導波管ホーンアレイアンテナおよびレーダ装置
【課題】 結合量の調整幅を広く取ることができ、且つ簡素な構造の導波管ホーンアレイアンテナを提供する。
【解決手段】 導体部材1には、所定方向に延びる直線状の給電導波管2と、該給電導波管2に結合し、この給電導波管2の延びる方向に管内波長の略1/2の間隔で設置された複数のホーンアンテナ3a〜3c,4a,4bを備える。これらホーンアンテナ3a〜3c,4a,4bは、それぞれホーン31a〜31c,41a,41bと結合導波管32a〜32c,42a,42bとから形成され、結合導波管32a〜32c,42a,42bは給電導波管2に対して部分的に入り込む形状に設置されている。この入り込みより形成される空間結合部30a〜30c,40a,40bの大きさを変えることで、給電導波管2と結合導波管32a〜32c,42a,42bのそれぞれとの結合量が変化する。
【解決手段】 導体部材1には、所定方向に延びる直線状の給電導波管2と、該給電導波管2に結合し、この給電導波管2の延びる方向に管内波長の略1/2の間隔で設置された複数のホーンアンテナ3a〜3c,4a,4bを備える。これらホーンアンテナ3a〜3c,4a,4bは、それぞれホーン31a〜31c,41a,41bと結合導波管32a〜32c,42a,42bとから形成され、結合導波管32a〜32c,42a,42bは給電導波管2に対して部分的に入り込む形状に設置されている。この入り込みより形成される空間結合部30a〜30c,40a,40bの大きさを変えることで、給電導波管2と結合導波管32a〜32c,42a,42bのそれぞれとの結合量が変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の導波管ホーンアンテナを給電導波管に所定配列パターンで設置なる導波管ホーンアレイアンテナ、およびこれを用いて物標探知を行うレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯を用いたレーダ装置等においては、マイクロストリップ線路等の平面回路よりも導波管の方が、伝送損失が少ないことを利用して、平面回路型のアレイアンテナよりも導波管アレイアンテナが多く用いられている。
【0003】
従来の導波管アレイアンテナには、特許文献1に示すように、給電導波管の一壁面から垂直にT型分岐して接続導波管を接続した構造のものがある。また、特許文献2に示すように、給電導波管とそれぞれがホーンに接続する複数の接続導波管とをそれぞれの延びる方向が直交する構造に配置するとともに、給電導波管の一側壁と接続導波管の一側壁とを当接させ、この当接させた壁に結合孔を形成したものがある。
【特許文献1】特開平10−32423号公報
【特許文献2】特開2000−9822公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前述の特許文献1および特許文献2に記載された従来の導波管アレイアンテナでは、給電導波管と接続導波管との結合量が、これらの導波管同士が接続する平面部分に形成された結合孔の開口面積に依存する。一方で、給電導波管と接続導波管との形状は伝送するミリ波信号により決定させるので、給電導波管と接続導波管との接続面積は広いものではなく、さらにこの接続部内で結合孔を形成するので、結合孔の形状が自ずと制限される。これにより、前述の接続面に結合孔を設けて給電導波管と接続導波管とを結合させる構造では、結合量の調整幅を広く取ることができない。
【0005】
また、特許文献2に記載された導波管アレイアンテナでは、必要部品が多く、且つ構造が複雑になるので、小型の導波管アレイアンテナを形成することが難しい。
【0006】
したがって、この発明の目的は、結合量の調整幅を広く取ることができ、且つ簡素な構造の導波管ホーンアレイアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、給電導波管と、該給電導波管の電磁波搬送方向に垂直な方向を電磁波搬送方向とする複数の結合導波管、および該複数の結合導波管の給電導波管と対向する端部にそれぞれ設置されたホーンを備えた複数のホーンアンテナと、を備え、複数のホーンアンテナが給電導波管に対して所定の配列で設置されている導波管ホーンアレイアンテナにおいて、複数のホーンアンテナにおけるホーンが設置されていない側の結合導波管の端部を、給電導波管の延びる方向と垂直な方向にて給電導波管へ部分的に入り込んだ形状で設置することを特徴としている。
【0008】
この構成では、複数の結合導波管が給電導波管に対して部分的に入り込む形状、すなわち複数の結合導波管が給電導波管に食い込む形状となる。このため、給電導波管と複数の結合導波管とが互いに共有する結合空間領域が形成される。給電導波管に信号が伝搬されると、この結合空間領域による信号伝送路の乱れにより、給電導波管から結合導波管に伝搬信号(電磁波)が漏れ出す。この漏れ出した信号は結合導波管を伝搬してホーンに導かれて、ホーンから外部に放射される。この際、給電導波管と結合導波管とが空間的すなわち3次元で結合しているので、結合量は2方向の入り込み量により設定される。この2方向とは、給電導波管の延びる方向に垂直で結合導波管の延びる方向に平行な方向、および、給電導波管の延びる方向に垂直で結合導波管の延びる方向に垂直な方向である。
【0009】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、給電導波管の開口面と複数の結合導波管の開口面とが、それぞれの導波管の延びる方向に対して長手方向と短手方向とが有する形状で給電導波管および複数の結合導波管を形成し、給電導波管の長手方向と複数の結合導波管の長手方向とが所定角を有する関係で、給電導波管に複数の結合導波管を設置することを特徴としている。
【0010】
この構成では、給電導波管を伝搬する電磁波の偏波方向と、結合導波管を伝搬してホーンから放射させる電磁波の偏波方向との関係が、前記所定角により設定される。
【0011】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、複数の結合導波管を、給電導波管の延びる方向に給電導波管内を伝搬する電磁波の波長(管内波長)の略1/2の間隔で配置し、且つ、給電導波管の延びる方向に隣り合う結合導波管を、給電導波管の延びる方向に垂直な方向の対向する端部にそれぞれ配置することを特徴としている。
【0012】
この構成では、複数の結合導波管が、給電導波管に対して給電導波管の管内波長の略1/2の間隔で設置され、自由空間の波長よりも短いホーン間隔で配置されることで、各ホーンアンテナからの放射の位相がそろい、グレーティングローブの無い放射効率の高いアンテナが実現できる。
【0013】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、複数のホーンアンテナを、電磁波の放射方向が給電導波管のE面に垂直な方向となる関係で給電導波管に設置し、さらに給電導波管をE面で2分割される形状に形成することを特徴としている。
【0014】
この構成では、E面分割された複数の導体板で給電導波管と複数のホーンアンテナとが形成されるので、分割面からの電磁波の漏れ量が少なく、且つ構造が簡素化される。
【0015】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、複数のホーンアンテナの開口部にそれぞれ対応する複数の誘電体レンズを備え、且つ、これら複数の誘電体レンズを一体成形することを特徴としている。
【0016】
この構成では、ホーンアンテナの開口部に誘電体レンズが備えられることで放射特性が改善され、さらにこの誘電体レンズが一体形成されることで構造が簡素化される。
【0017】
また、この発明のレーダ装置は、前述の導波管ホーンアレイアンテナを備え、この導波管ホーンアレイアンテナで送受信する電磁波を用いて物標探知を行うことを特徴としている。
【0018】
この構成では、導波管ホーンアレイアンテナから送信された電磁波(送信信号)と、物標からで反射して導波管ホーンアレイアンテナで受信した電磁波(受信信号)とから物標までの距離が観測される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、給電導波管と結合導波管との立体的な入り込み形状に応じて結合量が調整されることで、従来のような平面的な形状での結合調整量よりも幅広く調整を行うことができる。すなわち、結合調整幅の広い導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。さらに、単に給電導波管と結合導波管とを互いに入り込ませる形状で形成されることで、簡素な構造で結合調整幅の広い導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0020】
この発明によれば、給電導波管を伝送する電磁波の偏波方向と、結合導波管を伝送する電磁波の偏波方向とを任意に変化させることができる。これにより、給電導波管に供給される電磁波の伝搬方向および偏波方向によらず放射させる電磁波の偏波方向を設定することができる。
【0021】
また、この発明によれば、給電導波管の管内波長の略1/2の間隔でホーンが並べられるので、自由空間の波長よりもホーン間隔を短くし、グレーティングローブを無くせるので、さらに優れた放射特性を実現することができる。
【0022】
また、この発明によれば、E面分割による複数の導体板により給電導波管とホーンアンテナとが形成されることにより、給電導波管の伝送特性を劣化させることなく、単純な部品構造で導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0023】
また、この発明によれば、一体成形された誘電体レンズを用いることで、より放射特性に優れる簡素な構造の導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0024】
また、この発明によれば、前述の導波管ホーンアレイアンテナを用いて物標探知用の電磁波信号の送受信を行うことで、簡素な構造でありながら探知性能に優れるレーダ装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る導波管ホーンアレイアンテナについて図1〜図15を参照して説明する。
図1は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの概略構成を示す外観斜視図である。また、図2は図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大斜視図である。また、図3(a)は図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大平面図であり、図3(b)は図3(a)に示すA−A’断面図である。
本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナは、所定方向に延びる給電導波管2と、給電導波管2にそれぞれ結合するホーンアンテナ3a〜3j,4a〜4jとを備える。これら給電導波管2およびホーンアンテナ3a〜3j,4a〜4jは導体部材1に形成されている。
【0026】
給電導波管2は導体部材1の所定方向に延びる形状で形成されており、給電導波管2の延びる方向に垂直な断面形状は長方形である。すなわち、給電導波管2は長方形の長手方向の面22a,22bに平行な面をH面とし、短手方向の面21a,21bに平行な面をE面として、TE10モードの電磁波を導波管の延びる方向に伝搬する矩形導波管で構成されている。また、給電導波管2は、導体部材1の一面(図1、図2における左手前面)に開口し、これに対向する面(図1における右奥面)から所定距離内部に終端面を有する。
【0027】
ホーンアンテナ3a〜3j,4a〜4jは、それぞれ結合導波管31a〜31j,41a〜41jとホーン32a〜32j,42a〜42jとから形成されている。
【0028】
結合導波管31a〜31j,41a〜41jは断面形状が長方形であり、その延びる方向が一致し、且つ給電導波管2の延びる方向に対して垂直な方向に延びる形状で形成されており、これら結合導波管31a〜31j,41a〜41jの延びる方向は、給電導波管2のE面に垂直な方向(H面に平行な方向)である。結合導波管31a〜31j,41a〜41jも給電導波管2と同様にTE10モードの電磁波をそれぞれの導波管の延びる方向に伝搬する。また、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは、給電導波管2の延びる方向に該給電導波管2の管内波長の略1/2の間隔で、給電導波管2の開口面側から31a,41a,31b,41b,...,31j,41jの順に給電導波管2へ結合されている。このように配列された結合導波管31a〜31j,41a〜41jのうちで、給電導波管2の開口面から最も奥側の結合導波管41jは給電導波管2の終端面から所定距離の位置で給電導波管2に結合されている。
