】
通常、クランク角がTDCを超えた後の燃焼行程では回転速度が上昇するため回転時間Tが低下し、その後の圧縮行程では回転速度が低下するため回転時間Tが増大する。
【0043】
しかしながら、(B)に示すように#1気筒がリーンずれ異常の場合、#1気筒を点火させても十分なトルクが得られず、回転速度が上昇しづらいので、その影響で#3気筒TDCにおける回転時間Tは大きくなっている。それ故、#3気筒TDCにおける回転時間差ΔTは、(C)に示すように大きな正の値となる。この#3気筒TDCにおける回転時間および回転時間差をそれぞれ#1気筒の回転時間および回転時間差とし、それぞれT1およびΔT1で表す。他の気筒についても同様である。
【0044】
次に、#3気筒は正常であるので、#3気筒を点火させたときには回転速度が急峻に上昇する。これにより次の#4気筒TDCのタイミングでは、#3気筒TDCのときに比べ回転時間Tが若干低下しているに過ぎない。それ故、#4気筒TDCにおいて検出された#3気筒の回転時間差ΔT3は、(C)に示すように小さな負の値となる。このようにある気筒の回転時間差ΔTが、点火気筒TDC毎に検出される。
【0045】
以降の#2気筒TDCおよび#1気筒TDCにおいても#4気筒TDCのときと同様の傾向が見られ、両タイミングにおいて検出された#4気筒の回転時間差ΔT4および#2気筒の回転時間差ΔT2はともに小さな負の値となっている。以上の特性が1エンジンサイクル毎に繰り返される。
【0046】
このように、各気筒の回転時間差ΔTは、各気筒の回転変動を表す値であり、各気筒の空燃比ずれ量に相関した値であることが分かる。そこで各気筒の回転時間差ΔTを各気筒の回転変動の指標値つまり回転変動値または回転変動量として用いることができる。各気筒の空燃比ずれ量が大きいほど、各気筒の回転変動は大きくなり、各気筒の回転時間差ΔTは大きくなる。
【0047】
他方、図3(C)に示すように、正常の場合には回転時間差ΔTが常時ゼロ付近である。
【0048】
図3の例ではリーンずれ異常の場合を示したが、逆のリッチずれ異常、すなわち1気筒のみに大きなリッチずれが生じている場合にも、同様の傾向がある。大きなリッチずれが生じた場合、点火しても燃料過多のため燃焼が不十分となり、十分なトルクが得られず、回転変動が大きくなるからである。
【0049】
次に、図4を参照して、回転変動を表す別の値つまり別の回転変動量の例を説明する。図4(A)は図3(A)と同様にエンジンのクランク角(°CA)を示す。
【0050】
図4(B)は、前記回転時間Tの逆数である角速度ω(rad/s)を示す。ω=1/Tである。当然ながら、角速度ωが大きいほどエンジン回転速度は速く、角速度ωが小さいほどエンジン回転速度は遅い。角速度ωの波形は、回転時間Tの波形を上下反転した形となる。
【0051】
図4(C)は、前記回転時間差ΔTと同様、角速度ωの差である角速度差Δωを示す。角速度差Δωの波形も、回転時間差ΔTの波形を上下反転した形となる。図中の「正常」および「リーンずれ異常」については図3と同様である。
【0052】
まず、各気筒の同一タイミングにおける角速度ωがECUにより検出される。ここでも各気筒の圧縮上死点(TDC)のタイミングにおける角速度ωが検出される。角速度ωは、1を前記回転時間Tで除することにより算出される。
【0053】
次いで、検出タイミング毎に、当該検出タイミングにおける角速度ω2と、直前の検出タイミングにおける角速度ω1との差(ω2−ω1)がECUにより算出される。この差が(C)に示す角速度差Δωであり、Δω=ω2−ω1である。
【0054】
通常、クランク角がTDCを超えた後の燃焼行程では回転速度が上昇するため角速度ωが上昇し、その後の圧縮行程では回転速度が低下するため角速度ωが低下する。
【0055】
しかしながら、(B)に示すように#1気筒がリーンずれ異常の場合、#1気筒を点火させても十分なトルクが得られず、回転速度が上昇しづらいので、その影響で#3気筒TDCにおける角速度ωは小さくなっている。それ故、#3気筒TDCにおける角速度差Δωは、(C)に示すように大きな負の値となる。この#3気筒TDCにおける角速度および角速度差をそれぞれ#1気筒の角速度および角速度差とし、それぞれω1およびΔω1で表す。他の気筒についても同様である。
【0056】
次に、#3気筒は正常であるので、#3気筒を点火させたときには回転速度が急峻に上昇する。これにより次の#4気筒TDCのタイミングでは、#3気筒TDCのときに比べ角速度ωが若干上昇するに過ぎない。それ故、#4気筒TDCにおいて検出された#3気筒の角速度差Δω3は、(C)に示すように小さな正の値となる。このようにある気筒の角速度差Δωが、点火気筒TDC毎に検出される。
