説明

多連型複合スイッチおよびその製造方法

【課題】旅客機のハイクラス用シートの姿勢を調節するスイッチ等の用途に用いられ、複数個の操作釦を確実に整列して配設できる多連型複合スイッチを提供する。
【解決手段】上ケース6の対向する壁面6A,6B間に保持された円形軸11に回動可能に嵌合・保持され、捻りコイルばね21により通常位置に付勢されたシーソー釦4A,4Bと、下部のガイド孔28の半円形部が円形軸11に係合して通常位置が決まるように圧縮コイルばね29により付勢されたプッシュ釦5A,5Bとが、それぞれの左第1押圧棒12Aおよび第2押圧棒14を介して配線基板8上の左第1押圧スイッチ9Aおよび第2押圧スイッチ10を動作させる多連型複合スイッチとすることにより、複数個の操作釦が整列した多連型複合スイッチ1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客機のハイクラス用シート等において、着座姿勢を調節するスイッチやその他の用途に用いられる多連型複合スイッチおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、旅客機や客船等のハイクラス用のシートやマッサージチェアの背もたれや足のせ台等の角度を変えて、着座姿勢を調節することが行われている。
【0003】
そして、これらの調節には、同じ操作釦の押す位置によってシートの背もたれや足のせ台の角度を大きくしたり小さくしたり加減する場合と、特定の操作釦を押すことによって標準の椅子としての姿勢やフラットなベッドの状態にする場合とがある。
【0004】
そして、前者の調節には1つの操作釦の押す位置によって電気信号を切り替えることができるシーソースイッチが使用され、後者の調節には押圧時にONとなるプッシュスイッチを使用することが多い。
【0005】
また、このようなシートの各種の姿勢調節用スイッチは1箇所に集めておく方が使用者に好都合であるので、調節用のシーソースイッチやプッシュスイッチは一列に並べて配置されることが多く、その際、表面に調節内容が表示される操作釦が装着される。
【0006】
このような目的に対して、従来は、特許文献1や特許文献2に記載されたような単体のシーソースイッチやプッシュスイッチを配線基板上に複数個並べて装着することにより対応していた。
【特許文献1】特開平6−73840号公報
【特許文献2】特開平10−92260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、単体のスイッチを配線基板上に複数個並べて半田付け等により装着する場合には、綺麗に並べて配置することは難しく、列が乱れたり、浮き上がって傾いたりするものがあると、表面に調節内容を表示した操作釦が不揃いになるので、配線基板に単体のスイッチを装着した後に確認や手直しをすることが必要であり、スイッチの装着作業に手間がかかっていた。
【0008】
また、シーソースイッチとプッシュスイッチで操作釦の装着方法が異なることも、操作釦の整列を難しくしていた。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、複数個のシーソースイッチの操作釦とプッシュスイッチの操作釦を確実に整列して配設することができ、並べられた複数個の操作釦が、通常状態において上面視・側面視ともに安定した配列状態であり、また操作時の感触が円滑である多連型複合スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の多連型シーソースイッチは、下面が開口部である直方体形状のケースと、ケースの上面視長手方向の略中心線上で開口部端面と平行に、両端部の壁面によりケース内に保持された剛性材料製の円形軸と、ケースの開口部を塞ぐように配設され、上面に複数個の押圧スイッチが配列・装着された配線基板と、複数個の押圧スイッチそれぞれに対応する位置において、ケースの天井面下面の筒状部により上下動可能に保持された複数個の第1押圧棒および少なくとも1つの第2押圧棒と、上部がケースの天井面上に露出して左右の操作面を形成し、両脚部の外側間隔が操作面の幅の1/2以上であるように、ケースの天井面を通って下方に突出した2つの脚部先端の円形孔が円形軸により回動可能に嵌合保持されるとともに、上面視円形軸を挟んで対称位置にある左右の操作面それぞれの下面に当接する各第1押圧棒の下方位置の配線基板上に押圧スイッチが配列されているシーソー釦と、円形軸の周囲にコイル部が配設され、ケースの天井面に円形軸の軸線を挟んで対称に設けられた角孔の端面に、両端のフック部が一定の付勢力で弾接すると同時に、両端のフック部の延長された先端部が各シーソー釦の操作面の下部に設けられた一対の係止部に弾接している捻りコイルばねと、上部がケースの天井面上に露出して一端部近傍がプッシュ操作面を形成し、支持部の幅がプッシュ操作面の幅の1/2以上である回動支持部により、他端部が上下動なく回動可能にケース上に支持されるとともに、ケースの天井面の長孔を通って下方に突出した、厚さが円形軸の直径よりも薄い脚部先端に設けられた、下部が円形軸の外径に係合する半円形でプッシュ操作時の押圧量に対応した長さの長円形であって、回動支持部を中心とする回動を規制するガイド孔の中を円形軸が貫通するとともに、プッシュ操作面の下面に弾接する第2押圧棒の下方位置の配線基板上に、押圧スイッチが配列されているプッシュ釦と、第2押圧棒の外周に巻かれて、第2押圧棒を介して各プッシュ釦の操作面下面を上方に押し、ガイド孔下部の半円形部が円形軸に係合するように付勢する圧縮コイルばねとで構成され、少なくとも1つのシーソー釦と少なくとも1つのプッシュ釦が決められた順序に配列されているものである。
【0011】
このような構成とすることにより、シーソー釦が剛性材料からなる1本の円形軸に嵌合保持され、通常状態において、ケースに設けられた角孔の端面に弾接している捻りコイルばねによって位置決めされるとともに、プッシュ釦も、圧縮コイルばねに押されてガイド孔下部の半円形部が同じ円形軸に係合するので、並べられた複数個のシーソー釦およびプッシュ釦は上面視・側面視ともに整列した配列状態とすることができ、更に操作時には、シーソー釦は円形軸を中心として円滑に回動して第1押圧棒を垂直に押し下げ、プッシュ釦は回動支持部を支点として動いて第2押圧棒を垂直に押し下げ、それぞれ押圧スイッチを真直ぐに押してスイッチ動作をさせ、その後にばねの力により元の位置に復帰するので、スイッチング動作も確実な多連型シーソースイッチを実現することができる。
