説明

多重フィールドプレートトランジスタ

【課題】より高い破壊電圧およびより低いオン抵抗を含み、高周波数において十分に機能
するパワースイッチングデバイスを提供する。
【解決手段】多重フィールドプレートトランジスタが、活性領域、ならびにソース、ドレ
イン、およびゲートを含む。第1のスペーサ層が、活性領域の上方でソースとゲートの間
にあり、第2のスペーサ層が、活性領域の上方でドレインとゲートの間にある。第1のス
ペーサ層上の第1のフィールドプレート、及び第2のスペーサ層上の第2のフィールドプ
レートが、ゲートに接続される。第3のスペーサ層が、第1のスペーサ層、第2のスペー
サ層、第1のフィールドプレート、ゲート、および第2のフィールドプレート上にあり、
第3のフィールドプレートが、第3のスペーサ層上にあり、ソースに接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、半導体に関し、より詳細には、フィールドプレートを利用するパワー
スイッチング用トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスは、スイッチモード電源などのパワー電子回路内で、スイッチま
たは整流器として使用される。一般的なパワーデバイスは、パワーダイオード、サイリス
タ(thyristor)、パワーMOSFET、およびIGBT(絶縁ゲートバイポーラトラン
ジスタ)を含む。例えば、パワーダイオードまたはパワーMOSFETは、その低電力に
相当するものと同様の原理で動作するが、より大量の電流を伝えることができ、また一般
に、オフ状態においてより大きな逆バイアス電圧に対応することができる。
【0003】
必要とされる、より高い電流密度、より高い電力消費、および/またはより高い逆方向
破壊電圧に対応するために、パワーデバイスの構造の変更がしばしば行われている。小信
号デバイスは横型構造(lateral structure)を使用するが、ディスクリート(すなわち
、集積されていない)パワーデバイスの大部分は、縦型構造(vertical structure)を使
用して形成される。縦型構造を用いると、デバイスの電流定格がその面積に比例し、電圧
阻止能力がダイ(die)の高さによって達成される。縦型構造では、デバイスの接続点の
1つが、半導体の底面に配置される。
【0004】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、通常はシリコン(Si)またはガリウムヒ
素(GaAs)などの半導体材料から製作される半導体トランジスタの一般的なタイプで
ある。Siの1つの欠点は、Siが低電子移動度(600〜1450cm/V−s)を
有し、それが高い性能利得を低下させ得る高ソース抵抗を生み出すことである(例えば、
非特許文献1参照。)。
【0005】
GaAsベースのHEMTは、民間および軍用のレーダ通信、ハンドセット携帯電話(
handset cellular)通信、および衛星通信における信号増幅の標準になっている。GaA
sは、Siよりも高い電子移動度(約6000cm/V−s)、および低いソース抵抗
を有し、それによって、GaAsベースのデバイスの方がより高い周波数で機能すること
が可能になる。しかしGaAsは、シリコンと同様に比較的小さなバンドギャップ(室温
で、シリコンの場合1.12eV、GaAsの場合1.42eV)、および比較的低い破
壊電圧を有し、そのため、GaAsベースおよびシリコンベースのHEMTは、高周波数
において高電力をもたらすことができない。
【0006】
高電力応用分野向けのSiおよびGaAs材料系に伴うこうした欠点に応えて、シリコ
ンをシリコンカーバイド(SiC)やIII族窒化物、例えば窒化ガリウム(GaN)な
どの広バンドギャップ半導体で置き換えることで、パワー半導体デバイスの大きな進歩が
達成された。GaAsおよびSiに比べて、これらの材料の方が一般に、より高い電界破
壊強度およびより高い電子飽和速度を呈する。例えば、シリコンカーバイドMOSFET
は、等価なシリコンベースのデバイスよりも、10から100倍優れた性能(または、よ
り小さなサイズ)をもたらす。1200Vの破壊電圧を有するSiCショットキーダイオ
ードが、商業的に入手可能である。そのどちらも、多数キャリアデバイスであるので、高
速で動作することができる。バイポーラデバイスが、最大20kVまでのより高い電圧向
けに開発されている。シリコンカーバイドは、その諸利点の内、シリコンよりも高い温度
(最大400℃)で動作することができ、またより低い熱抵抗を有し、それによってより
優れた冷却が可能になる。
【0007】
具体的には、GaNパワーHEMTは、SiC MOSFETおよびSi MOSFE
Tの両方よりも高い効率を呈するだけでなく、Siが全く機能しない、より高い周波数に
おいて十分に機能もする。GaNは、パワースイッチング用の任意の半導体デバイスの中
で、最も高い性能指数を有する。GaN HEMTは、その高電子移動度および高破壊電
界のため、他のあらゆる利用可能な半導体より優れた、高電圧パワーデバイスに関するB
aliga直流性能指数(Baliga DC figure)を呈し、その結果、超低オン抵抗(ultra-
low on resistance)および小さなダイサイズをもたらす。
【0008】
HEMTは、HEMT構造内にある、異なるバンドギャップエネルギーを有し、またバ
ンドギャップの小さな方の材料がより高い電子親和力を有する2種類の半導体材料のヘテ
ロ接合部で、2次元電子ガス(2DEG)が形成されるため、多くの状況において動作上
の利点をもたらすことができる。2DEGは、非ドープの、バンドギャップが小さい方の
材料内の蓄積層であり、例えば、1×1013キャリア/cmを上回る、非常に高いシ
ート(sheet)電子濃度を含有することができる。さらに、バンドギャップが広い方の半
導体中からの電子が2DEGに移動し、そこではイオン化不純物散乱が低減されているた
め、高い電子移動度が可能になる。高キャリア濃度と高キャリア移動度とが組み合わさる
ことにより、非常に大きな相互コンダクタンスをHEMTに与えることができ、高周波数
応用分野向けの金属−半導体電界効果トランジスタ(MESFET)に勝る、強力な性能
上の利点をもたらすことができる。
【0009】
GaN HEMTデバイス技術における革新によって、0.5GHzを上回る無線周波
およびマイクロ波周波数で動作可能なデバイスの破壊電圧および電力性能が増大されてき
た。窒化ガリウム/窒化アルミニウムガリウム(GaN/AlGaN)材料系で製作され
る高電子移動度トランジスタは、前述の高破壊電界、広バンドギャップ、大きな伝導帯オ
フセット、および/または高飽和電子ドリフト速度を含む材料特性を併せ持つため、大き
な無線周波電力を発生する可能性を有する。2DEG内の電子の大部分は、AlGaN中
の分極によるものとされている。GaN/AlGaN系によるHEMTが、これまでに実
