説明

封止シート、発光ダイオード装置およびその製造方法

【課題】発光ダイオードに対する封止性を向上させながら、色度のばらつきを低減することのできる封止シート、発光ダイオード装置およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】発光ダイオード11が実装される基板14に貼着され、発光ダイオード11を封止するための封止シート1であって、発光ダイオード11を下面から埋設するダイオード埋設領域20が区画される封止材層2と、封止材層2の上面に積層される第1蛍光体層4と、封止材層2の下面に、ダイオード埋設領域20と間隔を隔てて配置されるように、積層される第2蛍光体層5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止シート、発光ダイオード装置およびその製造方法、詳しくは、光学用途に用いられる発光ダイオード装置、その製造方法、および、それらに用いられる封止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギーの光を発光できる発光装置として、白色発光装置が知られている。白色発光装置には、例えば、青色光を発光するLED(発光ダイオード)と、青色光を黄色光に変換でき、LEDを被覆する蛍光体層と、蛍光体層に隣接配置され、LEDを封止する封止層とが設けられている。そのような白色発光装置は、封止層によって封止されたLEDから発光され、封止層および蛍光体層を透過した青色光と、蛍光体層において青色光の一部が波長変換された黄色光との混色によって、高エネルギーの白色光を発光する。
【0003】
そのような白色発光装置として、例えば、シリコーン樹脂からなる第2樹脂層と、その上に、シリコーンエラストマーおよび黄色蛍光体を含有する第1樹脂層とを備える半導体封止用シートを、青色LEDチップが搭載されるアレイ基板上に、第2樹脂層が青色LEDチップに接するように配置したアレイパッケージが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1のアレイパッケージでは、第2樹脂層によって、青色LEDチップを封止する一方、発光ダイオードから発光される光のうち、第1樹脂層を透過した青色光と、第1樹脂層によって波長変換された黄色光とを混色して、白色光を発光している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−123802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のアレイパッケージでは、青色LEDチップから発光される光は、放射状に広がることから、発光された光のアレイ基板に対する角度によっては、第1樹脂層を通過する光の他、第2樹脂層を通過するが、第1樹脂層を通過しない光が存在する。そのような光が存在すると、アレイパッケージから発光された光における色度のばらつきが増大するという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、発光ダイオードに対する封止性を向上させながら、色度のばらつきを低減することのできる封止シート、発光ダイオード装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の封止シートは、発光ダイオードが実装される基板に貼着され、前記発光ダイオードを封止するための封止シートであって、前記発光ダイオードを一方側面から埋設する埋設領域が区画される封止材層と、前記封止材層の他方側面に積層される第1蛍光体層と、前記封止材層の一方側面に、前記埋設領域と間隔を隔てて配置されるように、積層される第2蛍光体層とを備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の封止シートでは、前記封止材層の25℃における引張弾性率が、0.01MPa以上であることが好適である。
【0010】
また、本発明の封止シートでは、前記第2蛍光体層の表面に積層される接着剤層をさらに備えることが好適である。
【0011】
また、本発明の発光ダイオード装置の製造方法は、上記した封止シートを、発光ダイオードが実装される基板に貼着して、前記発光ダイオードを封止することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の発光ダイオード装置の製造方法では、前記封止材層における厚み方向と直交する方向の端部が、加熱によって外側にはみ出して前記基板に貼着するように、前記封止シートを前記基板に貼着することが好適である。
【0013】
また、本発明の発光ダイオード装置は、基板と、前記基板の表面に実装される発光ダイオードと、前記基板の表面に貼着され、前記発光ダイオードを封止する上記した封止シートとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の封止シートは、第2蛍光体層が、埋設領域と間隔を隔てて配置されているので、第2蛍光体層が埋設領域に接触することが防止され、封止材層の埋設領域が発光ダイオードを確実に埋設することができる。そのため、この封止シートでは、封止材層の発光ダイオードに対する封止性を向上させることができる。
【0015】
しかも、本発明の封止シートは、第1蛍光体層が、封止材層の他方側面に積層されるとともに、第2蛍光体層が、封止材層の一方側面に積層される。そのため、この封止シートが貼着された発光ダイオード装置では、発光ダイオードから放射状に広がる光は、第2蛍光体層によっても波長変換されるので、蛍光体層を通過しない光を低減することができる。
【0016】
その結果、発光ダイオード装置から発光される光の色度のばらつきを低減することができる。
【0017】
また、本発明の封止シートを用いる本発明の発光ダイオード装置の製造方法は、発光ダイオードを、確実に封止することができ、それによって、本発明の発光ダイオード装置を、確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の封止シートの一実施形態を製造する方法を説明する工程図であり、(a)は、離型基材を用意する工程、(b)は、第2蛍光体層を形成する工程、(c)は、封止材層を形成する工程、(d)は、第1蛍光体層を積層する工程を示す。
【図2】図2は、図1(d)に示す封止シートを用いて、発光ダイオードを封止して、発光ダイオード装置を製造する方法を説明する工程図であり、(a)は、封止シートと発光ダイオードとを用意する工程、(b)は、封止シートを基板に貼着して、発光ダイオードを封止する工程を示す。
【図3】図3は、図2(b)の発光ダイオードを封止する工程において、封止材層の周端部が、加熱により外側にはみ出して基板に貼着する状態を説明する断面図を示す。
【図4】図4は、本発明の封止シートの他の実施形態(接着剤層が設けられる態様)を用いて、発光ダイオードを封止して、発光ダイオード装置を製造する方法を説明する工程図であり、(a)は、封止シートと発光ダイオードとを用意する工程、(b)は、封止シートを基板に接着剤層を介して接着して、発光ダイオードを封止する工程を示す。
【図5】図5は、比較例の封止シートを用いて、発光ダイオードを封止して、発光ダイオード装置を製造する方法を説明する工程図であり、(a)は、封止シートと発光ダイオードとを用意する工程、(b)は、封止シートを基板に貼着して、発光ダイオードを封止する工程を示す。
【図6】図6は、実施例の評価において、発光ダイオード装置のCIE色度指標(y値)の測定を説明する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の封止シートの一実施形態を製造する方法を説明する工程図、図2は、図1(d)に示す封止シートを用いて、発光ダイオードを封止して、発光ダイオード装置を製造する方法を説明する工程図、図3は、図2(b)の発光ダイオードを封止する工程において、封止材層の周端部が、加熱により外側にはみ出して基板に貼着する状態を説明する断面図を示す。
【0020】
この封止シート1は、図1(d)および図2(a)に示すように、封止材層2と、封止材層2の上面(厚み方向他方側面)および下面(厚み方向一方側面)に積層される蛍光体層3とを備えている。
【0021】
封止材層2は、略平板シート形状に形成されている。
【0022】
封止材層2を形成する封止材は、例えば、透明樹脂であって、具体的には、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂組成物、例えば、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂組成物などの封止樹脂組成物などが挙げられる。封止材としては、好ましくは、熱硬化性樹脂組成物、さらに好ましくは、耐久性の観点から、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0023】
