説明

安定性有機過酸化物組成物

【課題】有効期間の長い薬品や化粧品で使用するための改良された安定性をもった有機過酸化物組成物を提供する。
【解決手段】有機過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキシド)及び抗酸化剤(例えば、ブチル化ヒドロキシルトルエン、ビタミンE酢酸塩等)、及び所望により溶媒(例えば、ベンゾイルベンゾエート、ジメチルイソソルビド等)からなる組成物及びその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液中で安定な有機過酸化物を含む組成物に関する。本組成物は人肌に局部的に塗布するのに有用であり及び/又は安定な有機過酸化物を新規な製品形態で使用するのを可能にする。これらの組成物を使用して調合された製品(例えば、工業用、薬品用又は消費剤製品)は長い有効期間を示す。そのような組成物はまたユニークな加工可能性ももっている。
【背景技術】
【0002】
有機過酸化物は多くの製品で使用されている。例えば、ベンゾイルパーオキシドは治療用の活性成分として薬品及び日用品で使用されている。有機過酸化物は不安定である。この不安定性はこれらの物質がフリーラジカル発生源として使用されるときには望ましい特徴である。しかしながら、有機過酸化物がフリーラジカル発生源としての目的以外で使用されるときは、できるかぎり安定な物質であることが望ましい。不安定性は問題が多くそして短い有効期間、早期使用が望ましい、高い製品コスト、特別な保存のための考慮、活性低下による効果の低下及び製品回収を伴うことになる。
【0003】
従って、有効期間の増大が利点となる製品で使用するためには、改良された安定性をもった有機過酸化物組成物が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、有効期間の長い薬品や化粧品で使用するための改良された安定性をもった有機過酸化物組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここには一つ以上の抗酸化剤を含む有機過酸化物組成物が記載されている。これらの組成物は優れた安定性を示す。そのような組成物は有効期間が長い製品に調合することができる。優れた安定性はまた、例えば、ベンゾイルパーオキシド(高められた温度で貯蔵するときには本来、不安定である物質)の溶液のような、これまで得られていなかった製品形態を可能にしている。本発明の組成物はさらに有機過酸化物が溶解する溶媒成分を含む。さらに、本組成物はエマルジョンを含む有機過酸化物を形成するのにも有用であることが見出された。
【0006】
本発明の開示における好適な安定性付与組成物は、主要な活性成分がベンゾイルパーオキシドであるニキビの治療用溶媒媒体調合法を提供する。ベンゾイルパーオキシドは、セラム、トナー、ポンプ又はエアロゾルスプレー、透明ゲル、スティック、クリーム、ローション及びムースのような透明製品で与えられる。透明製品形態はエマルジョンのようなその他の薬品又は化粧品に取り込むこともできる。
【0007】
本発明の開示に従ったこれらの及びその他の態様は後述の発明を実施するための最良の形態における記載により明らかとなるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機過酸化物組成物は優れた安定性を示す。この組成物は有効期間が長い製品に調合することができ、溶液のようなこれまで得られていなかった製品形態を可能にしている。さらに、本組成物はエマルジョンを含む有機過酸化物を形成するのにも有用である
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の開示に従った組成物は、一つ以上の有機過酸化物と組み合わせて少なくとも一つの抗酸化剤を含む。抗酸化剤は所望の有機過酸化物の溶媒担体に可溶性であるか、又は有機過酸化物それ自身中に可溶性又は分散可能である物質であれば如何なるタイプのものでもよい。オイル可溶性系用の抗酸化剤の好適な例としては、限定はしないが、ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンE酢酸塩、アスコルビルパルミテート、テトラヒドロクルクミノイド、t−ブチルヒドロキノン、メタ及びパラクレゾール及びフェノール体及びその類似物を包含する。もちろん、本発明の調合においては、抗酸化剤の組み合わせも使用できることは理解すべきである。本組成物において使用される抗酸化剤の量は、限定はしないが、有機過酸化物の性質、有機過酸化物の濃度、存在する溶媒の性質及び本組成物を使用して調合される最終製品の性質を含む多くの要因に依存する。しかしながら典型的には、本組成物中の抗酸化剤の量は組成物の重量基準で約0.1から30w%である。特に有用な態様においては、本組成物中の抗酸化剤の量は組成物の重量基準で約1.0から10w%である。