【0012】
また、上記構成において、プッシュ釦の回動支持部が、ケースの天井面上面およびプッシュ釦の他端部下面の両方から突出したL字形突出部の横方向突起同士を、一方の係合間隙を他方の横方向突起の厚さと等しくすることにより、上下方向の隙間をゼロに設定して組み合わせたものであり、両者の係合長さは、プッシュ釦脚部のガイド孔内で円形軸が横方向に移動できる量よりも大きいようにしてもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、プッシュ釦の回動支持部を、簡単な構造で、容易に組立てができて、通常状態および操作時にがたつきや外れる等の支障が生じ難く、多少の水平動のできるものとすることができる。
【0014】
また、上記構成において、ケースの天井面上面およびプッシュ釦の他端部下面の両方から突出したL字形突出部の横方向突起がともに、厚さ寸法が係合長さに等しく、先端外側が係合寸法を半径とする円弧状であるようにしてもよい。
【0015】
このような構成とすることにより、良好な特性の回動支持部を最もコンパクトに形成することができる。
【0016】
また、上記構成において、第1押圧棒とこれを保持する筒状部上端面との間、またはシーソー釦またはプッシュ釦とケース天井面上面との間に、第1押圧棒または第2押圧棒の押圧方向の動きを規制するストッパー部を備えるようにしてもよい。
【0017】
このような構成とすることにより、各押圧棒を介して各押圧スイッチの押圧部が押し込まれるストローク量を規制して、押圧部が不必要に押し込まれて押圧スイッチが損傷を受けることを防止できる。
【0018】
また、上記構成において、シーソー釦の左右の操作面の一方に押圧力が加えられてシーソー釦が回動して傾き、その操作面の下面に当接する第1押圧棒が押し下げられて下方の押圧スイッチが動作する時点において、第1押圧棒の上端が当接する操作面の下面が押圧棒の軸線方向に対して略垂直となるように、通常状態においてシーソー釦の操作面の下面が押圧棒の軸線方向に対して傾斜しているとともに、押圧棒の上端が球面形状であるようにしてもよい。
【0019】
このような構成とすることにより、シーソー釦を押して第1押圧棒が下り始めて押圧スイッチの押圧部が動き始める時点での押圧力は小さくてよいので、操作面の傾斜した下面から第1押圧棒に加わる力が下方に押し下げる分力と横方向に押す分力に分かれて、押し下げる力が少なくなっても、第1押圧棒の球面形状の上端部で滑って横方向の分力を逃がして、第1押圧棒は容易に押し下げられる。
【0020】
そして、最も大きな押し下げ力を押圧スイッチに加える必要があるスイッチ動作時点において、操作面の下面が垂直に押圧棒を押すので横方向への分力はなく、確実にスイッチ動作をさせることができる。
【0021】
また、上記構成において、シーソー釦の一方の脚部先端の円形孔の周囲に設けられた円筒状のリブの内周または外周に、捻りコイルばねのコイル部が配設されているようにしてもよい。
【0022】
このような構成とすることにより、本発明の多連型複合スイッチの製造工程において、シーソー釦を上ケース内に組み込む際に、このリブで捻りコイルばねのコイル部、すなわち捻りコイルばね全体の位置を安定させた状態で、捻りコイルばねの両端のフック部の先端をシーソー釦の操作面下部の一対の突出部に一定の力で弾接・支持させることができ、シーソー釦と捻りコイルばねをあらかじめ一体化した状態でケース内へ容易に組み込むことができる。
【0023】
また、上記構成において、円形軸を保持するケースの長手方向両端部の一方の壁面には、円形軸の一定外径よりも僅かに小さくて外方が塞がれた穴が設けられ、他方の壁面には、円形軸の一定外径よりも僅かに大きい貫通孔が設けられるとともに、円形軸の一定外径の一端部は面取りまたは球面に加工され、他端部は、貫通孔が設けられた壁面の厚さの範囲内に、貫通孔の径よりも僅かに大きい外径の部分があるようにしてもよい。
【0024】
このような構成とすることにより、本発明の多連型複合スイッチの製造工程において、円形軸をケースの長手方向両端部の壁面に保持させる際に、円形軸の面取りまたは球面に加工された一端部を一方の壁面の大きい貫通孔から容易に挿入することができ、この一端部が他方の壁面に達したら、面取りまたは球面部分をガイドにして塞がれた穴内に圧入することができ、また同時に、円形軸の他端部の大きい外径の部分を一方の壁面の大きい貫通孔内に圧入することによって、円形軸を上ケースの長手方向両端部の壁面に容易にがたつきなく保持させることができる。
【0025】
また本発明の多連型複合スイッチの製造方法は、シーソー釦の一方の脚部に設けた円形孔周囲の円筒状のリブの周囲に捻りコイルばねのコイル部を嵌めこむとともに、捻りコイルばねの両端のフック部の先端間隔を狭めながら、シーソー釦の操作面下部の一対の係止部の間に入れ込んで弾接・保持させてばね付シーソー釦とする工程と、ケースの天井面下面の筒状部に複数個の第1押圧棒および決められた数の圧縮コイルばねと第2押圧棒とを上方から挿入する工程と、ケースの天井面の角孔に、ばね付シーソー釦の2つの脚部を挿入して仮保持させる工程と、ケースの天井面の長孔に、プッシュ釦の脚部を挿入するとともに、回動支持部を係合させて仮保持させる工程と、ケースとばね付シーソー釦およびプッシュ釦との位置を、保持治具によって保ちながら、円形軸を一端の球面側からケース壁面の貫通孔に挿入し、ばね付シーソー釦およびプッシュ釦の各脚部先端の円形孔およびガイド孔に順次通してから、最後に球面部をケースの壁面の塞がれた穴内に圧入するとともに、円形軸他端の大径部を壁面の貫通孔内に圧入してケース仕掛品とする工程を具備するようにしてもよい。
【0026】
