説明

導電性物質吸着性樹脂フイルム、導電性物質吸着性樹脂フイルムの製造方法、それを用いた金属層付き樹脂フイルム、及び、金属層付き樹脂フイルムの製造方法

【課題】樹脂フイルムとの密着性に優れ、樹脂膜との界面における凹凸が小さい導電性層をその表面に容易に形成しうる、導電性物質吸着性樹脂フイルムおよびその製造方法、それを用いて得られる、絶縁性の樹脂フイルムとの密着性に優れた高精細の配線を形成しやすい金属層付樹脂フイルムおよび高精細の配線を有するプリント配線板を簡易な方法で作製しうる材料である金属層付き樹脂フイルムの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2層の樹脂層からなり、該樹脂層の少なくとも1層が、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層である導電性物質吸着性樹脂フイルム。この導電性物質吸着性樹脂層に金属を吸着させ、めっき処理を行うことで金属層付き樹脂フイルムを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性物質吸着性樹脂フイルム、その製造方法、さらには、該導電性物質吸着性樹脂フイルムを用いて得られる金属層付き樹脂フイルムおよびその製造方法に関し、詳細には、電子材料分野で使用される高密度配線を有するフレキシブルプリント配線板を作成するのに用いられる金属層付樹脂フイルムの作製に有用な導電性物質吸着性樹脂フイルムとその製造方法、並びにそれを用いて得られる金属層付き樹脂フイルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等も小型化かつ高密度化が進んでいる。
その中で金属層付樹脂フイルム基板は、液晶画面に画像を表示するための駆動用半導体を実装するための基板や屈曲性を要求される稼動部に用いられる基板として汎用されている。近年、液晶画面表示用ドライバーICチップを実装する手法としてCOF[チップオンフイルム]が注目されてきている。COFは従来の実装法の主流であったTCP(テープキャリアーパッケージ)に比べ、ファインピッチ実装が可能であるとともに、ドライバーICの小型化、およびコストダウンを図ることができると言われている。近年COFにおいて、最近の液晶表示画面の高精細化、液晶駆動用ICの小型化等に伴い、電子回路の高精細化、ファインピッチ化が強く求められるようになってきた。
【0003】
これらファインピッチ配線の形成にあたっては、従来の導電性パターン特にプリント配線板の分野で有用な金属パターン形成方法として「サブトラクティブ法」と「セミアディティブ法」が知られている。サブトラクティブ法とは、絶縁性樹脂フイルム上に形成された金属の層に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、ついで、金属をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。サブトラクティブ法に用いられる金属被覆樹脂基板は金属箔上に樹脂ワニス層もうけ樹脂ワニスを固めたものや、絶縁性樹脂フイルム上に熱可塑性の層をもうけ、金属箔をラミネートしたもの、もしくは絶縁性樹脂フイルムの表面に何らかの方法で給電層を設け給電層に電気を流して電気めっきを行うことによって作成される。この手法で形成される給電層はめっき法、スパッタリング法、蒸着法や薄い金属箔をラミネートしたりする方法などが用いられている。
【0004】
一方セミアディティブ法は絶縁性樹脂フイルムの表面に何らかの方法で給電層を設け、この給電層の上に活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、給電層に電気を流して電気めっきを行い、非レジスト存在部に金属配線を形成したのち、非金属配線部の給電層をエッチング処理して金属パターンを形成する方法である。この手法で形成される給電層はめっき法、スパッタリング法、蒸着法や薄い金属箔をラミネートしたりする方法などが用いられている。しかしながら金属箔上に樹脂ワニス層を形成した金属被覆樹脂基板や金属箔と絶縁性樹脂フイルムの間に熱可塑性の層を形成してラミネートしたものは微細配線を形成しようとすると金属箔起因の凸凹のため微細な配線が形成できないという問題があり、逆に銅箔の凸凹を小さくしていくと金属層と絶縁性樹脂フイルムの間に十分な密着がとれないという問題があった。
【0005】
一方金属スパッタリング法、蒸着法により給電層を設ける方法は平滑な面の上に金属層を設けるため、微細な配線は形成しやすいが金属と絶縁性樹脂フイルムの間の密着が十分ではなく、更に製造のためには大掛かりな真空設備が必要である上に作業が煩雑で形成速度が遅く歩留まりが悪くコスト高になるという問題があった。更に全面に金属層を形成したあと表裏の回路の接合のための穴をあけるため、穴の部分のめっきによる接合が別途必要になり、既に形成されている金属層の上に更にめっきによる金属層を形成せざるをえず、必要以上に金属層が厚くなるために、回路形成時にエッチングに時間がかかるという問題もあった。
【0006】
上記のように基板もしくは絶縁性樹脂フイルム上に配線パターンを形成する場合には絶縁性樹脂フイルムと配線パターンの密着性が問題となる。たとえば銅箔上に絶縁性樹脂であるポリイミドワニス層を形成し、熱反応により金属層付樹脂フイルムを形成する場合、その密着性は銅箔層とポリイミドワニス層との密着性によることになるが、銅箔の表面を凹凸処理してアンカー効果により密着性を発現させるのは、配線が細く、配線間が狭くなるほど配線形状に影響を与えない程度に凹凸も小さくせざるを得ず十分な密着をだすことができないという問題があった。一方スパッタリング法でポリイミド上に銅を形成させる方法は十分な密着が出ない上に成膜速度が遅いためコスト高になるという問題があった。
この問題を解決する為に、例えば基板表面にラジカル重合性化合物をグラフトして表面改質を行うことで、基板の凹凸を最小限にとどめ、かつ、基板の処理工程を簡易にする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、この方法では、高価な装置(γ線発生装置、電子線発生装置)が必要であった。また、使用される基板は通常の市販のプラスチック基板を使用しているため、グラフトポリマーが、そこに導電性素材を強固に付着させる程、十分には生成されず、基板と導電性層との密着が実用上の強度に達していないという問題があった。また導電性層形成の一手段として、高分子末端が基板表面に固定化された表面グラフトポリマーを用いて金のナノ粒子を一段階で集積させる方法が報告されている(例えば、非特許文献1、2参照。)。しかしながら、ここに記載の条件では、荷電ポリマーと荷電粒子との静電力による粒子集積現象において、実用上満足できる程度の相互作用が形成されず、実用上はさらなる導電性素材密着性向上が望まれている。
更に、このような表面グラフトポリマー生成にあたっては、基板表面にグラフトポリマーの原料となるモノマー成分を接触させながらエネルギー付与をする工程を必要とし、均一な接触、および均一なエネルギー付与といった工程の均一性の維持が困難であるという問題があった。
【特許文献1】特開昭58−196238号明細書
【非特許文献1】Liz−Marzan,L.Mら著、「J.Phys.Chem.」、第99巻、P15120(1995年)
【非特許文献2】Carignano,M.A.ら著「Mol.Phys.」、第100巻、P2993(2002年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術的問題点を考慮してなされた本発明の目的は、樹脂フイルムとの密着性に優れ、樹脂膜との界面における凹凸が小さい導電性層をその表面に容易に形成しうる、導電性物質吸着性樹脂フイルムおよびその製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、前記本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを用いて得られる、絶縁性の樹脂フイルムとの密着性に優れた高精細の配線を形成しやすい金属層付樹脂フイルムおよび高精細の配線を有するプリント配線板を簡易な方法で作製しうる材料である金属層付き樹脂フイルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、次のような構成を備えることにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> 少なくとも2層の樹脂層からなり、該樹脂層の少なくとも1層が、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層である導電性物質吸着性樹脂フイルム。
<2>前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する分子量が1000以上300000以下のオリゴマーを含む吸着性樹脂前駆体層にエネルギー付与することにより、隣接する他の樹脂層との間で化学的、電気的、或いは、物理的結合を生起して密着することで形成されたものであることを特徴とする<1>記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
<3>前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、支持体を構成する樹脂層の片面もしくは両面に設けられており、前記吸着性樹脂層と支持体を構成する樹脂層とが直接化学的、電気的、或いは、物理的結合を生起して密着していることを特徴とする<1>又は<2>記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【0009】
<4>前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、支持体を構成する樹脂層の片面もしくは両面に設けられており、前記吸着性樹脂層と支持体を構成する樹脂層との間に存在し、吸着性樹脂層、及び、支持体を構成する樹脂層と、化学的、電気的、又は、物理的結合を生起し、密着しうる1層以上の密着補助層を備えることを特徴とする<1>又は<2>記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
<5>前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、正の荷電を有するが正の荷電に解離しうる官能基、負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる官能基、金属と相互作用しうる非イオン性の極性基、導電性物質・金属とキレーション又は多座配位構造をとりうる官能基、包接可能な官能基、及び、結晶水として金属が保持される溶剤と相互作用する官能基から選択される、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物からなり、金属イオンもしくは金属微粒子と塩形成、多座配位、金属塩分散、包接、イオン注入、イオン交換などにより金属イオン、金属微粒子、及び、導電性微粒子から選ばれる少なくとも1種を吸着する性質をもつことを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
<6> 前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層を構成する導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物が、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体由来の化合物であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
<7> 前記導電性物質吸着性樹脂フイルムが最終的に表裏貫通する穴を備えることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【0012】
<8> 樹脂フイルム支持体に上に、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物を含有する吸着性樹脂層の前駆体層を設ける第一工程と、前記吸着性樹脂層の前駆体層にエネルギーを付与して、樹脂フイルム支持体と化学的、電気的、又は物理的結合を生起して密着した、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層を形成する第二工程と、隣接する樹脂フィルム支持体と化学的、電気的、又は物理的結合を生起しなかった未反応の導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物を除去する第三工程と、該第一工程から第三工程の前又は後に実施される樹脂フイルム支持体と吸着樹脂層との積層体、或いは、樹脂フイルム支持体と吸着樹脂層の前駆体層との積層体に穴をあける工程と、を含む導電性物質吸着性樹脂フイルムの製造方法。
<9> 前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層の前駆体層、もしくは、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層に、塩形成、多座配位、金属塩分散、包接、イオン注入、及び、イオン交換から選択される手段により、金属微粒子、導電性微粒子及び金属イオンから選択される1種以上を吸着保持させる工程を含むことを特徴とする<8>記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムの製造方法。
<10> <1>〜<7>のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムに、金属イオンを吸着保持させ、該金属イオンを還元することにより吸着性樹脂層中に金属を析出させることで吸着性樹脂層中に金属層を形成してなる金属層付き樹脂フイルム。
【0013】
<11> <1>〜<7>のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムに、金属イオンを吸着保持させる工程と、該金属イオンを還元することにより吸着性樹脂層中に金属を析出させることで金属層を形成する工程と、を含む金属層付樹脂フイルムの製造方法。
<12> <1>〜<7>のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムに、金属微粒子を吸着させるか、もしくは、金属イオンを吸着保持させた後還元して吸着性樹脂層中に金属微粒子を形成させる工程と、吸着した金属微粒子を触媒として用い、第二の金属の無電解めっきを行う工程と、を含む金属層付樹脂フイルムの製造方法。
<13> 前記無電解めっきを行う工程の後に、さらに、電気めっきを行う工程を有する<12>に記載の金属層付樹脂フイルムの製造方法。
<14> 前記無電解めっき工程を実施する前に、あらかじめ導電性物質吸着性樹脂フイルムに穴をあける工程を実施することを特徴とする<12>又は<13>記載の金属層付樹脂フイルムの製造方法。
【0014】
本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムは、樹脂フイルム上に導電性微粒子や金属微粒子、金属イオン等を吸着保持することが可能な導電性物質吸着性層を、樹脂フイルムと化学的、電気的、又は物理的結合を介して密着した状態で有するため、該導電性物質吸着性層に金属などの導電性物質を吸着させることで、樹脂フイルムと金属層の界面における凸凹が小さくかつ密着性の良好な金属層付樹脂フイルムを作製することができる。
更に、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを用いて作られた金属層付樹脂フイルムは、金属層が密着性良好な状態で、基板や絶縁樹脂層の基板として機能する樹脂フイルムと密着しているため、これを使用してプリント配線板を作製することができる。このようにしてプリント配線板を作製することで、基板上に、絶縁膜との密着性に優れた高精細の配線を有するプリント配線板及びそのようなプリント配線板を回路として備えた種々の電子機器、電気機器に応用可能であり、その用途は広い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂フイルムとの密着性に優れ、樹脂膜との界面における凹凸が小さい導電性層をその表面に容易に形成しうる、導電性物質吸着性樹脂フイルムおよびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを用いることで、絶縁性の樹脂フイルムとの密着性に優れた高精細の配線を形成しやすい金属層付樹脂フイルムおよび高精細の配線を有するプリント配線板を簡易な方法で作製しうる材料である金属層付き樹脂フイルムの製造方法を提供することができる。
金属層付樹脂フイルムの製造方法としては、導電性物質吸着性樹脂フイルムの全面に導電性微粒子、金属微粒子、金属イオンなどを吸着させ、めっき法などにより樹脂フイルムの全面にわたって導電層を形成する方法が挙げられ、得られた金属層付樹脂フイルムは、サブストラクティブ法もしくはセミアディティブ法による配線パターン形成用の材料として使用する。
また、導電性物質吸着性樹脂フイルムに表裏貫通する穴を形成しておくことにより、めっき法などにより樹脂フイルムの全面に導電層を設ける際、同時に穴部にも導電層を設けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムは少なくとも2層の樹脂層を有する積層構造をとる。具体的には、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層(以下、適宜、導電性物質吸着性樹脂層と称する)を少なくとも1層含んで構成され、少なくとも2層の樹脂層からなることを特徴とする。
ここで、少なくとも2層とは、樹脂フイルムからなる支持体を第1の樹脂層とし、その表面に、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層を1層有することを指し、必要に応じて他の層を含んで構成され、また、所望により2層以上の導電性物質吸着性樹脂層を有するものであってもよい。
このような導電性物質吸着性樹脂層は、樹脂フイルムからなる支持体(樹脂フイルム層)表面に、エネルギー付与により隣接する樹脂フィルム層との間に相互作用を形成しうる機能を有し、導電性物質或いは金属を吸着させうる官能基を有する化合物を含有する導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成し、エネルギーを付与することで形成されるものであることが好ましい。
【0017】
本発明に係る導電性物質吸着性樹脂フイルムの構成を、図1を参照して説明する。図1は、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムの構成の一態様を示す概略断面図である。ここでは、樹脂フイルム層(支持体)1の片面に導電性物質吸着性樹脂層を形成する態様を示す。図1は、樹脂フイルム層1の表面上に、該樹脂フイルム層1および導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と相互作用する密着補助層2、密着補助層2と相互作用し金属を吸着する能力のある導電性物質吸着性樹脂前駆体層3を順次有してなる構成を有する。なお、樹脂フイルム層1が直接、該導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と相互作用できる密着補助的な機能を有するものであれば密着補助層2は必ずしも必要ではない。
本発明に係る導電性物質吸着性樹脂フイルムでは、樹脂フイルム層(支持体)1の両面に導電性物質吸着性樹脂層を有していてもよい。この場合、樹脂フイルム層1の両面に導電性物質吸着性樹脂前駆体層3及び所望により設けられる密着補助層2を設け、両面からエネルギーを付与することで、図2に示すような両面に導電性物質吸着性樹脂層4を設けた導電性物質吸着性樹脂フイルムを得ることができる。
【0018】
本発明において支持体の機能を有する樹脂フイルム層1は、あらかじめ樹脂フイルムの表裏を貫通する穴をあけておいてもよいし、その後の工程で密着補助層2もしくは導電性物質吸着性樹脂前駆体層3あるいは、それにより得られる導電性物質吸着性樹脂層4を形成したのち、或いは、導電性物質吸着性樹脂層4に導電性微粒子、金属微粒子、金属イオン等の導電性物質を吸着させ、金属層5を形成した後に、これらの積層構造を貫通する穴を形成してもよい。
また、本発明に係る金属層付樹脂フイルムの製造方法としては、導電性物質吸着性樹脂フイルムにおける導電性物質吸着性層に何らかの方法で金属を吸着させた後、無電解めっき法や置換めっき法、電気めっき法などにより金属層を成長させる方法が挙げられる。
図3は、本発明に係る金属層付き樹脂フイルムの一態様を示す概略断面図である。樹脂フイルム層1表面には、前記密着補助層2を介して、密着補助層2と導電性物質吸着性樹脂前駆体層3を積層してエネルギー付与することで得られる導電性物質吸着性樹脂層4が形成され、その表面に金属層5を設けてなる。
【0019】
<導電性物質吸着性樹脂フイルム及びその製造方法>
以下、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを、その製造方法とともに詳細に説明する。
導電性物質吸着性樹脂フイルムは、もととなる樹脂フイルム層(本態様においては、樹脂製の支持体としての機能を有するため、以下、樹脂製支持体とも称する)の片面、もしくは両面の表面に、該樹脂フイルム層1の上に導電性物質吸着性樹脂層との密着を助ける密着補助層2を設ける工程を実施する。ここで、密着補助層2塗布液を塗布した後、エネルギーを付与して密着補助層2を硬化する工程を実施することができる。
次に、形成された密着補助層2の表面に導電性物質吸着性樹脂層の前駆体層3を設ける工程を行う。ここで、エネルギーを付与することで、該導電性物質吸着性樹脂層の前駆体層3に含まれる化合物と密着補助層2に含まれる化合物とが、化学的、電気的、又は物理的な相互作用を形成し、両者が密着して導電性物質吸着性樹脂層4が形成される。
このように、樹脂製支持体1表面に導電性物質吸着性層4が形成され、積層構造を有する本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムが得られる。
【0020】
このような導電性物質吸着性樹脂フイルムに対し、該樹脂フイルムの裏面側の配線と接続するために貫通孔(穴)をあける工程、導電性物質吸着性樹脂層に金属を付与して金属層を形成する工程を行って、金属層付きの樹脂フィルムを得ることができる。なお、孔をあける工程は、必要に応じて樹脂製支持体1に対し行ったのち、密着補助層2や導電性物質吸着性層4或いはその前駆体層3を形成してもよく、樹脂製支持体1の少なくとも1面に密着補助層2や導電性物質吸着性層4或いはその前駆体層3を形成した後に行ってもよい。
各工程、即ち、それぞれの層を形成する工程、或いは、穴を開ける工程などは、必要であれば順次おこなっても同時におこなってもよいし、不要であれば省くことができる。しかしながら、金属層と樹脂フイルムの密着の観点からは、樹脂フイルム層1の形成工程と同時もしくは後の工程で密着補助層2の形成工程が実施されること、樹脂フイルム層1の形成工程もしくは密着補助層2の形成工程と同時もしくは後の工程で導電性物質吸着性樹脂前駆体層3の形成工程が実施されることから、穴を開ける工程は、樹脂フイルム層1の形成工程と同時もしくは密着補助層2の形成工程より前でおこなうことが好ましい。
なお、このような導電性物質吸着性樹脂フイルムは、例えば、その表面に高密着性の金属層を形成するために用いてもよく、溶液中の金属イオンの吸着、回収などに用いてもよい。
【0021】
ここで、さらに金属層を設け、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを金属層付樹脂フイルムの作製に用いる場合は、導電性物質吸着性樹脂フイルムの導電性物質吸着性樹脂層に付与した金属(導電性物質)を利用して無電解めっき、交換めっき、電気めっきなどを施す金属層形成工程を行えばよく、さらに、金属層の用途などに応じて、穴部により裏面側の配線と接続する工程、導体層形成後加熱処理をする工程などを所望により加えることができる。
これらの工程を必要に応じて順不同で実施することができ、各工程は必要であれば順次おこなっても同時におこなってもよいし、不要であれば省くことができる。
本発明の金属層付き樹脂フイルムの製造方法においては、導電性物質吸着性樹脂層の形成工程より後の工程でめっき法などにより金属層を形成する工程がなされることを特徴としている。
以下、各層の構成要素および各工程についてさらに詳細に述べる。
【0022】
(支持体を構成する樹脂フイルム層)
本発明において、導電性物質吸着性樹脂フイルムの基材(支持体)として用いられる、もととなる樹脂フイルム層は、通常電子基板に使われる、ガラスエポキシ、ポリエステル、ポリイミド、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアラミド、紙、液晶ポリマー等をフイルム状に成形してなる樹脂フイルムなどを用いることができるが、このような樹脂フイルム層を形成しうる樹脂として、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、BT樹脂、PPE樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、液晶樹脂、ポリエステル樹脂、PEN、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアセチレン等、フイルムに成型できる樹脂であればいずれも使用することができる。
本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを例えば、フレキシブルプリント基板の形成に用いる場合には、通常、それらに用いられるポリイミド、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フイルム層を支持体基材として用いることが好ましい。
【0023】
これらの樹脂フイルム層1は均一、且つ、平滑な表面となるようにフイルム状に成形してもよく、上層となる密着補助層2との密着性向上を目的とし、フイルム成形後に、微細な凸凹をつけるため研磨工程を経てもよい。
樹脂フイルム層1表面の研磨工程としてはバフ研磨、ベルト研磨、パミス研磨等の機械研磨が挙げられる。更に、これら機械研磨に代えて化学研磨や化学機械研磨、電解研磨等をおこなってもよい。また、フイルムの表面に活性基を発生させるプラズマ処理やコロナ処理、UV処理、オゾン処理、火炎処理や表面を化学的に分解活性化させる処理を併用してもよい。ポリイミドフイルムの場合はヒドラジンやN−メチルピロリドン、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、のような極性有機溶剤や強アルカリで処理するようなことも行われる。
【0024】
形成される導電性層の物性を向上させる観点からは、樹脂フイルムは、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した平均粗さ(Rz)が3μm以下であるものを用いることが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。基板の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、実質的に凹凸がない状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。また、樹脂フイルムの厚みとしては3μm〜500μmのものを用いるのが、フイルムとして屈曲的に用いる場合には好ましく、より好ましくは5μm〜300μmの範囲であり、7μm〜200μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0025】
樹脂フイルム層1には導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と直接相互作用させるために、相互作用しうる活性点を発生させる活性種を添加してもよい。樹脂フイルム層1と導電性物質吸着樹脂前駆体層3とを密着させるために直接相互作用させたい場合は、樹脂フイルム形成時にあらかじめ樹脂フイルム中にエネルギー付与時に導電性物質吸着樹脂前駆体層3と相互作用させるための活性点を発生させる活性種を添加してもよいし、樹脂骨格中に活性種を発生させる骨格を含んでいてもよい。
【0026】
樹脂骨格中に活性種を発生させる例としては下記に示すような骨格中に重合開始部位を有するポリイミド(以下、適宜、特定ポリイミドと称する。)を含んでなるポリイミド基板を用いるような例が挙げられる。
この特定ポリイミドを含んでなる基材は、ポリイミド前駆体化合物の作製し、このポリイミド前駆体化合物を所望の基板形状に成形した後、加熱処理を施し、ポリイミド前駆体のポリイミド構造(特定ポリイミド)へ変化させることで作製することができる。上記のようにして作製される特定ポリイミドの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
活性種の例としては熱重合開始剤、光重合開始剤、いずれも使用することができる。熱重合開始剤としてはベンゾイルパーオキサイド、アゾイソブチロニトリルなどのような過酸化物開始剤、およびアゾ系開始剤などを使用することができる。また光重合開始剤としては低分子化合物でも高分子化合物でもよく、一般に公知のものが使用される。また、エネルギー付与により樹脂フイルムが導電性物質吸着樹脂前駆体層3と相互作用する活性点を生成しうる場合は特別にこれらの活性種を添加しなくてもよい。
【0031】
