説明

容量可変型気体圧縮機

【課題】容量可変型気体圧縮機において、圧縮機本体に対する容量制御弁用の濾過部材の組付け構造を簡素化して、当該濾過部材の組付けを容易にする。
【解決手段】冷媒ガスGに含有した冷凍機油Rを分離させる金網61(フィルタ)を有する油分離器60が、圧縮機本体に組み付けられ、圧縮機本体に、圧縮行程に対応した圧縮室と吸入室24(低圧空間)とを連通させるバイパス通路85およびバイパス通路85を開閉する容量制御弁80が設けられるとともに、油分離器60の下方に溜まった冷凍機油Rを容量制御弁80に供給する供給通路83(63,29,48)が形成された容量可変型コンプレッサ100において、油分離器60は、供給通路83に流入する冷凍機油Rを濾過する濾過部材64を備えるとともに、濾過部材64を供給通路83の入口部分に支持する濾過部材支持部62aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量可変型気体圧縮機に関し、詳細には、容量制御弁に供給される油分を濾過する濾過部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和システム(以下、空調システムという。)には、冷媒ガスなどの気体を圧縮して、空調システムに気体を循環させるための気体圧縮機(コンプレッサ)が用いられている。
【0003】
ここで、一般的なコンプレッサの一つとして例えばベーンロータリ形式のコンプレッサが知られている。このベーンロータリ形式のコンプレッサは、ハウジングの内部に、圧縮機本体が収容された構成となっている。
【0004】
圧縮機本体は、回転軸と一体的に回転する略円柱形状のロータと、ロータの外周面の外方を取り囲むシリンダと、ロータに埋設されて、突出側の先端が、断面輪郭形状が略楕円形状のシリンダの内周面に追従するように該ロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンと、ロータおよびベーンを、ロータの両端面側から覆う2つのサイドブロックとを備えている。
【0005】
そして、ロータの回転方向について相前後する2つのベーン、シリンダ、ロータおよび両サイドブロックにより画成された圧縮室が、回転軸回りに複数配置され、これら各圧縮室は、回転軸と一体的に回転するロータの当該回転に伴ってその容積が変化し、容積が増大する期間中に、圧縮室内部に気体を吸入し、容積が減少する期間中に、吸入した気体を圧縮し、圧縮機本体の外部に吐出するように構成されている。
【0006】
ここで、ベーンをシリンダの内周面に追従させるのは、ベーンの埋設側端部に、ベーンを突出方向(シリンダの内周面に向かう方向)に付勢させる油圧の作用によって実現されているが、この油圧は、圧縮室から吐出された気体の高圧が作用した冷凍機油等の油分によるものであり、この冷凍機油は、圧縮機本体に形成された導油路、およびサイドブロックの軸受けと回転軸との隙間を通って、サイドブロックの、ロータの端面に向いた面に形成されたサライ溝に供給され、サライ溝から、ロータに形成されたベーン溝に供給されて、ベーンの埋設側端部にベーン背圧として供給されている。
【0007】
また、この気体圧縮機には、圧縮機本体で圧縮された気体を外部に吐出するに際して、その吐出量を変化させることができる容量可変型のものもある。
【0008】
例えば、上述したベーンロータリ形式の圧縮機本体を備えた容量可変型のコンプレッサは、冷媒ガスの圧縮行程に対応した圧縮室を画成する構成要素のうちサイドブロックの部分に、この圧縮行程に対応した圧縮室とこの圧縮室内の圧力よりも相対的に低圧の空間(例えば、気体が導入される吸入室)とを連通させるバイパス通路が形成されるとともに、このバイパス通路上に、圧縮室と低圧の空間との連通を許容する開位置と連通を阻止する閉位置との間で動作する容量制御弁を備え、この容量制御弁の動作状態に応じて、圧縮行程の開始時期を調整することで、圧縮された気体の吐出量を変化させている。
【0009】
また、容量制御弁の動作は、圧縮機本体の外部、例えば高圧の吐出室等圧縮機本体の外部から所定の供給通路を通って供給された油分(冷凍機油等)によって制御されており、例えば吐出室の圧力が高くなると、容量制御弁を開位置に動作させて、バイパス通路の連通を許容し、圧縮室での圧縮容量を低下させることで吐出量を低下させ、これにより吐出室の圧力の上昇を抑制し、一方、吐出室の圧力が低くなると、容量制御弁を閉位置に戻して、バイパス通路を不連通として圧縮室の容量低下を阻止して、吐出室の圧力上昇を促している(特許文献1)。
