説明

姿勢検出システム及び発光装置

【課題】簡略な構成により、対象物を特定することができるとともに、対象物の姿勢を検出することができる姿勢検出システムを提供する。
【解決手段】複数の赤外線タグ6−1〜6−4を備えるヘッドセット4は、ユーザの頭部に装着され、赤外線タグ6−1〜6−4は、赤外線タグ6−1〜6−4に対して一意的に割り付けられたID番号に応じて点滅するとともに、赤外線タグ6−1〜6−4の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて点滅し、検出装置1は、ユーザを含む近赤外線画像を撮影し、撮影された近赤外線画像を用いて赤外線タグ6−1〜6−4を検出し、検出した赤外線タグ6−1〜6−4の点滅状態からID番号及び3次元位置情報を検出し、検出された各赤外線タグ6−1〜6−4のID番号及び3次元位置情報に基づいてユーザの頭部の姿勢を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置により対象物の所定位置に装着された発光装置を検出して対象物の姿勢を検出する姿勢検出システム及び該姿勢検出システムに用いられる発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、部屋の中での人の動きを認識するために、無線やウェアラブルな航行システムを使って個人の位置を知る技術が開発されている。また、赤外線を高速点滅させるIDタグを用いて、人が見ている対象物のID(識別情報)を自動認識させる技術が開発されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、上記の赤外線を高速点滅させるIDタグを用いる方法では、通常のカメラを利用しているため、処理速度を充分に確保することができず、例えば、人の動き程度の低速なものでも捕らえることができなかった。また、特殊な高速カメラを用いて処理速度を向上するものもあるが、当該カメラが高価且つ大型なものとなり、人が身につけて使用する用途には適用できなかった。
【0004】
このため、本願発明者らは、ユーザの視線方向に位置する対象物を識別することができるとともに、処理速度が高速で且つ人が装着できるように小型化及び低コスト化が可能な対象物識別システムを開発している(特許文献1参照)。この対象物識別システムでは、ユーザの視線方向に略一致させた光軸を有し、対象物を含む所定の撮影領域の赤外線画像を撮影し、この赤外線画像の中から所定サイズの光点をIDタグとして検出することにより対象物の識別情報を取得している。
【非特許文献1】青木恒、カメラで読み取る赤外線タグとその応用、インタラクティブシステムとソフトウェアVIII(WISS 2000)、日本ソフトウェア科学会、近代科学社、2000年、pp.131−136
【非特許文献2】松下伸行、他4名、ID Cam:シーンとIDを同時に取得可能なイメージセンサ、インタラクション2002、情報処理学会、2002年、pp.9−16
【特許文献1】特開2004−208229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の対象物識別システムでは、ユーザには1つのIDタグのみが装着されるため、ユーザの全体的な動き(動線)を検出することはできても、ユーザの頭部の姿勢を検出することはできない。
【0006】
本発明の目的は、簡略な構成により、対象物を特定することができるとともに、対象物の姿勢を検出することができる姿勢検出システム及び発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る姿勢検出システムは、対象物の所定位置に装着される発光装置と、前記発光装置を検出する検出装置とを備え、前記発光装置は、対象物に対して所定位置に固定され、赤外線を発光する複数の発光手段と、各発光手段に対して一意的に割り付けられた識別情報に応じて各発光手段を点滅させるとともに、前記複数の発光手段の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて少なくとも一の発光手段を点滅させる発光制御手段とを備え、前記検出装置は、所定方向に設定された光軸を有し、前記対象物を含む所定の撮影領域の赤外線画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された赤外線画像を用いて前記複数の発光手段を検出する発光検出手段と、前記検出手段により検出された前記複数の発光手段の点滅状態を検出して各発光手段の識別情報及び3次元位置情報を検出する情報検出手段と、前記情報検出手段によって検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいて前記対象物の姿勢を検出する姿勢検出手段とを備えるものである。
【0008】
本発明に係る姿勢検出システムにおいては、赤外線を発光する複数の発光手段が対象物に対して所定位置に固定され、各発光手段に対して一意的に割り付けられた識別情報に応じて各発光手段が点滅するとともに、複数の発光手段の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて少なくとも一の発光手段が点滅し、このとき、対象物を含む所定の撮影領域の赤外線画像が撮影され、撮影された赤外線画像を用いて複数の発光手段が検出され、検出された複数の発光手段の点滅状態を検出して各発光手段の識別情報及び3次元位置情報が検出され、検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいて対象物の姿勢が検出されるので、簡略な構成により、対象物を特定することができるとともに、対象物の姿勢を検出することができる。
【0009】
前記発光制御手段は、各発光手段を、前記識別情報に応じて点滅させるとともに、他の発光手段に対する自身の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて点滅させることが好ましい。
【0010】
この場合、各発光手段が自身の識別情報に応じて点滅するとともに、他の発光手段に対する自身の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて点滅するので、撮影された赤外線画像を用いて検出された各発光手段の点滅状態を検出することにより、各発光手段から識別情報及び3次元位置情報を取得することができ、対象物の姿勢を確実に検出することができる。
【0011】
前記複数の発光手段は、剛体部材に固定され、前記剛体部材は、弾性部材に固定され、前記発光装置は、前記弾性部材を介して前記対象物に装着されることが好ましい。
【0012】
この場合、複数の発光手段が剛体部材に固定され、この剛体部材が弾性部材に固定され、発光装置が弾性部材を介して対象物に装着されるので、対象物に対する発光手段の3次元位置を固定しながら、発光装置を対象物に容易に装着することができる。