【0029】
また、結合導波管31a〜31jは給電導波管2の短手方向に平行な一面21aと長手方向に平行な一面22aとの稜部に結合されており、結合導波管41a〜41jは給電導波管2の短手方向に平行な一面21aと長手方向に平行な一面22bとの稜部に結合されている。すなわち、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは、給電導波管2の開口面の短手方向に平行な一面21aにおける前記給電導波管2の延びる方向に平行な両辺に対して交互に結合するように設置されている。言い換えれば、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは給電導波管2の延びる方向に沿って順にジグザグ状に結合されている。さらに、結合導波管31a〜31j,41a〜41jの開口面の長手方向と給電導波管2の開口面の長手方向とが所定角(図1〜図3では略45°)を成すように、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは給電導波管2に結合されている。
【0030】
また、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは、給電導波管2に対して、給電導波管2の開口面の長手方向に平行な方向と、給電導波管2の開口面の短手方向に平行な方向との2方向にそれぞれ所定長さで入り込んだ形状(食い込んだ形状)により結合されており、空間的結合部30a〜30j,40a〜40j(図では、空間的結合部30a,30b,30c,40a,40bのみを図示し、他の空間的結合部は図示を省略する。)を形成している。結合導波管31a〜31j,41a〜41jの給電導波管2に対する入り込み量、すなわち結合量は、所望とする放射特性に応じて適当に設定されている。この際、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは給電導波管2側の端部全体が給電導波管2内に入り込むのではなく、部分的に入り込んだ形状で形成されている。
【0031】
ホーン32a〜32j,42a〜42jは、それぞれ結合導波管31a〜31j,41a〜41jの給電導波管2と結合する端部と対向する端部に設置されており、結合導波管2側の開口面から、導体部材1の外面に開口する開口面へ延びる方向に垂直な面が徐々に広くなる形状で形成されている。この際、結合導波管31a〜31j,41a〜41jのホーン側の開口面に垂直な方向と、ホーン32a〜32j,42a〜42jの開口面に垂直な方向とが一致するように、ホーン32a〜32j,42a〜42jは設置されている。
【0032】
このような導波管ホーンアレイアンテナでは、次に示すように電磁波を伝搬して放射する。
図4は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図であり、(a)は給電導波管200と結合導波管300との結合構造を示す図であり、(b)は(a)に示す結合構成の場合の電界分布を示す図である。なお、図4(b)に示す円錐形は電界強度および電界方向を示すものである。この図の給電導波管200が図1〜図3に示す給電導波管2に対応し、結合導波管300が図1〜図3に示す結合導波管31a〜31j,41a〜41jに対応する。
【0033】
給電導波管200に電磁波が入力されると、電磁波は給電導波管200の延びる方向に伝搬される。この場合の電界分布は図4(b)に示すような分布になり、前述のようにTE01モードの電磁波が伝搬される。給電導波管200にて伝搬される電磁波は、給電導波管200に空間的結合部を介して結合された結合導波管300に伝搬される。この現象は、断面形状が長方形の給電導波管200の長手方向に平行な面の導体壁と短手方向に平行な面の導体壁とに、空間的結合部による導体非形成部ができることにより、給電導波管200の電磁界が部分的に乱れて、空間的結合部から結合導波管300に漏れ出すことにより生じるものである。この際、結合導波管300の給電導波管200に対する結合量を調整することにより、給電導波管200から結合導波管300に伝搬される電磁波を調整することができる。具体的に、結合量の調整は、結合導波管300の給電導波管200への入り込み量により行い、給電導波管200の開口面の短手方向に平行な方向の入り込み量(以下、「短手方向入り込み量」と称す。)dと、給電導波管200の開口面の長手方向に平行な方向の入り込み量(以下、「長手方向入り込み量」と称す。)hとにより設定される。ここで、短手方向入り込み量dは、図3に示すように、結合導波管の開口面の中心から、この中心を通り給電導波管の短手方向に平行な直線と給電導波管の開口面の中心軸(給電導波管の延びる方向)を含み給電導波管の短手方向に垂直な平面との交点までの距離により定義する。また、長手方向の入り込み量hは、図3に示すように、給電導波管の
短手方向に平行な給電導波管の端面から給電導波管の長手方向に所定距離離れた面、具体的には、後述するE面分割面から、結合導波管の給電導波管側の端面までの給電導波管の長手方向の距離により定義する。
【0034】
このように入り込み量d,hを設定した場合の結合量の変化を図5に示す。
図5は、短手方向入り込み量dおよび長手方向入り込み量hを可変させた場合の給電導波管200と結合導波管300との結合量を示した図である。なお、図5において、長手方向入り込み量hは、前記E面分割位置よりも深く結合導波管300が入り込んだ状態を+方向とし、E面分割位置よりも浅く入り込んだ状態を−方向としている。
図5に示すように、給電導波管200と結合導波管300との空間的結合部の大きさ、すなわち、短手方向入り込み量d、長手方向入り込みhを変化させることで、給電導波管と結合導波管との結合度が約4dBから約34dBまで変化する。これは、結合導波管に接続するホーンからの放射量において、0.05%から40%まで変化することに相当する。
【0035】
このように、前述のような給電導波管に結合導波管を部分的に入り込ませた簡素な構造で放射特性を広範囲で変化させる導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0036】
なお、前述の説明では、給電導波管の開口面の長手方向と結合導波管の延びる方向とを平行にした構造の導波管ホーンアレイアンテナについて説明したが、図6に示すように、給電導波管200の短手方向と結合導波管300の延びる方向とを平行にした構造の導波管ホーンアレイアンテナについても、前述の構成を適用することができる。
図6は給電導波管の短手方向と結合導波管の延びる方向とが平行な導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図であり、(a)は給電導波管200と結合導波管300との結合構造を示す図であり、(b)は(a)に示す結合構成の場合の電界分布を示す図である。このように、図6に示すような給電導波管200の短手方向と結合導波管300の延びる方向とを平行にした構造の導波管ホーンアレイアンテナであっても、簡素な構造で、放射特性を広範囲に変化させることができる。
【0037】
また、前述の構成に対して、図7に示すような給電導波管の構成を用いてもよい。
図7は他の構成の給電導波管と結合導波管との結合部付近の構造を示す概念図であり、(a)は結合部付近の給電導波管の大きさが部分的に大きくなる構造を示し、(b)は結合部付近の給電導波管の大きさが部分的に小さくなる構造を示す。
【0038】
図7(a)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、給電導波管200と結合導波管300との結合部付近において、給電導波管200が、延びる方向の幅Wで短手方向に長さtで突出する形状に形成されているものである。また、図7(b)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、給電導波管200と結合導波管300との結合部付近において、給電導波管200が、延びる方向の幅Wで短手方向に長さtで凹む形状に形成されているものである。このように給電導波管200の結合部付近を突出させたり凹ませたりすることで、図8に示すように結合度が変化する。
【0039】
図8は給電導波管200の結合部付近を突出量(飛び出し量)に対する、給電導波管200と結合導波管300との結合度の変化を示した図であり、突出する方向が+方向に、凹む方向が−方向に設定されている。
このように、給電導波管200の結合導波管300との結合部付近の形状を変化させることで、給電導波管200と結合導波管300との結合量が変化し、前述の結合量の変化に加えて、より広範囲に且つ詳細に放射特性を調整することができる。
【0040】
また、前述の実施形態では、給電導波管のE面に垂直な面(H面)に対して結合導波管のE面が所定の鋭角を成す場合について説明したが、図9に示すように、結合導波管のE面が給電導波管のE面に垂直な面に対して垂直または平行である場合であっても、前述の構成を適用することができ、前述の効果を奏することができる。
図9は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの他の構成を示す部分概略図であり、(a)は給電導波管200のE面に垂直な面が結合導波管300のE面に垂直な場合を示し、(b)は給電導波管200のE面に垂直な面が結合導波管300のE面に平行な場合を示す。
【0041】
このような構造であっても、給電導波管200の結合導波管300との結合部から、給電導波管200により伝送された電磁波が結合導波管300に漏れ出し、給電導波管200から結合導波管300に電磁波が伝送される。
【0042】
このように、本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナでは、給電導波管と結合導波管との成す角によることなく、簡素な構造で広範囲の放射特性を有する導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。すなわち、給電導波管の偏波方向によらず、所望の偏波方向の電磁波を放射することができる。
【0043】
また、前述の説明では、導波管の四つの内面が2次元平面内で延びる結合導波管を用いた場合について説明したが、図10に示すように、延びる方向の中心を軸として、ツイスト形状に形成したものについても前述の構成を適用することができ、前述の効果を奏することができる。
図10は本実施形態の他の構成例を示す概念図である。
図10に示すように、この構成の導波管ホーンアレイアンテナでは、結合導波管300は、給電導波管200に結合する側の端部で結合導波管300の開口面の長手方向が給電導波管200のH面に垂直な方向となり、ホーン(図示せず)側の端部で結合導波管300の開口面の長手方向が給電導波管200のH面に所定の鋭角である方向となるように、結合導波管300がツイストしている。
【0044】
このような構造の導波管ホーンアレイアンテナであっても前述の構成を適用することができ、前述の効果を奏することができる。
【0045】
次に、前述の導波管ホーンアレイアンテナの製造方法および特性について、図11、図12を参照して説明する。
図11は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナのパーツ構成を示す外観斜視図および分解斜視図であり、(a)は導波管ホーンアレイアンテナの外観斜視図、(b)は上導体板10aの外観斜視図、(c)は下導体板10bの外観斜視図である。
図12は図11に示す構成の導波管ホーンアレイアンテナのアンテナ特性を示す図であり、(a)が導波管ホーンアンテナの配列方向である水平方向の指向性を示し、(b)が前記配列方向に垂直な方向の指向性を示す。
なお、各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kの構造は図1、図2に示したホーンアンテナの構造を同じであるので、具体的な構成についての説明は省略する。
【0046】
図11に示すように、導体部材1は上導体板10aと下導体板10bとからなる。
