説明

射出成形機の型開閉方法およびその装置

【課題】 射出成形機の型開閉装置の減速動作を効果的に制御する。
【解決手段】 固定金型26aが装着された固定プラテン12に対して、可動金型26bが装着された可動プラテン14を進退させる型開閉シリンダ16を備えた射出成形機の型開閉装置である。型開閉シリンダ16に作動油を供給する双方向吐出ポンプ20と、双方向吐出ポンプ20を回転駆動するサーボモータ52とを有し、型開閉シリンダ16は、ロッド側油室34が第1開閉弁18Bを介して双方向吐出ポンプ20と第2開閉弁18Aを介してタンク38とに接続され、ヘッド側油室32が第3開閉弁18Cを介して双方向吐出ポンプ20と第4開閉弁18Dを介してタンク38とに接続され、双方向吐出ポンプ20は、第1開閉弁18Bと第3開閉弁18Cとを接続した連結油路37に接続してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の型開閉方法およびその装置に係り、特にプラスチックやアルミの製品を成形する射出成形機の型開閉時の減速動作に好適な射出成形機の型開閉方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックやアルミなどの射出成形機は、固定金型が装着された固定プラテンに対して可動金型が装着された可動プラテンを型開閉シリンダによって開閉移動させ、型締シリンダによって型締力を発生させるものがある。
従来、型開閉シリンダによる型閉は、一定速度で可動プラテンを固定プラテンに向けて移動し、両者に取り付けた金型が接触する寸前で停止させ、次工程の型締め動作を行っていた。
【0003】
ところで、射出成形機は成形作業のサイクルアップのために、金型移動時に型開閉シリンダの移動速度の高速化を図る必要がある。そこで、型開閉シリンダを油圧で制御することにより金型の高速移動が可能となった。しかし、型開閉シリンダを終始高速移動させると型閉の際、可動金型が固定金型と衝突してしまう。よって、型閉動作時に可動金型を高速移動させて固定金型に接近したところで移動速度を低速に切り換えるための減速手段が必要となる。
【0004】
しかし、従来の型開閉装置は、型開閉シリンダへの入り側の作動油を供給油路に設置した制御弁によって流量制御している。このため、減速は摺動部の摩擦力のみであり、減速度が小さく、磨耗係数の変化で型開閉動作が不安定となってしまう。そうすると、金型同士の衝突や成形品の取り出し位置となる型開き位置が不安定となる。よって、型開閉の高速運転が困難となりサイクルタイムが大きくなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1には、図6に示すような型開閉シリンダを減速するようにしている。図6は射出成形機の金型開閉装置の説明図を示す。図示のように金型開閉装置101はベース上の一端部に基部がキー止めされて立設している固定プラテン102と、この固定プラテン102に対向する位置に同じく立設配置され、前記ベース上を固定プラテン102側に摺動可能な可動プラテン104とを備えている。固定プラテン102と可動プラテン104の各々には型開閉シリンダ106のシリンダ部106aと、ピストンロッド部106bが接続している。型開閉シリンダ106のシリンダ部106aは内部がピストン部107によってヘッド側油室108とロッド側油室110に分けられている。それぞれの油室には油室に作動油を供給する油圧ポンプ112を備えた油路と、油室から排出する作動油を受けるタンク118を備えた油路とが切換可能に接続している。同図はロッド側油室110に油圧ポンプ112を接続し、ヘッド側油室108にタンク118を接続している場合を示す。
【0006】
また、固定プラテン102と可動プラテン104にはそれぞれ固定金型120aと可動金型120bが取付けられている。可動プラテン104を固定プラテン102側に移動する方向を型閉とし、可動プラテン104が固定プラテン102から離間する方向を型開とし、型開閉シリンダ106の伸縮により金型120の開閉をなす構成としている。
【0007】
さらに、金型開閉装置101は金型開閉移動時の作動油の制御に可動プラテン104の位置を検出する位置センサ122と、シリンダ圧力を検出する圧力センサ124とから位置信号と圧力を検知して制御する図示しない制御部と、油室から排出する作動油を受けるタンク118を備えた油路上に流量調整弁116とを設けている。制御部は作動油の流出入量を制御する信号を流量調整弁116に送り、型開閉シリンダ106に供給する作動油の流出入を制御している。この際、制御部は、流量調整弁116を介して戻り側の作動油流量を制御して、油圧により積極的に型開閉シリンダ106にブレーキを効かし、減速効率を上げて型開閉シリンダ106の高速化を図っている。また、金型開閉装置101は、作動油の特性変化に対して複雑な計算式を用いて油量の制御を行いブレーキ動作の安定化を図っている。