【0010】
有機過酸化物は長い間、工業的に不飽和モノマーのフリーラジカル重合開始剤として使用されてきた。過酸化物の分解によって生成するフリーラジカルは、モノマーの不飽和炭素に、電子が豊富な二重結合によってそれ自身結合する。フリーな電子はそれから二重結合が存在する近傍の炭素に電子シフトを起こさせる。この不対電子は不安定なフリーラジカルを生成させそしてそれと対になる別の電子を必要とする。新しいフリーラジカルは、結合できる別の二重結合炭素を探すことになる。このプロセスは、モノマーが枯渇するか又はポリマー鎖がフリーラジカルを安定化させる分子種に出会うまでそれ自身繰り返し行われる。
【0011】
有機過酸化物とは、一般的には過酸化物官能基ROOR’を含む有機分子を意味する。本発明にしたがって使用される有機過酸化物の好適な例としては、限定はしないが、以下のクラスのいずれか即ち、ジアシル、ジアルキル、ヒドロパーオキシド、ケトンパーオキシド、パーオキシエステル、パーオキシケタール及びパーオキシジカーボネートを包含する。限定はしないが、追加の有機過酸化物の例としては、アセトンパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、キュメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ピナンパーオキシド、ジエチルエーテルパーオキシドを包含する。或る態様においては、有機過酸化物はベンゾイルパーオキシドである。本組成物において使用される有機過酸化物の量は、限定はしないが、有機過酸化物の性質、有機過酸化物の濃度、存在する溶媒の性質及び本組成物を使用して調合される最終製品の性質を含む多くの要因に依存する。しかしながら典型的には、本組成物中の有機過酸化物の量は組成物の重量基準で約1から70w%である。特に有用な態様においては、本組成物中の抗酸化剤の量は組成物の重量基準で約2から35w%である。
【0012】
或る態様においては、本発明の開示に従った組成物は、一つ以上の抗酸化剤と一緒にベンゾイルパーオキシドを含む。ベンゾイルパーオキシドは通常は、純粋な(98%活性)結晶又は20−30%の水中に70−80%の活性ベンゾイルパーオキシドを含む、湿った結晶状態で市販されている。そのようなベンゾイルパーオキシド製品は、ノラックカンパニーインク社、アズサ(AZUSA)、CAからの商標名ベノックス(BENOX)として、又はエルフアトケムノースアメリカ、インク社、フィラデルフィア、CAからの商標名ルシドール(LUCIDOL)として市販されている。これらの又はその他の形態をもつベンゾイルパーオキシドのいずれも本発明の開示に従った組成物を形成するために開示された溶媒と混合することができる。
【0013】
抗酸化剤と混合される有機過酸化物の量は、例えば、ベンゾイルパーオキシドの活性、製品の最終形態及び使用される特定の開示された溶媒を含む多くの要因に依存する。一般的には、ベンゾイルパーオキシドはベンゾイルパーオキシド/抗酸化剤混合物の1から70w%を構成している。或る態様においては、ベンゾイルパーオキシドは組成物の重量基準で約2.00から約35w%を構成している。或る態様においては、ベンゾイルパーオキシドは組成物の重量基準で約2から約15w%を構成している。
【0014】
薬品工業におけるベンゾイルパーオキシドの使用はいくつかの化学的性質に基づいている。ベンゾイルパーオキシドはP.ニキビ菌をコントロールするマイルドな抗細菌剤化合物と見做されている。ベンゾイルパーオキシドフリーラジカルは細菌の細胞壁を攻撃して細菌を破壊できる。二次的には、ベンゾイルパーオキシドの分解は安息香酸、ベンゼン、フェニルベンゾエート及びビフェニルを生成させ、全てのそのような物質は細胞に毒性がある。最終的に、嫌気性菌のニキビは酸素の存在下では生きられないので、ベンゾイルパーオキシドからの酸素もまた細菌を殺すことになる。しかしながら、ベンゾイルパーオキシドの抗菌的性質の厳密なメカニズムは知られていない。知られていることは、個々の分子レベルで化学反応が起こることである。溶液中の分子は結晶形態中よりもより容易に反応する。
【0015】
溶液中に存在する個々の分子は微粒子分散物よりもずっと容易に肌(皮膚)に浸透する。二次的には、溶液形態中のベンゾイルパーオキシドは結晶形態のものよりもより多く移動可能でそしてより反応性がある。この増加した移動性と反応性はより効果的な製品に導く。しかしながら、この増加した移動性と反応性は溶液中での化学的安定性が低下するという欠点をもっている。
【0016】