【0057】
以降の#2気筒TDCおよび#1気筒TDCにおいても#4気筒TDCのときと同様の傾向が見られ、両タイミングにおいて検出された#4気筒の角速度差Δω4および#2気筒の角速度差Δω2はともに小さな正の値となっている。以上の特性が1エンジンサイクル毎に繰り返される。
【0058】
このように、各気筒の角速度差Δωは、各気筒の回転変動を表す値であり、各気筒の空燃比ずれ量に相関した値であることが分かる。そこで各気筒の角速度差Δωを各気筒の回転変動の指標値として用いることができる。各気筒の空燃比ずれ量が大きいほど、各気筒の回転変動は大きくなり、各気筒の角速度差Δωは小さくなる(マイナス方向に大きくなる)。
【0059】
他方、図4(C)に示すように、正常の場合には角速度差Δωが常時ゼロ付近である。
【0060】
逆のリッチずれ異常の場合にも同様の傾向がある点は上述した通りである。
【0061】
次に、ある1気筒の燃料噴射量をアクティブにつまり強制的に増量して当該気筒での空燃比を変化させたときの回転変動の変化を、図5を参照して説明する。ただし、この場合、燃料噴射量をアクティブにまたは強制的に増量するとき、吸入空気量は変化しないようにスロットルバルブ12等の作動は制御される。
【0062】
図5において、横軸はインバランス率IBを示し、縦軸は回転変動の指標値つまり回転変動量としての角速度差Δωを示す。ここでは、全8気筒のうちある1気筒のみのインバランス率IBを変化させ、このときの当該1気筒のインバランス率IBと、当該1気筒の角速度差Δωとの関係を線aで示す。ここでは当該1気筒をアクティブ対象気筒という。他の気筒は全てバランス気筒であり、基準噴射量Qsとしてストイキ相当量を噴射しているものとする。
【0063】
図5の横軸において、IB=0(%)とは、アクティブ対象気筒のインバランス率IBが0(%)で、アクティブ対象気筒がストイキ相当量を噴射している正常な場合を意味する。このときのデータが線a上のプロットbで示される。このIB=0(%)の状態から図中右側に移動すると、インバランス率IBがプラス方向に増加し、燃料噴射量としては過多すなわちリッチな状態となる。逆に、IB=0(%)から図中左側に移動すると、インバランス率IBがマイナス方向に増加し、燃料噴射量としては過少すなわちリーンな状態となる。
【0064】
特性線aから分かるように、アクティブ対象気筒のインバランス率IBが0(%)からプラス方向に増加してもマイナス方向に増加しても、アクティブ対象気筒の回転変動は大きくなり、アクティブ対象気筒の角速度差Δωが0付近からマイナス方向に大きくなる傾向にある。そして、インバランス率IBが0(%)から離れるほど、特性線aの傾きが急になり、インバランス率IBの変化に対する角速度差Δωの変化は大きくなる傾向にある。
【0065】
ここで、矢印cで示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を、ストイキ相当量(IB=0(%))から所定量Δf1、強制的に増量する燃料噴射量増量制御を実行したとする。図示例ではインバランス率で例えば約40(%)相当の増量がなされている。このとき、IB=0(%)の近辺では特性線aの傾きが緩やかであることから、増量後においても角速度差Δωは増量前と大きく変わらず、増量前後の角速度差Δωの差は極小さい。
【0066】
他方、プロットdで示すように、アクティブ対象気筒において既にリッチずれが生じており、そのインバランス率IBが比較的大きなプラス側の値になっているときを考える。図示例ではインバランス率で約50(%)のリッチずれが生じている。この状態から矢印eで示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を同量Δf1、強制的に増量する燃料噴射量増量制御を実行したとすると、この領域では特性線aの傾きが急であることから、増量後の角速度差Δωは増量前より大きくマイナス側に変化し、増量前後の角速度差Δωの差は大きくなる。すなわち燃料噴射量の増量により、アクティブ対象気筒の回転変動は大きくなる。
【0067】
よって、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量増量したときの少なくとも増量後のアクティブ対象気筒の角速度差Δωに基づき、気筒間空然比ばらつき異常を検出することが可能である。例えば、増量後の角速度差Δωが図示するように所定の負の値αより小さい場合(Δω<α)には、つまり所定量を越える回転変動量であるときには、ばらつき異常有りと判定し、且つアクティブ対象気筒を異常気筒と特定することができる。逆に、増量後の角速度差Δωが値αより小さくない場合(Δω≧α)には、少なくともアクティブ対象気筒を正常と判定することができる。