【特許文献1】特開平6−8296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6の金型開閉装置では、型閉方向の高速運転時にブレーキをかける場合、ヘッド側油室から流出する作動油を流量調整弁で絞るため、可動プラテンの運動エネルギーが作動油の熱に変換されて温度が上昇する。そうすると作動油の粘度変化とキャビテーション発生による劣化が発生してしまう。
このため作動油の粘性が変化して、シリンダ部の粘性抵抗やピストン部での漏れ量が変化する。このように、流量調整弁で作動油の流れを絞って制御する方法は、作動油の粘度変化の影響を受けやすく、型開閉シリンダの減速制御が不安定である。
【0009】
また、特許文献1に示す減速制御方法では、センサによる可動プラテンの位置と吐出側油室の圧力検出値のフィードバック制御を行うために、複雑な制御理論あるいは高速演算器が必要となり、実際の設備機器に適用することが困難である。
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を改善し、射出成形機の金型開閉の減速動作を効果的に制御する型開閉方法およびその装置を提供することを目的としている。また、型開閉装置の稼動運転の省エネ化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る射出成形機の型開閉方法は、固定金型が装着された固定プラテンに対して、可動金型が装着された可動プラテンを型開閉シリンダによって進退させる射出成形機の型開閉方法であって、型開閉動作の減速時に前記型開閉シリンダからタンクに戻る作動油を、前記型開閉シリンダに前記作動油を供給する前記油圧ポンプを経由させるとともに、前記油圧ポンプの回転速度を前記油圧ポンプに接続したサーボモータを介して制御し、前記可動プラテンを減速制御する、ことを特徴としている。
この場合において、前記可動プラテンの減速制御時に、前記油圧ポンプを経由する前記作動油のエネルギーを、前記サーボモータを介して電源側に回生することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る射出成形機の型開閉装置は、固定金型が装着された固定プラテンに対して、可動金型が装着された可動プラテンを進退させる型開閉シリンダを備えた射出成形機の金型開閉装置であって、前記型開閉シリンダに作動油を供給する双方向吐出ポンプと、前記双方向吐出ポンプを回転駆動するサーボモータとを有し、前記型開閉シリンダは、ロッド側油室が第1開閉弁を介して前記双方向吐出ポンプと第2開閉弁を介してタンクとに接続され、ヘッド側油室が第3開閉弁を介して前記双方向吐出ポンプと第4開閉弁を介して前記タンクとに接続され、前記双方向吐出ポンプは、前記第1開閉弁と前記第3開閉弁とを接続した連結油路に接続してあることを特徴としている。
【0012】
この場合において、前記サーボモータは、前記可動プラテンの減速時に前記双方向吐出ポンプを流れる前記作動油のエネルギーにより発生する回生エネルギーを電源側に回生する電源回生装置に接続してあることを特徴としている。
また、前記双方向吐出ポンプは前記型開閉シリンダ側の吐出の圧力上昇に応じて吐出量を減少させる機能を備えた可変式ポンプであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型開閉動作の減速時において型開閉シリンダから流出する作動油がタンクに戻る際に双方向吐出ポンプを経由して戻し、双方向吐出ポンプの回転速度をサーボモータで制御するようにしている。
このため、作動油の粘性の変化による影響を抑制して金型開閉のブレーキ動作が安定化するため高速型開閉が可能となり、型開閉時間を短縮して成形のサイクルタイムの向上を図ることができる。また、油圧ポンプに接続するサーボモータの速度・トルク制御によりポンプの回転数を制御して作動油の流速を制御することにより型開閉シリンダを穏やかに減速することができる。
【0014】
