説明

媒体の圧力を測定する圧力センサ

【課題】酸性環境において耐久性のある圧力センサモジュールを提供する。
【解決手段】圧力センサモジュールは、支持部材5の前方3に搭載された感知部材1を含む。支持部材5は、前方3から後方9に支持部材5を貫通する穴7を含む。感知部材1は、穴7を前方3で覆っている。支持部材5の後方9に設けられた後方バリア6は、支持部材5の後方9の表面を取り囲み閉じられた領域8を形成する。閉じられた領域8と穴7は、圧力チャンネル10を形成する。後方保護部材2は、穴7と少なくとも部分的に閉じられた領域8とを充填する。支持部材5、後方バリア6、および後方保護部材2は、モジュールを形成する。そのモジュールは、圧力センサの製造過程で、圧力センサのハウジング内に位置され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2008年7月31に提出された米国仮特許出願第61/137469号および2008年11月10日に提出されたヨーロッパ特許出願第EP08168746号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概してハイブリッド電子に関し、特に、圧力センサの使用のための圧力センサモジュールに関し、さらに酸性の環境に露出される流体圧力センサに関する。センサモジュールは、支持部材の前面側に搭載された感知部材を有する。支持部材は、前面側から背面側に支持部材を貫通する穴と、前面側で当該穴を覆う感知部材を有する。
【背景技術】
【0003】
上記タイプの圧力センサモジュールは、特許文献1によって知られている。公知の圧力センサモジュールは、ゲージ差動圧力構成で使用される。2つの同一のセンサモジュールは、2つの媒体の圧力を測定するために使用される。各構成は、穴を有する。この穴は、感知部材によって一面を覆われている基板を貫通する。実際に2つの感知部材が同一のチャンバ内に置かれることにより、2つの感知部材の他方の面は、同一の基準圧力、典型的には大気圧となる。もうひとつの入り口は、圧力センサのハウジングを貫通することができ、チャンバに大気圧を提供する。この開口の構成では、水蒸気や他の汚染物質がチャンバ内に自由に入り込むことができる。
【0004】
低い圧力や高い圧力として表される圧力媒体は、分離された圧力注入口を介してハウジング内に入り、基板の穴を介して感知部材に作用する。
【0005】
さらに、類似の圧力センサモジュールが知られており、基板を通る穴が耐酸性のジェルで充填され、感知部材を汚染物質や酸性環境から隔離する。
【0006】
貫通孔は、レーザ切断で作ることができる。セラミックの貫通孔のレーザ切断は、ハイブリッド電子で広く実施されている経済的なプロセスである。しかしながら、レーザ切断プロセスは、微小なクラックを生成しかつ/またはセラミックの基板上により脆弱なセラミックの相(すなわち、ガラス相)を形成することにより、セラミック固有の酸性の堅牢性を損なわせる。ディーゼル排気のような酸性の環境で使用されるとき、処理されていないレーザ切断面は、化学的に攻撃されたり腐食されたりすることがある。このレーザ切断面は、貫通孔が保護コーティングでポッティングされたときですら、化学的な攻撃や腐食を受けるおそれがある。この化学的な攻撃や腐食は、保護コーティングの性質を変化させ、圧力センサの故障になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO02002/079742
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、排気環境で見られるような酸性の状態に対し改善された堅牢性を有する圧力センサモジュールを提供することである。
【0009】
本発明によれば、圧力センサモジュールの支持部材はさらに、支持部材の後方に後方バリアを有し、後方バリアは、穴を有する支持部材の後方の表面を取り囲み閉じられた領域を形成し、当該閉じられた領域と穴は、圧力チャンネルを形成し、
さらに当該穴と少なくとも部分的に当該閉じられた領域を充填する後方保護部材とを含む。
【0010】
