説明

太陽電池保護膜用易接着性フィルムおよびそれを用いた太陽電池保護膜

【課題】優れた機械的性質、耐熱性、耐湿性、透明性、EVAとの接着性を有しながら、耐光性に優れた太陽電池保護膜用易接着性フィルムを提供する。
【解決手段】波長380nmでの光線透過率が5%以下、400nmでの光線透過率が50%以下かつ420nmでの光線透過率が70%以上であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびこのうえに塗設された皮膜からなる太陽電池保護膜用易接着性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池保護膜用易接着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムは、クリーンエネルギーを利用する発電手段の一つとして、普及が進んでいる。太陽電池モジュールの構造は、例えば実開平6−38264号公報に記載があるように、一般的には、受光側のガラス基板と、裏面側の保護膜との間に、複数の板状太陽電池素子を挟み、内部の隙間に封止樹脂を充填した構造となっている。封止樹脂としては、透明性が高く、耐湿性が優れているという理由でエチレンビニルアセテート(以下、「EVA」という)が用いられる。
【0003】
保護膜には、ポリエチレン樹脂やポリエステル樹脂シート、フッ素樹脂フィルムが用いられる(特開平11−261085号公報、特開平11−186575号公報)。しかし、このような保護膜はEVAとの接着性が必ずしも十分でなく、長期耐久性に不安が残る。
【0004】
他方、ポリエステルシートを延伸したポリエステルフィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐湿性を有する。しかし、ポリエステルフィルム、特に二軸延伸し、高度に配向結晶化したポリエステルフィルムは、その表面が不活性であり、EVAとの接着性は極めて悪い。このようなポリエステルフィルムとEVAとの接着性を改善するために、特開2003−60218号公報には、スチレン・オレフィン共重合体樹脂からなる熱接着層を積層することが提案されている。
【0005】
さらに、受光側となる表面にも、ガラスの替わりにプラスチックフィルムを用いて軽量化、フレキシブル化を図る検討が近年進んでいる。このとき、表面の保護膜としてポリエステルフィルムを使用する場合、長期の耐光性が問題となる場合がある。これに対し、特開平11−40833号公報には、紫外線吸収層を設けた積層フィルムが提案されている。しかしながら、塗工により紫外線吸収層を設ける場合、光劣化の原因となる波長の光を十分に吸収するためには10μm以上の塗工が必要となり、通常の塗工方式では塗工が極めて困難になるとともに、従来使用されているベンゾトリアゾール系などの一般的な紫外線吸収剤では、400nmの光を吸収できるものはほとんど見出ず、十分な耐光性を示すものではなかった。
【0006】
【特許文献1】実開平6−38264号公報
【特許文献2】特開平11−261085号公報
【特許文献3】特開平11−186575号公報
【特許文献4】特開2003−60218号公報
【特許文献5】特開平11−40833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、長寿命の太陽光発電システムを構築し得る、優れた機械的性質、耐熱性、耐湿性、透明性、EVAとの接着性を有しながら、耐光性に優れた太陽電池保護膜用易接着性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、波長380nmでの光線透過率が5%以下、400nmでの光線透過率が50%以下かつ420nmでの光線透過率が70%以上であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびこのうえに塗設された皮膜からなる太陽電池保護膜用易接着性フィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた機械的性質、耐熱性、耐湿性、透明性、EVAとの接着性を有しながら、耐光性に優れた太陽電池保護膜用易接着性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂フィルム]
本発明における熱可塑性樹脂フィルムは、波長380nmでの光線透過率が5%以下、400nmでの光線透過率が50%以下かつ420nmでの光線透過率が70%以上であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムである。波長380nmでの光線透過率が5%を超えるか、または400nmでの光線透過率が50%を超えると、長期の耐光性が低下することがある。420nmでの光線透過率が70%未満であると太陽電池の発電効率が低下することがある。フィルムのポリエステルが、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートでないと、太陽電池保護膜用易接着性フィルムとして必要な機械的強度を確保することができない。
【0011】
この光線透過率を備えるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムとしては、紫外線吸収剤0.05〜30重量%を含有するポリエチレンナフタレンジカルボキシレート組成物からなるフィルムを用いることが好ましく、特に紫外線吸収剤0.05〜30重量%を含有するポリエチレンナフタレンジカルボキシレート組成物からなるフィルムを用いることが好ましい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤とポリエチレンナフタレンジカルボキシレートとの合計100重量%あたり、好ましくは0.05〜30重量%、さらに好ましくは0.08〜20重量%含有させる。この範囲であれば、紫外線吸収効果を発揮しなおかつ均一に分散させることができる。
【0012】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートとしては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、これは共重合ポリエステルであってもよい。
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートには、製膜時のフィルムの巻取り性や、太陽電池用保護膜加工工程におけるフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させてもよい。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子が例示される。
【0013】
本発明のフィルムを特に太陽電池表面保護膜として使用する場合には、透過する光線を極力増加させる観点から、添加する滑剤の量は必要最小限とするのが好ましく、実質的に含有させないことがより好ましい。この場合には、後述するように塗設する塗膜のなかに滑剤を含有させるとよい。
他方、本発明のフィルムを特に太陽電池裏面保護膜として使用する場合には、表面反射率の向上や意匠性の観点から、白色や黒色、また他の色に着色してもよい。
【0014】
[紫外線吸収剤]
本発明における紫外線吸収剤としては、本発明の光線透過率を得るために、下記式(I)または(II)で表わされる環状イミノエステルを用いる。
【0015】
環状イミノエステル(I)
【化1】