また、型開閉シリンダから流出する作動油がタンクに戻る際に排出管上に設けた流量調整弁で流量制御する必要がない。したがって、流量の絞りにより発生していた摩擦熱による作動油の温度上昇と作動油の劣化を防止することができる。
さらに、型開閉シリンダのブレーキ時にシリンダから流出する作動油をポンプを経由してタンクに排出させる際に可動プラテンの運動にともなう作動油の運動エネルギーを電源回生させている。これにより、型開閉動作の省エネ化を図ることができる。
【0015】
また、双方向吐出ポンプは、シリンダ側の吐出圧力が上昇するに応じて吐出量が減少する機能を備えることにより、圧力上昇に必要なトルクが小さくなるため、ポンプに接続するサーボモータの容量を小型化することができる。このため型開閉装置の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の射出成形機の型開閉方法およびその装置の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は実施形態に係る射出成形機の型開閉装置の構成概略を示す図である。図2は実施形態に係る開閉弁の開閉動作を示す図である。
【0017】
図示のように型開閉装置10はベース11上の一端部に基部がキー止めされて立設している固定プラテン12と、この固定プラテン12に対向する位置に同じく立設配置され前記ベース11上を固定プラテン12側に摺動可能な可動プラテン14とを備えている。さらに型開閉装置10は型開閉シリンダ16と開閉弁18(18A〜18D)と双方向吐出ポンプ20とを基本的な構成としている。
【0018】
型開閉シリンダ16は、シリンダ部22が固定プラテン12上に固定されるとともに、ピストンロッド部24の先端が可動プラテン14上に固定されている。固定プラテン12及び可動プラテン14にはそれぞれ固定金型26aと可動金型26bが設置されている。型開閉シリンダ16のシリンダ部22は内部がピストン30を介してヘッド側油室32とロッド側油室34とに区分されている。
【0019】
なお、実施形態に係る型開閉シリンダ16は、ピストン30のロッド側とヘッド側の面積比が1:2に設定してある。
それぞれの油室には作動油が流出入する油路36(36a、36b)が接続している。また、型開閉シリンダ16は後述する双方向吐出ポンプ20から供給される作動油によってピストン30が進退移動することにより金型26(26a、26b)の開閉動作をなす。
【0020】
金型26は、型開閉シリンダ16により閉じられた後、図示しない型締装置により型締力が負荷され射出装置から溶融状態の樹脂等が金型内に射出される。金型26は、樹脂等の冷却固化後に開かれ、ロボットアーム等を用いて成形品が取り出される。
前記ヘッド側油室32およびロッド側油室34に接続する油路36は分岐させて、それぞれの油路に開閉弁(圧力開閉弁)18(18A〜18D)を設置している。
【0021】
前記ロッド側油室34に接続した油路36aの一方の分岐油路は、第2圧力開閉弁18Aを介してタンク38に接続している。また、油路36aの他方の分岐油路は第1圧力開閉弁18Bを介して後述する連結油路37の一端に接続している。
連結油路37は、他端が油路36bの一方の分岐油路に設けた第3圧力開閉弁18Cに接続するとともに、中間部に双方向吐出ポンプ20が接続している。また、油路36bの他方の分岐油路は、第4圧力開閉弁18Dを介してタンク38に接続している。
【0022】
そして、油路36a、圧力開閉弁18B、連結油路37、圧力開閉弁18C、油路36bはランアラウンド油路を構成している。この構成によりヘッド側油室32から排出した作動油をロッド側油室34に戻すことによって作動油の供給量を増大させることができ、例えば、型開時に型開閉シリンダ16の高速移動を行うことが可能となる。
【0023】
圧力開閉弁18A〜18Dは、実施形態の場合、ノーマルオープンタイプのカートリッジ型の弁を用いている。これらの圧力開閉弁18A〜18Dにはパイロット油圧ポンプ48を接続したパイロットライン44を分岐させて接続している。各分岐には、電磁切替弁46が設けてあり、パイロット油圧ポンプ48によって発生させたパイロット圧をオン、オフさせて、通常オープン状態の圧力開閉弁18の開閉切替をなす構成としている。またパイロットライン44には分岐油路を介してリリーフ弁50が設けてあり、パイロット圧が一定値以上にならないように設定することができる。
【0024】
なお、圧力開閉弁18は、パイロット圧のオン、オフによって内部のスプール19が進退移動して油路の開閉をなす構成としている。また、この圧力開閉弁18を用いると大容量の油量を処理することができるので作動油の流量が多い大型の型開閉シリンダを用いる場合に好適である。
