説明

尿素濃度センサ

【課題】 微小な検出信号によって各種状態をセンシングするセンサ回路に対して、ノイズ成分を著しく低下させた作動電圧を印加して正確な尿素濃度を検出することができる尿素濃度センサを提供する。
【解決手段】 尿素濃度センサは、尿素濃度に比例した出力信号を検出するセンサ回路5と、電源電圧を所定の電圧に降圧させるスイッチング電源2と、該電源2の出力側に並列接続された出力コンデンサC2と、フィルタ用コンデンサC3を備えたフィルタ回路3と、該回路3を介して印加された電圧を、センサ回路5が作動する基準となる作動電圧に変換する基準電圧IC4と、センサ回路5に基準電圧IC4で変換された作動電圧が印加された場合に、当該センサ回路5の出力信号を尿素濃度に変換するマイクロコンピュータ6と備え、出力コンデンサC2及びコンデンサC3として機能性高分子材料を用いて電解質を固体化してなる機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両等に搭載され、当該車両から排出される排気ガスに含まれるNOxを水と窒素に分解する尿素SCR触媒用尿素水の尿素濃度を検出する尿素濃度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばディーゼル車の排気ガス浄化システム用の尿素濃度センサとしては、センサ信号として0.1mV以下の微小信号を増幅し、マイクロコンピュータでA/D変換して尿素水の濃度を検出するものが知られている。そして、この尿素濃度センサは、排気ガス浄化システムに尿素濃度値を示す信号を供給することによって、排気ガス浄化システムが正常に機能出来る状態かどうかをモニタしていた。この種の尿素濃度を微小信号として検出する尿素濃度センサとしては、下記の特許文献1や特許文献2に記載された技術や、特許文献3に記載されたブリッジ回路を利用したものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−5271号公報
【0004】
【特許文献2】特開平7−43284号公報
【0005】
【特許文献3】特開平5−113421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した尿素濃度センサを動作させるためのセンサ回路は、ディーゼルエンジン車に搭載されるために、センサ回路の電源電圧として24V系電源が使用され、作動電圧範囲として7V〜36Vという広範囲で作動する必要がある。したがって、マイクロコンピュータやセンサ回路の電源回路としては、発熱や効率の観点から、シリーズレギュレータではなく、24V系電源からの電圧を降圧させる降圧型のスイッチング電源を使用する必要がある。
【0007】
しかしながら、このスイッチング電源は、降圧時のスイッチング動作によって、電源電圧に大きなリップルノイズや電磁波ノイズが含まれるために、センサ回路に直接印加すると、リップルノイズや電磁波ノイズが検出信号に混入してしまう。これにより、従来では、センサ回路の微小な検出信号で正確な尿素濃度を検出することが困難となっているというのが現状である。
【0008】
また、従来において、尿素濃度センサの検出信号の変化が微小であるために、検出信号を増幅しているが、上述のように検出信号にスイッチング電源のノイズが混入した場合には、微小な検出信号に混入しているノイズも同時に増幅するので、検出する尿素濃度が変化してしまう。更に、自動車用電子機器としては、車載無線機や携帯電話等の外部からの電磁波ノイズに対して誤動作しないことが必須の条件となるが、検出信号に混入した電磁波ノイズによって、検出した尿素濃度が変化して、その結果排気ガス浄化システムが誤動作する可能性が否めず、従来の尿素濃度センサの耐電波障害性を更に向上させる必要があった。
【0009】