【0013】
前記発光装置は、ユーザの頭部に装着され、前記姿勢検出手段は、前記情報検出手段によって検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいて前記ユーザの頭部の姿勢を検出することが好ましい。
【0014】
この場合、発光装置がユーザの頭部に装着され、検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいてユーザの頭部の姿勢が検出されるので、簡略な構成により、ユーザの頭部の姿勢を高精度に検出することができる。
【0015】
前記複数の発光手段は、3つ以上の発光手段を含み、前記姿勢検出手段は、前記情報検出手段によって検出された3つ以上の発光手段の識別情報及び3次元位置情報に基づいて前記ユーザの頭部の姿勢を検出することが好ましい。
【0016】
この場合、3つ以上の発光手段の識別情報及び3次元位置情報に基づいてユーザの頭部の姿勢が検出されるので、ユーザの頭部の姿勢をより高精度に検出することができる。
【0017】
前記複数の発光手段は、ユーザの頭部の前方に赤外線を発光する第1の発光手段と、ユーザの頭部の右側方に赤外線を発光する第2の発光手段と、ユーザの頭部の左側方に赤外線を発光する第3の発光手段と、ユーザの頭部の後方に赤外線を発光する第4の発光手段とを含むことが好ましい。
【0018】
この場合、ユーザの頭部の全周に亘って発光手段が装着され、ユーザがどの方向を向いている場合でも、少なくとも2つの発光手段から識別情報及び3次元位置情報を検出することができるので、ユーザの方向に拘らず、ユーザの頭部の姿勢を確実に検出することができる。
【0019】
本発明に係る発光装置は、対象物の所定位置に装着される発光装置であって、対象物に対して所定位置に固定され、赤外線を発光する複数の発光手段と、各発光手段に対して一意的に割り付けられた識別情報に応じて各発光手段を点滅させるとともに、前記複数の発光手段の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて少なくとも一の発光手段を点滅させる発光制御手段とを備えるものである。
【0020】
本発明に係る発光装置においては、赤外線を発光する複数の発光手段が対象物に対して所定位置に固定され、各発光手段に対して一意的に割り付けられた識別情報に応じて各発光手段が点滅するとともに、複数の発光手段の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて少なくとも一の発光手段が点滅するので、発光手段の点滅状態を検出することにより、発光手段の識別情報及び3次元位置情報を検出することができる。この結果、検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいて対象物の姿勢を検出することができるので、簡略な構成により、対象物を特定することができるとともに、対象物の姿勢を検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、赤外線を発光する複数の発光手段が対象物に対して所定位置に固定され、各発光手段に対して一意的に割り付けられた識別情報に応じて各発光手段が点滅するとともに、複数の発光手段の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて少なくとも一の発光手段が点滅し、このとき、対象物を含む所定の撮影領域の赤外線画像が撮影され、撮影された赤外線画像を用いて複数の発光手段が検出され、検出された複数の発光手段の点滅状態を検出して各発光手段の識別情報及び3次元位置情報が検出され、検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいて対象物の姿勢が検出されるので、簡略な構成により、対象物を特定することができるとともに、対象物の姿勢を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明による姿勢検出システムについて図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態による姿勢検出システムの構成を示すブロック図である。なお、以下の説明では、対象物の姿勢の検出例としてユーザの頭部の姿勢を検出する場合について説明するが、本発明が適用可能な対象物は、ユーザの頭部に特に限定されず、姿勢が変化する事物であれば、種々のものを適用することができる。
【0023】
図1に示す姿勢検出システムは、検出装置1及びヘッドセット4を備える。ヘッドセット4は、ユーザに装着され、複数の赤外線タグ6−1〜6−4のそれぞれに対して一意的に割り付けられたID番号(識別情報)を赤外線の点滅により送信するとともに、各赤外線タグ6−1〜6−4の3次元位置関係を表す3次元位置情報を赤外線の点滅により送信する。
【0024】
検出装置1は、ユーザが位置する空間内、例えば、天井の所定箇所に配置され、撮影範囲内に位置するユーザに装着されたヘッドセット4が備える赤外線タグ6−1〜6−4から送信される赤外線タグのID番号及び3次元位置情報を検出するとともに、ヘッドセット4を装着したユーザを含む可視光画像を撮影する。また、検出装置1は、検出した識別情報及び3次元位置情報に基づいてユーザの姿勢を検出し、検出したユーザの姿勢に関する情報及び撮影した可視光画像をサーバ11へ出力する。サーバ11は、入力される情報に対して時間情報の付加等の所定の処理を行う。
【0025】
上記のようにして収集された情報は、サーバ11において種々の用途に使用され、例えば、人と人とのインタラクション等に関するインタラクションデータを蓄積した知識ベースとなるインタラクション・コーパスを作成するために使用される。
【0026】
図2は、図1に示すヘッドセット4をユーザが装着したときの外観を示す模式的斜視図であり、図3は、図2に示すヘッドセット4の構成を説明するための模式的上面図及び右側面図である。図2及び図3に示すように、ヘッドセット4は、ユーザの頭部に装着される眼鏡型ヘッドセットとして構成され、4個の赤外線タグ6−1〜6−4及びマイク部5が配設される本体部41と、その両端部が耳掛け部となり、その中央部に鼻当て部材7が配設される固定部42とを備える。本体部41は、赤外線タグ6−1〜6−4の相対位置関係が変化しないように剛体部材から構成され、固定部42は、ユーザが装着しやすいように弾性部材から構成され、本体部41は固定部42に固定されている。ヘッドセット4は、固定部42がユーザの頭部を額付近で前方から挟み込むことにより、ユーザの頭部に装着され略固定される。
【0027】
