説明

安全監視システム

【課題】靴等の歩行者の身体の動きによって歩行者の現在の位置や状態を正確に監視できて防犯効果を十分に高めることができると共に、構成簡易にしてコスト的に有利な安全監視システムを提供する。
【解決手段】歩行者の身体の動きを検出する検出手段と、歩行者が携帯し検出手段で検出された信号とGPS情報とに基づいて歩行者の現在位置情報を求めると共に、該現在位置情報に基づく歩行者の身体の動きが予め設定した行動範囲内において異常であると判定した際に異常通報を行い得る携帯端末手段と、を備えることを特徴とする。前記携帯端末手段は、現在位置情報により得られた歩行者の歩行リズムが予め設定した歩行リズムと異なる場合に異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼稚園児や小学生等の学童の登下校時の位置及び状態を監視して防犯効果を高めることが可能な安全監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴等の履き物の位置を特定することにより、履き物を使用した歩行者の現在位置を遠隔から把握し得る携帯型安全システムとしては、例えば特許文献1に開示されている。この安全システムは、靴に小型のCCDカメラと小型マイクを取り付け、これらの信号を靴に内蔵したり外付けした携帯型安全システムと歩行者が携帯している携帯型パソコンで処理し、障害物を検出したり障害物を回避する指示を出すようにしたものである。
【特許文献1】特開平11−250377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような安全システムにあっては、靴に設けたカメラ等により障害物を検出してそれを回避すること等ができるものの、歩行者自体の動きを監視して、その状態が異常状態であるか正常状態であるかを正確に判断して、例えば歩行者としての学童に対する登下校時の犯罪を未然に防ぐ等の防犯効果を十分に高めることが難しい。また、靴にカメラ等の検出手段や携帯型安全システムを内蔵したり歩行者が携帯型パソコンを携帯する必要があるため、例えば靴自体が高価となって学童等の登下校用の靴としてコスト的に不適切となり易い。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、靴等の歩行者の身体の動きによって歩行者の現在の位置や状態を正確に監視できて防犯効果を十分に高めることができると共に、構成簡易にしてコスト的に有利な安全監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、歩行者の身体の動きを検出する検出手段と、前記歩行者が携帯し検出手段で検出された信号とGPS情報とに基づいて歩行者の現在位置情報を求めると共に、該現在位置情報に基づく歩行者の身体の動きが予め設定した行動範囲内において異常であると判定した際に異常通報を行い得る携帯端末手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
そして、前記携帯端末手段は、請求項2に記載の発明のように、現在位置情報により得られた歩行者の歩行リズムが予め設定した歩行リズムと異なる場合に異常と判定することが好ましく、また、請求項3に記載の発明のように、歩行者の動きを異常と最初に判定した際に、その状態が予め設定した状態で継続しているか否かを判断して前記異常通報を行うことが好ましい。さらに、請求項4に記載の発明のように、前記携帯端末手段がGPS通信機能を備えた携帯電話であり、前記予め設定した行動範囲が学童の登下校エリアであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、歩行者の靴等に取り付けられ検出手段の検出信号とGPS衛星を介して送信されるGPS情報とに基づいて、携帯端末手段で歩行者の現在位置情報が求められ、この現在位置情報に基づいて予め設定した行動範囲内の歩行者の身体の動きが異常である場合に異常通報を行うため、例えば歩行者が履いている靴の動きによって歩行者の現在の位置や状態を正確に監視できて防犯効果を十分に高めることができると共に、靴自体の構成を簡易にしてコスト的に有利な安全監視システムを得ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、携帯端末手段が現在位置情報から得られる歩行リズムが予め設定した歩行リズムと異なる場合に異常と判定するため、例えば歩行者の年齢や職業に応じた歩行リズムを予め記憶設定することにより、歩行者の異常状態等を高精度に監視することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、携帯端末手段が歩行者の動きを異常と最初に判定した際に、その状態が予め設定した状態で継続しているか否かを判断して異常通報を行うため、異常状態が所定状態で継続している場合にのみ異常通報を行うことができて、誤報を防止してシステムの信頼性を高めることができる。
【0010】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、携帯端末手段としてGPS通信機能を備えた携帯電話が使用されると共に予め設定した行動範囲が学童の登下校エリアであるため、普及率の高い携帯電話を利用しつつ歩行者としての学童の登下校時の動きを正確に監視できて、登下校時の学童に対する防犯効果を十分に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明に係わる安全監視システムの一実施形態を示し、図1がその構成を示すブロック図、図2及び図3が靴の側面図及びかかと部分の底面図、図4がシステムの動作の一例を示すフローチャート、図5がその説明図である。