更に、従来において、尿素濃度センサに限らず、他のセンサについても電磁波ノイズやスイッチングノイズに対して正確な検出出力を得ることが課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、微小な検出信号によって各種状態をセンシングするセンサ回路に対して、ノイズ成分を著しく低下させた作動電圧を印加して正確な尿素濃度を検出することができ、かつ外部からの電磁波ノイズに対する耐EMI性能を著しく高めた尿素濃度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る尿素濃度センサは、尿素濃度に比例した出力信号を検出するセンサ回路と、電源電圧を所定の電圧に降圧させるスイッチング電源と、スイッチング電源の出力側に並列接続された出力コンデンサと、出力コンデンサの出力側に設けられ、出力コンデンサと並列接続されたフィルタ用コンデンサを備えたフィルタ回路と、フィルタ回路を介して印加された電圧を、センサ回路が作動する基準となる作動電圧に変換する基準電圧変換部と、センサ回路に基準電圧変換部で変換された作動電圧が印加された場合に、センサ回路の出力信号を尿素濃度に変換する濃度算出部と備え、出力コンデンサとして、機能性高分子材料を用いて電解質を固体化してなる機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用することによって、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る尿素濃度センサによれば、出力コンデンサとして、機能性高分子材料を用いて電解質を固体化してなる機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用したので、スイッチング電源の出力電圧にリップル電圧が混入した場合であっても、確実にリップル電圧を低減させることができ、微小な検出信号によって各種状態をセンシングするセンサ回路に対して、ノイズ成分を著しく低下させた作動電圧を印加して正確な尿素濃度を検出することができる。
【0013】
更に、機能性高分子アルミ電解コンデンサは、1MHz以上の高周波域でのインピーダンス及び等価直列抵抗(ESR)が著しく小さいため、電磁波ノイズに対する耐性が著しく向上し、電磁波ノイズのある環境下でも正確に尿素濃度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本発明は、例えば図1に示すように構成された尿素濃度センサに適用される。
【0016】
[尿素濃度センサの構成]
この尿素濃度センサ(高感度センサ)は、例えばディーゼルエンジンによって走行する車両に搭載され、ディーゼルエンジン車両から排出される排気ガス中のNOxを水と窒素に分解する尿素SCR触媒用尿素水の尿素濃度を検出して、図示しない排気ガス浄化システムに供給するものである。
【0017】
この尿素濃度センサは、図1に示すように、主として、車両のイグニッションスイッチによって起動するイグニッション電源1,スイッチング電源2,フィルタ回路3,基準電圧IC4,センサ回路5,排気ガス浄化システムと接続されたマイクロコンピュータ6を備えて構成されている。
【0018】
この尿素濃度センサにおいて、イグニッションスイッチ(IGN)がオン操作されると、24V系電源であるイグニッション電源1からイグニッション電圧VIGNがスイッチング電源2に供給される。このイグニッション電圧VIGNは、24V系電源からの電圧ではあるが、様々な状況によって変動し、例えば7V〜36Vの電圧範囲となる。したがって、この尿素濃度センサは、イグニッション電圧VIGNの電圧範囲に亘って動作可能な構成となっている。
【0019】
このイグニッション電圧VIGNは、ダイオードD1、及び、インダクタL1とコンデンサC1からなるフィルタ回路を介してスイッチング電源2の入力側に印加される。これらコンデンサC1及びインダクタL1は、スイッチング電源2のスイッチングノイズがイグニッション電源1側に流れることを抑制するために設けられている。
【0020】
スイッチング電源2は、内部に複数のスイッチング素子と増幅回路を備え、スイッチング素子を予め設定されたスイッチング周波数でオンオフ制御することによって、イグニッション電圧VIGNを所定電圧Vccまで降圧する電圧変換を行う。
【0021】
このスイッチング電源2の出力電圧Vccは、スイッチング電源2及びフィルタ回路3と直列接続されたインダクタL2に蓄えられた電気エネルギーを出力コンデンサC2に移し、負荷側である基準電圧IC4及びセンサ回路5に供給する。すなわち、スイッチング電源2の出力電圧Vccは、出力コンデンサC2を介して、抵抗R3及びコンデンサC3からなるRCフィルタであるフィルタ回路3に印加され、基準電圧IC4で変換されて、センサ回路5に供給される。
【0022】
