説明

多軸コンバインドサイクル発電設備

【課題】本発明は、多軸コンバインドサイクル発電設備においてガスタービン出力と蒸気タービン出力の出力比を変更する運転方法を提供するものである。
【解決手段】ガスタービン1およびガスタービン発電機2と、前記ガスタービンの排ガスを熱源とする排熱回収ボイラ3と、該排熱回収ボイラで発生する蒸気を作動蒸気とする蒸気タービン4と、該蒸気タービンによって駆動される蒸気タービン発電機5とを備えた多軸型のコンバインドサイクル発電設備において、前記ガスタービン1と蒸気タービン4の出力比を変更可能に構成したことを特徴とする多軸コンバインドサイクル発電設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸型コンバインドサイクル発電設備における出力制御の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンと蒸気タービンの出力の出力比に関するものとしては、排気再燃プラントにおけるガスタービンの急激な出力変化に伴う蒸気タービンの出力調整に関するもの(特許文献1)、または複数台のガスタービンが設置されたコンバインドサイクル発電設備において、ガスタービン出力のアンバランスにより異常高温となる場合への適切な冷却方法(特許文献2)が既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−47078号公報
【特許文献2】特開平10−339109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に多軸型のコンバインドサイクル発電設備では、複数台のガスタービン及びガスタービン発電機、またこれと同数台の排熱回収ボイラ、さらに複数台の蒸気タービンと蒸気タービン発電機から構成され、ガスタービンからの排ガスを利用し、排熱回収ボイラにて蒸気を生成し、その蒸気により蒸気タービンにおける発電を行っているため、蒸気タービンの出力は、ガスタービンからの排ガス熱量の変化に追従する。
【0005】
また多軸型のコンバインドサイクル発電設備においてはガスタービンと蒸気タービンのそれぞれに発電機を持たせおり、それぞれからの発電によって発電設備全体としての出力を達成する。
【0006】
さらに発電設備においては、構成機器の許容容量や発電設備の発電能力の点から定格出力が決定され、定格出力を越えないようにガスタービン側および蒸気タービン側にそれぞれロードリミットを設定しておく。
【0007】
このため、ガスタービンと蒸気タービンの出力比のバランスが崩れた場合、つまり発電設備の定格出力におけるガスタービンと蒸気タービンの出力の割合に比べ、ガスタービン出力が占める割合が大きくなった場合や蒸気タービン出力の占める割合が大きくなった場合には、ガスタービンと蒸気タービンのどちらか片方が先にロードリミットに到達することにより、もう片方が部分負荷の運転状態となり、発電設備としての定格出力に到達しない問題がある。即ち、ガスタービン出力が計画より過多となる場合や蒸気タービン出力が計画より過少の場合、蒸気タービン側が部分負荷の運転状態にも関わらず、ガスタービン側がロードリミットに到達してしまい、それ以上の負荷上昇が不可能となる。また、蒸気タービン出力が計画より過多となる場合やガスタービン出力が計画より過少の場合、ガスタービン側が部分負荷の運転状態で、蒸気タービン側がロードリミットに到達してしまい、それ以上の負荷上昇が不可能となる。
【0008】
このように、ガスタービンと蒸気タービンの出力比がアンバランスとなることで、発電設備全体として定格出力未達となる問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記のガスタービンと蒸気タービンとの出力比のアンバランスを解消するコンバインドサイクル発電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明はガスタービンおよびガスタービン発電機と、前記ガスタービンの排ガスを熱源とする排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで発生する蒸気を作動蒸気とする蒸気タービンと、該蒸気タービンによって駆動される蒸気タービン発電機とを備えた多軸型のコンバインドサイクル発電設備において、前記ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガスタービンと蒸気タービンとの出力比のアンバランスを解消するコンバインドサイクル発電設備を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、蒸気タービン(以下「ST」と略す)のロードリミット到達によりガスタービン(以下「GT」と略す)が部分負荷の運転状態となる場合において、以下の各運転方法もしくはその組合せによりGTとSTの出力比を変更するものである。
(1)STへ流入する蒸気量を調節する蒸気加減弁の開度を小さくすることにより、排熱回収ボイラからの発生蒸気量を減少させる運転方法
(2)タービンバイパス弁の開度を調整することにより、STへの蒸気流入量の一部をバイパスさせる運転方法
(3)排熱回収ボイラからSTまでの蒸気配管に設置されている大気放散弁の開度を調節することによりSTへの蒸気流入量の一部を大気放出する運転方法
(4)STへ流入する蒸気量を調節する蒸気加減弁の開度を小さくすることにより、排熱回収ボイラからの発生蒸気量を減少させる運転方法
(5)GT排ガスをバイパスさせる設備を有する場合、排ガスの一部をバイパスさせることにより、排熱回収ボイラへ流入する排ガス流量を低減することで、排熱回収ボイラからの発生蒸気量を減らす運転方法
(6)復水器の真空調節弁の開度を調節するか、もしくは復水器の冷却水量を調節することにより、蒸気タービンの排気圧力を調整する運転方法
