説明

小型電動車

【課題】握り部の握り心地を改善するとともに、ハンドルの重量を軽くすることができ、操作性や握り心地が良く、又、見栄えの良い操舵ハンドルを備えた小型電動車を提供する。
【解決手段】内部に芯材9を有し外周には軟質の被覆材10を被覆したハンドル杆8の被覆材10には、少なくともハンドルベース6後端の左右部で横方向略直線上の握り部11を形成し、該握り部11前方にはアクセルレバー12を設け、該握り部11の外側部は前方へ向け屈曲させて、前記ハンドルベース6の前部へ連結するとともに、該握り部11の被覆材10は、外側に隣接する屈曲部13被覆部よりも外径を大きくして、握り部11と
屈曲部13との間に段差部14、又は、該屈曲部13から徐々に外径を大きくした傾斜部15を形成し、更に、この段差部14、又は、傾斜部15近傍内部の芯材9を、前記被覆材10の外径変化とは逆に握り部11芯材9外径を屈曲部13芯材外径よりも小さく形成してなる小型電動車の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子等の単座の小型電動車に関し、詳しくは、前輪操舵用の操舵ハンドルの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の小型電動車は、主にお年寄りや身体障害者が使用する電動車椅子として用いられ、特許文献1には操舵ハンドルの握り部にのみゴム材等のグリップを装着したものが、又、特許文献2には操作ボックスで覆われた部分以外のハンドル部分全体に被覆材を被覆し、ハンドルのどこを握っても比較的握り心地の良い小型電動車のハンドルが記載されている。
【特許文献1】特開2002-119547号公報
【特許文献2】特開2003-235905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
握り部にのみグリップを装着した構成のハンドルは握り部以外の部分を握ると握り心地が悪く、外観的にも見栄えが悪いものであった。又、握り部以外の部分も被覆材で被覆する構成では、耐久性と握り心地の両立が難しく、ある程度握り心地を犠牲にしたものであった。
芯材外周に被覆する被覆材は同材質でも、芯材に対して厚く被覆した方が軟らかい感触であり、薄く被覆すると固い感触を受けるものである。握り部の被覆材に関しては軟らかい方が握り心地が良いが、素材自体を過度に軟らかくすると耐久性の面で問題があり、軟らかく握り心地が良い上に、耐久性を有するハンドルが望まれている。
本発明は、握り部の握り心地を改善するとともに、ハンドルの重量を軽くすることができ、操作性や握り心地が良く、又、見栄えの良い操舵ハンドルを備えた小型電動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
車体1前部の前輪2を操舵可能な操舵ハンドル3を設け、その後方に設けたシート4に座る操縦者が操舵ハンドル3を握って操舵する小型電動車において、前輪2上方へ立設する操舵軸5上端部にハンドルベース6を固着し、該ハンドルベース6を操作ボックス7で覆い、この操作ボックス7の左右外方に、内部に芯材9を有し外周には軟質の被覆材10を被覆した平面視ループ状のハンドル杆8を設け、該被覆材10には、少なくともハンドルベース6後端の左右部で横方向略直線状の握り部11を形成し、該握り部11前方には握り部11を握って操作可能のアクセルレバー12を設け、該握り部11の外側部は前方へ向け屈曲させて、前記ハンドルベース6の前部へ連結するとともに、該握り部11の被覆材10は、外側に隣接する屈曲部13被覆部よりも外径を大きくして、握り部11と屈曲部13との間に段差部14、又は、該屈曲部13から徐々に外径を大きくした傾斜部15を形成し、更に、この段差部14、又は、傾斜部15近傍内部の芯材9を、前記被覆材10の外径変化とは逆に握り部11芯材9外径を屈曲部13芯材9外径よりも小さく形成してなる小型電動車の構成とする。
【0005】
又、ループ状に形成したハンドル杆8の前側一部を操作ボックス7で覆い、少なくとも該操作ボックス7で覆わない部分のハンドル杆8を被覆材10で被覆するとともに、屈曲部13及び該屈曲部13前側から操作ボックス7で覆われた部位までの間の被覆材10と芯材9とを略均一の外径で構成してなる小型電動車とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明にあっては、前輪2上方へ立設する操舵軸5上端部にハンドルベース6を固着し、該ハンドルベース6を操作ボックス7で覆い、操作ボックス7の左右外方に、内部に芯材9を有し外周には軟質の被覆材10を被覆した平面視ループ状のハンドル杆8を設け、該被覆材10には、少なくともハンドルベース6後端の左右部で横方向略直線上の握り部11を形成し、該握り部11前方には握り部11を握って操作可能のアクセルレバー12を設け、該握り部11の外側部は前方へ向け屈曲させて、前記ハンドルベース6の前部へ連結するとともに、該握り部11の被覆材10は、外側に隣接する屈曲部13被覆部よりも外径を大きくして、握り部11と屈曲部13との間に段差部14、又は、該屈曲部13から徐々に外径を大きくした傾斜部15を形成してあるので、ハンドル操舵の基本操作位置となる握り部11の位置を操縦者が明瞭に理解し操舵することが可能であり、握り部11の被覆肉厚が厚く軟らかい握り心地を得ることができる。