このような製造方法によれば、シーソー釦およびプッシュ釦が、それぞれの脚部の円形孔およびガイド孔内を円形軸が貫通し、捻りコイルばねおよび圧縮コイルばねにより通常状態位置に付勢された状態でケースに保持された、ケース仕掛品を効率よく安定して製造することができる多連型複合スイッチの製造方法を実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の多連型複合スイッチは、シーソー釦が1本の円形軸に嵌合保持され、通常状態において、ケースに設けられた角孔の端面に弾接する捻りコイルばねによって位置決めされるとともに、プッシュ釦もガイド孔下部の半円形部が同じ円形軸に係合するように圧縮コイルばねによって押し付けられているので、並べられた複数個のシーソー釦およびプッシュ釦は上面視・側面視ともに整列した配列状態とすることができる。
【0028】
更に操作時には、シーソー釦は円形軸を中心として円滑に回動して下面の第1押圧棒を押し下げ、プッシュ釦は回動支持部を支点として動いて下面の第2押圧棒を押し下げて、それぞれ押圧スイッチを真直ぐに押してスイッチ動作させ、その後にばねの力により元の位置に復帰する。
【0029】
この結果、使用機器において操作内容を表示した複数個の操作釦をすっきりと揃えることができるとともに、操作時のスイッチング動作が円滑で確実な多連型複合スイッチを実現できるという大きな効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチの正面断面図、図2は図1のD−D線における断面図、図3は図1のE−E線における断面図、図4は図1のF−F線における断面図で、図5は外観斜視図である。
【0032】
本実施の形態による4連型複合スイッチ1は旅客機のハイクラス用等のシートの姿勢を調節するためのもので、図5に示すように、シートの「背もたれ」の角度を加減するシーソースイッチ2Aとシートの「足のせ台」の角度を加減するシーソースイッチ2Bおよび「標準の椅子」の状態にするプッシュスイッチ3Aと「フラットなベッド」の状態にするプッシュスイッチ3Bからなる。
【0033】
そして、図1〜図4に示すように、本実施の形態による4連型複合スイッチ1の筐体部は、ポリエーテルイミド(PEI)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の耐熱性、機械的強度、電気特性の優れた樹脂で形成され、下面が開口部である直方体形状の上ケース6と、上ケース6と同様の樹脂で略同じ投影寸法に形成されて上面が開口部であり、互いの周囲壁の間にガラス・エポキシ樹脂製の配線基板8を挟んで上ケース6と結合された下ケース7とで構成されている。
【0034】
この配線基板8の上面には、シーソースイッチ2A,2B用としての対となった2組の左第1押圧スイッチ9A(以下の説明では、左押圧スイッチ9Aと表す)と右第1押圧スイッチ9B(以下の説明では、右押圧スイッチ9Bと表す)からなる2組4つの押圧スイッチが、それぞれのシーソー釦4A,4Bの下方で、配線基板8の長手方向中心線を挟んで両側に配設されるとともに、プッシュスイッチ3A,3B用としての2つの第2押圧スイッチ10が、それぞれのプッシュ釦5A,5Bの下方で、配線基板8の側端部近くに配設されている。
【0035】
これらの左押圧スイッチ9Aと右押圧スイッチ9Bおよび第2押圧スイッチ10は、それぞれの押圧部に押圧力を加えて押し込むことによってONとなり、押圧力を除くと押圧部は元の位置に自己復帰してOFFとなるタイプのスイッチである。
【0036】
なお、2つのシーソー釦4A,4Bおよび2つのプッシュ釦5A,5Bは、ABS樹脂等で形成され、その操作面上には、操作時に調節できる内容が図で表示されている(図5参照)。
【0037】
また、配線基板8の長手方向中心線の上方には、ステンレス鋼や高力アルミニウム等の剛性材料からなる円形軸11が上ケース6の長手方向両端部の壁面6A,6Bにより、配線基板8と平行に保持されている。
【0038】
そして、シーソースイッチ2A,2B用の2組の左押圧スイッチ9Aと右押圧スイッチ9Bの各押圧部それぞれに当接する左第1押圧棒12A(以下の説明では、左押圧棒12Aと表す)と右第1押圧棒12B(以下の説明では、右押圧棒12Bと表す)の2組が、上ケース6の天井面の対応する位置に設けられた2組の筒状部13A,13Bの保持孔により上下動可能に保持されているとともに(図2参照)、プッシュスイッチ3A,3B用の2つの第2押圧スイッチ10の各押圧部それぞれに当接する2つの第2押圧棒14が天井面の筒状部15の段付保持孔15Aにより上下動可能に保持されている(図4参照)。
【0039】
上記のように、上ケース6の天井面には、2組の左押圧スイッチ9Aと右押圧スイッチ9Bそれぞれに対応する2つの同形状寸法のシーソー釦4A,4Bが配設されており、上ケース6の天井面の2組の大角孔16Aと小角孔16Bを貫通して下方へ延ばされた、それぞれの主脚部17Aと副脚部17Bの先端の円形孔18A,18Bが円形軸11に嵌合して、独立して回動可能なように保持されるとともに、上ケース6の天井面上に露出した上面の両端部近傍がそれぞれ反対方向への傾倒操作部としての左操作面19Aおよび右操作面19Bを形成し、その下面が2組の左押圧棒12Aと右押圧棒12Bの上端の球面形状部に当接している(図2参照)。
【0040】
なお、2つのシーソー釦4A,4Bから下方へ延ばされた主脚部17Aと副脚部17Bの外側間隔は、左操作面19Aおよび右操作面19Bからなる操作面の幅寸法の1/2以上であるように広く設定されている。
【0041】
また、2つのシーソー釦4A,4Bの主脚部17Aの側面にはそれぞれ捻りコイルばね21が配設されており、そのコイル部21Aが各円形孔18Aの周囲に設けられた円筒状のリブ20の外周に配されるとともに、両端の左フック部22Aと右フック部22Bが上ケース6の天井面に円形軸11の軸線を挟んで対称に設けられた大角孔16Aの斜面になった端面に一定の付勢力で弾接すると同時に、この両フック部22A,22Bの延長された先端部が2つのシーソー釦4A,4Bの左操作面19Aと右操作面19Bの下部に設けられた一対の左係止部23Aと右係止部23Bにそれぞれ弾接している。
【0042】