シリコーン樹脂は、シリコーンエラストマーを含み、例えば、熱硬化型シリコーンレジンが挙げられ、そのような熱硬化型シリコーンレジンとしては、例えば、シリコーン樹脂組成物、ホウ素化合物含有シリコーン樹脂組成物、アルミニウム化合物含有シリコーン樹脂組成物などが挙げられる。
【0024】
シリコーン樹脂組成物は、縮合反応および付加反応(具体的には、ヒドロシリル化反応)することができる樹脂、より具体的には、加熱によって、縮合反応して、Bステージ状態(半硬化状態)となることができ、次いで、さらなる加熱によって、付加反応して、硬化(完全硬化)状態となることができる樹脂である。
【0025】
シリコーン樹脂組成物は、例えば、シラノール両末端ポリシロキサン、アルケニル基含有アルコキシシラン、エポキシ基含有アルコキシシラン、オルガノハイドロジェンシロキサン、縮合触媒および付加触媒を含有している。なお、シラノール両末端ポリシロキサン、アルケニル基含有アルコキシシランおよびエポキシ基含有アルコキシシランは、縮合原料(縮合反応に供される原料)であり、アルケニル基含有アルコキシシランおよびオルガノハイドロジェンシロキサンは、付加原料(付加反応に供される原料)である。
【0026】
シラノール両末端ポリシロキサンは、分子の両末端にシラノール基(SiOH基)を含有するシラン化合物であって、具体的には、下記式(1)で示される。
【0027】
【化1】

【0028】
(式(1)中、RおよびRは1価の炭化水素基であり、nは2以上の整数を示す。RおよびRは、互いに同一または相異なっている。)
上記式(1)において、RおよびRは、好ましくは、互いに同一である。
【0029】
およびRで示される1価の炭化水素基は、飽和または不飽和であり、直鎖状、分枝鎖状または環状の炭化水素基などが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製の容易性または熱安定性の観点から、例えば、1〜20、好ましくは、1〜10である。
【0030】
具体的には、1価の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシルなどの飽和脂肪族炭化水素基、例えば、フェニル、ナフチルなどの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0031】
1価の炭化水素基として、好ましくは、飽和脂肪族炭化水素基、さらに好ましくは、透明性および耐光性の観点から、メチルが挙げられる。
【0032】
上記式(1)中、nは、好ましくは、安定性および/または取り扱い性の観点から、2〜10000の整数、さらに好ましくは、2〜1000の整数である。
【0033】
シラノール両末端ポリシロキサンとして、具体的には、シラノール両末端ポリジメチルシロキサン、シラノール両末端ポリメチルフェニルシロキサン、シラノール両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、シラノール両末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0034】
シラノール両末端ポリシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0035】
シラノール両末端ポリシロキサンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0036】
なお、シラノール両末端ポリシロキサンは、通常、nが相異なる(つまり、分子量が異なる)化合物の混合物である。
【0037】
従って、上記式(1)におけるnは、平均値として算出される。
【0038】
シラノール両末端ポリシロキサンの数平均分子量は、安定性および/または取り扱い性の観点から、例えば、100〜1000,000、好ましくは200〜100,000である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンで換算されて算出される。後述するシラノール両末端ポリシロキサン以外の原料の数平均分子量についても、上記と同様にして算出される。
【0039】
シラノール両末端ポリシロキサンの配合割合は、縮合原料の総量に対して、例えば、1〜99.99質量%、好ましくは、50〜99.9質量%、さらに好ましくは、80〜99.5質量%である。
【0040】
アルケニル基含有アルコキシシランは、アルケニル基およびアルコキシ基を併有するシラン化合物であって、具体的には、下記式(2)で示されるアルケニル基含有トリアルコキシシランである。
【0041】
−Si(OR (2)
(式(2)中、Rは、直鎖または環状のアルケニル基、Rは、1価の炭化水素基である。RおよびRは、互いに異なっている。)
で示されるアルケニル基の炭素数は、調製の容易性または熱安定性の観点から、例えば、1〜20、好ましくは、1〜10である。
【0042】
具体的には、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などの直鎖状アルケニル基や、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基などの環状アルケニル基などが挙げられる。
【0043】
好ましくは、直鎖状アルケニル基、さらに好ましくは、付加反応の反応性の観点から、ビニル基が挙げられる。
【0044】
で示される1価の炭化水素基としては、上記式(1)のRおよびRで示される1価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、メチルが挙げられる。
【0045】
具体的には、アルケニル基含有アルコキシシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン、例えば、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、ペンテニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘプテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0046】
好ましくは、ビニルトリアルコキシシラン、さらに好ましくは、ビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0047】
アルケニル基含有アルコキシシランは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0048】
アルケニル基含有アルコキシシランは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0049】
アルケニル基含有トリアルコキシシランの配合割合は、縮合原料の総量に対して、例えば、0.01〜90質量%、好ましくは、0.01〜50質量%、さらに好ましくは、0.01〜10質量%である。
【0050】
エポキシ基含有アルコキシシランは、エポキシ基およびアルコキシ基を併有するシラン化合物であって、具体的には、下記式(3)で示されるエポキシ基含有トリアルコキシシランである。
【0051】
−Si(OR (3)
(式(3)中、Rは、グリシジルエーテル基、Rは、1価の炭化水素基である。)
で示されるグリシジルエーテル基は、下記式(4)で示されるグリシドキシアルキル基である。
【0052】
【化2】

【0053】
(式(4)中、Rは、2価の炭化水素基である。)
上記式(4)中、Rで示される2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどの、炭素数1〜6のアルキレン基、例えば、シクロヘキシレンなどの炭素数3〜8のシクロアルキレン基、例えば、フェニレンなどの炭素数6〜10のアリーレン基が挙げられる。
【0054】
2価の炭化水素基としては、好ましくは、アルキレン基、さらに好ましくは、プロピレンが挙げられる。
【0055】
具体的には、Rで示されるグリシジルエーテル基としては、グリシドキシメチル、グリシドキシエチル、グリシドキシプロピル、グリシドキシシクロヘキシル、グリシドキシフェニルなどが挙げられる。
【0056】
上記式(3)中、Rで示される1価の炭化水素基としては、上記式(1)のRおよびRで示される1価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、メチルが挙げられる。