低分子の光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン、(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンの如きベンゾフェノン類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;ミヒラーのケトン;ベンゾイルベンゾエート;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾイン類;α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジンおよび−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用できる。
また通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
【0032】
また、感度を高める目的で光ラジカル重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン誘導体等が含まれる。
【0033】
高分子光ラジカル発生剤としては特開平9−77891号、特開平10−45927号に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物や、例えば、特開2004−161995公報に記載の重合開始基が側鎖にペンダントしてなるポリマーも樹脂フイルム中に混合して使用することができる。このポリマーは、具体的には、側鎖に重合開始能を有する官能基(重合開始基)及び架橋性基を有するポリマー(以下、重合開始ポリマーと称する。)であり、このポリマーにより、ポリマー鎖に結合した重合開始基を有し、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された形態を形成することができる。具体的な例としては特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0158〕に記載にものが挙げられる。重合開始ポリマーの特に好ましいものの具体例としては、以下に示す構造単位を有するものが挙げられる。
【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
ポリマーの分子量としては、基材の樹脂フイルムと均一に混合できるかぎりにおいて即に制限はないが、重量平均分子量50万以下が好ましく、30万以下であることがより好ましく、10万以下であることがさらに好ましい。分子量が50万以上になると基材の樹脂フイルムと混合する際に相分離をおこしやすくなる場合がある。
【0037】
樹脂フイルムに含有させる重合開始剤の量は、使用する導電性物質吸着性樹脂前駆体の種類に応じて選択されるが、一般的には、絶縁体層中に固形分で0.1〜50質量%程度であることが好ましく、1.0〜30.0質量%程度であることがより好ましい。
【0038】
(密着補助層)
本発明において、樹脂フイルム層1と導電性物質吸着性樹脂前駆体層3とが直接相互作用を形成できない場合は密着補助層2を設けることができる。本発明で用いられる密着補助層2は樹脂フイルム層1と密着できる、主に従来の多層積層板、ビルドアップ基板、もしくはフレキシブル基板として用いられてきた公知の絶縁樹脂組成物、および次のエネルギー付与工程により導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と相互作用し化学的な結合を形成する活性点を発生させて導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と密着することができる化合物を含む。
即ち、密着補助層の代表的な構成としては、被膜形成性の絶縁樹脂組成物に活性点を発生しうる重合開始剤などを含むものが挙げられる。
【0039】
ここで密着補助層2の形成に用いられる絶縁樹脂組成物は、支持体(樹脂フイルム層1)を構成する電気的絶縁性の化合物と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよい。しかしながら電気的絶縁層として機能する樹脂製支持体1との密着性を向上させるため、及び、層形成後、配線形成後等に行われるアニール処理や半田リフロー処理などの熱履歴時に、互いに異なる樹脂を用いると熱的特性の相違により熱応力がかかることを防止するために、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的に近いものを使用することが好ましく、例えば1種以上は樹脂フイルム層を形成する化合物と同じ種類のものを使用することが密着の点で好ましい。また、密着補助層2の塗布液には、樹脂層を形成する樹脂材料に加えて、次のエネルギー付与工程により導電性物質吸着性樹脂層の前駆体層3、および、もしくは樹脂フイルム層1と相互作用し化学的な結合を形成しうる化合物、或いはエネルギー付与により活性点を発生させて樹脂製支持体1や後で設けられる金属層と密着することができる化合物などを含んでもよい。
またこれ以外の成分として密着補助層2の強度を高めるもしくは電気特性を改良するために無機もしくは有機の粒子を添加してもよい。
【0040】
なお、本発明における絶縁樹脂組成物とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シソシアネート系樹脂等が挙げられる。
【0041】
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。そのほかの熱可塑性樹脂としては、(1)1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)もしくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252−1258(2004)に記載)。(2)液晶性ポリマー、具体的にはクラレ製のベクスターなど。(3)フッ素樹脂(PTFE)、などがある。
【0043】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえばPPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、あるいは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては電子技術 2002/9号 P35 に記載されている。また熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂および/またはフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂および/またはポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0044】
本発明における密着補助層2は、次のエネルギー付与工程により導電性物質吸着性樹脂層の前駆体層3、および、もしくは樹脂フイルム層1と相互作用し化学的な結合を形成しうる化合物、或いはエネルギー付与により活性点を発生させて樹脂製支持体1や後で設けられる金属層と密着することができる化合物などを含んでもよい。
密着補助層2には、前記樹脂フィルム層1におけるのと同様な皮膜形成性の樹脂組成物に加えて、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的にはアクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、このような不飽和二重結合を有する化合物としては、架橋密度向上の観点から、特に多官能の化合物が好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として熱硬化性樹脂、もしくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
本発明における密着補助層2には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
更に、この密着補助層2には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種または二種以上配合してもよい。
また、更にこの密着補助層2には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種または二種以上添加してもよい。
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0〜80質量%の範囲で添加される。密着補助層2を構成する樹脂成分が隣接する樹脂性支持体と、熱や電気に対して同じもしくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を加える際に、樹脂に対して200質量%を超える量用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0045】
密着補助層2には、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と相互作用させるために、相互作用しうる活性点を発生させる活性種を添加してもよい。
活性種の例としては樹脂フイルムと導電性物質吸着性樹脂前駆体層と相互作用させる場合に用いることができる前記熱重合開始剤、光重合開始剤、いずれも使用することができる。
【0046】
本発明における密着補助層2の厚みは、一般に、0.1μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.2μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。密着補助層2を設ける場合、厚みが上記一般的な範囲であれば、隣接する層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、所定の厚みの接着層と同様の密着性が達成され、全体の厚みが薄く、且つ、密着性に優れた金属層付き樹脂フイルムを実現しうる。
密着補助層2は基材である樹脂フイルム層1の片面、もしくは両面の表面に、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成される。転写法を適用する場合には、導電性物質吸着性樹脂前駆体層、密着補助層の2層構成を有する転写積層体を作製し、ラミネート法によって一度に樹脂フイルム層1の表面に転写してもよい。
【0047】
密着補助層2を転写法により形成する工程について述べれば、まず、密着補助層形成に用いる各成分を適切な溶媒に溶解する、ワニス状の組成物として調整する、もしくはお互いに相溶させて溶液状態に調製された塗布液を調整することにより、塗工性を向上させるように調製された塗布液を準備し、これを適切な仮支持体上に塗布、乾燥して密着補助層形成用転写フイルムを形成し、その後、これを樹脂フイルム層1上に積層して密着補助層2のみを樹脂フイルム層1表面に転写し、仮支持体を剥離することによって形成できる。このとき、密着補助層をフイルム化することで、層の厚さ精度が高くなり、取り扱い性や位置合わせ精度も向上するため、密着補助層2の形成に、この転写法が好適に使用される。
【0048】
塗布液調整用の溶媒としては、一般的な有機溶媒が使用される。有機溶媒は親水性の溶媒、疎水性の溶媒いずれも使用することができるが、密着補助層2を形成する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒が有用である。具体的にはメタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒が好ましい。
更にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等も使用できる。更に通常、溶剤、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、ベンゼン、ナフタレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどを単独又は2種以上組み合わせて使用することができる
【0049】
塗布液、もしくはワニス化のための溶剤の配合量は、塗布液、もしくはワニスの粘度と作業性、塗工性、および乾燥時間と作業効率の観点から、密着補助層形成用塗布液組成物100重量部に対して、5重量部以上、3000重量部以下であることが好ましく、10〜2000重量部の範囲であることがより好ましく、10〜900重量部であることがさらに好ましい。
また、組成物の塗布性、作業性、乾燥時間などの観点から組成物の粘度は好ましくは5〜5000cps、より好ましくは10〜2000cps、更に好ましくは10〜1000cpsであることが好ましい。
塗布液組成物をワニス状に調製する方法としては、ミキサー、ビーズミル、パールミル、ニーダー、三本ロールなどの公知の方法を用いて調製できる。各種の配合成分は全てを同時に添加してもよいし、添加順序を適宜設定してもよいし、また、必要に応じて、一部の配合成分を予め予備混練してから添加してもよい。
【0050】
転写フイルム化のための仮支持体上への塗布は常法により行われ、例えば、ブレードコート法、ロッドコート法、スクイズコート法、リバースロールコート法、トランスファコールコート法、スピンコート法、バーコート法、エアーナイフ法、グラビア印刷法、スプレーコート法、など公知の塗布方法が挙げられる。
溶剤の除去方法は特に限定されないが、溶媒の蒸発により行なうことが好ましい。溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が考えられる。中でも生産効率、取り扱い性の点から加熱して蒸発することが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発することが更に好ましい。
例えば、次に述べる仮支持体の片面に塗工し、80℃〜200℃で0.5分から10分間加熱乾燥させて溶剤を除去することにより、半硬化状のべたつきのない状態のない状態のフィルムとすることが好ましい。
【0051】
転写用フイルムの仮支持体に用いうるベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂シートや、離型紙など、表面接着性を制御した加工紙、銅箔、アルミ箔のごとき金属箔などが挙げられる。
仮支持体の厚みとしては2〜200μmが一般的であるが、5〜50μmがより好ましく、10〜30μmが更に好ましい。仮支持体が厚すぎると、この積層フイルムを用いて実際に転写を行う際、特に、この積層フイルムを所定の基板上、或いは、配線上にラミネートする際に、ハンドリング性等に問題がでることがある。
【0052】
なお、仮支持体を構成するシート表面にはマット処理、コロナ処理のほか、離型処理がほどこしてあってもよい。更に保護層を形成することもある。保護層を形成する樹脂フィルムとしては、仮支持体に用いたものと同じ素材のものを用いても、異なった素材のものを用いてもよい。好適に使用されるものとしては、前記仮支持体と同様、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなどの樹脂シートや、離型紙など、表面接着性を制御した加工紙、銅箔、アルミ箔のごとき金属箔などが挙げられる。
保護層(保護フィルム)の厚みとしては2〜150μmが一般的であるが5〜70μmがより好ましく、10〜50μmが更に好ましい。また、保護フィルムの厚みと支持ベースフィルムの厚みはどちらかが他方よりも厚くなってもよい。
保護フィルムにはマット処理、エンボス加工の他、離型処理が施してあってもよい。
また、転写フイルム支持体の幅を、絶縁膜、或いは高分子前駆体層の幅よりも5mm程度長くすることで、他の層とのラミネートを行う場合に、ラミネート部の樹脂付着を防止することができ、また、使用時の仮支持体を構成するベースフィルムの剥離が容易になるなどの利点が得られる。
【0053】
密着補助層のラミネートは、減圧下で行われ、その方式は、バッチ式であってもロール状の積層フイルムを用いた連続式であってもよい。また、樹脂支持体の両面に密着補助層を形成する場合、片面づつラミネートしても両面同時にラミネートしてもよいが、両面同時にラミネートするのが好ましい。
上記の如きラミネート条件は、本発明における常温固形の密着補助層2を構成する組成物の熱時溶融粘度、厚さと樹脂フイルムの厚みにより異なるが、一般的に圧着温度が70〜200℃、圧着圧力が1〜10kgf/cmであって、20mmHg以下の減圧下で積層するのが好ましい。
【0054】
また、仮支持体の厚みに関しては、仮支持体(転写フイルム支持体)が厚いほどラミネート後の樹脂組成物の表面平滑性は優れるものの、熱伝導性の観点からはあまり厚いことが好ましくなく、そのような観点からは、仮支持体の厚みは密着補助層の厚みと同じかそれ以上であって75μm以下であることが好ましい。ラミネート後は室温付近にまで冷却してから仮支持体を剥離する。
ラミネートで転写する場合には温度80℃〜250℃が好ましく、更に好ましくは100℃〜200℃が好ましく更に好ましくは110℃〜180℃であることが好ましい。また、かける圧力は0.5〜3MPaが好ましく、更に好ましくは0.7〜2MPaが好ましい。また、圧力をかける時間としては10秒から1時間が好ましく、更に好ましくは15秒から30分が好ましい。また、ラミネートでの密着を向上させるために真空ラミなど、減圧下で行うのが好ましい。また、本発明における金属層付き樹脂フイルムを微細配線の形成に用いる場合には、その素材となる本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムはクリーンルーム内でラミネートを行うのが好ましい。
【0055】
密着補助層2を樹脂フイルムの上に塗布または印刷で設ける場合は、前記密着補助層2を形成する塗布液を前記樹脂フイルムの片面、もしくは両面の表面に塗布または印刷を所定の厚みになるまで繰り返すことによって設けてもよい。また、塗布で密着補助層2を設ける場合、密着補助層2と後述する導電性物質吸着性樹脂前駆体層と2層同時に塗布してもよい。塗布は前記支持体上に塗布した場合と同様に常法により行われ、例えば、ブレードコート法、ロッドコート法、スクイズコート法、リバースロールコート法、トランスファコールコート法、スピンコート法、バーコート法、エアーナイフ法、グラビア印刷法、スプレーコート法、ディスペンサー法、ディップ法など公知の塗布方法が挙げられる。また、印刷で行う場合は通常のグラビア印刷のほか、インクジェット法などの方法で印刷することもできる。また、樹脂フイルムに塗布した後樹脂フイルムと密着補助層、もしくは密着補助層どうしの接着をふせぐために十分乾燥させることをすることがある。
【0056】
また、密着補助層2は基板上に形成後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理工程をおこなってもよい。与えるエネルギーとしては光、熱、圧力、電子線などがあげられるが本実施形態においては熱または光が一般的であり、熱の場合は100℃〜300℃の熱を10分〜120分加えることができる。加熱硬化の条件は樹脂フイルムの材料の種類、密着補助層2を構成する樹脂組成物の種類等で異なり、これらの形成素材の硬化温度にもよるが、更に好ましくは120〜220℃で20分〜120分の範囲で選択される。
この硬化処理工程は密着補助層形成後すぐにおこなってもよく、密着補助層形成後に行われる他の工程、例えば、導電性物質吸着性樹脂層4の形成などを行ったあとに実施してもよい。
【0057】
(導電性物質吸着性樹脂層の形成)
密着補助層形成を形成した後、その表面に導電性物質吸着性樹脂前駆体層3を設け、エネルギー付与を行うことで、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と相互作用による結合を形成しうる活性点を密着補助層2内に発生させて、密着補助層2と結合してなる導電性物質吸着性樹脂層4が形成される。
密着補助層2内に含まれる、活性種を発生しうる化合物の例としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、いずれも使用することができる。これらの例として前記樹脂フイルムの項で述べたものを使用することができる。また、エネルギー付与により密着補助層2が導電性物質吸着性樹脂前駆体層と相互作用する活性点を生成しうる材料からなる場合は、これらの活性種を別途添加する必要はない。
また、密着補助層2は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記化合物に加え、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、加熱時に応力を緩和させることができるゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などの種々の化合物が挙げられる。
【0058】
密着補助層2形成後、その表面に形成される導電性物質吸着性樹脂層或いはその前駆体層との密着性向上の目的で、乾式及び/又は湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としてはバフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方湿式粗化法としては過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0059】
(導電性物質吸着性樹脂前駆体層)
本発明における導電性物質吸着性樹脂前駆体層には、金属イオンもしくは金属微粒子を吸着しうる官能基(以下、適宜、金属吸着性官能基と称する)をもつ化合物を含有する。加えて、この化合物には、樹脂製支持体1もしくは密着補助層2にエネルギーを付与する際に発生する活性点と化学結合を作りうる、反応性の官能基を有することが好ましい。導電性物質吸着性樹脂前駆体層に含まれる反応性の化合物としては、具体的には、露光などのエネルギー付与によりグラフトポリマーを生成させうる化合物(重合性化合物)、或いは、エネルギー付与により隣接する層との間で架橋構造などを形成し、両者の密着性を向上しうる化合物などの反応性化合物が挙げられる。これら反応性化合物により生成される高分子化合物は、金属イオンもしくは金属微粒子を付着させるものでもあることから、前記反応性は、重合反応あるいは架橋構造形成可能であって、且つ、密着補助層2への結合に必要な部分構造、例えば、「ラジカル重合可能な不飽和二重結合」などと、後述する金属イオンもしくは金属微粒子を付着させるために必要な「金属吸着性官能基」の双方を有する化合物を用いることが好ましい。
【0060】
反応性化合物のなかでも代表的なものとして、重合反応可能な重合性化合物を挙げることができる。重合性化合物は、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物である。
−ラジカル重合可能な不飽和二重結合−
「ラジカル重合可能な不飽和二重結合」を含む官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、などが挙げられる。このうち、アクリロイル基、メタクリロイル基は反応性が高く、良好な結果が得られる。
ラジカル重合可能な不飽和化合物としては、ラジカル重合性基を有する化合物であれば、如何なるものも用いることができるが、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基を有するモノマー、マクロマー、重合性不飽和基を有するオリゴマー、ポリマーなどを使用することができる。
また、反応性化合物の他の態様としては、分子内に反応性の活性基、例えば、オキセタン基、エポキシ基、イソシアネート基、活性水素を含む官能基、アゾ化合物における活性基などを有するオリゴマーもしくはポリマー化合物、或いは、架橋剤と架橋性化合物との組合せなどが挙げられる。
反応性化合物としては上記官能基をもち、かつ重量平均分子量が1000以上のものを使用することがより好ましく、更に好ましくは2000以上のものを使用することが好ましく、更にこのましくは3000以上のものを使用することが好ましい。重量平均分子量1000以下では導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成した際、反応性化合物が密着補助層2に拡散したり、蒸散したりしやすく、また、液状になりやすいため均一な露光がしにくい。一方重量平均分子量30万以下が好ましく、より好ましくは20万以下で更に好ましくは10万以下のものが好ましい。30万以上の場合、活性点に対する反応性が劣るため結合をつくりにくく、密着補助層2もしくは樹脂フイルムと十分な密着がとれなくなる。
【0061】
また、導電性物質吸着性樹脂前駆体層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記反応性化合物に加え、目的に応じて、例えば、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などの種々の化合物を含有することができる。反応性化合物は導電性物質吸着性樹脂前駆体層が形成されて、エネルギー付与がなされる前の状態で50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上が好ましく、よりこのましくは70重量%以上が好ましい。50重量%以下の場合、活性点に対する反応が損なわれ本発明の効果を損なう結果となる。
【0062】
−金属吸着性官能基−
反応性化合物は、さらに、金属イオンもしくは金属微粒子を付着させうる部分構造である金属吸着性官能基を有することが必要である。
金属イオンもしくは金属微粒子と相互作用可能な官能基とは、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは解離基の対イオンの形で金属イオンもしくは金属微粒子と吸着する。他にも、官能基が解離によりプロトンを生成しない官能基を用いてもよい。この相互作用性基としては、具体的には、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましい。
より具体的には、含窒素官能基としては、イミダゾール基、イミノ基、イミド基、ウレア基、ピリジン基、1級〜3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミド基、アミジノ基、トリアジン環構造を含む官能基、イソシアヌル構造を含む官能基、ウレタン基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などが挙げられ、含酸素官能基としては、水酸基(フェノールも含む)、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む官能基、S−オキシド構造を含む官能基、N−ヒドロキシ構造を含む官能基などが挙げられ、含硫黄官能基としては、チオール基、チオエーテル基、チオウレア基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む官能基、スルホキシニウム塩構造を含む官能基、スルホン酸エステル構造を含む官能基などが挙げられる。その他の好ましい官能基としては、フォスフィン基などの含リン官能基、先に挙げたカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む官能基、及び不飽和エチレン基、等が挙げられ、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、−O−(CH−O−で表される構造(なお、ここでnは1〜5の整数を表す)を含む官能基、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
【0063】
また、物性の観点からは、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、などの非イオン性の極性基、キレーションや多座配位構造をとることにより金属イオンもしくは金属微粒子と相互作用し金属もしくは金属微粒子を吸着しうるような官能基、クラウンエーテルに代表される包接可能な官能基も適用することができる。更に結晶水に代表されるような形で保持されている溶剤と相互作用する官能基で、保持もしくは吸着している溶剤中に塩として溶け込んでいるような形で金属を吸着しうる官能基も含まれる。
【0064】
具体的には、導電性素材と相互作用可能な官能基である(1)極性基(イオン性基)を有する化合物からなるグラフトポリマーに金属イオンを吸着させる方法、(2)ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾールなどのように導電性素材と相互作用可能な官能基で金属塩に対し親和性の高い含窒素、含イオウポリマーからなるグラフトポリマーに、金属塩、又は、金属塩を含有する溶液を含浸させる方法がある。
更に金属イオンもしくは金属微粒子と相互作用可能な官能基がある特定な金属と相互さようしやすいようにすることもできる。具体的な例として、包接化合物の包接サイトの大きさをあるイオンにあうようにしたり、多座配位の構造をある特定のイオンが配位しやすいように固定したりすることもできる。
「ラジカル重合可能な不飽和二重結合」などと、後述する金属イオンもしくは金属微粒子を付着させるために必要な「金属吸着性官能基」の双方を有する具体的化合物には以下のような反応性化合物を使用することができる。
このような反応性化合物の特に好ましい態様を以下に挙げるが、本発明はこれに制限されるものではない。
本発明において金属密着性樹脂前駆体層の形成に用いられる反応性の共重合体として、例えば、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体を挙げることができる。以下、この共重合体を、「シアノ基含有重合成ポリマー」と称して説明する。
【0065】
【化7】