法規制は、乗用車や商用車に利用されるディーゼルパワーエンジンの排気システムにスートフィルタ(soot filter)が必要であることを求めている。スートフィルタが詰まったとき、そのフィルタの周期的な再生が必要とされる。この再生プロセスの誘発のため、また、車載診断システム(On-Board Diagnostics、OBD)の要求を満たすために、フィルタの圧力降下測定が必要とされる。これは、MEMSベースの差動圧力センサによって達成され得る。MEMSベースの差動圧力センサの感知部材は、排気環境から保護される必要がある。このため、保護ジェルが使用される。このジェルは、付着物に対する機械的な隔離を提供し、また凍った水(frozen water)による損傷から感知部材を保護する。前方露出の感知部材の場合には、これは、感知部材の周囲にジェルダム(gel dam)もしくはバリアを設置し、かつジェルダムにより形成されたチャンバを保護ジェルで充填することによってほぼ達成される。感知部材の他の面を保護するために、支持部材を貫通する穴の壁は、ジェルダムとして利用され、穴により形成されたチャンバは、保護ジェルで充填される。
【0011】
感知部材の一方では、スートフィルタ前の排気圧力が作用しており、感知部材の他方では、スートフィルタ後の排気圧力が作用している。スートフィルタが排気を十分にろ過するので、スートフィルタ後の排気は活動的ではなく、保護ジェルで充填された貫通孔は、製品寿命の間、感知部材に対する十分な保護を提供すると考えられていた。保護ジェルは、化学的な攻撃から感知部材を保護するために十分な量でなければならない。しかしながら、スートフィルタ後の排気が活動的でないと想定されたにも関わらず、後方の支持部材の穴のジェルは、前方のジェルダム間のジェルよりも早く劣化することがわかった。貫通する穴の幾何学的な制約は、穴内の保護ジェルのより早い劣化の原因である。保護ジェルは、穴の中央部よりも穴の壁付近のほうがより汚染されることが明らかとなった。保護ジェルの最初の劣化は、セラミックの表面、排気および保護ジェルが互いに接触する地点の近傍の領域に現れる。その理由のひとつは、レーザ切断プロセスによる穴の表面の構造である。後方バリアがなければ、水溜り(water pockets)が狭い貫通する穴のジェル内に発生する。水溜りは、NOxガスを含む。水溜りは、ジェルに機械的な応力を招き、それは、引き続き感知部材に作用する。長期に渡って、クラックや水泡がジェル内に発生することで、水溜りはジェルを劣化させ、センサを故障させる。
【0012】
似たような劣化のメカニズムは、スートフィルタ前の排気圧にさらされた感知部材の他方の面を保護するジェルにおいても観察された。しかしながら、この面での劣化のメカニズムは、非常に遅く、エッジで始まらず、出力の故障にならない。
【0013】
本発明によれば、これらの問題は、保護ジェルによって少なくとも部分的に充填される後方バリアを用いることで解決される。これは、排気ガスにさらされたジェルの表面と穴の壁との間の距離を拡大させる。このことは、ジェル内の水溜りの発生がより遅くなることを確実にする。
【0014】
さらに、たとえジェルが、後方バリアの壁付近の粒子もしくは水溜りによって汚染されても、センサの性能への影響は少なくなる。その理由は、後方バリアの対向する壁の間の距離が穴の壁の間の距離よりも長いからである。
【0015】
本発明のある実施例では、穴の断面は、支持部材の後方から前方へ向けて広くなり、他の実施例では、後方への穴の表面の遷移は、滑らかな形状を有する。ジェルは、高い熱膨張係数(CTE)を有する粘性物質である。排気ガスの圧力の変化は、広い温度範囲にわたって、信号の損失なしに感知部材に伝達される必要がある。温度変化の場合、穴の中のジェルは、感知部材に対し過度な応力を発生させることなく、膨張しまたは収縮することができるので、この特徴は、圧力チャンネル内の機械的抵抗を減少させる。これは、圧力センサの精度と安定性を改善する。
【0016】
本発明のある実施例では、後方バリアは、支持部材に取り付けられる。この特徴によって、経済的に構成要素を製造する2つのものを用いて、圧力チャンネルを構成することができ、例えば、セラミックのプリント配線基板(PWB)とセラミックリングであり、これらは、互いに接着される。
【0017】
本発明のその他の実施例では、支持部材と後方バリアは、例えばセラミック材のような材料によって一体に形成される。これによって、ジェルダムを支持部材へ取り付ける製造工程を省くことができる。
【0018】
本発明のその他の実施例では、後方バリアは、粘着材のビード(bead)により形成される。
【0019】