証されている。AlGaN/GaN HEMTの構造および製作方法が、文献に記載され
ている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照。)。半絶縁性シリコンカーバイド基
板、該基板上に窒化アルミニウムバッファ層、該バッファ層上に絶縁性窒化ガリウム層、
該窒化ガリウム層上に窒化アルミニウムガリウムバリア層、および該窒化アルミニウムガ
リウム活性構造上にパッシベーション層を有するHEMTデバイスが、開示されている(
例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
AlGaN/GaNなどの広バンドギャップ半導体材料製作の改良は、高周波数、高温
、および高電力応用分野向けの高電子移動度トランジスタ(HEMT)などのAlGaN
/GaNトランジスタの開発を進展させる助けとなってきた。AlGaN/GaNは、大
きなバンドギャップ、ならびに高いピーク電子速度値および飽和電子速度値を有する(例
えば、非特許文献2参照。)。AlGaN/GaN HEMTは、1013/cmを超
える2次元電子ガス(2DEG)層シート密度、および比較的高い電子移動度(最大20
19cm/Vs)を呈することもできる(例えば、非特許文献3参照。)。これらの特
性により、AlGaN/GaN HEMTが、無線周波、マイクロ波、およびミリメート
ル波周波数において非常に高い電圧および高い電力動作を実現することが可能になる。
【0011】
AlGaN/GaN HEMTがサファイア基板上に成長され、4.6W/mmの電力
密度および7.6Wの合計電力を示している(例えば、非特許文献4参照。)。より最近
では、SiC上に成長させたAlGaN/GaN HEMTが、8GHzにおいて30W
/mmの電力密度を示しており(例えば、非特許文献5参照)、また9GHzにおいて2
2.9Wの合計出力電力を示している(例えば、非特許文献6参照。)。
【0012】
バッファおよび基板上に成長させたGaN/AlGaNベースのHEMTが開示されて
いる(例えば、特許文献1参照。)。その他のAlGaN/GaN HEMTおよび電界
効果トランジスタ(FET)も、開示されている(例えば、非特許文献7、及び非特許文
献8参照。)。これらのデバイスのいくつかは、100ギガヘルツもの高い利得−帯域幅
積(f)を示し(例えば、非特許文献9参照)、またX帯において最大10W/mmの
高電力密度を示している(例えば、非特許文献10、及び非特許文献11参照。)。
【0013】
電子トラッピング、およびその結果生じる直流特性と無線周波特性との差が、これらの
デバイスの性能における制限要因となっている。このトラッピングの問題を軽減するため
に、窒化シリコン(SiN)パッシベーションが成功裏に使用され、その結果、電力密度
が10GHzにおいて10W/mmを超える高性能デバイスがもたらされている。GaN
ベースのトランジスタ内でトラッピング効果を低減させるための方法および構造が開示さ
れている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、これらの構造内に存在する高電界のた
め、電荷トラッピングは依然として問題である。
【0014】
オーバラップゲート構造(overlapping gate structure)、すなわちフィールドプレー
トが、電界を修正し、それによってマイクロ波周波数におけるGaNベースのHEMTの
性能を高めるために使用されてきた(例えば、非特許文献12参照。)。Karmalk
arらは、フィールドプレート構造に関するシミュレーションを実施し、最大5倍の破壊
電圧の増大を予測した(例えば、非特許文献13参照。)。Andoらは、より小さなゲ
ート寸法を有する同様の構造を使用し、2GHzにおいて10.3W出力電力という性能
を、SiC基板上の1mm幅のデバイスを使用して実証した(例えば、非特許文献14参
照。)。Chiniらは、ゲート寸法がさらに低減された新種のフィールドプレートを設
計し、サファイア基板上の150μm幅のデバイスから、4GHzにおいて12W/mm
を得た(例えば、非特許文献15参照。)。フィールドプレートを備えたGaNベースの
HEMTが、電力密度を、最大8GHzの周波数において30W/mmを上回るところま
で増大させた(例えば、非特許文献16参照。)。
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,192,987号明細書
【特許文献2】米国特許第5,296,395号明細書
【特許文献3】米国特許第6,316,793号明細書
【特許文献4】米国特許第6,586,781号明細書
【特許文献5】米国再発行特許第34,861号明細書
【特許文献6】米国特許第4,946,547号明細書
【特許文献7】米国特許第5,200,022号明細書
【特許文献8】米国特許第6,218,680号明細書
【特許文献9】米国特許第5,210,051号明細書
【特許文献10】米国特許第5,393,993号明細書
【特許文献11】米国特許第5,523,589号明細書
【特許文献12】米国特許第5,592,501号明細書
【特許文献13】米国特許第5,290,393号明細書
【特許文献14】米国特許第5,686,738号明細書
【特許文献15】米国特許第5,739,554号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2003/0102482号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2004/0012015号明細書
【特許文献18】米国特許第6,548,333号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2002/0167023号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2003/0020092号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2005/0051796号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2005/0051800号明細書
【特許文献23】国際公開第2005/024909号パンフレット
【特許文献24】米国特許出願公開第2002/0066908号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2004/0061129号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2005/0173728号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2006/0019435号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2005/0258451号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2005/0258450号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2006/0108606号明細書