【0068】
そして、これらは、増量前後の角速度差Δωの差dΔωで表すことができる。増量前の角速度差をΔω1、増量後の角速度差をΔω2とすると、両者の差dΔωをdΔω=Δω1−Δω2と定義することができる。そして差dΔωが所定の正の値β1を超えた場合(dΔω>β1)、ばらつき異常有りと判定し、且つアクティブ対象気筒を異常気筒と特定することができる。逆に、差dΔωが値β1を超えない場合(dΔω≦β1)、少なくともアクティブ対象気筒を正常と判定することができる。このように、アクティブ対象気筒において既に問題になるほどのリッチずれが生じているときに当該気筒の燃料噴射量を所定量増量変更すると、その増量後の回転変動は増量前の回転変動よりも大きくなり、その変化量(絶対値)は所定量(絶対値)を越える。
【0069】
他方、インバランス率が負の領域で同様に燃料噴射量の強制増量を行ったときときは、逆のことが言える。図示しないが、アクティブ対象気筒において既にリーンずれが生じており、そのインバランス率IBが比較的大きなマイナス側の値になっているときを考える。この状態から同様にアクティブ対象気筒の燃料噴射量を強制的に増量する燃料噴射量増量制御を実行したとすると、増量後の角速度差Δω2は増量前の角速度差Δω1より小さくプラス側に変化し、増量前後の角速度差Δωの差は大きくなる。すなわち燃料噴射量の増量により、アクティブ対象気筒の回転変動は小さくなる。よって、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量増量したときの少なくとも増量後のアクティブ対象気筒の角速度差Δωに基づき、気筒間空然比ばらつき異常を検出することが可能である。要するに、アクティブ対象気筒において既に問題になるほどのリーンずれが生じているときに当該気筒の燃料噴射量を所定量増量変更すると、その増量後の回転変動は増量前の回転変動よりも小さくなり、その変化量(絶対値)は所定量(絶対値)を越える。
【0070】
これらの関係が図6に基づいてさらに説明される。例えばアクティブ対象気筒の状態が線m上の状態である場合を、つまり既にアクティブ対象気筒で比較的大きなリーンずれが生じている場合を考える。この状態から矢印m1で示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を所定量、強制的に増量する燃料噴射量増量制御を実行したとする。この場合、増量前のアクティブ対象気筒の回転変動量としての角速度差Δωm1に対して、同気筒の増量後の角速度差Δωm2は、回転変動が小さくなる向きに変化し、増量前後のそれら角速度差の差dΔωm(Δωm1−Δωm2)の大きさは所定量を越える。また、例えばアクティブ対象気筒の状態が線n上の状態である場合を、つまり既にアクティブ対象気筒で比較的大きなリッチずれが生じている場合を考える。この状態から矢印n1で示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を所定量、強制的に増量する燃料噴射量増量制御を実行したとする。この場合、増量前のアクティブ対象気筒の回転変動量としての角速度差Δωn1に対して、同気筒の増量後の回転変動量としての角速度差Δωn2は、回転変動が大きくなる向きに変化し、増量前後のそれら角速度差の差dΔωn(Δωn1−Δωn2)の大きさは所定量を越える。これらに対して、例えばアクティブ対象気筒がストイキ相当量を噴射している正常な場合を考える。この状態から矢印p1で示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を所定量、強制的に増量する燃料噴射量増量制御を実行したとする。この場合、増量前後の回転変動量としての角速度差の変化は小さい。したがって、そのような増量前後の回転変動量の差の符号および大きさに基づいて、所定の対象気筒に関して空燃比異常が生じているのか、加えて、そのような異常がある場合にその異常がどのような異常であるのかを特定することができる。
【0071】