本発明のある実施例では、支持部材は、前方に設けられかつ感知部材に電気的に接続された電気的に導電性の部材を有するセラミックPWBである。好ましくは、電気的に導電性の部材は、貴金属を含む。この特徴は、前方に作用する排気によってもたらされる酸性状況の影響を減少させる。貴金属の使用はさらに、導電性の部材の堅牢性を改善する。
【0020】
本発明のある実施例では、感知部材は、差圧力感知部材である。好ましい実施例では、感知部材は、マイクロ−エレクトロ−メカニカル−システム(MEMS)の差圧力感知部材である。この特徴は、改善された差圧力センサの提供を可能にし、この差圧力センサは、例えば排気システムのスートフィルタの圧力降下を測定するために利用され得る。
【0021】
さらに他の実施例では、センサはさらに、感知部材を取り囲む前方バリアと前方保護部材を含む。前方保護部材は、電気的に絶縁性を有し、感知部材と前方バリア間の前方とを覆う。これらの特徴は、圧力センサの両側に存在する酸性状況に対する改善された堅牢性を有する差圧力センサを提供する。
【0022】
本発明のある実施例では、後方バリア内の後方の閉じられた領域は、支持部材の穴の領域よりも大きい。これによって、圧力チャンネルを十分な保護ジェルで充填することができ、貫通する穴のジェル内での汚染物質、これは水溜りであり得る、の形成およびその影響を低減させる。
【0023】
本発明のある実施例では、感知部材を覆う後方保護部材の最小限の厚さは、後方保護部材によって覆われた感知部材の表面と支持部材の後方と一致する平面との間の最小距離よりも大きい。
【0024】
支持部材の後方にジェルダムを加え、貫通する穴の形状を最適化し、さらに圧力チャンネルを十分な保護ジェルで充填することによって、ジェルの高さに対するジェルの表面の割合が増加され、ジェル表面と感知部材との間の距離が増加され、ジェル表面が壁に接触する位置と感知部材との間の距離が増加される。
【0025】
本発明のある実施例では、貫通する穴のエッジ状態は、次のステップを含む方法により改善された;
約25℃の室温から約1300℃(±100℃)まで選択された速度で支持の温度を増加させ、
約1300度の温度をおおよそ1時間維持し、
選択された速度でセラミック部材の温度を室温へと減少させる。このプロセスは、レーザ処理された表面を、より脆弱な表面構造および/またはセラミック相からより頑固な表面構造および/またはセラミック相に変換する。
【0026】
本発明のまた他の実施例では、支持部材は、シンター処理によって製造され、穴はモールドによって支持部材内に形成される。このようなプロセスで製造された貫通する穴のエッジは、レーザ切断プロセスによって製造された貫通する穴のエッジよりも強度のある表面構造を有する。
【0027】
本発明のその他の目的は、ハウジングと本発明による圧力センサモジュールとを含む改善された圧力センサ構成を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、添付した図面を参照し、例示的な実施例を用いて、以下により詳細に説明される。
【図1】図1は、好ましい実施例による圧力センサモジュールの断面図である。
【図2】図2は、好ましい実施例による圧力センサ構成の断面図である。
【図3】図3は、圧力センサモジュールアッセンブリの斜視図である。
【図4】図4は、セラミック基板の平面図であり、複数の個々のセラミック支持部材が圧力センサモジュールの使用のためにレーザ切断されスクライブされている。
【図5】図5は、アニール処理されていない標準的なレーザ切断の貫通孔の酸性テスト後の酸性テスト結果を示す。
【図6】図6は、アニール処理された貫通孔の酸性テスト後の酸性テスト結果を示す。
【図7】図7は、背面保護部材の寸法の要求の例示である。
【実施例】
【0029】
本発明の好ましい実施例による図1および図2を参照すると、酸性媒体の流体の圧力を測定する圧力センサモジュールは、貫通孔7(貫通する穴)上の支持部材5の前方3に搭載された流体圧力応答感知部材1を有し、後方バリア6あるいはジェルダムが支持部材の反対側つまり後方の貫通孔7の周りに配置されている。バリア6と貫通孔7は、好ましくは、後方保護部材2によって充填される。このモジュールは、圧力センサまたは装置として使用され得る前のセンサハウジング内に固定されるべきサブアッセンブリを意味する。図2は、好ましい実施例による圧力センサモジュール30を有する圧力センサ構成の断面を示している。図1は、図2に示された圧力センサモジュールの一部の断面を示している。モジュール30は、差動圧力センサとして使用することができ、例えば、排気システムにおいてスート(すす)フィルタの圧力降下を測定する。差または差動圧力は、好ましくは、MEMS差動圧力感知部材1による測定である。このようなセンサは、従来より公知である。あるいは、感知部材1は、薄いフィルム、フォイルゲージ、あるいはバルクシリコンゲージ設計を持つことができる。