【0012】
図1に示すように、安全監視システム1は、歩行者としての例えば学童の靴4に内蔵された靴センサ2(検出手段)と、該靴センサ2で検出した信号を処理する携帯端末装置3(携帯端末手段)を備えている。前記靴センサ2は、例えば圧電素子等の歪みセンサで形成され、図2及び図3に示すように、学童の通学用の運動靴やスニーカ等の靴4のかかと4a部分に1個もしくは複数個内蔵されている。この時、この靴センサ2は、送信部等を有してその検出信号を無線によって後述する携帯端末検出装置3に送信できるように構成されている。
【0013】
また、前記携帯端末装置3は、図1に示すように、記憶部や演算処理部を有するマイコン等からなる制御部5を有し、この制御部5の入力側には、前記靴センサ2と、3つのGPS衛星7a〜7cからの信号を受信するGPS受信部6と、例えばテンキー等からなり各学童の暗証番号や監視システムの設定及び解除をする際に使用される入力部8と、例えば異常発生時に学童の音声を後述する各端末に送信し得るマイク9等が接続されている。
【0014】
また、制御部5の出力側には、液晶ディスプレィ等からなる表示部10と、所定の音や音声を発するスピーカ11と、制御部5で判定した異常信号等をアンテナ13を介して中継局14のアンテナ14aに送信(通報)する送信部12等が接続されている。さらに、携帯端末装置3には、制御部5等の各部に電力を供給するバッテリィ15が内蔵されている。なお、前記中継局14には、例えば学童の通っている学校や塾、各学童の家庭、警察署等の各端末16a〜16iが接続されて、これらの端末16a〜16iに各学童が携帯する携帯端末装置3から例えば異常通報が送信されるようになっている。そして、この携帯端末装置3としては、例えばGPS通信機能を備えた携帯電話が使用されて、各学童によって登下校時に携帯される。
【0015】
次に、このように構成された安全監視システム1の動作の一例を図4のフローチャート等に基づいて説明する。先ず、携帯端末装置3の制御部5の記憶部には、学童の識別番号が記憶されると共に、図5に示す学童の自宅18と、例えば学童が通う学校19及び塾20を結ぶ行動範囲が行動エリア17a〜17cとして記憶されている。この状態で、携帯端末装置3を学童が携帯して電源をオン(もしくは図示しない監視スイッチをオン)すると、図4に示すようにプログラムが開始(S100)され、GPS信号(GPS情報)を受信(S101)して現在位置情報が求められる。
【0016】
そして、現在位置情報が求められると、この位置が予め設定されている行動エリア17a〜17c内か否かが判断(S102)され、この判断S102で「YES」の場合、すなわち学童が行動エリア17a〜17c内にいる場合は、靴センサ2の検出信号を読み込んで(S103)、学童の歩行速度が算出(S104)され、この歩行速度が予め設定した速度範囲外か否かが判断(S105)される。この判断S105における設定速度範囲は、その上限が例えば車の速度に対応する速度であり、下限が略0の停止状態の速度が使用される。
【0017】
前記ステップS105で「YES」の場合、すなわち学童が行動エリア17a〜17c内でその歩行速度が設定範囲外の場合は、この状態が仮異常状態と判断されて記憶(S106)され、靴センサ2からの検出信号の読込間隔(検出間隔)が短くなるように変更(S107)される。そして、この仮異常状態が継続しているか否かが判断(S108)され、この判断S108で「YES」の場合、すなわち読込間隔を短くしても仮異常状態が継続されている場合は、異常発生と判断して異常信号を送信部12から中継局14に送信して、各端末16a〜16iに異常通報(S109)を行う。
【0018】
一方、前記判断S105で「NO」の場合、すなわち算出された歩行速度が所定速度範囲内の場合、あるいは前記判断S108で「NO」場合、すなわち仮異常状態が読込間隔を短く設定した後に解消された場合、さらに前記ステップS109で異常通報が行われた場合は、監視スイッチがオフか否かが判断(S110)される。この判断S110で「NO」の場合は、予め設定した所定時間が経過したか否かが判断(S111)され、この判断S111で「YES」の場合は、ステップS101に戻り該ステップS101以降を繰り返し、また、判断S111で「NO」の場合は、ステップS103に戻り、該ステップ以降を繰り返す。
【0019】
なお、前記判断S102で「NO」の場合、すなわち学童が図5の繁華街21等の行動エリア17a〜17c外にいる場合は、ステップS109に移行して異常通報を行い、また、前記判断S110で「YES」の場合、すなわち学童が自宅等にいて監視を行う必要がなく監視スイッチがオフの場合は、一連のプログラムが終了(S112)する。
【0020】
つまり、このフローチャートによれば、学童が履く靴4に内蔵した靴センサ2で学童の動きを検出すると共に、この靴センサ2で検出された信号とGPS信号とに基づいて学童の歩行速度を算出し、この歩行速度が、所定の行動エリア17a〜17c内の場合で車の速度のように異常に早かったり動かない場合のように、予め設定した速度範囲から外れる場合に仮異常と判定する。そして、この仮異常が発生すると靴センサ2による読込間隔を短くしてその持続状態を把握し、所定時間仮異常状態が継続した場合に異常と判定して異常通報が行われる。この異常通報により、学童の登下校時の誘拐等の異常発生が中継局14を介して各家庭や学校等の端末16a〜16iで素早く把握できることになる。
【0021】
なお、以上のフローチャートは一例であって、例えばステップS107における読込間隔変更をバッテリィ15の残存容量により、例えばバッテリィ15の容量が少なくなった場合に読込間隔を長くして、監視中のバッテリィ切れをなくすフローチャートを組み込みこともできる。