前記双方向吐出ポンプ20は、サーボモータ52が接続してあり、サーボモータ52によって回転駆動される。サーボモータ52は前記双方向吐出ポンプ20の回転数を制御して双方向吐出ポンプ20から型開閉シリンダ16に供給する作動油量を調整し、可動プラテン14の速度を制御する。さらに、双方向吐出ポンプ20は、他方の吐出口がタンク38に接続してあり、タンク38内の作動油を吸引して型開閉シリンダ16に供給する。
【0025】
前記双方向吐出ポンプ20を駆動制御するサーボモータ52には、エンコーダ53及びモータ制御部58が接続してある。エンコーダ53はモータの回転数を検知してモータ制御部58に入力する。モータ制御部58は、エンコーダ53の検出信号に基づいてサーボモータ52をフィードバック制御して、サーボモータ52の回転数を制御し、双方向吐出ポンプ20の作動油の供給量を制御することができる。また、モータ制御部58はサーボモータ52に供給する電力を介してサーボモータ52の出力トルクを制御している。
【0026】
また、前記双方向吐出ポンプ20は、図3に示す双方向吐出ポンプの吐出量と圧力の関係を備えたポンプを用いることもできる。同図は横軸に双方向吐出ポンプ20に接続する型開閉シリンダ16側の圧力(MPa)、縦軸にポンプ吐出量(cc/rev)をとっている。図示のように実施形態の双方向吐出ポンプ20は予め定めた設定圧力に達すると、ポンプ出口側の圧力上昇に応じて斜板角が変化して吐出量が次第に減少する。
【0027】
また、双方向吐出ポンプ20は吸入側と吐出側との圧力差(吐出圧力)p、トルクT、1回転当たりの吐出量qとの間に次式の関係がある。
【数1】

すなわち、双方向吐出ポンプ20は吐出圧力pの上昇に応じて吐出量qが減少するので、回転に必要なトルクTが大きくならず、サーボモータ52の必要出力トルクを小さくでき、モータの小型化と低コスト化を図ることができる。
【0028】
モータ制御部58は後述する双方向吐出ポンプ20の逆回転によって生じる回生エネルギーの抵抗回生または電源回生を行う。図4に抵抗回生及び電源回生の説明図を示す。同図(1)は抵抗回生の回路図を示し、同図(2)は電源回生の回路図を示す。まず、抵抗回生は、三相交流電源200を直流電圧に変換するコンバータ202と、このコンバータ202の直流電圧を交流電圧に変換してサーボモータ52に供給するインバータ204と、サーボモータ52において発生させた回生エネルギー(電流)を消費する抵抗器206と、抵抗器206に回生エネルギーを通すスイッチ手段208と、コンバータ202の出力した直流電流を平滑化する平滑コンデンサ210とを備えている。エネルギーは抵抗器の熱として大気中に放出される。
【0029】
一方、電源回生は、大容量のトランジスタとダイオードを備えたコンバータ202aと、前述の平滑コンデンサ210及びインバータ204とを備えている。エネルギーは電源に回生されるので、再利用できる。電源回生は装置が高価になるので、一般的には抵抗回生が用いられる。
上記構成による射出成形機の型開閉装置10の型開閉方法を以下説明する。まず、射出成形の可動金型26bを型閉方向に移動させる型閉動作について説明する。
【0030】
可動金型26bを型閉方向に前進させる場合、パイロットライン44の電磁切替弁46の切替により圧力開閉弁18A、圧力開閉弁18Cにパイロット圧を与え、圧力開閉弁18B、圧力開閉弁18Dのパイロット圧を遮断する。すると圧力開閉弁18Aと圧力開閉弁18Cが閉塞する。サーボモータ52を介して双方向吐出ポンプ20を正方向に回転駆動する。双方向吐出ポンプ20は、吐出口21bからタンク38の作動油を吸収して吐出口21aから吐出する。
【0031】
そうすると、図2(1)に示すように油路36aを介してロッド側油室34に作動油が供給される。作動油が型開閉シリンダ16のロッド側油室34に供給されると、ピストン30が同図(1)の右方向に移動するとともに、ピストンロッド部24を引き込み、可動金型26bと可動プラテン14とが一体に固定プラテン12側に移動する。ヘッド側油室32内の作動油は油路36b、圧力開閉弁18Dを介してタンク38に戻される。サーボモータ52の回転速度を制御し、可動プラテン14の速度を制御する。
【0032】
また、型開閉シリンダ16はロッド側油室34とヘッド側油室32との投影断面積の比が1:2である。ロッド側油室34の面積の方が小さいため、双方向吐出ポンプ20からロッド側油室34に供給される作動油が僅かでも型開閉シリンダ16の型閉前進の高速動作を成すことができる。