【非特許文献1】CRC Press, The Electrical Engineering Handbook, Second Edition, Dorf, p.994, (1997)
【非特許文献2】B. Gelmont, K. Kim and M. Shur, Monte Carlo Simulation of Electron Transport in Gallium Nitride, J. Appl, Phys. 74, (1993), pp. 1818-1821
【非特許文献3】R. Gaska, et al., Electron Transport in AlGaN-GaN Heterostructures Grown on 6H-SiC Substrates, Appl. Phys. Lett. 72, (1998), pp. 707-709
【非特許文献4】Y.F. Wu et al., GaN-Based FETs for Microwave Power Amplification, IEICE Trans. Electron. E-82-C, (1999), pp. 1895-1905
【非特許文献5】Y.-F. Wu, A. Saxler, M. Moore, R.P. Smith, S. Sheppard, P.M. Chavarkar, T. Wisleder, U.K. Mishra, and P. Parikh, "30-W/mm GaN HEMTs by Field Plate Optimization", IEEE Electron Device Letters, Vol. 25, No. 3, pp. 117-119, March 2004
【非特許文献6】M. Micovic, et al., AlGaN/GaN Heterojunction Field Effect Transistors Grown by Nitrogen Plasma Assisted Molecular Beam Epitaxy, IEEE Trans. Electron. Dev. 48, (2001), pp. 591-596
【非特許文献7】Gaska, et al., High-Temperature Performance of AlGaN/GaN HFETs on SiC Substrates, IEEE Electron Device Letters, 18, (1997), pp. 492-494
【非特許文献8】Wu, et al. "High Al-content AlGaN/GaN HEMTs With Very High Performance", IEDM-1999 Digest, pp. 925-927, Washington D.C., December 1999
【非特許文献9】Lu, et al. "AlGaN/GaN HEMTs on SiC With Over 100 GHz ft and Low Microwave Noise", IEEE Transactions on Electron Devices, Vol. 48, No. 3, March 2001, pp. 581-585
【非特許文献10】Wu et al., "Bias-dependent Performance of High-Power AlGaN/GaN HEMTs", IEDM-2001, Washington D.C., Dec. 2-6, 2001
【非特許文献11】Wu et al., High Al-Content AlGaN/GaN MOSFETs for Ultrahigh Performance, IEEE Electron Device Letters 19, (1998), pp. 50-53
【非特許文献12】Zhang et al., IEEE Electron Device Letters, Vol. 21, pp. 421-423 (September 2000)
【非特許文献13】Karmalkar et al., IEEE Trans. Electron Devices, Vol. 48, pp. 1515-1521 (August 2001)
【非特許文献14】Ando et al., IEEE Electron Device Letters, Vol. 24, pp. 289-291 (May 2003)
【非特許文献15】Chini et al., IEEE Electron Device Letters, Vol. 25, No. 5, pp. 229-231 (May 2004)
【非特許文献16】Y-F Wu et al, IEEE Electron Device Letters, Vol. 25, No. 3, pp. 117-119 (March 2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、当技術分野で知られる手法には、パワースイッチングでの高性能用途に
関して制限がある。したがって、当技術分野では、より高い破壊電圧およびより低いオン
抵抗(on resistance)を含み、高周波数において十分に機能するパワースイッチングデ
バイスの必要性が生じてきた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、600ボルト以上の高い阻止電圧を維持すると共に、7.0mΩ−cm
下のオン抵抗を呈することができる、多重フィールドプレートトランジスタ(multiple f
ield plate transistor)を提供する。
【0018】
本発明に従って製作される多重フィールドプレートトランジスタは、活性領域、該活性
領域と電気的に接触しているソース電極、該活性領域と電気的に接触しているドレイン電
極、および該活性領域と電気的に接触している、ソースとドレインの間のゲートを含む。
【0019】
第1の絶縁性スペーサ層が、活性領域の上方でソースとゲートの間に配設され、第2の
絶縁性スペーサ層が、活性領域の上方でドレインとゲートの間に配設される。
【0020】
ソースとゲートの間にある第1のスペーサ層上に配設された第1の導電性フィールドプ
レートが、ゲートに電気的に接続され、ソースに向かって延びる。ドレインとゲートの間
にある第2のスペーサ層上に配設された第2の導電性フィールドプレートが、ゲートに電
気的に接続され、ドレインに向かって延びる。
【0021】
第3の絶縁性スペーサ層が、第1のスペーサ層、第2のスペーサ層、第1のフィールド
プレート、ゲート、および第2のフィールドプレート上で、ソースとドレインの間に配設
される。第3の導電性フィールドプレートが、第3のスペーサ層上に、ゲート、第2のフ
