説明

封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】貴金属との接着性に優れ、耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、(D)下記一般式(1)で表される構成単位を有し、且つ1分子中にフェニル基を50質量%以上含むシリコーンレジンと、(E)無機充填剤と、を含有し、前記(D)シリコーンレジンが、下記一般式(1)中のRがフェニル基である構成単位を少なくとも1つ含む封止用エポキシ樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用エポキシ樹脂組成物及びこの組成物で封止した素子を備えた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高密度実装化が進んでいる。これに伴い、樹脂封止型半導体装置においては、従来のピン挿入型パッケージから、面実装型パッケージが主流になっている。
面実装型のIC、LSI等においては、薄型化、小型化の要請から、実装密度を高くし、実装高さを低くする傾向にある。このため、パッケージに対する素子の占有面積が大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなってきた。
前記面実装型パッケージは、従来のピン挿入型のものと実装方法が異なる。ピン挿入型パッケージでは、ピン(リード)を配線板に挿入した後、配線板裏面からはんだ付けを行うのに対して、面実装型パッケージでは、配線板表面に実装する部品の仮止めを行い、はんだバスやリフロー装置などで処理する。
【0003】
このため、ピン挿入型パッケージでは、パッケージが直接高温にさらされることがなかったが、面実装型では、直接はんだ付け温度(リフロー温度)にさらされる。この結果、保存時等にICパッケージが吸湿した場合、リフロー時にこの吸湿水分が気化して、発生した蒸気圧が剥離応力として働き、素子、リードフレーム等のインサートと封止材との間で剥離が発生し、パッケージクラックの発生や電気的特性不良の原因となる。
そこで、面実装型パッケージに用いられる封止材料においては、はんだ耐熱性(耐リフロー性)に優れたものが望まれており、低吸湿で、且つリードフレーム(材質として、Cu,Ag,Au)やチップ界面等の異種材料界面との接着性、密着性を十分に確保できることが強く求められている。
【0004】
これらの要求に対応するために、封止材料の主材として用いられるエポキシ樹脂に関して、様々な検討がなされている。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、種々のエポキシ樹脂改質材についても検討されており、例えばプレプレーティングフレームとの接着性や耐リフロー性の改善を図った硫黄原子含有化合物(例えば、特許文献2、3参照)や、前記特性に加え、耐湿性や成形性の向上を図ることを目的とした硫黄原子含有シランカップリング剤(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−65116号公報
【特許文献2】特開平11−12442号公報
【特許文献3】特開2002−3704号公報
【特許文献4】特開2000−103940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エポキシ樹脂改質材として、従来の硫黄原子含有化合物や硫黄原子含有シランカップリング剤を用いた場合では、AgやAuのような貴金属との接着性が十分に得られず、いずれも耐リフロー性を満足するに至っていない。
そこで、本発明は、貴金属との接着性の向上を図ることができ、耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のシリコーンレジンを含有することで、耐リフロー性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物が得られることを見出した。
即ち、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物及びこの組成物で封止した素子を備えた電子部品装置は、以下の通りである。
【0008】
<1> (A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、(D)下記一般式(1)で表される構成単位を有し、且つ1分子中にフェニル基を50質量%以上含むシリコーンレジンと、(E)無機充填剤と、を含有し、前記(D)シリコーンレジンが、下記一般式(1)中のRがフェニル基である構成単位を少なくとも1つ含む封止用エポキシ樹脂組成物である。下記一般式(1)中、Rは、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基、水酸基のいずれかである。nは正の整数である。
【0009】
【化1】

【0010】
<2> 前記(D)シリコーンレジンの重量平均分子量が、5000以下である<1>に記載の封止用エポキシ樹脂組成物である。
<3> 硬化した封止用エポキシ樹脂組成物中における前記(D)シリコーンレジンのドメインサイズが、5μm以下である、<1>又は<2>に記載の封止用エポキシ樹脂組成物である。
<4> 前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対する前記(D)シリコーンレジンの含有量が、10質量部〜30質量部である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物である。
【0011】
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貴金属との接着性の向上を図ることができ、優れた耐リフロー性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例で用いた封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物1〜4中の(D)シリコーンレジンの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物について説明し、次に前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置について説明する。