【0010】
ここで、容量制御弁を動作させる油分は、気体圧縮機内部を潤滑・冷却・清浄等する潤滑油等の働きもあるため、微小な摩耗粉や塵埃など異物が混入することがあり、そのような異物が混入した油分は容量制御弁の動作を不安定にする虞がある。
【0011】
そこで、容量制御弁に至る供給通路の入り口部分に、油分を濾過する濾過部材を設置して、この濾過部材により異物を除去することが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】実開昭57−123991号公報(実願昭56−10017号)
【特許文献2】特開2006−214326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上述の濾過部材は、特許文献2にも開示されているように、他の部材とは独立して圧縮機本体にねじ込んだり圧入するなどして組み付ける構造となっている。このため、濾過部材を組み付けるための工程が追加され、コストの上昇を招いている。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、圧縮機本体に対する容量制御弁用の濾過部材の組付け構造を簡素化して、当該濾過部材の組付けを容易にすることのできる容量可変型気体圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る容量可変型気体圧縮機は、濾過部材を支持する部分を、圧縮機本体に組み付けられる油分離器に形成したことで、油分離器を圧縮機本体に組み付ける従前からの工程の範囲内で、濾過部材を供給通路の入口部分に配置することができ、濾過部材だけを独立して圧縮機本体に組み付ける構造を省いたものである。
【0015】
すなわち、本発明に係る容量可変型気体圧縮機は、気体を圧縮する圧縮室が形成された圧縮機本体と、該圧縮機本体の外方を囲むハウジングとを備え、前記圧縮室から前記圧縮機本体の外部に吐出された圧縮気体を衝突させて該圧縮気体に含有した油分を分離させるフィルタを有する油分離器が、前記圧縮機本体に組み付けられ、前記圧縮機本体に、圧縮行程に対応した圧縮室と所定の低圧空間とを連通させるバイパス通路および該バイパス通路を開閉する容量制御弁が設けられるとともに、前記油分離器の下方に溜まった前記油分を前記容量制御弁に供給する供給通路が形成された容量可変型気体圧縮機において、前記油分離器は、前記供給通路に流入する油分を濾過する濾過部材を備えるとともに、該濾過部材を前記供給通路の入口部分に支持する濾過部材支持部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
ここで、油分離器のフィルタとしては、例えば、金属をメッシュ構造に形成した金網状のものを適用することができる。
【0017】
一方、容量制御弁用の濾過部材としては、油分離器のフィルタと同一部材からなるものであってもよいし、フィルタよりも目の粗さが細かいものであってもよい。さらに、材質については、樹脂や繊維などであってもよい。
【0018】
このように構成された本発明に係る容量可変型気体圧縮機によれば、濾過部材が、圧縮機本体に組み付けられる油分離器に備えられているため、圧縮機本体に対する容量制御弁用の濾過部材の組付け構造が簡素化され、油分離器を圧縮機本体に組み付けることで、同時に濾過部材を圧縮機本体に組み付けることができ、油分離器を圧縮機本体に組み付ける従前の工程の範囲内で濾過部材の組付けを完了することができる。
【0019】
したがって、濾過部材の組付けを容易にする(省略する)ことができる。
【0020】