更に、この段差部14、又は、傾斜部15近傍内部の芯材9を、前記被覆材10外径変化とは逆に握り部11芯材9外径を屈曲部13芯材9外径よりも小さく形成してあるので、操舵ハンドル3の重量を軽くすることができ、比較的耐久性を有する固めの被覆材10を用いた場合にも握り部11の被覆材10肉厚を更に厚くすることが可能となり、耐久性が良く、軟らかく握り心地の良い操舵ハンドル3を備えた小型電動車を提供することができる。
【0007】
請求項2の発明にあっては、ループ状に形成したハンドル杆8の前側一部を操作ボックス7で覆い、少なくとも該操作ボックス7で覆わない部分のハンドル杆8を被覆材10で被覆するとともに、屈曲部13及び該屈曲部13前側から操作ボックス7で覆われた部位までの間の被覆材10と芯材9とを略均一の外径で構成してあるので、被覆材10を全て同材質で被覆しても、握り部11では握り心地を重視して軟らかい握り心地を得ることができるとともに、屈曲部13や屈曲部13前側では耐久性を重視した被覆材10を得ることができる。又、握り部11以外のどの部分を握っても被覆材10外径が同一で握り具合が変わらないので、操縦者が違和感なく操舵することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の小型電動車は、車体1の前後に各々左右一対の前輪2及び後輪20を備え、後輪20上方を覆うリヤカバー21を設けてある。リヤカバー21の内側には、後輪20駆動用のモータ22、ギヤボックス23、バッテリ24等が配置され、リヤカバー21上方には単座のシート4を設けてある。リヤカバー21前方から前輪2にかけて操縦者が足を載せるステップ25が形成してあり、ステップ25の前部からは操舵軸5を上方へ向け延設し、その上端部にはハンドルベース6を固着してある。該ハンドルベース6は操作ボックス7で覆われ、操作ボックス7左右外方には平面視ループ状のハンドル杆8を形成してある。
【0009】
操作ボックス7には、バッテリ24の残量やその他の情報を表示するメーターパネル26や最高速度を決定する変速ダイヤル27、前後進を切換え選択する前後進スイッチ28、ホーンスイッチ29、ウインカースイッチ30等が配置される。操作ボックス7後部にはキースイッチ31を配置し、操作ボックス7の右側からはアクセル軸32を突出させ、ハンドル杆8の握り部11と略平行なアクセルレバー33を設けてある。このアクセルレバー33は、アクセル軸32を中心に後方へ回動可能であり、握り部11よりも高位置に設定してある。この握り部11とアクセルレバー33とを握るとモータ22や後輪20が駆動されて走行可能である。アクセルレバー33は、引き寄せる角度、すなわち倒れ角を大きく操作するほど増速し、前記変速ダイヤル27の速度までの範囲で増減速が可能である。これらのアクセルレバー33は、操作ボックス7の右側に限定するものではなく、左側に装着、又は左右両側に装着することも可能である。39は手動のブレーキであり、40は後方確認用のバックミラーである。
【0010】
ステップ25の前部には、左右一対の前輪2のフェンダー34が設けられ、フェンダー34の前面中央部にヘッドライト38を設け、該フロントカバー35の上方にフロントカバー35を立設してある。フロントカバー35は操舵ハンドル3近傍まで延設してあり、その前面上部の左右両端部にはウインカーランプ36を設け、裏面には荷物等を収納可能なフロントボックス37を設けてある。ウインカーランプ36はリヤカバー21の左右両側にも設けてあり、操作ボックス7のウインカースイッチ30を押すことによってウインカーランプ36を点滅させることができる。
【0011】
パイプ状の部材を用いた操舵軸5上端部には、ハンドルベース6を溶着し、該ハンドルベース6にはアクセルレバー33操作により車速を変えることのできるポテンショメータ他、アクセル操作関係の部品や、いろいろな情報等を表示するためのメーターパネル26関係の部品等が装着してある。