本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
[封止用エポキシ樹脂組成物]
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の少なくとも1種と、(B)硬化剤の少なくとも1種と、(C)硬化促進剤の少なくとも1種と、(D)特定の構成単位を有し、且つ1分子中に所定量のフェニル基を含有するシリコーンレジン(以下、「(D)特定シリコーンレジン」と称する場合がある。)の少なくとも1種と、(E)無機充填剤の少なくとも1種と、を含有し、更に必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0016】
前記封止用エポキシ樹脂組成物中に(D)特定シリコーンレジンが(A)エポキシ樹脂や(B)硬化剤などの成分とともに含有されることにより、これらの成分を含有する組成物が反応などにより硬化して得られる硬化物(成形品)の弾性率を低下させることができる。この結果、十分な貴金属との接着性を得られ、耐リフロー性の向上を図ることができる。これは、例えば以下のように考えられる。
【0017】
即ち、前記封止用エポキシ樹脂組成物中に(D)特定シリコーンレジンが配合されることにより、硬化した前記封止用エポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含む相(海部)と、(D)特定シリコーンレジンからなる相(島部)と、から構成される「海島構造」が形成される。これにより、(D)特定シリコーンレジンが、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の分子間相互作用を抑制し、内部応力が緩和されるため、硬化物の弾性率を低下させると推測される。この結果、貴金属との接着性が確保され、耐リフロー性が向上すると考えられる。
【0018】
<(D)特定シリコーンレジン>
前記封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(D)特定シリコーンレジンの少なくとも1種を含む。前記封止材用エポキシ樹脂組成物に前記(D)特定シリコーンレジンが配合されることにより、硬化した前記封止用エポキシ樹脂組成物の弾性率が低下し、この結果良好な耐リフロー性が得られる。
前記(D)特定シリコーンレジンは、下記一般式(1)で表される構成単位を有し、且つ1分子中にフェニル基を50質量%以上含むとともに、下記一般式(1)中のRがフェニル基である構成単位を少なくとも1つ含む。下記一般式(1)で表される構成単位は、ケイ素原子に3つの酸素原子と1つの有機基Rが結合した三官能性の構成単位であることから、各酸素原子を介して、シロキサン結合(−Si−O−Si−)が網目状に連結する分岐構造を形成する。かかる構成単位を有する(D)特定シリコーンレジンは、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤中の分散性に優れるとともに、良好な硬化性を有する。
【0019】
【化2】

【0020】
上記一般式(1)中、Rはアルキル基、フェニル基、アルコキシ基及び水酸基から選ばれる有機基の少なくとも1種を示す。前記有機基Rとしては、アルキル基、フェニル基、水酸基が好ましく、フェニル基、水酸基がより好ましい。
Rで表されるアルキル基としては、炭素数1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、中でもプロピル基が好ましい。
Rで表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ、プロポキシ基などが挙げられ、中でもメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0021】
前記一般式(1)におけるRで表されるアルキル基、フェニル基及びアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、アミノ基などを挙げることができる。好ましくは、置換基を有さない場合である。
【0022】
前記有機基Rとして、具体的には、プロピル基、フェニル基、水酸基が好ましく、フェニル基、水酸基がより好ましい。特に、弾性率の低下効果の観点から、前記構成単位の繰り返し構造においては、前記有機基Rがフェニル基であることが好ましい。
前記(D)シリコーンレジン中には、前記有機基Rがフェニル基である構成単位が少なくとも1つ含まれる。
【0023】
前記有機基Rが上述のような条件を満たすことにより、前記(D)特定シリコーンレジンの分散性を高めることができ、硬化した組成物において優れた弾性率が得られる。
また、nは正の整数を表す。nは弾性率の低下効果の観点から、2〜50であることが好ましく、2〜40であることがより好ましい。
【0024】
前記(D)特定シリコーンレジンは、前記一般式(1)で表される構成単位以外に、その他の構成単位を有していてもよい。その他の構成単位としては、下記式(2)で表される二官能性の直鎖状構造が挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
上記式(2)中、R及びRは各々独立に、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、水酸基を表す。硬化した組成物の弾性率低減効果の観点から、アルキル基、フェニル基、水酸基が含まれることが好ましい。
【0027】
及びRで表されるアルキル基としては、各々独立に炭素数1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、中でもメチル基、プロピル基が好ましい。
及びRで表されるアルコキシ基としては、各々独立に炭素数1又は2であることが好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられ、中でもメトキシ基が好ましい。
【0028】
前記(D)特定シリコーンレジン中の前記一般式(1)で表される構成単位の含有量は、選択されるシリコーンレジンの種類、重合度、導入される有機基の種類などに応じて、適宜設定すればよい。例えば、前記(D)特定シリコーンレジン中の前記一般式(1)で表される構成単位の分子量を(D)特定シリコーンレジンの分子量(Mw)で除した値(即ち、前記一般式(1)で表される構成単位の含有率)は、10質量%〜100質量%であることが好ましく、20質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0029】