(ここで、Xは、上記式に表わされたXからの2本の結合手が1位、2位の位置関係にある2価の芳香族残基であり、Xは1、2または3価の芳香族残基であり、X、Xの少なくとも一つはナフタレン残基であり、nは1、2または3である。)
【0016】
環状イミノエステル(II)
【化2】

(ここで、Aは下記式(II)−a
【化3】

で表わされる基であるか、または
下記式(II)−b
【化4】

で表わされる基であり、RおよびRは同一もしくは異なり1価の炭化水素残基であり、Xはナフタレン環残基である。)
【0017】
上記(I)式でXは、上記式に表わされたXからの2本の結合手が1位、2位の位置関係にある、2価の芳香族残基である。Xがナフタレン残基の場合の結合部位として、1,2位、2,3位などが挙げられるが、より好ましくは2、3位である。またXは一部置換されていてもよい。置換基として例えば炭素数1〜10のアルキル例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル等;炭素数6〜12のアリール例えばフェニル等;炭素数5〜12のシクロアルキル例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等;炭素数8〜20のアラルキル例えばフェニルエチル等;炭素数1〜10のアルコキシ例えばメトキシ、エトキシ、デシルオキシ等;ニトロ;エステル;アミド;イミド;ハロゲン例えば塩素、臭素等;炭素数2〜10のアシル例えばアセチル、プロポニル、ゼンゾイル、デカノイル等;などが挙げられる。
【0018】
は1,2または3価の芳香族残基である。n=1の場合Xは1価であり同様にn=2では2価、n=3では3価である。Xがナフタレン残基でなおかつn=1の場合、結合部位は1位もしくは2位が挙げられる。より好ましくは2位である。またXがナフタレン残基でなおかつn=2の場合の結合部位は1、2位、1,3位、1,4位、1,5位、1,6位、1,7位、1,8位、2,3位、2,6位、2,7位が挙げられる。よりこのましくは結合基同士が離れている1,3位、1,4位、1,5位、1,6位、2,6位、2,7位である。更に好ましくは2,6位である。X2がナフタレン残基でなおかつn=3の場合、1,2,3位、1,2,4位、1,2,5位、1,2,6位、1,2,7位、1,2,8位、2,3,5位、2,3,6位、1,3,5位、1,3,6位、1,3,7位、1,3,8位、1,4,5位、1,4,6位が挙げられる。より好ましくは結合部位が離れている、1,3,5位、1,3,6位、1,3,7位、1,4,6位が挙げられる。
【0019】
は一部置換されていてもよい。置換基として例えば炭素数1〜10のアルキル例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル等;炭素数6〜12のアリール例えばフェニル等;炭素数5〜12のシクロアルキル例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等;炭素数8〜20のアラルキル例えばフェニルエチル等;炭素数1〜10のアルコキシ例えばメトキシ、エトキシ、デシルオキシ等;ニトロ;ハロゲン例えば塩素、臭素等;炭素数2〜10のアシル例えばアセチル、プロポニル、ゼンゾイル、デカノイル等;などが挙げられる。
【0020】
上記(I)式で表わされる化合物として、以下に示すn=1の場合の化合物、n=2の場合の化合物およびn=3の場合の化合物が好ましく、ヘーズを低く抑さえ、太陽電池の表面に保護膜として用いるときに必要な透明性を確保する観点から分子内にナフタレン環を有する化合物が好ましく、特にn=2の場合の化合物が好ましい。
【0021】
n=1の場合
【化5】