【0057】
具体的には、エポキシ基含有アルコキシシランとしては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランなどのグリシドキシアルキルトリメトキシシラン、例えば、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリプロポキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリイソプロポキシシランなどが挙げられる。
【0058】
好ましくは、グリシドキシメチルトリアルコキシシラン、さらに好ましくは、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランが挙げられる。
【0059】
エポキシ基含有アルコキシシランは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0060】
エポキシ基含有アルコキシシランは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0061】
エポキシ基含有アルコキシシランの配合割合は、縮合原料の総量100質量部に対して、例えば、0.01〜90質量%、好ましくは、0.01〜50質量%、さらに好ましくは、0.01〜20質量%である。
【0062】
シラノール両末端ポリシロキサンのシラノール基(SiOH基)の、アルケニル基含有アルコキシシランおよびエポキシ基含有アルコキシシランのアルコキシシリル基(SiOR基およびSiOR基)に対するモル比(SiOH/(SiOR+SiOR)は、例えば、20/1〜0.2/1、好ましくは、10/1〜0.5/1、さらに好ましくは、実質的に1/1である。
【0063】
モル比が上記範囲を超える場合には、シリコーン樹脂組成物をBステージ状態とする際に、適度な靭性を有するBステージ状物(半硬化物)を得られない場合があり、一方、モル比が上記範囲に満たない場合には、アルケニル基含有アルコキシシランおよびエポキシ基含有アルコキシシランの配合割合が過度に多く、そのため、得られる封止材層2の耐熱性が低下する場合がある。
【0064】
また、モル比が上記範囲内(好ましくは、実質的に1/1)であれば、シラノール両末端ポリシロキサンのシラノール基(SiOH基)と、アルケニル基含有アルコキシシランのアルコキシシリル基(SiOR基)およびエポキシ基含有アルコキシシランのアルコキシシリル基(SiOR)とを過不足なく縮合反応させることができる。
【0065】
アルケニル基含有アルコキシシランのエポキシ基含有アルコキシシランに対するモル比は、例えば、10/90〜99/1、好ましくは、50/50〜97/3、さらに好ましくは、80/20〜95/5である。上記した範囲内であれば、硬化物の強度を確保しつつ、接着性を向上できる利点がある。
【0066】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、主鎖のケイ素原子に直接結合する水素原子を含有する化合物であり、例えば、下記式(5)に示され、主鎖の途中(両末端間)のケイ素原子に直接結合する水素原子を含有するヒドリド化合物、または、下記式(6)で示され、主鎖の両末端のケイ素原子に直接結合する水素原子を含有するヒドリド化合物(ヒドロシリル両末端ポリシロキサン)が挙げられる。
【0067】
【化3】

【0068】
(式(5)中、I、II、IIIおよびIVは、構成単位であり、IおよびIVが末端単位、IIおよびIIIが繰り返し単位を示し、Rは、互いに同一または相異なり、1価の炭化水素基である。aは、0または1以上の整数を示し、bは、2以上の整数を示す。)
【0069】
【化4】

【0070】
(式(6)中、Rは、互いに同一または相異なり、1価の炭化水素基である。cは、1以上の整数を示す。)
構成単位IにおけるR、構成単位IIにおけるR、構成単位IIIにおけるR、および、構成単位IVにおけるRは、好ましくは、互いに同一である。
【0071】
で示される1価の炭化水素基は、上記したRおよびRで示される1価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、メチル、エチルが挙げられ、さらに好ましくは、メチルが挙げられる。
【0072】
構成単位IおよびIVは、両末端の構成単位である。
【0073】
構成単位IIにおけるaは、構成単位IIの繰り返し単位数であり、好ましくは、反応性の観点から、1〜1000の整数、さらに好ましくは、1〜100の整数を示す。
【0074】
構成単位IIIにおけるbは、構成単位IIIの繰り返し単位数であり、好ましくは、反応性の観点から、2〜10000、さらに好ましくは、2〜1000の整数を示す。
【0075】
具体的には、上記式(5)で示されるヒドリド化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン−co−メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、ジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0076】
上記式(5)で示されるヒドリド化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0077】
なお、上記式(5)で示されるヒドリド化合物は、通常、aおよび/またはbが相異なる(つまり、分子量が異なる)化合物の混合物である。
【0078】
従って、構成単位Iにおけるaおよび構成単位IIにおけるbは、それぞれ、平均値として算出される。
【0079】
上記式(5)で示されるヒドリド化合物の数平均分子量は、例えば、100〜1,000,000である。
【0080】
上記式(6)におけるRは、好ましくは、互いに同一である。つまり、両末端のケイ素原子に結合するRと、両末端間のケイ素原子に結合するRとは、すべて同一である。
【0081】
で示される1価の炭化水素基は、上記したRおよびRで示される1価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、メチル、エチルが挙げられる。
【0082】
上記式(6)中、cは、反応性の観点から、好ましくは、1〜10,000の整数、さらに、好ましくは1〜1,000の整数を示す。
【0083】
具体的には、上記式(6)で示されるヒドリド化合物としては、例えば、ヒドロシリル両末端ポリジメチルシロキサン、ヒドロシリル両末端ポリメチルフェニルシロキサン、ヒドロシリル両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
【0084】
上記式(6)で示されるヒドリド化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
上記式(6)で示されるヒドリド化合物はとしては、通常、cが相異なる(つまり、分子量が異なる)化合物の混合物である。
【0086】
従って、上記した(6)におけるcは、平均値として算出される。
【0087】
式(6)で表されるヒドリド化合物の数平均分子量は、安定性および/または取り扱い性の観点から、例えば100〜1,000,000、さらに好ましくは、100〜100,000である。
【0088】
オルガノハイドロジェンシロキサンの25℃における粘度は、例えば、10〜100,000mPa・s、好ましくは、20〜50,000mPa・sである。粘度は、E型粘度計(ロータの種類:1”34’×R24、回転数10rpm)により測定される。
【0089】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0090】
オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、上記式(5)で示されるヒドリド化合物または上記式(6)で示されるヒドリド化合物を単独使用することができ、あるいは、それらを併用することもできる。オルガノハイドロジェンシロキサンとして、好ましくは、上記式(5)で示されるヒドリド化合物が単独使用される。
【0091】
オルガノハイドロジェンシロキサンの配合割合は、アルケニル基含有アルコキシシランのアルケニル基(上記式(2)のR)とオルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)とのモル比にもよるが、例えば、アルケニル基含有アルコキシシラン100質量部に対して、例えば、10〜10,000質量部、好ましくは、100〜1,000質量部である。
【0092】