【0066】
式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0067】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いはヒドロキシ基、又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いはヒドロキシ基、又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0068】
X、Y及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
は、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0069】
【化8】

【0070】
上記式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、夫々独立して、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基を表す。
【0071】
また、Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0072】
本発明に係るシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(1)で表されるユニットが、下記式(3)で表されるユニットであることが好ましい。
【0073】
【化9】

【0074】
上記式(3)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Zは、単結合、置換若しくは無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Wは、窒素原子、又は酸素原子、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0075】
式(3)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0076】
式(3)におけるZは、前記式(1)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。
また、式(3)におけるLも、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0077】
シアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(3)で表されるユニットが、下記式(4)で表されるユニットであることが好ましい。
【0078】
【化10】

【0079】
式(4)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、V及びWは、夫々独立して、窒素原子又は酸素原子を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0080】
式(4)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0081】
式(4)におけるLは、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0082】
前記式(3)及び式(4)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、前記式(3)及び式(4)において、Lは、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、これら中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0083】
また、シアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(2)で表されるユニットが、下記式(5)で表されるユニットであることが好ましい。
【0084】
【化11】

【0085】
上記式(5)中、Rは、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Uは、窒素原子又は酸素原子を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0086】
式(5)におけるRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、水素原子であることが好ましい。
【0087】
また、式(5)におけるLは、前記式(1)におけるLと同義であり、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(5)においては、Lが、シアノ基との連結部位に、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(5)におけるLが、シアノ基との連結部位に、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0088】
シアノ基含有重合性ポリマーは、前記式(1)〜式(5)で表されるユニットを含んで構成されるものであり、重合性基とシアノ基とを側鎖に有するポリマーである。
このシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、以下のように合成することができる。
【0089】
重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられる。反応制御の観点から、ラジカル重合、カチオン重合を用いることが好ましい。
シアノ基含有重合性ポリマーは、1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが異なる場合と、2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合とで、その合成方法が異なる。
【0090】
1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合は、1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様と、1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様と、がある。
【0091】
1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様
本発明において、ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様で用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
【0092】
・重合性基含有ユニットを形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられる重合性基含有ユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルブタンビニルエーテル、2−(メタ)アクリロイルエタンビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルプロパンビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシジエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイル1stテルピオネール、1−(メタ)アクリロイロキシ−2−メチル−2−プロペン、1−(メタ)アクリロイロキシ−3−メチル−3−ブテン、3−メチレン−2−(メタ)アクリロイロキシ−ノルボルナン、4,4’−エチリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、メタクロレインジ(メタ)アクリロイルアセタール、p−((メタ)アクリロイルメチル)スチレン、アリル(メタ)アクリレート、2−(ブロモメチル)アクリル酸ビニル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アリル等が挙げられる。
【0093】
・シアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられるシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、2−シアノエチルビニルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、3−シアノプロピルビニルエーテル、4−シアノブチルビニルエーテル、1−(p−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(o−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(m−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(p−シアノフェノキシ)−3−ビニロキシ−プロパン、1−(p−シアノフェノキシ)−4−ビニロキシ−ブタン、o−シアノベンジルビニルエーテル、m―シアノベンジルビニルエーテル、p―シアノベンジルビニルエーテル、アリルシアニド、アリルシアノ酢酸や、以下の化合物等が挙げられる。
【0094】
【化12】

【0095】
重合方法は、実験化学講座「高分子化学」2章−4(p74)に記載の方法や、「高分子合成の実験方法」大津隆行著 7章(p195)に記載の一般的なカチオン重合法が使用できる。なお、カチオン重合には、プロトン酸、ハロゲン化金属、有機金属化合物、有機塩、金属酸化物及び固体酸、ハロゲンが開始剤として用いることができるが、この中で、活性が大きく高分子量が合成可能な開始剤として、ハロゲン化金属と有機金属化合物の使用が好ましい。
具体的には、3フッ化ホウ素、3塩化ホウ素、塩化アルミ、臭化アルミ、四塩化チタン、四塩化スズ、臭化スズ、5フッ化リン、塩化アンチモン、塩化モリブデン、塩化タングステン、塩化鉄、ジクロロエチルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウム、ジクロロメチルアルミニウム、クロロジメチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリメチル亜鉛、メチルグリニアが挙げられる。
【0096】
1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様
本発明において、ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
【0097】
・重合性基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
上記1−1)の態様で挙げた重合性基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
【0098】
・シアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられるニトリル基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、シアノメチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、5−シアノペンチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、7−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、8−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル−(3−(ブロモメチル)アクリルレート)、2−シアノエチル−(3−(ヒドロキシメチル)アクリルレート)、p−シアノフェニル(メタ)アクリレート、o−シアノフェニル(メタ)アクリレート、m−シアノフェニル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、6−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、1−シアノ−1−(メタ)アクリロイル−シクロヘキサン、1,1−ジメチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、1−ジメチル−1−エチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、o−シアノベンジル(メタ)アクリレート、m−シアノベンジル(メタ)アクリレート、p−シアノベンジル(メタ)アクリレート、1―シアノシクロヘプチルアクリレート、2―シアノフェニルアクリレート、3―シアノフェニルアクリレート、シアノ酢酸ビニル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸ビニル、シアノ酢酸アリル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸アリル、N,N―ジシアノメチル(メタ)アクリルアミド、N−シアノフェニル(メタ)アクリルアミド、アリルシアノメチルエーテル、アリル−o―シアノエチルエーテル、アリル−m―シアノベンジルエーテル、アリル−p―シアノベンジルエーテルなどが挙げられる。
また、上記モノマーの水素の一部を、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基などで置換した構造を持つモノマーも使用可能である。
【0099】
重合方法は、実験化学講座「高分子化学」2章−2(p34)に記載の方法や、「高分子合成の実験方法」大津隆行著 5章(p125)に記載の一般的なラジカル重合法が使用できる。なお、ラジカル重合の開始剤には、100℃以上の加熱が必要な高温開始剤、40〜100℃の加熱で開始する通常開始剤、極低温で開始するレドックス開始剤などが知られているが、開始剤の安定性、重合反応のハンドリングのし易さから、通常開始剤が好ましい。
通常開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビル−2,4−ジメチルバレロニトリルが挙げられる。
【0100】
2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合は、2−1)両者がカチオン重合の態様と、2−2)両者がラジカル重合である態様と、がある。
【0101】
2−1)両者がカチオン重合の態様
両者がカチオン重合の態様には、シアノ基を有するモノマーとして、前記1−1)の態様で挙げたニトリル基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
なお、重合中のゲル化を防止する観点から、シアノ基を有するポリマーを予め合成した後、該ポリマーと重合性基を有する化合物(以下、適宜、「反応性化合物」と称する。)とを反応させ、重合性基を導入する方法を用いることが好ましい。
【0102】
なお、シアノ基を有するポリマーは、反応性化合物との反応のために、下記に示すような反応性基を有することが好ましい。
また、シアノ基を有するポリマーと反応性化合物とは、以下のような官能基の組み合わせとなるように、適宜、選択されることが好ましい。
具体的な組み合わせとしては、(ポリマーの反応性基、反応性化合物の官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルキシル基)等を挙げることができる。
【0103】
ここで、シアノ基を有するポリマーと反応させる反応性化合物として、具体的には、以下に示す化合物を用いることができる。
即ち、アリルアルコール、4−ヒドロキシブタンビニルエーテル、2−ヒドロキシエタンビニルエーテル、3−ヒドロキシプロパンビニルエーテル、ヒドロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、1stテルピオネール、2−メチル−2−プロペノール、3−メチル−3−ブテノール、3−メチレン−2−ヒドロキシ−ノルボルナン、p−(クロロメチル)スチレンである。
【0104】
2−2)両者がラジカル重合である態様
両者がラジカル重合である態様では、合成方法としては、i)シアノ基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0105】
前記i)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
【0106】
【化13】

【0107】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、下記式(a)で表される化合物などが挙げられる。
【0108】
【化14】

【0109】
上記式(a)中、Aは重合性基を有する有機団、R〜Rは、夫々独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0110】
【化15】

【0111】
【化16】

【0112】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0113】
【化17】

【0114】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
【0115】
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
【0116】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(B、Cで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
【0117】
前記iii)の合成方法において、シアノ基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、シアノ基を有するポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
【0118】
【化18】

【0119】
以上のようにして合成された本発明におけるポリマーは、共重合成分全体に対し、重合性基含有ユニット、シアノ基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、重合性基含有ユニットが、共重合成分全体に対し5〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40mol%である。5mol%以下では反応性(硬化性、重合性)が落ち、50mol%以上では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、シアノ基含有ユニットは、共重合成分全体に対し1〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜95mol%である。
【0120】
なお、本発明におけるポリマーは、シアノ基含有ユニット、重合性基含有ユニット以外に、他のユニットを含んでいてもよい。この他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、本発明の効果を損なわないものであれば、いかなるモノマーも使用することができる。
具体的には、モノマーとして、アクリル樹脂骨格、スチレン樹脂骨格、フェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)骨格、メラミン樹脂(メラミンとホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ユリア樹脂(尿素とホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ポリエステル樹脂骨格、ポリウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリオレフィン骨格、ポリシクロオレフィン骨格、ポリスチレン骨格、ポリアクリル骨格、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの重合体)骨格、ポリアミド骨格、ポリアセタール骨格、ポリカーボネート骨格、ポリフェニレンエーテル骨格、ポリフェニレンスルファイド骨格、ポリスルホン骨格、ポリエーテールスルホン骨格、ポリアリレート骨格、ポリエーテルエーテルケトン骨格、ポリアミドイミド骨格を主鎖構造として形成しうるモノマーであれば、いかなるモノマーを使用してもよい。
ただし、前述のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第3のユニットを形成する可能性もある。
具体的には、ラジカル重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの無置換(メタ)アクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン置換(メタ)アクリル酸エステル類、2−(メタ)アクリルロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム基置換(メタ)アクリル酸エステル類、ブチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレン、ビニル安息香酸、p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのスチレン類、N−ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物類や、その他にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルチオ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが使用できる。
また、上記記載のモノマーを用いて得られたマクロモノマーも使用できる。
【0121】
カチオン重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、2−ビニルオキシテトラヒドロピラン、ビニルベンゾエート、ビニルブチレートなどのビニルエーテル類、スチレン、p−クロロスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン類、アリルアルコール、4−ヒドロキシ−1−ブテンなどの末端エチレン類を使用することができる。
【0122】
本発明における重合性ポリマーの重量平均分子量は1000以上70万以下が好ましく、さらに好ましくは2000以上30万以下である。また、重合度としては10量体以上のものを使用する事が好ましく、更に好ましくは20量体以上のものを使用する事が好ましい。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下が好ましく、2000量体以下が好ましく、1000量体以下が好ましい。
【0123】
本発明に好適に使用しうるシアノ基含有重合性ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
【0124】
【化19】

【0125】
【化20】

【0126】
【化21】

【0127】
【化22】

【0128】
【化23】

【0129】
【化24】

【0130】
ここで、例えば、前記具体例の化合物2−2−11は、アクリル酸と2−シアノエチルアクリレートを、例えば、N−メチルピロリドンに溶解させ、重合開始剤として、例えば、アゾイソブチロニトリル(AIBN)を用いてラジカル重合を行い、その後、グリシジルメタクリレートをベンジルトリエチルアンモニウムクロライドのような触媒を用い、ターシャリーブチルハイドロキノンのような重合禁止剤を添加した状態で付加反応することで合成することができる。
また、例えば、前記具体例の化合物2−2−19は、以下のモノマーと、p−シアノベンジルアクリレートを、N、N−ジメチルアクリルアミドのような溶媒に溶解させ、アゾイソ酪酸ジメチルのような重合開始剤を用いてラジカル重合を行い、その後、トリエチルアミンのような塩基を用いて脱塩酸を行うことで合成することができる。
【0131】
【化25】