ここで、スイッチング電源2の出力電圧Vccには、ノイズ成分であるリップル電圧が含まれる。このリップル電圧VRIPPLEは、下記の式1に示されるように、スイッチング電源2のスイッチング周波数f、スイッチング電源2の入力電圧(イグニッション電圧VIGN(;Vin))及び出力電圧Vcc(;Vout)、出力コンデンサC2の等価直列抵抗(ESR)、インダクタL2によって決定される。
VRIPPLE={Vout×(Vin−Vout)/(Vout×L2×f)}×ESR (式1)
【0023】
したがって、上記式1より、尿素濃度センサは、スイッチング電源2の出力電圧Vccのリップル電圧成分を低減させるために、スイッチング電源2の出力側に並列接続された出力コンデンサC2として、機能性高分子材料を用いて電解質を固体化してなる、ESRが極めて小さいいわゆる機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用している。
【0024】
この機能性高分子アルミ電解コンデンサは、図3に、周波数に対する等価直列抵抗(ESR)を示すように、OSコンデンサ、通常のアルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、チップタイプアルミ電解コンデンサと比較して、1kHz以降の周波数領域においてESRが著しく低い特性を有する。したがって、スイッチング電源2の出力電圧Vccに含まれるリップル電圧は、出力コンデンサC2によって低く抑制されることになる。また、この機能性高分子アルミ電解コンデンサは、図4に示すように、従来のタンタル電解コンデンサと比較しても、十分にESRやインピーダンスが低いことがわかる。したがって、この出力コンデンサC2によって、出力電圧Vccに含まれるリップル電圧は、10〜20mV程度まで低下させることができる。
【0025】
また、上記の式1によってインダクタL2は、インダクタンスを100〜150[μH]と大きく設定することによって、出力電圧Vccに含まれるリップル電圧を低減することができる。これに対し、規定のスイッチング時間の間に電流がインダクタL2を通過する必要があることから、インダクタL2のインダクタンスを極力大きく設定することが望ましい。
【0026】
また、スイッチング電源2の出力側であって、出力コンデンサC2の前段には、スイッチング電源2の発振安定性を確保するために、抵抗R1及び抵抗R2からなりスイッチング電源2と並列接続されたフィードバック抵抗、位相補正用のコンデンサC4が設けられている。
【0027】
このフィードバック抵抗は、抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値によってスイッチング電源2の出力電圧Vccを決定している。また、このフィードバック抵抗と並列に高周波インピーダンスが小さいコンデンサC4を設けることにより、スイッチング電源2の中にあるアンプの高周波での増幅度を減少させ、ゲインが低減すると共に、フィードバックされる信号の位相が進むために位相遅れが180度以下となって系の安定性を向上させることができる。
【0028】
フィルタ回路3は、スイッチング電源2と並列接続され、スイッチング電源2の出力電圧Vccに含まれるリップル電圧成分を低減させる。これにより、フィルタ回路3は、出力コンデンサC2によって10〜20mV程度まで低減させたリップル電圧を、0.1mV以下に小さくすることができる。更に、フィルタ回路3のコンデンサC3(フィルタ用コンデンサ)としては、機能性高分子材料を用いて電解質を固体化してなる機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用することが望ましい。
【0029】
なお、フィルタ回路3としては、図1に示すRC型のフィルタ回路のみならず、図2に示すようなLC型のフィルタ回路であっても、同様にリップル電圧を0.1mV以下にまで低減させることができる。
【0030】
そして、フィルタ回路3でリップル電圧成分が低減された出力電圧Vccは、基準電圧IC4(基準電圧変換部)により、センサ回路5が作動する基準となる作動電圧の4.096Vに変換され、コンデンサC5を介してセンサ回路5に印加される。ここで、センサ回路5の作動電圧を4.096Vとしたのは、車両の始動時においてスタータに大電流が要求される場合に、イグニッション電圧VIGNが7V程度に低下した場合であっても、マイクロコンピュータ6やセンサ回路5を正常に作動させるためである。
【0031】
