説明

導電性回路基板の製造方法

【課題】 プリント配線板の導電性回路面内において、付着するハンダ粉末の量にばらつきが生ずる場合があった。
本発明はこの問題点を解決し、形成したハンダ回路で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分の補修し、ハンダ付着のバラツキを少なくする方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 プリント配線板上の導電性回路表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を含むスラリーを供給してハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成する導電性回路基板の製造する。この方法で形成したハンダ回路で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分に粘着性を付与し、該箇所にハンダ粉末を付着させ、又はハンダの付着量が不十分であった回路にハンダペーストを塗布し、これらのハンダ粉末又はハンダペーストを溶融することによりハンダ回路を補修することによりハンダ付着量のバラツキの少ないを特徴とする導電性回路基板の製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダ回路基板の製造方法に関し、更に詳しくは、プリント配線板上の微細な導電性回路表面に、ハンダ層を形成する導電性回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック基板、セラミック基板、あるいはプラスチック等をコートした金属基板等の絶縁性基板上に、回路パターンを形成したプリント配線板が開発され、その回路パターン上にIC素子、半導体チップ、抵抗、コンデンサ等の電子部品をハンダ接合して電子回路を構成させる手段が広く採用されている。
この場合、電子部品のリード端子を、回路パターンの所定の部分に接合させるためには、基板上の導電性回路表面に予めハンダ薄層を形成させておき、ハンダペーストまたはフラックスを印刷し、所定の電子部品を位置決め載置した後、ハンダ薄層またはハンダ薄層及びハンダペーストをリフローさせ、ハンダ接続させるのが一般的である。
【0003】
また最近では電子製品の小型化のためハンダ回路基板にはファインピッチ化が要求され、ファインピッチの部品、例えば0.3mmピッチのQFP(Quad Flat Package)タイプのLSI、CSP(Chip Size Package)、0.15mmピッチのFC(Flip Chip)などが多く搭載されている。このため、ハンダ回路基板には、ファインピッチ対応の精細なハンダ回路パターンが要求されている。
プリント配線板にハンダ膜によるハンダ回路を形成するためには、メッキ法、HAL(ホットエアーレベラ)法、あるいはハンダ粉末のペーストを印刷しリフローする方法などが行われている。しかし、メッキ法によるハンダ回路の製造方法は、ハンダ層を厚くするのが困難であり、HAL法、ハンダペーストの印刷による方法は、ファインピッチパターンへの対応が困難である。
【0004】
そのため、回路パターンの位置合わせ等の面倒な操作を必要とせずハンダ回路を形成する方法として、プリント配線板の導電性回路表面に、粘着性付与化合物を反応させることにより粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶解してハンダ回路を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1で開示された方法により、簡単な操作で微細なハンダ回路パターンを形成させ、信頼性の高い回路基板を提供することが可能となったが、この方法では乾式でハンダ粉末を回路基板に付着させるため、静電気により粉末が余分な部分に付着したり、粉末の飛散等が生じて、回路基板のファイン化の妨げとなったり、また粉末を効率的に利用できないといった問題点があった。
【0005】
そのため本発明者は、ハンダ粉末を含むスラリー中にプリント配線板を浸漬し、粘着性を付与した導電性回路表面にハンダ粉末を湿式プロセスで付着させる方法を出願している(例えば、特許文献2参照。)。
また、特許文献2に記載された、ハンダ粉末を含むスラリー中にプリント配線板を浸漬し、粘着性を付与した導電性回路表面にハンダ粉末を付着させる方式の場合、ハンダ粉はスラリー中で浮力を受けるため乾式の場合に比べその付着力が低くなる。そのため、本発明者は、ハンダ粉末の付着に際して、ハンダ粉末を含むスラリーの吐出装置を用いて、スラリーに圧力を加え、ハンダ粉を粘着性を付与した回路部分に強固に付着させる方法を出願している(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平7−7244号公報
【特許文献2】特開2006−278650号公報