この関係は図7に表されている。図7において、横軸は所定の対象気筒の燃料噴射量増量制御の非実行時のインバランス率IBを示し、縦軸は増量前後の回転変動量の差としての角速度差の差dΔωを示す。ただし、差dΔωは、ここでは、所定の対象気筒における増量前の角速度差Δω1から同気筒における増量後つまり増量したときの角速度差Δω2を引いた値である。所定の対象気筒の増量前の角速度差Δω1を求めると共に当該所定の対象気筒の増量後(中)の角速度差Δω2を求めて、それらの差dΔω(Δω1−Δω2)が求められる。そして、差dΔωが第1所定値γよりも大きな値であるとき、当該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があり、その異常が所定の目標空燃比からリッチ側にずれているものである、つまり例えば当該所定の対象気筒の燃料噴射量が過多であると理解されることができる。他方、求められた差dΔωが第2所定値δよりも小さな値であるとき、当該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があり、その異常が所定の目標空燃比からリーン側にずれているものである、つまり例えば当該所定の対象気筒の燃料噴射量が過少であると理解されることができる。なお、第1所定値γの大きさ(絶対値)つまり第1所定量と、第2所定値δの大きさ(絶対値)つまり第2所定量とは同じであっても、異なってもよい。
【0072】
以下に、上記発明思想にしたがう、本第1実施形態における、気筒間空然比ばらつき異常を検出する制御つまり当該実施形態における空燃比診断用制御を、図8のフローチャートにしたがって説明する。
【0073】
まず、エンジン1が始動されると、ステップS801では気筒カウンタCがゼロに設定される。そして、次ぐステップS803では、所定の運転状態か否かが判定される。この判定は、ECU100により実行され、上記したように検出されるエンジン回転速度およびエンジン負荷に基づいて実行される。例えば、エンジン始動後の所定の運転状態であるとき、ステップS803で肯定判定される。具体的には、エンジン冷却水温が所定温度(例えば70℃)以上であること、負荷が所定範囲内にあること(例えば吸入空気量が所定吸入空気量範囲(例えば15〜50g/s)にあること)、エンジン回転速度が所定エンジン回転速度域(例えば1500rpm〜2000rpm)にあることの全てを満たす運転状態のとき、ステップS803で肯定判定される。
【0074】
このような運転状態のとき、通常は、上記したように触媒コンバータ18で排気浄化をより好適に行うために、排気空燃比がストイキに追従するように空燃比フィードバック制御が実行されている。したがって、ステップS803の判定は、排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるように空燃比フィードバック制御を実行しているか否かの判定に相当し、特にここでは所定の目標空燃比はストイキである。しかし、所定の目標空燃比は、ストイキ以外とされることもできる。なお、本発明は、そのような空燃比制御が行われていることを、気筒間空燃比ばらつき異常の検出を実行するための条件に含めることができるが、含めなくてもよい。
【0075】
ステップS803でエンジン1が所定の運転状態にあるので肯定判定されると、ステップS805で、燃料噴射量増量制御を含む燃料噴射量変更制御が実行されずに、気筒カウンタCに応じた1つの気筒に関するデータが、特に出力検出手段としてのクランク角センサ22の出力信号に基づくデータが記録される。なお、気筒カウンタCがゼロのとき、それに応じた気筒は#1気筒である。気筒カウンタCが1ずつ増えるにしたがって、それに応じた気筒は#1、#8、#7、#3、#6、#5、#4、#2気筒の順に変化する。なお、気筒の順番はこれ以外でもよく、任意に設定され得る。
【0076】
そして、次ぐステップS807で、気筒カウンタCに応じた気筒を所定の対象気筒として、当該気筒に対して燃料噴射量を所定量増量する燃料噴射量増量制御が実行されて、それに伴うデータ、特に出力検出手段としてのクランク角センサ22の出力信号に基づくデータが記録される。なお、燃料噴射量増量制御により増量される燃料量は、例えばインバランス率で約40(%)相当の量である。
【0077】
そして、次のステップS809で、気筒カウンタCに応じた気筒つまりここでは#1気筒に関する、燃料噴射量増量制御の非実行時の出力変動を表す値つまり出力変動量と、燃料噴射量増量制御の実行時の出力変動量とが算出される。ここではそのような出力変動量として、当該気筒の回転変動量が算出される。なお、ここでは、回転変動量として角速度差Δωが既に説明したように算出される。ただし、燃料噴射量増量制御の非実行時の角速度差Δω1はステップS805で取得されたデータに基づいて算出され(導出され)、燃料噴射量増量制御の実行時の角速度差Δω2はステップS807で取得されたデータに基づいて算出される(導出される)。なお、本実施形態では、燃料噴射量増量制御の非実行時の所定の対象気筒の角速度差Δω1は、同気筒の燃料噴射量増量制御の実行の直前における値であるが、同気筒の燃料噴射量増量制御の実行の直後つまり燃料噴射量増量制御の影響のなくなったその直後における値であってもよく、同気筒の燃料噴射量増量制御の非実行時の任意の時期での値であり得る。ただし、ステップS805およびステップS807が実行されるときの運転状態は、好ましくは実質的に等しい。