【0030】
圧力センサモジュール30は、好ましくは、圧力センサ構成のハウジング20内に置かれる前に完全に製造される。ハウジング20および圧力センサモジュール30は、第1の圧力チャンバ24と第2の圧力チャンバ25を形成する。ハウジングは、第1の入り口21を有し、そこを介して、第1の圧力を有する第1の流体が第1の圧力チャンバ24に入ることができる。ハウジングはさらに、第2の入り口22を有し、そこを介して、第2の圧力を有する第2の流体が第2の圧力チャンバ25に入ることができる。第1の流体は、例えば、スート(すす)フィルタ後の排気であり、第2の流体は、スート(すす)フィルタ前の排気である。ハウジングはさらに、センサ電子部品を収容する分離されたキャビティ(空洞)26を有する。キャビティは、第1および第2の圧力チャンバから分離され、センサ電子部品23の構成部品を排気ガスの酸性の環境から隔離する。
【0031】
感知部材1は、シーラントや他の適切は接着材料によって、支持部材5の前方3に取り付けられる。支持部材5は、好ましくは、セラミック材料から構成され、例えば、96%Alのセラミック材である。あるいは、純粋のAlセラミックや他の適切なセラミック材料からなる支持部材5が使用され得る。支持部材5は、支持部材5の前方3から支持部材5の後方9までの貫通孔7を有する。感知部材1は、前方3で貫通孔7を密閉するように覆い、支持部材5の前方と後方の間に封止(シール)を形成する。貫通孔7は、COレーザのレーザ切断によって形成することができる。貫通孔7を有する支持は、シンター処理によって作ることができる。貫通孔7は、それから、広く知られた方法でモールドの押し出し成形によって支持部材に形成される。シンター処理中に貫通孔を形成する利点は、貫通孔がレーザ切断処理によって形成されるときよりも、脆弱な影響を受けやすい表面の生地および/またはセラミック相が少なくなることである。
【0032】
支持部材に貫通孔7を製造する別の方法は、セラミックパネルの焼結前に支持部材を介してツールでスタンピングすることであり、いわゆる、グリーン状態のパンチングである。
【0033】
使用では、圧力は、感知部材の両側に作用し、差圧は、感知部材1のメンブレイン(薄膜)構造の形態の変化となる。この形態の変化は、感知部材のゲージの抵抗変化を生じさせ、これは、支持部材5に搭載されたセンサ電子部品23によって増幅されかつ調整される。
【0034】
ワイヤボンド14は、感知部材1を、電気的に導電性の部材、例えば支持部材5上のトレース13に電気的に接続する。好ましくは、トレース13とワイヤボンド14は、貴金属から構成され、支持部材5の両側に存在する流体によって生成された酸性の環境による化学的な攻撃や腐食に対する特性を改善する。電気的に導電性の部材を有する支持部材は、セラミックのプリント配線基板を形成し、その上に、電子部品23が固定され電子回路23を形成する。電子回路は、感知部材の1つもしくはそれ以上の電気的な特性を感知し、かつ1つもしくはそれ以上の電気的な特性を調整し、乗り物の電子制御ユニットで使用するための出力信号に変換するように構成される。
【0035】
圧力センサモジュール30は、支持部材5の前方に前方バリア4を有する。前方バリア4は、感知部材1を取り囲み、かつ前方保護部材11で部分的に充填されたキャビティを形成する。保護部材11は、電気的に絶縁の性質を有し、保護部材11は、感知部材1の一方の側と前方バリア4の間の前方表面の一部とを覆う。保護部材11は、好ましくはジェルであり、感知部材1を、第2の入り口22を介して第2の圧力チャンバ25に導かれた汚染物質から保護する。前方バリア4は、前方保護部材11をあるべき位置に保つ。“ジェル”は、溶液よりもより固体形態のジェル状の物質を形成する、固体中のコロイド状の懸濁液(colloidal suspension of a liquid)として定義される。ジェルは、圧力チャンバ内の圧力を正確に伝達し、他方、感知部材を過酷な周辺状況から隔離するように具体的に選択される。ジェルは、例えば、Shin-Etsu Sifelであることができ、−40℃から+135℃の温度範囲で柔軟であり、感知部材1に余分な圧力を及ぼさない。ジェルは、好ましくは、排気ガスに耐久性がある。保護部材2は、感知部材1を排気ガスの凝縮、例えば酸性の凝縮から保護する。さらに、保護部材は、感知部材1の損傷を与え得るおよび/または感知部材1の故障を生じさせ得る、すすの粒子やその他の粒子のための機械的な隔離を形成する。