ヘッドセット4の本体部41の前面部分には、ユーザの正面方向(0度)に光軸を有する第1の赤外線タグ6−1が配置され、ヘッドセット4の本体部41の右前方部分には、ユーザの右斜め前方(右60度)に光軸を有する第2の赤外線タグ6−2が配置され、ヘッドセット4の本体部41の左前方部分には、ユーザの左斜め前方(左60度)に光軸を有する第3の赤外線タグ6−3が配置される。第1乃至第2の赤外線タグ6−1〜6−3には、2個のLEDが同一方向に併設されている。これは、第1乃至第2の赤外線タグ6−1〜6−3から充分な光量を得るために設けられたものであり、これら2つのLEDは同期して点滅される。
【0028】
また、ヘッドセット4の本体部41は、その右側面部分から後方に向けて棒状の支持部43を有し、支持部43の先端にユーザの後方(180度)に光軸を有する第4の赤外線タグ6−4が配置され、第4の赤外線タグ6−4は、光軸間の角度が90度になるように2つのLED(Light Emitting Diode)が併設され、ユーザの後方約180度の範囲で検出可能なように構成され、2つのLEDは同期して点滅される。
【0029】
なお、ヘッドセット4に配置される赤外線タグの数及び位置は、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能であり、また、一の赤外線タグに使用されるLEDの数及び位置も、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能である。
【0030】
ヘッドセット4の本体部41の前面中央下部にはマイク部5が配置されており、ヘッドセット4をユーザが装着することによりマイク部5がユーザの眉間付近に配置される。このように、マイク部5がユーザの眉間部分に位置するようにヘッドセット4に対して固定して配置されることにより、一定の音質の音声を確実に録音することができる。そのため、ユーザの口元付近に配置される従来の可動式のマイク部に比べて、音質を向上させることができる。
【0031】
ヘッドセット4の固定部42の前面中央下部には鼻当て部材7が配置される。鼻当て部材7は、一般のメガネと同様に、ユーザの鼻に架けられることによりヘッドセット4をユーザの頭部に略固定するものである。
【0032】
再び、図1を参照して、上記のように、ヘッドセット4は、複数の赤外線タグ6−1〜6−4及びマイク部5を備える。なお、以下の説明では、説明を容易にするために、第1乃至第4の赤外線タグ6−1〜6−4の2つのLEDを1つのLED61として説明する。
【0033】
赤外線タグ6−1〜6−4は、LED61及び駆動回路62をそれぞれ備える。LED61は、赤外線LED等から構成され、例えば、光通信用高出力発光ダイオード(スタンレイ社製DN311)等を用いることができ、指向性が弱く且つ可視光に近い800nm程度の赤外LEDを好適に用いることができる。
【0034】
駆動回路62は、マイクロコンピュータ等から構成され、例えば、Atmel社製4MHz駆動マイコンAT90S2323等を用いることができ、赤外線タグ6−1〜6−4に対して一意的に割り付けられたID番号が識別可能なようにLED61を点滅制御する。また、駆動回路62は、各赤外線タグ6−1〜6−4のヘッドセット4上の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて各LED61を点滅させる。なお、本実施の形態では、駆動回路を赤外線タグすなわちLED毎に設けたが、この例に特に限定されず、一の駆動回路によりすべて又は複数のLEDの点滅状態を制御するようにしてもよい。
【0035】
具体的には、駆動回路62は、マンチェスタ符号化方式を用い、データ間隔8ms/1bitで、スタートビット(2bit)、1番目(ID1番目)/続き(ID連続)符号(1bit)、ID番号(10bit)、3次元位置情報及びパリティビット(1bit)のデータフォーマットに従い、LED61を点滅させ、ID番号及び3次元位置情報を繰り返し送信する。
【0036】
例えば、3次元位置情報としては、ヘッドセット4上に規定された局所座標系において、赤外線タグ6−1が(x1,y1,z1)にあり、赤外線タグ6−2が(x2,y2,z2)にあり、赤外線タグ6−3が(x3,y3,z3)にあり、赤外線タグ6−4が(x4,y4,z4)にある場合、赤外線タグ6−1のLED61は(x1,y1,z1)を表す3次元位置情報を送信し、赤外線タグ6−2のLED61は(x2,y2,z2)を表す3次元位置情報を送信し、赤外線タグ6−3のLED61は(x3,y3,z3)を表す3次元位置情報を送信し、赤外線タグ6−4のLED61は(x4,y4,z4)を表す3次元位置情報を送信する。この場合、検出された各赤外線タグから当該赤外線タグのID番号及び3次元位置情報を取得することができ、ユーザの頭部の姿勢を確実に検出することができる。
【0037】
なお、3次元位置情報は、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、赤外線タグ6−1の位置をヘッドセット4上に規定された局所座標系の原点に設定し、赤外線タグ6−1が、自身の識別情報及び原点に位置していることを示す3次元位置情報を送信し、他の赤外線タグ6−2〜6−4が、自身の識別情報及び原点からの相対位置を表す3次元位置情報を送信するようにしてもよい。この場合、赤外線タグ6−1から送信される3次元位置情報の情報量を削減することができる。
【0038】
また、一の赤外線タグ、例えば、赤外線タグ6−1が、すべての赤外線タグ6−1〜6−4の3次元位置及び各3次元位置を有する赤外線タグのID番号を表す3次元位置情報を送信し、他の赤外線タグ6−2〜6−4は自身の識別情報のみを送信して3次元位置情報の送信を省略してもよい。この場合、赤外線タグ6−2〜6−4から送信される情報の情報量を削減することができる。
【0039】
また、すべての赤外線タグ6−1〜6−4が、自身のID番号と、すべての赤外線タグ6−1〜6−4の3次元位置及び各3次元位置を有する赤外線タグのID番号を表す3次元位置情報とを送信するようにしてもよい。この場合、検出された赤外線タグからすべての赤外線タグの識別情報及び3次元位置情報を取得することができ、ユーザの頭部の姿勢をより確実に検出することができる。
【0040】
マイク部5は、音声処理回路51及びマイクロホン52を備える。マイクロホン52は、ユーザの発話又は周囲音を集音して音声処理回路51へ出力し、音声処理回路51は録音された音声信号を携帯型コンピュータ10へ出力する。なお、音声を録音しない場合は、マイク部5を省略してもよく、また、ユーザに音声等を伝達するためにスピーカ等をヘッドセットに一体に構成してもよい。
【0041】
検出装置1は、赤外線検出部2及び画像撮影部3を備える。画像撮影部3は、レンズ31、光学素子32及びCCDカメラ33を備える。レンズ31は、ヘッドセット4を装着したユーザを含む所定撮影範囲の可視光及び近赤外光を光学素子32へ導く。光学素子32は、近赤外光を反射して赤外線検出部2へ導き、可視光を通過させて可視光画像をCCDカメラ33上に結像させる。CCDカメラ33は、可視光画像を撮影して映像信号をサーバ11へ出力する。