【0033】
次に、可動金型26bが固定金型26aに近付く寸前で高速移動する型開閉シリンダ16に高速ブレーキをかける場合、電磁切替弁46を切替えて、圧力開閉弁18A、圧力開閉弁18Dにパイロット圧を与え、圧力開閉弁18B、圧力開閉弁18Cのパイロット圧を遮断する。これにより、圧力開閉弁18Dは閉塞し圧力開閉弁18Cは油路36b内の圧力で開放する。そうすると図2(2)に示すように、作動油は双方向吐出ポンプ20に流入し、双方向吐出ポンプ20を逆回転させて吐出口21bに接続するタンク38へ戻される。このとき、双方向吐出ポンプ20に接続するサーボモータ52も双方向吐出ポンプ20の逆回転に伴って逆回転する。
【0034】
そこで、モータ制御部58は、サーボモータ52に取り付けたエンコーダ53の出力信号に基づいて、サーボモータ52の出力トルクを調整して逆回転数を制御し、双方向吐出ポンプ20の逆回転数を制御する。双方向吐出ポンプ20の逆回転速度を制御すると、連結油路37、油路36a、油路36b及びヘッド側油室32、ロッド側油室34の圧力が同じように上昇するが、油室の面積差により型開閉シリンダ16にブレーキが働く。なお、双方向吐出ポンプ20の逆回転速度及び作動油の圧力を制御することにより、任意の制動力を型開閉シリンダ16に与えることが可能となる。
【0035】
また、作動油が双方向吐出ポンプ20に逆流して双方向吐出ポンプ20が逆回転する場合、双方向吐出ポンプ20に接続するサーボモータ52は一時的に発電機となる。
そこで、型開閉シリンダ16から排出する作動油が双方向吐出ポンプ20に流れこみ双方向吐出ポンプ20を逆回転させる際に、モータ制御部58によりサーボモータ52における発電エネルギーとして回生させる。
【0036】
サーボモータ52の軸が外力により回転力を受けると、サーボモータ52は発電機となってインバータへエネルギーを返そうとする。そこで、双方向吐出ポンプ20の逆回転時にサーボモータ52の発電で発生させた電流を、図4(1)の抵抗器206に流すことにより、可動プラテン14の運動エネルギーを回生抵抗で発熱させて空気中に放熱することができる。これにより、作動油の温度上昇を防止し、キャビテーション発生による劣化のおそれがない。
【0037】
また、発生する回生エネルギーを電源回生する場合には、サーボモータ52に発生した回生エネルギーが図4(2)に示した電源回生のインバータ204に流れ込み、大容量のトランジスタを使用したコンバータ202aを介して三相交流電源200側に回生させる。これにより作動油の劣化が防げるとともに省エネ効果がある。
なお、モータ制御部58は発生する回生エネルギーの量に応じて、抵抗回生と電源回生を併用し、または、抵抗回生あるいは電源回生のいずれか一方で回生するよう任意に選択できる切替え手段を備えた構成としてもよい。
【0038】
次に、型開閉シリンダ16の高速ブレーキ後、可動金型26b及び固定金型26aが低速で型合わせできるように型閉低速ブレーキをかける場合、電磁切替弁46を切替えて圧力開閉弁18B、圧力開閉弁18Dにパイロット圧を与え、圧力開閉弁18A、圧力開閉弁18Cのパイロット圧を遮断する。これにより、圧力開閉弁18Dが閉塞し、圧力開閉弁18Cは油路36b内の圧力で開放する。そうすると図2(3)に示すように、作動油は双方向吐出ポンプ20に流入し、双方向吐出ポンプ20を逆回転させて吐出口21bに接続するタンク38へ戻される。このとき、双方向吐出ポンプ20に接続するサーボモータ52も双方向吐出ポンプ20の逆回転に伴って逆回転する。
【0039】
そして前述のモータ制御部58は、前記と同様にしてサーボモータ52を介して双方向吐出ポンプ20の逆回転数を制御する。一方、型開閉シリンダ16のピストンロッド部24が慣性によりヘッド側油室32に移動するのに伴い、タンク38内の作動油は型開閉シリンダ16のロッド側油室に流入する。これにより、型開閉シリンダ16の低速ブレーキを行うことができる。
【0040】
次に射出成形後における射出成形の可動金型26bの型開方向に移動させる型開動作について説明する。