このように、捻りコイルばね21の左フック部22Aと右フック部22Bが、上ケース6の天井部の大角孔16Aの端面とシーソー釦4A,4Bの下部の左係止部23Aと右係止部23Bに同時に弾接していることによって、2つのシーソー釦4A,4Bは通常状態において中立水平位置を保っている(図3参照)。
【0043】
一方、上ケース6の天井面の、2つの第2押圧スイッチ10に対応する位置には、2つの同形状寸法のプッシュ釦5A,5Bが配設されており、上ケース6の天井面上に露出した上面の一端部近傍がプッシュ操作面24を形成し、他端部は、上ケース6の天井上面とプッシュ釦5A,5Bの他端部下面との間に構成された、プッシュ操作面24の1/2以上の幅を有する回動支持部25によって、上下動なく回動可能になるように上ケース6に支持されている。
【0044】
そして、上ケース6の天井面の筒状部15の段付保持孔15Aと同一線上に設けられた長孔26を貫通して下方へ延ばされた、円形軸11の直径よりも薄い寸法である脚部27の先端の長円形のガイド孔28内を円形軸11が貫通するとともに、プッシュ操作面24の下面には圧縮コイルばね29により上方へ付勢された第2押圧棒14の上端の球面形状部が弾接して、2つのプッシュ釦5A,5Bをそれぞれ上方へ押し上げている。
【0045】
これによって、2つのプッシュ釦5A,5Bの脚部27先端のガイド孔28の下部の半円形部が円形軸11に係合し、通常状態において2つのプッシュ釦5A,5Bは、広い幅の回動支持部25と薄い寸法のガイド孔28とで指示されて中立水平位置を保っている(図4参照)。
【0046】
ここで、2つのプッシュ釦5A,5Bの他端部を、上下動なく回動可能になるように上ケース6上に支持する回動支持部25の構成について説明する。
【0047】
図4および図6(a)の本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチのプッシュ釦の回動支持部の拡大断面図に示すように、回動支持部25は、上ケース6の天井面から上方へのL字形突出部30の右方向突起30Aの厚さ寸法および係合間隙の高さ寸法と、プッシュ釦5A,5Bの他端部の下方に側壁を利用して設けられたL字形突出部31の左方向突起31Aの高さ寸法を、何れも両者の係合長さdと同じにし、右方向突起30Aと左方向突起31Aを組み合わせて回動支持部25としたものである。
【0048】
このような回動支持部25とすることにより、簡単な構成でコンパクトに形成でき、組立てが容易であって、通常状態および操作時にがたつきや外れる等の支障が生じ難く、多少の水平動のできる回動支持部とすることができる。
【0049】
なお、この回動支持部25の幅寸法Lはプッシュ操作面24の幅の1/2以上必要であるが、図6(a)のG−G線における断面図である図6(b)に示すように、全体が一体であっても、同図(c)に示すように、中間部がなくて両端部で支持するようにしてもよい。
【0050】
また、回動支持部25の構成として、上記の図4および図6に示した構成でなくて、図7(a)〜図7(c)のプッシュ釦の回動支持部の他の構成を説明する正面断面図に示すように、上ケース6の天井面およびプッシュ釦5A,5Bの他端部の下面に設けるL字形突出部32A〜32C,34A〜34Cおよびこれらの横方向突起33A〜33C,35A〜35Cのように、突出する向きや形状を変えても、同様の特徴を有する回動支持部を得ることができる。
【0051】
次に、プッシュ釦5A,5Bの脚部27の先端に設けられるガイド孔28について説明する。
【0052】
図8(a)の本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチのプッシュ釦の脚部のガイド孔の拡大図に示すように、ガイド孔28は、下部が同図に点線で示すような円形軸11の外径に係合する半円形である長円で、その上部は、上記の回動支持部25の回動中心点からの半径R1,R2に沿って、プッシュ操作時の押圧量に対応する量だけ円弧状に伸ばされた長円形であればよい。
【0053】
しかし、実際にはプッシュスイッチ3A,3Bの操作時にプッシュ釦5A,5Bが押圧されて動く量は回動中心点からの距離に比較して非常に小さいので、ガイド孔28の形状は、回動中心点からの半径に沿って直線状に伸ばした長円形でもよい。
【0054】
この形状の差によってプッシュ釦5A,5Bの円形軸11の外径に対する動きに僅かなずれがあっても、上記の回動支持部25でプッシュ釦5A,5Bが水平動をして吸収することができる。
【0055】
更に、図8(b)に示すように、ガイド孔36の上部を円形軸11の外径よりも少し大きくした方が、プッシュスイッチ3A,3Bの操作時にプッシュ釦5A,5Bの動きがスムーズになるが、この時ガイド孔36内で円形軸が横方向に移動できる量を、回動支持部25の係合長さdよりも小さくしておかなければならない。
【0056】
そして、本実施の形態による4連型複合スイッチ1の配線基板8の下面には、シーソースイッチ2A,2B用としての対となった2組の左第1押圧スイッチ9Aと右第1押圧スイッチ9Bからなる2組4つの押圧スイッチおよびプッシュスイッチ3A,3B用としての2つの第2押圧スイッチ10からの信号を取り出すためのコネクタ37が装着され、リード線38を経て使用機器の回路に伝達されるようになっている。
【0057】
本実施の形態による4連型複合スイッチ1は以上のように構成されるものであり、シーソー釦4A,4Bが1本の円形軸11に嵌合保持され、通常状態において、上ケース6の大角孔16Aの端面に弾接している捻りコイルばね21によって位置決めされるとともに、プッシュ釦5A,5Bも、圧縮コイルばね29に押されて、脚部27のガイド孔28下部の半円形部が同じ円形軸11に係合しているので、並べられた複数個のシーソー釦4A,4Bおよびプッシュ釦5A,5Bは上面視・側面視ともに整列した配列状態であり、更に操作時には、シーソー釦4A,4Bは円形軸11を中心として円滑に回動して両第1押圧棒12A,12Bを垂直に押し下げ、プッシュ釦5A,5Bは回動支持部25を支点として動いて第2押圧棒14を垂直に押し下げ、それぞれ両押圧スイッチ9A,9Bおよび第2押圧スイッチ10を真直ぐに押して動作させることができる。
【0058】