【0078】
次ぐステップS811では、気筒カウンタCに応じた気筒つまり#1気筒に関して、ステップS809で算出された角速度差Δω1から同じく算出された角速度差Δω2を引くことで、それら角速度差の差dΔωが算出される。なお、以下では、#1気筒に関する角速度差の差dΔωは符号dΔω1で表される。
【0079】
そして、ステップS813で、ステップS811で算出された#1気筒に関する差dΔω1が第1所定値γ(図7参照)以下であるか否かが判定される。ステップS813で差dΔω1が第1所定値γを超えているので否定判定されると、ステップS815で、#1気筒には空燃比異常があり、かつ、その異常がリッチ異常つまり所定の目標空燃比からリッチ側にずれている異常であると判断するように、#1気筒の異常データが記録される。
【0080】
これに対してステップS813で#1気筒に関する差dΔω1が第1所定値γ以下であるので肯定判定されると、ステップS817で、気筒カウンタCに応じた気筒、ここでは#1気筒に関する同差dΔω1が第2所定値δ(図7参照)以上であるか否かが判定される。ステップS817で#1気筒に関する差dΔω1が第2所定値δを下回っているので否定判定されると、ステップS819で、#1気筒には空燃比異常があり、かつ、その異常がリーン異常つまり所定の目標空燃比からリーン側にずれている異常であると判断するように、#1気筒の異常データが記録される。なお、上記したように、ステップS813での第1所定値の大きさ(絶対値)つまりリッチ異常判定用所定量としての第1所定量と、ステップS817での第2所定値の大きさ(絶対値)つまりリーン異常判定用所定量としての第2所定量とは同じであっても、異なってもよい。
【0081】
これに対して、ステップS817で気筒カウンタCに応じた気筒である#1気筒に関する差dΔω1が第2所定値δ以上であるので肯定判定されると、#1気筒は異常であると判定されずに(#1気筒は正常であると判断されつつ)、ステップS821で気筒カウンタCが1だけ加算される。なお、ステップS815またはS819を経たときにも、ステップS821で気筒カウンタCが1だけ加算される。そして、ステップS823で、気筒カウンタCが8であるか否が判定される。これはエンジン1が8つの気筒を有するからである。
【0082】
なお、ステップS813〜S819は、特にステップS813およびS817の判定は、ECU100における検出手段の判定部の機能を担う部分により実行される。
【0083】
そして、ステップS823で気筒カウンタCが8でないので否定判定されると、ステップS803に戻り、次に気筒カウンタC(=1)に応じた気筒である#8気筒に関して上記ステップS803〜S819が実行される。
【0084】
そして、ステップS823で気筒カウンタCが8であるので肯定判定されるようになると、当該フローは終了する。
【0085】
上記したように、各気筒において、燃料噴射量増量制御の非実行時の出力変動量と燃料噴射量増量制御の実行時の出力変動量との比較結果、特にそれらの差に基づいて、各気筒に関して空燃比異常があるか否か、加えて、その異常がどのようなものであるのか(異常の種類がいずれであるのか)を同時に判断することができる。したがって、本実施形態によれば、迅速に、異常のある気筒を特定すると共に、その気筒での空燃比がいずれの側にずれているのかを特定することが可能である。
【0086】
なお、ここでは、エンジン1の始動後、それが停止するまでの間に、たった一度のみ、図8にしたがって説明された気筒間空然比ばらつき異常の検出制御が実行される。しかし、適宜の時期に、この制御が実行されてもよい。例えば、エンジン1の運転時間またはエンジン1を搭載した車両の走行距離が所定値になったときに、当該制御が実行されることができる。
【0087】
なお、いずれか少なくとも1つの気筒に関して異常データが記録されているとき、当該異常データに基づいてECU100はエンジン1においてそのような異常に適した制御をするように構成されることができる。例えば#1気筒に関してリッチ異常が検出されたときには、#1気筒の燃料噴射量を所定量減らすように#1気筒の燃料噴射量を制御することができる。また、異常データが記録されるとき、通常はOFFにされている異常フラグがONにされて、運転席のフロントパネル等に設けられ得る、図示しない警告ランプが点灯されてもよい。これにより運転者または整備者などにエンジン1の整備、修理などを促すことができる。
【0088】
