説明

多用途車輛のフレームにエンジンを取り付けるためのデバイス

【課題】本発明は、農業用又は産業用の多用途車輛のフレーム(12)にエンジン(38)を取り付けるためのデバイスに関する。このデバイスは、エンジン(38)及びフレーム(32)を含む。フレーム(12)は、互いから間隔が隔てられて配置された二つのフレームエレメント(14、16)を有する。例えばギヤボックス(22)及び/又は車輛アクスル(34)等の多用途車輛の別の構成要素をフレームエレメント(14、16)に取り付けることができる。更に、本発明は、農業用又は産業用の多用途車輛に関する。
【解決手段】エンジン(38)又はエンジンハウジング(40)に外力が加わらないようにするため、エンジンハウジング(40)の側面(46)の少なくとも一つの領域にはエンジン(38)の取り付け構造(48、52、54、58)が形成され、この取り付け構造(48、52、54、58)だけを使用して二つのフレームエレメント(14、16)にエンジン(38)を取り付けることができるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用又は産業用の多用途車輛のフレームにエンジンを取り付けるためのデバイスに関する。このデバイスは、エンジン及びフレームを含む。フレームは、互いから間隔が隔てられて配置された二つのフレームエレメントを有する。例えばギヤボックス及び/又は車輛アクスル等の多用途車輛の別の構成要素をフレームエレメントに取り付けることができる。更に、本発明は、農業用又は産業用の多用途車輛に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に言及した種類のエンジン懸架システム又はエンジン取り付けシステムが当該技術で長い間周知であった。例えば、エンジンを車輛の負荷支持シャシーに、振動を遮断するように、又は固定的に即ち剛性に取り付けることが一般的に行われてきた。このようなシャシーは、通常は、複数の連結エレメントによって互いに連結された左側フレーム半部及び右側フレーム半部を含む。従って、フレーム構造は、撓み剛性であり且つ捩じり剛性である。振動を遮断するようにエンジンがフレームに取り付けられている場合には、一般的には、エンジンに外力が加わらない。
【0003】
別の態様では、ブロック設計と呼ばれる設計が周知である。この設計は、一般的には、高性能トラクターで使用される。この場合、エンジンは、前アクスル又は前アクスル支持ブロックと、ギヤボックス又はギヤボックスフレームとの間に負荷支持エレメントとして取り付けられる。このような構成では、エンジンは、従って、シャシーと不可分に一体化される。その結果、作動中にエンジンに加わる外力は、特に、車輛がオフロードを走行する場合及び/又はオフロードで仕事を行う場合に非常に大きい。詳細には、農業用トラクターに連結された鋤で農場を耕す場合、農業用トラクターに大きな外力が加わり、こうした外力がエンジン又はエンジンハウジングに加わるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、上述の問題点を解決する、冒頭に言及した種類のデバイスを開発するという目的に基づくものである。詳細には、冒頭に言及した問題点の少なくともほとんどを解決する、エンジンをフレームに取り付ける手段を開発しようとするものである。詳細には、エンジンを取り付けるための新規な手段は、外力がエンジン又はエンジンハウジングにほとんど加わらないようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的は、本発明に従って、請求項1に記載の教示の手段によって達成される。本発明のこの他の有利な改良及び開発は、従属項に記載してある。
本発明によれば、冒頭に言及した種類のデバイスは、エンジンハウジングの側面の少なくとも一つの領域にエンジンの取り付け構造が形成され、この取り付け構造だけを使用して二つのフレームエレメントにエンジンを取り付けることができるように形成されている。
【0006】
基本的には、エンジンハウジングの少なくとも二つの側部を、これらの側部がエンジンの取り付け構造を各々形成するように形成することも考えられ、エンジンハウジングを二つのフレームエレメントにこれらの取り付け構造だけを使用して取り付けることができる。更に、エンジンの中央領域に本質的に環状設計のフランジ領域を設けることができる。このフランジ領域により、エンジンを二つのフレームエレメントに取り付けることができる。環状設計のフランジ領域は、車輛の長さ方向軸線又はエンジンの長さ方向軸線と同心に配置されていてもよいし、クランクシャフトの長さ方向軸線に対して垂直に配置された平面内に配置されていてもよい。
【0007】
換言すると、エンジンは、二つのフレームエレメントに対して自己支持態様で、しかし本質的に剛性で連結される。この連結は、それ自体、エンジンの重量及びエンジンが発生する機械的トルクをフレームに関して支持するのに役立つ。このような取り付け手段は、例えば、エンジンハウジングのフライホイール側に形成されたカラー又はフランジに適合する対応する取り付け構造を備えた片持ち梁式連結部によって実施できる。このような手段によってエンジンを二つのフレームエレメントに取り付けることにより、有利には、主に車輛のシャシーに作用する外部からの力及び負荷がエンジンやエンジンブロックに加わらないようにする。こうした力は、エンジンブロックに撓み負荷及び捩じり負荷を作用する。エンジンと二つのフレームエレメントとの間が固定的に連結されるため、シャシー又はフレームの捩じり剛性が向上する。