n=2の場合
【化6】

n=3の場合
【化7】

【0022】
なお、上記n=1から3の場合において、芳香族環の一部が置換されていてもよい。置換基としては前記Xの一部を置換することができる置換基として挙げたものを用いることができる。
【0023】
上記(II)式でXは、4価のナフタレン環である。環状イミノエステル及びAとの結合部位としては1,2位と3,4位、1,2位と5,6位、1,2位と6,7位、1,2位と7,8位、2,3位と5,6位、2,3位と6,7位が挙げられる。より好ましくは、1,2位と5,6位、1,2位と6,7位、2,3位と6,7位である。Xは一部置換されていてもよい。置換基として例えば炭素数1〜10のアルキル例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル等;炭素数6〜12のアリール例えばフェニル等;炭素数5〜12のシクロアルキル例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等;炭素数8〜20のアラルキル例えばフェニルエチル等;炭素数1〜10のアルコキシ例えばメトキシ、エトキシ、デシルオキシ等;ニトロ;ハロゲン例えば塩素、臭素等;炭素数2〜10のアシル例えばアセチル、プロポニル、ゼンゾイル、デカノイル等;などが挙げられる。
【0024】
及びRとしては、1価の炭化水素基であればよい。例えば炭素数1〜10のアルキル例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル等;炭素数6〜12のアリール例えばフェニル等;炭素数5〜12のシクロアルキル例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等;炭素数8〜20のアラルキル例えばフェニルエチル等;炭素数1〜10のアルコキシ例えばメトキシ、エトキシ、デシルオキシ等;エステル;アミド;イミド;ニトロ;ハロゲン例えば塩素、臭素等;炭素数2〜10のアシル例えばアセチル、プロポニル、ゼンゾイル、デカノイル等;フェニル、ナフチル基などが挙げられる。
【0025】
上記式(II)で表わされる化合物として、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化8】

【0026】
ここで、芳香族環の一部が置換されていてもよい。置換基としては前記Xの一部を置換することができる置換基として挙げたものを用いることができる。
ポリエステルフィルムの場合、紫外線吸収剤はポリエステル組成物に添加して用いられるが、添加方法としては、例えば、ポリエステル重合工程またはフィルム製膜前の溶融工程でのポリマー中への練込み、二軸延伸フィルムへの含浸といた方法をとることができる。ポリエステルの重合度低下を防止する観点から、フィルム製膜前の溶融工程でのポリマー中への練込みの方法が好ましい。この練込みは、例えば化合物粉体の直接添加法、マスターバッチ法により行うことができる。
【0027】
[皮膜]
本発明における皮膜は、皮膜を形成する樹脂成分を含む塗液をフィルムに塗布して形成された樹脂皮膜である。EVAとの接着性を確保し、密着の耐久性を高める観点から塗液は少なくとも1種の架橋剤を含有することが好ましい。この架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマー、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂を用いることができる。
【0028】
前記オキサゾリン基含有ポリマーとしては、特公昭63−48884号公報、特開平2−60941号公報、特開平2−99537号公報に記載の重合体、あるいはこれらに準じた重合体を挙げることができる。具体的には、下記式で表わされる付加重合性オキサゾリン(a)、および必要に応じて他のモノマー(b)を重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0029】
【化9】