【0042】
このように、画像撮影部3及び赤外線検出部2は、光学素子32により分離された可視光及び近赤外光を用い、同一光軸上の可視光画像及び近赤外線画像を撮影することができるので、ユーザ(赤外線タグ6−1〜6−4)を撮影した可視光画像及び近赤外線画像上の位置が完全に一致し、ユーザを識別するだけでなく、ユーザの頭部の姿勢を高精度に検出することができる。
【0043】
赤外線検出部2は、反射素子21、CMOSイメージセンサ22、画像処理装置23及び姿勢検出部24を備える。反射素子21は、光学素子32からの近赤外光を反射してCMOSイメージセンサ22上に結像させる。CMOSイメージセンサ22は、結像された近赤外線から構成される近赤外線画像を撮影して画像処理装置23へ出力する。CMOSイメージセンサ22としては、例えば、ナショナルセミコンダクター社製高感度モノクロCMOSイメージセンサLM9630等を用いることができ、この場合、解像度は128×98pixel、フレームレートは500fpsである。
【0044】
画像処理装置23は、CMOSイメージセンサ22の制御及びデータ処理を行い、CMOSイメージセンサ22により撮影された近赤外線画像から赤外線タグ6−1〜6−4を検出し、検出した赤外線タグ6−1〜6−4の点滅状態からID番号及び3次元位置情報を検出し、ID番号及び3次元位置情報等のデータを姿勢検出部24へ出力する。このように、赤外線検出部2では、主に近赤外線のみから作成された近赤外線画像を用いて赤外線タグ6−1〜6−4のID番号及び3次元位置情報を検出することができるので、外乱となる可視光領域の波長を有する光による悪影響を充分に低減することができ、検出処理を高速化することができる。
【0045】
姿勢検出部24は、画像処理装置23によって検出された赤外線タグのID番号及び3次元位置情報に基づいてユーザの頭部の姿勢を検出する。すなわち、姿勢検出部24は、赤外線画像上の各赤外線タグの2次元位置と各赤外線タグの3次元位置情報とを基に公知の姿勢算出方法を用いてユーザの頭部の姿勢すなわち3次元空間上の位置及び角度を検出する。姿勢検出部24は、検出したユーザの姿勢を表す姿勢情報をRS232C等のデータ伝送規格に従ってサーバ11へ出力する。
【0046】
サーバ11は、検出装置1から出力されるユーザの姿勢情報等を受け、人と人とのインタラクション等に関するインタラクションデータを蓄積した知識ベースとなるインタラクション・コーパスを作成する処理を実行する。
【0047】
次に、図1に示す画像処理装置23について詳細に説明する。図4は、図1に示す画像処理装置23の構成を示すブロック図である。図4に示すように、画像処理装置23は、2値化回路81、SRAM(Static Random Access Memory)82、明度変化検出回路83及びデコード回路84を備える。例えば、2値化回路81及び明度変化検出回路83は、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等から構成され、デコード回路84は、CPU等から構成され、CPUで所定のデコードプログラムを実行することによりデコード処理を行う。なお、画像処理装置23の構成は、上記の例に特に限定されず、すべてを専用のハードウエア回路から構成する等の種々の変更が可能である。
【0048】
2値化回路81は、撮影された近赤外線画像を構成する各画素の明度データをCMOSイメージセンサ22から受け、各画素の明度値を予め記憶している基準明度値と比較して2値化し、2値化画素データをSRAM82に順次記憶させる。例えば、CMOSイメージセンサ22から256階調で明度データが出力される場合、128階調以上の明度を「1」に変換し、128階調未満の明度を「0」に変換する。多値化処理は、上記の例に特に限定されず、128階調以上の明度を「2」、128階調未満64階調以上を「1」、64階調未満を「0」に変換し、「2」の場合を「明」、「0」の場合を「滅」として点滅状態を判断する等の種々の変更が可能である。
【0049】
SRAM82は、CMOSイメージセンサ22により撮影された近赤外線画像を複数枚、例えば、672枚記憶可能な記憶容量を有し、2値化回路81から出力される2値化画素データを画像毎に記憶する。
【0050】
明度変化検出回路83は、連続して撮影された複数枚、例えば、5枚の2値化画像の各画素データをSRAM82から読み出し、各2値化画像上で同一位置にある画素データが点滅すなわち時間的に「1」又は「0」を交互に繰り返している全ての点滅画素を光点(赤外線タグ6−1〜6−4)として検出し、検出した複数の光点の2値化画像上の位置及び当該画像の撮影フレーム数を特定するための光点位置情報、例えば、当該点滅画素データのSRAM82の記憶アドレスをデコード回路84へ出力する。
【0051】
また、明度変化検出回路83は、隣接する複数の画素が点滅している場合、これらの画素を一つの光点として検出する。この場合、同時に点滅している隣接する複数の画素を一つの光点として検出することができるので、CMOSイメージセンサ22の1画素の大きさに拘らず、種々の大きさのLED61を一つの光点として正確に検出することができる。
【0052】
デコード回路84は、点滅画素の光点位置情報を基に2値化画像内の点滅画素の2値化画素データをSRAM82から順次読み出してデコードし、複数の光点すなわち複数の赤外線タグ6−1〜6−4のID番号及び3次元位置情報をサーバ11へ出力する。
【0053】
また、デコード回路84は、明度変化検出回路83により検出された光点に対応する画素が点滅していない場合、当該画素の周辺に位置する画素の2値化画素データをSRAM82から読み出し、周辺の画素の時間的に前後する2値化画素データをも用いて光点の点滅状態を再度デコードして赤外線タグ6−1〜6−4のID番号及び3次元位置情報を検出する。この場合、光点として検出された画素だけでなく、当該画素の周辺に位置する画素の2値化値をも用いて光点の点滅状態をデコードすることができるので、ユーザが高速に移動する場合でも、ユーザの移動に伴って移動する複数の赤外線タグ6−1〜6−4を同時に且つ連続的に識別することができる。
【0054】
本実施の形態では、ヘッドセット4が発光装置の一例に相当し、検出装置1が検出装置の一例に相当し、赤外線タグ6−1〜6−4(LED61)が発光手段の一例に相当し、駆動回路62が発光制御手段の一例に相当し、反射素子21、CMOSイメージセンサ22が撮影手段の一例に相当し、2値化回路81、SRAM82及び明度変化検出回路83が発光検出手段の一例に相当し、デコード回路84が情報検出手段の一例に相当し、姿勢検出部24が姿勢検出手段の一例に相当する。また、本体部41が剛体部材の一例に相当し、固定部42が弾性部材の一例に相当する。また、赤外線タグ6−1が第1の発光手段の一例に相当し、赤外線タグ6−2が第2の発光手段の一例に相当し、赤外線タグ6−3が第3の発光手段の一例に相当し、赤外線タグ6−4が第4の発光手段の一例に相当する。