センサ回路5は、抵抗R4,抵抗R5,抵抗R6,抵抗R7がブリッジ接続されてなるブリッジ回路で構成される。このブリッジ回路は、一方端が基準電圧IC4に接続され、他方端がGND端子及びマイクロコンピュータ6に接続されている。抵抗R4,抵抗R6は、例えばカーボン抵抗であり、抵抗R5,抵抗R7は、例えば白金抵抗で構成される。白金抵抗の抵抗値の温度変化は大きく、約3600ppm/℃である。抵抗R4,抵抗R6は、空気中に配置され、抵抗R5,抵抗R7は、尿素水中に配置される。なお、スイッチング電源2と基準電圧IC4とを接続する電源ラインのGND端子と、ブリッジ回路に接続されるGND端子とを接続し、極力面積を大きくして配線インピーダンスを小さくすることが望ましい。
【0032】
このセンサ回路の抵抗R4,抵抗R5,抵抗R6,抵抗R7のうちの1つの抵抗、例えば抵抗R5が図示しないヒータと一体的に組み立てられており、このヒータが加熱され、ヒータの熱が伝達される。所定期間ごとに、所定期間だけヒータが加熱されることによって、定期的に抵抗R5の抵抗値が変化する。このセンサ回路の抵抗R5,抵抗R7は、尿素水タンク内に充填された尿素水内に配設され、尿素水の尿素濃度が高いほど、抵抗R5に伝達された熱の放熱が少なく、したがって、抵抗R5の抵抗値は、ゆっくりと回復する。そして、尿素水の尿素濃度が低いほど、抵抗R5の熱は、より早く放熱される。したがって、ブリッジ回路の抵抗R4,抵抗R5の接続点の電圧値の変動割合は、尿素濃度に比例して異なるものとなる。
【0033】
そして、センサ回路5は、作動電圧が基準電圧IC4から印加された状態において、抵抗R5に一体的に組み立てられたヒータからの熱によって抵抗R5の抵抗値が増加し、また、熱せられた抵抗R5が、尿素水に放熱することによって、抵抗値が低下する。そして、抵抗R4と抵抗R5とで分圧された電圧値及び抵抗R6と抵抗R7とで分圧された電圧値がオペアンプに供給される。オペアンプは、抵抗R9を介して供給される抵抗R4と抵抗R5とで分圧した電圧値と、抵抗R6と抵抗R7で分圧した電圧値との差分の演算をし、且つ差分電圧を増幅して、出力信号をマイクロコンピュータ6に出力する。
【0034】
このマイクロコンピュータ6(濃度算出部)は、例えばオペアンプの出力信号から尿素濃度に変換する演算を行って、演算結果を排気ガス浄化システムに出力する。また、このマイクロコンピュータ6は、予め出力信号に対する尿素濃度を記述したマップデータを記憶しておき、差分電圧の変化をマップデータと比較することにより、尿素濃度を推定してもよい。
【0035】
[尿素濃度センサの特性]
つぎに、上述したように構成された尿素濃度センサにおける特性について説明する。
【0036】
図5は、イグニッション電源1からスイッチング電源2に供給されるイグニッション電圧VIGNが7V、12V、24V、36Vである場合ごとに、温度を−30度〜80度まで変更した時の、スイッチング電源2の出力電圧Vccに含まれるリップル電圧[mV]を示す。ここで、スイッチング周波数は200KHz、出力電圧Vccは5V、出力コンデンサC2の高周波インピーダンスは約100kHzで20mΩ、インダクタL2を流れる電流を100〜150mA程度にインダクタンスを設定している。
【0037】
この図5によれば、スイッチング電源2の出力側に機能性高分子アルミ電解コンデンサである出力コンデンサC2を設け、更に、フィルタ回路3のコンデンサC3として機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用することにより、車両の状態に応じてイグニッション電圧VIGNが変化した場合や、環境条件が変化した場合においても、コンデンサC2の端子でのリップル電圧を約20mV以下に抑制することができる。
【0038】
これに対し、出力コンデンサC2として機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用せずに、通常のアルミ電解コンデンサを使用した場合には、図6に示すように、イグニッション電圧VIGNが高くなるほど、且つ温度が低くなるほどリップル電圧が上昇してしまう。このようにリップル電圧が上昇すると、センサ回路5のブリッジ回路で検出する検出信号の変化電圧値とリップル電圧の値が近くなり、マイクロコンピュータ6で正確な尿素濃度を演算できない恐れがある。具体的には、センサ回路5で100μVの電圧変化を検知するとした場合に、例えば100μV程度のリップル電圧が含まれた場合には、正確な尿素濃度を演算することが困難となる。