(但し、式中のR11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、フェニル基および置換フェニル基から選ばれる置換基を示し、R15は付加重合性不飽和結合基を有する非環状有機基を示す。)
【0030】
前記式で表わされる付加重合性オキサゾリン(a)の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。これらは1種または2種以上の混合物として使用することができる。これらの中、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。
【0031】
付加重合性オキサゾリン以外のモノマー(b)としては、付加重合性オキサゾリン(a)と共重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン−α,β−不飽和モノマー類、スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族モノマー類などを挙げることができる。これらは1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0032】
付加重合性オキサゾリン(a)および必要に応じて少なくとも1種以上の他のモノマー(b)を用いて重合体を得るためには、従来から知られている重合法によって重合することができる。例えば、乳化重合法(重合触媒、水、界面活性剤およびモノマーを一括混合して重合する方法)、モノマー滴下法、多段重合法、プレエマルジョン法など各種の方法を採用できる。
【0033】
重合触媒は、従来から知られているものを使用することができる。例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩など、通常のラジカル重合開始剤を挙げることができる。また、界面活性剤としては、従来から知られているアニオン系、ノニオン系、カチオン系および両性界面活性剤や反応性界面活性剤を挙げることができる。重合温度は、通常0〜100℃、好ましくは50〜80℃である。また、重合時間は、通常1〜10時間である。
【0034】
付加重合性オキサゾリン(a)および少なくとも1種以上の他のモノマー(b)を用いて重合体を得る場合、付加重合性オキサゾリン(a)の配合量は、全モノマーに対して0.5重量%以上の範囲で適宜決めることが好ましい。付加重合性オキサゾリン(a)の配合量が0.5重量%未満では、本発明の目的を達成することが困難となることがある。
【0035】
前記架橋剤として用いられ得るエポキシ樹脂としては、具体的には、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物などが挙げられる。このポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを挙げることができる。ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを挙げることができる。また、モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルを挙げることができる。この中でも、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0036】
前記架橋剤として用いられ得る尿素樹脂としては、例えばジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、テトラメチロールアセチレン尿素、4−メトキシ5−ジメチルプロピレン尿素ジメチロールを挙げることができる。
【0037】
前記架橋剤として用いられ得るメラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物およびそれらの混合物を挙げることができる。メチロールメラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
これらの架橋剤のなかでも、オキサゾリン基含有ポリマーが特に優れた易接着性を示すため好ましい。
【0038】
架橋剤は塗液中に、固形分重量100重量%あたり、好ましくは10〜100重量%含有させる。架橋剤の塗液中での好ましい含有量は、架橋剤の種類により異なるが、オキサゾリン基含有ポリマーであれば塗液の固形分重量100重量%あたり好ましくは20〜100重量%であり、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂であれば塗液の固形分重量100重量%あたり好ましくは10〜50重量%である。架橋剤がこの範囲より少ないと塗布層の凝集力が低下し、特に高湿下での接着耐久性が低下するので好ましくない。架橋剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0039】
フィルムに塗布する塗液は、好ましくはさらに架橋剤以外の樹脂成分を含有する。すなわち、塗液は、固形分100重量%あたり好ましくは10〜80重量%の架橋剤および好ましくは20〜90重量%の架橋剤以外の樹脂成分を含有する。架橋剤以外の樹脂成分が20重量%未満であると皮膜の形成が困難となり、結果としてEVAとの接着が不十分になる場合がある。他方、90重量%を超えると架橋剤の配合量が不十分となるため塗布層の凝集力が低下し、特に高湿下での接着耐久性が低下する。
【0040】
架橋剤以外の樹脂成分は、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂であることが好ましく、これらの樹脂のガラス転移点は、好ましくはともに20〜100℃、さらに好ましくはともに30〜90℃である。ガラス転移点が20℃未満であるとフィルム同士のブロッキングが発生する場合があり好ましくなく、100℃を超えると塗布層が脆くなり密着性が保てなくなる場合があるため好ましくない。
【0041】