また、アルケニル基含有アルコキシシランのアルケニル基(上記式(2)のR)の、オルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基に対する(SiH基)モル比(R/SiH)は、例えば、20/1〜0.05/1、好ましくは、20/1〜0.1/1、さらに好ましくは、10/1〜0.1/1、とりわけ好ましくは、10/1〜0.2/1、もっとも好ましくは、5/1〜0.2/1である。また、例えば、1/1未満、0.05/1以上に設定することもできる。
【0093】
モル比が20/1を超える場合には、シリコーン樹脂組成物をBステージ状態とする際に、適度な靭性を有する半硬化物を得られない場合があり、モル比が0.05/1に満たない場合には、オルガノハイドロジェンシロキサンの配合割合が過度に多く、そのため、得られる蛍光体層3の耐熱性および靭性が不十分となる場合がある。
【0094】
また、モル比が1/1未満、0.05/1以上であれば、シリコーン樹脂組成物をBステージ状態とする際に、モル比が20/1〜1/1であるシリコーン樹脂組成物に比べて、Bステージ状態へ迅速に移行させることができる。
【0095】
縮合触媒は、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合反応の反応速度を向上させる物質であれば特に限定されず、例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸などの酸、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基、例えば、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズなどの金属系触媒などが挙げられる。
【0096】
これらのうち、相溶性および熱分解性の観点から、好ましくは、塩基、さらに好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
【0097】
縮合触媒の配合割合は、シラノール両末端ポリシロキサン100モルに対して、例えば、0.1〜50モル、好ましくは、0.5〜5モルである。
【0098】
付加触媒は、付加反応、つまり、アルケニル基とSiHとのヒドロシリル化反応の反応速度を向上させる物質(ヒドロシリル化触媒)であれば、特に限定されず、例えば、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金一カルボニル錯体、白金−アセチルアセテートなどの白金触媒、例えば、パラジウム触媒、ロジウム触媒などの金属触媒が挙げられる。
【0099】
これらのうち、相溶性、透明性および触媒活性の観点から、好ましくは、白金触媒、さらに好ましくは、白金−カルボニル錯体が挙げられる。
【0100】
付加触媒の配合割合は、付加触媒の金属量の質量部数として、オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して、例えば、1.0×10−4〜1.0質量部、好ましくは、1.0×10−4〜0.5質量部、さらに好ましく、1.0×10−4〜0.05質量部である。
【0101】
なお、上記した触媒は、固体状態のものをそのまま用いてもよく、あるいは、取扱性の観点から、溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液として用いることもできる。
【0102】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール、例えば、シロキサンなどのケイ素化合物、例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテルなどの有機溶媒が挙げられる。また、溶媒として、例えば、水などの水系溶媒も挙げられる。
【0103】
溶媒として、触媒が縮合触媒の場合は、好ましくは、アルコールが挙げられ、触媒が付加触媒の場合は、好ましくは、ケイ素化合物および芳香族炭化水素が挙げられる。
【0104】
シリコーン樹脂組成物は、上記したシラノール両末端ポリシロキサン、アルケニル基含有アルコキシシラン、エポキシ基含有アルコキシシランおよびオルガノハイドロジェンシロキサン)を、触媒(縮合触媒および付加触媒)とともに、配合して、攪拌混合することにより調製される。
【0105】
シリコーン樹脂組成物を調製するには、例えば、上記した原料(縮合原料および付加原料)と、触媒とを一度に加える。あるいは、まず、各原料および各触媒を異なるタイミングでそれぞれ加えることができる。さらには、一部の成分を一度に加え、残部の各成分を、異なるタイミングでそれぞれ加えることもできる。
【0106】
好ましくは、まず、縮合原料および縮合触媒を一度に加え、次いで、付加原料を加え、その後、付加触媒を加える。
【0107】
具体的には、シラノール両末端ポリシロキサン、アルケニル基含有アルコキシシランおよびエポキシ基含有アルコキシシラン(つまり、縮合原料)と、縮合触媒とを、上記した割合で一度に配合して、それらを、例えば、5分間〜24時間攪拌する。
【0108】
また、配合および攪拌時には、縮合原料の相溶性および取扱性を向上させるために、例えば、0〜60℃に加熱することもできる。
【0109】
また、原料および縮合触媒の配合時に、それらの相溶性を向上させるための相溶化剤を適宜の割合で加えることもできる。
【0110】
相溶化剤としては、例えば、メタノールなどのアルコールなどの有機溶媒が挙げられる。なお、相溶化剤は、縮合触媒が有機溶媒の溶液または分散液として調製されている場合には、その有機溶媒を相溶化剤として供することもできる。
【0111】
その後、系を、必要により減圧にすることにより、揮発成分(有機溶媒)を除去する。
【0112】
次いで、得られる縮合原料および縮合触媒の混合物に、オルガノハイドロジェンシロキサンを配合して、例えば、1〜60分間で攪拌する。
【0113】
配合および攪拌時には、混合物およびオルガノハイドロジェンシロキサンの相溶性および取扱性を向上させるために、例えば、0〜60℃に加熱することもできる。
【0114】
その後、系に、付加触媒を配合して、例えば、1〜60分間で攪拌する。
【0115】
これにより、シリコーン樹脂組成物を調製することができる。
【0116】
ホウ素化合物含有シリコーン樹脂組成物は、例えば、シラノール両末端ポリシロキサンと、ホウ素化合物とを含有している。
【0117】
シラノール両末端ポリシロキサンは、上記式(1)で示されるシラノール両末端ポリシロキサンと同様のものが挙げられる。
【0118】
ホウ素化合物としては、具体的には、下記式(7)で示されるホウ酸化合物が挙げられる。
【0119】
【化5】

【0120】
(式(7)中、Y、YおよびYは、それぞれ独立して、水素またはアルキル基である。)
、YおよびYで示されるアルキル基の炭素数は、例えば、1〜12、好ましくは、1〜6、さらに好ましくは、1〜3である。
【0121】
、YおよびYで示されるアルキルとしては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどが挙げられる。好ましくは、エチル、イソプロピルが挙げられ、さらに好ましくは、イソプロピルが挙げられる。
【0122】
具体的には、ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸などの酸、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピルなどのホウ酸トリエステルなどが挙げられる。
【0123】
ホウ素化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0124】
シラノール両末端ポリシロキサンおよびホウ素化合物の配合割合は、シラノール両末端ポリシロキサンのホウ素化合物に対する質量比(シラノール両末端ポリシロキサンの質量部数/ホウ素化合物の質量部数)で、耐熱性、透明性、耐光性の観点から、例えば、95/5〜30/70、好ましくは、95/5〜50/50、さらに好ましくは、95/5〜60/40、とりわけ好ましくは、95/5〜70/30である。
【0125】
シラノール両末端ポリシロキサンのケイ素原子の、ホウ酸化合物のホウ素原子に対するモル比(Si/B)は、例えば、2/1〜1000/1、好ましくは、4/1〜500/1、さらに好ましく、6/1〜200/1である。
【0126】
上記した範囲に満たないと、Bステージ状態とされた封止材層2が過度に硬くなり、一方、上記した範囲を超えると、Bステージ状態とされた封止材層2が過度に柔らかくなり、加工性が低下する場合がある。
【0127】