【0008】
一つの好ましい実施例によれば、エンジンハウジングの側面は、エンジンのフライホイール側であるか或いはエンジンの反対端である。換言すると、取り付け構造が形成されたエンジンハウジングの側面は、フライホイールが設けられた場所である。別の態様では、取り付け構造は、エンジンのフライホイール側とは反対側に設けられていてもよく、又はエンジンの対応する端部にも設けられていてもよい。この例示の実施例では、エンジンののフライホイール側(又はエンジンの反対端)だけが二つのフレームエレメントに取り付けられているため、フレームエレメントに取り付けられていないエンジンの他端の夫々は自由に懸架されている。この理由により、取り付け構造は、エンジンの傾けモーメント又はトルクを支持できるように形成されるべきである。
【0009】
別の実施例では、エンジンハウジングの側面は、エンジンのクランクシャフトの長さ方向軸線に対して本質的に垂直に配向される。従って、これにより、上述のように環状取り付け構造が形成される。これは、例えばエンジンの中央領域に設けられる。これにより、エンジンの中央を、即ちバランスがとれた態様で二つのフレームエレメントに取り付けることができる。
【0010】
別の変形例によれば、エンジンハウジングの側面は、クランクシャフトの長さ方向軸線と本質的に平行に配置された平面である。この平面は、好ましくは、水平に又は垂直に配向される。この変形例によれば、例えば、フレームエレメントに関して横方向に延びる領域をエンジンの下側に設けることができる。この領域は、フライホイール側、中央、又はエンジンのフライホイール側の反対側に配置されていてもよく、及び/又はエンジンの下側の最大約20%の領域に制限される。この場合、エンジンは、この取り付け構造を使用して二つのフレームエレメントに取り付けられる。
【0011】
特に、取り付け構造は、好ましくは、エンジンハウジングの周囲に亘って延びるハウジング強化体を有する。ハウジング強化体は、フライホイールハウジングに、即ちフライホイールが配置されたエンジンハウジングの領域に設けることができる。このハウジング強化体の寸法は、少なくともエンジンの重量及びこのエンジンが発生するトルク並びに車輛の作動時に通常発生し、エンジンに作用する加速力を支持でき、又はフレームエレメントに関して放散できるように定めることができる。この場合、ハウジング強化体は、詳細には、エンジンの外側に包囲構造が設けられるという意味で本質的に環状の又は矩形のハウジング強化体が設けられた場合、エンジンハウジングの周囲に亘って延びる。
【0012】
一つの好ましい実施例によれば、取り付け構造は、フレームエレメントに対して片持ち梁式連結部を形成するように設計されている。別の態様によれば、又は追加として、エンジンは、フレームから取り付け構造によって自己支持態様で懸架される。
【0013】
取り付け構造は、少なくとも一つのフランジ部分を備えていてもよい。別の態様によれば、少なくとも一つのフランジ部分は、取り付け構造に適合できる。少なくとも一つのフランジ部分をフレームエレメントに取り付けることができる。換言すると、少なくとも一つのフランジ部分はエンジンの取り付け構造を形成し、このフランジ部分によりエンジンをフレームエレメントに取り付けることができる。少なくとも一つのフランジ部分は、一部品で提供できる。前記フランジ部分は、例えば、鋳造エンジンブロックに設けることができる。別の態様では、エンジンをフレームエレメントに取り付けるフランジ部分をエンジンの取り付け構造に適合できる。
一つの特に好ましい実施例によれば、エンジンは、取り付け構造を使用して二つのフレームエレメント間に取り付けることができる。エンジンを二つのフレームエレメントに対してこのように空間的に配置することは、例えば、本出願人の6000シリーズのトラクターから周知である。前記シリーズでは、二つのフレームエレメントが前アクスルからギヤボックス又はディファレンシャルのハウジングまで連続的に延びている。エンジンが二つのフレームエレメント間に取り付けられるため、多用途車輛のフレームは、追加として、更に剛性に形成されていてもよい。
【0014】
一つの好ましい実施例によれば、取り付け構造は、多用途車輛のフレームに作用する外力が、例えば、多用途車輛に適合した器具からエンジンに加わらないように多用途車輛のフレームに取り付けられる。これは、例えば、上文中に説明したように、エンジン用の片持ち梁式懸架手段を使用して実施される。
【0015】
取り付け構造は、好ましくは、エンジン自体の重量、及びエンジンの重量及び/又はエンジンがフレームに関して発生する機械的トルクにより生じる傾けモーメントを支持するのに使用できるように実施される。
【0016】
フレームエレメントは、好ましくは本質的に細長い設計の、好ましくは車輛の長さ方向と平行に配置された負荷支持構成要素を有する。このようなフレームエレメントは、本出願人の上述の6000シリーズのトラクターで使用される。