前記(D)特定シリコーンレジンは、1分子中にフェニル基を50質量%以上含む。フェニル基の含有率が50%未満であると、良好な分散性が得られず、耐リフロー性の向上を十分に図ることができない。フェニル基の含有率は、55質量%以上であることが好ましい。フェニル基の含有率を大きくすることで、分散性が良くなり、これにより後述するドメインサイズが小さくなり、耐リフロー性が向上する。尚、前記フェニル基の含有率は、前記一般式(1)で表される構成単位に加え、前記その他の構成単位などを含めた前記(D)特定シリコーンレジンを構成する全構成単位中に含まれるフェニル基の総含有率を表す。
【0030】
前記(D)特定シリコーンレジンのフェニル基の含有率(濃度)の測定は、シリコーンレジンのプロトンNMRを測定し、プロトン比により算出することができる。
前記(D)特定シリコーンレジンに含まれるフェニル基は、前記一般式(1)で表される構成単位のうちの少なくとも1つに含まれる。前記(D)特定シリコーンレジンに含まれるフェニル基は、前記一般式(1)で表される構造単位中にのみ含まれていても、該構成単位と前記その他の構成単位との両方に含まれていてもよい。分散性の向上効果の観点から、前記一般式(1)で表される構成単位中の前記有機基Rとして含まれることが好ましい。
【0031】
前記(D)特定シリコーンレジンにフェニル基を導入する方法としては、特に限定させるものではなく、少なくとも一方が前記有機基Rとしてフェニル基を有する前記構成単位同士、前記有機基Rとしてフェニル基を有する前記構成単位と前記その他の構成単位、又は前記構成単位とフェニル基を有する前記その他の構成単位とを共重合させた態様であっても、側鎖にフェニル基を有する前記構成単位に、その他の構成単位を有する化合物を更に高分子反応で付加させた態様であってもよい。このうち、各構成成分を共重合させた態様が好ましい。
【0032】
前記(D)特定シリコーンレジンの重量平均分子量は5000以下が好ましい。5000以下であるとシリコーンレジンの分散性がよくなり、耐リフロー性が向上する。
前記(D)特定シリコーンレジンの重量平均分子量は、前記(D)特定シリコーンレジンをテトラヒドロフラン溶媒に溶解し、標準ポリスチレンの検量線を用い、GPCにて測定できる。
【0033】
前記(D)特定シリコーンレジンとしては、例えばフェニルシラノール系シリコーンレジン(前記有機基Rがフェニル基及び水酸基を含む)、フェニルプロピル系シリコーンレジン(前記有機基Rがフェニル基及びプロピル基を含む)が好ましい。
より具体的には、市販品が使用可能であり、フェニルシラノール系の東レダウコーニング株式会社製の217FLAKE(商品名)や、フェニルプロピル系の東レダウコーニング株式会社製のSH6018(商品名)等が挙げられる。
【0034】
前記(D)特定シリコーンレジンの含有量は、後述する(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、10質量部〜30質量部が好ましく、10質量部〜20質量部がより好ましく、10質量部〜15質量部がさらに好ましい。10質量部以上とすることで耐リフロー性効果が十分に発揮されやすくなり、また30質量部以下とすることでシリコーンレジンの添加による流動性の低下を防止できる。
【0035】
前記(D)特定シリコーンレジンは、後述の(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤等とともに硬化した前記封止材用エポキシ樹脂組成物中において、図1に示す海島構造を形成する。前記封止材用エポキシ樹脂組成物の硬化物が海島構造を有することにより、該硬化物の弾性率が低下し、耐リフロー性が向上する。
前記海島構造は、後述する(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含む相(海部)と、前記(D)特定シリコーンレジンからなる相(島部)と、から構成される。
【0036】
前記(D)特定シリコーンレジンの部分(ドメイン)の形状は、使用するエポキシ樹脂や硬化剤の種類、又は、封止用エポキシ樹脂組成物製造時の混練条件に応じて決定される。その形状は球状、棒状など、どのような形状でもよく、分散時のドメイン形状の安定性及び流動性の観点から球状であることが好ましい。
前記ドメインサイズは、耐リフロー性の向上効果の観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。ドメインサイズは、ドメインが球状の場合には、その直径を意味し、棒状の場合には、長辺の長さを意味する。
【0037】
このドメインサイズの測定方法としては、例えば以下の通りである。
先ず、後述の(B)硬化剤及び(C)硬化促進剤を10分間溶融攪拌した後、後述の(A)エポキシ樹脂と前記(D)特定シリコーンレジンとを加え、120℃、20分間の条件にて更に溶融攪拌する。
【0038】
次に、攪拌した組成物を175℃のオーブンで6時間硬化させ、硬化物を作製する。
得られた硬化物を用い、その破断面をSEM観察して(例えば、倍率5000倍)、前記ドメインの大きさを測定する。本発明では、任意の3箇所における測定値から平均値を求め、得られた値を前記(D)特定シリコーンレジンのドメインサイズとする。
【0039】
<(A)エポキシ樹脂>
前記封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の少なくとも1種を含む。前記(A)エポキシ樹脂は、上述のように、前記封止材用エポキシ樹脂組成物の硬化物において、前記(B)硬化剤との硬化物部分からなるマトリクス(海部)中に、前記(D)特定シリコーンレジンの部分からなるドメイン(島部)が微分散してなる海島構造を形成する。これにより、該硬化物の弾性率が低下し、耐リフロー性が向上する。
前記(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、特に制限されず、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。中でも、常温において固体である固形エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0040】