【特許文献3】特願2005−261835号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載の方法により、導電性回路部分にハンダ粉末を強固に付着させることが可能となったが、プリント配線板の導電性回路面内において、付着するハンダ粉末の量にばらつきが生ずる場合があった。それは、特許文献3に記載の方法は、プリント配線板の表面をディスペンサーのような装置を用いて走査しながらハンダスラリーを供給するため、その走査速度の変化や、ディスペンサーにおける供給圧力の変化等により、粘着性を付与した導電性回路部分へのハンダ粉末の付着量に差が生ずるためである。
本発明はこの問題点を解決し、ハンダ回路の形成において、ハンダの付着量が不十分であった回路部分を補修し、ハンダ粉末の付着量の差を少なくする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意努力検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、以下に関する。
(1) プリント配線板上の導電性回路表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を含むスラリーを供給してハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成する導電性回路基板の製造方法であって、前記方法で形成したハンダ回路で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分に粘着性を付与し、該箇所にハンダ粉末を付着させ、そのハンダ粉末を溶融することによりハンダ回路を補修することを特徴とする導電性回路基板の製造方法。
(2) 粘着性の付与をハンダ付け用フラックスの塗布により行ことを特徴とする上記(1) に記載の導電性回路基板の製造方法。
(3) ハンダ粉末として、ハンダボールを用いることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の導電性回路基板の製造方法。
【0008】
(4) ハンダ粉末の付着にバキュームピンセットを用いることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性回路基板の製造方法。
(5) プリント配線板上の導電性回路表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を含むスラリーを供給してハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成する導電性回路基板の製造方法であって、前記方法で形成したハンダ回路で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分に、ハンダペーストを塗布し、そのハンダペーストを溶融することによりハンダ回路を補修することを特徴とする導電性回路基板の製造方法。
(6) ハンダペーストの塗布に、ディスペンサーを用いることを特徴とする上記(5)に記載の導電性回路基板の製造方法。
(7) ハンダ回路の形成におけるハンダの溶融及びハンダ回路の補修におけるハンダの溶融をハンダ合金の融点に対し、+20〜+50℃の温度で行ことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、微細な回路パターンや微少なバンプを有するプリント配線板において、ハンダ層の厚さを均一にすることが可能となる効果を有する。よって、電子部品を実装した回路基板の小型化と高信頼性化が実現でき、優れた特性の電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を、その製造プロセスの順に、詳細に説明する。
本発明の対象となるプリント配線板は、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板、ガラス布基板、紙基質エポキシ樹脂基板、セラミックス基板等に金属板を積層した基板、あるいは金属基材にプラスチックあるいはセラミックス等を被覆した絶縁基板上に、金属等の導電性物質を用いて回路パターンを形成した片面プリント配線板、両面プリント配線板、多層プリント配線板あるいはフレキシブルプリント配線板等である。その他、IC基板、コンデンサ、抵抗、コイル、バリスタ、ベアチップ、ウェーハ等への適用も可能である。
この中で、本発明は、BGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・サイズ・パッケージ)接合用等のバンプ形成に適用するのが好ましい。
【0011】
本発明は、上記プリント配線板上の導電性回路表面を、粘着性付与化合物と反応させることにより粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融して回路基板にハンダ層を先ず形成する。
回路を形成する導電性物質としては、ほとんどの場合銅が用いられているが、本発明ではこれに限定されず、後述する粘着性付与物質により表面に粘着性が得られる導電性の物質であればよい。これらの物質として、例えば、Ni、Sn、Ni−Au、ハンダ合金等を含む物質が例示できる。
【0012】
本発明で用いることが好ましい粘着性付与化合物としては、ナフトトリアゾール系誘導体、べンゾトリアゾール系誘導体、イミダゾール系誘導体、べンゾイミダゾール系誘導体、メルカプトべンゾチアゾール系誘導体及びべンゾチアゾールチオ脂肪酸等が挙げられる。これらの粘着性付与化合物は特に銅に対しての効果が強いが、他の導電性物質にも粘着性を付与することができる。