このように、本発明に従った抗酸化剤の使用は、例えば、エマルジョン又は懸濁液のような如何なる種類の組成物でも有機過酸化物の安定性を改良するために使用できるのであるが、特に有用な態様においては、抗酸化剤は有機過酸化物の溶液中の有機過酸化物を安定化させるために使用される。
【0017】
有機過酸化物の分解(効果を発揮するために望ましいと信じられているのではあるが)は充分な貯蔵期間を確保しながら溶液の使用を可能にするためにコントロールされるべきである。有機過酸化物の分解は、以下の三つのメカニズムのような、種々のメカニズムによって起こる。
1.ジアシルパーオキシド(ベンゾイルパーオキシドは以下のように与えられる)の分解:
【0018】
【化1】

2.誘発される分解は下記の式で表され、そこではフリーラジカルがパーオキシドを攻撃してエステル及び異なったフリーラジカルを生成するが、二酸化炭素は生成しない。
【0019】
【化2】

3.強酸又は極性溶媒が存在するときに起こるヘテロ分解。
【0020】
【化3】

有機過酸化物は、限定はしないが、溶媒の種類、溶媒の極性、不純物、パーオキシド濃度及びラジカル誘発分解の発生を含む種々の因子に依り異なった安定性をもっている。パーオキシドはより極性の強い又は極性化し易い溶媒中で分解する。ベンゾエートのような溶媒はより大きな溶液安定性をもち、それはベンゼン環の電子局在化に寄与している。
【0021】
如何なる特定の理論によっても拘束されることは望まないが、酸化剤的有機過酸化物と一緒に溶液中で還元剤的抗酸化剤を使用すると、熱分解の影響を減少させることができることが見出された。抗酸化剤は通常、保護されるべき物質上でより容易に酸化される犠牲的物質として使用される。理由は不明であるが、生成するフリーラジカルを抑えると有機過酸化物の更なる分解は抑えられる。上述の分解メカニズムの式から明らかなように、二酸化炭素の発生は熱分解又はヘテロ分解による可能性がある。ヘテロ分解反応はフリーラジカルの発生を生じないので、それは抗酸化剤の使用がこの反応結果に影響する根拠とはならない。熱分解においては、フリーラジカルは、酸素結合で分裂するパーオキシドの直接的な結果である。抗酸化剤は中間体フリーラジカルがさらに分裂し二酸化炭素を放出することを防止するが、しかし有機過酸化物の最初の場所での分裂を防ぐ兆候を与えるものではない。
【0022】
本発明の組成物によって与えられる有機過酸化物の分解を減少させることは本組成物を使用して調合された製品の、通常そのような結果は得られないと思われる有効期間を改善する。二酸化炭素が発生する度合いは有機過酸化物の安定性の度合いに直接的な根拠を与える。安定性はまた分析的な解析によって経験的に決定される。従って、有機過酸化物を含む第一の組成物の安定性と有機過酸化物及び抗酸化剤を含む第二の組成物の安定性とを比較する方法が利用出来る。第一及び第二の組成物のそれぞれから発生する二酸化炭素を監視することによって、容易に安定性を比較することができる。二酸化炭素の発生の少ないことは有機過酸化物組成物の高い安定性の指標となることが見出された。有機過酸化物が抗酸化剤を含む場合には、比較的少ない量の二酸化炭素を発生し、そのことは組成物が安定であることを示している。有機過酸化物が溶媒と組み合わされ、そして抗酸化剤が存在しない場合には、大量の二酸化炭素を発生し、そのことは有機過酸化物が不安定であることを示している。有機過酸化物の安定性を比較するために好適な二酸化炭素テストは以下の実施例でさらに記載される。
【0023】
本発明の組成物の或る態様においては、有機過酸化物:抗酸化剤の比が組成物の重量基準で約10:1であり、同様に組成物の重量基準で約2.5:1である。他の態様においては、本発明の組成物は2%以下の抗酸化剤及び約10%を超えない有機過酸化物からなる溶液であることを特徴としている。しかしながら、他の好適な態様においては、約5から10%の抗酸化剤及び約20%を超えない有機過酸化物を含んでいる。本発明の溶液態様においては、有機過酸化物:抗酸化剤の比が組成物の重量基準で約10:1である。さらに別の溶液態様においては、有機過酸化物:抗酸化剤の比が組成物の重量基準で約2.5:1である。典型的な調製方法においては、有機過酸化物を溶解度の限界まで溶媒中に溶解させる。追加の成分と抗酸化剤をそれから組成物に添加して最終の望ましい製品を調合する。本発明に従った溶液を調製するのに有用な溶媒としては有機過酸化物を溶解させることが可能な如何なる溶媒も包含する。そのような溶媒の例としては、限定はしないが、安息香酸、ベンジルアルコール、サリチル酸、フェノール及びフタール酸の短鎖のアルキルエステル、エーテル、アルデヒド、ケトン又はアルコールを包含する。その他の溶媒の例としては、安息香酸、ベンジルアルコール、サリチル酸、フェノール及びフタール酸のアリールエステル、エーテル、アルデヒド、ケトン及びアルコールを包含する。