【0039】
したがって、この機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用した尿素濃度センサによれば、図5及び図6の比較により、環境温度が20度である場合には、出力電圧Vccのリップル電圧を29.2mVから13.8mVまで減少させることができ、環境温度が−30度である場合には、出力電圧Vccのリップル電圧を94.8mVから13.8mVまで減少させることができる。
【0040】
また、図7に、尿素濃度センサに36dBmA、38dBmA、40dBmAのEMI(電波障害)をそれぞれ与えた時の、電磁波周波数の変化に対する、マイクロコンピュータ6で演算される尿素濃度の変化を示すように、上述したように出力コンデンサC2及びコンデンサC3として機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用した場合には、予め想定されるような、許容される尿素濃度の範囲となっている。これは、電磁波ノイズの影響が、マイクロコンピュータ6の演算に影響を与えることがなく、正確な尿素濃度を演算していることを表している。
【0041】
これに対し、出力コンデンサC2として機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用しない場合には、図8に示すように、EMIが36dBmAである場合にはスイッチング周波数の変化に拘わらず許容範囲の尿素濃度を演算できるものの、EMIが38dBmA以上となると、通常からは想定できない範囲の尿素濃度がマイクロコンピュータ6で演算されてしまう。これには、電磁波ノイズがブリッジ回路等に混入して、マイクロコンピュータ6の演算に影響を与えたことを表している。
【0042】
したがって、この機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用した尿素濃度センサによれば、図7及び図8の比較により、3.5MHz〜940MHz間の耐電波障害特性を大幅に改善することができたことになり、図8に示す場合にはEMIが36dBmAであっても誤動作をしていたのに対して、40dBmAであっても誤動作をさせずに尿素濃度を演算させることができる。
【0043】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明を適用した尿素濃度センサによれば、出力コンデンサC2として機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用したので、スイッチング電源2の出力電圧Vccに混入するリップル電圧を著しく低減させることができ、ブリッジ回路の微小な検出信号によって尿素濃度を演算する場合であっても、ノイズ成分を著しく低下させた作動電圧を印加して正確な尿素濃度を検出することができる。
【0044】
更に、外部から電磁波ノイズを印加した場合の耐EMI性能が大幅に向上し、自動車等の厳しい電磁環境下でも正確な尿素濃度を検出することができる。
【0045】
特に、この尿素濃度センサは、センサ回路5として、尿素濃度に比例した温度値に応じて抵抗値が変化する複数の抵抗からなるブリッジ回路によって、微小な温度変化を検出し、当該温度変化に応じた電圧値の差分を出力信号としてマイクロコンピュータ6で尿素濃度を演算する場合のように、微小な変化を検出するような場合に著しい効果を発揮することができる。
【0046】
更に言えば、従来においてリップル電圧を低減させるために、通常のアルミ電解コンデンサとセラミックコンデンサをそれぞれスイッチング電源2に対して並列に接続して構成した場合と比較して、上述の尿素濃度センサによれば格段にリップル電圧を低減させることができる。
【0047】
更にまた、この尿素濃度センサによれば、出力コンデンサC2としてタンタルコンデンサを使用した場合と比較して、ESRを1/10程度に低減することができ、且つショートによる不具合を回避することができる。
【0048】
また、この尿素濃度センサによれば、フィルタ回路3を構成するコンデンサC3として機能性高分子アルミ電解コンデンサを使用することによって、センサ回路に混入するリップル電圧を更に効果的に低減させることができ、更に正確な尿素濃度を検出することができる。