可動金型26bを型開方向に前進させる場合、パイロットライン44の電磁切替弁46の切替により圧力開閉弁18B、圧力開閉弁18Dにパイロット圧を与え、圧力開閉弁18A、圧力開閉弁18Cのパイロット圧を遮断する。サーボモータ52を介して双方向吐出ポンプ20を正方向に回転駆動する。双方向吐出ポンプ20は、吐出口21bからタンク38の作動油を吸収して吐出口21aから吐出する。そうすると、図2(4)に示すように油路36bを介してヘッド側油室32に作動油が供給される。作動油が型開閉シリンダ16のヘッド側油室32に供給されると、ピストン30が同図(4)の左方向に移動するとともに、ピストンロッド部24を押し出し、可動金型26bと可動プラテン14とが一体に固定プラテン12側から離間する方向に移動して金型26が開かれる。ロッド側油室34内の作動油は油路36a、圧力開閉弁18Aを介してタンク38に戻される。
【0041】
次に、可動金型26bを型開高速前進する場合、前述のように型開閉シリンダ16はロッド側油室34とヘッド側油室32との投影断面積の比が1:2であるため、ヘッド側油室32に供給する作動油の量はロッド側油室34よりも多く必要となる。そこで、電磁切替弁46を切替えて、圧力開閉弁18A、圧力開閉弁18Dにパイロット圧を与え、圧力開閉弁18B、圧力開閉弁18Cのパイロット圧を遮断する。これにより、圧力開閉弁18Aは閉塞し圧力開閉弁18Bは油路36a内の圧力で開放する。そうすると図2(5)に示すように、ロッド側油室34内の作動油は双方向吐出ポンプ20から供給される作動油とともに圧力開閉弁18Cに流入する。そのため、ロッドを高速前進することができる。
【0042】
このように型開閉シリンダ16のロッド側油室34から流出する作動油を圧力開閉弁Bと圧力開閉弁Cを経由してヘッド側油室32に還流するランアラウンド油路を形成することによって、双方向吐出ポンプ20の最大吐出量の2倍の作動油を供給できるため、型開の高速動作が可能となる。
【0043】
可動金型26bが型開位置(製品取出)の近くまで移動したならば、電磁切替弁46を切替えて圧力開閉弁18A、圧力開閉弁18Cにパイロット圧を与え、圧力開閉弁B、圧力開閉弁18Dのパイロット圧を遮断する。すると図2(6)に示すように、作動油は双方向吐出ポンプ20に流入し、双方向吐出ポンプ20を逆回転させて吐出口21bに接続するタンク38に戻される。このとき、双方向吐出ポンプ20に接続するサーボモータ52も双方向吐出ポンプ20の逆回転に伴って逆回転する。
【0044】
そしてモータ制御部58は、前記と同様にして、サーボモータ52を介して双方向吐出ポンプ20の逆回転数を制御する。一方、型開閉シリンダ16のピストンロッド部24が慣性で左方向に移動することにより、タンク38内の作動油がヘッド側油室32内に供給される。これにより、型開閉シリンダ16の型開ブレーキを行うことができる。
【0045】
このように、型開閉シリンダ16の加速及び等速時の速度制御は、サーボモータ52の回転数制御により双方向吐出ポンプ20から型開閉シリンダ16へ吐出される作動油の流量を制御することができる。また、減速時の速度制御は、戻り側の作動油の流量をサーボモータ52の回転数制御で制御することができる。さらに、サーボモータ52の回転数制御は、いずれもモータに付加したエンコーダ53を用いてフィードバック制御することができる。
【0046】
ところで本発明は、型開閉装置10の加速時と等速時におけるサーボモータ52の出力トルク(モータ電流より算出)から可動部の動特性を算出し、減速時の制御に反映して型開閉シリンダ16の減速動作を安定化することができる。より具体的な方法は、等速時のサーボモータ52の出力トルクより可動プラテン14の摺動抵抗を算出する。そして、加速時のモータトルクと加速度により可動プラテン14の質量を算出する。算出した摺動抵抗及び質量とモータ出力から必要制動距離を算出し、減速開始位置を決定する。
【0047】
図5は実施形態に係る型締装置の構成概略の変形例を示す図である。なお、図1と同一の構成については、同一の作用効果を成すため同一符号を付しその説明を省略する。図1に示す型開閉装置10と構成上相違するのは圧力開閉弁18及び電磁切替弁46に替えて電磁開閉弁60(60A,60B,60C,60D)を用いている点である。この電磁開閉弁60を用いることによりパイロット油圧ポンプ48、電磁切換弁46、リリーフ弁50、パイロットライン44が不要となり、装置全体を小型化することができる。これは、作動油流量の小さい小型機に最適である。
さらに、作動油の流出配管に1個の電磁切替弁60で流量の容量が確保できない場合には、電磁切替弁60を複数、例えば2個並列して接続するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の射出成形機の型開閉制御方法及びその装置は射出成形機の金型開閉に限定されるものではなく各種機械プレスの開閉シリンダ移動の減速時あるいは型開閉高速時に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態に係る型開閉装置の構成概略を示す図である。