【0036】
圧力センサモジュール30はさらに、支持部材の後方9に後方バリア6を有する。後方バリア6は、貫通孔7を取り囲み、かつ閉じた領域8を形成し、領域8は、後方保護部材2で部分的に充填される。後方保護部材2は、類似の性質を有する前方部材11と類似の物質である。後方保護部材2は、好ましくはジェルであり、感知部材1を、第1の入り口21を介して第1の圧力チャンバ24にもたらされる汚染物質から保護する。後方バリア6は、後方保護部材2をあるべき位置に保つ。
【0037】
後方バリア6によって囲まれた貫通孔7および閉じた領域8は、圧力チャンネル10を形成する。圧力チャンネル10は、第1の圧力チャンバ24の圧力を伝達させ感知部材1に作用させる。
【0038】
前方バリア4と後方バリア6は、取り囲む構造であり得る。取り囲む構造の形状は、図3に例示されるように実質的に四角形状、または円筒状であることができ、あるは他の適切な形状であることができる。バリア4、6は、好ましくは、支持部材5と同様の材料から構成される。バリアは、好ましくは、セラミック材料から構成される。
【0039】
前方バリア4は、導電性部材13またはトレースが支持部材5にエッチングされた後に、支持部材5に接合される構造である。後方バリア6は、支持部材5に接合される構造であることができる。他の実施例では、支持部材5と後方バリア6は、一体の材料から形成され、例えばシンタリング処理によってである。
【0040】
前方および後方バリア4、6は、固体の部材であることができ、例えば、96%アルミナ、あるいはディスペンスされるSifel604接着剤のようなエラストマ(フレキシブル部材)であることができる。エラストマの場合、バリア4、6は、個々のディスペンスで処理され、キュアされ、あるいは各保護部材2、11とともにキュアされ得る。
【0041】
支持部材5の貫通孔7は、互いに平行でありかつ支持部材5の前方3と後方9の双方に垂直なエッジを持つことができる。本発明では、後方バリア6によって取り囲まれた支持部材5の後方9の表面領域は、支持部材5の後方9の表面の貫通孔7の領域よりも大きい。温度の変化は、圧力チャンネル10内の保護部材2の膨張または収縮になる。保護部材2の側壁への接着は、熱膨張または熱収縮による応力になる。支持部材5の後方9の面から貫通孔7の面への遷移面12の形状は、感知部材1への熱応力の伝達を決定する。
【0042】
貫通孔7と後方バリア6の閉じた領域8によって形成された圧力チャンネル10の保護部材2の熱応力は、前方3から後方9に向けて断面が広がる貫通孔7、言い換えれば、断面が感知部材1からの距離の増加とともに広くなる貫通孔7をもつことによって、さらに改善され得る。この特徴はさらに、異なる温度依存の使用される材料の熱膨張係数による感知部材1への機械的応力がほとんど生じさせない圧力チャンネルを提供する利点をもつ。
【0043】
図3は、圧力センサモジュールアッセンブリ30の前方の斜視図である。支持部材5の前方に感知部材1がある。支持部材は、セラミック製のPWBであり、これは、導電性部材あるいはトレース13がエッチング形成されている。感知部材1は、ボンディングワイヤ14によって導電性部材13に電気的に接続される。前方バリア4は、支持部材5の前方に取り付けられる。導電性部材13は、前方バリア4の下を通り、電子回路23へ延び、感知部材1から得られた電気信号が測定された差圧力を示す信号に変換される。
【0044】
図4は、セラミック基板31の平面図であり、図1−3に示された圧力センサモジュールの使用のために複数の個々のセラミック支持部材32がレーザカットされ、スクライブされている。セラミック基板は、バッチ処理に適切である。基準33は、個々のセラミック支持部材32の分離のためのレーザスクライブラインを示している。各支持部材32は、セラミック内に貫通孔34を有する。貫通孔34は、感知部材表面に到達するべき圧力のアクセスのために設けられ、感知部材表面は、セラミック支持部材32の一方の面で貫通孔34を覆う。