なお、上記実施形態では、1サイクル当たり燃料噴射量増量制御はいずれか1つの気筒に対してのみ適用された。しかし、例えば、1サイクル当たり、いずれか2つ、3つ、4つまたは8つの気筒に、燃料噴射量増量制御が同時期に適用されてもよい。これにより、より気筒間空然比ばらつき異常の検出等の時間を短縮することができる。
【0089】
また、例えば上記実施形態では、回転変動量として角速度差Δωが採用されたが、回転時間差ΔTなどの上記した値を含む種々の値が回転変動量として用いられてもよい。そして、上記ステップS809で算出される値は回転変動量に限定されず、エンジンの出力変動を表す(反映する)値であり得、例えば、筒内圧検出手段としての筒内圧センサからの出力信号に基づいて検出される筒内圧に基づく値であってもよい。この場合、ステップS805およびS807では筒内圧センサからの出力信号に基づくデータが記録される。
【0090】
また、上記実施形態では、ステップS811で、角速度差Δω1から角速度差Δω2を引くことで、差dΔωが算出された。しかし、角速度差Δω2から角速度差Δω1を引くことで、差dΔωが算出されてもよい。この場合、差dΔωの符号が逆になり、例えば、ステップS813では差dΔωが第1所定値以上か否かが判定され、ステップS817では差dΔωが第2所定値以下か否かが判定され得る。
【0091】
ところで、上記実施形態では、燃料噴射量変更制御として、所定の対象気筒の燃料噴射量を所定量増量変更する燃料噴射量増量制御が実行された。しかし、燃料噴射量変更制御として、所定の対象気筒の燃料噴射量を所定量減量変更する燃料噴射量減量制御が実行されてもよい。ただし、この場合、減量される燃料量は、上記実施形態で増量される燃料量よりも少ないであろう。所定の対象気筒において既にリーンずれが生じている場合に、該気筒で燃料噴射量が大きく減らされると、該気筒で失火の可能性が高まるからである。しかし、本発明は、所定の対象気筒で燃料噴射量を減らしたときに、該気筒で失火する場合を排除しない。
【0092】
ここで、気筒間空然比ばらつき異常などを検出するために、上記第1実施形態と異なり、所定の対象気筒の燃料噴射量を所定量減量変更する、第2実施形態を説明する。ただし、所定の対象気筒の燃料噴射量を所定量減量変更する燃料噴射量減量制御を実行しなかったときの出力変動量(例えば回転変動量)と、当該気筒で同燃料噴射量減量制御を実行したときの出力変動量と、それら出力変動量の差と、当該所定の対象気筒のインバランス率または空燃比との間の相互関係は、図5から図7に基づく上記説明から明らかであるので、それらの説明は省略される。ただし、本第2実施形態にも、上記第1実施形態に関して説明された種々の変更などが適用され得る。
【0093】
以下、第2実施形態における気筒間空然比ばらつき異常を検出するための制御が図9のフローチャートに基づいて説明される。ただし、ステップS901〜S905、S909〜S911、S915、S919〜S923は、それぞれ上記ステップS801〜S805、S809〜S811、S815、S819〜S823に実質的に対応するので、これらの説明は以下の記載を除いて省略される。
【0094】
ステップS905で燃料噴射量減量制御の非実行時のデータが記録されると、次ぐステップS907で気筒カウンタCに応じた気筒を所定の対象気筒として、当該気筒に対して燃料噴射量を所定量減量する燃料噴射量減量制御が実行されて、それに伴うデータ、特にクランク角センサ22の出力信号に基づくデータが記録される。なお、燃料噴射量減量制御により減量される燃料量は、例えばインバランス率で約10(%)相当の量である。
【0095】
そして、ステップS909で気筒カウンタCに応じた気筒に関する、燃料噴射量減量制御の非実行時の角速度差Δω1と、燃料噴射量減量制御の実行時の角速度差Δω2とが算出される。そして次ぐステップS911では、気筒カウンタCに応じた気筒に関して、角速度差Δω1から角速度差Δω2を引くことで、それら角速度差の差dΔωが算出される。
【0096】
ただし、気筒カウンタCに応じた気筒である所定の対象気筒で既にかなりの程度のリッチずれが生じている場合、当該所定の対象気筒での燃料噴射量減量制御の実行により角速度差は回転変動が小さくなる向きに変化し、差dΔωは負の値になる。逆に、気筒カウンタCに応じた気筒である所定の対象気筒で既にかなりの程度のリーンずれが生じている場合、当該所定の対象気筒での燃料噴射量減量制御の実行により角速度差は回転変動が大きくなる向きに変化し、差dΔωは正の値になる。
【0097】
そして、ステップS913で、ステップS911で算出された気筒カウンタCに応じた気筒に関する差dΔωが第3所定値以上であるか否かが判定される。ステップS913で差dΔωが第3所定値未満であるので否定判定されると、ステップS915で、当該気筒には空燃比異常があり、かつ、その異常がリッチ異常つまり所定の目標空燃比からリッチ側にずれている異常であると判断するように、当該気筒の異常データが記録される。