【図2】開閉弁の開閉動作を示す図である。
【図3】双方向吐出ポンプの吐出量と圧力の関係を示す図である。
【図4】抵抗回生及び電源回生の説明図である。
【図5】実施形態に係る型開閉装置の構成概略の変形例を示す図である。
【図6】従来の射出成形機の構成概略を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10………型開閉装置、11………ベース、12………固定プラテン、14………可動プラテン、16………型開閉シリンダ、18………開閉弁(圧力開閉弁)、20………双方向吐出ポンプ、21………吐出口、22………シリンダ部、24………ピストンロッド部、26………金型、30………ピストン、32………ヘッド側油室、34………ロッド側油室、36………油路、37………連結油路、38………タンク、44………パイロットライン、46………電磁切替弁、48………パイロット油圧ポンプ、50………リリーフ弁、52………サーボモータ、53………エンコーダ、58………モータ制御部、60………電磁開閉弁、101………金型開閉装置、102………固定プラテン、104………可動プラテン、106………型開閉シリンダ、108………ヘッド側油室、110………ロッド側油室、112………油圧ポンプ、114………制御弁、116………流量調整弁、118………タンク、120………金型、122………位置センサ、124………圧力センサ、200………三相交流電源、202………コンバータ、204………インバータ、206………抵抗器、208………スイッチ手段、210………平滑コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が装着された固定プラテンに対して、可動金型が装着された可動プラテンを型開閉シリンダによって進退させる射出成形機の型開閉方法であって、
型開閉動作の減速時に前記型開閉シリンダからタンクに戻る作動油を、前記型開閉シリンダに前記作動油を供給する油圧ポンプを経由させるとともに、
前記油圧ポンプの回転速度を前記油圧ポンプに接続したサーボモータを介して制御し、前記可動プラテンを減速制御する、
ことを特徴とする射出成形機の型開閉方法。
【請求項2】
前記可動プラテンの減速制御時に、前記油圧ポンプを経由する前記作動油のエネルギーを、前記サーボモータを介して電源側に回生することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の型開閉方法。
【請求項3】
固定金型が装着された固定プラテンに対して、可動金型が装着された可動プラテンを進退させる型開閉シリンダを備えた射出成形機の型開閉装置であって、
前記型開閉シリンダに作動油を供給する双方向吐出ポンプと、
前記双方向吐出ポンプを回転駆動するサーボモータとを有し、
前記型開閉シリンダは、ロッド側油室が第1開閉弁を介して前記双方向吐出ポンプと第2開閉弁を介してタンクとに接続され、ヘッド側油室が第3開閉弁を介して前記双方向吐出ポンプと第4開閉弁を介して前記タンクとに接続され、
前記双方向吐出ポンプは、前記第1開閉弁と前記第3開閉弁とを接続した連結油路に接続してあることを特徴とする射出成形機の型開閉装置。
【請求項4】
前記サーボモータは、前記可動プラテンの減速時に前記双方向吐出ポンプを流れる前記作動油のエネルギーにより発生する回生エネルギーを電源側に回生する電源回生装置に接続してあることを特徴とする請求項3に記載の射出成形機の型開閉装置。
【請求項5】
前記双方向吐出ポンプは前記型開閉シリンダ側の吐出の圧力上昇に応じて吐出量を減少させる機能を備えた可変式ポンプであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の射出成形機の型開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−256179(P2006−256179A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78471(P2005−78471)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】