【0132】
これらの重合性ポリマーは重合性基と相互作用性基の他に、本願発明の重合性ポリマーの吸水率を満たす範囲で、極性基を有することができる。極性基を有していることによって、後述の工程により金属膜形成後、保護層を設ける際に、重合性ポリマー層と保護層との密着力を向上させることができる。
【0133】
本発明に用いうる重合性ポリマーは、例えば、pH12のアルカリ性溶液に添加し、1時間攪拌したときの重合性基部位の分解が50%以下である場合は、高アルカリ性溶液による洗浄を行うことができる。
本発明に用いうる前記反応性化合物の分子量(Mw)としては、1000以上30万以下であることが好ましく、2000以上20万以下が好ましく、更に好ましくは3000以上10万以下である。
【0134】
反応性化合物は導電性物質吸着性樹脂前駆体層が形成されて、エネルギー付与がなされる前の状態で、該前駆体層形成用塗布液組成物中に、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
また、塗布、乾燥して導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成した場合、該前駆体層中におけるこれら反応性化合物は固形分換算で50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。形成された該前駆体層中における反応性化合物の含有量が50重量%未満である場合には、活性点に対する反応が損なわれ本発明の効果が十分得られない懸念がある。
【0135】
また、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記反応性化合物に加え、目的に応じて、例えば、重合禁止剤、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などの種々の化合物を含有することができる。
必要に応じて導電性物質吸着性樹脂前駆体層3に添加しうる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を挙げることができる。
【0136】
また、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3には、必要に応じて、隣接して設けられる密着補助層2の硬化を促進するために、硬化剤、及び/又は硬化促進剤を添加することができる。
例えば、密着補助層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤、及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
【0137】
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始する硬化剤、硬化促進剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール2−メチルイミダゾール、、2−エチル−4−メチルイミダゾール2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリアリルセレニウム塩、ケチミン化合物、などが挙げられる。
これらの硬化剤、及び/又は硬化促進剤は、溶液の塗布性、基板や金属膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0〜50重量%程度まで添加することが好ましい。また、硬化剤、及び/又は硬化促進剤は密着補助層に直接添加してもよく、その場合は、密着補助層に添加した量と重合性ポリマーから形成される層(導電性物質吸着性樹脂層)中に添加される総和量で上記範囲内であることが好ましい。
【0138】
さらに、可塑剤、ゴム成分(例えばCTBN)、難燃化剤(例えばりん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レべリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3のみならず、必要に応じて前記密着補助層2に添加することもできる。
これら所望により用いられる添加剤と前記反応性化合物とを適宜混合することで、重合性ポリマーなどの反応性化合物にエネルギーを付与して形成されるポリマー層の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。
特に、形成される導電性物質吸着性樹脂層は、その破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましいため、これらの添加剤は有用である。形成された導電性物質吸着性樹脂層は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができ、例えば、熱分解に関しては、200℃環境に1時間曝した場合の重量減少が20%以下であると、十分に熱耐久性を有していると評価できる。このような熱的物性を実現するために、上記添加剤が適宜使用される。
【0139】
導電性物質吸着性樹脂前駆体層3は前記密着補助層2もしくは樹脂フイルム層1とエネルギー付与時に発生する活性点と化学結合を作り密着して、導電性物質吸着性樹脂層4を形成するが、金属イオンもしくは金属微粒子は、エネルギーを付与する前に、予め導電性物質吸着性樹脂前駆体層に含まれる化合物の金属吸着性官能基に吸着させておいてもよく、エネルギー付与し前記密着補助層2もしくは樹脂フイルム層1との間に化学結合を形成させて密着させた化合物の金属吸着性官能基に吸着させてもよい。
導電性物質吸着性樹脂前駆体層の厚みとしては0.05〜5μm程度が好ましく、0.1〜3μmが更に好ましく、0.2〜2μmが更に好ましい。この範囲において、導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成することにより、後工程でエネルギー付与後導電性物質吸着性樹脂層を形成した際、十分な密着強度が得られ、さらに、形成された被膜の強度も好ましい範囲に維持される。
【0140】
導電性物質吸着性樹脂前駆体層3の形成方法としては前記密着補助層2と同様に塗布、転写、印刷などの方法により形成することができる。また、塗布で導電性物質吸着性樹脂前駆体層を設ける場合、密着補助層2と導電性物質吸着性樹脂前駆体層3とを同時に重層塗布しても、密着補助層2形成後、逐次塗布して形成してもよい。同様に転写で形成する場合は、仮支持体上に導電性物質吸着性樹脂前駆体層3、密着補助層2の2層構成の転写フイルムを作製し、ラミネート法によって一度に転写してもよい。塗布の方法としては前記密着補助層2を形成するところで述べた一般的な方法を使用することができる。
【0141】
導電性物質吸着性樹脂前駆体層3の塗布に使用できる溶剤としては、使用する化合物を溶解できる限りにおいて特に制限はなく、水もしくは有機溶剤が挙げられ、また、溶剤には、更に、界面活性剤を添加してもよい。
溶剤としては、具体的には、例えば、水、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶媒が好ましい。更に、ホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、の如きアミド系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチルの如きエステル系溶剤、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、ベンゼン、ナフタレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなども使用することができる。
前駆体層に用いられる反応性化合物が疎水性の化合物である場合には、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤が好ましく、具体的には、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリルを用いることが好ましい。
また、ポリマーの組成物を塗布する場合は取り扱い安さから沸点が50〜150℃の溶剤が好ましい。
なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよいが、樹脂フイルム、もしくは密着補助層2の表面を平滑にたもつため、樹脂フイルムもしくは密着補助層2を溶解しにくい溶剤、もしくはこれらの層に含まれる活性種を抽出しにくい溶剤の組み合わせが好ましい。
【0142】
上記重合性ポリマー等を含有する導電性物質吸着性樹脂前駆体層3塗布液を前記密着補助層2上に塗布する場合に使用する溶剤の選択の目安として、密着補助層の吸溶媒率が5〜25%の溶剤を選択することができる。ここで吸溶媒率は、密着補助層を形成した基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の基材の重量の変化から求めることができる。
また、他の目安として密着補助層の膨潤率が10〜45%の溶剤を選択してもよい。この膨潤率は、密着補助層を形成した基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の重合開始層の厚さの変化から求めることができる。
【0143】
また、塗布液の粘度は好ましくは1〜2000cps、より好ましくは3〜1000cps、より好ましくは5〜700cpsに調整される方が、より精密に膜厚を制御できるという点で好ましい。また、印刷で形成する場合は印刷で行う場合は通常のグラビア印刷のほか、インクジェット法などの方法で印刷することもできる。印刷法やインクジェット法などの方法で電気的絶縁膜の上もしくは密着補助層2の上に印刷する場合は後の工程で導体をつけたくない部分には印刷をせずに作成することもできる。
【0144】
本発明では、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3は樹脂フイルム層1もしくは密着補助層2に発生した活性点と何らかの相互作用をさせて密着させることができる。この相互作用の例としては、分子間相互作用、イオン結合、化学結合、相溶構造の形成などが考えられるが、中でも化学結合を利用するものは密着強度が高く好ましい。
樹脂フイルムもしくは密着補助層2に活性点を発生させる方法としては、光、電磁波、電子線、放射線などのエネルギー線照射や熱エネルギー、圧力エネルギーの付与などが考えられる。具体的な例としては紫外光照射や赤外線照射、プラズマ照射、X線照射、アルファ線照射、ガンマ線照射などが挙げられる。なかでもエネルギー線照射や熱エネルギーが活性点を発生させる方法として好ましく、更に好ましくは紫外光などの照射が簡便な装置でエネルギーを与えることができ好ましい。また、樹脂フイルムや密着補助層2に特別な活性種生成化合物を混合しなくても、短波の紫外光や電子線照射、プラズマ照射などで高エネルギーを与えてやれば活性点を発生させてやることが可能である。
【0145】
また、エネルギー照射としては光のようなエネルギーを導電性物質吸着性樹脂前駆体層の側から与えても、反対の基板側から与えても、また、熱エネルギーのように全体を加熱することで与えてもよいが、ポリイミドのように着色のある樹脂フイルムを用いる場合には光エネルギーを与える場合には導電性物質吸着性樹脂前駆体層の上部より与えることが好ましい。導電性物質吸着性樹脂前駆体層と密着補助層2が重層されている転写シートを樹脂フイルムに転写してこれらの層を形成する場合は、転写したあとでエネルギーを与えても転写する前にエネルギーを与えてもよく、転写する前に光エネルギーを付与する場合は保護フイルム側から与えても、支持体側からあたえてもよい。また、与えるエネルギー量としては活性点が発生し、導電性物質吸着性樹脂前駆体層と相互作用し化学結合を形成する量を適宜与えることができる。こうして密着補助層2もしくは樹脂フイルムと密着させることができるが、このような例としては密着補助層2に活性点を発生させるラジカル発生剤を混合しておき、導電性物質吸着性樹脂前駆体層にラジカル重合可能な不飽和二重結合と導電性素材と相互作用可能な官能基とを併せ持つ反応性化合物を含ませることにより、エネルギー照射時に密着補助層2の表面に活性点としてラジカルが発生し導電性物質吸着性樹脂前駆体層に含まれる反応性化合物がグラフトとして化学結合をつくるような例が挙げられる。
【0146】
熱もしくは光などの輻射線の照射によりエネルギー付与が行われる場合には、熱としてヒーター、赤外線による加熱が使用される。また光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、LED等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
また、更に導電層をつけたくない、たとえばビアのような部分にはエネルギーを与えないようにする、たとえば光照射時にマスクをつけたりすることにより任意に導電性物質吸着性樹脂前駆体層3と密着補助層2もしくは樹脂フイルムとの密着のための結合を形成しないようにすることも可能である。逆に全面にエネルギーを付与することにより全面に導電性物質吸着性樹脂層を形成することも可能である。
なお、ここで、導電性物質吸着性樹脂層の形成に、反応性化合物として、平均分子量2万以上、重合度200量体以上の重合性ポリマーを使用した場合、低エネルギーの露光で重合が容易に進行するため、生成したポリマーの分解をさらに抑制することができる。
【0147】
なお、エネルギーを付与して導電性物質吸着性樹脂前駆体層を密着補助層2もしくは樹脂フイルム層1に密着させたあと、密着に寄与しない未反応の導電性物質吸着性樹脂前駆体層に含まれる化合物や、密着補助層2もしくは樹脂フイルム層1と結合をつくりえなかった導電性物質吸着性樹脂反応物を除去する工程(現像工程)を行うことができる。これは一般的には導電性物質吸着性樹脂前駆体を溶解させ、樹脂フイルムや密着補助層2を溶解させないような溶剤で行われる。具体的には水、アルカリ性現像液、有機溶剤系現像液などが用いられる。この現像方法としては前記溶剤につけて攪拌する方法やシャワーなどの圧力洗浄などの方法などがとられることが多い。
また、導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成し、前記エネルギー照射によって密着補助層2もしくは樹脂フイルムと密着させた後、上記方法で余分な導電性物質吸着性樹脂前駆体を除去し、更に導電性物質吸着性樹脂前駆体層と金属イオンや金属微粒子との吸着性をあげるために、プラズマ処理、紫外線処理などを併用してもよい。
【0148】
また、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを使用して作製した金属層付き樹脂フイルムを配線の形成に使用する場合には、導電性物質吸着性樹脂フイルム表面に所望により形成される金属層と樹脂フイルムの裏面側の配線とを接続するために穴をあける工程を行うことができる。
穴あけはドリル加工が一般的であるが、微細加工の際にはレーザー加工等でビア穴を挙げる方法を適用することもできる。穴あけ工程に用いるレーザとしては、発振波長が紫外光領域から赤外光領域までのいずれかの波長であっても用いることができる。なお、ここで上記紫外光領域とは50〜400nmの範囲の波長領域をいい、赤外光領域とは750nm〜1mmの範囲の波長領域をいう。用い得るレーザとしては、紫外線レーザ、炭酸ガスレーザなどが挙げられる。
【0149】
上記紫外線レーザとしては、発光波長領域が、通常、180nm〜380nm、好ましくは200nm〜380nm、より好ましくは300nm〜380nmである。紫外線レーザを得るためのレーザの例として、Ar、N、ArF、KrF、XeCL、XeF、He−Cd、He−Neなどの気体レーザ;YAG、NdYAG、Ndガラス、アレキサンドライトなどの固体レーザ;有機溶剤に溶かした色素を用いる色素レーザなどが挙げられる。特に高出力エネルギー発振が可能で、長寿命で、レーザ装置を安価に維持可能なYAGレーザ、NdYAGレーザが好適である。紫外線領域の発振波長として、これらレーザの高調波が好適に用いられる。レーザ高調波は、例えばYAGレーザなどで1.06μmのレーザ光(基本波)を発振させ、このレーザ光を、光路方向に所定の間隔をもって並列する二つの非線形結晶(LBO結晶)に通すことによって、波長0.53μmのSHG光を経て、波長0.355μmのTHG光(紫外線)に変換することによって得られる。このような高調波を得るための装置としては特開平11−342485号公報などに開示されているレーザ加工機が挙げられる。レーザは、連続的に又は断続的に照射することができるが、単パルスで断続的に照射する方がクラック発生が防止できるので好ましい。
【0150】
単パルス照射における照射回数(ショット数)は、通常5〜500回、好ましくは10〜100回である。照射回数が増えると加工時間が長くなり、クラックも発生しやすい傾向になる。パルス周期は、通常3〜8kHz、好ましくは4〜5kHzである。炭酸ガスレーザは分子レーザであり、電力からレーザ光に変換する効率が10%以上であり、発振波長は10.6μmで数十kWもの大出力を発生させることができる。通常、20〜40mJ程度のエネルギーを有し、約10−4〜10−8秒程度の短パルスで実施する。ビア形成に必要なパルスのショット数は、通常、約5〜1000ショット程度である。形成される孔は、スルーホール及びブラインドビアホールとして利用される。
孔の底部分の内径(d1)と孔の入り口(表面)部分の内径(d0)との比率(孔径比:d1/d0×100[%])は、通常40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは65%以上である。また、d0は10〜250μmの範囲が好ましく、20〜80μmの範囲がより好ましい。この孔径比が大きいものは、絶縁層間の導通不良を起こし難く信頼性が高い。
【0151】
本発明における穴あけ工程は樹脂フイルムの状態でも、密着補助層2形成後でも、導電性物質吸着性樹脂前駆体層形成後でも、もしくは後述する金属微粒子もしくは金属イオンを吸着させ導電性物質吸着樹脂フイルムを形成した後でも、金属導体層形成後でも行うことができる。樹脂フイルムに穴あけ工程を行うのであれば穴部に後の工程で密着補助層2、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3を転写や塗布により形成することにより、穴部にも導電性物質をつけることができ穴部にも密着のよい導体層を設けることができる。一方密着補助層2形成後、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3形成後、もしくは後述するシード層形成後や金属導体層形成後に行う場合は、そのままでも穴部にめっきをつけることは可能であるが、よりよい密着性を確保するためには別途めっきをつけるための通常行われるコンディショニング処理や触媒付与処理と組み合わせてもよい。
【0152】
また、この穴あけ工程よりも後の工程で穴部に残存するスミアを除去するデスミア工程を行ってもよい。これは必要に応じてビア穴部の表面を乾式及び/又は湿式法により粗化する。乾式粗化法としてはバフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方湿式粗化法としては過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。デスミア工程は絶縁膜にシードを利用して無電解めっきを行い給電層となる金属膜を形成した後に行うこともできる。この工程では膨潤工程、エッチング工程、中和工程などが含まれる。例えば有機溶剤系の膨潤液を用いた60℃5分間の膨潤工程、過マンガン酸ナトリム系のエッチング液を用いた80℃10分間のエッチング工程、硫酸計の中和液を用いて40℃5分間の中和工程などが代表的な例である。また、ポリイミドのような樹脂フイルムを用いる場合は強アルカリ液で洗浄するようなことが行われることもある。
デスミアを行わない場合は樹脂フイルムを溶解、もしくは膨潤させる溶剤で洗浄するのも有効である。
【0153】
本発明では導電性物質吸着性樹脂層を形成したあと、もしくは導電性物質吸着性樹脂を形成する前の導電性物質吸着性樹脂前駆体に必要に応じて金属イオンもしくは金属微粒子もしくは導電性微粒子を吸着させてもよい。
本発明の導電性物質吸着性樹脂層に金属イオンもしくは金属微粒子もしくは導電性微粒子を吸着させる場合、導電性物質吸着性樹脂前駆体層の状態で吸着させても、導電性物質吸着性樹脂前駆体層にエネルギーを付与し、密着補助層2もしくは樹脂フイルムと密着させて導電性物質吸着性樹脂層を形成してから吸着させてもよい。
吸着のさせかたとしては、導電性物質吸着性樹脂前駆体層の状態で吸着させる場合は、導電性物質吸着性樹脂前駆体塗布液に金属イオンを塩の状態で溶解させたり、もしくは金属微粒子、金属塩、導電性微粒子を導電性物質吸着性樹脂前駆体塗布液に分散したりしておき、密着補助層2もしくは樹脂フイルムに塗布する方法などを用いることができるし、樹脂フイルムもしくは密着補助層の上に導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成した後、樹脂フイルムごと金属イオン溶液、もしくは金属微粒子、金属塩、導電性微粒子の分散液中に浸漬し、金属イオンや金属微粒子、金属塩、導電性微粒子などを含浸させることにより吸着させてもよい。
【0154】
導電性物質吸着性樹脂層を形成してから吸着させる場合は導電性物質吸着性樹脂層を形成した樹脂フィルムを金属イオン溶液、もしくは金属微粒子、金属塩、導電性微粒子の分散液中に浸漬し、金属イオンや金属微粒子、金属塩、導電性微粒子などを含浸させることにより吸着させることができる。また、別の方法としてはイオン注入などにより、直接イオンを膜中に注入し吸着させてもよい。
更に目的の金属イオン、金属微粒子、導電性微粒子を導電性物質吸着性樹脂層に吸着させるために、一度吸着した金属イオン、もしくはあらかじめ存在させておいた金属イオンを別の金属イオンにイオン交換したり、金属イオンを還元析出させて金属微粒子にしてもよい。また、金属微粒子の表面に無電解めっき法や置換めっき法を用いて別の金属を析出させた複合金属微粒子を形成させてもよい。更に金属コロイドや金属ナノ粒子、導電性微粒子を相互作用させて凝集析出させる方法なども用いてもよい。
更に上記の金属塩、金属微粒子、導電性微粒子を適切な溶媒で溶解もしくは分散し、解離した金属イオンや粒子を含むその溶液もしくは分散液を、導電性物質吸着性樹脂前駆体層に塗布してもよい。
【0155】
また、本発明の導電性物質吸着性樹脂層に金属イオンもしくは金属微粒子もしくは導電性微粒子を吸着させる工程は、密着補助層2もしくは樹脂フイルムと密着させて導電性物質吸着性樹脂層を形成してから吸着させる場合は、密着に寄与しない未反応の導電性物質吸着性樹脂前駆体や、密着補助層2もしくは樹脂フイルムと結合をつくりえなかった導電性物質吸着性樹脂反応物を除去する工程(現像工程)と同時に行ってもよい。同時に行う場合は密着に寄与しない未反応の導電性物質吸着性樹脂前駆体や、密着補助層2もしくは樹脂フイルムと結合をつくりえなかった導電性物質吸着性樹脂反応物を除去するこれは溶剤、具体的には水、アルカリ性現像液、有機溶剤系現像液などの中に、吸着させたい導電性微粒子、金属微粒子、金属イオン、金属塩などをあらかじめ分散させたり溶解させたりすることにより行うことができる。
【0156】
以上のように金属イオンを含有する溶液もしくは金属微粒子もしくは導電性微粒子を分散した溶液を接触させることで、官能基には、金属イオンが吸着することができる。これら吸着を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
【0157】
更に本発明では吸着させた金属イオンを還元して金属微粒子を吸着させた形にすることもできる。本工程において、導電性物質吸着性樹脂前駆体層に吸着又は含浸して存在する金属塩、或いは、金属イオンを還元し、金属(微粒子)膜を成膜するために用いられる還元剤としては、用いた金属塩化合物を還元し、金属を析出させる物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、次亜リン酸塩、テトラヒドロホウ素酸塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
これらの還元剤は、用いる金属塩、金属イオンとの関係で適宜選択することができるが、例えば、金属イオン、金属塩を供給する金属塩水溶液として、硝酸銀水溶液などを用いた場合にはテトラヒドロホウ素酸ナトリウムが、二塩化パラジウム水溶液を用いた場合には、ヒドラジンが、好適なものとして挙げられる。上記還元剤の添加方法としては、例えば、導電性物質吸着性樹脂前駆体層が存在する樹脂フイルム層表面に金属イオンや金属塩を付与させた後、水、有機溶剤もしくはそれらの混合液で洗浄して余分な金属塩、金属イオンを除去した後、該表面を備えた樹脂フイルムをイオン交換水などの水中に浸漬し、そこに還元剤を添加する方法、該樹脂フイルム表面上に所定の濃度の還元剤水溶液を直接塗布或いは滴下する方法等が挙げられる。また、還元剤の添加量としては、金属イオンに対して、等量以上の過剰量用いるのが好ましく、10倍当量以上であることが更に好ましい。
この還元工程は前記導電性物質吸着性樹脂前駆体に金属塩、金属イオンを吸着させた後の工程で行われ、後述する無電解めっき工程と同時に行ってもよい。
【0158】
本工程に用い得る金属イオン、金属微粒子、導電性微粒子としては、吸着性の官能基と相互作用するものであれば特に制限はなく、公知の金属イオン、金属微粒子、導電性微粒子を任意に選択して用いることができる。例えば、Au、Ag、Pt、Cu、Rh、Pd、Al、Crなどの金属微粒子、In、SnO、ZnO、CdO、TiO、CdIn、CdSnO、ZnSnO、In−ZnOなどの酸化物半導体微粒子、及びこれらに適合する不純物をドーパントさせた材料を用いた微粒子、MgInO、CaGaOなどのスピネル形化合物微粒子、TiN、ZrN、HfNなどの導電性窒化物微粒子、LaBなどの導電性ホウ化物微粒子、また、有機材料としては導電性高分子微粒子や金属塩を含んだ高分子微粒子などが好適なものとして挙げられる。
【0159】
金属微粒子、導電性微粒子を用いる場合の粒径は0.1nmから1000nmの範囲であることが好ましく、1nmから100nmの範囲であることがさらに好ましい。粒径が0.1nmよりも小さくなると、微粒子同士の表面が連続的に接触してかえって凝集体を形成し、もたらされる吸着性が低下する傾向がある。また、1000nmよりも大きくなると、吸着能をもつ官能基と相互作用して結合する接触面積が小さくなるため親水性表面と粒子との密着が低下し、導電性領域の強度が劣化する傾向がある。
本工程において、金属塩としては、導電性物質吸着性樹脂層生成領域に付与するために適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオン、クロムイオン挙げられ、導電膜としてはAg、Cuが、磁性膜としてはCoが好ましく用いられる。
【0160】
本発明では更に導電性物質吸着性樹脂層に金属イオン、金属微粒子、もしくは導電性微粒子を吸着させたあと、必要に応じて吸着しえなかった余分な金属イオン、金属微粒子、もしくは導電性微粒子を洗浄して洗い落とす工程を入れてもよい。
【0161】
このようにして形成された本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムは、例えば、フレキシブルプリント配線板用の金属層付き樹脂フイルムの作製に使用できるほか、イオン交換膜、特定の金属を捕集する金属捕集膜、金属を触媒として用いる際の触媒担持膜など、金属の吸着、補足や、密着性に優れた金属層の形成を必要とする各種分野において利用することができる。
【0162】
上記金属イオン、金属微粒子、もしくは導電性微粒子の吸着により、導電性物質吸着性樹脂層中に析出した金属がフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、微粒子層と導電性物質吸着性樹脂層との密着性をさらに向上させることができる。
導電性物質吸着性樹脂層中に存在する金属量は、基板断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、導電性物質吸着性樹脂層の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、導電性物質吸着性樹脂層と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、さらに強い密着力が発現される。
【0163】
以下に、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを、その好適な応用分野であるフレキシブルプリント配線板用の金属層付き樹脂フイルムの作製に適用する場合について説明する。
(金属層付き樹脂フイルムの作製)
フレキシブルプリント配線板用の金属層付樹脂フイルムを作製する場合は、導電性物質吸着性樹脂フイルムに金属を吸着させ、その金属をベースとしてめっきを施す手段をとることが、導線性に優れた金属層(導電層)を形成する観点から好ましい。