ガラス転移点が20〜100℃の範囲であるポリエステル樹脂としては、以下のような多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体から成るポリエステルを用いることができる。すなわち、多塩基酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6ーナフタレンジカルボン酸、1、4ーシクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を挙げることができる。これら酸成分を2種以上用いて共重合ポリエステル樹脂を合成する。また、若干量ながら不飽和多塩基酸成分のマレイン酸、イタコン酸等およびp−ヒドロキシ安息香酸の如きヒドロキシカルボン酸を用いることができる。また、ポリオール成分としては、例えばエチレングリコール、1、4ーブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6ーヘキサンジオール、1、4ーシクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが挙げられる。また、これらモノマーが挙げられる。
【0042】
また、ガラス転移点が20〜100℃の範囲であるアクリル樹脂としては、以下に例示するようなアクリルモノマーを重合してなるアクリル樹脂を用いることができる。このアクリルモノマーとしては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を含有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N、N−ジアルコキシアクリルアミド、N、N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、αーメチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーが挙げられる。
【0043】
このなかで、水酸基を含むモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが2〜20モル%、好ましくは4〜15モル%含まれていることが好ましい。
【0044】
[微粒子]
皮膜には、フィルムのハンドリング性を向上させたり、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、不活性な微粒子を添加してもよい。かかる微粒子としては、有機または無機の微粒子を用いることができ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子を例示することができる。
【0045】
皮膜には、より優れた易滑性を得る目的で、さらにワックスを添加してもよい。ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックスなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスなどの合成炭化水素系ワックス等である。就中、ハードコートや粘着剤に対する易接着性と滑性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが好ましい。ワックスは、環境負荷の低減および取扱のし易さから、水分散体として用いることが好ましい。
皮膜を形成する成分として、さらに、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤を配合してもよい。
【0046】
[製造方法]
本発明において、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルム自体は公知の方法で製造することができる。まず、紫外線吸収剤を所定量含有させたポリエチレンナフタレンジカルボキシレート樹脂組成物から、未延伸フィルムを溶融製膜により製造する。溶融製膜温度としては、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの流動開始温度(非晶性樹脂ではガラス転移温度、結晶性樹脂では融点)以上320℃以下がさらに好ましい。温度が流動開始温度より低すぎると溶融成形が困難になるため好ましくなく、また、温度が高すぎるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート樹脂の熱劣化が起きる恐れがあり好ましくない。未延伸フィルムは、単一層のフィルムとして製造してもよく、二種類以上の樹脂を同時に溶融し、溶融状態で合流させた二層以上のフィルムとして製造してもよい。後者の場合には、紫外線吸収剤の濃度が異なる二種類以上の樹脂を積層させて製造することもできる。
【0047】
機械特性の優れたポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムを製造するためには、さらに延伸を行い、延伸フィルムとすることが好ましい。延伸方法としては、例えば、一軸または二軸方向に逐次または同時に延伸する方法を挙げることができる。延伸温度は好ましくは樹脂組成物のガラス転移点以上ガラス転移点+90℃以下、より好ましくは樹脂組成物のガラス転移点以上ガラス転移点+70℃以下、さらに好ましくはガラス転移点以上ガラス転移点+60℃以下である。延伸温度が低すぎても高すぎても均一なフィルムを製造することが困難であり好ましくない。また、延伸倍率は、面倍率として、好ましくは1.5倍以上100倍以下である。なお、延伸倍率は(延伸後のフィルムの面積)/(延伸前のフィルムの面積)で表わされる。延伸することでポリマーが配向し、より高弾性化するため好ましい。
【0048】
延伸フィルムは、延伸配向後、熱処理することが好ましい。熱処理の温度としてはポリエステルのガラス転移点以上、融点以下が好ましい。さらに好適な温度は得られたフィルムの結晶化温度と得られたフィルムの物性などを勘案して決定される。
【0049】