なお、油分離器のフィルタと同一部材からなる濾過部材を適用したものでは、その濾過部材は、フィルタと一体的に形成されていることが好ましい。油分離器にフィルタを組み付ける従前の工程の範囲内で、濾過部材も同時に組み付けることができるため、油分離器の製造工程においても、工程数が増加するのを防止することができるからである。また、フィルタとは別個の部材として濾過部材を調達するよりも、調達コストを抑えることもできるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る容量可変型気体圧縮機によれば、圧縮機本体に対する容量制御弁用の濾過部材の組付け構造が簡素化されて、圧縮機本体に対する濾過部材の組付けを容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の容量可変型気体圧縮機に係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明に係る容量可変型気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサ100を示す概略縦断面図、図2は図1の矢視Aによる図である。
【0024】
図示のコンプレッサ100は、例えば、冷却媒体の気化熱を利用して冷却を行なう空調システムの一部として構成され、この空調システムの他の構成要素である凝縮器、膨張弁、蒸発器等(いずれも図示を省略する。)とともに、冷却媒体の循環経路上に設けられている。
【0025】
そして、コンプレッサ100は、空調システムの蒸発器から取り入れられた気体状の冷却媒体、すなわち冷媒ガスGを圧縮し、この圧縮された冷媒ガスGを空調システムの凝縮器に吐出する。凝縮器は、圧縮された冷媒ガスG(気体)を冷却して液化させ、液状の冷媒(液)として膨張弁に送出する。
【0026】
液状の冷媒は、膨張弁で膨張することで低圧化され、蒸発器に送出される。低圧の液状冷媒は、蒸発器において周囲の空気から吸熱して気化し、蒸発器周囲の空気から気化熱を奪うことで、蒸発器周囲の空気を冷やし、この冷やされた空気を送風機で送風することにより、冷却空気を送出する。
【0027】
また、コンプレッサ100は、外装であるハウジングと、このハウジングの内部に収容された圧縮機本体と、ハウジングに取り付けられ、駆動源からの駆動力を圧縮機本体に伝える、図示を略した伝達機構とを備えている。
【0028】
ハウジングは、一端開放の筒状体からなるケース11と、このケース11の開放部を覆うようにケース11と締結されるフロントヘッド12とを有し、これらによって、圧縮機本体が収容される内部空間が形成されている。
【0029】
また、フロントヘッド12には、蒸発器から低圧の冷媒ガスGが吸入される吸入ポート12aが形成され、ケース11には、圧縮機本体で圧縮された高圧の冷媒ガスGを凝縮器に吐出する吐出ポート11aが形成されており、伝達機構は、ラジアルボールベアリングを介して、このフロントヘッド12に回転自在に支持される。
【0030】
ハウジング内に収容された圧縮機本体は、伝達機構によって軸回りに回転駆動される回転軸51と、回転軸51と一体的に回転するロータ50と、ロータ50の外周面の外方を取り囲む断面輪郭略楕円形状の内周面49aを有するとともに両端が開放されたシリンダ40と、ロータ50の外周面から突出自在にロータ50に埋設され、この突出した先端がシリンダ40の内周面49aに当接する、回転軸51回りに等角度間隔でロータ50に設けられた5枚の板状のベーン58と、シリンダ40の両開放端面の外側からそれぞれ、当該開放端面を覆うようにシリンダに固定されたリヤサイドブロック20およびフロントサイドブロック30とを備えている。
【0031】
そして、2つのサイドブロック20,30、ロータ50、シリンダ40、およびロータ50の回転方向に沿って相前後する2つのベーン58,58により1つの圧縮室が画成され、ロータ50の外周面に沿って全体で5つの圧縮室が備えられている。これらの各圧縮室は、回転軸51の回転にしたがって、その容積が増減を繰り返し、この容積変化によって、各圧縮室に吸入された冷媒ガスGを圧縮している。
【0032】
伝達機構から伝達された回転駆動力によって回転する回転軸51のうち、ロータ50の両端面側からそれぞれ突出した部分は、リヤサイドブロック20の軸受け22とフロントサイドブロック30の軸受け32とにそれぞれ軸支されている。
【0033】
そして、フロントサイドブロック30を貫通した回転軸51の部分は、フロントヘッド12にも軸支され、このフロントヘッド12をさらに貫通して外方まで延びて、上記伝達機構に連結されている。
【0034】