上導体板10aの一面には、所定方向に延び、所定幅で所定深さの溝20aが形成されている。溝20aの幅は、後述する下導体板10bに形成された溝20bと対向して設置することにより形成される給電導波管2の短手方向の長さとなるように形成されており、溝20aの深さは、後述する下導体板10bに形成された溝20bと対向して設置することにより、溝20aの深さと溝20bの深さとの合計長さが給電導波管2の長手方向の長さとなるように形成されている。また、延びる方向の長さは、各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kが略管内波長の1/2の間隔で形成されて、さらに所定距離延びる位置まで達するように形成されている。
【0047】
各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kのホーン31a〜31k,41a〜41kは、前記溝20aが形成された面に対向する面を開口面として、徐々に面積が狭くなる形状に形成されており、その軸方向(延びる方向)は、溝20aの延びる方向に垂直である。
【0048】
各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kの結合導波管32a〜32k,42a〜42kは、前記ホーン31a〜31k,41a〜41kに連続する貫通孔として形成されており、開口面形状は長方形状で、その長手方向の長さが前記給電導波管2の開口面の長手方向の長さに略等しく、短手方向の長さが前記給電導波管2の開口面の短手方向の長さに略等しく形成されている。また、結合導波管32a〜32k,42a〜42kは溝20aに部分的に係る位置、すなわち、溝20aに対して結合導波管32a〜32k,42a〜42kが部分的に入り込む形状に形成されている。また、結合導波管32a〜32k,42a〜42kは溝20aの延びる方向に、前記給電導波管2の管内波長の略1/2の間隔で形成されており、この延びる方向に隣り合う結合導波管同士は、溝20aの幅方向にずれた位置に形成されている。すなわち、結合導波管32a〜32k,42a〜42kは、32a,42a,32b,42b,....,32k,42kの順に、溝20aの延びる方向へジグザグ形状に形成されている。
【0049】
これら、溝20a、ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kを備える上導体板10aは導体板の切削やダイカスト、樹脂やセラミックで成形した後に導体メッキ等により形成される。
【0050】
下導体板10bの一面には、上導体板10aの溝20aに対向する形状で溝20bが形成されており、その幅および延びる方向の長さは溝20aと同じである。溝20bの深さは、溝20aと対向して設置されることにより、溝20aの深さと溝20bの深さとの合計長さが給電導波管2の長手方向の長さとなるように形成されている。また、下導体板10bの溝20bが形成された面には、結合導波管32a〜32k,42a〜42kの一部が形成されており、開口面の長手方向および短手方向の長さ、さらに形成位置は、上導体板10aに形成された結合導波管32a〜32k,42a〜42kと同じ形状および同じ位置に形成されている。これにより、上導体板10aと下導体板10bとをそれぞれの溝20a,20bが形成された面同士で当接させることにより、所望とする結合導波管32a〜32k,42a〜42kが構成される。この際、下導体板10bに形成される結合導波管32a〜32k,42a〜42kの深さh1〜h11等は、給電導波管2に対する結合度に応じて適宜設定される。例えば、図11に示すように、伝搬される電力量の大きい給電導波管2の入力側の結合導波管32a,42aでは、少ない結合量で所望の放射能力が得られるので、下導体板10bに形成された結合導波管32aの深さh1は比較的浅くなる。一方、伝搬される電力量が小さくなった給電導波管2の終端部付近の結合導波管32k,42kでは、大きな結合量が得られないと、入力側の結合導波管32a等と同等の放射パワーが得られないので、下導体板10bに形成された結合導波管32k等の深さh11は比較的深くなる。これにより、給電導波管2の入力側と終端側とで、放射特性を略一致させることができる。さらに、下導体板10bに形成する結合導波管32a〜32k,42a〜42kの深さを所望の深さに設定することで、各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kから放射する電磁波の指向性を設定することができる。例えば、導波管ホーンアンテナの配列方向の中心から正面方向に強い指向性を持たせたい場合には、配列方向の中心付近の結合導波管32e,32f,42e,42fの深さを深く設定する。
【0051】
このような2枚の導体板で形成された導波管ホーンアレイアンテナの特性例について説明する。図12は図11に示した構造の導波管ホーンアレイアンテナのアンテナ特性を示す図である。なお、図12に示すアンテナ特性が観測された設定条件は、まず、76GHz〜77GHz帯で動作するアンテナを想定し、ホーンアンテナ数が22個(図11の構造)であり、ホーンアンテナの開口面分布がGauss分布すなわち、exp(−c((i/N−1/2)2)におけるc=1.0の分布である。ホーンアンテナの偏波は45°の直線偏波である。また、給電導波管および結合導波管は(長手方向の長さ)×(短手方向の長さ)が2.54mm×1.27mmであり、ホーンアンテナの結合導波管の延びる方向の間隔は2.7mmである。ホーンアンテナの形状は開口面が3.5mm×3.5mmであり、ホーンの高さが3.7mmである。さらに、上導体板10aと下導体板10bとを重ね合わせた高さは10mmであり、上導体板10aの高さが7mmであり、下導体板10bの高さが3mmである。
【0052】
このような設定条件のもとで、観測を行った結果、本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナは、アンテナ利得が22.7dBiであり、ビーム幅が垂直方向に3.7°で水平方向に32.5°であり、リターンロスの最悪値が−22dBとなり、従来と比較して高効率のアンテナ特性が得られる。このように、本実施形態の構造を用いることで、簡素な構造で、且つ製造および調整が容易で、結合度の調整範囲の広い導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0053】
ところで、前述の各導波管ホーンアレイアンテナでは、開口面形状長方形の矩形導波管を用いた例について説明したが、開口面が円形の円形導波管や円形ホーンを用いた構造の導波管ホーンアレイアンテナや、図13に示すような開口面がテーパを有する長方形状の結合導波管320、給電導波管2やホーンアンテナ310を用いても、前述の構成および効果を奏することができる。
図13は、開口面がテーパを有する長方形状の導波管を用いた導波管ホーンアレイアンテナの一部を示す部分構成図である。
このような構成とすることで、前述のような効果が得られるとともに、導波管およびホーンの角部がR形状となるので、ダイカスト加工が容易となり、導波管ホーンアレイアンテナをより容易に製造することができる。
【0054】
また、前述の各導波管ホーンアレイアンテナは、ホーンの開口面になにも装着しない構造を示したが、図14に示すような誘電体を装荷してもよい。
図14はホーン先端に誘電体が装荷された状態を示す側面図であり、(a)はホーン311の開口面に誘電体レンズ401を装着した構成を示し、(b)はホーン311内にホーン形状に相似な誘電体部材402を装荷した構成を示す。
これらの誘電体はホーンから放射される電磁波の指向性を鋭くする素材および形状で形成されている。例えば、具体的に、図14(a)の誘電体レンズ401の構造として、誘電体材料としてポリプロピレンを用い、ホーン開口面(3.5mm×3.5mm)に最大厚み2.5mm、焦点距離3.7mmのレンズを用いることで、誘電体レンズを装着していない場合よりもアンテナ利得が1.7dB向上させることができる。
【0055】
さらに、図15に示すように、配列された複数のホーンアンテナの開口面に装着される誘電体レンズを一体形成してもよい。
図15(a)は複数の誘電体レンズが一体形成された誘電体レンズ部材の構成を示す外観斜視図であり、図15(b)は図15(a)に示す誘電体レンズ部材の部分側面断面図である。
【0056】
図15に示すように誘電体レンズ部材500は、それぞれが所定の凸レンズ形状に形成され、装着するホーンの間隔で配列された誘電体レンズ403a〜403e,404a〜404eと、これらを一体化させる接続部405とからなる。そして、誘電体レンズ403a〜403e,404a〜404eをホーンの開口面に装着して固定する。このような構成とすることで、導波管ホーンアレイアンテナの各ホーンアンテナの指向性が鋭くなるとともに高利得となり、アンテナ特性を改善することができる。この際、ホーンアンテナの開口面に誘電体レンズを装着するだけであるので、この誘電体レンズ部材分のみ外形が大きくなるだけでアンテナ特性を向上させることができる。
【0057】
次に、前述の各導波管ホーンアレイアンテナを用いたレーダ装置の構成について図16、図17を参照して説明する。
図16(a)、(b)、図17はレーダ装置の各種構成を示す概略構成図であり、図16(a)は可変移相器を備えたレーダ装置、図16(b)はスイッチを備えたレーダ装置、図17は揺動機構を備えたレーダ装置を示す。
図16(a)に示すレーダ装置は、複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51i、移相器61a〜61i、分岐回路71、サーキュレータ72、および送信/受信機73を備える。複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51iは、それぞれが前述の構成の導波管ホーンアレイアンテナで形成され、ホーンアンテナのアレイ方向が略一致するように並列に配列されている。複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51iのそれぞれには、移相器61a〜61iが接続されており、所定方向に指向性を有する送信ビームおよび受信ビームを形成するため、導波管ホーンアンテナ51a〜51iのそれぞれから放射する送信信号およびそれぞれが受信する受信信号毎の位相を調整する。分岐回路71はサーキュレータ72から入力された送信信号を各移相器61a〜61iに分岐し、各移相器61a〜61iから入力された受信信号をサーキュレータ72に出力する。サーキュレータ72は送信/受信機73からの送信信号を分岐回路71に伝送するとともに、分岐回路71からの受信信号を送信/受信機73に伝送する。送信/受信機73は、送信信号を生成してサーキュレータ72に出力するとともに、サーキュレータ72から入力された受信信号から物標探知情報を取得する。このようなレーダ装置で、移相器61a〜61iで各導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iへ出力する送信信号の位相条件や入力した受信信号の位相条件を適宜設定することで、所定方向へのレーダ探知を実現する。そして、前述の導波管ホーンアレイアンテナの構成を用いることで、簡素な構造で小型化されたレーダ装置を構成することができる。
【0058】
図16(b)に示すレーダ装置は、送信用の導波管ホーンアレイアンテナ50、受信用の複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51i、スイッチ回路81a〜81d、受信機82、および送信機83を備える。送信機83は送信信号を生成して送信用の導波管ホーンアンテナ50に出力するとともに、この送信信号またはこれに準じた基準信号を受信機82に出力する。送信用の導波管ホーンアレイアンテナ50は送信機83からの送信信号を外部に放射する。受信用の複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51iは、それぞれが前述の構成の導波管ホーンアレイアンテナで形成され、ホーンアンテナのアレイ方向が略一致するように並列に配列されている。受信用の複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iは送信用の導波管ホーンアレイアンテナ50から出力され、反射された信号を受信して、受信信号をそれぞれが接続するスイッチ回路81a〜81cに出力する。スイッチ回路81aは導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51cに接続するとともに、スイッチ回路81dに接続し、スイッチ回路81dと導波管ホーンアンテナ51a〜51cのいずれかとの接続を切り替える。スイッチ回路81bは導波管ホーンアレイアンテナ51d〜51fに接続するとともに、スイッチ回路81dに接続し、スイッチ回路81dと導波管ホーンアンテナ51d〜51fのいずれかとの接続を切り替える。スイッチ回路81cは導波管ホーンアレイアンテナ51g〜51iに接続するとともに、スイッチ回路81dに接続し、スイッチ回路81dと導波管ホーンアンテナ51g〜51iのいずれかとの接続を切り替える。スイッチ回路81dはスイッチ回路81a〜81cに接続するとともに受信機82に接続し、受信機82とスイッチ回路81a〜81cのいずれかとの接続を切り替える。このような構成のレーダ装置では、反射信号を受信する導波管ホーンアレイアンテナをスイッチ回路81a〜81dで切り替えることにより所定方向のレーダ探知を実現する。例えば、導波管ホーンアレイアンテナ51aで受信した反射信号によるレーダ探知を行う場合には、スイッチ回路81dで受信機82とスイッチ回路81aとを接続し、スイッチ回路81aでスイッチ回路81dと導波管ホーンアレイアンテナ51aとを接続することで、導波管ホーンアレイアンテナ51aで受信した反射信号が受信機82に伝送される。そして、このような構成のレーダ装置においても、前述の導波管ホーンアレイアンテナの構成を用いることで、簡素な構造で小型化されたレーダ装置を構成することができる。