導電性物質吸着性樹脂フイルムにめっき処理する場合、そのフィルムに金属、金属イオン、もしくは導電性微粒子を吸着させていない場合には、その導電性物質吸着性層に金属、金属イオン、もしくは導電性微粒子などから選択される無電解めっき触媒となるものを吸着させる、その後、無電解めっき処理すればよい。
また、この樹脂フイルムの導電性物質吸着性層に、予め無電解めっき触媒となる金属、金属イオン、もしくは導電性微粒子を吸着させた導電性物質吸着性樹脂フイルムを直接もちいてもよい。
なお、導電性物質吸着性樹脂フイルムが、予め所定量以上の金属イオン、金属微粒子もしくは導電性微粒子を吸着しており、それにより十分な導電性を持つ層がその表面に形成されている場合には、その導電性層に直接電気を流し、電気めっきを施してもよい。
【0164】
金属層の形成工程において、導電性物質吸着性層に吸着させる無電解めっき触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、相互作用性領域中の上の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、導電性物質吸着性樹脂前駆体層が有する相互作用性基と相互作用させることで、導電性物質吸着性樹脂前駆体層に金属コロイド(無電解めっき触媒)を付着させることができる。
【0165】
更に本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解めっき触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、基板へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0166】
本発明の例としては樹脂フイルム上に固定された導電性物質吸着性樹脂前駆体層にめっき触媒をつけるために、めっき触媒液(例えば硝酸銀水溶液や錫−パラジウムコロイド溶液)に基板を浸漬する。無電解めっき触媒としては、パラジウム、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、錫などの金属美粉末、及び/又はこれらのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、硫化物、過酸化物、アミン塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、有機キレート化合物などが挙げられる。また、これらを各種の無機成分に吸着させたものでもよい。この際の無機成分としてはコロイダルシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、雲母等の既述のものの他、アルミナ、カーボンのような微粉末であればどのようなものでもよい。また、この際の微粉末の大きさとしては平均粒子径が0.1〜50μmであるのが好ましい。
前記導電性微粒子や金属イオン、金属塩、無電解めっき触媒、無電解めっき触媒前駆体は1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
更にめっき触媒液に浸漬した後、余分なめっき触媒液を洗浄により除去する。
前記密着補助層に付与したシード層が十分な導電性を示す場合はこのまま電気めっきを行って導体層を形成してもよいが、金属イオンや無電解めっき触媒をつけただけでは十分な導電性が得られない場合があり、その場合は更に無電解めっき触媒を利用して無電解めっきを行う。
【0167】
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。無電解めっきはソフトエッチング、酸洗浄を行った後おこなってもよい。更に一般的に市販されている、アクチベーター、アクセラレーターの工程を経ておこなってもよい。
本工程における無電解めっきは、例えば、前記無電解めっき触媒等付与工程で得られた、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0168】
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が導電性物質吸着性樹脂前駆体層に付着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここ使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。また、無電解めっき触媒前駆体を還元し、無電解めっき触媒にしたうえで無電解めっき浴に浸漬してもよく、この場合も余分な無電解めっき触媒前駆体などを洗浄などで除去する。
【0169】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銀、クロム、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銀、銅、金、クロム、ニッケルが特に好ましい。
【0170】
また、上記各金属に適合しうる最適な還元剤、添加物があり、それらを併用することが好ましい態様である。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCu(SO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。
なお、これらのめっき浴には、上記最適な還元剤や添加剤以外の成分を目的に応じて添加することもできる。
【0171】
このようにして形成される導電性膜(金属層)の膜厚は、めっき浴の金属塩又は金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
セミアディティブ工法に用いられる銅貼板を作製する場合は導通がとれ欠陥のない金属膜ができる程度の3μm以下の膜厚でもよい。
【0172】
また、電気的絶縁層を形成する樹脂との密着を向上させるため、無電解めっきはクロムやニッケルで行い、導体層を形成する電気めっきは銅めっきをするというように、無電解めっきで形成される第一の金属と電気めっきで形成される第二の金属とが同じであっても異なっていてもよい。
【0173】
また、サブストラクティブ工法に用いられる銅張板を作成する場合は、無電解めっき工程の後、金属層(導電性層)の厚みや膜質を向上させる目的で、電気めっき工程を行ってもよい。
電気めっき工程では、前記無電解めっき工程における無電解めっきの後、この工程により形成された金属膜(導電性膜)を電極とし、さらに電気めっきを行う。これにより樹脂製支持体との密着性に優れた金属膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。該電気めっき工程を付加することにより、金属膜を目的に応じた厚みに形成することができ、本態様により得られた導電性素材を種々の応用に適用するのに好適である。
【0174】
本態様における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、本発明における電気めっき工程は、上述したように、パターン状の金属膜を目的に応じた厚みに形成するため以外にも、例えば、電気めっきすることで、IC等の実装に応用しうるようにするなどの目的のために、行うこともできる。この目的で行われるめっきは、銅等で形成される導電性膜や金属パターン表面に対して、ニッケル、パラジウム、金、銀、すず、ハンダ、ロジウム、白金、及びそれらの化合物からなる群から選ばれる材料を用いて行うことができる。
このようにして金属層付き樹脂フイルムを得ることができる。
【0175】
得られた金属層付き樹脂フイルムをCCLなどの多層配線板の作製に使用する場合には、形成された金属層(導電層=配線)と樹脂フイルムの裏面側の配線と接続するために、ビア穴部を形成する工程、及び、穴部に導電性材料を形成し、裏面側に存在する配線との接続を確保する工程を行えばよい。この積層された配線間を接続する工程は、(1)樹脂フイルム層1自体にまずビア穴をあけ、その後、穴を形成した樹脂フイルム層1表面に密着補助層2および導電性物質吸着性樹脂前駆体層3を形成した場合には、前記無電解めっき工程を行うことで、導電性物質吸着性層表面と同時に穴の内部もめっきすることができ、容易に多層間を接続する配線が形成される。
一方、樹脂フイルム層1の表面に、密着補助層2、導電性物質吸着性樹脂前駆体層3、および金属層を順次形成した後、ビア穴部を形成する場合には、別途穴部にのみ既存の銅張板を用いてスルーホールにめっきをするのと同様な手法を用いて無電解めっきを施すことにより接続を形成することができる。
これらいずれの場合にも、無電解めっきの後、さらに電気めっきを組み合わせることにより、めっき金属によってビア穴部内部全体にわたり金属を充填した状態となし、接続配線を形成することも可能である。
また、別の接続形成方法として、穴部に印刷法やディスペンザー法、インクジェット法などにより銅、銀、金、などの金属元素を含む、導電性微粒子や金属ナノ粒子、金属ナノペースト、導電性接着剤などを注入し接続配線を形成する方法をとることもできる。
【0176】
この金属層形成、或いは、さらに多層間を接続する配線を形成した後、加熱処理などを行ってもよい。加熱処理工程における加熱温度としては、100℃以上が好ましく、更には130℃以上が好ましく、特に好ましくは180℃程度である。更に樹脂によってはそのガラス転移温度付近で行うこともある。加熱温度は、処理効率や電気的絶縁層の寸法安定性などを考慮すれば400℃以下であることが好ましい。また、加熱時間に関しては、10分以上が好ましく、更には30分〜120分間程度が好ましい。加熱処理を行うことで、樹脂フイルムや密着補助層2、導電性物質吸着性層4に熱硬化性樹脂を用いた場合、それらの樹脂の硬化が進行し、金属層の密着性を、ピール強度を更に向上させることができる。
【0177】
本発明の金属層付き樹脂フイルムにおいて、樹脂フイルム表面の必要領域全面に金属層を形成し、その金属層を公知の方法でパターニングして配線を形成することができる。
例えば、金属層付き樹脂フイルムの金属層表面にめっきレジストをもうけて、サブトラクティブ法やセミアディティブ法を用いて配線パターンを形成する工程を行うことができる。
サブトラクティブ法とは、上記手法で電気めっきまで行って作成した金属膜上に、(1)レジスト層を塗布→(2)パターン露光、現像により残すべき導体のレジストパターン形成→(3)エッチングすることで不要な金属膜を除去する→(4)レジスト層を剥離させ、金属パターンを形成する方法を指す。本態様に使用される金属膜の膜厚としては5μm以上であることが好ましく、5〜50μmの範囲であることがより好ましい。
【0178】
セミアディティブ法とは、導電性物質吸着性樹脂前駆体層の上に形成した金属膜上に、(1)レジスト層を塗布→(2)パターン露光、現像により除去すべき導体のレジストパターン形成→(3)めっきによりレジストの非パターン部に金属膜を形成する→(4)DFRを剥離させ→(5)エッチングすることで不要な金属膜を除去する、金属パターン形成方法のことである。最初に形成した金属膜を給電層として用いて、電気めっきによりレジストのない部分に導電層を形成する手法である。めっき手法としては前記で説明した、無電解めっき、電気めっきが使用することができる。また、レジスト層を塗布する金属膜の膜厚としては、エッチング工程を短時間で済ませるため、0.3〜3μmほどが好ましい。また、形成された金属パターンに対して、さらに、電解めっき、無電解めっきを行ってもよい。
【0179】
以下に配線パターンを形成する方法の詳細について述べる。
(1)レジスト層形成工程
「レジストについて」
使用する感光性レジストとしては、光硬化型のネガレジスト、または、露光により溶解する光溶解型のポジレジストが使用できる。感光性レジストとしては、1.感光性ドライフィルムレジスト(DFR)、2.液状レジスト、3.ED(電着)レジストを使用することができる。これらはそれぞれ特徴があり、1.感光性ドライフィルムレジスト(DFR)は乾式で用いることができるので取り扱いが簡便、2.液状レジストはレジストとして薄い膜厚とすることができるので解像度の良いパターンを作ることができる。3.ED(電着)レジストはレジストとして薄い膜厚とすることができるので解像度の良いパターンを作ることができること、塗布面の凹凸への追従性が良く、密着性が優れている。使用するレジストは、これらの特徴を加味して適宜選択すればよい。
【0180】
「塗布方法」
1.感光性ドライフィルム
感光性ドライフィルムは、一般的にポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムにはさまれたサンドイッチ構造をしており、ラミネータでポリエチレンフィルムを剥がしながら熱ロールで圧着する。
感光性ドライフィルムレジストは、その処方、製膜方法、積層方法については、本願出願人が先に提案した特願2005−103677明細書、段落番号〔0192〕から〔0372〕に詳細に記載され、これらの記載は本発明にも適用することができる。
2.液状レジスト
塗布方法はスプレーコート、ロールコート、カーテンコート、ディップコートがある。両面同時に塗布するには、このうちロールコート、ディップコートが、両面同時にコート可能である点で好ましい。
液状レジストについては、本願出願人が先に提案した特願2005−188722明細書、段落番号〔0199〕から〔0219〕に詳細に記載され、これらの記載は本発明にも適用することができる。
3.ED(電着)レジスト
EDレジストは感光性レジストを微細な粒子にして水に懸濁させコロイドとしたものであり、粒子が電荷を帯びているので、導体層に電圧を与えると電気泳動により、導体層上にレジストが析出し、導体上でコロイドが相互に結合し膜状になることで形成される。
【0181】
(2)パターン露光工程
「露光」
レジスト膜を金属膜上部に設けてなる基材をマスクフィルムまたは乾板と密着させて、使用しているレジストの感光領域の光で露光する。フィルムを用いる場合には真空の焼き枠で密着させ露光をする。露光源に関しては、パターン幅が100μm程度では点光源を用いることができる。パターン幅を100μm以下のものを形成する場合は平行光源を用いることが好ましい。また、近年、マスクフイルムまたは乾板を使用せず、レーザーによりデジタル露光することにより、パターン形成する方法もとられるようになってきている。
「現像」
光硬化型のネガレジストならば未露光部を、または、露光により溶解する光溶解型のポジレジストならば露光部を溶かすものならば何を使用してもようが、主には有機溶剤、アルカリ性水溶液が使用され、近年は環境負荷低減からアルカリ性水溶液が使用されている。
【0182】
(3)めっきによりレジストの非パターン部に金属膜を形成する
前記パターン形成の後、パターン下部に存在する金属膜もしくは導電性膜(例えば無電解めっきで形成した膜)を給電電極とし、さらに電気めっきを行うことができる。これにより電気的絶縁性である樹脂フイルムとの密着性に優れた金属膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、金属膜を目的に応じた厚みに形成することができ、本態様により得られた導電性素材を種々の応用に適用するのに好適である。
本態様における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
また、電気めっきによる導体層の形成はレジストを厚くすれば厚く、薄くすれば薄くなる。レジストの厚みよりも電気めっきによる導体層が厚くなった場合はレジストが剥離しにくくなる上に隣の線との間がつまり好ましくない。
【0183】
(4)レジスト剥離工程
「剥離工程」
電気めっきして金属(導電性)パターンが完成した後、不要となっためっきレジストは不要になるので、これを剥離する工程が必要である。剥離は、剥離液をスプレーして行うことができる。剥離液はレジストの種類により異なるが、一般的にはレジストを膨潤させる溶剤、または、溶液をスプレーにより拭きつけ、レジストを膨潤させて剥離する。
【0184】
(5)エッチング工程
「エッチング」
エッチングは不要となった給電層を化学的に溶解除去することで導体パターン間の絶縁性を発現させ、導体パターンを完成するための工程である。エッチング工程は主に水平コンベア装置で、エッチング液を上下よりスプレーして行う。エッチング液としては、酸化性の水溶液で金属層を酸化、溶解する。エッチング液として用いられるものは塩化第二鉄液、塩化第二銅液、アルカリエッチャントがある。レジストがアルカリにより剥離してしまう可能性があることから、主には、塩化第二鉄液、塩化第二銅液が使用される。
本発明の方法では、基板界面が凹凸化されていないため基板界面付近の導電性成分の除去性が良いことに加え、金属膜を基材上に導入している導電性物質吸着性樹脂前駆体層が、高分子鎖の末端で密着補助層2もしくは電気的絶縁層と結合しており、非常に運動性の高い構造を有しているため、このエッチング工程において、エッチング液がグラフトポリマー層中に容易に拡散でき、基材と金属層との界面部における金属成分の除去性に優れるため、鮮鋭度に優れたパターン形成が可能となる。
【0185】
本発明では配線パターン形成後、非配線部分に残存する導電性物質吸着性樹脂層を不活性化する工程を行ってもよい。不活性化を行うことによりめっきシードとなった金属を除去しやすくしイオンマイグレーションなどの故障を未然に防ぐこともできる。不活性化の方法としては導電性物質吸着性樹脂前駆体層とある種のイオン化合物を相互さようさせて、不溶の塩を形成してしまう方法、めっき触媒と相互作用できる官能基を別の絶縁性の基に化学的に改質する方法などをとることができる。更には上層にくる電気的絶縁層やソルダーレジストの層との密着性をあげるために、これらの層と化学結合をつくりうる官能基に改質してもよい。
【0186】
更には配線パターン形成後、非配線部分に残存する導電性物質吸着性樹脂前駆体層を除去する工程を入れてもよい。除去の方法としては例えば粗面化処理に用いられるデスミア工程を用いてもよい。デスミア工程はアルカリ性過マンガン酸を用いる方法が知られている。デスミア工程は絶縁膜にシードを利用して無電解めっきを行い給電層となる金属膜を形成した後に行うこともできる。この工程では膨潤工程、エッチング工程、中和工程などが含まれる。この処理を行うことにより、更には上層にくる電気的絶縁層やソルダーレジストの層との密着性をあげることができる。また、配線形成時は粗面化していないため、高精細な配線パターンが形成できる。
【0187】
また、本発明では形成した導体パターンに銅面の処理を行ってもよい。処理法としては黒色酸化処理法、酸化銅還元法、銅粗面化法、粗面化無電解銅めっき法などを適用することができる。これらを行うことにより、上層にくる電気的絶縁層やソルダーレジストの層との密着性をあげることができる。また、金属導体部の酸化を防止するために防錆処理を行う場合もある。
【0188】
更にパターン形成後、再び電気的絶縁層形成工程にもどることにより、多層基板を作成することができる。また、最外層の場合は保護膜の形成やソルダーレジスト膜の形成工程仕上げのめっき(例えばニッケル−金めっき、ソルダーコートなど)、基板を製造することができる。
【0189】
上述したように、本発明の方法でフレキシブルプリント基板を作製することで、優れた特性を有する微細な配線パターンを形成可能なプリント配線板を容易に形成することができる。本発明の製造方法により得られた金属層付樹脂フイルムなどの導線性材料を用いて、例えば、公知のエッチング処理などにより、従来の技術では困難であった20ミクロン以下の微細で、且つ密着強度の高い銅配線の形成が可能となる。
【実施例】
【0190】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(重合開始基を有するポリマーP1の合成)
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75度に加熱した。そこに、[2−(アクリロイルオキシ)エチル](4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミド〔[2−(Acryloyloxy)ethyl](4−benzoylbenzyl)dimethyl ammonium bromide〕8.1gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート〔Hydroxyethylmethaacrylate〕9.9gと、イソプロピルメタクリレート〔isopropylmethaacrylate〕3.5gと、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gと、MFG30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80℃に上げ、更に2時間反応させ、重合開始基を有するポリマーP1を得た。
【0191】
(開始剤を含有した密着補助層2の形成)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185、油化シェルエポキシ(株)製エピコート828)20質量部(以下、配合量は全て質量部で表す)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−673)45部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、大日本インキ化学工業(株)製フェノライト)30部をエチルジグリコールアセテート20部、ソルベントナフサ20部に攪拌しながら加熱溶解させ室温まで冷却した後、そこへ前記エピコート828とビスフェノールSからなるフェノキシ樹脂のシクロヘキサノンワニス(油化シェルエポキシ(株)製YL6747H30、不揮発分30質量%、重量平均分子量47000)30部と2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール0.8部、さらに微粉砕シリカ2部、シリコン系消泡剤0.5部を添加しさらにこの混合物の中に前記重合開始基を有するポリマーP1を10部添加し、さらに、全体の不揮発性固形分が20重量%になるようにメチルエチルケトンを加え密着補助層2形成用塗布液を作製した。
支持体となる樹脂フイルム(ポリイミドフイルム)としてカプトン150EN(東レ・デュポン製)を用いてその両面に上記密着補助層2形成用塗布液を、乾燥時の固形分の厚みが3μmとなるようにダイコート法で連続塗布し、その後140℃で30分乾燥して密着補助層2形成した。
【0192】
(導電性物質吸着性樹脂前駆体P2の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量 25000、和光純薬工業)60gとハイドロキノン(和光純薬工業)1.38g(0.0125mol)を、冷却管を設置した1lの三口フラスコに入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、和光純薬工業)700gを加えて室温で撹拌し、均一な溶液とした。その溶液を撹拌しながら、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工)64.6gを滴下した。続いて、DMAc30gに懸濁させたジラウリン酸ジ−n−ブチルすず(東京化成工業)0.79gを滴下した。撹拌しながら65℃のウォーターバスで加熱した。5時間後に加熱を止め、室温まで自然冷却した。
反応液300gをビーカーにとり、氷バスで5℃まで冷やした。その反応液を撹拌しながら、4規定の水酸化ナトリウム水溶液41.2mlを約1時間で滴下した。滴下中の反応溶液の温度は5〜11℃だった。滴下後に反応液を室温で10分撹拌し、吸引濾過で固形分を取り除き褐色の溶液を得た。その溶液を酢酸エチル3リットルで再沈し、析出した固体を濾取した。その固体をアセトン3リットルで終夜リスラリーした。固体を濾別後、別途ポリマー1gに対し水2gとアセトニトリル1gの混合溶媒に溶解し、この溶液をイオン交換樹脂カラムを通して完全にイオンを取り除き、10時間真空乾燥して薄い褐色の粉末P2を得た。このポリマー1gを水3gとアセトニトリル3gの混合溶媒に溶かしたときのpHは5.53で、粘度は4.54cpsであった。(粘度は、東機産業社製、RE80型粘度計で28℃で測定、ローター30XR14使用)。またGPCによる分子量は30,000であった。
【0193】
次に導電性物質吸着性樹脂前駆体層形成用の液として下記組成の吸着性樹脂前駆体層形成用液を作製し、前記密着補助層2の上に厚さ1.5ミクロンになるようにダイコート法で両面に塗布し、その後、80℃〜120℃で乾燥して導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成した。
(吸着性樹脂前駆体層形成用液状組成物2)
・導電性物質吸着性樹脂前駆体P2 3.1g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
【0194】
前記吸着性樹脂前駆体層を密着補助層2の上に形成した後、吸着性樹脂前駆体層の側より活性点を発生させ密着させるエネルギーとして波長254nmの紫外光を露光機:紫外線照射装置(UVX−02516S1LP01、ウシオ電機社製)を用い、室温で1分間露光した。全面露光後、密着補助層2と相互作用しえなかった不要な導電性物質吸着性樹脂前駆体反応物をイオン交換水で充分洗浄し、除去し、樹脂フイルム層1基材表面に導電性物質吸着性層4を備えた実施例1の導電性物質吸着性樹脂フイルムを得た。
【0195】
〔実施例2〕
実施例1において、樹脂フイルムであるポリイミドフイルムとして、そこにあらかじめドリルにより穴径200μmの穴をあけたフイルムを樹脂製支持体1として用いた以外は実施例1と同様な操作を行って、実施例2の導電性物質吸着性樹脂フイルムを作成した。
【0196】
〔実施例3〕
実施例2において、導電性物質吸着性前駆体層の形成に用いた吸着性樹脂前駆体層形成用液状組成物2を下記組成3にした以外は実施例2と同様な操作を行って、実施例3の導電性物質吸着性樹脂フイルムを作成した。
この吸着性樹脂前駆体層形成用液状組成物3は、硝酸銀を含有するため、この組成物3により形成された導電性物質吸着性層は、予め導電性物質を吸着した状態となる。
(吸着性樹脂前駆体層形成用液状組成物3)
・導電性物質吸着性樹脂前駆体P2 3.1g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
・硝酸銀 0.04g
【0197】
(導電性物質の吸着及び吸着量の測定)
−導電性物質の吸着処理−
実施例1、2において作製した導電性物質吸着性フィルムを硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に15分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、導電性物質吸着性層に銀を吸着させた。
−導電性物質吸着量の測定−
前記処理により銀を吸着させた実施例1、2の導電性物質吸着性樹脂フイルム、及び、予め
導電性物質である銀を吸着してなる実施例3の導電性物質吸着性樹脂フイルムについて、以下に示す方法で銀の吸着量を測定したところ、実施例1は170mg/m、実施例2は160mg/m、実施例3は180mg/mであり、いずれも十分な量の銀(導電性物質)が吸着されていることが確認された。
銀吸着量の測定方法:所定量の銀を吸着させたサンプルを作製し、蛍光X線の銀量に対する強度の検量線を作成し、各サンプルの蛍光X線測定を行うことにより測定した。
【0198】
〔比較例1〕
実施例1において導電性物質吸着性樹脂前駆体層3を密着補助層2の上に形成しない以外は実施例1と同様な操作を行い、樹脂フイルム層1表面に密着補助層2のみを形成し、露光によるエネルギー付与、イオン交換水による十分な洗浄を行い、比較例1の樹脂フイルム積層体を得た。
その後、実施例1と同様にして硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に15分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、銀を吸着させ、吸着量を測定したところ1mg/m以下であり十分な金属吸着がなされていないことが確認された。これは、導電性物質吸着性樹脂層が形成されなかったがために金属吸着サイトがほとんど表面に存在しないためと考えられる。
【0199】
〔比較例2〕
実施例1において導電性物質吸着性樹脂前駆体層3を密着補助層2の上に形成したのち、導電性物質吸着性樹脂前駆体層の側より活性点を発生させ密着させるエネルギーとして波長254nmの紫外光を照射しなかった以外は実施例1と同様な操作をおこない、比較例2の樹脂フイルム積層体を得た。
その後、実施例1と同様にして硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に15分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、銀を吸着させ、吸着量を測定したところ1mg/m以下であり十分な金属吸着が確認されなかった。
上記結果を表1に示す。
【0200】
【表1】