ホウ素化合物含有シリコーン樹脂組成物は、シラノール両末端ポリシロキサンおよびホウ素化合物を上記した配合割合で配合して、それらを室温で攪拌混合することにより、調製する。
【0128】
なお、ホウ素化合物含有シリコーン樹脂組成物は、特開2009−127021号公報および特開2009−127020号公報の記載などに準拠して調製することもできる。
【0129】
アルミニウム化合物含有シリコーン樹脂組成物は、例えば、シラノール両末端ポリシロキサンと、アルミニウム化合物とを含有している。
【0130】
シラノール両末端ポリシロキサンは、上記式(1)で示されるシラノール両末端ポリシロキサンと同様のものが挙げられる。
【0131】
アルミニウム化合物としては、具体的には、下記式(8)で示される。
【0132】
【化6】

【0133】
(式(8)中、Y、YおよびYは、それぞれ独立して、水素またはアルキル基である。)
、YおよびYで示されるアルキル基の炭素数は、例えば、1〜12、好ましくは、1〜6、さらに好ましくは、1〜3である。
【0134】
、YおよびYで示されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。好ましくは、エチル基、イソプロピル基が挙げられ、さらに好ましくは、イソプロピルが挙げられる。
【0135】
アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドなどのアルミニウムトリアルコシドなどが挙げられる。
【0136】
アルミニウム化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0137】
好ましくは、アルミニウムトリイソプロポキシドが挙げられる。
【0138】
シラノール両末端ポリシロキサンおよびアルミニウム化合物の配合割合は、シラノール両末端ポリシロキサンのアルミニウム化合物に対する質量比(シラノール両末端ポリシロキサン/アルミニウム化合物)で、例えば、99/1〜30/70、好ましくは、90/10〜50/50である。
【0139】
また、シラノール両末端ポリシロキサンのケイ素原子の、アルミニウム化合物のアルミニウム原子に対するモル比(Si/Al)は、例えば、2/1〜1000/1、好ましくは、4/1〜500/1、さらに好ましく、6/1〜200/1である。
【0140】
上記した範囲に満たないと、Bステージ状態とされた封止材層2が過度に硬くなり、一方、上記した範囲を超えると、Bステージ状態とされた封止材層2が過度に柔らかくなり、加工性が低下する場合がある。
【0141】
アルミニウム化合物含有シリコーン樹脂組成物は、シラノール両末端ポリシロキサンおよびアルミニウム化合物を上記した配合割合で配合して、それらを室温で攪拌混合することにより、調製する。
【0142】
なお、アルミニウム化合物含有シリコーン樹脂組成物は、特開2009−127021号公報および特開2009−235376号公報の記載などに準拠して調製することもできる。
【0143】
なお、上記した封止材には、透過防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加物を適宜の割合で添加することができる。
【0144】
封止材層2は、熱硬化性樹脂組成物(好ましくは、シリコーン樹脂)から形成されている場合には、好ましくは、Bステージ(半硬化)状態の熱硬化性樹脂組成物から形成されている。
【0145】
また、封止材層2(Bステージ状態の封止材層2)の25℃における引張弾性率は、例えば、封止性および取扱性の観点から、0.01MPa以上、好ましくは、0.01〜0.1MPaである。
【0146】
封止材層2の25℃における引張弾性率が上記下限値に満たない場合には、封止材層2の保形性が低下する場合がある。さらに、封止材層2の25℃における引張弾性率が上記範囲内にあれば、発光ダイオード11を確実に埋設することができながら、ワイヤ12および発光ダイオード11(後述、図4参照)の損傷を防止することができる。
【0147】
封止材層2の引張弾性率は、万能引張試験機(具体的には、オートグラフなど)を用いる引張試験により求められる。
【0148】
また、封止材層2の引張弾性率は、引張方向に限定されず、例えば、厚み方向の引張弾性率と、面方向(厚み方向に直交する方向、つまり、図1および図2における左右方向および奥行き方向)の引張弾性率とが、実質的に同一である。
【0149】
封止材層2の厚みT1(最大厚み、つまり、離型基材9の上面と第1蛍光体層4の下面との間の長さ)は、後述する発光ダイオード11の封止時に、発光ダイオード11およびワイヤ12を埋設できるように調整されており、具体的には、例えば、300〜3000μm、好ましくは、500〜2000μmである。
【0150】
蛍光体層3は、蛍光体を含有しており、そのような蛍光体としては、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体などが挙げられる。そのような蛍光体としては、例えば、複合金属酸化物や金属硫化物などに、例えば、セリウム(Ce)やユウロピウム(Eu)などの金属原子がドープされた蛍光体が挙げられる。
【0151】
具体的には、蛍光体としては、例えば、YAl12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、(Y,Gd)Al12:Ce、TbAl12:Ce、CaScSi12:Ce、LuCaMg(Si,Ge)12:Ceなどのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体、例えば、(Sr,Ba)SiO:Eu、CaSiOCl:Eu、SrSiO:Eu、LiSrSiO:Eu、CaSi:Euなどのシリケート蛍光体、例えば、CaAl1219:Mn、SrAl:Euなどのアルミネート蛍光体、例えば、ZnS:Cu,Al、CaS:Eu、CaGa:Eu、SrGa:Euなどの硫化物蛍光体、例えば、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体、例えば、CaAlSiN:Eu、CaSi:Euなどの窒化物蛍光体、例えば、KSiF:Mn、KTiF:Mnなどのフッ化物系蛍光体などが挙げられる。好ましくは、青色光から黄色光への変換特性の観点から、ガーネット型蛍光体、さらに好ましくは、変換効率の観点から、YAl12:Ceが挙げられる。
【0152】
これら蛍光体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0153】
また、蛍光体は、粒子状であり、その形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略平板形状、略針形状などが挙げられる。
【0154】
また、蛍光体の平均粒子径(最大長さの平均)は、例えば、0.1〜500μm、好ましくは、0.2〜200μmである。蛍光体粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定される。
【0155】
また、蛍光体層3は、上記した蛍光体を樹脂に配合した蛍光体含有樹脂組成物から形成されている。
【0156】
そのような樹脂としては、上記した封止材に用いられる透明樹脂と同様の透明樹脂が挙げられ、好ましくは、熱硬化性樹脂組成物、さらに好ましくは、シリコーン樹脂組成物などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは、Bステージ(半硬化)状態の熱硬化性樹脂組成物であってもよい。
【0157】
蛍光体含有樹脂組成物を調製するには、上記した蛍光体および樹脂(好ましくは、熱硬化性樹脂)を配合して、攪拌混合する。具体的には、蛍光体および樹脂を配合して、マグネティックスターラー、メカニカルスターラー、ハイブリッドミキサーなどの攪拌装置を用いて、それらを混合して、蛍光体を樹脂中に均一に分散させる。
【0158】
攪拌温度は、例えば、室温(約25℃)〜50℃であり、攪拌時間は、例えば、1分間〜180分間である。
【0159】
蛍光体の配合割合は、蛍光体含有樹脂組成物に対して、例えば、1〜50質量%、好ましくは、10〜40質量%である。
【0160】
そして、図1(d)および図2(a)に示すように、蛍光体層3は、封止材層2の上面(厚み方向他方側面)に積層される第1蛍光体層4と、封止材層2の下面(厚み方向一方側面)に積層される第2蛍光体層5とを備えている。
【0161】
第1蛍光体層4は、封止材層2の上面全面に積層されている。
【0162】
第1蛍光体層4の厚みT2(図1(d)参照)は、例えば、50〜500μm、好ましくは、50〜150μmである。
【0163】