【0059】
図17に示すレーダ装置は、複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51i、分岐回路71、サーキュレータ72、送信/受信機73、および複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iと分岐回路71とを備え、所定方向に揺動する揺動装置90とを備える。このレーダ装置は、図16(a)に示したレーダ装置の移相器61a〜61iを省略したものであり、位相調整以外の送受信の基本動作は図16(a)に示したレーダ装置と同じである。このレーダ装置では、所定方向への送信ビームおよび受信ビームを形成するために揺動装置90により、ビームを形成したい方向に複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iを回動させる。これにより、所定方向への指向性を実現してレーダ探知を実現する。そして、このような構成のレーダ装置においても、前述の導波管ホーンアレイアンテナの構成を用いることで、簡素な構造で小型化されたレーダ装置を構成することができる。
【0060】
ところで、前述の各説明では、ジグザグ状でありながらも各ホーンアンテナを所定方向に略一直線状に配列した導波管ホーンアレイアンテナを示したが、図18(a)〜(c)に示すように、各ホーンアンテナを所定広さの平面状に配列してもよい。
【0061】
図18は平面上配列の導波管ホーンアンテナアレイのホーンアンテナ配列パターンを示す概略図である。
【0062】
図18(a)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、3つの平行な直線状給電導波管211,212,213と、所定の曲率半径で曲がり、それぞれに直線状給電導波管211,212に接続する曲線状給電導波管214および直線状給電導波管212,213に接続する曲線状給電導波管215とからなる略S字状の給電導波管210を備える。直線状給電導波管211,212,213はそれぞれが延びる方向に垂直な方向へ略同じ間隔で配置されている。また直線状給電導波管211には延びる方向にジグザグにホーンアンテナ311〜314が設置され、直線状給電導波管212には延びる方向にジグザグにホーンアンテナ315〜318が設置され、直線状給電導波管213には延びる方向にジグザグにホーンアンテナ319〜322が設置されている。これら直線状給電導波管211,212,213に対するホーンアンテナ311〜314,315〜318,319〜322の結合構造は前述の導波管ホーンアレイアンテナと同じである。この際、直線状給電導波管211,212,213に設置するホーンアンテナ311〜314,315〜318,319〜322の位置を直線状給電導波管211,212,213の配列方向に対しても揃えることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。例えば、図18(a)の場合では、ホーンアンテナ311,315,319の配列方向、ホーンアンテナ312,316,320の配列方向、ホーンアンテナ313,317,321の配列方向、および、ホーンアンテナ314,318,322の配列方向、を直線状給電導波管211,212,213の配列方向に一致させることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。このような構成とすることで、平面的に配列されたホーンアンテナから所定の指向性のビームが形成されるので、ペンシル型ビームを容易に形成することができる。
【0063】
図18(b)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、それぞれにホーンアンテナ331〜334、ホーンアンテナ335〜338、ホーンアンテナ339〜342が設置された直線状の局部給電導波管222,223,224と、これらの給電導波管に接続する直線状の主給電導波管221とを備える。局部給電導波管222,223,224は主給電導波管221の延びる方向に所定間隔で設置されており、局部給電導波管222,223,224の延びる方向は主給電導波管221の延びる方向に対して垂直である。各局部導波管222,223,224に対するホーンアンテナ331〜334,335〜338,339〜342の結合構造は前述の導波管ホーンアレイアンテナと同じである。この際、直線状給電導波管222,223,224に設置するホーンアンテナ331〜334,335〜338,339〜342の位置を直線状給電導波管222,223,224の配列方向に対しても揃えることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。例えば、図18(b)の場合では、ホーンアンテナ331,335,339の配列方向、ホーンアンテナ332,336,340の配列方向、ホーンアンテナ333,337,341の配列方向、および、ホーンアンテナ334,338,342の配列方向、を直線状給電導波管222,223,224の配列方向に一致させることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。このような構成とすることで、平面的に配列されたホーンアンテナから所定の指向性のビームが形成されるので、ペンシル型ビームを容易に形成することができる。
【0064】
図18(c)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、それぞれにホーンアンテナ351〜354、ホーンアンテナ355〜358、ホーンアンテナ359〜362、ホーンアンテナ363〜366が設置された直線状の局部給電導波管234,235,237,238と、局部給電導波管234,235を接続する分岐給電導波管233と、局部給電導波管237,238を接続する分岐給電導波管236と、これら分岐給電導波管233,236を接続する分岐給電導波管232と、この分岐給電導波管232に接続する主給電導波管231とを備える。各局部給電導波管234,235,237,238はそれぞれの延びる方向が一致し、且つこの延びる方向に垂直な方向に等間隔で配置されている。各局部導波管234,235,237,238に対するホーンアンテナ351〜354,355〜358,359〜362,363〜366の結合構造は前述の導波管ホーンアレイアンテナと同じである。この際、直線状給電導波管234,235,237,238に設置するホーンアンテナ351〜354,355〜358,359〜362,363〜366の位置を局部給電導波管234,235,237,238の配列方向に対しても揃えることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。例えば、図18(c)の場合では、ホーンアンテナ351,355,359,363の配列方向、ホーンアンテナ352,356,360,364の配列方向、ホーンアンテナ353,357,361,365の配列方向、および、ホーンアンテナ354,358,362,366の配列方向、を局部給電導波管234,235,237,238の配列方向に一致させることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。この構成は所謂コーポレート給電方式の構成であり、このような構成にする場合でも、平面的に配列されたホーンアンテナから所定の指向性のビームが形成されるので、ペンシル型ビームを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの概略構成を示す外観斜視図
【図2】図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大斜視図
【図3】図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大平面図およびA−A’断面図
【図4】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図
【図5】短手方向入り込み量dおよび長手方向入り込み量hを可変させた場合の給電導波管200と結合導波管300との結合量を示した図
【図6】給電導波管の短手方向と結合導波管の延びる方向とが平行な導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図
【図7】他の構成の給電導波管と結合導波管との結合部付近の構造を示す概念図
【図8】給電導波管200の結合部付近を突出量に対する、給電導波管200と結合導波管300との結合度の変化を示した図
【図9】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの他の構成を示す部分概略図
【図10】本実施形態の他の構成例を示すが概念図
【図11】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナのパーツ構成を示す外観斜視図および分解斜視図
【図12】図11に示す構成の導波管ホーンアレイアンテナのアンテナ特性を示す図
【図13】開口面が長円形の導波管を用いた導波管ホーンアレイアンテナの一部を示す部分構成図
【図14】ホーン先端に誘電体が装荷された状態を示す側面図
【図15】複数の誘電体レンズが一体形成された誘電体レンズ部材の構成を示す外観斜視図および側面断面図
【図16】レーダ装置の各種構成を示す概略構成図
【図17】レーダ装置の各種構成を示す概略構成図
【図18】平面状配列の導波管ホーンアンテナアレイのホーンアンテナ配列パターンを示す概略図
【符号の説明】
【0066】
1−導体部材
10a−上導体板
10b−下導体板
2−給電導波管
20a,20b−溝
3a〜3k,4a〜4k−ホーンアンテナ
31a〜31k,41a〜41k−ホーン
32a〜32k,42a〜42k−結合導波管
30a〜30c,40a,40b−空間的結合部
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の導波管ホーンアンテナを給電導波管に所定配列パターンで設置なる導波管ホーンアレイアンテナ、およびこれを用いて物標探知を行うレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯を用いたレーダ装置等においては、マイクロストリップ線路等の平面回路よりも導波管の方が、伝送損失が少ないことを利用して、平面回路型のアレイアンテナよりも導波管アレイアンテナが多く用いられている。
【0003】
従来の導波管アレイアンテナには、特許文献1に示すように、給電導波管の一壁面から垂直にT型分岐して接続導波管を接続した構造のものがある。また、特許文献2に示すように、給電導波管とそれぞれがホーンに接続する複数の接続導波管とをそれぞれの延びる方向が直交する構造に配置するとともに、給電導波管の一側壁と接続導波管の一側壁とを当接させ、この当接させた壁に結合孔を形成したものがある。
【特許文献1】特開平10−32423号公報
【特許文献2】特開2000−9822公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前述の特許文献1および特許文献2に記載された従来の導波管アレイアンテナでは、給電導波管と接続導波管との結合量が、これらの導波管同士が接続する平面部分に形成された結合孔の開口面積に依存する。一方で、給電導波管と接続導波管との形状は伝送するミリ波信号により決定させるので、給電導波管と接続導波管との接続面積は広いものではなく、さらにこの接続部内で結合孔を形成するので、結合孔の形状が自ずと制限される。これにより、前述の接続面に結合孔を設けて給電導波管と接続導波管とを結合させる構造では、結合量の調整幅を広く取ることができない。
