説明

局所的に加熱されたターゲット材料のレーザ加工

本発明の方法およびレーザ装置は、加工物(20)上のターゲット位置(16)に光ビームの形態(28)で加熱エネルギを照射することにより、加工物から迅速な材料除去を行い、その寸法安定性を維持しながら温度を上昇させる。加工物のターゲット部が加熱される場合に、レーザビーム(12)は加熱されるターゲット位置上に入射するように向けられる。このレーザビームは、加工物からターゲット材料の除去を行うのに適切な加工レーザ出力を好適に有する。ターゲット位置上の加工レーザ出力および加熱エネルギの組み合わされた入射は、加工レーザ出力が、ターゲット材料が加熱されない時に実現可能な材料除去速度よりも高い材料除去速度で、ターゲット材料の一部を除去することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部的に加熱された加工物のレーザ加工に関する。特に加工物上のターゲット位置の温度を高めターゲット材料除去速度および加工物のスループット率を増加させる、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の加工を行う種々のレーザを用いて、多数の種々の加工物にレーザ加工を行うことができる。本発明に関する興味ある特定種類のレーザ加工は、ホールおよび/またはビアの形成とウェハのダイシングを行うための半導体ウェハのレーザ加工を行う、単一または複数の層の加工物のレーザ加工である。
【0003】
多層加工物におけるビアおよび/またはホールのレーザ加工に関して、オーウェンらの米国特許第5,593,606号および第5,841,099号明細書は、異なる材料種類の層よりなる2つ以上の層のスルーホールまたはブラインドビアを多層デバイスにおいて形成するために、パルスパラメータのセットによって特徴づけられるレーザ出力パルスを発生する紫外線(UV)レーザ装置の動作の方法を記載している。このレーザ装置は、100nsより小さい瞬時パルス幅を有するレーザ出力パスルと、100μmより小さい直径を有するスポットエリアと、スポットエリア上の100mWより大きい平均強度すなわち放射照度とを、200Hzより大きいパルス繰り返し率で出射する非エキシマレーザを有している。認識されている好適な非エキシマUVレーザは、ダイオードポンプド(diode-pumped)固体レーザ(DPSS)である。
【0004】
公開されたDunskyらの米国特許出願2002/0185474号明細書は、多層デバイスの誘電体層においてブラインドビアを形成するレーザ出力パルスを発生するようなパルスCOレーザ装置を動作する方法を記載している。このレーザ装置は、200Hzより大きいパルス繰り返し率で、200nsより小さい瞬時パルス幅を有し、50μmと300μmとの間の直径を有するスポットエリアを有するレーザ出力パルスを出射する。
【0005】
ターゲット材料のレーザ除去は、特にUV DPSSレーザが用いられるとき、ターゲット材料の除去閾値(ablation threshold)より大きな流速量すなわちエネルギ密度を有するレーザ出力をターゲット材料に照射することに依存している。UVレーザは、1/e2の直径で約10μmと約30μmとの間のスポットサイズを有するようにフォーカスされたレーザ出力を出射する。ある例においては、このスポットサイズは、所望のビアの直径が約50μmと300μmとの間であるときには、所望のビアの直径よりも小さい。このスポットサイズの直径は、ビアの所望の直径と同じ直径を有するように拡大できるが、レーザ出力のエネルギ密度がターゲット材料の除去閾値よりも小さいように、この拡大はレーザ出力のエネルギ密度を小さくし、ターゲット材料を除去できない。その結果、10μm〜30μmのフォーカスされたスポットサイズが用いられ、フォーカスされたレーザ出力がスパイラル状、同心円状、または“トレパン(trepan)”パターンで典型的に移動され、所望の直径を有するビアを形成する。スパイラル、トレパン、および同心円の加工は、いわゆる非穴あきビアの形成加工のタイプである。約50μm以下のビア直径に対しては、直接穴あきはより高いビア形成のスループットをもたらす。
【0006】
対照的に、パルスCOレーザの出力は、50μmよりも典型的に大きく、十分なエネルギ密度を維持することができ、従来のターゲット材料において50μm以上の直径を有するビアの形成を行う。その結果、ビア形成を行うためにCOレーザを使用するとき、穴あけ加工が典型的に用いられる。しかし、50μmよりも小さいスポットエリア直径を有するビアをCOレーザを用いて形成できる。
【0007】