【0098】
これに対してステップS913で気筒カウンタCに応じた気筒に関する差dΔωが第3所定値以上であるので肯定判定されると、ステップS917で、気筒カウンタCに応じた気筒に関する差dΔωが第4所定値以下であるか否かが判定される。なお、ステップS913での第3所定値の大きさ(絶対値)つまりリッチ異常判定用所定量としての第3所定量と、ステップS917での第4所定値の大きさ(絶対値)つまりリーン異常判定用所定量としての第4所定量とは同じであっても、異なってもよい。ステップS917で当該気筒に関する差dΔωが第4所定値を越えているので否定判定されると、ステップS919で、当該気筒には空燃比異常があり、かつ、その異常がリーン異常つまり所定の目標空燃比からリーン側にずれている異常であると判断するように、当該気筒の異常データが記録される。
【0099】
このように、本第2実施形態によれば、所定の対象気筒の燃料噴射量を減らす燃料噴射量減量制御の実行時の値が非実行時の値に対して所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きに第3所定量を超える量異なるとき、所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常が所定の対象気筒に関する空燃比が所定の目標空燃比からリッチ側にずれている異常であると判定される。これに対して、燃料噴射量減量制御の実行時の値が非実行時の値に対して所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きに第4所定量を超える量異なるとき、所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常が該所定の対象気筒に関する空燃比が所定の目標空燃比からリーン側にずれている異常であると判定される。
【0100】
上記2つの実施形態ではそれぞれ、空燃比フィードバック制御が行われているときに、上記したように気筒間空然比ばらつき異常を検出する制御(燃料噴射量変更制御を含む)が実行された。しかし、本発明は、空燃比フィードバック制御が実行されているとき以外の所定の運転状態のときに適用されてもよく、また、空燃比フィードバック制御を行わない内燃機関に適用されてもよい。具体的には、オープンループ制御である燃料噴射制御が実行されているときに、本発明が適用されてもよい。例えば、予め設定された所定の空燃比と吸入空気量とに基づいて燃料量を定め、この定められた量の燃料を単にインジェクタから噴射する燃料噴射制御が実行されているとき(または所定の運転状態)に、本発明における上記したような気筒間空然比ばらつき異常を検出する制御が実行されてもよい。この場合、上記したリッチ異常やリーン異常の基準はそのような所定の空燃比であり得る。
【0101】
なお、本発明は、種々の形式の2つ以上の気筒を有する多気筒エンジンに適用され得、ポート噴射形式のエンジンのみならず、筒内噴射形式のエンジン、ガスを燃料として用いるエンジンなどにも適用され得る。
【0102】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1 内燃機関(エンジン)
2 インジェクタ
11 エアフローメータ
12 スロットルバルブ
13 点火プラグ
18 上流触媒コンバータ
20 触媒前センサ
22 クランク角センサ
23 アクセル開度センサ
100 電子制御ユニット(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量変更する燃料噴射量変更制御を実行する燃料噴射量変更制御手段と、
前記所定の対象気筒に関する出力変動を表す値を導出する値導出手段と、
該値導出手段により導出された前記燃料噴射量変更制御の非実行時の値と、該値導出手段により導出された前記燃料噴射量変更制御の実行時の値との比較結果に基づいて、前記所定の対象気筒に関する空燃比の異常および該異常の種類を検出する検出手段と
を備えた、多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
【請求項2】
前記非実行時の値は、前記燃料噴射量変更制御の実行の直前または直後における前記所定の対象気筒に関する出力変動を表す値である、請求項1に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
【請求項3】