ィールドプレート、および第2のスペーサ層の上方で配設され、ソースに電気的に接続さ
れ、ドレインに向かって延びる。
【0022】
このトランジスタは、
少なくとも600ボルトの阻止電圧を呈するとともに、5.0mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するように、
少なくとも600ボルトの阻止電圧を呈するとともに、5.3mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応するように、
少なくとも900ボルトの阻止電圧を呈するとともに、6.6mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するように、または、
少なくとも900ボルトの阻止電圧を呈するとともに、7.0mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応するように、さまざまに構成することができる

【0023】
より特定の実施形態では、このトランジスタは、高電子移動度トランジスタ(HEMT
)であり、基板、該基板上にバッファ層、および該バッファ層上にバリア層を含み、活性
領域が、バッファ層とバリア層の間のヘテロ界面に誘起される2次元電子ガスによって画
定される。
【0024】
特定の構成では、HEMTの実施形態は、バリア層、半絶縁性SiC基板、GaNバッ
ファ層、AlNバリア層、AlN層とAlGaN層のどちらも含むバリア層、SiNから
なるスペーサ層、および/または金属フィールドプレート内に、部分的に凹んだゲートを
含んでよい。
【0025】
本発明は、
少なくとも600ボルトの阻止電圧を呈するとともに、5.0mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するように構成された、多重フィールドプレー
トトランジスタ、
少なくとも600ボルトの阻止電圧を呈するとともに、5.3mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応するように構成された、多重フィールドプレー
トトランジスタ、
少なくとも900ボルトの阻止電圧を呈するとともに、6.6mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するように構成された、多重フィールドプレー
トトランジスタ、および
少なくとも900ボルトの阻止電圧を呈するとともに、7.0mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応するように構成された、多重フィールドプレー
トトランジスタも包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、破壊電圧の増大および電力性能の改善、すなわちパワースイッチング用途に
特に有利な特性を呈する、多重フィールドプレートトランジスタを提供する。例えば、い
くつかの実施形態では、本発明は、少なくとも600ボルトの阻止電圧を有するとともに
、5.0mΩ−cm以下のオン抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するトランジ
スタ、および5.3mΩ−cm以下のオン抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応す
るトランジスタ、ならびに少なくとも900ボルトの阻止電圧を有するとともに、6.6
mΩ−cm以下のオン抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するトランジスタ、お
よび7.0mΩ−cm以下のオン抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応するトラン
ジスタを提供する。
【0027】
本発明の諸実施形態は、III族窒化物ベースのHEMTなど、窒化物ベースのデバイ
スで使用するのに特に十分に適切となり得る。本明細書では、「III族窒化物」という
用語は、窒素と周期表のIII族の元素、一般にアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga
)、および/またはインジウム(In)との間で形成された半導体化合物を指す。この用
語は、AlGaNやAlInGaNなどの三元化合物および四元化合物も指す。当業者に
は十分に理解されるように、III族元素は窒素と結合して、二元化合物(例えば、Ga
N)、三元化合物(例えば、AlGaNおよびAlInN)、ならびに四元化合物(例え
ばAlInGaN)を形成することができる。これらの化合物は全て、1モルの窒素が合
計1モルのIII族元素と一緒になった実験式を有する。したがって、それらを記述する
ために、AlGa1−xN(ただし、0≦x≦1)などの式がしばしば使用される。
【0028】
本発明の多重フィールドプレートトランジスタは、金属のソース電極およびドレイン電
極が電気的に接触している活性領域、ならびにソース電極とドレイン電極の間にあり、活
性領域内の電界を変調するためのゲートを含む。第1の絶縁性スペーサ層が、活性領域の
少なくとも一部分の上方でソースとゲートの間に配置される。1層の誘電体層または複数
の誘電体層の組合せで形成することができる第1のスペーサ層は、好ましくは、活性領域
をゲート電極とソース電極の間で覆うが、それよりも少なく覆ってもよい。
【0029】
第2の絶縁性スペーサ層が、活性領域の少なくとも一部分の上方でドレインとゲートの
間に配置される。第1のスペーサ層と同様に、第2のスペーサ層も、1層の誘電体層また
は複数の誘電体層の組合せで形成することができ、第2のスペーサ層は、好ましくは活性
領域をゲート電極とソース電極の間で覆うが、それよりも少なく覆ってもよい。
【0030】
第1の導電性フィールドプレートが、第1のスペーサ層上に配置され、ゲートに電気的
に接続され、ソースに向かって延び、第1のスペーサ層は、第1のフィールドプレートと
活性領域の間に電気的な分離をもたらす。やはりゲートに電気的に接続される第2の導電
性フィールドプレートが、第2のスペーサ層上に配置され、ドレインに向かって延び、第
2のスペーサ層は、第2のフィールドプレートと活性領域の間に電気的な分離をもたらす

【0031】
第1および第2のスペーサ層、第1および第2のフィールドプレート、ならびにゲート
上に位置付けられる第3の絶縁性スペーサ層が、ソースとドレインの間に配置される。第
3のスペーサ層上に配置される第3の導電性フィールドプレートが、ゲート、第2のフィ
ールドプレート、および第2のスペーサの上方に位置付けられ、ソースに電気的に接続さ
れ、ドレインに向かって延び、第3のスペーサ層は、第3のフィールドプレートを分離す
る。
【0032】
このようなフィールドプレートの配置は、トランジスタ内のピーク電界を低減させる助
けになり、その結果、破壊電圧の増大およびトラッピングの低減がもたらされる。電界を