次に、本実施の形態による4連型複合スイッチ1の製造方法について説明する。
【0059】
まず、図9の本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチのシーソー釦と捻りコイルばねの結合方法を説明する部分断面の側面図に示すように、捻りコイルばね21のコイル部21Aを、シーソー釦4A,4Bの主脚部17Aに設けた円形孔18Aの周囲の円筒状のリブ20の外周に嵌め込むとともに、図9に矢印で示すように、両側の左フック部22Aと右フック部22Bの先端間隔を狭めながら、シーソー釦4A,4Bの左操作面19A下面の左係止部23Aと右操作面19B下面の右係止部23Bの間に入れ込んで、両フック部22A,22Bの先端を2つの係止部23A,23Bに弾接・保持させて、ばね付シーソー釦39とする。
【0060】
このように、ばね付シーソー釦39としてシーソー釦4A,4Bと捻りコイルばね21とをあらかじめ一体化させておくことによって、下記の上ケース6に組み込む作業が非常に容易になる。
【0061】
なお、捻りコイルばね21のコイル部21Aは、主脚部17Aに設けた円形孔18Aの周囲の円筒状のリブ20の内周に嵌め込む構成にしてもよいが、その場合は、下記に説明する、円形孔18Aに円形軸11を通す際に邪魔にならないような設定にする必要がある。
【0062】
次に、図10(a)の本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチの上ケースへのシーソー釦の挿入方法を説明する部分正面断面図および同図のH−H線における断面図である図10(b)に示すように、上ケース6の天井面中央の2箇所に対として設けられた筒状部13A,13Bの保持孔に、上方から左押圧棒12Aと右押圧棒12Bをそれぞれ挿入し、次いで、天井面中央の2箇所の大角孔16Aと小角孔16Bに、上記のばね付シーソー釦39の主脚部17Aと副脚部17Bをそれぞれ挿入する。
【0063】
この時、ばね付シーソー釦39の主脚部17Aが保持した捻りコイルばね21の左フック部22Aと右フック部22Bの外側が大角孔16Aの斜めになった端面(図10(b)参照)に当たる位置まで入ると、各ばね付シーソー釦39の主脚部17Aと副脚部17Bの先端の円形孔18A,18Bは、上ケース6の長手方向端部の壁面6Aに設けられた閉ざされた穴40Aおよび壁面6Bに設けられた貫通孔40Bとほぼ同じ中心線上にくる。
【0064】
引き続いて、図11の本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチの上ケース6へのプッシュ釦5A,5Bの挿入方法を説明する側断面図において、まず同図(a)に示すように、上ケース6の天井面両端の2箇所に設けられた筒状部15の段付保持孔15Aに上方から圧縮コイルばね29とともに第2押圧棒14を挿入した後、筒状部15の段付保持孔15Aと同一線上に設けられた長孔26にプッシュ釦5A,5Bの脚部27を挿入する。
【0065】
この時、同図(b)に示すように、プッシュ釦5A,5Bを上ケース6に対し中心を少し右へずらしながら脚部27を長孔26内へ挿入して、L字形突出部31のない側の下面で先に挿入した第2押圧棒14を押し下げながら、上ケース6の天井面から突出しているL字形突出部30の右方向突起30Aの右横の天井面上に、プッシュ釦5A,5BのL字形突出部31の先端部を載せる。
【0066】
そしてこの状態で、図11(b)に矢印で示すように、プッシュ釦5A,5Bを図面の左方向へずらすことによって、L字形突出部30の右方向突起30Aの下にL字形突出部31の左方向突起31Aが入り込んで両者が組み合わされて回動支持部25を形成し、これによってプッシュ釦5A,5Bは上ケース6に仮保持される。
【0067】
以上のようにして上ケース6にシーソー釦4A,4Bおよびプッシュ釦5A,5Bを挿入したものに対して、次は、円形軸11を挿入・装着する。
【0068】
図12の本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチの釦挿入後の上ケースに円形軸を挿入する方法を説明する正面断面図に示すように、保持治具41によってシーソー釦4A,4Bとプッシュ釦5A,5Bの操作面が同一面上にあるように保持して、シーソー釦4A,4Bの両脚部の円形孔18A,18Bとプッシュ釦5A,5Bの脚部27のガイド孔28が、上ケース6の長手方向端部の壁面6Aに設けられた閉ざされた穴40Aおよび壁面6Bに設けられた貫通孔40Bとほぼ同じ中心線上にあるようにする。
【0069】
そして、円形軸11を一端の球面部11A側から上ケース6の壁面6Bの貫通孔40B内に挿入し、プッシュ釦5Aの脚部27先端のガイド孔28、2つのばね付シーソー釦39の各主脚部17A,副脚部17B先端の円形孔18A,18Bおよびプッシュ釦5Bの脚部先端のガイド孔28に順次通してから、最後に球面部11Aの部分を上ケース6の壁面6Aの塞がれた穴40A内に圧入するとともに、円形軸11他端の大径部11Bを壁面6Bの貫通孔40B内に圧入すると、図13の本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチの最終組合せ工程を説明する正面断面図に示すような、上ケース仕掛品42となる。
【0070】
なお、この釦挿入後の上ケースに円形軸11を挿入する場合に、保持治具41を下側にして上ケース6の開口部側を上向きにすれば、円形軸11が各脚部のガイド孔28や円形孔18A,18Bに入る部分を目視確認しながら、容易に確実に挿入作業をすることができる。
【0071】
ここで、円形軸11の外径と、上ケース6の長手方向両端部の壁面6A,6Bに設ける塞がれた穴40Aおよび貫通孔40Bとの関係について説明する。
【0072】
円形軸11は、一定外径のステンレス丸棒または高力アルミニウム合金棒等を所定の長さに切断した後、図12に示すように、一定外径部の一端を球面部11Aに加工し、他端は、上ケース6の壁面6Bの厚さの範囲内の部分に、小穴をあけて外径を膨らませる等の方法で、大径部11Bに加工したものである。
【0073】