【0005】
また、特許文献2に記載された導波管アレイアンテナでは、必要部品が多く、且つ構造が複雑になるので、小型の導波管アレイアンテナを形成することが難しい。
【0006】
したがって、この発明の目的は、結合量の調整幅を広く取ることができ、且つ簡素な構造の導波管ホーンアレイアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、給電導波管と、該給電導波管の電磁波搬送方向に垂直な方向を電磁波搬送方向とする複数の結合導波管、および該複数の結合導波管の給電導波管と対向する端部にそれぞれ設置されたホーンを備えた複数のホーンアンテナと、を備え、複数のホーンアンテナが給電導波管に対して所定の配列で設置されている導波管ホーンアレイアンテナにおいて、複数のホーンアンテナにおけるホーンが設置されていない側の結合導波管の端部を、給電導波管の延びる方向と垂直な方向にて給電導波管へ部分的に入り込んだ形状で設置することを特徴としている。
【0008】
この構成では、複数の結合導波管が給電導波管に対して部分的に入り込む形状、すなわち複数の結合導波管が給電導波管に食い込む形状となる。このため、給電導波管と複数の結合導波管とが互いに共有する結合空間領域が形成される。給電導波管に信号が伝搬されると、この結合空間領域による信号伝送路の乱れにより、給電導波管から結合導波管に伝搬信号(電磁波)が漏れ出す。この漏れ出した信号は結合導波管を伝搬してホーンに導かれて、ホーンから外部に放射される。この際、給電導波管と結合導波管とが空間的すなわち3次元で結合しているので、結合量は2方向の入り込み量により設定される。この2方向とは、給電導波管の延びる方向に垂直で結合導波管の延びる方向に平行な方向、および、給電導波管の延びる方向に垂直で結合導波管の延びる方向に垂直な方向である。
【0009】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、給電導波管の開口面と複数の結合導波管の開口面とが、それぞれの導波管の延びる方向に対して長手方向と短手方向とが有する形状で給電導波管および複数の結合導波管を形成し、給電導波管の長手方向と複数の結合導波管の長手方向とが所定角を有する関係で、給電導波管に複数の結合導波管を設置することを特徴としている。
【0010】
この構成では、給電導波管を伝搬する電磁波の偏波方向と、結合導波管を伝搬してホーンから放射させる電磁波の偏波方向との関係が、前記所定角により設定される。
【0011】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、複数の結合導波管を、給電導波管の延びる方向に給電導波管内を伝搬する電磁波の波長(管内波長)の略1/2の間隔で配置し、且つ、給電導波管の延びる方向に隣り合う結合導波管を、給電導波管の延びる方向に垂直な方向の対向する端部にそれぞれ配置することを特徴としている。
【0012】
この構成では、複数の結合導波管が、給電導波管に対して給電導波管の管内波長の略1/2の間隔で設置され、自由空間の波長よりも短いホーン間隔で配置されることで、各ホーンアンテナからの放射の位相がそろい、グレーティングローブの無い放射効率の高いアンテナが実現できる。
【0013】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、複数のホーンアンテナを、電磁波の放射方向が給電導波管のE面に垂直な方向となる関係で給電導波管に設置し、さらに給電導波管をE面で2分割される形状に形成することを特徴としている。
【0014】
この構成では、E面分割された複数の導体板で給電導波管と複数のホーンアンテナとが形成されるので、分割面からの電磁波の漏れ量が少なく、且つ構造が簡素化される。
【0015】
また、この発明の導波管ホーンアレイアンテナは、複数のホーンアンテナの開口部にそれぞれ対応する複数の誘電体レンズを備え、且つ、これら複数の誘電体レンズを一体成形することを特徴としている。
【0016】
この構成では、ホーンアンテナの開口部に誘電体レンズが備えられることで放射特性が改善され、さらにこの誘電体レンズが一体形成されることで構造が簡素化される。
【0017】
また、この発明のレーダ装置は、前述の導波管ホーンアレイアンテナを備え、この導波管ホーンアレイアンテナで送受信する電磁波を用いて物標探知を行うことを特徴としている。
【0018】
この構成では、導波管ホーンアレイアンテナから送信された電磁波(送信信号)と、物標からで反射して導波管ホーンアレイアンテナで受信した電磁波(受信信号)とから物標までの距離が観測される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、給電導波管と結合導波管との立体的な入り込み形状に応じて結合量が調整されることで、従来のような平面的な形状での結合調整量よりも幅広く調整を行うことができる。すなわち、結合調整幅の広い導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。さらに、単に給電導波管と結合導波管とを互いに入り込ませる形状で形成されることで、簡素な構造で結合調整幅の広い導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0020】
この発明によれば、給電導波管を伝送する電磁波の偏波方向と、結合導波管を伝送する電磁波の偏波方向とを任意に変化させることができる。これにより、給電導波管に供給される電磁波の伝搬方向および偏波方向によらず放射させる電磁波の偏波方向を設定することができる。
【0021】
また、この発明によれば、給電導波管の管内波長の略1/2の間隔でホーンが並べられるので、自由空間の波長よりもホーン間隔を短くし、グレーティングローブを無くせるので、さらに優れた放射特性を実現することができる。
【0022】
また、この発明によれば、E面分割による複数の導体板により給電導波管とホーンアンテナとが形成されることにより、給電導波管の伝送特性を劣化させることなく、単純な部品構造で導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0023】
また、この発明によれば、一体成形された誘電体レンズを用いることで、より放射特性に優れる簡素な構造の導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0024】
また、この発明によれば、前述の導波管ホーンアレイアンテナを用いて物標探知用の電磁波信号の送受信を行うことで、簡素な構造でありながら探知性能に優れるレーダ装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る導波管ホーンアレイアンテナについて図1〜図15を参照して説明する。
図1は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの概略構成を示す外観斜視図である。また、図2は図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大斜視図である。また、図3(a)は図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大平面図であり、図3(b)は図3(a)に示すA−A’断面図である。
本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナは、所定方向に延びる給電導波管2と、給電導波管2にそれぞれ結合するホーンアンテナ3a〜3j,4a〜4jとを備える。これら給電導波管2およびホーンアンテナ3a〜3j,4a〜4jは導体部材1に形成されている。
【0026】
給電導波管2は導体部材1の所定方向に延びる形状で形成されており、給電導波管2の延びる方向に垂直な断面形状は長方形である。すなわち、給電導波管2は長方形の長手方向の面22a,22bに平行な面をH面とし、短手方向の面21a,21bに平行な面をE面として、TE10モードの電磁波を導波管の延びる方向に伝搬する矩形導波管で構成されている。また、給電導波管2は、導体部材1の一面(図1、図2における左手前面)に開口し、これに対向する面(図1における右奥面)から所定距離内部に終端面を有する。
【0027】
ホーンアンテナ3a〜3j,4a〜4jは、それぞれ結合導波管31a〜31j,41a〜41jとホーン32a〜32j,42a〜42jとから形成されている。
【0028】
結合導波管31a〜31j,41a〜41jは断面形状が長方形であり、その延びる方向が一致し、且つ給電導波管2の延びる方向に対して垂直な方向に延びる形状で形成されており、これら結合導波管31a〜31j,41a〜41jの延びる方向は、給電導波管2のE面に垂直な方向(H面に平行な方向)である。結合導波管31a〜31j,41a〜41jも給電導波管2と同様にTE10モードの電磁波をそれぞれの導波管の延びる方向に伝搬する。また、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは、給電導波管2の延びる方向に該給電導波管2の管内波長の略1/2の間隔で、給電導波管2の開口面側から31a,41a,31b,41b,...,31j,41jの順に給電導波管2へ結合されている。このように配列された結合導波管31a〜31j,41a〜41jのうちで、給電導波管2の開口面から最も奥側の結合導波管41jは給電導波管2の終端面から所定距離の位置で給電導波管2に結合されている。
【0029】
また、結合導波管31a〜31jは給電導波管2の短手方向に平行な一面21aと長手方向に平行な一面22aとの稜部に結合されており、結合導波管41a〜41jは給電導波管2の短手方向に平行な一面21aと長手方向に平行な一面22bとの稜部に結合されている。すなわち、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは、給電導波管2の開口面の短手方向に平行な一面21aにおける前記給電導波管2の延びる方向に平行な両辺に対して交互に結合するように設置されている。言い換えれば、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは給電導波管2の延びる方向に沿って順にジグザグ状に結合されている。さらに、結合導波管31a〜31j,41a〜41jの開口面の長手方向と給電導波管2の開口面の長手方向とが所定角(図1〜図3では略45°)を成すように、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは給電導波管2に結合されている。
【0030】
また、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは、給電導波管2に対して、給電導波管2の開口面の長手方向に平行な方向と、給電導波管2の開口面の短手方向に平行な方向との2方向にそれぞれ所定長さで入り込んだ形状(食い込んだ形状)により結合されており、空間的結合部30a〜30j,40a〜40j(図では、空間的結合部30a,30b,30c,40a,40bのみを図示し、他の空間的結合部は図示を省略する。)を形成している。結合導波管31a〜31j,41a〜41jの給電導波管2に対する入り込み量、すなわち結合量は、所望とする放射特性に応じて適当に設定されている。この際、結合導波管31a〜31j,41a〜41jは給電導波管2側の端部全体が給電導波管2内に入り込むのではなく、部分的に入り込んだ形状で形成されている。
【0031】
ホーン32a〜32j,42a〜42jは、それぞれ結合導波管31a〜31j,41a〜41jの給電導波管2と結合する端部と対向する端部に設置されており、結合導波管2側の開口面から、導体部材1の外面に開口する開口面へ延びる方向に垂直な面が徐々に広くなる形状で形成されている。この際、結合導波管31a〜31j,41a〜41jのホーン側の開口面に垂直な方向と、ホーン32a〜32j,42a〜42jの開口面に垂直な方向とが一致するように、ホーン32a〜32j,42a〜42jは設置されている。
【0032】
このような導波管ホーンアレイアンテナでは、次に示すように電磁波を伝搬して放射する。