またGTのロードリミット到達によりSTが部分負荷の運転状態となる場合においては、以下の各運転方法もしくはその組合せによりGTとSTの出力比を変更するものである。
(1)排熱回収ボイラの排ガスダンパの開度を小さくすることにより、GT排気圧力損失を増加させ、GT出力を抑える運転方法
(2)ガスタービンへの吸込空気量を少なくすることで、GTの排気温度を下げて、それに伴いGT燃焼温度が下がることにより、GT出力を抑える運転方法
(3)GT燃焼器へ水噴射もしくは蒸気噴射を行うことにより、燃焼温度を下げてGT出力を抑える運転方法
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図1を参照して説明する。
【0014】
本実施の形態における多軸型コンバインドサイクル発電設備は、大きく分けてガスタービン1とガスタービン発電機2,ガスタービンからの排ガスにより蒸気を生成する排熱回収ボイラ3と、生成された蒸気を使用する蒸気タービン4および蒸気タービン発電機5から成る。
【0015】
ガスタービン1においては、空気圧縮機6と空気圧縮機へ空気をおくる吸込空気系15および吸込空気量を調節する吸込空気調節装置24を備え、空気圧縮機から圧縮空気を導入する燃焼器7とこの燃焼器に燃料を送る燃料供給系16、水もしくは蒸気噴射を行う場合に水・蒸気を送る水・蒸気噴射系17を備える。
【0016】
ガスタービンからの排ガスは、排ガスバイパス設備9によって排熱回収ボイラ側ダクト系18と排熱回収ボイラをバイパスし煙突へ送るバイパスダクト系19に分かれる。また排熱回収ボイラ側ダクト系18には、排ガス流量を調節する排ガスダンパ10が設置させる。
【0017】
排熱回収ボイラ3にて生成された蒸気は、蒸気供給系20を通り蒸気タービン4に送られ、復水器8にて蒸気タービン4で使用した蒸気を回収し、復水器8にて凝縮された水は、給水系22を通り再度排熱回収ボイラ3へ送られる。
【0018】
一方で排熱回収ボイラ3からの発生蒸気を蒸気タービンへ接続する蒸気供給系は、蒸気を大気へ放出する大気放散弁13を備え、また蒸気タービンへの流入量を調節する蒸気加減弁11、蒸気タービンをバイパスするバイパス系21およびその流量を調節するバイパス弁12を備える。
【0019】
また上記の復水器8においては、蒸気タービンの排圧を調節する復水器真空調節弁14を備え、復水器内の冷却を行う冷却水系23を有する。
【0020】
上記構成の多軸型コンバインドサイクル発電設備において、空気圧縮機6にて圧縮した空気を燃焼器7に導入し、燃焼器7にて燃料供給系16から供給される燃料と共に燃焼し、ガスタービン1を回転させ、ガスタービン発電機2にて発電を行う。さらにガスタービン1からの排ガスを利用し排熱回収ボイラ3にて蒸気を生成し、蒸気供給系20にて蒸気タービン4へ供給し、蒸気タービン4を回転させることで蒸気タービン発電機5にて発電を行う。また蒸気タービン4で仕事を終えた蒸気は、復水器8にて凝縮水となり、給水気系22を通り排熱回収ボイラ3へ戻される。
【0021】
上述の一連の動作の繰り返しにより、ガスタービン1と蒸気タービン4にて仕事を行い、ガスタービン発電機2と蒸気タービン発電機5にて定格の電力を供給する。
【0022】
この際にガスタービン発電機2と蒸気タービン発電機5の間に出力比のアンバランスが生じた場合などにおいては、定格出力達成のために出力比を変更することでバランスを維持することが必要となる。
【0023】
そのために、本発明の形態においては、蒸気タービン発電機5の出力を変更することで出力比を調節する場合、まず蒸気供給系20に備えられている蒸気加減弁11の開度を変えることによって蒸気タービン3へ流入する蒸気量を調節することで、蒸気タービン4への駆動蒸気量を減少させ、ガスタービン発電機2の出力を変えずに蒸気タービン発電機5の出力を減少させ、ガスタービン発電機との出力比を変えることが可能となる。
【0024】
図2には別の実施例を示し、蒸気供給系20から蒸気タービン4に供給される蒸気の一部を蒸気タービンバイパス系21に設置されている蒸気タービンバイパス弁12にて復水器8へバイパスさせることで、図1と同様の効果が得られる。
【0025】
図3では別の実施例を示し、排熱回収ボイラ3の出口に設置させている大気放散弁13を開し、蒸気の一部を大気へ放出することで、図1と同様の効果が得られる。
【0026】
図4では別の実施例を示し、復水器8に設置されている復水器真空調節弁14を開することで、もしくは冷却水系23にて供給される冷却水量を変え、蒸気タービンの排圧を調節することで、図1と同様の効果が得られる。
【0027】
図5では別の実施例を示し、ガスタービン1からの排ガスを排ガスバイパス設備9を使用することで排熱回収ボイラ3をバイパスさせて、排熱回収ボイラ3からの発生蒸気量を調節することで、図1と同様の効果が得られる。
【0028】
次にガスタービン1の出力を変更することで出力比を調節する場合、図6の実施例の通り、俳ガスダンパ10の開度を変え、ガスタービンの排気圧力損失を調節することで、ガスタービン発電機2の出力を変えて、蒸気タービン発電機との出力比を変えることが可能となる。
【0029】
図7では別の実施例を示し、吸込空気調節装置24を調節し、空気圧縮機6を通り燃焼器7にて燃焼される空気量を調節することで、図6と同様の効果が得られる。
【0030】
図8では別の実施例を示し、水・蒸気噴射系17から燃焼器7へ水もしくは蒸気噴射を行うことで、図6と同様の効果が得られる。
【0031】
本発明では、以上の実施例の何れか、またはその組合せによりガスタービン発電機2と蒸気タービン発電機5との出力比を変更する運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】多軸型コンバインドサイクル発電設備の実施形態を示す概略図。