【0045】
貫通孔34は、レーザ処理またはグリーン状態形成によりそこに形成され、貫通孔34は、セラミック基板31を形成するシンタリング処理中に形成される。
【0046】
本発明の他の実施例によれば、セラミック部材のセラミックエッジ状態は、セラミック部材にアニール処理を施してレーザ切断面をアニール(温度および時間)し、より脆弱な表面構造および/またはセラミック相からより頑固な表面構造および/またはセラミック相へとレーザ処理された表面エッジ部分を変換することによって、ディーゼルエンジン排気のような酸性環境での使用のために酸に対する堅牢性または耐久性を改善するよう変更される。
【0047】
図5は、酸性テストの実施後の、アニール処理を施されていない、標準的なレーザ切断された貫通孔を有するセラミック部材を示し、当該セラミック部材のエッジへの化学的な攻撃である証拠50を示している。
【0048】
セラミック基板部材は、次のようにして形成することができる:
96%のAlのセラミック基板部材(テープキャストもしくはロールコンパクト)を使用。
レーザ切断処理において生成されるスラグを制御するためにエマルジョンを使用。
セラミック基板部材(COレーザでレーザ切断)における貫通する穴を形成する処理。
【0049】
後の工程で単数化(COレーザによるパルス・レーザ切断)のため、セラミック基板部材にスクライブ形成する処理。
エマルジョンを除去するためのリンス。
【0050】
アニール処理は次のステップを含む:
典型的に35℃/分で室温(25℃)からアニール温度へのスロープ。
アニール温度:1300℃(±100℃)。
酸素環境:周囲空気が十分である。
アニール時間:最小で1時間。
一般的に35℃/分でアニール温度から室温へのスロープ。
【0051】
アニール処理の後、導電性部材、すなわちトレース電子回路を支持部材上に取り付けるため次のステップが行われる。
厚いフィルムのプリント:
第1の導体のスクリーン印刷。
第1の導体の乾燥。
第1の導体を850℃(±50)で燃焼。
第2の導体をスクリーン印刷。
第2の導体を乾燥。
第2の導体を850℃(±50)で燃焼。
誘電体厚膜をスクリーン印刷。
誘電体厚膜を乾燥。
誘電体厚膜を850℃(±50)で燃焼。
センサの組み立て。
【0052】
サンプルは、上記のプロセスに従って製造され、さらに他の従来のサンプルとともに酸性テストを実施される。従来のサンプルは、次のよなアニール処理をされていない。
【0053】
テストサンプル:
制御サンプル:標準的なレーザ切断された貫通孔は、96%のアルミナセラミック基板部材内に形成され、MEMSダイが取り付けられ、Sifel(電子部品ポッティング材料としてShin-Etsuの登録商標)8070ジェルは、セラミックの貫通孔の後方/MEMSダイの後方に充填される。
【0054】
アニール処理されたテストサンプル:標準的なレーザ切断された貫通孔は、制御サンプルのようにセラミック基板部材に形成されるが、これは、上述したように、さらに1時間の間、1300℃に処理される。MEMSダイが取り付けられ、かつSifel8070ジェルがセラミックの貫通孔の後方/MEMSダイの後方に充填される。
【0055】
テスト条件は次の通りである:
テストサンプルは、主に窒素、硫黄、酸、ギ酸を含む1.0pHの酸性混合物の容器に浸される。サンプルは、容器内で、120時間という全体の時間において95度で1時間の休止を有する、25℃から95℃へさらに25℃へ戻る4度の熱サイクルを実施される。サンプルは、酸性から取り去られ、リンスされ、検査され、そして図5および図6に示されるように画像が得られる。
【0056】
図6は標準的なレーザ切断された貫通孔を有するが、表面構造を改善し、および/または、より酸性に対して頑固なセラミック相の形成の発達を促進するためにポストアニール処理されたセラミック部材を示し、同様の酸性テストが実施された後の、セラミック部材のエッジの化学的攻撃の証拠は示されていない。
【0057】
温度アニール処理の代わりに、第2の機械加工、化学的エッチングもしくは化学的処理を行い、表面構造を改善し、および/または、セラミック部材のより脆弱な相を取り除きもしくは低減させることができる。レーザ切断の代わりに貫通孔のグリーン状態の形成をすることができ、これは、セラミック部材のより脆弱な相の形成を抑止しもしくは低減するために、第2のアニール処理、機械加工、化学的エッチングもしくは化学的処理を伴ってもよいし、伴わなくても良い。