ハンドルベース6の前端部、及び、後端部は、ハンドル杆8を固着可能に構成しており、ハンドル杆8の一部、及び、ハンドルベース6を覆う操作ボックス7を設けてある。ハンドルベース6前端部には、ハンドル杆8の貫通穴にボルト41を通し、ハンドルベース6とともにハンドル杆8をボルト締め固定してあり、後端部は、ハンドル杆8から下方へ向け突設の連結板42をハンドルベース6とともにボルト締め固定してある。尚、ハンドル杆8とハンドルベース6との固定方法は、連結板42に限定するものではなく、連結板42部分の芯材9に穴加工を行い、直接ハンドルベース6にボルト締め固定する等、適宜の手段で固定すればよい。該ハンドル杆8は、内部の芯材9とその外周に被覆の軟質被覆材10からなり、ハンドルベース6後端の左右部には、横方向略直線状の振り部11を形成し、その外側部は前方へ向け屈曲させ、前記ハンドルベース6前部へ連結して、操作ボックス7左右に平面視ループ状のハンドル杆8を形成してある。握り部11前方のやや上方位置には、該握り部11と略平行なアクセルレバー33を設けてある。握り部11の軟質被覆材10は、他の被覆部分よりも外径を大きくし、該握り部11の外側に隣接する屈曲部13の被覆部分との間に、段差部14を形成してある。段差部14は、屈曲部13から握り部11にかけて徐々に被覆材10の外径を大きくした傾斜部15で代用することも可能である。又、被覆材10は、操作ボックス7で覆われた部位以外の部分のハンドル杆8に被覆してあり、屈曲部13、及び屈曲部13から前方の操作ボックス7で覆われた部位までの間は、略均一の外径である。
【0012】
前記、段差部14、又は、傾斜部15近傍内部の芯材9は、被覆材10の外径変化とは逆に、握り部11の芯材9外径を屈曲部13の芯材9外径よりも小さくしてある。具体的には、被覆材10の段差部14、又は、傾斜部15近傍内部の位置で直径の大きいパイプで構成された屈曲部13に直径の小さいパイプを嵌挿させ溶着してある。この被覆材10と芯材9の外径を握り部11と屈曲部13とで逆に構成したことにより、基本的な操作位置となる握り部11を握った際の感触が軟らかく握り心地が良いという効果を奏する。尚、芯材9は、異径のパイプ材を嵌挿し溶着させる構成に限定するものではなく、突き合わせて溶着(図示せず)したり、図5に示すように握り部11の芯材9を偏移させて溶着し、被覆材10を軟らかくさせたい部位の肉厚のみを任意に厚くさせることも可能である。
更に、屈曲部13、及び、該屈曲部13前側から操作ボックス7で覆われた部位までの間の被覆材10、及び、芯材9の外径を略均一に構成してあるので、どの部分を握っても握り具合が変わらず、操縦者が違和感なく操舵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】全体側面図
【図2】全体平面図
【図3】本発明の実施例を示すハンドルの平面図
【図4】別実施例を示すハンドルの一部平面図
【図5】別実施例を示すハンドルの平面図及び一部背面図
【符号の説明】
【0014】
1 車体
2 前輪
3 操舵ハンドル
4 シート
5 操舵軸
6 ハンドルベース
7 操作ボックス
8 ハンドル杆
9 芯材
10 被覆材
11 握り部
12 アクセルレバー
13 屈曲部
14 段差部
15 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)前部の前輪(2)を操舵可能な操舵ハンドル(3)を設け、その後方に設けたシート(4)に座る操縦者が操舵ハンドル(3)を握って操舵する小型電動車において、前輪(2)上方へ立設する操舵軸(5)上端部にハンドルベース(6)を固着し、該ハンドルベース(6)を操作ボックス(7)で覆い、この操作ボックス(7)の左右外方に、内部に芯材(9)を有し外周には軟質の被覆材(10)を被覆した平面視ループ状のハンドル杆(8)を設け、該被覆材(10)には、少なくともハンドルベース(6)後端の左右部で横方向略直線状の握り部(11)を形成し、該握り部(11)前方には握り部(11)を握って操作可能のアクセルレバー(12)を設け、該握り部(11)の外側部は前方へ向け屈曲させて、前記ハンドルベース(6)の前部へ連結するとともに、該握り部(11)の被覆材(10)は、外側に隣接する屈曲部(13)被覆部よりも外径を大きくして、握り部(11)と屈曲部(13)との間に段差部(14)、又は、該屈曲部(13)から徐々に外径を大きくした傾斜部(15)を形成し、更に、この段差部(14)、又は、傾斜部(15)近傍内部の芯材(9)を、前記被覆材(10)の外径変化とは逆に握り部(11)芯材(9)外径を屈曲部(13)芯材(9)外径よりも小さく形成してなる小型電動車。
【請求項2】
ループ状に形成したハンドル杆(8)の前側一部を操作ボックス(7)で覆い、少なくとも該操作ボックス(7)で覆わない部分のハンドル杆(8)を被覆材(10)で被覆するとともに、屈曲部(13)及び該屈曲部(13)前側から操作ボックス(7)で覆われた部位までの間の被覆材(10)と芯材(9)とを略均一の外径で構成してなる請求項1に記載の小型電動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−238983(P2008−238983A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83163(P2007−83163)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000144980)株式会社アテックス (111)
【Fターム(参考)】