本発明においては、フィルムの少なくとも片面に前記成分を用いた皮膜を塗設する。皮膜はフィルムの結晶配向が完了する前に塗布され、乾燥、延伸および熱処理して塗設されていることが好ましい。このため、皮膜の塗設は、延伸可能なポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムに、皮膜を形成する成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、熱処理することにより行うことが好ましい。この水性液の固形分濃度は、通常30重量%以下であり、10重量%以下がさらに好ましい。延伸可能なポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムとは、未延伸フィルム、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムである。このうちフィルムの押出し方向(縦方向)に一軸延伸した縦延伸フィルムが特に好ましい。
【0050】
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0051】
かかる界面活性剤は、フィルムへの水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン―脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10重量%含まれていることが好ましい。この範囲であれば40mN/m以下にすることができ、塗布層のハジキを防止可能である。
【0052】
フィルムへの水性液の塗布は、クリーンな雰囲気での塗布、即ちフィルム製造工程での塗布が好ましい。そして、この塗布によれば、塗膜としての樹脂皮膜のポリエステルフィルムへの密着性がさらに向上する。他方、塗布を通常の塗工工程、即ち二軸延伸熱固定したポリエステルフィルムに該フィルムの製造工程と切り離した工程で行うと、芥、塵埃等を巻込み易く、好ましくない。
【0053】
塗布方法としては、公知の任意の塗布法を適用することができる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法などを単独または組合せて用いることができる。塗布量は走行しているフイルム1m当り、好ましくは0.5〜20g、さらに好ましくは1〜10gである。水性液は水分散液または乳化液として用いるのが好ましい。なお、塗設は、必要に応じ、フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0054】
水性液を塗布した延伸可能なポリエステルフィルムは、必要に応じて乾燥工程、延伸処理工程に導かれる。かかる処理は、従来から当業界に蓄積された条件で行うことができる。好ましい条件としては、乾燥条件は90〜130℃×2〜10秒であり、延伸温度は90〜150℃、延伸倍率は縦方向3〜5倍、横方向3〜5倍、必要ならば再縦方向1〜3倍であり、熱固定する場合は180〜250℃×2〜60秒である。
かかる処理後の二軸配向ポリエステルフィルムの厚さは、好ましくは50〜250μm、皮膜の厚さは好ましくは0.01〜1μmである。
【0055】
[太陽電池保護膜]
本発明の太陽電池保護膜用易接着性フィルムは、単独または2枚以上を貼り合わせて、太陽電池保護膜として使用することができる。2枚以上を貼り合わせて保護膜を形成する場合、本発明のフィルムはEVAとの優れた接着性を示すため、EVAに接する側に好適に用いられるが、優れた耐光性を示すことから最外層に配置することもできる。
【0056】
また、本発明のフィルムには、水蒸気バリア性を付与する目的で、水蒸気バリア性を有するフィルムや箔を積層することも好ましい。水蒸気バリア層を設けた太陽電池保護膜用易接着性ポリエステルフィルムは、JIS Z0208−73の方法に従い測定される水蒸気の透過率が5g/(m・24h)以下であることが好ましい。
【0057】
かかる水蒸気バリア性を有するフィルムとしては、太陽電池表面保護膜として用いる場合には、透明性を損なわないポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルムなどが例示できる。太陽電池裏面保護膜として用いる場合には、透明性が不要であり、前記に加えてアルミニウム蒸着フィルム、または箔としてアルミニウム箔、銅箔などが例示できる。
【0058】
これらのフィルムまたは箔は、本発明の太陽電池保護膜用易接着性フィルムのEVA接着面の反対側に積層したり、またEVA接着側を外側にして2枚の本発明の太陽電池保護膜用易接着性フィルムで挟みこむ構造をとる形態で用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノール溶媒による溶液の粘度を35℃にて測定し求めた。
【0060】
(2)分光透過率
分光光度計((株)島津製作所製の商品名「MPC3100」)を用い、波長380nmおよび400nm、420nmでの光線透過率を測定した。
【0061】
(3)EVAとの接着性
フィルムを20mm幅×100mm長にカットしたものを2枚、EVAシート(ハイシート工業(株)製 SOLAR EVA(R) SC4)を20mm幅×50mm長にカットしたものを1枚、それぞれ準備した。EVAシートがフィルムのほぼ中央に位置するよう、またフィルムの易接性を評価したい面がEVA側になるよう、フィルム/EVAシート/フィルムの順に重ねて、ヒートシーラー(テスター産業(株)製 TP−701−B)にてプレスを行った。熱圧着は、120℃・0.02MPaにて5分圧着後、150℃に昇温し、プレス圧を0.1MPaに上げて25分圧着した。熱圧着した試料を、23℃、50%RH雰囲気下において、JIS−Z0237に準じて、上下のクリップに未接着部のフィルムを挟み、剥離角180°、引張速度100mm/分で接着力を測定した。
◎:20N/20mm以上 ・・・接着性非常に良好
○:10N/20mm以上、20N/20mm未満・・・接着性良好
△:5N/20mm以上〜10N/20mm未満 ・・・接着性やや良好
×:5N/20mm未満 ・・・接着性不良
【0062】
(4)耐光性
上記(3)にて作成したサンプルを、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)性、WEL−SUN−HCL型)を使用し、JIS−K−6783bに準じて、2000時間(屋外曝露2年間に相当)照射することにより屋外曝露促進試験を行った。上記(3)同様に接着性を測定し、促進試験前の接着性と比較して評価を行った。