或る態様においては、本発明に従った組成物は下記の溶媒クラスの一つ以上:安息香酸のアルキルエステル、ベンジルアルコールのアルキルエステル、サリチル酸のアルキルエステル、フェノールのアルキルエステル、フタール酸のアルキルエステル、ベンジルアルコールのアルキルエーテル、フタール酸のアルキルエーテル、フェノールのアルキルエーテルを包含する。限定はしないが、追加の好適な溶媒の例としては、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイルアルコール、ジエチルフタレート、安息香酸2−フェニルエチルエステル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸プロピル、サリチル酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ベンジルエチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、フェネトール、フェニルアセトン、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、フェニルアセトアルデヒド、エチルフェニルアセテート、フェニルメチルケトン、フェニルアセテート、ベンジルアセテート(酢酸ベンジル)、ベンジルアセトアセテート、ベンジルフォーメート、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、エチルベンジルアルコール、サリチルアルデヒド、サリチル酸ベンジル、フェニルトリルケトン、フェニルベンゾエート、フェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ベンジルベンゾエート、安息香酸及び2−フェニルエチルエステルを包含する。
【0024】
有機過酸化物と混合される溶媒の量は、例えば、製品の最終形態及び使用される特定の溶媒を含む多くの因子によって変化する。一般的には、溶媒は有機過酸化物/溶媒混合物の重量基準で1から70wt%を構成している。或る態様においては、溶媒は合計組成物の約10から約50wt%を構成している。或る態様においては、溶媒は合計組成物の約20から約40wt%を構成している。或る態様においては、溶媒は有機過酸化物を溶解させるのに有効な量で存在する。
【0025】
有機過酸化物が溶解する溶媒に加えて、本発明に従った組成物は一つ以上の第二の溶媒を含んでいてもよい。好適な第二の溶媒としては、例えば、エタノール、アセトン、ジメチルイソソルビド、エチレンオキサイドとして2モルを超えないC1からC8アルコールのグリコールエーテルを包含する。好適なグリコールエーテルとしては、エチレンオキサイドとして2モルを超えないフェノールのグリコールエーテル、エチレンオキサイドとして2モルを超えないメタノールのグリコールエーテル、エチレンオキサイドとして2モルを超えないエタノールのグリコールエーテル及びエチレンオキサイドとして2モルを超えないプロパノールのグリコールエーテルを包含する。限定はしないが、そのような共−溶媒としてはフェノキシエタノール、エトキシジグリコール及びプロピレングリコールメチルエーテルを包含する。
【0026】
有機過酸化物/溶媒混合物と混合される第二の溶媒の量は、例えば、製品の最終形態及び使用される特定の溶媒及び/又は第二の溶媒を含む多くの因子によって変化する。一般的には、第二の溶媒は合計組成物の重量基準で1から40wt%を構成している。或る態様においては、第二の溶媒は合計組成物の約5から約30wt%を構成している。或る態様においては、第二の溶媒は合計組成物の約10から約20wt%を構成している。
【0027】
或る態様においては、組成物及び/又はゲル組成物の粘度を上昇させるために、フュームドシリカのような増粘剤及び/又はレオロジー変性剤を本発明の有機過酸化物溶液に添加してもよい。或る態様においては、増粘剤及び/又はレオロジー変性剤は合計組成物の約0.1から約10wt%を構成している。如何なる増粘剤及び/又はレオロジー変性剤も、それが有機過酸化物と反応しないものであれば使用することができる。
【0028】