第2蛍光体層5は、封止材層2の周端部6の下面、つまり、面方向外側端部の下面に積層されている。
【0164】
また、第2蛍光体層5には、面方向中央において、厚み方向を貫通する底面視略円形状の開口部10が形成されており、第2蛍光体層5の開口部10内には、封止材層2が充填されている。
【0165】
これにより、封止材層2は、中央部7が下方にわずかに突出しており、その突出部8の下面が第2蛍光体層5の開口部10から露出している。
【0166】
封止材層2の突出部8は、図2(a)が参照されるように、封止シート1と基板14とが対向配置される時に、厚み方向に投影したときに、後述する発光ダイオード11およびワイヤ12を含むパターンに形成されており、具体的には、発光ダイオード11およびワイヤ12より大きい底面視略円形状に形成されている。
【0167】
また、第2蛍光体層5は、封止材層2の突出部8の外周を囲む底面視略枠(円環)形状に形成されている。
【0168】
また、第2蛍光体層5の下面は、封止材層2の突出部8の下面と、面方向において面一に形成されている。
【0169】
第2蛍光体層5の開口部10の内径D1は、後述する発光ダイオード11のサイズに応じて適宜設定され、例えば、0.1〜100mm、好ましくは、0.1〜10mmである。また、第2蛍光体層5の幅(面方向の長さ)W1は、基板14のサイズに応じて適宜設定され、例えば、1〜50mm、好ましくは、1〜20mmである。
【0170】
第2蛍光体層5の厚みT3(図1(b)参照)は、例えば、50〜500μm、好ましくは、50〜150μmである。
【0171】
第1蛍光体層4および第2蛍光体層5は、上記した蛍光体層3を形成する成分(蛍光体および樹脂など)から形成されている。
【0172】
次に、上記した封止シート1を製造する方法について、図1を参照して説明する。
【0173】
この方法では、まず、図1(a)に示すように、離型基材9を用意する。
【0174】
離型基材9は、略平板矩形シート形状に形成され、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなど)などの樹脂材料、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料などから形成されている。好ましくは、樹脂材料から形成されている。
【0175】
なお、離型基材9の表面(上面)には、封止材層2および第2蛍光体層5からの離型性を高めるため、必要により、離型処理が施されている。
【0176】
次いで、図1(b)に示すように、第2蛍光体層5を離型基材9の上面に上記したパターンで積層する。
【0177】
第2蛍光体層5を離型基材9の上面に上記したパターンで積層するには、まず、図1(b)の仮想線で示すように、蛍光体含有樹脂組成物を、離型基材9の上面全面に、例えば、キャスト、スピン、ロール、アプリケータなどの公知の塗布方法によって塗布することにより、蛍光体含有皮膜60を形成する。
【0178】
その後、蛍光体含有皮膜60の中央部および周縁部を、例えば、ハーフカット、エッチングなどによって、除去する。これにより、図1(b)の実線で示すように、蛍光体含有皮膜60を上記した略枠(円環)形状にパターンニングする。
【0179】
これにより、蛍光体含有皮膜60を、開口部10が形成されるパターンで形成する。
【0180】
その後、蛍光体含有皮膜60を加熱により硬化することにより、硬化状態の第2蛍光体層5を形成する。加熱温度は、例えば、50〜150℃であり、加熱時間は、例えば、1〜100分間である。
【0181】
その後、図1(c)に示すように、封止材層2を、離型基材9および第2蛍光体層5の上面に積層する。すなわち、封止材層2を、第2蛍光体層5から露出する離型基材9の上面、および、第2蛍光体層5の上面に積層する。換言すれば、封止材層2を、第2蛍光体層5の開口部10内に充填するように、第2蛍光体層5の上面に積層する。
【0182】
封止材層2を離型基材9および第2蛍光体層5の上面に積層するには、上記した封止材(封止樹脂組成物)を、離型基材9を含む第2蛍光体層5の上面全面に、例えば、上記した塗布方法によって塗布することにより、封止皮膜(図示せず)を形成する。
【0183】
その後、封止皮膜を加熱して、Bステージ状態の封止樹脂組成物からなる封止材層2を形成する。加熱温度は、例えば、50〜150℃であり、加熱時間は、例えば、1〜100分間である。
【0184】
これにより、封止材層2を、離型基材9および第2蛍光体層5の上面に積層する。
【0185】
次いで、図1(d)に示すように、第1蛍光体層4を、封止材層2の上面に積層する。
【0186】
第1蛍光体層4は、まず、蛍光体含有樹脂組成物を、図示しない離型基材の上面に、例えば、公知の塗布方法によって塗布することにより、蛍光体含有皮膜(図示せず)を形成する。離型基材としては、上記した離型基材9(図1(a))と同様のものが挙げられる。
【0187】
次いで、蛍光体含有皮膜を、加熱により硬化することにより、硬化状態の第1蛍光体層4を離型基材の上面に形成する。
【0188】
その後、第1蛍光体層4を、封止材層2の上面に転写する。つまり、第1蛍光体層4を封止材層2の上面に貼着し、その後、図示しない離型基材を第1蛍光体層4から剥離する。
【0189】
これにより、第1蛍光体層4を、封止材層2の上面に積層する。
【0190】
これによって、封止シート1を得る。
【0191】
なお、得られた封止シート1を、基板14および発光ダイオード11(図2参照)のサイズに対応して、所定のサイズに適宜切り取ることができる。
【0192】
次に、この封止シート1を用いて、発光ダイオード11を封止して、発光ダイオード装置15を製造する方法について、図2を参照して説明する。
【0193】
この方法では、まず、図2(a)に示すように、封止シート1と、基板14とを用意する。
【0194】
すなわち、図1(d)の仮想線で示すように、まず、離型基材9を第2蛍光体層5および突出部8の下面から引き剥がすことにより、封止シート1を用意する。
【0195】
基板14は、平板状をなし、その面方向中央の表面(上面)には、発光ダイオード11が実装されている。基板14は、面方向において、封止シート1よりわずかに大きく形成されている。
【0196】
発光ダイオード11は、断面略矩形状に形成されている。
【0197】
なお、基板14には、その上面に形成される端子(図示せず)と、発光ダイオード11の上面とを電気的に接続するワイヤ12が設けられている。
【0198】
そして、図2(a)に示すように、用意した基板14の上側に、封止シート1を対向配置させる。
【0199】
封止シート1を、封止材層2の突出部8および第2蛍光体層5が下側に向かうように、配置する。
【0200】
詳しくは、封止シート1を、突出部8が、発光ダイオード11およびワイヤ12と対向し、その対向方向(図2における上下方向)に投影したときに、突出部8が、発光ダイオード11およびワイヤ12を含むように、配置する。
【0201】
次いで、図2(b)に示すように、封止シート1を基板14に貼着して、発光ダイオード11を封止する。
【0202】
すなわち、図2(a)の矢印で示すように、第2蛍光体層5が、基板14の上面に接触するとともに、封止材層2の突出部8が、その下面から、発光ダイオード11およびワイヤ12を埋設するように、封止シート1を基板14に貼着する。
【0203】
封止材層2の突出部8において、発光ダイオード11を埋設する領域が、埋設領域としてのダイオード埋設領域20とされ、基板14に密着する領域が、基板密着領域13とされる。なお、発光ダイオード11の側面の下端部では、ダイオード埋設領域20と基板密着領域13とが重なっている。
【0204】
つまり、図2(a)が参照されるように、突出部8の基板密着領域13は、第2蛍光体層5の内側に隣接し、底面視略円環形状に仕切られ、突出部8のダイオード埋設領域20は、基板密着領域13の内側に隣接し、底面視略矩形状に仕切られている。
【0205】
換言すれば、封止シート1において、ダイオード埋設領域20は、第2蛍光体層5の面方向内側に間隔を隔てて配置されている。
【0206】
ダイオード埋設領域20の最大長さD2(外径)は、発光ダイオード11の外径D3よりわずかに大きく、具体的には、発光ダイオード11の外径D3に対して、例えば、1.1〜10倍、好ましくは、1.1〜3倍である。
【0207】
発光ダイオード11は、図2(b)に示すように、突出部8に埋設されるように、突出部8内に圧入される。
【0208】
これによって、封止材層2の突出部8のダイオード埋設領域20が、発光ダイオード11の上面および周側面に密着する。
【0209】