図4は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図であり、(a)は給電導波管200と結合導波管300との結合構造を示す図であり、(b)は(a)に示す結合構成の場合の電界分布を示す図である。なお、図4(b)に示す円錐形は電界強度および電界方向を示すものである。この図の給電導波管200が図1〜図3に示す給電導波管2に対応し、結合導波管300が図1〜図3に示す結合導波管31a〜31j,41a〜41jに対応する。
【0033】
給電導波管200に電磁波が入力されると、電磁波は給電導波管200の延びる方向に伝搬される。この場合の電界分布は図4(b)に示すような分布になり、前述のようにTE01モードの電磁波が伝搬される。給電導波管200にて伝搬される電磁波は、給電導波管200に空間的結合部を介して結合された結合導波管300に伝搬される。この現象は、断面形状が長方形の給電導波管200の長手方向に平行な面の導体壁と短手方向に平行な面の導体壁とに、空間的結合部による導体非形成部ができることにより、給電導波管200の電磁界が部分的に乱れて、空間的結合部から結合導波管300に漏れ出すことにより生じるものである。この際、結合導波管300の給電導波管200に対する結合量を調整することにより、給電導波管200から結合導波管300に伝搬される電磁波を調整することができる。具体的に、結合量の調整は、結合導波管300の給電導波管200への入り込み量により行い、給電導波管200の開口面の短手方向に平行な方向の入り込み量(以下、「短手方向入り込み量」と称す。)dと、給電導波管200の開口面の長手方向に平行な方向の入り込み量(以下、「長手方向入り込み量」と称す。)hとにより設定される。ここで、短手方向入り込み量dは、図3に示すように、結合導波管の開口面の中心から、この中心を通り給電導波管の短手方向に平行な直線と給電導波管の開口面の中心軸(給電導波管の延びる方向)を含み給電導波管の短手方向に垂直な平面との交点までの距離により定義する。また、長手方向の入り込み量hは、図3に示すように、給電導波管の
短手方向に平行な給電導波管の端面から給電導波管の長手方向に所定距離離れた面、具体的には、後述するE面分割面から、結合導波管の給電導波管側の端面までの給電導波管の長手方向の距離により定義する。
【0034】
このように入り込み量d,hを設定した場合の結合量の変化を図5に示す。
図5は、短手方向入り込み量dおよび長手方向入り込み量hを可変させた場合の給電導波管200と結合導波管300との結合量を示した図である。なお、図5において、長手方向入り込み量hは、前記E面分割位置よりも深く結合導波管300が入り込んだ状態を+方向とし、E面分割位置よりも浅く入り込んだ状態を−方向としている。
図5に示すように、給電導波管200と結合導波管300との空間的結合部の大きさ、すなわち、短手方向入り込み量d、長手方向入り込みhを変化させることで、給電導波管と結合導波管との結合度が約4dBから約34dBまで変化する。これは、結合導波管に接続するホーンからの放射量において、0.05%から40%まで変化することに相当する。
【0035】
このように、前述のような給電導波管に結合導波管を部分的に入り込ませた簡素な構造で放射特性を広範囲で変化させる導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0036】
なお、前述の説明では、給電導波管の開口面の長手方向と結合導波管の延びる方向とを平行にした構造の導波管ホーンアレイアンテナについて説明したが、図6に示すように、給電導波管200の短手方向と結合導波管300の延びる方向とを平行にした構造の導波管ホーンアレイアンテナについても、前述の構成を適用することができる。
図6は給電導波管の短手方向と結合導波管の延びる方向とが平行な導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図であり、(a)は給電導波管200と結合導波管300との結合構造を示す図であり、(b)は(a)に示す結合構成の場合の電界分布を示す図である。このように、図6に示すような給電導波管200の短手方向と結合導波管300の延びる方向とを平行にした構造の導波管ホーンアレイアンテナであっても、簡素な構造で、放射特性を広範囲に変化させることができる。
【0037】
また、前述の構成に対して、図7に示すような給電導波管の構成を用いてもよい。
図7は他の構成の給電導波管と結合導波管との結合部付近の構造を示す概念図であり、(a)は結合部付近の給電導波管の大きさが部分的に大きくなる構造を示し、(b)は結合部付近の給電導波管の大きさが部分的に小さくなる構造を示す。
【0038】
図7(a)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、給電導波管200と結合導波管300との結合部付近において、給電導波管200が、延びる方向の幅Wで短手方向に長さtで突出する形状に形成されているものである。また、図7(b)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、給電導波管200と結合導波管300との結合部付近において、給電導波管200が、延びる方向の幅Wで短手方向に長さtで凹む形状に形成されているものである。このように給電導波管200の結合部付近を突出させたり凹ませたりすることで、図8に示すように結合度が変化する。
【0039】
図8は給電導波管200の結合部付近を突出量(飛び出し量)に対する、給電導波管200と結合導波管300との結合度の変化を示した図であり、突出する方向が+方向に、凹む方向が−方向に設定されている。
このように、給電導波管200の結合導波管300との結合部付近の形状を変化させることで、給電導波管200と結合導波管300との結合量が変化し、前述の結合量の変化に加えて、より広範囲に且つ詳細に放射特性を調整することができる。
【0040】
また、前述の実施形態では、給電導波管のE面に垂直な面(H面)に対して結合導波管のE面が所定の鋭角を成す場合について説明したが、図9に示すように、結合導波管のE面が給電導波管のE面に垂直な面に対して垂直または平行である場合であっても、前述の構成を適用することができ、前述の効果を奏することができる。
図9は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの他の構成を示す部分概略図であり、(a)は給電導波管200のE面に垂直な面が結合導波管300のE面に垂直な場合を示し、(b)は給電導波管200のE面に垂直な面が結合導波管300のE面に平行な場合を示す。
【0041】
このような構造であっても、給電導波管200の結合導波管300との結合部から、給電導波管200により伝送された電磁波が結合導波管300に漏れ出し、給電導波管200から結合導波管300に電磁波が伝送される。
【0042】
このように、本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナでは、給電導波管と結合導波管との成す角によることなく、簡素な構造で広範囲の放射特性を有する導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。すなわち、給電導波管の偏波方向によらず、所望の偏波方向の電磁波を放射することができる。
【0043】
また、前述の説明では、導波管の四つの内面が2次元平面内で延びる結合導波管を用いた場合について説明したが、図10に示すように、延びる方向の中心を軸として、ツイスト形状に形成したものについても前述の構成を適用することができ、前述の効果を奏することができる。
図10は本実施形態の他の構成例を示す概念図である。
図10に示すように、この構成の導波管ホーンアレイアンテナでは、結合導波管300は、給電導波管200に結合する側の端部で結合導波管300の開口面の長手方向が給電導波管200のH面に垂直な方向となり、ホーン(図示せず)側の端部で結合導波管300の開口面の長手方向が給電導波管200のH面に所定の鋭角である方向となるように、結合導波管300がツイストしている。
【0044】
このような構造の導波管ホーンアレイアンテナであっても前述の構成を適用することができ、前述の効果を奏することができる。
【0045】
次に、前述の導波管ホーンアレイアンテナの製造方法および特性について、図11、図12を参照して説明する。
図11は本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナのパーツ構成を示す外観斜視図および分解斜視図であり、(a)は導波管ホーンアレイアンテナの外観斜視図、(b)は上導体板10aの外観斜視図、(c)は下導体板10bの外観斜視図である。
図12は図11に示す構成の導波管ホーンアレイアンテナのアンテナ特性を示す図であり、(a)が導波管ホーンアンテナの配列方向である水平方向の指向性を示し、(b)が前記配列方向に垂直な方向の指向性を示す。
なお、各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kの構造は図1、図2に示したホーンアンテナの構造を同じであるので、具体的な構成についての説明は省略する。
【0046】
図11に示すように、導体部材1は上導体板10aと下導体板10bとからなる。
上導体板10aの一面には、所定方向に延び、所定幅で所定深さの溝20aが形成されている。溝20aの幅は、後述する下導体板10bに形成された溝20bと対向して設置することにより形成される給電導波管2の短手方向の長さとなるように形成されており、溝20aの深さは、後述する下導体板10bに形成された溝20bと対向して設置することにより、溝20aの深さと溝20bの深さとの合計長さが給電導波管2の長手方向の長さとなるように形成されている。また、延びる方向の長さは、各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kが略管内波長の1/2の間隔で形成されて、さらに所定距離延びる位置まで達するように形成されている。
【0047】
各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kのホーン31a〜31k,41a〜41kは、前記溝20aが形成された面に対向する面を開口面として、徐々に面積が狭くなる形状に形成されており、その軸方向(延びる方向)は、溝20aの延びる方向に垂直である。
【0048】
各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kの結合導波管32a〜32k,42a〜42kは、前記ホーン31a〜31k,41a〜41kに連続する貫通孔として形成されており、開口面形状は長方形状で、その長手方向の長さが前記給電導波管2の開口面の長手方向の長さに略等しく、短手方向の長さが前記給電導波管2の開口面の短手方向の長さに略等しく形成されている。また、結合導波管32a〜32k,42a〜42kは溝20aに部分的に係る位置、すなわち、溝20aに対して結合導波管32a〜32k,42a〜42kが部分的に入り込む形状に形成されている。また、結合導波管32a〜32k,42a〜42kは溝20aの延びる方向に、前記給電導波管2の管内波長の略1/2の間隔で形成されており、この延びる方向に隣り合う結合導波管同士は、溝20aの幅方向にずれた位置に形成されている。すなわち、結合導波管32a〜32k,42a〜42kは、32a,42a,32b,42b,....,32k,42kの順に、溝20aの延びる方向へジグザグ形状に形成されている。
【0049】
これら、溝20a、ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kを備える上導体板10aは導体板の切削やダイカスト、樹脂やセラミックで成形した後に導体メッキ等により形成される。
【0050】