本発明に従った有機過酸化物矯正組成物は製品形態に添加することができる。好適な製品形態としては、溶液、エマルジョン(ミクロエマルジョンを含む)、懸濁液、クリーム、ローション、ゲル、粉末、又は肌の処置に使用されるその他の典型的には固体又は液体組成物を包含する。そのような組成物は抗菌剤、冷却剤、溶媒構成成分及び、湿潤剤及び水和剤、浸透剤、防腐剤、乳化剤、天然又は合成オイル、界面活性剤、遅延剤、ゲル化剤、緩和剤、抗酸化剤、芳香剤、フィラー、増粘剤、ワックス、臭気吸収剤、染料、着色剤、粉末、粘度調節剤及び水のようなそのような製品に典型的に使用されるその他の成分、及び所望によりかゆみ止め活性剤、植物抽出物、コンディショニング剤、暗化又は明化剤、光沢剤、湿潤剤、マイカ、ミネラル、ポリフェノール、シリコーン又はそれらの誘導体、日焼け止め剤、ビタミン、及び漢方薬を含んでいてもよい。或る態様においては、製品形態は調合品の安定性を促進するための抗酸化剤を含んでいる。最終製品を充填する容器及び方法は熟練した当業者の知識の範囲内である。或る態様においては、本発明に従った組成物は水中油エマルジョン製品形態の形成に有用である。従来のエマルジョン形成では典型的には、水相成分と分散剤とを均一溶液又は分散液が得られるまで(所望により数段階で)加熱混合し、有機相成分を均一溶液又は分散液が得られるまで(また所望により数段階で)加熱混合し、それから攪拌(例えば、機械攪拌又は他のせん断又は加熱技術)しながら水相を有機相に添加して二相の水中油エマルジョンを形成させる。しかしながら、加熱工程は、加熱によりベンゾイルパーオキシドのような有機過酸化物が分解する問題点がある。本発明の組成物は、強度の加熱工程を必要としないで低温ブレンド及びせん断技術の使用が可能である。即ち、そのようなブレンド化は室温で起こる。
【0029】
エマルジョン態様においては、分散媒体を構成する水相は、有機過酸化物と組み合わせるのに好適な如何なる界面活性剤、湿潤剤、懸濁剤、及び/又は緩衝系、及びそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0030】
限定はしないが、好適な界面活性剤の例としては、リン脂質、コール酸塩のような天然化合物、又はポリエトキシ化したソルビトールの脂肪酸エステルであるポリソルベート(Tween);カスターオイルのような原料からの脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(Emulfor);ポリエトキシ化した脂肪酸、例えばステアリン酸(Simulsol M−53);ノニデット;ポリエトキシ化したイソオクチルフェノール/フォルムアルデヒドポリマー(Tyloxapol);ポロキサマー(poloxamer)、例えば、ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー(Pluronic);ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル(Brill);ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(Triton N);ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル(Triton X);及びSDSのような非天然化合物を包含する。
【0031】
限定はしないが、異なった化学種の界面活性剤混合物を含む好適な界面活性剤分子混合物も許容可能である。界面活性剤は化粧品又は薬品投与に適したものでなければならずそして投与される有機過酸化物と相溶性のあるものでなければならない。
【0032】
限定はしないが、その他の界面活性剤の例としては、大豆又は鶏卵レシチンを含むフォスファチジルコリン(レシチン)のようなリン脂質を包含する。その他の好適なリン脂質としてはフォスファチジルグリセロール、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジン酸、カルジオリピン、及びフォスファチジルエタノールアミンを包含する。リン脂質は天然原料から単離するか又は合成によって製造される。
【0033】
限定はしないが、好適な懸濁剤の例としては、セピーゲル305(ポリアクリルアミド、C13−14イソパラフィン及びラウレス7)、セピーゲル501(C13−14イソパラフィン、ミネラルオイル、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド及びポリソルベート85)、シムルゲル(Simulgel)600(アクリルアミド/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマー、イソヘキサデカン及びポリソルベート80)、及びそれらの組み合わせを包含する。しかしながら、有機過酸化物と組み合わせるのに好適な、化粧品又は薬品として許容できる如何なる懸濁剤も使用できる。
【0034】
限定はしないが、好適な湿潤剤の例としてはグリセリンがあるが、有機過酸化物で安定なものである限り、湿分を与えることができる物質であればなんでも添加できる。
【0035】
本発明の溶液で調合された製品は、限定はしないが、ボトル、チューブ、ポンプタイプ、直接塗布型容器、塗り道具、ワイプ、及びその類似物を含む、熟練した当業者に公知の如何なるタイプの容器にパッケージすることもできる。