そして、上ケース6の壁面6Aの塞がれた穴40Aの径は円形軸11の一定外径よりも僅かに小さく、壁面6Bの貫通孔40Bの径は円形軸11の一定外径よりも僅かに大きく、しかも他端の大径部11Bよりも僅かに小さく形成されている。
【0074】
したがって、図12に示したように、円形軸11は、一端の球面部11Aをガイドとして、上ケース6の壁面6Bの貫通孔40B内に挿入し、プッシュ釦5Aの脚部27先端のガイド孔28、2つのばね付シーソー釦39の各主脚部17A,副脚部17B先端の円形孔18A,18Bおよびプッシュ釦5Bの脚部先端のガイド孔28に順次通して、最後に球面部11Aを上ケース6の壁面6Aの塞がれた穴40A内に圧入するとともに、他端の大径部11Bを壁面6Bの貫通孔40B内に圧入して、円形軸11を上ケース6の長手方向両端部の壁面6A,6Bに、容易にしかもがたつきなく保持させた上ケース仕掛品42とすることができる。
【0075】
なお、円形軸11一端は球面でなくて面取り加工でもよく、また他端は外径の一部を変形させて大径の部分を形成してもよいものである。
【0076】
この後、図13に示すように、対となった2組の左押圧スイッチ9Aと右押圧スイッチ9Bおよび2つの第2押圧スイッチ10を上面に、リード線38付のコネクタ37を下面に、それぞれ装着した配線基板仕掛品43を下ケース7の周囲壁と上記上ケース仕掛品42下面の周囲壁との間に挟み込んで、両ケースの間をビス(図示せず)で固定すれば、図1に示した本実施の形態による4連型複合スイッチ1として完成する。
【0077】
なお、このようにして両ケースを組み合わせることにより、上ケース6の壁面6Bの貫通孔40Bの外方は下ケース7の周囲壁の延長部44により塞がれて、円形軸11は抜けなくなる。
【0078】
次に、本実施の形態による4連型複合スイッチ1の動作について説明する。
【0079】
上記の図5に示した、この4連型複合スイッチ1で調節できる4つの機能のうちの1つの機能、例えば、シートの「背もたれ」の角度を調節する場合について説明する。
【0080】
まず、図5に示す4連型複合スイッチ1の4つの操作釦のうち、「背もたれの角度調節」の図が表示されるシーソー釦4Aを選んだ場合の動作について説明する。
【0081】
シーソー釦4Aの操作面を左側から見て、左端部近傍のV印が記された左操作面19Aを下方へ押すと、図1に示したD−D線およびE−E線における動作状態を説明する断面図である、図14および図15において、シーソースイッチ2Aのシーソー釦4Aは捻りコイルばね21の付勢力に抗して、主脚部17A,副脚部17Bの先端の円形孔18A,18Bが嵌合した円形軸11を中心として左方向に回動する。
【0082】
すなわち、捻りコイルばね21の右フック部22Bがシーソー釦4Aの右係止部23Bに先端部を押されて上ケース6の大角孔16Aの端面から離れるとともに、シーソー釦4Aの左操作面19Aの傾斜した下面が当接している左押圧棒12A上端の球面形状部を下方に押す。
【0083】
これによって、左押圧棒12Aの下端が当接している左押圧スイッチ9Aの押圧部を真直ぐ下方に押して、左押圧スイッチ9AをONにさせると、その電気信号によってシートの「背もたれ」が起き上がり始める。
【0084】
そして、「背もたれ」が所望の角度まで起きた時点でシーソー釦4Aの左操作面19Aに加えていた押力を除くと、下面の右係止部23Bが捻りコイルばね21の右フック部22Bの先端部に押されてシーソー釦4Aが回動し、右フック部22Bが上ケース6の大角孔16Aの端面に当たる位置まで戻り、左押圧スイッチ9Aは再びOFFとなり、その押圧部も自己復帰力によって元の位置に戻り、左押圧棒12Aを元の位置まで押し上げる。
【0085】
このようにして、シートの「背もたれ」を起こす方向に調節することができる。
【0086】
なお、このシーソー釦4Aの左操作面19Aを押圧操作する時の押圧ストロークは、左押圧棒12Aの先端の大径部が筒状部13Aの端面である上ケース6の天井面に当たるか、またはシーソー釦4Aの左操作面19A下方の側壁の端部が上ケース6の天井面に当たることにより規制されて、左押圧スイッチ9Aを過大に押さないようになっている。
【0087】
同様に、シーソー釦4Aの右操作面19Bを下方へ押すと、今度は右押圧スイッチ9Bが動作してシートの「背もたれ」を倒す方向に調節することができる。
【0088】
シーソースイッチ2A,2Bは以上のように動作するものであって、シーソー釦4Aまたはシーソー釦4Bの操作面を押して左押圧棒12Aまたは右押圧棒12Bが下り始めて左押圧スイッチ9Aまたは右押圧スイッチ9Bの押圧部が動き始める時点での押圧力は小さくてよいので、操作面の傾斜した下面から左押圧棒12Aまたは右押圧棒12Bに加わる力が下方に押し下げる分力と横方向に押す分力に分かれて、押し下げる力が小さくなっても、左押圧棒12Aまたは右押圧棒12Bの上端の球面形状部で滑って横方向の分力を逃がし、左押圧棒12Aまたは右押圧棒12Bを容易に押し下げることができる。
【0089】
そして、最も大きな押し下げ力を左押圧スイッチ9Aまたは右押圧スイッチ9Bに加える必要があるスイッチ動作時点において、操作面の下面がほぼ垂直に左押圧棒12Aまたは右押圧棒12Bを押すので横方向への分力はなく、左押圧スイッチ9Aまたは右押圧スイッチ9Bを確実に動作させることができる。
【0090】
次に、図5に示す4連型複合スイッチ1の4つの操作釦のうち、「標準の椅子」の図が表示されるプッシュ釦5Aを選んだ場合の動作について説明する。
【0091】
プッシュ釦5Aの操作面を左側から見て、左端部近傍の〇印が記されたプッシュ操作面24を下方へ押すと、図1に示したF−F線における動作状態を説明する断面図である図16において、プッシュスイッチ3Aのプッシュ釦5Aは、第2押圧棒14を押し上げている圧縮コイルばね29の付勢力に抗して、プッシュ操作面24とは反対側の端部の回動支持部25を中心として左方向へ回動する。
【0092】
この時、プッシュ釦5A下方の脚部27先端のガイド孔28は、長円形の下部の半円形部分が円形軸11との係合を離れて下方へ動き、プッシュ釦5Aはプッシュ操作面24の下面に弾接した第2押圧棒14を下方へ押す。
【0093】