下導体板10bの一面には、上導体板10aの溝20aに対向する形状で溝20bが形成されており、その幅および延びる方向の長さは溝20aと同じである。溝20bの深さは、溝20aと対向して設置されることにより、溝20aの深さと溝20bの深さとの合計長さが給電導波管2の長手方向の長さとなるように形成されている。また、下導体板10bの溝20bが形成された面には、結合導波管32a〜32k,42a〜42kの一部が形成されており、開口面の長手方向および短手方向の長さ、さらに形成位置は、上導体板10aに形成された結合導波管32a〜32k,42a〜42kと同じ形状および同じ位置に形成されている。これにより、上導体板10aと下導体板10bとをそれぞれの溝20a,20bが形成された面同士で当接させることにより、所望とする結合導波管32a〜32k,42a〜42kが構成される。この際、下導体板10bに形成される結合導波管32a〜32k,42a〜42kの深さh1〜h11等は、給電導波管2に対する結合度に応じて適宜設定される。例えば、図11に示すように、伝搬される電力量の大きい給電導波管2の入力側の結合導波管32a,42aでは、少ない結合量で所望の放射能力が得られるので、下導体板10bに形成された結合導波管32aの深さh1は比較的浅くなる。一方、伝搬される電力量が小さくなった給電導波管2の終端部付近の結合導波管32k,42kでは、大きな結合量が得られないと、入力側の結合導波管32a等と同等の放射パワーが得られないので、下導体板10bに形成された結合導波管32k等の深さh11は比較的深くなる。これにより、給電導波管2の入力側と終端側とで、放射特性を略一致させることができる。さらに、下導体板10bに形成する結合導波管32a〜32k,42a〜42kの深さを所望の深さに設定することで、各ホーンアンテナ3a〜3k,4a〜4kから放射する電磁波の指向性を設定することができる。例えば、導波管ホーンアンテナの配列方向の中心から正面方向に強い指向性を持たせたい場合には、配列方向の中心付近の結合導波管32e,32f,42e,42fの深さを深く設定する。
【0051】
このような2枚の導体板で形成された導波管ホーンアレイアンテナの特性例について説明する。図12は図11に示した構造の導波管ホーンアレイアンテナのアンテナ特性を示す図である。なお、図12に示すアンテナ特性が観測された設定条件は、まず、76GHz〜77GHz帯で動作するアンテナを想定し、ホーンアンテナ数が22個(図11の構造)であり、ホーンアンテナの開口面分布がGauss分布すなわち、exp(−c((i/N−1/2)2)におけるc=1.0の分布である。ホーンアンテナの偏波は45°の直線偏波である。また、給電導波管および結合導波管は(長手方向の長さ)×(短手方向の長さ)が2.54mm×1.27mmであり、ホーンアンテナの結合導波管の延びる方向の間隔は2.7mmである。ホーンアンテナの形状は開口面が3.5mm×3.5mmであり、ホーンの高さが3.7mmである。さらに、上導体板10aと下導体板10bとを重ね合わせた高さは10mmであり、上導体板10aの高さが7mmであり、下導体板10bの高さが3mmである。
【0052】
このような設定条件のもとで、観測を行った結果、本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナは、アンテナ利得が22.7dBiであり、ビーム幅が垂直方向に3.7°で水平方向に32.5°であり、リターンロスの最悪値が−22dBとなり、従来と比較して高効率のアンテナ特性が得られる。このように、本実施形態の構造を用いることで、簡素な構造で、且つ製造および調整が容易で、結合度の調整範囲の広い導波管ホーンアレイアンテナを構成することができる。
【0053】
ところで、前述の各導波管ホーンアレイアンテナでは、開口面形状長方形の矩形導波管を用いた例について説明したが、開口面が円形の円形導波管や円形ホーンを用いた構造の導波管ホーンアレイアンテナや、図13に示すような開口面がテーパを有する長方形状の結合導波管320、給電導波管2やホーンアンテナ310を用いても、前述の構成および効果を奏することができる。
図13は、開口面がテーパを有する長方形状の導波管を用いた導波管ホーンアレイアンテナの一部を示す部分構成図である。
このような構成とすることで、前述のような効果が得られるとともに、導波管およびホーンの角部がR形状となるので、ダイカスト加工が容易となり、導波管ホーンアレイアンテナをより容易に製造することができる。
【0054】
また、前述の各導波管ホーンアレイアンテナは、ホーンの開口面になにも装着しない構造を示したが、図14に示すような誘電体を装荷してもよい。
図14はホーン先端に誘電体が装荷された状態を示す側面図であり、(a)はホーン311の開口面に誘電体レンズ401を装着した構成を示し、(b)はホーン311内にホーン形状に相似な誘電体部材402を装荷した構成を示す。
これらの誘電体はホーンから放射される電磁波の指向性を鋭くする素材および形状で形成されている。例えば、具体的に、図14(a)の誘電体レンズ401の構造として、誘電体材料としてポリプロピレンを用い、ホーン開口面(3.5mm×3.5mm)に最大厚み2.5mm、焦点距離3.7mmのレンズを用いることで、誘電体レンズを装着していない場合よりもアンテナ利得が1.7dB向上させることができる。
【0055】
さらに、図15に示すように、配列された複数のホーンアンテナの開口面に装着される誘電体レンズを一体形成してもよい。
図15(a)は複数の誘電体レンズが一体形成された誘電体レンズ部材の構成を示す外観斜視図であり、図15(b)は図15(a)に示す誘電体レンズ部材の部分側面断面図である。
【0056】
図15に示すように誘電体レンズ部材500は、それぞれが所定の凸レンズ形状に形成され、装着するホーンの間隔で配列された誘電体レンズ403a〜403e,404a〜404eと、これらを一体化させる接続部405とからなる。そして、誘電体レンズ403a〜403e,404a〜404eをホーンの開口面に装着して固定する。このような構成とすることで、導波管ホーンアレイアンテナの各ホーンアンテナの指向性が鋭くなるとともに高利得となり、アンテナ特性を改善することができる。この際、ホーンアンテナの開口面に誘電体レンズを装着するだけであるので、この誘電体レンズ部材分のみ外形が大きくなるだけでアンテナ特性を向上させることができる。
【0057】
次に、前述の各導波管ホーンアレイアンテナを用いたレーダ装置の構成について図16、図17を参照して説明する。
図16(a)、(b)、図17はレーダ装置の各種構成を示す概略構成図であり、図16(a)は可変移相器を備えたレーダ装置、図16(b)はスイッチを備えたレーダ装置、図17は揺動機構を備えたレーダ装置を示す。
図16(a)に示すレーダ装置は、複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51i、移相器61a〜61i、分岐回路71、サーキュレータ72、および送信/受信機73を備える。複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51iは、それぞれが前述の構成の導波管ホーンアレイアンテナで形成され、ホーンアンテナのアレイ方向が略一致するように並列に配列されている。複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51iのそれぞれには、移相器61a〜61iが接続されており、所定方向に指向性を有する送信ビームおよび受信ビームを形成するため、導波管ホーンアンテナ51a〜51iのそれぞれから放射する送信信号およびそれぞれが受信する受信信号毎の位相を調整する。分岐回路71はサーキュレータ72から入力された送信信号を各移相器61a〜61iに分岐し、各移相器61a〜61iから入力された受信信号をサーキュレータ72に出力する。サーキュレータ72は送信/受信機73からの送信信号を分岐回路71に伝送するとともに、分岐回路71からの受信信号を送信/受信機73に伝送する。送信/受信機73は、送信信号を生成してサーキュレータ72に出力するとともに、サーキュレータ72から入力された受信信号から物標探知情報を取得する。このようなレーダ装置で、移相器61a〜61iで各導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iへ出力する送信信号の位相条件や入力した受信信号の位相条件を適宜設定することで、所定方向へのレーダ探知を実現する。そして、前述の導波管ホーンアレイアンテナの構成を用いることで、簡素な構造で小型化されたレーダ装置を構成することができる。
【0058】
図16(b)に示すレーダ装置は、送信用の導波管ホーンアレイアンテナ50、受信用の複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51i、スイッチ回路81a〜81d、受信機82、および送信機83を備える。送信機83は送信信号を生成して送信用の導波管ホーンアンテナ50に出力するとともに、この送信信号またはこれに準じた基準信号を受信機82に出力する。送信用の導波管ホーンアレイアンテナ50は送信機83からの送信信号を外部に放射する。受信用の複数の導波管ホーンアンテナ51a〜51iは、それぞれが前述の構成の導波管ホーンアレイアンテナで形成され、ホーンアンテナのアレイ方向が略一致するように並列に配列されている。受信用の複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iは送信用の導波管ホーンアレイアンテナ50から出力され、反射された信号を受信して、受信信号をそれぞれが接続するスイッチ回路81a〜81cに出力する。スイッチ回路81aは導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51cに接続するとともに、スイッチ回路81dに接続し、スイッチ回路81dと導波管ホーンアンテナ51a〜51cのいずれかとの接続を切り替える。スイッチ回路81bは導波管ホーンアレイアンテナ51d〜51fに接続するとともに、スイッチ回路81dに接続し、スイッチ回路81dと導波管ホーンアンテナ51d〜51fのいずれかとの接続を切り替える。スイッチ回路81cは導波管ホーンアレイアンテナ51g〜51iに接続するとともに、スイッチ回路81dに接続し、スイッチ回路81dと導波管ホーンアンテナ51g〜51iのいずれかとの接続を切り替える。スイッチ回路81dはスイッチ回路81a〜81cに接続するとともに受信機82に接続し、受信機82とスイッチ回路81a〜81cのいずれかとの接続を切り替える。このような構成のレーダ装置では、反射信号を受信する導波管ホーンアレイアンテナをスイッチ回路81a〜81dで切り替えることにより所定方向のレーダ探知を実現する。例えば、導波管ホーンアレイアンテナ51aで受信した反射信号によるレーダ探知を行う場合には、スイッチ回路81dで受信機82とスイッチ回路81aとを接続し、スイッチ回路81aでスイッチ回路81dと導波管ホーンアレイアンテナ51aとを接続することで、導波管ホーンアレイアンテナ51aで受信した反射信号が受信機82に伝送される。そして、このような構成のレーダ装置においても、前述の導波管ホーンアレイアンテナの構成を用いることで、簡素な構造で小型化されたレーダ装置を構成することができる。
【0059】
図17に示すレーダ装置は、複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51i、分岐回路71、サーキュレータ72、送信/受信機73、および複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iと分岐回路71とを備え、所定方向に揺動する揺動装置90とを備える。このレーダ装置は、図16(a)に示したレーダ装置の移相器61a〜61iを省略したものであり、位相調整以外の送受信の基本動作は図16(a)に示したレーダ装置と同じである。このレーダ装置では、所定方向への送信ビームおよび受信ビームを形成するために揺動装置90により、ビームを形成したい方向に複数の導波管ホーンアレイアンテナ51a〜51iを回動させる。これにより、所定方向への指向性を実現してレーダ探知を実現する。そして、このような構成のレーダ装置においても、前述の導波管ホーンアレイアンテナの構成を用いることで、簡素な構造で小型化されたレーダ装置を構成することができる。
【0060】
ところで、前述の各説明では、ジグザグ状でありながらも各ホーンアンテナを所定方向に略一直線状に配列した導波管ホーンアレイアンテナを示したが、図18(a)〜(c)に示すように、各ホーンアンテナを所定広さの平面状に配列してもよい。
【0061】
図18は平面上配列の導波管ホーンアンテナアレイのホーンアンテナ配列パターンを示す概略図である。
【0062】