前記(A)エポキシ樹脂としては、具体的に例示するならば、
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂等をはじめとする、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂のエポキシ化物、
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸と、エピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、
ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンと、エピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、
ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、
ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を含有するフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、
トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、
脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、等が挙げられる。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて併用して用いてもよい。
【0041】
なかでも前記エポキシ樹脂は、流動性と硬化性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学社製、商品名:YX−4000、YL−6121Hなど)を含有していることが好ましい。また硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂(例えば、住友化学工業株式会社製、商品名:ESCN−190など)を含有していることが好ましい。また低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、DIC株式会社製、商品名:HP−7200など)を含有していることが好ましい。また耐熱性及び低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬株式会社製、商品名:NC−7300など)を含有していることが好ましい。また流動性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のビスフェノールFのジグリシジルエーテルであるビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、新日鐵化学株式会社製、商品名YSLV−80XYなど)を含有していることが好ましい。また流動性とリフロー性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のチオジフェノールのジグリシジルエーテルであるチオジフェノール型エポキシ樹脂(例えば、新日鐵化学株式会社製、商品名:YSLV‐120TEなど)を含有していることが好ましい。また硬化性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のフェノールとジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物(例えば日本化薬株式会社製、商品名NC‐2000L、NC-3000S、CER−3000Lなど)を含有していることが好ましい。また保存安定性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のナフトール類とジメトキシパラキシレンから合成されるナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物(例えば、新日鐵化学株式会社製、商品名ESN‐375、ESN‐175など)を含有していることが好ましい。また硬化性とTgの向上の観点からはフェノールとサリチルアルデヒドから合成されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬株式会社製、商品名:EPPN−502Hなど)が好ましい。
【0042】
かかるエポキシ樹脂としては、選択する前記(D)特定シリコーンレジンとの組合せにより、適宜選択されることが好ましい。
例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂又はフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とフェニルシラノール系シリコーンレジン、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とフェニルプロピル系シリコーンレジンの組合せが挙げられる。中でも、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とフェニルシラノール系シリコーンレジンを組み合せる場合では、弾性率特性、耐リフロー性の向上に加えて、良好な耐湿性を得ることができる。
【0043】
前記(A)エポキシ樹脂が固形エポキシ樹脂を含む場合、該固形エポキシ樹脂の含有率は、成形時の流動性の観点から、(A)エポキシ樹脂全量中において70質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましく、30質量%以下とすることがさらに好ましい。
また、前記封止用エポキシ樹脂組成物は、本発明の効果が達成される範囲内であれば液状エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
前記液状エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するために(A)エポキシ樹脂全量中において、合わせて30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0044】