また、フロントヘッド12は、フロントサイドブロック30とシリンダ40とに、締結部材で締結され、これにより圧縮機本体は、フロントヘッド12による軸支および締結部材を用いた支持と、両サイドブロック20,30の外周部がOリング等によりケース11およびフロントヘッド12の内周面に当接されることによる支持とによって、ハウジング内の所定位置に保持されている。
【0035】
圧縮機本体がケース11の内部に収容された状態で、リヤサイドブロック20とケース11とによって、圧縮機本体の圧縮室から高温高圧の冷媒ガスGが吐出される吐出室21が画成され、この吐出室21には、外部の凝縮器に通じる吐出ポート11aが形成されている。
【0036】
一方、フロントサイドブロック30とフロントヘッド12とによって、圧縮室に吸入される低温低圧の冷媒ガスGが流れ込む吸入室24が画成され、この吸入室24には、外部の蒸発器に通じる吸入ポート12aが形成されている。なお、吸入室24と吐出室21とは、前述したOリングによって気密に隔絶されている。
【0037】
圧縮室から吐出室に吐出される冷媒ガスGには、冷凍機油Rが混入しているため、圧縮室から吐出室21に吐出された冷媒ガスGが通過する通路上に、冷媒ガスGから冷凍機油Rを分離する油分離器60が設けられ、この油分離器60は例えば六角穴付ボルト65によって、圧縮機本体のリヤサイドブロック20に組み付けられている。
【0038】
この油分離器60には、通過する冷媒ガスGを衝突させることで冷凍機油Rの凝集を促して、冷媒ガスGからこの冷媒ガスGに含有した冷凍機油Rを分離させる、略円筒周壁形状の金網(フィルタ)61が2つ備えられている。
【0039】
そして、一方の金網(図2において、向かって右側の金網)61の下方には、これら金網61,61を保持する枠部62が延長された濾過部材支持部62aが形成され、この濾過部材支持部62aには、後述する濾過部材64が、その上方に配設された金網61の軸の延長線上に軸を有する位置関係で保持されている。なお、この濾過部材支持部62aは、濾過部材を64を後述の供給通路83の入口部を覆う位置に支持するものであればよいため、上述した金網61との位置関係は一例に過ぎない。
【0040】
ここで、冷凍機油Rは、圧縮室の摺動部や軸受け22,32等の摩擦を低減する潤滑油としての機能と、ベーン58をロータ50から突出させる作動油としての機能とを有するものであり、油分離器60によって冷媒ガスGから分離された冷凍機油Rは、自重で下方に落下し、吐出室21の底部に溜められる。
【0041】
吐出室21の底部に溜められている冷凍機油Rは、サイドブロック20,30およびシリンダ40に形成された油路、および各軸受け22,32と回転軸51との間の微小な隙間(絞りとして機能)を通って、各サイドブロック20,30の、ロータ50の各端面に向いた面にそれぞれ形成されたサライ溝(油溜まり)25,35に供給され、サライ溝25,35の油圧は、ロータ50の両端面に露呈した、各ベーン58の埋設側端部に背圧を作用させるベーン溝背圧室に供給され、このベーン溝背圧室に供給された油圧(背圧)によって、各ベーン58の突出側先端をシリンダ40の内周面49aに当接し続ける(当接した状態に付勢する)ことができる。
【0042】
さらに、このコンプレッサ100は、外部への冷媒ガスGの吐出量を可変とする容量可変型のコンプレッサであるため、フロントサイドブロック30のうち冷媒ガスGの圧縮行程にある圧縮室を画成する部分に、この圧縮行程の圧縮室と、この圧縮室の内圧よりも相対的に低圧の空間(低圧空間)である吸入室24とを連通して、圧縮室内部の冷媒ガスGを吸入室24に流出させるバイパス通路85(86および87)が形成されているとともに、このバイパス通路85には、圧縮室と吸入室24との連通を許容する開位置と連通を阻止する閉位置との間を移動可能とされたバイパス弁82が設けられている。
【0043】
バイパス弁82が閉位置にある状態では、通常の気体圧縮機と同じ圧縮動作をなして、最大の吐出量を得ることができる。
【0044】
一方、容積が減少し始める圧縮行程にある圧縮室に対して、バイパス弁82が開位置にあるときは、圧縮されるべき圧縮室内部の冷媒ガスGは、開位置のバイパス弁82およびバイパス通路86、87を通って吸入室24に逃げる。そして、圧縮室を画成するベーン58がバイパス通路85の圧縮室における開口を通過してから、実質的な圧縮が開始されることとなり、圧縮室内部への冷媒ガスGの閉込め開始タイミングを遅延させることができ、吐出量を減少させることができる。