【0058】
図7は、支持部材5の後方9の保護部材2についての寸法の要件を例示している。保護部材2は、後方バリア6の表面に応じた凹面を有する。その凹面の底は、感知部材1に対する保護部材の最小限の厚さd1を規定する。すなわち、d1は、排気ガスと、保護部材2を介して後方9での感知部材の表面との間の最小限の距離である。さらに距離d2は、後方保護部材2によって覆われた感知部材1の表面と、支持部材5の後方に一致する平面との間の最小限の距離である。貫通する穴7の保護部材2への排気ガスの攻撃、すなわち水溜りの存在は、最小限の厚さd1がd2と同等であるか、それよりいも大きい場合に、著しく減少することが確認された。この要件は、後方バリア6の間の支持部材5の後方9の表面が保護ジェルによって覆われることを保証する。保護部材の劣化の最初の徴候は、凹面が後方バリアに接触する位置近傍の保護部材2において確認されるため、貫通する穴7内の保護部材が劣化するのにはより時間がかかることになる。これは、圧力センサの寿命を延長させる。
【0059】
上述された実施例は、差圧力センサモジュールに関する。本発明は、改良された耐酸性の圧力センサを提供するために利用されることができることに留意すべきである。その場合、圧力センサ構成は、加圧された酸性流体が第1の圧力チャンバ24へアクセスすることを可能にする入口21を持つ第1の圧力チャンバのみを有することができる。圧力は、感知部材1の一方で貫通孔7を介して作用する。予め決定され条件付けられた圧力は、感知部材のもう一方の面で作用する。この予め決定され条件付けられた圧力は、非酸性環境からのものである。これにより、ボンディングワイヤ14と電気的な導電性部材13のための高価でない材料を利用することが可能となる。さらに、前方バリア4と前方保護部材11は、酸性および汚染環境のため、圧力センサモジュール30の前方3を保護するために必要とされない。そのような圧力センサモジュールは、それが最終的にセンサハウジング内に配置される前に、製造されかつテストされることができるという利点がある。
【0060】
センサモジュールの後方の圧力チャンネルもしくはジェルチャンバの代替的形状が開示される。この代替的形状は、改良された圧力センサモジュールに、センサモジュール後方の酸性状態に対する改善された堅牢性を有する。これは、ジェルダムもしくはバリアを支持部材の後方に加え、かつ圧力チャンネルの形状および/または寸法とジェルの量を最適化することにより、達成される。ジェルダムは、
1)ジェルの高さに対するジェルの表面の割合、すなわち、排気ガスと感知部材との間の最短距離を増加させること、
2)凹面と感知部材との距離を増加させること、
3)ジェルの凹面が圧力チャンネルの側壁に接触する地点と感知部材との間の距離を増加させること、および
4)貫通する穴のジェル内の可能性のある核生成位置を除去すること、
を可能にする。これらの各々は、排気の環境で見られるような酸性状況に対する圧力センサモジュールの堅牢性、耐久性を改善する。
【0061】
本発明のいくつかの実施例が、例示的な実施例を用いて述べられた。これらの実施例を参照して述べられた構成要素についての種々の修正や変更は、添付の請求項により規定された本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって成し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサで使用される圧力センサモジュールであって、
支持部材の前方に搭載された感知部材であって、前記支持部材は、前方から後方に貫通する穴を含み、前記感知部材が前方で前記穴を覆う、前記感知部材と、
前記支持部材の後方にある後方バリアであって、当該後方バリアは、前記支持部材の後方の表面を取り囲み閉じられた領域を形成し、当該閉じられた領域と前記穴が圧力チャンネルを形成する、前記後方バリアと、
前記穴と少なくとも部分的に前記閉じられた領域を充填する後方保護部材と、を含む圧力センサモジュール。
【請求項2】
前記穴の断面は、前記前方から前記後方へ広がる、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項3】