【0055】
次に、上記のように構成された検出装置1による赤外線タグ検出処理について説明する。図5は、図1に示す検出装置1による姿勢検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0056】
まず、画像処理装置23は、CMOSイメージセンサ22等を初期化し(ステップS11)、全画面(128×98pixel)の近赤外線画像を順次撮影して取得する(ステップS12)。次に、2値化回路81は、撮影された近赤外線画像を構成する各画素の明度データをCMOSイメージセンサ22から受け、各画素の明度値を所定の基準明度値と比較して2値化(「0」又は「1」)し、2値化画素データを近赤外線画像毎にSRAM82に記憶させる(ステップS13)。
【0057】
次に、明度変化検出回路83は、連続して撮影された複数枚の2値化画像の各画素の2値化画素データをSRAM82から読み出し、各2値化画像上で同一位置にある2値化画素データが「1」又は「0」を所定順序で交互に繰り返している全ての点滅画素を光点として検出し、検出した複数の光点の画像上の各位置及び当該画像の撮影フレーム数を特定するための光点位置情報をデコード回路84へ出力する(ステップS14)。
【0058】
次に、デコード回路84は、点滅画素の光点位置情報を基にSRAM82から複数の2値化画像の各光点の2値化画素データを順次読み出してデコードし(ステップS15)、デコード結果に対してパリティチェックを行い、読み込みデータの判定処理を行う(ステップS16)。
【0059】
ここで、パリティチェックが正しければ(ステップS16でYES)、デコード回路84は、デコードした赤外線タグのID番号及び3次元位置情報と、当該赤外線タグの画像上の位置を表す2次元位置情報とを姿勢検出部24へ出力する(ステップS17)。
【0060】
一方、パリティチェックが正しくなければ(ステップS16でNO)、デコード回路84は、点滅画素の光点位置情報を基に当該画素の周辺に位置する画素、例えば、点滅画素の上下、左右及び斜めに位置する8画素の2値化画素データをSRAM82から読み出し、読み出した2値化画素データと点滅画素の2値化画素データとの論理和をデコードし(ステップS18)、デコード結果に対して再度パリティチェックを行い、読み込みデータの判定処理を行う(ステップS19)。
【0061】
ここで、パリティチェックが正しければ(ステップS19でYES)、デコード回路84は、デコードした赤外線タグのID番号及び3次元位置情報と、当該赤外線タグの画像上の位置を表す2次元位置情報とを姿勢検出部24へ出力する(ステップS17)。また、パリティチェックが正しくない場合はステップS12に戻って上記の処理を継続する。
【0062】
次に、姿勢検出部24は、デコード回路84によって出力された赤外線タグのID番号、3次元位置情報及び2次元位置情報からユーザの頭部の姿勢を検出し(ステップS20)、検出したユーザの姿勢情報をサーバ11へ送信し、サーバ11は、送信された姿勢情報を記憶する。その後、ステップS12に戻って上記の処理が継続される。なお、頭部の姿勢は、少なくとも2つの赤外線タグが検出されれば、ユーザの頭部がどの方向へ向いているかを検出することができ、3つの赤外線タグが検出された場合、頭部の回転方向も含めて検出することができる。
【0063】
上記のように、本実施の形態では、ユーザの頭部に装着されたヘッドセット4に固定された4つの赤外線タグ6−1〜6−4に対して一意的に割り付けられたID番号に応じて各赤外線タグ6−1〜6−4が点滅するとともに、各赤外線タグ6−1〜6−4の3次元位置情報に応じて各赤外線タグ6−1〜6−4が点滅し、赤外線タグ6−1〜6−4のうち少なくとも2つ以上の赤外線タグを含む赤外線画像が撮影され、撮影された赤外線画像を用いて少なくとも2つ以上の赤外線タグが検出され、検出された赤外線タグの点滅状態を検出して各赤外線タグのID番号及び3次元位置情報が検出され、検出された各赤外線タグのID番号及び3次元位置情報からユーザの頭部の姿勢を検出することができるので、複数の赤外線タグをユーザの頭部に装着するという簡略な構成により、ユーザの頭部の姿勢を高精度に検出することができる。
【0064】
また、撮影された近赤外線画像を2値化した2値化画像が作成され、作成された2値化画像の各画素の時間的な明暗の変化を基に点滅する光点を検出しているので、一枚の画像に含まれる多数の光点を同時に且つ高速に検出することができ、ヘッドセット4が装着された複数のユーザの頭部の姿勢を同時に且つ連続的に検出することができる。また、所定の基準明度値と比較して2多値化画像を作成しているので、2値化処理にフレームバッファ等の特別なメモリを必要がなく、2値化画像を高速に作成することができるとともに、そのデータ容量を削減することができるので、SRAM82の記憶容量を低く抑えることができる。さらに、2値化回路81及び明度変化検出回路83をCPLDから構成しているので、複数の光点をより高速に検出することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、赤外線タグ6−1〜6−4からID番号及び3次元位置情報を連続した発光パターンにより送信したが、この例に特に限定されず、まず赤外線タグ6−1〜6−4がID番号のみを送信し、複数の赤外線タグ6−1〜6−4のうち、検出装置1によりデータ送信が許可された赤外線タグのみがID番号及び3次元位置情報を送信するようにしてもよい。
【0066】
図6は、赤外線タグ6−1〜6−3と検出装置1との間の通信処理を説明するための通信シーケンス図である。なお、図6では、説明を容易にするために、赤外線タグ6−1〜6−3と検出装置1との通信処理について説明するが、さらに多くの赤外線タグと通信する場合も本例に同様に行うことができる。
【0067】
まず、携帯型コンピュータ10は、赤外線タグ6−1,6−2,6−3に自身のID番号を送信させ、検出装置1は、発信中の赤外線タグ6−1,6−2,6−3のID番号を受信する(ステップS101〜S103)。
【0068】
次に、検出装置1は、検知した複数の赤外線タグ6−1〜6−3のうちの一の赤外線タグ6−1にデータ送信を許可するスタート信号を当該赤外線タグ6−1のID番号とともにサーバ11を介して携帯型コンピュータ10へ送信する(ステップS104)。このとき、他の赤外線タグ6−2,6−3は、自身以外のID番号を持つ赤外線タグに対してスタート信号が発せられていることにより、データ送信が不許可であることを認識する(ステップS105,S106)。
【0069】