【0017】
取り付け構造又は取り付け構造にしっかりと取り付けられたフランジ部分は、フレームエレメントにしっかりと取り付けられている。その結果、エンジンは、フレームエレメント又は車輛のフレームにしっかりと連結される。エンジンの振動及び揺動は、この実施例によれば、車輛のフレームに直接的に伝達される。
【0018】
別の態様では、一つの特に好ましい実施例によれば、取り付け構造は、エンジンがフレームエレメントに対して振動でき及び/又は揺動でき、好ましくは減衰できるように実施される。これは、フランジ部分又は取り付け構造のスロット形状の又は細長い切欠きによって実施できる。
【0019】
特に有利な方法では、取り付け構造がエンジンハウジング内に又はエンジンハウジング内に一体であるように形成された場合、エンジンの取り付けに必要な構成要素の点数を減少できる。エンジンそれ自体は、フレームエレメントに直接的に連結されているか或いは、フレームエレメントに取り付け構造を使用して取り付けられる。
【0020】
農作業又は産業用の多用途車輛に関し、冒頭に言及した問題点は、請求項16に記載の特徴によって解決される。従って、農作業又は産業用の多用途車輛は、フレーム及びエンジンを有する。フレームは、互いから間隔が隔てられて配置された二つのフレームエレメントを有する。多用途車輛のこの他の構成要素、例えばギヤボックス及び/又は車輛アクスルをフレームエレメントに取り付けることができる。本発明による多用途車輛は、請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の、エンジンを取り付けるためのデバイスを備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明による多用途車輛には、請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の、エンジンを取り付けるためのデバイスが設けられているため、当業者は、請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の本発明のデバイスの知識が与えられた場合、及びこれに関してなされた言及の知識が与えられた場合には、この技術を、農作業又は産業用の多用途車輛に適用できるであろう。繰り返しを避けるため、本説明の上述の部分を参照する。
【0022】
現在、本発明の教示を有利な形にし、開発する様々な方法が可能である。これに関し、請求項1に従属する請求項を参照し、添付図面を参照してなされた本発明の好ましい例示の実施例の以下の説明を参照する。本教示の一般的に好ましい実施例及び開発を、添付図面を参照してなされた本発明の例示の好ましい実施例の説明と関連して説明する。添付図面には、各場合が概略に示してある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1の例示の実施例の平面図である。
【図2】図2は、本発明の第2の例示の実施例の平面図である。
【図3】図3は、図1による例示の実施例と同様の本発明の別の例示の実施例の斜視図である。
【図4】図4は、図3の例示の実施例を別の角度から見た斜視図である。
【図5】図5は、本発明の更に別の例示の実施例の側面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面に亘り、同じ又は同様の構成要素に同じ参照番号が付してある。
図1は、農業用多用途車輛、特にトラクター(図示せず)のシャシー10の概略平面図である。トラクターは、フレーム設計のトラクターである。フレーム12は、互いから間隔が隔てられて配置された二つのフレームエレメント14、16を有する。これらのフレームエレメントは、トラクターの前領域からトラクターの後領域まで延びる。二つのフレームエレメント14、16は、車輛の長さ方向軸線18と本質的に平行に配置されている。二つのフレームエレメント14、16が夫々取り付けられた連結エレメント20がトラクターの前領域に設けられている。二つのフレームエレメント14、16は、トラクターの後領域に設けられたギヤボックスハウジング22に取り付けられている。ギヤボックスハウジング22は図1には概略にしか示しておらず、動力シフトトランスミッション24と、ディファレンシャルギヤ26と、動力取り出しギヤ28とを含む。図1にはこれらのギヤ機構は示されておらず、単に参照番号が付してあるだけであるが、前記ギヤ機構は、ほぼギヤボックスハウジング22内に配置されている。ギヤボックスハウジングは、複数のハウジング部品で形成されている。各場合において、駆動シャフト(図示せず)がディファレンシャルギヤ26から横方向に延びている。これらの駆動シャフトは、アクスルが取り付けられた対応するギヤボックスハウジングを介してトラクターの後輪30まで延びている。これは、これらの後輪を駆動するためである。動力取り出しギヤ28に回転的に連結された動力取り出し部に参照番号32が付してある。この動力取り出し部により、トラクターに取り付けることができる器具(図示せず)を機械的に駆動できる。
【0025】