【0013】
本発明においては、べンゾトリアゾール系誘導体は一般式(1)で表される。
【化1】


(但し、R1〜R4は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0014】
ナフトトリアゾール系誘導体は一般式(2)で表される。
【化2】


(但し、R5〜R10は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0015】
イミダゾール系誘導体は一般式(3)で表される。
【化3】


(但し、R11、R12は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0016】
べンゾイミダゾール系誘導体は一般式(4)で表される。
【化4】


(但し、R13〜R17は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0017】
メルカプトべンゾチアゾール系誘導体は一般式(5)で表される。
【化5】


(R18〜R21は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0018】
べンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘導体は一般式(6)で表される。
【化6】


(但し、R22〜R26は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、1または2のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0019】
これらの化合物のうち、一般式(1)で示されるべンゾトリアゾール系誘導体としてはR1〜R4は、一般には炭素数が多いほうが粘着性が強い。
一般式(3)及び一般式(4)で示されるイミダゾール系誘導体及びべンゾイミダゾール系誘導体のR11〜R17においても、一般に炭素数の多いほうが粘着性が強い。
一般式(6)で示されるべンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘導体においては、R22〜R26は炭素数1または2が好ましい。
【0020】
本発明では、該粘着性付与化合物の少なくとも一つを水または酸性水に溶解し、好ましくはpH3〜4程度の微酸性に調整して用いる。pHの調整に用いる物質としては、導電性物質が金属であるときは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸をあげることができる。また有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸等が使用できる。該粘着性付与化合物の濃度は厳しく限定はされないが溶解性、使用状況に応じて適宜調整して用いるが、好ましくは全体として0.05質量%〜20質量%の範囲内の濃度が使用しやすい。これより低濃度にすると粘着性膜の生成が不十分となり、性能上好ましくない。
【0021】
処理温度は室温よりは若干加温したほうが粘着性膜の生成速度、生成量が良い。粘着性付与化合物濃度、金属の種類などにより変わり限定的でないが、一般的には30℃〜60℃位の範囲が好適である。浸漬時間は限定的でないが、作業効率から5秒〜5分間位の範囲になるように他の条件を調整することが好ましい。
なおこの場合、溶液中に銅をイオンとして100〜1000ppmを共存させると、粘着性膜の生成速度、生成量などの生成効率が高まるので好ましい。
【0022】
処理すべきプリント配線板は、ハンダ不要の導電性回路部分をレジスト等で覆い、回路パターンの部分のみが露出した状態にしておき、粘着性付与化合物溶液で処理するのが好ましい。
ここで使用する前述の粘着性付与化合物溶液にプリント配線板を浸漬するか、または溶液を塗布すると、導電性回路表面が粘着性を示す。
【0023】
本発明では、導電性回路表面の粘着部に、例えば図1に示すようなハンダ粉末を含むスラリーの吐出装置を用いてハンダ粉末を付着させる。
回路表面の粘着部にハンダ粉末を付着させる場合、スラリー中にプリント配線板を浸漬してハンダ粉末を付着させる方法が考えられるが、前述したように、ハンダ粉末はスラリー中で浮力を受けるため乾式の場合に比べその付着力が低くなる。
本発明の、ハンダ粉末を含むスラリーの吐出装置は、例えば、図1に示すように、スラリー3(図1でスラリーは、タンク中で、ハンダ粉末部分と溶媒部分に分離している。)を貯えるタンク1、該タンクに設けられたスラリーの吐出管2、その吐出口2’、タンクに接続されている空気等の気体あるいは溶媒の送入管7,その送入管に設けられ、タンクに貯えられたスラリーを吐出口から放出するためのポンプ4または開閉バルブ5を有している。6はタンク1に、ハンダ粉末を含むスラリーを供給するための供給口である。
【0024】