前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されない。中でも、50以上5000以下であることが好ましく、70以上1000以下であることがより好ましく、70以上500以下であることがさらに好ましい。
【0045】
更に、前記(A)エポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、ICなど素子上のアルミ配線腐食に係わるため少ない方が好ましく、耐湿性の優れた封止用エポキシ樹脂組成物を得るためには500ppm以下であることが好ましい。ここで、加水分解性塩素量とは試料の(A)エポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1M−KOHメタノール溶液5mlを添加して30分間、過熱還流後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0046】
<(B)硬化剤>
前記封止材用エポキシ樹脂組成物は従来公知の硬化剤の少なくとも1種を含む。前記(B)硬化剤は、上述のように、前記封止材用エポキシ樹脂組成物の硬化物において、前記(A)エポキシ樹脂との硬化物部分からなるマトリクス(海部)中に、前記(D)特定シリコーンレジンの部分からなるドメイン(島部)が微分散してなる海島構造を形成する。これにより、該硬化物の弾性率が低下し、耐リフロー性が向上する。
前記(B)硬化剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであればよく、特に制限されない。
【0047】
例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、
トリフェニルメタン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。
中でも、ビフェニレン型フェノール樹脂(例えば、明和化成株式会社製、商品名MEH‐7851、三井化学株式会社製、商品名:XLCなど)が好ましい。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記(B)硬化剤は、選択する前記(A)エポキシ樹脂の組合せにより、適宜選択されればよい。
【0048】
前記(A)エポキシ樹脂と前記(B)硬化剤との当量比、すなわち、前記(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する前記(B)硬化剤中の水酸基数の比((B)硬化剤中の水酸基数/(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点から、0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性及び耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を得るためには、0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0049】
<(C)硬化促進剤>
前記封止用エポキシ樹脂組成物は、(C)硬化促進剤の少なくとも1種を含む。
前記(C)硬化促進剤は、前記(A)エポキシ樹脂と前記(B)硬化剤の反応を促進させるために作用する。
前記(C)硬化促進剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限されない。
【0050】
例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等のホスフィン化合物及びこれらのホスフィン化合物に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、難燃性、硬化性の観点からは、トリフェニルホスフィンが好ましく、難燃性、硬化性、流動性及び離型性の観点からは第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が好ましい。
【0051】
前記第三ホスフィン化合物としては、特に限定するものではない。
例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−エトキシフェニル)ホスフィンなどのアルキル基、アリール基を有する第三ホスフィン化合物が好ましい。またキノン化合物としてはo−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン等があげられる。中でも耐湿性、保存安定性の観点から、p−ベンゾキノンが好ましく、更に離型性の観点から、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物がより好ましい。
【0052】
前記(C)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではない。前記封止用エポキシ樹脂組成物に対して、0.005質量%〜2質量%が好ましく、0.01質量%〜0.5質量%がより好ましい。0.005質量%以上では短時間でも良好な硬化性が得られ、2質量%以下であると硬化速度を良好に保つことができ、優れた成形品を得ることが可能である。
【0053】
<(E)無機充填剤>
前記封止用エポキシ樹脂組成物は、(E)無機充填剤の少なくとも1種を配合する。前記(E)無機充填剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上の効果を有する。
【0054】
前記(E)無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、難燃効果のある(E)無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、複合金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などが挙げられる。中でも、充填性、線膨張係数の低減の観点からは、溶融シリカが好ましい。また、高熱伝導性の観点からは、アルミナが好ましい。
前記(E)無機充填剤の形状は、充填性及び金型摩耗性の点から、球形が好ましい。
【0055】