【0045】
ここで、フロントサイドブロック30には、バイパス弁82の開閉を制御するバイパスチェック弁81(バイパスチェック弁81およびバイパス弁82を容量制御弁80とする)が設けられ、リヤサイドブロック20とシリンダ40とには、このバイパスチェック弁81に、吐出室21の底部に溜められた冷凍機油Rを供給する供給通路29,48がそれぞれ形成されている。
【0046】
また、本実施形態のコンプレッサ100は、図1および図2に示すように、油分離器60の、濾過部材支持部62aが、リヤサイドブロック20の外面に密着するようにこの外面の凹凸に沿った面形状を有し、リヤサイドブロック20の外面における供給通路29の開口を塞ぐ(覆う)範囲まで延びて形成されている。
【0047】
濾過部材支持部62aには、供給通路29,48と一直線に連なる通路63が形成されており、この通路63も、冷凍機油Rをバイパスチェック弁81に供給する供給通路83の一部を構成している(以下、供給通路63という)。
【0048】
この供給通路63の入口部分は、濾過部材支持部62aによって支持され供給通路83(63,29,48)に流入する冷凍機油Rを濾過する濾過部材64によって覆われており、これによって、冷凍機油Rに混在する異物が、供給通路63,29,48に流入するのを阻止することができ、その異物の流入で生じ得るバイパスチェック弁81やバイパス弁82への異物の噛込みを防止している。
【0049】
濾過部材64は、金網61と同様に略円筒周壁形状に形成されている。なお、この濾過部材64は、金網61よりも目の粗さが細かいものであってもよいし、金網61と同程度の目の粗さであってもよい。
【0050】
また、濾過部材64は、金網61と同様の金属をメッシュ構造に形成されたものであってもよいし、樹脂や繊維などの材質で形成されたものであってもよい。
【0051】
濾過部材64を金網61と同じ材質で構成する場合、濾過部材64を金網61と一体的に単一の部材として形成してもよい。
【0052】
吐出室21の冷凍機油Rは、濾過部材64を通ることで異物が分離され、供給通路63,29,48を通ってバイパスチェック弁81に到達し、さらに、このバイパスチェック弁81を通ってバイパス弁82を閉状態に維持する背圧としてバイパス弁82に作用している。
【0053】
吐出室21の内圧が高くなるにしたがって、供給通路63,29,48を通ってバイパスチェック弁81に作用する油圧も高くなる。バイパスチェック弁81の弁体(詳細図示省略)は、作用する油圧に応じた量だけ変位するため、作用する油圧が徐々に高くなると、バイパスチェック弁81の弁体も徐々に変位し、この作用する油圧が所定の値に到達すると、バイパスチェック弁81の弁体が、冷凍機油Rがバイパス弁82に流入するのを遮断する位置まで変位し、これによって、バイパス弁82に作用する背圧が低下し、バイパス弁81は開位置に変位し、圧縮室と吸入室24とがバイパス通路86,87を介して連通される。
【0054】
これにより、圧縮行程中の圧縮室内からは、冷媒ガスGがバイパス通路86,87を通って吸入室24に流出し、圧縮室を画成する2つのベーン58,58のうち回転軸51の回転方向について後側のベーン58が、バイパス弁82の配設位置に対応した角度位置を通過してから実質的な圧縮行程が開始される。
【0055】
したがって、圧縮室から吐出される冷媒ガスGの量が減少し、これに伴い吐出室21内の圧力が低下する。この結果、バイパスチェック弁81に作用する冷凍機油Rの圧力も低下し、バイパスチェック弁81の弁体も元の位置まで戻り始め、冷凍機油Rがバイパス弁82に流入するのを阻止していた状態が解除され、これによって、バイパス弁82に作用する背圧が高められ、バイパス弁81は開位置に変位し、圧縮室と吸入室24とのバイパス通路86,87を介した連通が阻止される。
【0056】
この結果、圧縮室内の冷媒ガスGが吸入室24に流出しなくなり、圧縮室から吐出される冷媒ガスGの量は増加し、吐出室21内の圧力は上昇する。
【0057】
このように、容量制御弁80は、吐出する冷媒ガスGの量を調整するとともに、このコンプレッサ100から吐出される冷媒ガスGの吐出圧力を自動的に一定に範囲に保つ機能も発揮する。
【0058】