振子ベアリングを持つ、トラクターの前アクスル34が概略に示してある。この前アクスルは、連結エレメント20に懸架されている。前輪36が前記前アクスル34に回転自在に取り付けられている。トラクターのエンジン38は、フレーム12即ちフレームエレメント14、16に取り付けられている。このエンジンは、内燃エンジンの形態で実施される。エンジン38は、エンジンハウジング40と、フライホイール42と、駆動シャフト44とを有する。駆動シャフト44は、動力シフトトランスミッション24にカルダンシャフト(図示せず)を介して連結されている。
【0026】
本発明によれば、エンジンハウジング40の側面46の少なくとも一つの領域は、これにより、エンジン38の取り付け構造48が形成されるように形成される。エンジン38は、本発明の方法では、この取り付け構造48だけで二つのフレームエレメント14、16に取り付けられている。これに関し、特にエンジン38の前領域50は、取り付け構成要素にもフレーム12及び/又はフレームエレメント14、16にも全く連結されておらず、即ちフレームに自己支持態様で取り付けられている。
【0027】
図1のエンジンハウジング40の側面46は、フライホイール42が配置されたエンジン38の側部である。換言すると、エンジンハウジング40の側面46は、ギヤボックスハウジング22又は動力シフトトランスミッション24に面するエンジン38の側部である。
【0028】
一つの例示の実施例(図示せず)では、図1のエンジンハウジング40のフライホイール側に形成された取り付け構造48をエンジン38の前領域50に形成してもよい。この例示の実施例によれば、エンジン38は、エンジン38の前領域50のところで一つの取り付け構造だけを使用して二つのフレームエレメント14、16に取り付けられる。
【0029】
図1の例示の実施例によれば、エンジンハウジング40の側面46は、クランクシャフト(図示せず)の長さ方向軸線、又は駆動シャフト44、又はトラクターの長さ方向軸線18に対して本質的に垂直に配向されている。
【0030】
取り付け構造48は、エンジン38のフライホイール42のハウジングに形成されたハウジング強化体を有する。図1に示す例示の実施例によれば、取り付け構造48は、エンジンハウジング40と一体であるか或いは一部品をなすように形成されている。取り付け構造48はフライホイール42の周囲に亘って延びており、即ちフライホイール42の領域でエンジンハウジング40の周囲に亘って延びている。従って、取り付け構造48は、フレームエレメント14、16とともに片持ち梁式連結部を形成するように形成される。図1によるエンジン38は、取り付け構造48を使用してフレーム12即ちフレームエレメント14、16から自己支持態様で懸架されている。
【0031】
エンジン38が取り付け構造48を使用して二つのフレームエレメント14、16に取り付けられているため、トラクターのフレーム12は、更に剛性に形成される。トラクターのフレーム12は、詳細には、フレームエレメント14、16と、連結エレメント20と、フレームエレメント14、16が取り付けられたギヤボックスハウジング22の部分とを含む。
【0032】
エンジン38を多用途車輛のフレーム12に取り付ける手段は、有利には、トラクターのフレーム12に作用する外力がエンジン28自体に加わらないように形成される。エンジン38は、実際には、取り付け構造48を使用して二つのフレームエレメント14、16にしっかりと取り付けられる。しかしながら、フレーム12に撓み負荷や捩じれ負荷が加わった場合、及びその結果フレーム12の立体構造が変形した場合、これがエンジン38に加わらず、エンジン38はこれにより変形することがない。従って、車輛に対する負荷支持機能を提供するようにエンジンハウジングを設計する必要はない。これにより、上述のブロック設計のエンジンで必要とされた安定性をエンジンハウジングに提供する必要がないため、費用の低減がなされる。
【0033】
取り付け構造48は、フレーム12即ちフレームエレメント14、16に加わるエンジン38自体の重量及びエンジン38が発生したトルクを支持するのに使用されるように形成される。エンジンの懸架により作用し、エンジン38の重量により発生するエンジン38の傾けモーメント即ちトルクもまた、取り付け構造48によって支持される。トラクターの加速力は、垂直方向及び/又は水平方向に作用する。この加速力は、設けられたアクスル懸架システムとは無関係に、特に過酷な農作業を行う場合に生じ、取り付け構造48によってフレーム12に関して支持され又は吸収される。
【0034】
図2は、変形例の例示の実施例の概略平面図を示す。この図では、フレーム12及びこのフレームに取り付けられた構成要素は、図1の例示の実施例と同様の態様で実施される。しかしながらこの例示の実施例では、エンジンハウジング40のフライホイール側にはファスニング構造が形成されておらず、その代り、この実施例では、フレームエレメント14、16に面するエンジンハウジング40の二つの側面の各々の中央領域に取り付け構造52が形成されている。従って、エンジンは一つのファスニング構造52を使用してフレームエレメント14に取り付けられている。エンジンは、他のファスニング構造52を使用してフレームエレメント16に取り付けられている。従って、図2の二つのファスニング構造52は、フレームエレメント14、16の夫々に面するエンジンハウジング40の夫々の側面の中央領域だけを通って延びている。図2の平面図では、この例示の実施例において、ハウジング強化体がエンジン38の下側に設けられていることは示されていない。図2の取り付け構造52は本質的にU字形状をなして形成されており、即ちフレームエレメント14に面する側が本質的に垂直に延びており且つフレームエレメント16に面するエンジンハウジング40の側が本質的に垂直に延びている。二つの取り付け構造52はエンジン38の下側で連結され、別のハウジング強化体(図示せず)を形成する。