一方、封止材層2の突出部8の基板密着領域13は、基板14において、発光ダイオード11の外側に隣接する第1隣接部分16の上面に密着する。
【0210】
さらに、第2蛍光体層5の下面は、基板14において、第1隣接部分16の外側に隣接する第2隣接部分17の上面に接触する。
【0211】
その後、この方法では、封止材層2が熱硬化性樹脂組成物を含有する場合には、封止材層2を、加熱により硬化させる。
【0212】
加熱条件は、上記した封止材層2の熱硬化性樹脂組成物が完全硬化する条件である。すなわち、熱硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂である場合には、付加反応(ヒドロシリル化反応)が進行する条件であり、シリコーン樹脂がホウ素化合物含有シリコーン樹脂組成物またはアルミニウム化合物含有シリコーン樹脂組成物である場合には、それらの反応が完全に進行する条件である。
【0213】
具体的には、加熱温度が、例えば、100〜180℃で、加熱時間が、1分間〜10分間である。
【0214】
また、上記した加熱ととともに、圧着すること、つまり、熱圧着することもできる。
【0215】
加熱温度および加熱時間は上記と同様であり、圧力は、例えば、0.1MPaを超過し、0.3MPa以下である。
【0216】
なお、封止材層2は、熱硬化性樹脂組成物を含有する場合において、図3に示すように、上記した加熱または熱圧着によって、周端部6が面方向外側にはみ出して基板14に貼着するように、封止シート1が基板14に貼着される。
【0217】
詳しくは、封止材層2は、熱硬化性樹脂組成物を含有する場合には、上記した加熱によって軟化して、封止材層2の周端部6が外側にはみ出し、第2蛍光体層5の周端縁を超えて、第2蛍光体層5から露出する基板14の上面に貼着する。
【0218】
これによって、封止シート1によって発光ダイオード11を封止する。
【0219】
これによって、基板14と、発光ダイオード11と、それらに貼着され、発光ダイオード11を封止する封止シート1とを備える発光ダイオード装置15を得ることができる。
【0220】
そして、上記した封止シート1は、第2蛍光体層5が、ダイオード埋設領域20と間隔を隔てて配置されているので、第2蛍光体層5がダイオード埋設領域20に接触することが防止され、封止材層2のダイオード埋設領域20が発光ダイオード11を確実に埋設することができる。そのため、この封止シート1では、封止材層2の発光ダイオード11に対する封止性を向上させることができる。
【0221】
しかも、この封止シート1は、第1蛍光体層4が、封止材層2の上面に積層されるとともに、第2蛍光体層5が、封止材層2の下面に積層される。そのため、この封止シート1が貼着された発光ダイオード装置15では、発光ダイオード11から放射状に広がる光は、第2蛍光体層5によっても波長変換されるので、第1蛍光体層4および第2蛍光体層5を通過しない光を低減することができる。
【0222】
その結果、発光ダイオード装置15から発光される光の色度のばらつきを低減することができる。
【0223】
また、この封止シート1を用いる発光ダイオード装置15の製造方法は、発光ダイオード11を、確実に封止することができ、それによって、発光ダイオード装置15を、確実に得ることができる。
【0224】
なお、上記した実施形態では、第2蛍光体層5の開口部10を底面視略円形状に形成しているが、その形状は特に限定されず、例えば、底面視略矩形状に形成することもできる。
【0225】
図4は、本発明の封止シートの他の実施形態(接着剤層が設けられる態様)を用いて、発光ダイオードを封止して、発光ダイオード装置を製造する方法を説明する工程図を示す。
【0226】
なお、以降の各図面において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0227】
図4(a)の実線で示すように、接着剤層21を、第2蛍光体層5の下面(表面)に積層し、接着剤層21を介して、封止シート1を、基板14に接着することもできる。
【0228】
図4(a)において、接着剤層21は、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤などの公知の接着剤から形成され、好ましくは、シリコーン系接着剤から形成されている。接着剤層21の厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは、5〜50μmである。
【0229】
また、接着剤層21は、第2蛍光体層5の開口部10に対応する部分が開口されるパターンに形成されている。
【0230】
接着剤層21を第2蛍光体層5の下面に積層するには、例えば、図1(a)が参照されるように、まず、離型基材9の上面全面に上記した接着剤層21を積層し、その後、接着剤層21の上面に、第2蛍光体層5を積層する。
【0231】
そして、第2蛍光体層5を積層する際、図1(b)の実線が参照されるように、蛍光体含有皮膜60のパターンニングとともに、接着剤層21を、第2蛍光体層5の開口部10に対応する部分が開口されるパターンに形成する。
【0232】
その後、封止材層2および第1蛍光体層4を順次積層する。
【0233】
あるいは、図2(a)が参照されるように、封止材層2、第1蛍光体層4および第2蛍光体層5が順次積層され、離型基材9を剥離した封止シート1において、第2蛍光体層5の下面に、接着剤層21を上記したパターンで積層(あるいは塗布)することにより、接着剤層21を封止シート1に設けることもできる。
【0234】
接着剤層21を封止シート1に設けることにより、封止シート1を基板14に接着することができ、封止シート1の発光ダイオード11に対する封止性を向上させることができる。
【0235】
また、図4(a)の実線の実施形態のように、接着剤層21を、第2蛍光体層5の下面のみに設けているが、例えば、図4(a)の仮想線で示すように、第2蛍光体層5の下面に加えて、封止材層2の突出部8の下面にも設けることができる。
【0236】
好ましくは、図4の実線の実施形態では、接着剤層21を、第2蛍光体層5の下面のみに設ける。
【0237】
これにより、図4(a)に示すように、接着剤層21は、発光ダイオード11に対応する部分が開口されるので、図4(b)に示すように、封止材層2の突出部8の下面が露出されるので、図4(a)の仮想線の実施形態に比べて、封止材層2の突出部8による発光ダイオード11の封止性を向上させることができる。
【実施例】
【0238】
以下に、調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何らそれらに限定されない。
【0239】
調製例1
(蛍光体含有樹脂組成物の調製)
シリコーンエラストマー(LR7665、旭化成ワッカーシリコーン社製)7.6gに、YAl12:Ce(YAG:Ce)2.4gを加えて、室温で攪拌して、YAG:Ceをシリコーンエラストマーに分散させることにより、蛍光体含有樹脂組成物を調製した。
【0240】
調製例2
(シリコーン樹脂組成物の調製)
40℃に加温したシラノール両末端ポリジメチルシロキサン(シラノール両末端ポリシロキサン、式(1)中、Rがすべてメチル、nの平均が155、数平均分子量11,500)2031g(0.177モル)に対して、ビニルトリメトキシシラン(アルケニル基含有アルコキシシラン)15.76g(0.106モル)、および、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(エポキシ基含有アルコキシシラン)2.80g(0.0118モル)とを配合して、攪拌混合した。
【0241】
なお、シラノール両末端ポリジメチルシロキサンのSiOH基の、ビニルトリメトキシシランおよび(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランのSiOCH基に対するモル比(SiOH基のモル数/SiOCH基のモル数)は、1/1であった。
【0242】
攪拌混合後、水酸化テトラメチルアンモニウムのメタノール溶液(縮合触媒、濃度10質量%)0.97mL(0.766g、触媒含量:0.88ミリモル、シラノール両末端ポリジメチルシロキサン100モルに対して0.50モルに相当)を加え、40℃で1時間攪拌した。得られた混合物(オイル)を40℃の減圧下(10mmHg)で、1時間攪拌しながら、揮発分(メタノールなど)を除去した。
【0243】
その後、系を常圧に戻した後、反応物に、オルガノハイドロジェンシロキサン(式(4)中、Rが全てメチル、aの平均が10、bの平均が10。25℃における粘度20mPa・s)44.67g(0.319モル)を加え、40℃で1時間攪拌した。
【0244】