【図2】多軸型コンバインドサイクル発電設備の他の実施形態を示す概略図。
【図3】多軸型コンバインドサイクル発電設備の他の実施形態を示す概略図。
【図4】多軸型コンバインドサイクル発電設備の他の実施形態を示す概略図。
【図5】多軸型コンバインドサイクル発電設備の他の実施形態を示す概略図。
【図6】多軸型コンバインドサイクル発電設備の他の実施形態を示す概略図。
【図7】多軸型コンバインドサイクル発電設備の他の実施形態を示す概略図。
【図8】多軸型コンバインドサイクル発電設備の他の実施形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0033】
1…ガスタービン、2…ガスタービン発電機、3…排熱回収ボイラ、4…蒸気タービン、5…蒸気タービン発電機、6…空気圧縮機、7…燃焼器、8…復水器、9…排ガスバイパス設備、10…排ガスダンパ、11…蒸気加減弁、12…蒸気タービンバイパス弁、
13…大気放散弁、14…復水器真空調節弁、15…吸込空気系、16…燃料供給系、
17…水・蒸気噴射系、18…排熱回収ボイラ側ダクト、19…バイパスダクト系、20…蒸気供給系、21…蒸気タービンバイパス系、22…給水系、23…冷却水系、24…吸込空気調節装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンおよびガスタービン発電機と、前記ガスタービンの排ガスを熱源とする排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで発生する蒸気を作動蒸気とする蒸気タービンと、該蒸気タービンによって駆動される蒸気タービン発電機とを備えた多軸型のコンバインドサイクル発電設備において、
前記ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更可能に構成したことを特徴とする多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項2】
前記蒸気タービンへの蒸気流入量を減少させて蒸気タービン出力を下げ、ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項3】
前記蒸気流入量を減少させる手段として、蒸気加減弁の開度を調整して前記蒸気タービンへ流入する蒸気流量を減少させることを特徴とする請求項2に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項4】
前記蒸気流入量を減少させる手段として、前記蒸気タービンに供給される蒸気を蒸気タービン入口からバイパスさせることを特徴とする請求項2に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項5】
前記蒸気流入量を減少させる手段として、大気放散弁を開弁して排熱回収ボイラ出口から大気へ蒸気を排出することを特徴とする請求項2に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項6】
前記蒸気流入量を減少させる手段として、前記ガスタービンの排ガスの一部を排熱回収ボイラをバイパスさせることを特徴とする請求項2に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項7】
前記出力比を変更する手段として、蒸気タービンの排気圧力を低下させることで、ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更することを特徴とする請求項1に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項8】
前記出力比を変更する手段として、ガスタービンの排気圧力を変えることで、ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更することを特徴とする請求項1に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項9】
前記出力比を変更する手段として、ガスタービンの吸込空気量を変えることで、ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更することを特徴とする請求項1に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項10】
前記出力比を変更する手段として、ガスタービンの燃焼器へ水もしくは蒸気を噴射することで、ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更することを特徴とする請求項1に記載の多軸コンバインドサイクル発電設備。
【請求項11】
ガスタービンおよびガスタービン発電機と、前記ガスタービンの排ガスを熱源とする排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで発生する蒸気を作動蒸気とする蒸気タービンと、該蒸気タービンによって駆動される蒸気タービン発電機とを備えた多軸型のコンバインドサイクル発電設備の運転方法において、
前記ガスタービンと蒸気タービンの出力比を変更することを特徴とする多軸コンバインドサイクル発電設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−92721(P2007−92721A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286435(P2005−286435)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】