図1に示した装置では、供給口6からタンク1に導入されたスラリーを、ポンプ4および開閉バルブ5により供給する圧搾空気、または、スラリーを構成する溶媒により、タンク1を加圧することにより、スラリー吐出口2’から放出する。すなわち、本構造のスラリー吐出装置によれば、スラリー中に含まれるハンダ粉末は、ポンプおよび開閉バルブの何れも経由しないため、ハンダ粉末がポンプや開閉バルブの機械部分により押しつぶされることがなく、形状の安定したハンダ粉末を供給することが可能となる。
【0025】
本発明に用いるハンダ粉末を含むスラリーは、液体中のハンダ粉末の濃度は、好ましくは0.5体積%〜10体積%の範囲内、より好ましくは、3体積%〜8体積%の範囲内とする。
本発明に用いるハンダ粉末を含むスラリーは、その溶媒として、水を用いるのが好ましい。また水によりハンダ粉末が酸化するのを防ぐため、脱酸素した水を用いたり、水に防錆剤を添加するのが好ましい。
【0026】
本発明のハンダ回路基板の製造方法に使用するハンダ粉末の金属組成としては、例えばSn−Pb系、Sn−Pb−Ag系、Sn−Pb−Bi系、Sn−Pb−Bi−Ag系、Sn−Pb−Cd系が挙げられる。また最近の産業廃棄物におけるPb排除の観点から、Pbを含まないSn−In系、Sn−Bi系、In−Ag系、In−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Au系、Sn−Bi−Ag−Cu系、Sn−Ge系、Sn−Bi−Cu系、Sn−Cu−Sb−Ag系、Sn−Ag−Zn系、Sn−Cu−Ag系、Sn−Bi−Sb系、Sn−Bi−Sb−Zn系、Sn−Bi−Cu−Zn系、Sn−Ag−Sb系、Sn−Ag−Sb−Zn系、Sn−Ag−Cu−Zn系、Sn−Zn−Bi系が好ましい。
【0027】
上記の具体例としては、Snが63質量%、Pbが37質量%の共晶ハンダ(以下63Sn−37Pbと表す。)を中心として、62Sn−36Pb−2Ag、62.6Sn−37Pb−0.4Ag、60Sn−40Pb、50Sn−50Pb、30Sn−70Pb、25Sn−75Pb、10Sn−88Pb−2Ag、46Sn−8Bi−46Pb、57Sn−3Bi−40Pb、42Sn−42Pb−14Bi−2Ag、45Sn−40Pb−15Bi、50Sn−32Pb−18Cd、48Sn−52In、43Sn−57Bi、97In−3Ag、58Sn−42In、95In−5Bi、60Sn−40Bi、91Sn−9Zn、96.5Sn−3.5Ag、99.3Sn−0.7Cu、95Sn−5Sb、20Sn−80Au、90Sn−10Ag、90Sn−7.5Bi−2Ag−0.5Cu、97Sn−3Cu、99Sn−1Ge、92Sn−7.5Bi−0.5Cu、97Sn−2Cu−0.8Sb−0.2Ag、95.5Sn−3.5Ag−1Zn、95.5Sn−4Cu−0.5Ag、52Sn−45Bi−3Sb、51Sn−45Bi−3Sb−1Zn、85Sn−10Bi−5Sb、84Sn−10Bi−5Sb−1Zn、88.2Sn−10Bi−0.8Cu−1Zn、89Sn−4Ag−7Sb、88Sn−4Ag−7Sb−1Zn、98Sn−1Ag−1Sb、97Sn−1Ag−1Sb−1Zn、91.2Sn−2Ag−0.8Cu−6Zn、89Sn−8Zn−3Bi、86Sn−8Zn−6Bi、89.1Sn−2Ag−0.9Cu−8Znなどが挙げられる。また本発明に用いるハンダ粉末として、異なる組成のハンダ粉末を2種類以上混合したものでもよい。
【0028】
ハンダ粉末の粒径を変えることで形成されるハンダ膜厚を調整できることから、ハンダ粉末の粒径は形成するハンダコート厚から選定される。たとえば日本工業規格(JIS)には、ふるい分けにより63〜22μm、45〜22μm及び38〜22μm等の規格が定められている粉末や、63μm以上のボール等から選択する。
本発明のハンダ粉末の平均粒径測定には通常、JISにより定められた、標準ふるいと天秤による方法を用いることができる。また、この他にも顕微鏡による画像解析や、エレクトロゾーン法によるコールターカウンターでも行うことができる。コールターカウンターについては「粉体工学便覧」(粉体工学会編、第2版p19〜p20)にその原理が示されているが、粉末を分散させた溶液を隔壁にあけた細孔に通過させ、その細孔の両側で電気抵抗変化を測定することにより粉末の粒径分布を測定するもので、粉径の個数比率を再現性良く測定することが可能である。本発明のハンダ粉末の平均粒径は上述の方法を用いて定めることができる。
【0029】
本発明で付着させたハンダ粉末の、リフローのプロセスはプレヒートが温度130〜180℃、好ましくは、130〜150℃、プレヒート時間が60〜120秒、好ましくは、60〜90秒、リフローは温度が用いる合金の融点に対し+20〜+50℃、好ましくは、合金の融点に対し+20〜+30℃、リフロー時間が30〜60秒、好ましくは、30〜40秒である。
上記のリフロープロセスを窒素中でも大気中でも実施することが可能である。窒素リフローの場合は酸素濃度を5体積%以下、好ましくは0.5体積%以下とすることで大気リフローの場合よりハンダ回路へのハンダの濡れ性が向上し、ハンダボールの発生も少なくなり安定した処理ができる。
【0030】
本発明の一つは、前記方法で形成したリフロー後のハンダ回路で、ハンダの付着量が不十分であって、ハンダ量不足している回路部分に粘着性を付与し、該箇所にハンダ粉末を付着させ、そのハンダ粉末を溶融することによりハンダ回路を補修することを特徴とする。