低減させると、漏れ電流の低減や信頼性の向上など、他の利点を生み出すこともできる。
フィールドプレートをソース電極に電気的に接続することによって、フィールドプレート
がゲートに接続されることから生じる利得の低減および不安定性が、低減される。本発明
に従って配置すると、ソースに接続されたフィールドプレートの遮蔽効果によって、ゲー
トとドレインの間の容量(Cgd)が低減され、それにより入力−出力の分離が強化され
得る。
【0033】
本発明の多重フィールドプレート配置を効果的に利用することができるトランジスタの
1つのタイプが、高電子移動度トランジスタ(HEMT)である。本発明に従って製作さ
れたHEMTが、図1および2に示してあり、図1はHEMTの平面図であり、図2は断
面図である。HEMTは、基板10を含み、基板10は、例えば4Hポリタイプのシリコ
ンカーバイドなどの半絶縁性シリコンカーバイド(SiC)基板でよい。シリコンカーバ
イドポリタイプの他の候補は、3C、6Hおよび15Rポリタイプを含む。「半絶縁性」
という用語は、絶対的な意味ではなく、説明的なものとして使用される。本発明の特定の
諸実施形態では、シリコンカーバイドのバルク結晶が、室温で約1×10Ω−cm以上
の抵抗率を有する。
【0034】
適当なSiC基板が、例えば、ノースカロライナ州ダラム在の本件特許出願人により製
造されており、そのような材料を製作する方法が、文献に記載されている(例えば、特許
文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8参照。)。同様に、III族窒化物のエピ
タキシアル成長技法についても開示されている(例えば、特許文献9、特許文献10、特
許文献11、特許文献12参照。)。
【0035】
シリコンカーバイドは、基板材料として使用することができるが、本発明の諸実施形態
では、サファイア、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化ガリウム、シリ
コン、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InPなど、任意の適切な基板、あるいはI
II族窒化物材料の成長に対応することができる他の任意の材料または材料の組合せを利
用することができる。
【0036】
基板10上に、核形成層および/または遷移層を、任意選択で設けることができる。例
えば、核形成層12が図2に示してある。核形成層が使用されるかどうかは、基板に使用
される材料による。核形成層は、基板と、デバイス内の次の層との間の格子不整合を低減
させるための適当な結晶構造の遷移をもたらす。例えば、さまざまな基板上に核形成層を
形成する方法が教示されている(例えば、特許文献13、特許文献14参照。)。シリコ
ンカーバイド基板上に核形成層を形成する方法が、開示されている(例えば、特許文献1
0、特許文献11、特許文献15参照。)。核形成層12は、約1000Åの厚さとすべ
きだが、他の厚さを使用することもできる。核形成層を、適切な材料がAlGa1−x
N(0≦x≦1)である多くのさまざまな材料を使用して、また有機金属化学気相成長(
MOCVD)、ハイドライド気相エピタキシ(HVPE)、または分子線エピタキシ(M
BE)など、既知の半導体成長技法を使用して、基板上に堆積させることができる。
【0037】
さらに、1層または複数層の歪バランス遷移層(strain balancing transition layer
)を、文献に開示されているように含むこともできる(例えば、特許文献16、及び特許
文献17参照。)。
【0038】
高抵抗率GaNバッファ層14が、核形成層12によってもたらされる遷移構造を使用
して、基板10上に堆積される。バッファ層14は、圧縮歪み(compressive strain)を
受けていてよい。さらに、バッファ層、および核形成層や遷移層などの他の層は、MOC
VD(有機金属化学気相成長)によって、あるいはMBE(分子線エピタキシ)またはH
VPE(ハイドライド気相エピタキシ)など、当業者には公知の他の半導体成長技法によ
って堆積させることができる。
【0039】
バッファ層は、III族窒化物材料からなるドープ層または非ドープ層で製作すること
ができ、好ましいバッファ層は、AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦
1、x+y≦1)などのIII族窒化物材料で形成される。
【0040】
バリア層16が、バリア層のバンドギャップ未満のバンドギャップを有し、バリア層よ
りも大きな電子親和力を有するバッファ層14上に堆積される。バッファ層14と同様に
、バリア層16も、III族窒化物材料からなるドープ層または非ドープ層でよい。バリ
ア層はAlNでよく、またはいくつかの実施形態では、バリア層は、AlN層やAlGa
N層など、複数の層を含むことができる。適切なバリア層の例が、文献に開示されている
(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献18、特許文献19、特許文献20参照。
)。他の窒化物ベースHEMT構造が、文献に例示されている(例えば、特許文献1、特
許文献2参照。)。
【0041】
バリア層は、例えば、約0.8nmの厚さを有するAlN層と、24%のAlおよび約
250Åの厚さを有するAlGaN層とを含むことができる。バリア層は、十分に厚くあ
るべきであり、バッファ層14とバリア層16の間の境界面に分極効果によって十分なキ
ャリア濃度を誘起するために、十分に高いAlの組成およびドーピングを有すべきである
。こうすることにより、活性領域として知られる2次元電子ガス(2DEG)が、バッフ
ァ層とバリア層の間のヘテロ界面に形成される。
【0042】
ソース接点18およびドレイン接点20が、バリア層16へのオーム接点として設けら
れる。オーム接点は、バリア層を通じて活性領域に抵抗率の低い接続をもたらすように、
(例えば、アニールによって)処理される。バリア層上のゲート接点22が、バリア層内
に深さDまで広がってよい。図1に示すように、外部電気接続24を、ゲート22に設
けることができる。ゲートに適当なレベルでバイアスがかけられると、電流が、ソース電
極とドレイン電極の間に、バッファ層とバリア層の間のヘテロ界面に誘起された2DEG
を通って流れることができる。
【0043】
ソース電極18およびドレイン電極20は、チタン、アルミニウム、金、およびニッケ
ルの合金を含むがそれらに限定されない、さまざまな材料で形成することができる。ゲー
ト22も、金、ニッケル、白金、チタン、クロム、チタンとタングステンの合金、および
白金シリサイドを含むがそれらに限定されない、さまざまな材料で形成することができる
。ゲート22の長さLはさまざまでよく、適切な長さは0.1から2μmの範囲内であ
るが、他のゲート長を使用することもできる。本発明による一実施形態では、好ましいゲ
ート長Lは、約0.5μmである。