これにより、第2押圧棒14の下端が、当接している第2押圧スイッチ10の押圧部を真直ぐ下方へ押して第2押圧スイッチ10をONさせると、その電気信号によって、それまでの操作で「背もたれ」や「足のせ台」の角度が変えられていたシートは、自動的に「標準の椅子」の姿勢になる。
【0094】
そして、プッシュ操作面24に加えていた押力を除くと、下面に弾接している第2押圧棒14の付勢力により押し上げられて、プッシュ釦5Aは回動支持部25を中心として回動し、脚部27のガイド孔28下部の半円形部分が円形棒に係合する位置まで戻って第2押圧スイッチ10は再びOFFとなり、その押圧部も自己復帰力により元の位置まで戻る。
【0095】
このようにして、シートを「標準の椅子」の状態に戻すことができる。
【0096】
なお、このプッシュ釦5Aのプッシュ操作面24を押圧操作する時の押圧ストロークは、プッシュ釦5Aのプッシュ操作面24下方の側壁の端部が上ケース6の天井面に当たることにより規制されて、第2押圧スイッチ10を過大に押さないようになっている。
【0097】
同様に、プッシュ釦5Bのプッシュ操作面24を下方へ押すと、今度はプッシュスイッチ3Bが動作して、シートを「フラットなベッド」の状態にすることができる。
【0098】
プッシュスイッチ3A,3Bは以上のように動作するものであるが、第2押圧スイッチ10を動作させるためにプッシュ操作面24を押した時にプッシュ釦5A,5Bが回動支持部25を中心として回動する角度は、左押圧スイッチ9Aまたは右押圧スイッチ9Bを動作させるために、シーソースイッチ2A,2Bのシーソー釦4A,4Bが円形軸11を中心として回動する角度よりもずっと小さいので、第2押圧スイッチ10のスイッチ動作時点においても第2押圧棒14を押すプッシュ操作面24下面の傾きは小さい。
【0099】
したがって、シーソー釦4A,4Bのように操作面の下面を傾けておかなくても特に問題はない。
【0100】
以上の説明において、多連型複合スイッチに配列するシーソースイッチおよびプッシュスイッチの数を4個としたが、これは3個や6個等任意の数とすることができる。
【0101】
また、複数個のシーソー釦やプッシュ釦を動作させる押圧スイッチは、動作ストロークや動作力および電気容量がすべて同じでなく、異なるものがあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の多連型複合スイッチは、複数個のシーソースイッチのシーソー釦とプッシュスイッチのプッシュ釦を確実に整列して配設できるので、並べられた複数個の操作釦が上面視・側面視ともに安定した配列状態であるとともに、押圧操作時の感触が円滑である。
【0103】
したがって、旅客機や客船等のハイクラス用のシートやマッサージチェアの背もたれや足のせ台等の角度を変えて姿勢を調節するスイッチ等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施の形態による4連型複合スイッチの正面断面図
【図2】図1のD−D線における断面図
【図3】図1のE−E線における断面図
【図4】図1のF−F線における断面図
【図5】同4連型複合スイッチの外観斜視図
【図6】(a)同4連型複合スイッチのプッシュ釦の回動支持部の拡大断面図、(b),(c)図6(a)のG−G線における断面図
【図7】(a),(b),(c)同4連型複合スイッチのプッシュ釦の回動支持部の他の構成を説明する正面断面図
【図8】(a),(b)同4連型複合スイッチのプッシュ釦脚部のガイド孔の拡大図
【図9】同4連型複合スイッチのシーソー釦と捻りコイルばねの結合方法を説明する部分断面の側面図
【図10】(a)同4連型複合スイッチの上ケースへのシーソー釦の挿入方法を説明する部分正面断面図、(b)図10(a)のH−H線における断面図
【図11】(a),(b)同4連型複合スイッチの上ケースへのプッシュ釦の挿入方法を説明する側断面図
【図12】同4連型複合スイッチの釦挿入後の上ケースに円形軸を挿入する方法を説明する正面断面図
【図13】同4連型複合スイッチの最終組合せ工程を説明する正面断面図
【図14】同4連型複合スイッチの動作状態を説明する、図1に示したD−D線における断面図
【図15】同4連型複合スイッチの動作状態を説明する、図1に示したE−E線における断面図
【図16】同4連型複合スイッチの動作状態を説明する、図1に示したF−F線における断面図
【符号の説明】
【0105】
1 4連型複合スイッチ(多連型複合スイッチ)
2A,2B シーソースイッチ
3A,3B プッシュスイッチ
4A,4B シーソー釦
5A,5B プッシュ釦
6 上ケース
6A,6B 壁面
7 下ケース
8 配線基板
9A 左第1押圧スイッチ(左押圧スイッチ)
9B 右第1押圧スイッチ(右押圧スイッチ)
10 第2押圧スイッチ
11 円形軸
11A 球面部
11B 大径部
12A 左第1押圧棒(左押圧棒)
12B 右第1押圧棒(右押圧棒)
13A,13B,15 筒状部
14 第2押圧棒
15A 段付保持孔
16A 大角孔
16B 小角孔
17A 主脚部
17B 副脚部
18A,18B 円形孔
19A 左操作面
19B 右操作面
20 リブ
21 捻りコイルばね
21A コイル部
22A 左フック部
22B 右フック部
23A 左係止部
23B 右係止部
24 プッシュ操作面
25 回動支持部
26 長孔
27 脚部
28,36 ガイド孔
29 圧縮コイルばね
30,31,32A〜32C,34A〜34C L字形突出部
30A 右方向突起
31A 左方向突起
33A〜33C,35A〜35C 横方向突起
37 コネクタ
38 リード線
39 ばね付シーソー釦
40A 穴
40B 貫通孔
41 保持治具
42 上ケース仕掛品
43 配線基板仕掛品
44 延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面が開口部である直方体形状のケースと、
前記ケースの長手方向の略中心線上で前記開口部の端面と平行に、両端部の壁面により前記ケース内に保持された剛性材料製の円形軸と、
前記ケースの開口部を塞ぐように配設され、上面に複数個の押圧スイッチが配列・装着された配線基板と、