【0201】
表1に明らかなように、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムは、樹脂層の積層体でありながら、導電性物質の吸着能が高く、十分な量の導電性物質を吸着、固定化し得ることがわかる。
次に前記本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを利用した金属層付樹脂フイルムの作製方法について実施例を挙げて説明する。
【0202】
〔実施例4〕
実施例1で作製した導電性物質吸着性樹脂フイルムを硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に10分間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解めっき浴に10分間浸漬し、無電解銅めっき層を形成した。無電解めっき層の厚みはいずれも1.5μmであった。
<無電解めっき浴成分>
・硫酸銅 0.35g
・酒石酸NaK 1.75g
・水酸化ナトリウム 0.75g
・ホルムアルデヒド 0.25g
・水 47.8g
【0203】
更に前記無電解銅めっき層を給電層として下記組成の電気銅めっき浴に3A/dmの条件で電気めっきを30分間おこなった。電気めっき処理の後に形成された銅の厚みは18μmであった。
<電気めっき浴の組成>
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
得られた導体層を形成した基板を更に140℃で1時間加熱処理をおこなった。
【0204】
(金属層付き樹脂フイルムの性能評価)
得られた実施例4及び5の金属層付き樹脂フイルムの性能を以下の方法で評価を行った。
この金属層付き樹脂フイルムの金属層側の表面にドライエッチングレジストフイルムを20μmの厚さになるようにラミネートし、レジスト膜を金属層表面に設けてなる樹脂フイルムをマスクフィルムまたは乾板と密着させて、レジストの感光領域の光で露光し、配線を形成したい部分がレジストで覆われるようにパターンを形成し、さらにアルカリ性現像液を利用して未露光部のレジストを導体層が露出するまで溶解、除去した。
配線パターン形成時に金属層と樹脂フイルムとの密着強度が測定できるように幅5mm×10cmの導体層の「べた部分」を形成できるようにレジストが覆われた部分を特別にもうけた。その他の部分には、導体のライン/スペースが10μm/10μmとなるパターンをテスト的に形成した。
【0205】
次に、ウエットエッチング(塩化第二鉄を主成分としたエッチング液もしくは塩化第二銅を主成分としたエッチング液等)を行い、現像によりレジストが除去された非配線パターンの部分の銅を下地の樹脂層がでるまでエッチング除去した。その後不要となったエッチングレジストを剥離した。剥離は、剥離液をスプレーして行なった。
【0206】
得られた配線パターンを形成した基板において、5mm×10cmの銅による金属層の部分を、テンシロン引っ張り試験機(島津製作所製、AGS−J)を用いて90度の剥離実験を行った。剥離強度を下記表2に示す。
また、得られたライン/スペースが10μm/10μmのパターンの観察を電子顕微鏡にておこなった。ライン/スペースが10μm/10μmのパターンが、配線の切断や線の太りなどがなく形成されているものを○とし、細線再現性に優れると評価し、線の一部に不均一な部分があるものを△とし、配線の断線や、隣接する線との接合など、配線として問題のあるレベルのものを×とした。
【0207】
〔比較例3〕
実施例4で得た導電性物質吸着性樹脂フイルムを用いて作製した金属層付樹脂フイルムを用いる代わりに、樹脂フイルム表面にスパッタリング法にて金属製給電層を作製し、同様に電気めっきをおこなった。
前記給電層は、以下のようにして形成した。即ち、真空度0.01から0.1Paに保持されたチャンバー内で、200℃1分の加熱処理を行ったあと、スパッタリングターゲットとしてクロムを20重量%含有するニッケル−クロム合金ターゲットを用い、ポリイミド(樹脂フイルム)表面に厚み20nmのニッケル−クロム合金層を形成し、そこに、さらに、厚さ100nmの銅層を形成し、給電層とした。形成された給電層を電極として、実施例4、5と同様にして電気めっきを行って得た比較例3の金属層付樹脂フイルムを用いて実施例4の評価と同様の操作をおこなった。
【0208】
〔比較例4〕
市販のポリイミドフイルム(樹脂フイルム)の両面に熱可塑性ポリイミド前駆体ワニス層を各2.5μm形成し、圧延銅箔(厚み18μm)をその上に重ね合わせ更にクッション材ではさみ、加熱プレス機で300度25kg/cmの条件下で4時間加熱圧着した。この金属層付樹脂フイルムを用いて実施例4と同様の操作をおこなった。
実施例4、5及び比較例3、4の金属層付き樹脂フイルムの評価結果を下記表2に示す。
【0209】
【表2】