なお、本例では、データ送信を許可するスタート信号をサーバ11から携帯型コンピュータ10へ無線通信により送信したが、この例に特に限定されず、ヘッドセット4が赤外線検出部を備え、検出装置1が赤外線タグを備える場合、赤外線通信によりスタート信号を送信してもよい。後述するストップ信号も同様である。また、データ送信の許可順序は、最も早くID番号を検出した赤外線タグから順番にデータ送信の許可を与えてもよいし、所定の順番を予め決めておき、この順番に基づいてデータ送信の許可を与えてもよい。
【0070】
次に、スタート信号を受信した携帯型コンピュータ10は、赤外線タグ6−1に自身の3次元位置情報をID番号とともに送信させる(ステップS107)。赤外線タグ6−1からの3次元位置情報の受信を完了した検出装置1は、赤外線タグ6−1に対するストップ信号を当該赤外線タグ6−1のID番号とともにサーバ11を介して携帯型コンピュータ10へ送信することにより、赤外線タグ6−1にデータ送信を停止させる(ステップS108)。そして、CMOSイメージセンサ22の撮影画像内の他の赤外線タグ6−2,6−3に対して順次上記の処理が繰り返し行われることにより、検出装置1は、全ての赤外線タグ6−1〜6−3からの3次元位置情報を取得する(ステップS109〜S114)。
【0071】
上記の場合、複数の赤外線タグからデータ(3次元位置情報)が同時に送信されないため、複数の赤外線タグからの信号を同時に受信することが無くなり、複数の赤外線タグによる各赤外線信号の点滅パターンの誤認識を防止することができる。
【0072】
次に、図1に示すCMOSイメージセンサ22及び画像処理装置23の他の例について詳細に説明する。図7は、図1に示すCMOSイメージセンサ及び画像処理装置の他の例の構成を示すブロック図である。
【0073】
図7に示すように、CMOSイメージセンサ22aは、反射素子21(図1参照)により反射された近赤外線から構成される近赤外線画像を撮影して画像処理装置23aへ出力する。CMOSイメージセンサ22aとしては、例えば、MICRON社製撮像エリアCMOS型撮像素子MT9M413等を用いることができ、この場合、解像度は1280×1024pixel、フレームレートは400fpsである。
【0074】
なお、上記のような高解像度のCMOSイメージセンサを用いる場合、近赤外光及び可視光に対して感度を有していれば、CCDカメラ33を省略してCMOSイメージセンサ22aを可視光画像の撮影にも用いることができ、検出装置1の構成をより簡略化することができる。
【0075】
画像処理装置23aは、CMOSイメージセンサ22aの制御及びデータ処理を行い、CMOSイメージセンサ22aにより撮影された近赤外線画像から赤外線タグ6−1〜6−4を検出し、検出した赤外線タグ6−1〜6−4の点滅状態からID番号及び3次元位置情報を検出し、ID番号及び3次元位置情報のデータを姿勢検出部24へ出力する。
【0076】
画像処理装置23aは、4値化回路91、フレームバッファ92、SRAM93、明度変化検出回路94及びデコード回路95を備える。例えば、4値化回路91及び明度変化検出回路94は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等から構成され、デコード回路95は、CPU等から構成され、CPUで所定のデコードプログラムを実行することにより下記のデコード処理を行う。なお、画像処理装置23aの構成は、上記の例に特に限定されず、すべてを専用のハードウエア回路から構成する等の種々の変更が可能である。
【0077】
4値化回路91は、複数フレーム、例えば、20フレームを比較処理単位として近赤外線画像を処理し、1フレーム目の赤外線画像をフレームバッファ92に記憶させ、2フレーム目の赤外線画像を構成する各画素の明度データとフレームバッファ92に記憶している1フレーム目の赤外線画像を構成する各画素の明度データとを比較し、比較結果として4値化した4値化画素データをSRAM93に記憶させるとともに、2フレーム目の赤外線画像をフレームバッファ92に記憶させる。
【0078】
以降、上記と同様に、4値化回路91は、現フレームの赤外線画像を構成する各画素の明度データとフレームバッファ92に記憶している直前フレームの赤外線画像を構成する各画素の明度データとを比較し、比較結果から4値化した4値化画素データをSRAM93に記憶させるとともに、現フレーム(比較処理単位の最終フレームを除く)の赤外線画像をフレームバッファ92に記憶させる処理を繰り返す。SRAM93は、4値化回路91から出力される4値化画像の4値化画素データを比較処理単位、例えば、20フレーム単位で記憶する。
【0079】
例えば、現フレームの判定対象画素の明度値をp、直前フレームの該当画素の明度値をP、予め定めた閾値をTとすると、4値化回路91は、SRAM93に、P≦p<P+Tのときは「0」を記憶させ、P+T≦pのときは「1」を記憶させ、P−T<p<Pのときは「2」を記憶させ、p≦P−Tのときは「3」を記憶させ、画素毎に直前フレームと明度を比較して4段階に分類する。
【0080】
明度変化検出回路94は、比較処理単位の最終フレームがSRAM93に記憶されたときに、比較処理単位となる複数フレーム、例えば、20フレームの4値化画素データをSRAM93から読み出し、読み出した4値化画像の4値化画素データを基に各画素の明滅状態を判定し、判定結果から光点(赤外線タグ6−1〜6−4)として判断した複数の光点の4値化画像上の位置及び当該画像の撮影フレーム数を特定するための光点位置特定情報、例えば、当該点滅画素データのSRAM93の記憶アドレスをデコード回路95へ出力する。また、明度変化検出回路94は、隣接する複数の画素が点滅していると判断した場合、これらの画素を一つの光点として検出する。
【0081】
例えば、比較処理単位が20フレーム単位のとき、明度変化検出回路94は、各画素の明滅状態として、全19フレーム中に「1」か「3」の4値化画素データが合計4回以上出る場合は当該画素を「0」と判定し、連続する10フレーム以内に「1」の4値化画素データと「3」の4値化画素データとが両方出る場合は当該画素を「1」と判定し、全19フレーム中に「1」か「3」の4値化画素データが合計2回以上3回以下出る場合は当該画素を「2」と判定し、全19フレーム中に「1」か「3」の4値化画素データが合計1回以下しか出ない場合は当該画素を「3」と判定し、判定結果が「0」又は「1」の画素を光点として検出する。
【0082】
デコード回路95は、点滅画素の光点位置特定情報を基に4値化画像内の点滅画素の4値化画素データをSRAM93から順次読み出し、4値化画素データが「1」の場合を「1」(明状態)、4値化画素データが「3」の場合を「0」(滅状態)としてデコードし、複数の光点すなわち赤外線タグ6−1〜6−4のID番号及び3次元位置情報を姿勢検出部24へ出力する。
【0083】