【0036】
本発明に従った有機過酸化物組成物は、望ましくない肌の症状(状態)を軽減又は取り除くために改善が必要な際に肌に局部的に塗布することができる。ここで使用するときには、用語“処置する”、“処置”、“治療”とは、ニキビのような望ましくない肌の症状の発生を防止し、又は存在する望ましくない肌の症状を治療的に改善することを意味する。ニキビのような肌の症状を軽減及び/又は取り除く処置法又は治療法は現在多くの異なった方法が可能である。
【0037】
ここで使用するときには、用語“肌の状態又は症状”とは、一つ以上の病原体又は微生物菌によって引き起こされる検知可能な肌の症状発現を意味する。そのような症状発現は、例えば、老化、環境からのダメージ、及び/又はその他の疾患又は機能障害状態のような多くの要因によって複合化することがある。限定はしないが、そのような症状発現の例としては、肌の線しわ、ひび、でこぼこ、ニキビ、クレーター、剥げ落ち、剥がれ、及び/又は肌のむら、粗さ、又はまだら模様等その他の形態の発達を包含する。リスト化した肌の症状は限定的なものではなく、そして本発明に従った処置に適した肌の症状の一部のみをここではリスト化したにすぎない。
【0038】
或る態様においては、本発明に従って使用するための組成物は、望ましくない肌の症状を改善するのに有効な量で有機過酸化物を含む。ここで使用するときには、“有効な量”とは、肌の症状を有する肌に特にプラスの効果をもたらすのに充分な、本発明に従った有機過酸化物を含有する混合物又は組成物の量を意味する。プラスの効果は健康に関連するか、又は本来的により美容上であるか、又はその二つの組み合わせであってもよい。或る態様においては、プラスの効果は、ニキビのような肌の症状を改善するために、溶媒化した有機過酸化物、及び/又は一つ以上の抗生物質と組み合わせて肌に接触させることによって達成される。
【0039】
組成物中の特定有機過酸化物の濃度は一般的には、適用されるべき組成物の目的に依る。例えば、投与及び塗布の頻度は肌の症状の種類やひどさに依る。
【0040】
本発明に従った処置又は治療としては、ニキビ関連の肌の症状を改善するのに有効な量で肌に有機過酸化物を接触させる。或る態様においては、患者はニキビ関連の肌の症状で苦しむ肌に、一つ以上の有機過酸化物組成物を局部的に塗布することによって治療される。活性成分は、治療目的が達成されるまで塗布される。しかしながら、治療期間は症状のひどさの程度に依って変化する。例えば、治療は、治療目的がニキビ関連の肌の症状を軽減化するのか又は完全に取り除くのかによって数週間から数ヶ月に亘って続くことになる。
【0041】
ここで使用するときには、用語“安定な”又は“安定性”とは、物質又は組成物が熱、湿分又は空気の存在下で変化しないで残存する能力を意味する。有効期間の用語に関しては、閉容器内で許容範囲内及び米国薬局方及び/又は米国FDAガイドライン又は有機過酸化物を含む組成物のためのモノグラフ(学術論文)で公表された限界内で残存する組成物を意味する。完全な米国薬局方及び米国FDAガイドライン又は有機過酸化物又は少なくとも一つの有機過酸化物を含む活性成分の組み合わせを含む組成物のためのモノグラフ(学術論文)のコレクションはあまりに膨大すぎてここではその全体を示すことができないので、その代わりにその全体はこれを参照することによって取り込まれたものとする。局部的組成物に関しては、許容度と限界はしばしばそのラベル化した量に比較して示される。ベンゾイルパーオキシドのクリームに関しては、例えば、許容量はC1410
のラベル化した量の90.0%以下ではなくそして125.0%を超えないものである。熟練した当業者であれば、有機過酸化物を含む他の組成物のための許容度及び限界を容易に同定することは可能であろう。
【0042】
以下の限定無しの実施例は、さらに本発明の開示に従った組成物、方法、及び治療について説明する。本発明の開示は実施例で実証された特定の詳細に限定されるものではないことは理解すべきである。
【実施例1】
【0043】
ベンゾイルパーオキシド(“BPO”)の溶液を以下の方法で調合し最終製品中で8%のベンゾイルパーオキシドとした。
【0044】
【表1】

ベンゾイルパーオキシドをベンジルベンゾエート中に溶解させた。得られた溶液/分散液をそれから下記の物質に添加した。
【0045】
【表2】

上記の調合により薬品的性質を有する透明な溶液が得られた。
【0046】
ベンゾイルパーオキシドの熱分解により二酸化炭素ガスとフリーラジカルが発生した。放出された二酸化炭素ガスの量は、お互いに比較すべきいずれか二つの組成物の安定性を比較測定するために使用することができる。
【0047】