【0044】
第1の絶縁性スペーサ層26が、バリア層上でソースとゲートの間に堆積され、第2の
絶縁性スペーサ層28が、バリア層上でドレインとゲートの間に堆積される。任意選択で
、層26および28を初めに単一の層として形成し、それを後にエッチングにより貫通し
て、ゲート22を形成してもよい。スペーサ層26および28は、1層の誘電体層でも、
複数の誘電体層の組合せでもよい。SiN、SiO、Si、Ge、MgO、MgN
、ZnO、SiN、SiO、ならびにそれらの合金および層を並べたものなどの、さ
まざまな誘電体材料を使用することができる。スペーサ層は、さまざまな厚さにすること
ができ、適切な厚さの範囲は、約0.05から2μmである。
【0045】
スペーサ層は、デバイスのメタライゼーションの前に形成される場合、Al、Gaまた
はInの合金などの異なるIII族元素を有する、III族窒化物材料などのエピタキシ
アル材料とすることができ、適切なスペーサ層材料は、AlGa1−xN(0.1≦x
≦1)である。バリア層16をエピタキシアル成長させた後、スペーサ層26および28
を、同じエピタキシアル成長法を使用して成長させることができる。
【0046】
スペーサ層26上でソースとゲートの間にある第1の導電性フィールドプレート30が
、ゲート22に電気的に接続される。スペーサ層28上でドレインとゲートの間にある第
2の導電性フィールドプレート32も、ゲートに電気的に接続される。フィールドプレー
ト30および32は、さまざまな導電性材料から形成することができ、適切な材料は、標
準的なメタライゼーション技法を使用して堆積される金属である。フィールドプレートを
備えるトランジスタおよびそうしたトランジスタを製作する方法が、文献に開示されてい
る(例えば、特許文献21、特許文献22、特許文献23参照。)。
【0047】
第3の絶縁性スペーサ層34が、第1のスペーサ層26および第2のスペーサ層28、
第1のフィールドプレート30および第2のフィールドプレート32、ならびにゲート2
2上で、ソースとドレインの間に形成される。このスペーサ層は、第1および第2のスペ
ーサ層に関して上述したものと同様の材料で、また同様の処理によって形成することがで
きる。
【0048】
第3の導電性フィールドプレート36が、第3のスペーサ層上に、ゲート、第2のフィ
ールドプレート、および第2のスペーサ層の上方で堆積され、ドレインに向かって延び、
ソースに電気的に接続される。第3のフィールドプレートは、ソースにさまざまな方法で
電気的に接続することができる。図1は、例えば、導電性バス38および40を介した接
続を示す。あるいは、外部バス42が接続を形成することもできる。他の接続構造を使用
することもできる。さまざまな数のバスを使用することができるが、使用されるバスが多
いほど、生じ得る望ましくない容量が大きくなる。生じる望ましくない容量の総量を最小
限に抑えるために、できるだけ少ないHEMTの活性領域を覆いながら、電流がソースか
らフィールドプレート内に効果的に分散することができるように、十分な本数のバスがあ
るべきである。
【0049】
第3のフィールドプレートを堆積させ、それをソース電極に接続した後、活性構造を、
窒化シリコンなどの誘電体パッシベーション層(図示せず)によって覆うことができる。
誘電体パッシベーション層を形成する方法が、上述した特許文献および非特許文献に詳細
に記載されている。
【0050】
図1および2に示すHEMTと同様に製作されたデバイスに関する性能結果が得られた
。図3および4に示すように、2Aの電流を伝えることができるデバイスにおいて、60
0Vを上回る阻止電圧が、5.0mΩ−cm未満のオン抵抗とともに達成された。この
デバイスは、3Aの電流を伝えるときに5.3mΩ−cm未満のオン抵抗も呈した。こ
のデバイスは、0.01cm(1×1mm)のデバイス面積、ならびに4Åの厚さの
AlN層および250Åの厚さのAlGaN層を含むバリア層を有する、SiC基板上の
GaN HEMTであった。第1のスペーサ層の厚さが0であり、第2のスペーサ層の厚
さが約1200Åであり、第3のスペーサ層の厚さが約1500Åであった。設計寸法は
、(図2を参照して)ゲート接点長L1.2μm、ゲートからドレインまでの距離L
13.3μm、ドレインからソースまでの距離Lds16μm、第2のフィールドプレ
ート幅Lfd11.8μm、および第3のフィールドプレート幅Lfd24.5μmを含
んだ。
【0051】
図3は、このデバイスに関する、ゲート電圧Vが1Vから2Vまで変化する場合の、
ドレイン電流I対ドレイン−ソース電圧VDSのプロット図である。図4は、このデバ
イスが600Vの阻止電圧VBDを達成した様子を示す。
【0052】
図5および6に示すように、2Aの電流を伝えることができるデバイスにおいて、90
0Vを上回る阻止電圧が、6.6mΩ−cm未満のオン抵抗とともに達成された。この
デバイスは、3Aの電流を伝えるときに7.0mΩ−cm未満のオン抵抗も呈した。こ
のデバイスは、0.01cm(1×1mm)のデバイス面積、ならびに4Åの厚さの
AlN層および250Åの厚さのAlGaN層を含むバリア層を有する、SiC基板上の
GaN HEMTであった。第1のスペーサ層の厚さが0であり、第2のスペーサ層の厚
さが約1200Åであり、第3のスペーサ層の厚さが約1500Åであった。設計寸法は
、(図2を参照して)ゲート接点長L1.5μm、ゲートからドレインまでの距離L
18.0μm、ドレインからソースまでの距離Lds21.5μm、第2のフィールド
プレート幅Lfd11.5μm、および第3のフィールドプレート幅Lfd24.5μm
を含んだ。
【0053】
図5は、このデバイスに関する、ゲート電圧Vが1Vから−2Vまで変化する場合の
、ドレイン電流I対ドレイン−ソース電圧VDSのプロット図である。図6は、このデ
バイスが900Vの阻止電圧VBDを達成した様子を示す。
【0054】
以上、本発明の諸実施形態を、特定の構造を参照して説明したが、本発明のいくつかの
実施形態では、本発明のデバイスを製作するための他の構造および/または技法を利用す
ることもできる。そうした構造および/または技法は、例えば、米国の本願の譲受人に譲
渡された、「Nitride Based Transistors on Semi-Insulating Silicon Carbide Substra
tes」(特許文献3)、「Aluminum Gallium Nitride/Gallium Nitride High Electron Mo
bility Transistors having a Gate Contact on a Gallium Nitride Based Cap Segment
and Methods of Fabricating Same」(特許文献24)、「Group III Nitride Based Hig
h Electron Mobility Transistor (HEMT) with Barrier/Spacer Layer」(特許文献19