また、比較処理単位の複数フレーム中に赤外線タグ6−1〜6−4が画素を跨いで移動した場合に対処するため、明度変化検出回路94は、判定結果が「1」又は「2」の画素の位置特定情報をデコード回路95へ出力するようにしてもよい。この場合、デコード回路95は、当該画素の周辺に位置する画素の明度判定結果データをSRAM93から読み出し、周辺の画素の時間的に前後する4値化画素データをも用いて光点の点滅状態を再度デコードして赤外線タグ6−1〜6−4のID番号及び3次元位置情報を検出する。また、フレーム毎に近赤外線画像を濃淡でラベリングし、ラベリングされた各領域の重心座標、面積、円形度、フィレ径、平均明度等を記録し、その形状のLEDらしさを判定して光点を検出するようにしてもよい。
【0084】
本例では、CMOSイメージセンサ22aが撮影手段の一例に相当し、4値化回路91、フレームバッファ92、SRAM93及び明度変化検出回路94が発光検出手段の一例に相当し、デコード回路95が情報検出手段の一例に相当する。
【0085】
次に、図7に示すCMOSイメージセンサ22a及び画像処理装置23aを用いた姿勢検出処理について説明する。図8は、図7に示すCMOSイメージセンサ22a及び画像処理装置23aを用いた姿勢検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0086】
まず、画像処理装置23aは、CMOSイメージセンサ22a等を初期化し(ステップS21)、全画面(1280×1024pixel)の近赤外線画像を順次撮影して取得する(ステップS22)。次に、4値化回路91は、直前フレームの近赤外線画像を構成する各画素の明度データをフレームバッファ92に記憶させ、現フレームの近赤外線画像を構成する各画素の明度データとフレームバッファ92に記憶している直前フレームの近赤外線画像を構成する各画素の明度データとを比較し、比較結果を4値化して比較処理単位で4値化画素データをSRAM93に記憶させる(ステップS23)。
【0087】
次に、明度変化検出回路94は、比較処理単位の最終フレームがSRAM93に記憶されたときに、比較処理単位となる19フレームの4値化画素データをSRAM93から読み出し、読み出した4値化画素データを基に各画素の明滅状態を上記の「0」〜「3」に4値化して判定する(ステップS24)。
【0088】
ここで、明滅状態が「0」又は「1」の場合(ステップS25でYES)、明度変化検出回路94は、当該画素を光点(赤外線タグ6−1〜6−4)として判定し、判定した複数の光点の画像上の各位置及び当該画像の撮影フレーム数を特定するための光点位置特定情報をデコード回路95へ出力する。
【0089】
次に、デコード回路95は、点滅画素の光点位置特定情報を基にSRAM93から複数の4値化画像の各光点の4値化画素データを順次読み出し、4値化画素データが「1」の場合を「1」、4値化画素データが「3」の場合を「0」としてデコードし(ステップS26)、デコード結果に対してパリティチェックを行い、読み込みデータの判定処理を行う(ステップS27)。
【0090】
ここで、パリティチェックが正しければ(ステップS27でYES)、デコード回路95は、デコードした赤外線タグのID番号及び3次元位置情報と、当該赤外線タグの画像上の位置を表す2次元位置情報とを姿勢検出部24へ出力する(ステップS28)。
【0091】
一方、明滅状態が「0」又は「1」でない場合(ステップS25でNO)、又は、パリティチェックが正しくなければ(ステップS26でNO)、デコード回路95は、点滅画素の位置特定情報を基に当該画素の周辺に位置する画素、例えば、点滅画素の上下、左右及び斜めに位置する8画素の明度変化判定結果データをSRAM93から読み出し、読み出した4値化画素データと点滅画素の4値化画素データとを用いてデコードし(ステップS29)、デコード結果に対して再度パリティチェックを行い、読み込みデータの判定処理を行う(ステップS30)。
【0092】
ここで、パリティチェックが正しければ(ステップS30でYES)、デコード回路95は、デコードした赤外線タグのID番号及び3次元位置情報と、当該赤外線タグの画像上の位置を表す2次元位置情報とを姿勢検出部24へ出力する(ステップS28)。また、パリティチェックが正しくない場合はステップS22に戻って上記の処理を継続する。
【0093】
次に、姿勢検出部24は、デコード回路95によって出力された赤外線タグのID番号、3次元位置情報及び2次元位置情報からユーザの頭部の姿勢を検出し(ステップS31)、その後、ステップS22に戻って上記の処理を継続する。
【0094】
上記のように、本例でも、一枚の画像に含まれる多数の光点を同時に且つ高速に検出することができ、ヘッドセット4が装着された複数のユーザの頭部の姿勢を同時に且つ連続的に検出することができる。また、直前に撮影された近赤外線画像の明度と比較して4値化画像を作成しているので、撮影環境が変化した場合でも、明度の変化を正確に反映した4値化画像を作成することができる。さらに、4値化回路91及び明度変化検出回路94をFPGAから構成しているので、複数の光点をより高速に検出することができる。
【0095】
なお、本実施の形態では、赤外線タグ6−1〜6−4を検出してユーザの頭部の姿勢を検出しているが、検出対象はこの例に特に限定されず、ユーザが位置する空間内に配置された種々の対象物に赤外線タグを取り付け、検出装置1により対象物に取り付けられた赤外線タグをも検出するようにしてもよい。この場合、ユーザの頭部の姿勢が検出されるとともに、対象物の位置が検出されるので、ユーザの頭部の姿勢と対象物の位置とに基づいてユーザが興味を持った対象物を特定することができ、さらに詳細なインタラクションデータを蓄積することができる。
【0096】
次に、上記のように構成された対象物識別システムの応用例について説明する。図9は、図1に示す姿勢検出システムを用いた展示場におけるインタラクション・コーパスの収集例を説明するための模式図である。
【0097】
図9に示すように、訪問者P2等がヘッドセット4(赤外線タグ6−1〜6−4)を頭部に装着するとともに、携帯型コンピュータ10を背負っている。対象物に取り付けられる赤外線タグ6は、説明員P1の胸部に装着されるとともに、環境側の対象物として展示説明用のコンピュータM1及びロボットM2、展示用のぬいぐるみM3、展示説明用ボードB1等に取り付けられ、それぞれ個別のID番号を送信する。また、展示場の天井又は壁には、検出装置1が取り付けられている。
【0098】
上記のように各装置が配置されることにより、例えば、検出装置1により訪問者P2が識別されるとともに、訪問者P2の頭部の姿勢が検出され、検出装置1により訪問者P2の周囲の対象物として説明員P1、ロボットM2等が識別される。このようにして、展示場における人と人とのインタラクション等に関するインタラクションデータを収集することができ、収集したデータから知識ベースとなるインタラクション・コーパスを作成することが可能となる。
【0099】