◎:接着性保持率80%以上 ・・・耐光性非常に良好
○:接着性保持率60%以上、80%未満・・・耐光性良好
△:接着性保持率40%以上、60%未満・・・耐光性やや良好
×:接着性保持率40%未満 ・・・耐光性不良
【0063】
[実施例1]
固有粘度が0.64で、実質的に粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給した。同様に110℃で5時間乾燥した紫外線吸収剤P(2,6−ナフタレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン))をサイドフィーダーに供給した。紫外線吸収剤が1重量%となるように徐々に添加し、溶融温度305℃で溶融混練し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より850℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に下記の塗剤Aを乾燥後の塗膜厚みが0.1μmになるようにロールコーターで塗工し易接層である皮膜を形成した。
【0064】
<塗剤A>
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル48部、イソフタル酸ジメチル14部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去し、固形分が25重量%のポリエステルの水分散体を得た。
【0065】
次に、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル30.1部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン21.9部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸39.4部、アクリルアミド8.6部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%重量のアクリルの水分散体を得た。
【0066】
一方で、シリカフィラー(平均粒径:100nm)(日産化学株式会社製 商品名スノーテックスZL)を0.2重量%、濡れ剤として、ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)の0.3重量%添加した水溶液を作成した。
上記のポリエステルの水分散体7.5重量部、アクリルの水分散体7.5重量部と水溶液85重量部を混合して、塗剤Aを作成した。
【0067】
続いてテンターに供給し、140℃にて横方向に.3.3倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを245℃の温度で5秒間熱固定し、固有粘度が0.59dl/g、厚み50μmのフィルムとし、太陽電池保護膜用フィルムを得た。
得られた太陽電池保護膜用フィルムの評価結果を表1に示す。
【0068】
[比較例1]
紫外線吸収剤Pの替りに、紫外線吸収剤Q(2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名 チヌビンP)を用いる他は、実施例1と同様に厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1に示す結果から明らかなように、本発明の太陽電池保護膜用ポリエステルフィルムはEVAとの接着性および耐光性に優れ、太陽電池保護膜用ポリエステルフィルムとして有用である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の太陽電池保護膜用フィルムは、太陽電池の保護膜として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長380nmでの光線透過率が5%以下、400nmでの光線透過率が50%以下かつ420nmでの光線透過率が70%以上であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびこのうえに塗設された皮膜からなる太陽電池保護膜用易接着性フィルム。
【請求項2】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムが紫外線吸収剤0.05〜30重量%を含有するポリエチレンナフタレンジカルボキシレート組成物からなる、請求項1記載の太陽電池保護膜用易接着性フィルム。
【請求項3】
紫外線吸収剤が、下記式(I)または(II)で表わされる環状イミノエステルである、請求項2記載の太陽電池保護膜用易接着性フィルム。
環状イミノエステル(I)
【化1】

(ここで、Xは、上記式に表わされたXからの2本の結合手が1位、2位の位置関係にある2価の芳香族残基であり、Xは1、2または3価の芳香族残基であり、X、Xの少なくとも一つはナフタレン残基であり、nは1、2または3である。)
環状イミノエステル(II)
【化2】

(ここで、Aは下記式(II)−a
【化3】

で表わされる基であるか、または
下記式(II)−b
【化4】

で表わされる基であり、RおよびRは同一もしくは異なり1価の炭化水素残基であり、Xはナフタレン環残基である。)
【請求項4】
皮膜が、フィルムの結晶配向が完了する前に塗液を塗布し、乾燥、延伸および熱処理することによって塗設されている、請求項2記載の太陽電池保護膜用易接着性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池保護膜用易接着性フィルムを用いた太陽電池保護膜。

【公開番号】特開2007−332198(P2007−332198A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163275(P2006−163275)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】