前記ホウ酸亜鉛としては、入手が容易であることから、市販品が使用可能であり、例えば米国Borax社製のFB−290、FB−500(いずれも商品名)、水澤化学工業株式会社製のFRZ−500C(商品名)等が挙げられる。また、前記モリブデン酸亜鉛としては、Sherwin−Williams社製のKEMGARD911B、同911C、同1100(いずれも商品名)等が挙げられる。
前記(E)無機充填剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
前記(E)無機充填剤の配合量は、流動性、難燃性、成形性、吸湿性、線膨張係数低減、強度向上及び耐リフロー性の観点から、封止用エポキシ樹脂組成物に対して50質量%以上が好ましく、60質量%〜95質量%が難燃性の観点からより好ましく、70質量%〜90質量%がさらに好ましい。50質量%未満では難燃性及び耐リフロー性が低下する傾向があり、95質量%を超えると流動性が不足する傾向にある。
【0057】
前記(E)無機充填剤は、前記封止用エポキシ樹脂組成物中に含まれる樹脂成分との接着性を高めるために、カップリング剤の少なくとも1種と組み合わせて配合されることが好ましい。
前記カップリング剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はない。
例えば、1級及び/又は2級及び/又は3級アミノ基を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。
【0058】
具体的に例示するならば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤、
などが挙げられる。
中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ―アニリノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランが好ましい。
これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記カップリング剤の全配合比は、封止用エポキシ樹脂組成物中、0.037質量%〜4.75質量%であることが好ましく、0.05質量%〜4質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜2.5質量%であることがさらに好ましい。0.037質量%以上ではフレームとの接着性が良好であり、4.75質量%以下であると優れたパッケージの成形性が確保できる。
【0060】
<その他>
前記封止用エポキシ樹脂組成物には、さらに難燃剤の少なくとも1種や必要に応じてその他の添加剤を配合してもよい。
前記難燃剤は、難燃性を向上する目的で添加される。
【0061】
前記難燃剤としては、従来公知のものがいずれも使用可能である。環境対応、信頼性の観点からは、ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤が好ましい。
前記ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤としては、例えば、赤リン、酸化亜鉛等の無機化合物とフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆された赤リン及びリン酸エステル、ホスフィンオキサイド等のリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、複合金属水酸化物、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属元素を含む化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0062】
前記その他の添加剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル等の応力緩和剤などが挙げられる。
【0063】
前記封止用エポキシ樹脂組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。
前記封止用エポキシ樹脂組成物の調製方法としては、一般的に、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、混合又は溶融混練し、冷却して、更に必要に応じて脱泡、粉砕する方法等を用いられる。
前記混合又は溶融混練に際し、ミキシングロール、押出機、らいかい機、プラネタリミキサ等がいずれも使用可能である。
前記封止用エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化されてもよい。
【0064】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、加熱硬化させることにより成形品(硬化物)とされる。この硬化物は、上述のように、前記(A)エポキシ樹脂及び前記(B)硬化剤を含む相(海部)と、前記(D)特定シリコーンレジンからなる相(島部)と、から構成される「海島構造」を有する。かかる構成とすることにより、成形品の弾性率が低減され、前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置においては、貴金属との接着性が向上し、優れた耐リフロー性が得られる。
前記硬化物の製造方法には特に制限は無く、公知の方法を適用することができる。加熱硬化の温度及び時間は特に限定されないが、例えば、50〜230℃、1〜12時間で硬化することができる。
前記硬化物は、電子部品の封止材料をはじめ、半導体素子、電機部品又は電子機器の封止材料、被膜材料、絶縁材料、積層板、金属張り積層板等にも好適に使用されるものである。
【0065】
[電子部品装置]
本発明の電子部品装置は、前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた構成を有する。
前記電子部品装置を前記封止用エポキシ樹脂組成物により封止する方法としては、特に限定されない。例えば、インジェクション成形法、圧縮成形法、低圧トランスファ成形法等も挙げられる。ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等がいずれも使用可能である。中でも、低圧トランスファ成形法が最も一般的である。
【0066】