【0049】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0050】
すなわち、上述した説明では、ディーゼルエンジン車両に搭載された尿素濃度センサについて説明したが、これに限らず、微小信号の変化を検出して各種状態を検出するセンサであれば、他の微小変化を検出する高感度センサにも適用でき、上述した効果を発揮できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用した尿素濃度センサであって、フィルタ回路としてRC型のものを使用した回路図である。
【図2】本発明を適用した尿素濃度センサであって、フィルタ回路としてLC型のものを使用した回路図である。
【図3】出力コンデンサとして各種コンデンサを使用した場合の周波数とESRとの関係を示す図である。
【図4】出力コンデンサとして機能性高分子アルミ電解コンデンサとタンタル電解コンデンサを使用した場合の周波数とESR及びインピーダンスとの関係を示す図である。
【図5】本発明を適用した尿素濃度センサにおける、イグニッション電圧、温度に対するリップル電圧の変化を示す図である。
【図6】出力コンデンサとして通常のアルミ電解コンデンサを使用した尿素濃度センサにおける、イグニッション電圧、温度に対するリップル電圧の変化を示す図である。
【図7】本発明を適用した尿素濃度センサにおける、電波障害試験(周波数とEMI注入レベル)に対する尿素濃度の変化を示す図である。
【図8】出力コンデンサとして通常のアルミ電解コンデンサを使用した尿素濃度センサにおける、電波障害試験(周波数、EMIと注入レベル)に対する尿素濃度の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 イグニッション電源
2 スイッチング電源
3 フィルタ回路
4 基準電圧IC
5 センサ回路
6 マイクロコンピュータ
C コンデンサ
C2 出力コンデンサ
D ダイオード
L インダクタ
R 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素濃度に比例した出力信号を検出するセンサ回路と、
電源電圧を所定の電圧に降圧させるスイッチング電源と、
前記スイッチング電源の出力側に並列接続され、機能性高分子材料を用いて電解質を固体化してなる機能性高分子アルミ電解コンデンサからなる出力コンデンサと、
前記出力コンデンサの出力側に設けられ、前記出力コンデンサと並列接続されたフィルタ用コンデンサを備え、前記フィルタ用コンデンサが、機能性高分子材料を用いて電解質を固体化してなる機能性高分子アルミ電解コンデンサからなるフィルタ回路と、
前記フィルタ回路を介して印加された電圧を、前記センサ回路が作動する基準となる作動電圧に変換する基準電圧変換部と、
前記センサ回路に前記基準電圧変換部で変換された作動電圧が印加された場合に、当該センサ回路の出力信号を尿素濃度に変換する濃度算出部と
を備えたことを特徴とする尿素濃度センサ。
【請求項2】
前記センサ回路は、
空気中に配置された一対の第1の抵抗器,第2の抵抗器と、前記第1の抵抗器,第2の抵抗器のそれぞれに直列に接続され、尿素水中に配置された第3の抵抗器,第4の抵抗器とからなるブリッジ回路と、
当該ブリッジ回路の抵抗値変化に比例した検出信号の差分を出力信号として前記濃度算出部に出力する差分増幅回路とからなり、
前記ブリッジ回路の前記第3の抵抗器は、前記第3の抵抗器を加熱するヒータと一体的に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の尿素濃度センサ。
【請求項3】
前記スイッチング電源の出力には、当該スイッチング電源の規定のスイッチング時間に基づいてインダクタンスが高く設定されたインダクタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の尿素濃度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−126070(P2006−126070A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316469(P2004−316469)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000181251)自動車電機工業株式会社 (87)
【Fターム(参考)】