前記燃料噴射量変更制御手段は、前記燃料噴射量変更制御として、前記所定の対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量増量変更する燃料噴射量増量制御を実行し、
前記検出手段は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きにリッチ異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリッチ異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きにリーン異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリーン異常であると判定する判定部を含む、請求項1または2に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
【請求項4】
前記燃料噴射量変更制御手段は、前記燃料噴射量変更制御として、前記所定の対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量減量変更する燃料噴射量減量制御を実行し、
前記検出手段は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きにリッチ異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリッチ異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きにリーン異常判定用所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常はリーン異常であると判定する判定部を含む、請求項1または2に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
【請求項5】
排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるように空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段をさらに備え、
前記燃料噴射量変更制御手段は、該空燃比フィードバック制御が実行されているとき、前記燃料噴射量変更制御として、前記燃料噴射量増量制御を実行し、
前記検出手段の前記判定部は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きに第1所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリッチ側にずれている異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きに第2所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリーン側にずれている異常であると判定する、請求項3に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
【請求項6】
排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるように空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段をさらに備え、
前記燃料噴射量変更制御手段は、該空燃比フィードバック制御が実行されているとき、前記燃料噴射量変更制御として、前記燃料噴射量減量制御を実行し、
前記検出手段の前記判定部は、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が小さくなる向きに第3所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリッチ側にずれている異常であると判定し、これに対して、前記実行時の値が前記非実行時の値に対して前記所定の対象気筒に関する出力変動が大きくなる向きに第4所定量を超える量異なるとき、該所定の対象気筒に関して空燃比の異常があって該異常は該所定の対象気筒に関する空燃比が前記所定の目標空燃比からリーン側にずれている異常であると判定する、請求項4に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11204(P2013−11204A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143416(P2011−143416)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】