前記電子部品装置においては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材や実装基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子が搭載され、必要な部分が前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止される。
【0067】
前記実装基板としては、特に制限するものではない。例えば、有機基板、有機フィルム、セラミック基板、ガラス基板等のインターポーザ基板、液晶用ガラス基板、MCM(Multi Chip Module)用基板、ハイブリットIC用基板等が挙げられる。
【0068】
前記電子部品装置を半導体装置に適用した場合、具体的には、リードフレーム(アイランド(タブ)ともいう。)上に半導体チップ等の素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、前記封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の樹脂封止型IC、テープキャリアにリードボンディングした半導体チップを、前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップを、前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)、COG(Chip On Glass)等のベアチップ実装した半導体装置、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止したハイブリッドIC、MCM(Multi Chip Module)マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線を接続した後、前記封止用エポキシ樹脂組成物で半導体チップ搭載側を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。
これらの半導体装置は、実装基板上に素子が2個以上重なった形で搭載されたスタックド(積層)型パッケージであってもよく、2個以上の素子を一度に封止用エポキシ樹脂組成物で封止した一括モールド型パッケージであってもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、なお、特に記述が無い限り、薬品は全て試薬を使用した。また「%」は断りがない限り「質量%」を意味する。
【0070】
(エポキシ樹脂組成物の硬化物の作製)
(B)硬化剤として水酸基当量176g/eqのビフェニレン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名「MEH−7800」)(これを「硬化剤1」とする。)と、(C)硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加物(これを「硬化促進剤1」とする。)とを混合して、加熱温度150℃、10分間の条件下で溶融攪拌した。
【0071】
攪拌後、この混合物中に、使用するシリコーンレジンの種類を変えて、2種類のエポキシ樹脂とともに添加し、シリコーンレジンの種類が異なる4種類のエポキシ樹脂組成物をそれぞれ作製した。
即ち、前記(A)エポキシ樹脂として、日本化薬株式会社製の商品名「NC−2000L」(エポキシ当量:238g/eq、軟化点:52℃))(以下、「エポキシ樹脂1」と記す。)及びジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名「エピコートYX−4000H」(エポキシ当量:196g/eq、融点:106℃)(以下、「エポキシ樹脂2」と記す。)を用い、前記シリコーンレジンとして、メトキシメチルフェニル系のもの(東レダウコーニング株式会社製、商品名「DC3037」)(シリコーンレジン1)、フェニルメチル系のもの(東レダウコーニング株式会社製、商品名「220FLAKE」)(シリコーンレジン2)、フェニルシラノール系のもの(東レダウコーニング株式会社製、商品名「217FLAKE」)(シリコーンレジン3)及びフェニルプロピル系のもの(東レダウコーニング株式会社製、商品名「SH6018」)(シリコーンレジン4)のいずれか1種とともに、表1に示す配合で前記混合物中に加え、更に20分間溶融攪拌した。尚、表1中、各エポキシ樹脂組成物の配合量は質量部を表す。
続いて、作製したエポキシ樹脂組成物を175℃のオーブンにて6時間硬化させて硬化物1〜4を得た。
【0072】
(硬化物中における各種シリコーンレジンのドメインサイズの測定)
得られた硬化物1〜4の破断面を電子顕微鏡にて観察し(倍率;5000倍)、シリコーンレジンのドメインの大きさを測定した。このとき、任意の3箇所における測定値の平均値をドメインサイズとした。結果を表1に示した(図1参照)。
【0073】
(シリコーンレジンのフェニル基の濃度測定)
使用したシリコーンレジン1〜4のプロトンNMRを測定し、プロトン比から各シリコーンレジンのフェニル基濃度を算出した。結果を表1に示した。
【0074】
(シリコーンレジンの重量平均分子量測定)
前記シリコーンレジンの重量平均分子量は、使用したシリコーンレジン1〜4をテトラヒドロフラン溶媒に溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたシリコーンレジンの分子量分布のクロマトグラムを標準ポリスチレンの検量線から算出して求めた。結果を表1に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、フェニル基濃度が高い(50質量%以上)シリコーンレジン3、4は、重量平均分子量が5000以下であり、またドメインサイズが小さい(5μm以下)ことが確認された。
【0077】
(実施例1〜5、及び比較例1〜3)