上記の説明では、インタラクション・コーパスの収集を例に説明したが、本発明が適用可能な用途は、上記の例に特に限定されず、種々の用途に適用することができる。また、一つの対象物に一つの赤外線タグを取り付けたが、一つの対象物に同一のID番号を送信する複数の赤外線タグを設けるようにしてもよい。また、本実施の形態では、撮影した画像を2値化又は4値化したが、多値化の例はこれらの例に特に限定されず、3値化等の他の数を用いてもよい。
【0100】
また、本実施の形態では、ユーザの頭部に装着されるヘッドセット4に複数の赤外線タグ6−1〜6−4を設けたが、この例に特に限定されず、ユーザの身体の他の部位、例えば手や足等に赤外線タグを装着してもよい。また、本実施の形態では、ヘッドセット4に赤外線タグ6−1〜6−4を設けたが、ヘッドセットの構成はこの例に特に限定されず、検出装置1と同様に赤外線検出部2及び画像撮影部3をヘッドセット4に取り付け、ユーザの視線方向の対象物の赤外線タグを検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施の形態による姿勢検出システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すヘッドセットをユーザが装着したときの外観を示す模式的斜視図である。
【図3】図2に示すヘッドセットの構成を説明するための模式的上面図及び右側面図である。
【図4】図1に示す画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す検出装置による姿勢検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図1に示す赤外線タグと検出装置との間の通信処理を説明するための通信シーケンス図である。
【図7】図1に示すCMOSイメージセンサ及び画像処理装置の他の例の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示すCMOSイメージセンサ及び画像処理装置を用いた姿勢検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図1に示す姿勢検出システムを用いた展示場におけるインタラクション・コーパスの収集例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0102】
1 検出装置
2 赤外線検出部
3 画像撮影部
4 ヘッドセット
5 マイク部
6−1〜6−4 赤外線タグ
10 携帯型コンピュータ
11 サーバ
21 反射素子
22 CMOSイメージセンサ
23 画像処理装置
24 姿勢検出部
31 レンズ
32 光学素子
33 CCDカメラ
51 音声処理回路
52 マイクロホン
61 LED
62 駆動回路
81 2値化回路
82 SRAM
83 明度変化検出回路
84 デコード回路
91 4値化回路
92 フレームバッファ
93 SRAM
94 明度変化検出回路
95 デコード回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の所定位置に装着される発光装置と、前記発光装置を検出する検出装置とを備え、
前記発光装置は、
対象物に対して所定位置に固定され、赤外線を発光する複数の発光手段と、
各発光手段に対して一意的に割り付けられた識別情報に応じて各発光手段を点滅させるとともに、前記複数の発光手段の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて少なくとも一の発光手段を点滅させる発光制御手段とを備え、
前記検出装置は、
前記対象物を含む所定の撮影領域の赤外線画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された赤外線画像を用いて前記複数の発光手段を検出する発光検出手段と、
前記検出手段により検出された前記複数の発光手段の点滅状態を検出して各発光手段の識別情報及び3次元位置情報を検出する情報検出手段と、
前記情報検出手段によって検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいて前記対象物の姿勢を検出する姿勢検出手段とを備えることを特徴とする姿勢検出システム。
【請求項2】
前記発光制御手段は、各発光手段を、前記識別情報に応じて点滅させるとともに、他の発光手段に対する自身の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて点滅させることを特徴とする請求項1記載の姿勢検出システム。
【請求項3】
前記複数の発光手段は、剛体部材に固定され、前記剛体部材は、弾性部材に固定され、前記発光装置は、前記弾性部材を介して前記対象物に装着されることを特徴とする請求項1又は2記載の姿勢検出システム。
【請求項4】
前記発光装置は、ユーザの頭部に装着され、
前記姿勢検出手段は、前記情報検出手段によって検出された識別情報及び3次元位置情報に基づいて前記ユーザの頭部の姿勢を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の姿勢検出システム。
【請求項5】
前記複数の発光手段は、3つ以上の発光手段を含み、
前記姿勢検出手段は、前記情報検出手段によって検出された3つ以上の発光手段の識別情報及び3次元位置情報に基づいて前記ユーザの頭部の姿勢を検出することを特徴とする請求項4記載の姿勢検出システム。
【請求項6】
前記複数の発光手段は、
ユーザの頭部の前方に赤外線を発光する第1の発光手段と、
ユーザの頭部の右側方に赤外線を発光する第2の発光手段と、
ユーザの頭部の左側方に赤外線を発光する第3の発光手段と、
ユーザの頭部の後方に赤外線を発光する第4の発光手段とを含むことを特徴とする請求項4又は5記載の姿勢検出システム。
【請求項7】
対象物の所定位置に装着される発光装置であって、
対象物に対して所定位置に固定され、赤外線を発光する複数の発光手段と、
各発光手段に対して一意的に割り付けられた識別情報に応じて各発光手段を点滅させるとともに、前記複数の発光手段の3次元位置関係を表す3次元位置情報に応じて少なくとも一の発光手段を点滅させる発光制御手段とを備えることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−127536(P2007−127536A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320752(P2005−320752)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「超高速知能ネットワーク社会に向けた新しいインタラクション・メディアの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】