以上のように構成された本実施形態に係る容量可変型コンプレッサ100によれば、濾過部材64が、圧縮機本体に対して、六角穴付きボルト65によって組み付けられる油分離器60に備えられているため、圧縮機本体に対する容量制御弁80用の濾過部材64の組付け構造が簡素化され、油分離器60を圧縮機本体に組み付けることで、同時に濾過部材64を圧縮機本体に組み付けることができ、油分離器60を圧縮機本体に六角穴付きボルト65で組み付ける従前の工程の範囲内で、圧縮機本体に対する濾過部材64の組付けを完了することができる。
【0059】
したがって、濾過部材64の組付けを容易にする(省略する)ことができる。
【0060】
なお、濾過部材64と金網61とを一体的に形成したものでは、両者を、例えば軸方向に連続した単一の略円筒周壁形状に形成すればよい。このように、濾過部材64を金網61と一体的に単一の部材として形成したものでは、金網51とは別個の部材として濾過部材64を調達または製造するよりもコストを抑えることができ、また、油分離器60に金網61,61を組み付ける従前の工程の範囲内で、濾過部材64も同時に組み付けることとなるため、濾過部材64を金網61とは別の部材とした組み付ける場合に生じる工程数の増加を防止することができる。
【0061】
なお、図示の実施形態では、濾過部材64を、金網61と同様に略円筒周壁形状に形成したものであるが、本発明に係る容量可変型気体圧縮機は、この形態に限定されるものではなく、濾過部材64は、円筒周壁形状以外の形状に形成されていてもよい。
【0062】
濾過部材支持部62aも、供給通路83の入口部を覆う位置に濾過部材64を支持するものであれば、如何なる形態であってもよい。また、濾過部材支持部62aが、濾過部材64を供給通路29の入口部を覆う位置に支持可能であるときは、供給通路29の入口部を手前側に(濾過部材64に近付く側に)延長する供給通路63を、濾過部材支持部62a自体が有する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る気体圧縮機の一実施形態である、容量可変型のベーンロータリ式コンプレッサを示す概略縦断面図である。
【図2】図1における矢印Aに沿った方向から視認される図である。
【符号の説明】
【0064】
24 吸入室(所定の低圧空間)
29,48,63,83 供給通路
60 油分離器
61 金網(フィルタ)
62 枠部
62a 濾過部材支持部
64 濾過部材
80 容量制御弁
81 バイパスチェック弁(容量制御弁)
82 バイパス弁(容量制御弁)
85,86,87 バイパス通路
100 コンプレッサ(容量可変型気体圧縮機)
R 冷凍機油(冷凍機油)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮する圧縮室が形成された圧縮機本体と、該圧縮機本体の外方を囲むハウジングとを備え、
前記圧縮室から前記圧縮機本体の外部に吐出された圧縮気体を衝突させて該圧縮気体に含有した油分を分離させるフィルタを有する油分離器が、前記圧縮機本体に組み付けられ、
前記圧縮機本体に、圧縮行程に対応した圧縮室と所定の低圧空間とを連通させるバイパス通路および該バイパス通路を開閉する容量制御弁が設けられるとともに、前記油分離器の下方に溜まった前記油分を前記容量制御弁に供給する供給通路が形成された容量可変型気体圧縮機において、
前記油分離器は、前記供給通路に流入する油分を濾過する濾過部材を備えるとともに、該濾過部材を前記供給通路の入口部分に支持する濾過部材支持部が形成されていることを特徴とする容量可変型気体圧縮機。
【請求項2】
前記濾過部材は、前記フィルタと同一部材からなり、該フィルタと一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容量可変型気体圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−175063(P2008−175063A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6493(P2007−6493)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(504217742)カルソニックコンプレッサー株式会社 (101)
【Fターム(参考)】