前記シリコーンレジン1〜4を用い、(A)エポキシ樹脂として前記エポキシ樹脂1、2及び日本化薬株式会社製の商品名「CER−3000L」(エポキシ当量:240g/eq、軟化点:91℃)(以下、「エポキシ樹脂3」と記す。)と、(B)硬化剤として前記硬化剤1及び水酸基当量115のノボラック型フェノール樹脂である日立化成工業株式会社製の商品名「HPM−J3」(以下、「硬化剤2」と記す。)と、前記硬化促進剤1と、カップリング剤(エポキシシラン)としてカップリング剤1[γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウシリコーン株式会社製の商品名「A−187」)、カップリング剤2[メチルトリメトキシシラン(東レダウシリコーン株式会社製の商品名「A−163」)と、(E)無機充填剤として球状溶融シリカ(平均粒径14.5μm、比表面積2.8m/g)と、その他の添加剤として添加剤1(シリコーンオイル)、ヘキストワックス(クラリアント社製の商品名「HW−E」)と、カーボンブラック(三菱化学株式会社製の商品名「MA−600MJ」)とを表2、3に示す各種組成にて混合した。
そして、配合された各種組成物を、混練温度80℃、混練時間10分間の条件下にてロール混練して、各種封止用エポキシ樹脂組成物を得た。これらを実施例1〜5及び比較例1〜3とした。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
次に、上述のように作製された封止用エポキシ樹脂組成物について、以下の試験により特性をそれぞれ求め、これを実施例1〜5及び比較例1〜3とした。この結果を表4、5に示す。
(1)スパイラルフロー
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ樹脂組成物をトランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の成形条件下で成形し、得られた成形体の流動距離(cm)を求めた。
【0081】
(2)熱時硬度
先ず、各封止用エポキシ樹脂組成物を上記成形条件と同一条件下で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形した。
成形後、直ちにショアD型硬度計を用いて熱時硬度を測定した。
【0082】
(3)吸水率
各封止用エポキシ樹脂組成物により、上記成形条件と同一条件下で、直径50mm×3mmの円板状試験片を作製した。
得られた円板状試験片を、120℃、1atm、20時間の条件下で吸湿させて、吸湿前後の吸水率を求めた。
【0083】
(4)曲げ試験(弾性率)
各封止用エポキシ樹脂組成物により、上記成形条件と同一条件下にて試験片を作製した(寸法70mm×10mm×3mm)。
次いで、A&D社製のテンシロン(商品名)を用い、室温(25℃)及び260℃の温度条件下で、作製した各試験片についてJIS−K−6911規格に準拠した3点支持型曲げ試験をそれぞれ行い、下記式(I)から、曲げ弾性率Eを求めた。ここで、スパンlは48mmとし、試験片の幅wは10mm、試験片の厚さhは3mmとされる。
【0084】
【数1】

【0085】
上記式(I)中、Eは曲げ弾性率(Pa)、pはロードセルの値(N)、yは変化量(mm)をそれぞれ表す。
【0086】
(5)耐はんだリフロー性(Cuリードフレーム)
8mm×10mm×0.4mmのシリコンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージ(QFP)(リードフレーム材質:銅合金、ダイパッド部上面およびリード先端銀メッキ処理品)を、前記封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、上記成形条件にて成形し、後硬化して成形体を得た。
【0087】
続いて、85℃、65%RH、168hrの条件下で加湿した。
そして、所定時間毎に処理温度を235℃及び245℃とし、10秒間リフロー処理を行って、成形体におけるクラックの有無を目視により観察して、耐はんだリフロー性を評価した。評価に際し、クラック発生率(クラック発生パッケージ数/試験パッケージ数(5個))を指標として用いた。
【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
表4に示すように、フェニル基濃度が高い(50質量%以上)シリコーンレジン3、4を含む実施例1〜5では、高温時の弾性率が良好に保たれ、耐はんだリフロー性の向上が見られた。特に、実施例1、3の結果から、(A)エポキシ樹脂に対するシリコーンレジンの配合比を高めることにより、耐リフロー性の向上がより効果的に図られることがわかった。
これに対して、シリコーンレジンが入っていない比較例1では、高温弾性率が高く、耐リフロー性が悪かった。
また、フェニル基濃度が低いシリコーンレジン1を用いた比較例2においては、十分な分散性が得られず、封止用エポキシ樹脂組成物の耐はんだリフロー性の向上が見られなかった。更に、重量平均分子量が5000を超え、ドメインサイズが大きいシリコーンレジン2を用いた比較例3では、十分な耐はんだリフロー性が得られなかった。
【符号の説明】
【0091】
1:シリコーンレジン
2:ドメインサイズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、(D)下記一般式(1)で表される構成単位を有し、且つ1分子中にフェニル基を50質量%以上含むシリコーンレジンと、(E)無機充填剤と、を含有し、前記(D)シリコーンレジンが、下記一般式(1)中のRがフェニル基である構成単位を少なくとも1つ含む封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(上記一般式(1)中、Rは、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基、水酸基のいずれかである。nは正の整数である。)
【請求項2】
前記(D)シリコーンレジンの重量平均分子量が、5000以下である請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
硬化した封止用エポキシ樹脂組成物中における前記(D)シリコーンレジンのドメインサイズが、5μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対する前記(D)シリコーンレジンの含有量が、10質量部〜30質量部である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107209(P2012−107209A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226175(P2011−226175)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】