【0210】
表2に明らかなように、本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを利用して作製した金属層付樹脂フイルムは、金属層と支持体との密着性に優れ、且つ、この金属層付樹脂フイルムを使用して配線を作製した場合においても、密着強度が強く、細線再現性が良好な微細配線を形成しうることがわかった。他方、公知のスパッタリング法で形成された金属膜を用いた比較例3は、金属層と樹脂フイルムとの密着性に劣り、ワニスを用いて熱接着した金属層を有する比較例4は、密着性に優れるものの、細線再現性に劣り、微細配線の作製には適さないことがわかる。このことから、本発明の金属層付き樹脂フイルムは、フレキシブルプリント配線基板など、微細配線の作製に有用であることがわかる。
【0211】
〔実施例5〕
実施例1において導電性物質吸着性樹脂前駆体P2のかわりに、以下のように導電性物質吸着性樹脂前駆体P3を合成した。
(合成例:導電性物質吸着性樹脂前駆体P3の合成)
1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド34.5gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート6.65g、2−シアノエチルアクリレート28.5g、V−601(和光純薬製)0.65gのN,N−ジメチルアセトアミド35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、N,N−ジメチルアセトアミド19gを加え、55℃、4時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル:ヘキサン=1:1で再沈を行い、固形物を取り出し、重合性基及び相互作用性基を有するポリマーAを32g得た。
この導電性物質吸着性樹脂前駆体P3を用いて、導電性物質吸着性樹脂前駆体層形成用の液として下記組成の吸着性樹脂前駆体層形成用液を作製し、前記密着補助層1の上に溶剤を除去した乾燥後の厚さが1.5ミクロンになるようにダイコート法で両面に塗布し、その後、80℃〜120℃で乾燥して導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成した。
【0212】
(吸着性樹脂前駆体層形成用液状組成物3)
・導電性物質吸着性樹脂前駆体(P3) 10.5質量部
・アセトン 73.5質量部
・メタノール 33.5質量部
・N,N−ジメチルアセトアミド 5.0質量部
前記導電性物質吸着性樹脂前駆体層を密着補助層2の上に形成した後、金属層を作製したい部分にのみUV光があたるように三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、600秒間照射させ、その後、攪拌した状態のアセトン中にグラフトポリマーが生成された基板を10分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。このようにして密着補助層1の上に導電性物質吸着性樹脂層を形成した樹脂フイルムを作製した。
【0213】
[導電性物質の吸着処理]
前記樹脂フイルムをPdの1アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。続いて、1%ジメチルボラン−水/メタノール(水/メタノール=1/3)混合溶液に、ポリマー層を有する基板A2を15分浸漬させた後、アセトンに浸漬し洗浄を行った。このようにして導電性物質吸着済み樹脂フイルムFを作製した。
吸着したパラジウム量は結合誘導プラズマ質量分析法にて測定した。パラジウムの吸着量は220mg/m2であった。
【0214】
次に実施例4において、実施例1で作製した導電性物質吸着性樹脂フイルムの代わりに導電性物質吸着済み樹脂フイルムFを用いて、実施例4において硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に10分間浸漬した後、蒸留水で洗浄する操作を行わない以外は同様に無電解めっき工程、電気めっき工程を行い属配線パターンを形成できる金属膜の存在する部分と金属配線パターンを形成できない金属の存在しない樹脂の部分とが並存することを特徴とする金属配線形成用金属層付樹脂フイルムを作製し、更に同様に金属層付き樹脂フイルムの性能評価をパターンを形成して行ったところ、細線形成性は良好で密着強度は0.7kN/mであった。
【0215】
以上の結果から、本発明の方法で作製した金属配線形成用金属層付樹脂フイルムを用いてフレキシブルプリント基板を作製することで、生産性に優れたプリント配線板を容易に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムおよびその製造方法を用いることで、フレキシブルプリント配線板用の金属層付き樹脂フイルムの作製に使用できるほか、イオン交換膜、特定の金属を捕集する金属捕集膜、金属を触媒として用いる触媒担持膜、帯電防止フイルム、電磁波シールドフイルムなどにも利用できる。
また、該導電性物質吸着性樹脂フイルムを用いて作製した金属層付き樹脂フイルムは、特にフレキシブルプリント配線板用として有用であり、微細な配線パターンを形成することが可能であり、かつ高い密着強度を発現するフレキシブルプリント配線板を形成するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムの一態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムであって、両面に導電性物質吸着性樹脂層を有する例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の導電性物質吸着性樹脂フイルムを用いて得られた金属層付き樹脂フイルムの一態様を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0218】
1 樹脂フイルム(樹脂製支持体)
2 密着補助層
3 導電性物質吸着性樹脂前駆体層
4 導電性物質吸着性樹脂層
5 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層の樹脂層からなり、該樹脂層の少なくとも1層が、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層である導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【請求項2】
前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する分子量が1000以上300000以下のオリゴマーを含む吸着性樹脂前駆体層にエネルギー付与することにより、隣接する他の樹脂層との間で化学的、電気的、或いは、物理的結合を生起して密着することで形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【請求項3】
前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、支持体を構成する樹脂層の片面もしくは両面に設けられており、前記吸着性樹脂層と支持体を構成する樹脂層とが直接化学的、電気的、或いは、物理的結合を生起して密着していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【請求項4】
前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、支持体を構成する樹脂層の片面もしくは両面に設けられており、前記吸着性樹脂層と支持体を構成する樹脂層との間に存在し、吸着性樹脂層、及び、支持体を構成する樹脂層と、化学的、電気的、又は、物理的結合を生起し、密着しうる1層以上の密着補助層を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【請求項5】
前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層が、正の荷電を有するが正の荷電に解離しうる官能基、負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる官能基、金属と相互作用しうる非イオン性の極性基、導電性物質・金属とキレーション又は多座配位構造をとりうる官能基、包接可能な官能基、及び、結晶水として金属が保持される溶剤と相互作用する官能基から選択される、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物からなり、金属イオンもしくは金属微粒子と塩形成、多座配位、金属塩分散、包接、イオン注入、イオン交換などにより金属イオン、金属微粒子、及び、導電性微粒子から選ばれる少なくとも1種を吸着する性質をもつことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【請求項6】
前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層を構成する導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物が、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体由来の化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【化1】