前記複数個の押圧スイッチそれぞれに対応する位置において、前記ケースの天井面下面の筒状部により上下動可能に保持された複数個の第1押圧棒および少なくとも1つの第2押圧棒と、
上部が前記ケースの天井面上に露出して左右の操作面を形成し、両脚部の外側間隔が操作面の幅の1/2以上であるように、前記ケースの天井面を通って下方に突出した2つの脚部先端の円形孔が前記円形軸により回動可能に嵌合保持されるとともに、前記円形軸を挟んで対称位置にある前記左右の操作面それぞれの下面に当接する各前記第1押圧棒の下方位置の前記配線基板上に、前記押圧スイッチが配列されているシーソー釦と、
前記円形軸の周囲にコイル部が配設され、前記ケースの天井面に前記円形軸の軸線を挟んで対称に設けられた角孔の端面に、両端のフック部が一定の付勢力をもって弾接するとともに、前記両端のフック部の延長された先端部が各前記シーソー釦の操作面の下部に設けられた一対の係止部に弾接している捻りコイルばねと、
上部が前記ケースの天井面上に露出して一端部近傍がプッシュ操作面を形成し、支持部の幅が前記プッシュ操作面の幅の1/2以上である回動支持部により、他端部が上下動なく回動可能に前記ケース上に支持されるとともに、前記ケースの天井面の長孔を通って下方に突出した、厚さが前記円形軸の直径よりも薄い脚部先端に設けられた、下部が前記円形軸の外径に係合する半円形でプッシュ操作時の押圧量に対応した長さの長円形であって、前記回動支持部を中心とする回動を規制するガイド孔の中を前記円形軸が貫通するとともに、前記プッシュ操作面の下面に弾接する前記第2押圧棒の下方位置の前記配線基板上に、前記押圧スイッチが配列されているプッシュ釦と、
前記第2押圧棒の外周に巻かれて、前記第2押圧棒を介して前記各プッシュ釦の操作面下面を上方に押して、前記ガイド孔下部の半円形部が前記円形軸に係合するように付勢する圧縮コイルばねとからなり、
少なくとも1つのシーソー釦と少なくとも1つのプッシュ釦が決められた順序に配列されていることを特徴とする多連型複合スイッチ。
【請求項2】
前記プッシュ釦の回動支持部が、前記ケースの天井面上面およびプッシュ釦の他端部下面の両方から突出したL字形突出部の横方向突起同士を、一方の係合間隙を他方の前記横方向突起の厚さと等しくすることにより、上下方向の隙間をゼロに設定して組み合わせたものであり、両者の係合長さは、前記プッシュ釦脚部のガイド孔内で前記円形軸が横方向に移動できる量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の多連型複合スイッチ。
【請求項3】
前記ケースの天井面上面およびプッシュ釦の他端部下面の両方から突出したL字形突出部の横方向突起がともに、厚さ寸法が前記係合長さに等しく、先端外側が前記係合間隙の寸法を半径とする円弧状であることを特徴とする請求項2に記載の多連型複合スイッチ。
【請求項4】
前記第1押圧棒とこれを保持する前記筒状部上端面との間、または前記シーソー釦またはプッシュ釦と前記ケース天井面上面との間に、前記第1押圧棒または第2押圧棒の押圧方向の動きを規制するストッパー部を備えることを特徴とする請求項1に記載の多連型複合スイッチ。
【請求項5】
前記シーソー釦の左右の操作面の一方に押圧力が加えられて前記シーソー釦が回動して傾き、その操作面の下面に当接する前記第1押圧棒が押し下げられて下方の前記押圧スイッチが動作する時点において、前記第1押圧棒の上端が当接する前記操作面の下面が前記押圧棒の軸線方向に対して略垂直となるように、通常状態において前記シーソー釦の操作面の下面が前記押圧棒の軸線方向に対して傾斜しているとともに、前記押圧棒の上端が球面形状であることを特徴とする請求項1に記載の多連型複合スイッチ。
【請求項6】
前記シーソー釦の一方の脚部先端の円形孔の周囲に設けられた円筒状のリブの内周または外周に、前記捻りコイルばねのコイル部が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の多連型複合スイッチ。
【請求項7】
前記円形軸を保持する前記ケースの長手方向両端部の一方の壁面には、前記円形軸の一定外径よりも僅かに小さくて外方が塞がれた穴が設けられ、他方の端面には、前記円形軸の一定外径よりも僅かに大きい貫通孔が設けられるとともに、前記円形軸の一定外径の一端部は面取りまたは球面に加工され、他端部は、前記貫通孔が設けられた壁面の厚さの範囲内に、前記貫通孔の径よりも僅かに大きい外径の部分があるように加工されたものであることを特徴とする請求項1に記載の多連型複合スイッチ。
【請求項8】
シーソー釦の一方の脚部に設けた円形孔周囲の円筒状のリブの周囲に捻りコイルばねのコイル部を嵌め込むとともに、前記捻りコイルばねの両端のフック部の先端間隔を狭めながら、前記シーソー釦の操作面下部の一対の係止部の間に入れ込んで弾接・保持させてばね付シーソー釦とする工程と、
ケースの天井面下面の筒状部に複数個の第1押圧棒および決められた数の圧縮コイルばねと第2押圧棒とを上方から挿入する工程と、
前記ケースの天井面の角孔に、決められた数の前記ばね付シーソー釦の2つの脚部を挿入
して仮保持させる工程と、
前記ケースの天井面の長孔に、決められた数のプッシュ釦の脚部を挿入するとともに、回動支持部を係合させて仮保持させる工程と、
前記ケースと決められた数の前記ばね付シーソー釦およびプッシュ釦との位置を、保持治具によって保ちながら、円形軸を一端の球面側からケース壁面の貫通孔に挿入し、決められた数の前記ばね付シーソー釦およびプッシュ釦の各脚部先端の円形孔およびガイド孔に順次通してから、最後に球面部を前記ケースの壁面の塞がれた穴内に圧入するとともに、前記円形軸他端の大径部を前記壁面の貫通孔内に圧入してケース仕掛品とする工程を具備することを特徴とする多連型複合スイッチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−269828(P2008−269828A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107935(P2007−107935)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】