【0035】
図3及び図4は、各々、本発明の別の例示の実施例の斜視図を示す。この例示の実施例によれば、エンジンハウジング40の上部分即ち上領域だけが取り付け構造54の形態で形成されている。この取り付け構造54は、フライホイール42の領域に設けられている。取り付け構造54は、ハウジング強化体の形態で形成される。エンジンハウジング40又はエンジン38は、取り付け構造54を使用して二つのフレームエレメント14、16にしっかりと連結される。エンジンハウジング40は、エンジン38の側面46の下領域にフランジ部分(図示せず)を有する。このフランジ部分もまた、ハウジング強化体の形態で形成される。フレームエレメント14、16にしっかりと連結された連結エレメント56が二つのフレームエレメント14、16間を延びている。エンジンハウジング40のフランジ部分は、フランジによって連結されているか或いは連結エレメント56に取り付けられている。これに関し、エンジンハウジング40のフランジ部分は、連結エレメント56を介してフレームエレメント14、16にしっかりと取り付けられている。明瞭化を図る目的で、フレームエレメント40は、図4に破線で示してある。

図5は、エンジン38をフレーム12に取り付ける本発明の手段の別の例示の実施例の側面図である。この例示の実施例でも、互いから間隔が隔てられて配置された二つのフレームエレメント14、16、連結エレメント20、及びギヤボックスハウジング22がトラクターのフレーム12を形成する。この例示の実施例では、エンジンハウジング40の下側面の前領域は、エンジン38の取り付け構造58を形成するようになっている。この例示の実施例によれば、エンジン38は、この取り付け構造58だけを使用して二つのフレームエレメント14、16に取り付けられている。詳細には、この例示の実施例によれば、エンジン38又はエンジンハウジング40のオイルサンプには、エンジンをフレームエレメント14、16に取り付けるための取り付け構造としても役立つハウジング強化体が設けられている。従って、エンジンハウジング40の下側、特に矢印60を付したエンジンハウジング40の側面は、水平方向に配向された平面に配置される。この例示の実施例では、エンジンハウジング40の側面60は、従って、駆動シャフト44の長さ方向軸線と本質的に平行に配置されており、又はエンジン38のクランクシャフト(図示せず)の長さ方向軸線と本質的に平行に配置されている。この場合、取り付け構造58は、二つのフレームエレメント14、16に直接的に連結されていてもよい。別の態様では、フランジを取り付け構造58に形成し、ここに別のフランジ部分(図5には示さず)をしっかりと取り付けてもよい。この別のフランジ部分は、いずれの側に設けられていてもよく、夫々のフレームエレメント14又は16にしっかりと取り付けられていてもよい。
【0036】
結論として、上文中に説明した例示の実施例は、特許請求の範囲に定義した教示を説明するのに過ぎず、これを例示の実施例に限定しようとするものではないということに着目されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
10 シャシー
12 フレーム
14、16 フレームエレメント
18 長さ方向軸線
20 連結エレメント
22 ギヤボックスハウジング
24 動力シフトトランスミッション
26 ディファレンシャルギヤ
28 動力取り出しギヤ
30 後輪
32 動力取り出し部
34 前アクスル
36 前輪
38 エンジン
40 エンジンハウジング
42 フライホイール
44 駆動シャフト
46 側面
48 取り付け構造
50 前領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用又は産業用の多用途車輛のフレームにエンジンを取り付けるためのデバイスであって、エンジン(38)及びフレーム(32)を含み、前記フレーム(12)は、互いから間隔が隔てられて配置された二つのフレームエレメント(14、16)を有し、例えばギヤボックス(22)及び/又は車輛アクスル(34)等の前記多用途車輛の別の構成要素を前記フレームエレメント(14、16)に取り付けることができる、デバイスにおいて、
前記エンジンハウジング(40)の側面(46)の少なくとも一つの領域には、前記エンジン(38)の取り付け構造(48、52、54、58)が形成され、この取り付け構造(48、52、54、58)だけを使用して二つのフレームエレメント(14、16)にエンジン(38)を取り付けることができるように形成されている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記エンジンハウジング(40)の前記側面(46)は、前記エンジン(38)のフライホイール側であるか或いは前記エンジン(38)の反対端(50)である、ことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデバイスにおいて、