実施例1の処方は、二つの抗酸化剤無しの同じ処方と比較するために40℃と30℃の高められた温度で安定性試験にかけられた。サンプルを識別ドロッパー付きガラスボトルに入れた。サンプルを最初に入れるときは、ボトルにはバルブでシールをしているので、ドロッパーは液体が完全に空の状態である。もしあれば、ベンゾイルパーオキシドの分解により発生した二酸化炭素ガスはボトルの圧力を上昇させる。圧力が上昇すると、ガラスドロッパーは液体で満たされ、結果的にドロッパーを満たしそして最終的にはドロッパーバルブへと液体を押し出す。極端な場合には、バルブは膨張しそしてそれから大きな圧力がかかると最終的には破裂する。ドロッパーへ押し込まれる液体が少ないことは分解のレベルが非常に少ないことの指標と見做される。
【0048】
40℃で1ヶ月のテスト期間中、抗酸化剤入りのサンプルは対照サンプル(そこでは液体がバルブに押し込まれそして究極的はそれを破壊した)よりもガスの発生が非常に少なかった。テスト製品のドロッパーは丁度液で満たされただけでボトルの液面を保っていた。
【0049】
ベンゾイルパーオキシド単独及び抗酸化剤との組み合わせの有る、無しでの処方を比較するために、この手法を使用して多くの実験を実施した。このテストは、溶媒系の安定性、ベンゾイルパーオキシドのレベル、効率に対する抗酸化剤の種類、貯蔵温度、及びサンプル中の抗酸化剤のレベルに対する差異を認めることができるほど敏感であった。従来からの分析テストでは、残存しているベンゾイルパーオキシドの実際の濃度を確認した。
【実施例2】
【0050】
実施例1に記載した手順を使用してトナーテスト処方をテストした。テストした処方は下記のとおりである。
【0051】
【表3】

この処方は、対照処方(二つの抗酸化剤無しの上記と同じ処方)と比較して、40℃と30℃の高められた温度で安定性試験にかけられた。サンプルを識別ドロッパー付きガラスボトルに入れそして発生したガス量をチェックした。40℃で1ヶ月後、対照サンプル(二つの抗酸化剤無しの上記と同じ処方)はゴムバルブに満たされそして圧力はバルブの膨張によって明らかとなった。テスト処方では、ドロッパーは空で液体はバルブまで移動していなかった。30℃サンプルの場合、対照はドロッパーを完全に満たしそしてバルブ内に存在した。上記のテスト処方のドロッパーは30℃では流体は完全に空だった。実施例2の結果は、実施例2はトナー処方でベンジルパーオキシドのレベルが低いため、実施例1(バルブが破壊した)よりも劇的ではなかった。
【実施例3】
【0052】
本発明の開示に従った別の調合は下記のとおりである。
【0053】
【表4】

【実施例4】
【0054】
本発明の開示に従ったエマルジョン調合は下記の二つのA相及びB相を組み合わせて調製された。
【0055】
【表5】

A相は、ベンジルベンゾエート、BHT及びビタミンE酢酸塩と一緒にベンゾイルパーオキシドを容器に添加し30分間攪拌することによって作られた。それからジメチルイソソルビドをさらに10分間混合しながら添加した。
【0056】
【表6】

B相成分を一緒に添加しそして混合した。A相をB相に、均一なエマルジョン(水中油)が生成するまで高せん断で混合しながら添加した。所望の性質をもったその他の物質を、もしそれが有機過酸化物に対して安定であれば、添加してもよい。
【0057】
ここで開示した態様に対して種々の修正がなされてもよいことは理解できるであろう。
それ故に、上記の記載は限定することを意図したものではなく、単に態様の例証に過ぎない。熟練した当業者であれば、添付した特許請求の範囲の及びその精神の範囲内でその他の修正を行うことは予見可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の安定性付与組成物は、主要な活性成分がベンゾイルパーオキシドであるニキビの治療用溶媒媒体調合法として有用である。またベンゾイルパーオキシドは、セラム、トナー、ポンプ又はエアロゾルスプレー、透明ゲル、スティック、クリーム、ローション及びムースのような透明製品で与えられ、エマルジョンのようなその他の薬品又は化粧品にも取り込むこともでき、有効期間も長くできるので、薬品又は化粧品分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機過酸化物及び抗酸化剤からなる組成物。
【請求項2】
有機過酸化物を溶解できる溶媒をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
有機過酸化物が抗酸化剤を溶解できる液体である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