)、「Nitride-based Transistors and Methods of Fabrication Thereof Using Non-Etc
hed Contact Recesses」(特許文献25)、「Nitride Heterojunction Transistors Hav
ing Charge-Transfer Induced Energy Barriers and Methods of Fabricating the Same
」(特許文献26)、「Methods of Fabricating Nitride-Based Transistors with a Ca
p Layer and a Recessed Gate」(特許文献27)、「Methods of Fabricating Nitride-
Based Transistors having Regrown Ohmic Contact Regions and Nitride-Based Transis
tors having Regrown Ohmic Contact Regions」(特許文献28)、「Semiconductor Dev
ices having a Hybrid Channel Layer, Current Aperture Transistors and Methods of
Fabricating Same」(特許文献29)、「Insulating Gate AlGaN/GaN HEMT」(特許文献
20)、および「Cap Layers and/or Passivation Layers for Nitride-Based Transisto
rs, Transistor Structures and Methods of Fabricating Same」(特許文献30)に記
載されているものを含むことができる。
【0055】
本明細書で使用される用語は、特定の諸実施形態についてのみ説明するものであり、本
発明を限定するものではないことに留意されたい。図面では、層や領域などの構成要素の
厚さが、見やすくするために誇張される場合がある。同じ数字は、明細書全体を通じて同
じ要素を表す。「および/または」という語は、列挙された関連する諸項目の1つまたは
複数のあらゆる組合せを含む。
【0056】
単数形「1つの(a、an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに示す場
合を除き、複数形も含むものとする。「備える(comprises、comprisi
ng)」という語は、本明細書中で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、
動作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つあるいは複数の他の特徴、
整数、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはそれらの群の、存在または追加を
妨げない。
【0057】
層、領域、または基板などの要素が、別の要素「上に」ある、または別の要素「上に」
延びているという場合、その要素は、直接他の要素上にあっても、他の要素上に延びても
よく、または介在する要素が存在してもよい。それとは対照的に、要素が、別の要素の「
直接上に」ある、または別の要素の「直接上に」延びているという場合、介在する要素は
存在しない。さらに、要素が別の要素に「接続されている」または「結合されている」と
いう場合、その要素は、直接他の要素に接続されても、結合されてもよく、または介在す
る要素が存在してもよい。それとは対照的に、要素が別の要素に「直接接続されている」
または「直接結合されている」という場合、介在する要素は存在しない。
【0058】
構成要素、領域、層および/または部分などのさまざまな要素について説明するために
、第1、第2などの語が使用されることがあるが、それらの要素は、こうした語によって
限定されない。そうではなく、こうした語は、ある要素、構成要素、領域、層、または部
分を、別のものと区別するために使用される。したがって、例えば、第1の要素、構成要
素、領域、層または部分は、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素
、領域、層または部分と呼ぶことができる。
【0059】
「低い方の」または「底部の」や、「高い方の」または「上部の」などの相対語が、図
面中に示した、ある要素の別の要素との関係を説明するために使用されることがある。そ
のような相対語は、図面内に示された向きに加えて、デバイスのさまざまな向きを含むも
のである。例えば、図面内のデバイスが裏返しにされる場合、他の要素の「低い方の」側
にあると説明された要素は、他の要素の「高い方の」側に向けられることになる。したが
って、「低い方の」という例示的な語は、図面の特定の向きに応じて、「低い方の」と「
高い方の」のどちらも含むことができる。同様に、「下の(below、beneath
)」という例示的な語は、上の向きと下の向きのどちらも含むことができる。さらに、「
外側の」という語は、基板から最も遠く離れた表面および/または層を指すのに使用する
ことができる。
【0060】
本発明の諸実施形態は、本発明の理想化された諸実施形態を概略的に示す平面図、断面
図および/または他の図を参照して説明される。したがって、例えば製造技法および/ま
たは公差(tolerance)の結果として、図の形状との違いが予想される。したがって、本
発明の諸実施形態は、図示の特定の形状に限定されると解釈すべきではなく、例えば製造
から生じるずれを含むべきである。例えば、長方形として示されるエッチングされた領域
は、実際には一般に、テーパ状の特徴、丸い特徴または曲線状の特徴を有する。別の特徴
に「隣接して」配設される構造または特徴という言及は、隣接する特徴とオーバラップす
る、またはその下にある部分を含むことがある。
【0061】
別段定義されない限り、技術用語および科学用語を含む、本明細書で使用されるあらゆ
る用語は、本発明に関係する当業者によって一般に理解される意味を有する。さらに、一
般に使用される辞書で定義されるような用語は、関連技術の文脈におけるその意味と一致
する意味を有すると解釈すべきであり、そのような用語は、本明細書において明示的にそ
のように定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味として解釈すべきで
ない。
【0062】
本発明は、いくつかの好ましい構成を参照して詳細に説明および図示されたが、変更形
態および追加の実施形態を含む他のバージョンが、当業者には疑問の余地なく明らかとな
るであろう。例えば、フィールドプレートの配置を、多くのさまざまなデバイスで使用す
ることができる。フィールドプレートは、さまざまな形状を有することもでき、ソース接
点にさまざまな方法で接続することができる。さらに、本発明は、パワースイッチング用