本発明で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分の識別には、拡大鏡を用いた目視の他、光学センサーや接触センサーを用いた自動識別装置を用いることができる。
本発明で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分への粘着性の付与は、例えば、ハンダ付け用フラックスの塗布により行うことができる。ハンダ付け用フラックスとは、ロジン等の樹脂成分にチクソトロピック剤、溶剤等を混ぜたものである。
【0031】
本発明の、ハンダ粉末の溶融は、前述した条件と同様の条件を用いることができる。すなわち、用いる合金の融点に対し+20〜+50℃、好ましくは、合金の融点に対し+20〜+30℃、リフロー時間が30〜60秒、好ましくは、30〜40秒の範囲内を用いることができる。
本発明では、ハンダの付着量が不十分であった回路部分へのハンダ粉末の付着にバキュームピンセットを用いるのが好ましい。バキュームピンセットとは、ペン型の本体の先端に粉体等を真空吸着させるパッドを有し、その本体先端部に粉体等を吸着させるときは本体内部を真空状態とし、粉体等を脱離する場合は真空状態を解除する機構を有する装置である。図2は、バキュームピンセットの先端部にハンダボールを吸着させた例である。
【0032】
本発明では、ハンダの付着量が不十分であった回路部分の補修に用いるハンダ粉末に、ハンダボールを用いるのが好ましい。ハンダボールとは、アトマイズ法等により製造した球状のハンダである。ハンダボールは、球状であるため、バキュームピンセットの先端部に保持しやすく、バキュームピンセットを用いて回路部分の補修に用いるのに適しているからである。
本発明の他の方法は、ハンダの付着量が不十分であった回路部分の補修を、ハンダペーストを塗布し、そのハンダペーストを溶融することにより行うことを特徴とする。
【0033】
ハンダペーストとは、ハンダ粉末とフラックスとを混練してペースト状にしたものである。例えば、フラックスとして、フラックス全量に対し、20〜60質量%のロジン等の樹脂成分、0.04〜20質量%のチクソトロピック剤、0.01〜20質量%の有機酸成分、0.02〜20質量%の有機ハロゲン化合物、0.05〜20質量%の還元剤及び残部として溶剤を用いたものが例示できる。このフラックスを、例えば、ハンダペースト全量に対し14〜8質量%と、ハンダ粉末86〜92質量%とを混練してハンダペーストとできる。混練はプラネタリーミキサー等の装置を用いて行われる。
【0034】
本発明において、回路部分の補修に前述のハンダボールを用いた補修は、ハンダボールがバキュームピンセットの先端部に保持しやすく作業性が良いが、ハンダボールを回路部分に付着させるために、事前に、回路部分に粘着性を付与する必要がある。これに対して、回路部分の補修にハンダペーストを用いた場合は、ハンダペースト自体が粘着性を有するため、事前に回路部分に粘着性を付与する必要性がなく、作業工程を簡略化することが可能となる。また、ハンダボールを用いた補修方法では、供給できるハンダ量がハンダボールの大きさに依存するが、ハンダペーストを用いた補修方法では、ハンダの供給量をハンダペーストの量により調整することができる。
【0035】
本発明では、ハンダの付着量が不十分であった回路部分の補修に用いるハンダペーストの塗布に、ディスペンサーを用いるのが好ましい。ディスペンサーとは、液体状物を定量で吐出する注射器状の装置であり、高精度の吐出量制御や、吐出場所の位置あわせが可能となる装置である。このような装置を用いることにより、ハンダの付着量が不十分であった回路部分に、その不足量に適したハンダペーストを、高い位置精度で供給することが可能となる。
【0036】
本発明で作製したハンダ回路基板は、電子部品を載置する工程と、ハンダをリフローして電子部品を接合する工程とを含む電子部品の実装方法に好適に用いることができる。例えば本発明で作製したハンダ回路基板の、電子部品の接合を所望する部分に、印刷法等でハンダペーストを塗布し、電子部品を載置し、その後加熱してハンダペースト中のハンダ粉末を溶融し凝固させることにより電子部品を回路基板に接合することができる。
【0037】
ハンダ回路基板と電子部品の接合方法(実装方法)としては、例えば表面実装技術(SMT)を用いることができる。この実装方法は、まず本発明方法またはハンダペーストを印刷法によりハンダ回路基板を準備する。例えば回路パターンの所望する箇所に塗布する。次いで、本発明方法によりハンダを付着またはリフローしたチップ部品やQFPなどの電子部品を回路パターンハンダペースト上に載置し、リフロー熱源により一括してハンダ接合をする。リフロー熱源には、熱風炉、赤外線炉、蒸気凝縮ハンダ付け装置、光ビームハンダ付け装置等を使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
最小電極間隔が50μm、電極径が80μmのプリント配線板を作製した。導電性回路には銅を用いた。