前記穴の表面の前記後方への遷移は、滑らかな形状を有する、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項4】
前記後方バリアは、前記支持部材に取り付けられる、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項5】
前記支持部材と前記後方バリアは、単一の材料によって形成される、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項6】
前記支持部材は、前方に設けられかつ前記感知部材に電気的に接続される電気的に導電性の部材を有するセラミックPWBである、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項7】
前記電気的に導電性の部材は、貴金属を含む、請求項6に記載の圧力センサモジュール。
【請求項8】
前記感知部材は、差圧感知部材である、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項9】
前記感知部材は、MEMSの差動圧力感知部材である、請求項8に記載の圧力センサモジュール。
【請求項10】
前記センサはさらに、
前記感知部材を囲む前方バリアと、
電気的絶縁性を有し、前記感知部材と前記前方バリアの間の前方を覆う前方保護部材とを有する、請求項8に記載の圧力センサモジュール。
【請求項11】
前記後方バリア内の後方上の前記閉じられた領域は、前記支持部材の前記穴の領域よりも大きい、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項12】
前記感知部材を覆う前記後方保護部材の最小限の厚さは、前記後方保護部材によって覆われた前記感知部材の表面と前記支持部材の後方に一致する平面との間の最小の距離よりも大きい、請求項11に記載の圧力センサモジュール。
【請求項13】
前記貫通する穴のエッジの状態は、
約25℃の室温から約1300℃(±100℃)まで、選択された速度で支持の温度を増加させ、
約1300℃の温度をおおよそ1時間維持し、
セラミック部材の温度を選択された速度で室温に減少させる、
ステップを含む方法によって改良された、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項14】
前記支持部材は、射出成形処理によって製造され、前記穴は、モールドによって前記支持部材内に形成される、請求項1に記載の圧力センサモジュール。
【請求項15】
ハウジングと、
請求項1に記載の圧力センサモジュールと、
を有する圧力センサ構成。
【請求項16】
圧力センサのための圧力センサモジュールであって、
セラミック支持部材の前方に搭載された感知部材であって、前記支持部材は、前方から後方に貫通する穴を有し表面エッジ部分を形成し、前記感知部材は前方で穴を覆い、前記貫通する穴の前記表面エッジ部分は、以下のステップを含む方法により処置されることを特徴とする;
約25℃の室温から約1300℃(±100℃)まで、選択された速度で支持の温度を増加させ、
約1300℃の温度をおおよそ1時間維持し、
前記セラミック部材の温度を室温に選択された速度で減少させるステップを含む方法で処理された圧力センサモジュール。
【請求項17】
圧力センサはさらに、前記支持部材の後方に取り付けられかつ前記支持部材の後方の表面を取り囲み閉じられた領域を形成する後方バリアを含み、前記閉じられた領域と前記穴は、圧力チャンネルを形成し、圧力センサはさらに、前記穴と少なくとも部分的に前記閉じられた領域を充填する後方保護部材を含む、請求項16に記載の圧力センサモジュール。
【請求項18】
ハウジングと、
請求項16に記載の圧力センサモジュールと、
を含む圧力センサ構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−38916(P2010−38916A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176336(P2009−176336)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(506154029)センサータ テクノロジーズ インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】