図18(a)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、3つの平行な直線状給電導波管211,212,213と、所定の曲率半径で曲がり、それぞれに直線状給電導波管211,212に接続する曲線状給電導波管214および直線状給電導波管212,213に接続する曲線状給電導波管215とからなる略S字状の給電導波管210を備える。直線状給電導波管211,212,213はそれぞれが延びる方向に垂直な方向へ略同じ間隔で配置されている。また直線状給電導波管211には延びる方向にジグザグにホーンアンテナ311〜314が設置され、直線状給電導波管212には延びる方向にジグザグにホーンアンテナ315〜318が設置され、直線状給電導波管213には延びる方向にジグザグにホーンアンテナ319〜322が設置されている。これら直線状給電導波管211,212,213に対するホーンアンテナ311〜314,315〜318,319〜322の結合構造は前述の導波管ホーンアレイアンテナと同じである。この際、直線状給電導波管211,212,213に設置するホーンアンテナ311〜314,315〜318,319〜322の位置を直線状給電導波管211,212,213の配列方向に対しても揃えることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。例えば、図18(a)の場合では、ホーンアンテナ311,315,319の配列方向、ホーンアンテナ312,316,320の配列方向、ホーンアンテナ313,317,321の配列方向、および、ホーンアンテナ314,318,322の配列方向、を直線状給電導波管211,212,213の配列方向に一致させることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。このような構成とすることで、平面的に配列されたホーンアンテナから所定の指向性のビームが形成されるので、ペンシル型ビームを容易に形成することができる。
【0063】
図18(b)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、それぞれにホーンアンテナ331〜334、ホーンアンテナ335〜338、ホーンアンテナ339〜342が設置された直線状の局部給電導波管222,223,224と、これらの給電導波管に接続する直線状の主給電導波管221とを備える。局部給電導波管222,223,224は主給電導波管221の延びる方向に所定間隔で設置されており、局部給電導波管222,223,224の延びる方向は主給電導波管221の延びる方向に対して垂直である。各局部導波管222,223,224に対するホーンアンテナ331〜334,335〜338,339〜342の結合構造は前述の導波管ホーンアレイアンテナと同じである。この際、直線状給電導波管222,223,224に設置するホーンアンテナ331〜334,335〜338,339〜342の位置を直線状給電導波管222,223,224の配列方向に対しても揃えることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。例えば、図18(b)の場合では、ホーンアンテナ331,335,339の配列方向、ホーンアンテナ332,336,340の配列方向、ホーンアンテナ333,337,341の配列方向、および、ホーンアンテナ334,338,342の配列方向、を直線状給電導波管222,223,224の配列方向に一致させることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。このような構成とすることで、平面的に配列されたホーンアンテナから所定の指向性のビームが形成されるので、ペンシル型ビームを容易に形成することができる。
【0064】
図18(c)に示す導波管ホーンアレイアンテナは、それぞれにホーンアンテナ351〜354、ホーンアンテナ355〜358、ホーンアンテナ359〜362、ホーンアンテナ363〜366が設置された直線状の局部給電導波管234,235,237,238と、局部給電導波管234,235を接続する分岐給電導波管233と、局部給電導波管237,238を接続する分岐給電導波管236と、これら分岐給電導波管233,236を接続する分岐給電導波管232と、この分岐給電導波管232に接続する主給電導波管231とを備える。各局部給電導波管234,235,237,238はそれぞれの延びる方向が一致し、且つこの延びる方向に垂直な方向に等間隔で配置されている。各局部導波管234,235,237,238に対するホーンアンテナ351〜354,355〜358,359〜362,363〜366の結合構造は前述の導波管ホーンアレイアンテナと同じである。この際、直線状給電導波管234,235,237,238に設置するホーンアンテナ351〜354,355〜358,359〜362,363〜366の位置を局部給電導波管234,235,237,238の配列方向に対しても揃えることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。例えば、図18(c)の場合では、ホーンアンテナ351,355,359,363の配列方向、ホーンアンテナ352,356,360,364の配列方向、ホーンアンテナ353,357,361,365の配列方向、および、ホーンアンテナ354,358,362,366の配列方向、を局部給電導波管234,235,237,238の配列方向に一致させることで、平面的なホーンアンテナの配列を実現することができる。この構成は所謂コーポレート給電方式の構成であり、このような構成にする場合でも、平面的に配列されたホーンアンテナから所定の指向性のビームが形成されるので、ペンシル型ビームを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの概略構成を示す外観斜視図
【図2】図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大斜視図
【図3】図1に示す導波管ホーンアレイアンテナの部分拡大平面図およびA−A’断面図
【図4】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図
【図5】短手方向入り込み量dおよび長手方向入り込み量hを可変させた場合の給電導波管200と結合導波管300との結合量を示した図
【図6】給電導波管の短手方向と結合導波管の延びる方向とが平行な導波管ホーンアレイアンテナの電磁波の伝搬を表すための説明図
【図7】他の構成の給電導波管と結合導波管との結合部付近の構造を示す概念図
【図8】給電導波管200の結合部付近を突出量に対する、給電導波管200と結合導波管300との結合度の変化を示した図
【図9】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナの他の構成を示す部分概略図
【図10】本実施形態の他の構成例を示すが概念図
【図11】本実施形態の導波管ホーンアレイアンテナのパーツ構成を示す外観斜視図および分解斜視図
【図12】図11に示す構成の導波管ホーンアレイアンテナのアンテナ特性を示す図
【図13】開口面が長円形の導波管を用いた導波管ホーンアレイアンテナの一部を示す部分構成図
【図14】ホーン先端に誘電体が装荷された状態を示す側面図
【図15】複数の誘電体レンズが一体形成された誘電体レンズ部材の構成を示す外観斜視図および側面断面図
【図16】レーダ装置の各種構成を示す概略構成図
【図17】レーダ装置の各種構成を示す概略構成図
【図18】平面状配列の導波管ホーンアンテナアレイのホーンアンテナ配列パターンを示す概略図
【符号の説明】
【0066】
1−導体部材
10a−上導体板
10b−下導体板
2−給電導波管
20a,20b−溝
3a〜3k,4a〜4k−ホーンアンテナ
31a〜31k,41a〜41k−ホーン
32a〜32k,42a〜42k−結合導波管
30a〜30c,40a,40b−空間的結合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電導波管と、
該給電導波管の電磁波搬送方向に垂直な方向を電磁波搬送方向とする複数の結合導波管、および該複数の結合導波管の前記給電導波管と対向する端部にそれぞれ設置されたホーンを備えた複数のホーンアンテナと、
を備え、前記複数のホーンアンテナが前記給電導波管に対して所定の配列で設置されている導波管ホーンアレイアンテナにおいて、
前記複数のホーンアンテナは、前記ホーンが設置されていない側の前記結合導波管の端部が、前記給電導波管の延びる方向と垂直な方向にて前記給電導波管へ部分的に入り込んだ形状で設置されていることを特徴とする導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項2】
前記給電導波管の開口面と前記複数の結合導波管の開口面とが、それぞれの導波管の延びる方向に対して長手方向と短手方向とを有する形状からなり、
前記給電導波管の長手方向と前記複数の結合導波管の長手方向とが所定角を有する関係で、前記給電導波管に前記複数の結合導波管が設置されている請求項1に記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項3】
前記複数の結合導波管は、前記給電導波管の延びる方向に、該給電導波管内を伝搬する信号の管内波長の略1/2の間隔で配置され、且つ、前記給電導波管の延びる方向に隣り合う結合導波管は、前記給電導波管の前記延びる方向に垂直な方向の対向する端部にそれぞれ配置される請求項1または請求項2に記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項4】
前記複数のホーンアンテナは、電磁波の放射方向が前記給電導波管のE面に垂直な方向となる関係で前記給電導波管に設置され、
該給電導波管は、前記E面で2分割される形状に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項5】
前記複数のホーンアンテナの開口部にそれぞれ対応する複数の誘電体レンズを備え、且つ、該複数の誘電体レンズが一体成形されている請求項1〜4のいずれかに記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の導波管ホーンアレイアンテナを備え、該導波管ホーンアレイアンテナで送受信する電磁波を用いて物標探知を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項1】
給電導波管と、
該給電導波管の電磁波搬送方向に垂直な方向を電磁波搬送方向とする複数の結合導波管、および該複数の結合導波管の前記給電導波管と対向する端部にそれぞれ設置されたホーンを備えた複数のホーンアンテナと、
を備え、前記複数のホーンアンテナが前記給電導波管に対して所定の配列で設置されている導波管ホーンアレイアンテナにおいて、
前記複数のホーンアンテナは、前記ホーンが設置されていない側の前記結合導波管の端部が、前記給電導波管の延びる方向と垂直な方向にて前記給電導波管へ部分的に入り込んだ形状で設置されていることを特徴とする導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項2】
前記給電導波管の開口面と前記複数の結合導波管の開口面とが、それぞれの導波管の延びる方向に対して長手方向と短手方向とを有する形状からなり、
前記給電導波管の長手方向と前記複数の結合導波管の長手方向とが所定角を有する関係で、前記給電導波管に前記複数の結合導波管が設置されている請求項1に記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項3】
前記複数の結合導波管は、前記給電導波管の延びる方向に、該給電導波管内を伝搬する信号の管内波長の略1/2の間隔で配置され、且つ、前記給電導波管の延びる方向に隣り合う結合導波管は、前記給電導波管の前記延びる方向に垂直な方向の対向する端部にそれぞれ配置される請求項1または請求項2に記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項4】
前記複数のホーンアンテナは、電磁波の放射方向が前記給電導波管のE面に垂直な方向となる関係で前記給電導波管に設置され、
該給電導波管は、前記E面で2分割される形状に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項5】
前記複数のホーンアンテナの開口部にそれぞれ対応する複数の誘電体レンズを備え、且つ、該複数の誘電体レンズが一体成形されている請求項1〜4のいずれかに記載の導波管ホーンアレイアンテナ。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の導波管ホーンアレイアンテナを備え、該導波管ホーンアレイアンテナで送受信する電磁波を用いて物標探知を行うことを特徴とするレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−203554(P2006−203554A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13096(P2005−13096)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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