【0022】
このように、上記実施形態の安全監視システム1にあっては、学童の靴4に内蔵された靴センサ2の検出信号とGPS衛星7a〜7cを介して送信されるGPS信号とに基づいて、携帯端末装置3で学童の現在位置情報が求められ、この現在位置情報に基づいて予め設定した行動エリア17a〜17c内において学童の動きが異常である場合、あるいは学童が行動エリア17a〜17c外にいる場合に異常通報を行うことができるため、学童の現在位置やその状態を正確に監視できて、例えば登下校時の誘拐等の犯罪を未然に防止して防犯効果を十分に高めることができる。
【0023】
特に、携帯端末装置3において現在位置情報から得られる歩行速度等の歩行リズムが予め設定した歩行リズム(歩行速度)と異なる場合に異常と判定するため、各学童の体格等に応じて歩行リズムを予め記憶設定することにより、学童の異常状態等を高精度に検出(監視)することができる。
【0024】
また、携帯端末装置3が学童の動きを異常と最初に判定した仮異常状態の際に、その状態が予め設定した状態で継続している場合に異常通報を行うため、仮異常状態が所定状態で継続している場合にのみ異常通報を行うことができて、異常通報の誤報を防止できると共に、例えばバッテリィ15の残存容量に応じて読込間隔を調整するようにすれば、監視途中にバッテリィ切れが生じることを防止できて、安全監視システム1の信頼性を一層高めることが可能となる。
【0025】
さらに、携帯端末装置3としてGPS通信機能を備えた携帯電話が使用されると共に予め設定した行動エリア17a〜17cが学童の登下校エリアであるため、普及率の高い携帯電話を利用しつつ歩行者としての学童の登下校時の動きを正確に監視できて、登下校時の学童に対する防犯効果をより一層高めることができる。また、携帯端末装置3として普及の著しい携帯電話が使用できると共に、靴4のかかと4a部分に歪みセンサ等を内蔵することにより対応できて、靴4自体の構成を簡易にしてそのコストアップを抑え、学童の通学用靴として好適に使用することができる。これらにより、携帯端末装置3や靴センサ2の構成を簡略化して、コスト的に有利でかつ使い勝手に優れた安全監視システム1の提供が可能となる。
【0026】
なお、上記実施形態においては、学童の動きを靴4に内蔵した靴センサ2により検出したが、本発明はこれに限定されず、例えば万歩計(登録商標)のような歩行者の動きを検出する検出手段や歩行者の脈拍を検出する検出手段等、歩行者の身体の各部の動きを検出し得る適宜の検出手段を採用することができる。また、上記実施形態における、携帯端末装置3の形態、その具体的ブロック図等は一例であって、例えば携帯電話の代わりに学童でも操作可能な専用の携帯端末装置を使用する等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、学童の登下校時の防犯対策に限らず、例えば徘徊癖のある老人等の現状位置の監視して防犯効果を得る場合等にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わる安全監視システムの一実施形態を示すブロック図
【図2】同靴の側面図
【図3】同そのかかと部分の底面図
【図4】同システムの動作の一例を示すフローチャート
【図5】同その説明図
【符号の説明】
【0029】
1・・・安全監視システム、2・・・靴センサ(検出手段)、3・・・携帯端末装置(携帯端末手段)、4・・・くつ、4a・・・かかと、5・・・制御部、6・・・GPS受信部、7a〜7c・・・GPS衛星、8・・・入力部、9・・・マイク、10・・・表示部、11・・・スピーカ、12・・・送信部、13・・・アンテナ、14・・・中継局、15・・・バッテリィ、16a〜16i・・・端末、17a〜17c・・・行動エリア、18・・・自宅、19・・・学校、20・・・塾。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の身体の動きを検出する検出手段と、前記歩行者が携帯し検出手段で検出された信号とGPS情報とに基づいて歩行者の現在位置情報を求めると共に、該現在位置情報に基づく歩行者の身体の動きが予め設定した行動範囲内において異常であると判定した際に異常通報を行い得る携帯端末手段と、を備えることを特徴とする安全監視システム。
【請求項2】
前記携帯端末手段は、現在位置情報により得られた歩行者の歩行リズムが予め設定した歩行リズムと異なる場合に異常と判定することを特徴とする請求項1に記載の安全監視システム。
【請求項3】
前記携帯端末手段は、歩行者の身体の動きが異常と最初に判定した際に、その状態が予め設定した状態で継続しているか否かを判定して前記異常通報を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の安全監視システム。
【請求項4】
前記携帯端末手段がGPS通信機能を備えた携帯電話であり、前記予め設定した行動範囲が学童の登下校エリアであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の安全監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−304961(P2007−304961A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134025(P2006−134025)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000101400)アツミ電氣株式会社 (69)
【Fターム(参考)】