粘着性付与化合物溶液として、一般式(3)のR12のアルキル基がC1123、R11が水素原子であるイミダゾール系化合物の2質量%水溶液を、酢酸によりpHを約4に調整して用いた。該水溶液を40℃に加温し、これに塩酸水溶液により前処理した前記プリント配線板を3分間浸漬し、銅回路表面に粘着性物質を生成させた。
【0039】
ハンダ粉末を含むスラリーは、96.5Sn/3.5Agの、平均粒径70μmのハンダ粉末(ハンダ粉末の平均粒径の測定には、マイクロトラックを用いた。)を、約20gと、脱酸素した純水約100gとを混合して製造した。
ハンダ粉末を含むスラリーの吐出装置は、図1に示す構造の装置を用いた。
上記製造したハンダ粉末を含むスラリーを、図1のタンク内に入れた。その後粘着性を付与した基板上に吐出口をセットし、開閉バルブを開放しハンダ粉末を含むスラリーを、基板表面を走査することにより、回路が覆われるように吐出した。
その後基板上にある余分なハンダ粉末を純水で洗い流し、基板を乾燥させた。
洗い流した粉末は回収し、再度ハンダ粉末の付着に使用した。
【0040】
このプリント配線板を240℃のオーブンに入れ、ハンダ粉末を溶融し、銅回露出部上に厚さ約50μmの96.5Sn/3.5Agハンダバンプを形成した。
製造されたプリント配線板を、拡大鏡を用いて観察したところ、200カ所の電極部の内、3カ所の電極においてハンダバンプの形成が不十分であった。具体的には、ハンダバンプの高さが不十分であった。この3カ所の電極部にロジン系のフラックスを塗布し、図2に示したバキュームピンセットを用いて、直径150μmのハンダボールを付着させた。この付着させたハンダボールを、レンズで集光した熱線ビームを用いて溶解し、プリント配線板の補修を完了した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、微細な回路パターンにおいてもハンダ層の厚さが均一で、また、ハンダバンプの高さが一定の、信頼性が著しく向上した電子回路基板を製造することが出来た。この結果、微細な回路パターンを有し信頼性の高い電子部品を実装した回路基板の小型化と高信頼性化が実現でき、電子回路基板、高信頼性、高実装密度を実現できる電子部品を実装した回路基板、優れた特性の電子機器を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のハンダ粉末を含むスラリーの吐出装置の一例である。
【図2】バキュームピンセットにハンダボールを吸着させた例である。
【符号の説明】
【0043】
1 タンク
2 スラリーの吐出管
2’ スラリーの吐出口
3 スラリー
3’ 溶媒
4 ポンプ
5 開閉バルブ
6 スラリーの供給口
7 空気等の送入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板上の導電性回路表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を含むスラリーを供給してハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成する導電性回路基板の製造方法であって、前記方法で形成したハンダ回路で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分に粘着性を付与し、該箇所にハンダ粉末を付着させ、そのハンダ粉末を溶融することによりハンダ回路を補修することを特徴とする導電性回路基板の製造方法。
【請求項2】
粘着性の付与をハンダ付け用フラックスの塗布により行ことを特徴とする請求項1に記載の導電性回路基板の製造方法。
【請求項3】
ハンダ粉末として、ハンダボールを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性回路基板の製造方法。
【請求項4】
ハンダ粉末の付着にバキュームピンセットを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性回路基板の製造方法。
【請求項5】
プリント配線板上の導電性回路表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を含むスラリーを供給してハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成する導電性回路基板の製造方法であって、前記方法で形成したハンダ回路で、ハンダの付着量が不十分であった回路部分に、ハンダペーストを塗布し、そのハンダペーストを溶融することによりハンダ回路を補修することを特徴とする導電性回路基板の製造方法。
【請求項6】
ハンダペーストの塗布に、ディスペンサーを用いることを特徴とする請求項5に記載の導電性回路基板の製造方法。
【請求項7】
ハンダ回路の形成におけるハンダの溶融及びハンダ回路の補修におけるハンダの溶融をハンダ合金の融点に対し+20〜+50℃の温度で行ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−141034(P2008−141034A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326655(P2006−326655)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】