前記エンジンハウジング(40)の前記側面(46)は、前記エンジン(38)の前記クランクシャフトの長さ方向軸線に対して本質的に垂直方向に配向されている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載のデバイスにおいて、
前記エンジンハウジング(40)の側面(60)は、前記クランクシャフトの長さ方向軸線に対して本質的に平行に配置された平面であり、好ましくは、水平に又は垂直に配向されている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)は、前記エンジンハウジング(40)の周囲に亘って延びるハウジング強化体を有する、ことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)は、前記フレームエレメント(14、16)に対して片持ち梁式連結部を形成するように設計されている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記エンジン(38)は、前記フレーム(12)から、前記取り付け構造(48、52、54、58)によって自己支持態様で懸架されている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)は、少なくとも一つのフランジ部分を有し、又は少なくとも一つのフランジ部分を前記取り付け構造(48、52、54、58)に適合でき、前記少なくとも一つのフランジ部分を前記フレームエレメント(14、16)に取り付けることができる、ことを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記エンジン(42)は、前記取り付け構造(48、52、54、58)を使用して前記二つのフレームエレメント(14、16)間に取り付けられることができ、このようにして、前記多用途車輛の前記フレーム(12)を更に剛性にできる、ことを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)は、例えば前記多用途車輛に適合した器具から前記多用途車輛の前記フレーム(12)に作用する外力が前記エンジン(38)に加わらないように前記多用途車輛の前記フレーム(12)に取り付けられている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)は、前記エンジン(38)自体の重量及び/又は前記エンジン(38)により前記フレーム(12)に加わるトルクを支持するように形成されている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記フレームエレメント(14、16)は、本質的に細長い設計の、好ましくは前記車輛の前記長さ方向(18)と平行に配置された負荷支持構成要素を有する、ことを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)又は前記取り付け構造(48、52、54、58)にしっかりと連結されたフランジ部分は、前記フレームエレメント(14、16)にしっかりと取り付けられている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)は、前記フレームエレメント(14、16)に対する前記エンジン(38)の振動及び/又は揺動を、好ましくは減衰できる、ことを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項1乃至14のうちのいずれか一項に記載のデバイスにおいて、
前記取り付け構造(48、52、54、58)は、前記エンジンハウジング(40)内に又は上に一体成形されている、ことを特徴とするデバイス。
【請求項16】
フレーム(12)及びエンジン(38)を持つ農業用又は産業用の多用途車輛であって、前記フレーム(12)は、互いから間隔が隔てられて配置された二つのフレームエレメント(14、16)を有し、前記多用途車輛の別の構成要素、例えばギヤボックス(22)及び/又は車輛アクスル(34)を前記フレームエレメント(14、16)に取り付けることができる、車輛において、
エンジン(38)を取り付けるための請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載のデバイスを備えている、ことを特徴とする車輛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−298396(P2009−298396A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−113133(P2009−113133)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
【Fターム(参考)】