式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【請求項7】
前記導電性物質吸着性樹脂フイルムが最終的に表裏貫通する穴を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルム。
【請求項8】
樹脂フイルム支持体に上に、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物を含有する吸着性樹脂層の前駆体層を設ける第一工程と、前記吸着性樹脂層の前駆体層にエネルギーを付与して、樹脂フイルム支持体と化学的、電気的、又は物理的結合を生起して密着した、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層を形成する第二工程と、隣接する樹脂フィルム支持体と化学的、電気的、又は物理的結合を生起しなかった未反応の導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ官能基を有する化合物を除去する第三工程と、該第一工程から第三工程の前又は後に実施される樹脂フイルム支持体と吸着樹脂層との積層体、或いは、樹脂フイルム支持体と吸着樹脂層の前駆体層との積層体に穴をあける工程と、を含む導電性物質吸着性樹脂フイルムの製造方法。
【請求項9】
前記導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層の前駆体層、もしくは、導電性物質もしくは金属を吸着する性質をもつ吸着性樹脂層に、塩形成、多座配位、金属塩分散、包接、イオン注入、及び、イオン交換から選択される手段により、金属微粒子、導電性微粒子及び金属イオンから選択される1種以上を吸着保持させる工程を含むことを特徴とする請求項8記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムに、金属イオンを吸着保持させ、該金属イオンを還元することにより吸着性樹脂層中に金属を析出させることで吸着性樹脂層中に金属層を形成してなる金属層付き樹脂フイルム。
【請求項11】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムに、金属イオンを吸着保持させる工程と、該金属イオンを還元することにより吸着性樹脂層中に金属を析出させることで金属層を形成する工程と、を含む金属層付き樹脂フイルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の導電性物質吸着性樹脂フイルムに、金属微粒子を吸着させるか、もしくは、金属イオンを吸着保持させた後還元して吸着性樹脂層中に金属微粒子を形成させる工程と、吸着した金属微粒子を触媒として用い、第二の金属の無電解めっきを行う工程を含む、金属層付樹脂フイルムの製造方法。
【請求項13】
前記無電解めっきを行う工程の後に、さらに、電気めっきを行う工程を有する請求項12に記載の金属層付樹脂フイルムの製造方法。
【請求項14】
前記無電解めっき工程を実施する前に、あらかじめ導電性物質吸着性樹脂フイルムに穴をあける工程を実施することを特徴とする請求項12又は請求項13記載の金属層付樹脂フイルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−273164(P2008−273164A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146249(P2007−146249)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】