途に特に有用であるが、例えばスイッチモード電源および高電圧モータ駆動装置用の直流
−直流変換器などの他の用途にも、そうしたシステムでの効率増大およびサイズ低減を助
けるために使用することができる。したがって、本発明の趣旨および範囲は、本明細書に
記載の本発明の諸実施形態に限定すべきではない。そうではなく、それらの実施形態は、
本開示を網羅的で完全なものにするために、また本発明の範囲を当業者に十分に伝えるた
めに、提供されるものである。
【0063】
さらに、等価な要素を、本明細書に示し記載したものの代わりに用いることができ、部
品または接続を逆にする、あるいは交換することができ、本発明のいくつかの特徴を、他
の特徴とは関わりなく利用することができる。したがって、例示的な諸実施形態は、包括
的ではなく例示的なものと見なすべきであるとともに、添付の特許請求の範囲が、本発明
の全範囲を定義するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態による高電子移動度トランジスタ(HEMT)の平面図である。
【図2】図1に示されるHEMTを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による600V HEMTの、1Vから−2Vのさまざまなゲート電圧での性能を示す、ドレイン電流I対ドレイン−ソース電圧VDSのプロット図である。
【図4】図3に示すHEMTが600Vの阻止電圧を達成した様子を示す、ドレイン電流I対ドレイン−ソース電圧VDSのプロット図である。
【図5】本発明の一実施形態による900V HEMTの、1Vから−2Vのさまざまなゲート電圧での性能を示す、ドレイン電流I対ドレイン−ソース電圧VDSのプロット図である。
【図6】図5に示すHEMTが900Vを超える阻止電圧を達成した様子を示す、ドレイン電流I対ドレイン−ソース電圧VDSのプロット図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重フィールドプレートトランジスタであって、
活性領域と、
前記活性領域と電気的に接触しているソース電極と、
前記活性領域と電気的に接触しているドレイン電極と、
前記活性領域と電気的に接触している、前記ソースと前記ドレインの間のゲートと、
前記活性領域の上方で前記ソースと前記ゲートの間に配設された第1の絶縁性スペーサ
層と、
前記活性領域の上方で前記ドレインと前記ゲートの間に配設された第2の絶縁性スペー
サ層と、
前記ソースと前記ゲートの間にある前記第1のスペーサ層上に配設され、前記ゲートに
電気的に接続され、前記ソースに向かって延びる第1の導電性フィールドプレートと、
前記ドレインと前記ゲートの間にある前記第2のスペーサ層上に配設され、前記ゲート
に電気的に接続され、前記ドレインに向かって延びる第2の導電性フィールドプレートと

前記第1のスペーサ層、前記第2のスペーサ層、前記第1のフィールドプレート、前記
ゲート、および前記第2のフィールドプレート上で、前記ソースと前記ドレインの間に配
設された第3の絶縁性スペーサ層と、
前記第3のスペーサ層上に、前記ゲート、前記第2のフィールドプレート、および前記
第2のスペーサ層の上方で配設され、前記ソースに電気的に接続され、前記ドレインに向
かって延びる第3の導電性フィールドプレートと
を備えたことを特徴とする多重フィールドプレートトランジスタ。
【請求項2】
少なくとも600ボルトの阻止電圧を呈するとともに、5.0mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するように構成されたことを特徴とする請求項
1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
少なくとも600ボルトの阻止電圧を呈するとともに、5.3mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応するように構成されたことを特徴とする請求項
1に記載のトランジスタ。
【請求項4】
少なくとも900ボルトの阻止電圧を呈するとともに、6.6mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも2アンペアの電流に対応するように構成されたことを特徴とする請求項
1に記載のトランジスタ。
【請求項5】
少なくとも900ボルトの阻止電圧を呈するとともに、7.0mΩ−cm以下のオン
抵抗で少なくとも3アンペアの電流に対応するように構成されたことを特徴とする請求項
1に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記第1のスペーサ層および前記第2のスペーサ層が、前記活性領域の表面上に配設さ
れた単一層の部分を備えたことを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項7】
高電子移動度トランジスタを備えたことを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に配設されたバッファ層と、
前記バッファ層上に配設されたバリア層と
をさらに備え、
前記活性領域が、前記バッファ層と前記バリア層との間のヘテロ界面に誘起される2次
元電子ガスによって画定されたことを特徴とする請求項7に記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記ゲートが、前記バリア層内に部分的に凹んだことを特徴とする請求項8に記載のト
ランジスタ。
【請求項10】
前記基板が、半絶縁性SiC基板を備えたことを特徴とする請求項8に記載のトランジ
スタ。
【請求項11】
前記第1のスペーサ層は、第1のSiNスペーサ層を備え、前記第2のスペーサ層は、
第2のSiNスペーサ層を備え、前記第3のスペーサ層は、第3のSiNスペーサ層を備
えたことを特徴とする請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項12】
前記第1のフィールドプレートは、第1の金属フィールドプレートを備え、前記第2の
フィールドプレートは、第2の金属フィールドプレートを備え、前記第3のフィールドプ
レートは、第3の金属フィールドプレートを備えたことを特徴とする請求項8に記載のト
ランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147034(P2012−147034A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−106265(P2012−106265)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2007−245497(P2007−245497)の分割
【原出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】