なお、ビニルトリメトキシシランのビニル基(CH=CH−)の、オルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)に対するモル比(CH=CH−/SiH)は、1/3であった。
【0245】
その後、系に、白金−カルボニル錯体のオリゴシロキサン溶液(付加触媒、白金濃度2質量%)0.13g(0.13mL、白金含量2質量%、白金として、オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して1.2×10−4質量部に相当)を加えて、40℃で10分間攪拌した。
【0246】
これにより、シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0247】
実施例1
ポリエステルフィルム(SS4C、ニッパ社製)製の離型基材(図1(a)参照)の上面全面に、調製例1の蛍光体含有樹脂組成物をアプリケータで塗布して蛍光体含有皮膜を形成した(図1(b)仮想線参照)。次いで、蛍光体含有皮膜の中央部および周縁部をハーフカットによって除去することにより、蛍光体含有皮膜を、内径(D1)が5mm、蛍光体含有皮膜の幅(W1)が2.5mmの円環形状にパターンニングした。
【0248】
その後、蛍光体皮膜を100℃で、10分間、加熱により硬化することにより、厚み(T3)100μmの硬化状態の第2蛍光体層を形成した(図1(b)実線参照)。
【0249】
次いで、調製例2のシリコーン樹脂組成物を、離型基材を含む第2蛍光体層の上面全面にアプリケータで塗布することにより封止皮膜を形成し、続いて、封止皮膜を、135℃で、5分間、加熱することにより、厚み(T1、最大厚み)1mm(1000μm)のBステージ状態の封止材層を積層した(図1(c)参照)。
【0250】
なお、封止材層には、第2蛍光体層の開口部に充填される突出部が形成された。
【0251】
別途、ポリエステルフィルム(SS4C、ニッパ社製)からなる離型基材の上面全面に、調製例1の蛍光体含有樹脂組成物をアプリケータで塗布し、蛍光体含有皮膜を形成し、続いて、蛍光体含有皮膜を、100℃で、10分間、加熱して硬化させすることにより、厚み100μmの硬化状態の第1蛍光体層を形成した。
【0252】
その後、第1蛍光体層を、封止材層の上面に転写することによって、第1蛍光体層を、封止材層の上面に積層した(図1(d)および図2(a)参照)。
【0253】
これにより、封止シートを作製した。
【0254】
その後、封止シートを、第2蛍光体層の開口部を中心として、1cm角に切り取った。
【0255】
その後、離型基材を封止シートから剥離した後、封止シートを、発光ダイオード(サイズ3×3mm(最大長さD3が4.2mm)の平面視矩形状、厚み0.3mm)が実装され、ワイヤにより発光ダイオードと接続された基板(サイズ20×20mm、厚み0.5mm)の表面に貼着した(図2(b)参照)。
【0256】
つまり、第2蛍光体層が、基板の上面に接触するとともに、封止材層の突出部が、その下面から、発光ダイオードおよびワイヤを埋設するように、封止シートを基板に貼着した。
【0257】
詳しくは、封止材層の突出部のダイオード埋設領域が発光ダイオードの上面および周側面に密着し、封止材層の突出部の基板密着領域が基板の第1隣接部分の上面に密着し、かつ、第2蛍光体層の下面が基板の第2隣接部分の上面に接触するように、封止シートを基板に貼着した。
【0258】
なお、封止材層の突出部において、ダイオード埋設領域の外径(D2)は4.5mm(つまり、発光ダイオードの外径(D3)4.2mmの1.1倍)であり、基板密着領域の幅は0.25mmであった。
【0259】
具体的には、封止シートを、上記した配置で基板および発光ダイオードの上に貼着した後、常圧(0.1MPa)で、160℃で、5分間加熱した。
【0260】
これによって、封止材層を硬化させて、発光ダイオードを封止シートによって封止することにより、発光ダイオード装置を作製した。
【0261】
実施例2
シリコーン系接着剤からなる厚み40μmの接着剤層を、第2蛍光体層の下面のみに積層し(図4(a)参照)、接着剤層を介して、封止シートを基板に接着した(図4(b)参照)以外は、実施例1と同様にして、発光ダイオードを封止することにより、発光ダイオード装置を作製した。
【0262】
比較例1
第2蛍光体層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、封止シートを作製し、続いて、封止シートによって、発光ダイオードを封止することにより、発光ダイオード装置を作製した(図5(b)参照)。
【0263】
つまり、蛍光体層を第1蛍光体層のみから形成した(図5(a)参照)。
【0264】
(評価)
1. 色度の角度依存性
実施例1、2および比較例1の発光ダイオード装置(1)において、発光ダイオード(11)に250mAの電流を流して、発光ダイオード(11)を点灯させ、その際のCIE色度指標(y値)を測定した。
【0265】
具体的には、図6が参照されるように、検出器(50)を、発光ダイオード装置(1)の発光ダイオード(11)から上方における位置(つまり、発光ダイオード装置(1)の厚み方向と、検出器(50)および発光ダイオード(11)の中心を結ぶ線分の方向(検出方向)とのなす角度(検出角度)が0度となる位置。0度の位置、以下同様。)から、発光ダイオード装置(15)の発光ダイオード(11)から側方における位置(85度の位置)まで5度刻みで移動することにより、CIE色度指標(y値)測定した。
【0266】
なお、検出器(50)を含む測定装置として、瞬間マルチ測光システム(MCPD−9800、大塚電子社製)を用いた。
【0267】
そして、0度におけるy値と、y値の最大値と、その検出角度(検出方向と厚み方向との成す角度)と、y値の最小値と、その角度(厚み方向に対する角度)と、上記したy値の最大値からy値の最小値を差し引いた値とを、それぞれ、表1に示す。
【0268】
【表1】

【0269】
2. 引張弾性率の測定
実施例1、2および比較例1の封止材層の25℃における引張弾性率をオートグラフ(AGS−J、島津製作所社製)により測定した。
【0270】
その結果、いずれの封止材層についても、25℃における引張弾性率が0.08MPaであった。
【符号の説明】
【0271】
1 封止シート
2 封止材層
4 第1蛍光体層
5 第2蛍光体層
6 周端部
11 発光ダイオード
14 基板
15 発光ダイオード装置
20 ダイオード埋設領域
21 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードが実装される基板に貼着され、前記発光ダイオードを封止するための封止シートであって、
前記発光ダイオードを一方側面から埋設する埋設領域が区画される封止材層と、
前記封止材層の他方側面に積層される第1蛍光体層と、
前記封止材層の一方側面に、前記埋設領域と間隔を隔てて配置されるように、積層される第2蛍光体層と
を備えることを特徴とする、封止シート。
【請求項2】
前記封止材層の25℃における引張弾性率が、0.01MPa以上である
ことを特徴とする、請求項1に記載の封止シート。
【請求項3】
前記第2蛍光体層の表面に積層される接着剤層
をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の封止シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止シートを、発光ダイオードが実装される基板に貼着して、前記発光ダイオードを封止することを特徴とする、発光ダイオード装置の製造方法。
【請求項5】
前記封止材層における厚み方向と直交する方向の端部が、加熱によって外側にはみ出して前記基板に貼着するように、前記封止シートを前記基板に貼着することを特徴とする、請求項4に記載の発光ダイオード装置の製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板の表面に実装される発光ダイオードと、
前記基板の表面に貼着され、前記発光ダイオードを封止する請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止シートと
を備えることを特徴とする、発光ダイオード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227516(P2012−227516A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40349(P2012−40349)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】