有機過酸化物がその中に抗酸化剤を分散できる固体である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
有機過酸化物がベンゾイルパーオキシドである請求項1記載の組成物。
【請求項6】
抗酸化剤がブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンE酢酸塩、アスコルビルパルミテート、テトラヒドロクルクミノイド、t−ブチルヒドロキノン、メタ及びパラクレゾール及びフェノール体からなる群から選択されたものである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
水相をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項8】
水相が、界面活性剤、湿潤剤、懸濁剤、緩衝系、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つの成分をさらに含む請求項7記載の組成物。
【請求項9】
有機過酸化物:抗酸化剤の比が組成物の重量基準で約10:1である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
有機過酸化物:抗酸化剤の比が組成物の重量基準で約2.5:1である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
2%以下の抗酸化剤及び約10%を超えない有機過酸化物からなる溶液であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項12】
約5から10%の抗酸化剤及び約20%を超えない有機過酸化物からなる溶液であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項13】
有機過酸化物:抗酸化剤の比が組成物の重量基準で約10:1の溶液であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項14】
有機過酸化物:抗酸化剤の比が組成物の重量基準で約2.5:1の溶液であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項15】
増粘剤をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項16】
抗酸化剤を有機過酸化物と組み合わせて安定性過酸化物組成物を与えることからなる有機過酸化物の安定性を増大させる方法。
【請求項17】
有機過酸化物を含む組成物が溶媒中の有機過酸化物溶液である請求項16記載の方法。
【請求項18】
有機過酸化物がベンゾイルパーオキシドである請求項16記載の方法。
【請求項19】
肌への局部的塗布に適した安定性過酸化物組成物を含む製品を調合する工程をさらに含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
抗酸化剤をベンゾイルパーオキシド及び少なくとも一つの溶媒と組み合わせて安定性過酸化物溶液をつくり、そして安定性過酸化物溶液を含む肌への局部的塗布に適した製品を調合することからなる方法。
【請求項21】
さらに過酸化物溶液に水相を添加してエマルジョンを形成することからなる請求項20記載の方法。
【請求項22】
水相が、界面活性剤、湿潤剤、懸濁剤、緩衝系、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つの成分を含む請求項21記載の方法。
【請求項23】
湿潤剤がグリセリンである請求項22記載の方法。
【請求項24】
ニキビに被患した肌に請求項20記載の方法に従って調製された製品を塗布することからなるニキビの治療方法。
【請求項25】
有機過酸化物を含む第一の組成物の安定性と有機過酸化物を含む第二の組成物の安定性とを比較する方法において、第一及び第二の組成物のそれぞれから発生する二酸化炭素を監視して二酸化炭素の発生の少ない方を高い安定性の指標とすることからなる安定性の比較方法。

【公表番号】特表2008−533038(P2008−533038A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500983(P2008−500983)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/008689
【国際公開番号】WO2006/099192
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507301925)ジェイアール ケム エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】