CO波長における銅の高い反射力の程度は、約5ミクロンよりも大きい厚さを有する銅板においてCOレーザを用いるスルーホールビアの形成を非常に困難にする。したがってCOレーザは典型的に、約3ミクロンと約5ミクロンとの間の厚さを有するか、またはCOレーザエネルギの吸収を高めるように扱われる表面である銅板においてのみ、スルーホールビアを形成するように用いることができる。
【0008】
プリント回路基盤(PCB)に対して多層構造を作るときに用いられる最も典型的な材料およびビアが典型的に形成される電気パッケージングデバイスは、金属(例えば銅)および誘電体材料(例えばポリマ、ポリイミド、樹脂、あるいはFR-4)を含んでいる。UV波長におけるレーザエネルギは、金属および誘電体材料に対して良好な結合効率を示し、このUVレーザは、銅板および誘電体材料の両方において、ビア形成を容易に行うことができる。また、ポリマ材料のUVレーザ加工は、光化学処理および光熱処理を合わせたものと広く考えられており、このUVレーザ出力は、光子励起化学反応で分子結合を分離することにより、ポリマ材料を部分的に除去し、これによって、誘電体材料がより長いレーザ波長にさらされるときに生じる光熱処理と比較して、より優れた処理品質を生み出す。
【0009】
誘電体材料および金属材料のCOレーザ加工と金属のUVレーザ加工とは主に光熱処理であり、誘電体材料または金属材料はレーザエネルギを吸収して、材料の温度を増大し、軟化し、あるいは融解し、および最終的に除去し、蒸発させ、あるいは吹き払う。除去速度およびビア形成のスループットは、ある種の材料に対しては、レーザエネルギ密度(スポットサイズ(cm)によって除算されたレーザエネルギ(J))と、パワー密度(パルス幅によって除算され、スポットサイズ(cm)によって除算されたレーザエネルギ(J))と、レーザ波長と、パルス繰り返し率との関数である。
【0010】
したがって、例えばPCB上のビア形成あるいは他の電気パッケージングデバイス、または金属あるいは他の材料上の穴あけのようなレーザ加工スループットは、利用可能なレーザ出力密度およびパルス繰り返し率と、レーザ出力をらせん状、あるいは同心円状、あるいはトレパンパターンおよびビア位置間を動かすことができる速度とによって制限される。UV DPSSレーザの一例は、Lightwave Electronics, Mountain View, Californiaから販売されているModel LWEQ302(355nm)である。このレーザは、Model 5310レーザ装置または本出願の譲受人であるElectro-Scientific Industries, Inc., Portland, Oregonにより製造されているシリーズの他の装置において、用いられている。このレーザにより、8WのUVパワーを30kHzのパルス繰り返し率で供給することができる。このレーザ装置の典型的なビア形成スループットは、露出した樹脂において約600個/秒のビアである。パルスCOレーザは、Coherent-DEOS,Bloomfield, Connecticutによって販売されている、Model Q3000(9.3μm)である。このレーザは、Model 5385のレーザ装置またはElectro-Scientific Industries, Incによって製造されている他のシリーズにおいて用いられている。このレーザは、60kHzのパルス繰り返し率で18Wのレーザパワーを供給することができる。このレーザと装置の典型的なビア形成スループットは、露出した樹脂において約1000個のビア/秒、およびFR-4において250〜300個のビア/秒である。
【0011】
増大したビア形成スループットは、1パルス当たりのレーザエネルギおよびパルス繰り返し率を増加することによって実現できた。しかし、UV DPSSレーザおよびパルスCOレーザに対して、1パルス当たりレーザエネルギとパルス繰り返し率とが増加する結果から生じる現実的な問題がある。更に、1パルス当たりのレーザエネルギが増加するにつれて、レーザ共振器の内外にある光学部品への損傷の危険が、増加する。これらの光学部品に対する損傷を修理することは、特に時間および費用がかかる。更に、1パルス当たりの高レーザエネルギまたは高パルス繰り返し率で動作することができるレーザは、しばしば非常に高価である。
【0012】
半導体ウェハをダイシングすることに関し、ダイシングを行う2つの一般的な方法がある。すなわち、機械による切断およびレーザによる切断である。機械による切断は典型的に、約100ミクロンより大きい幅を有するストリートを形成するような、約150ミクロンより大きい厚さを有するウェハを切断するダイヤモンドカッターの使用を含んでいる。約100ミクロンよりも小さい厚さを有するウェハを機械により切断することは、結果としてウェハのクラックを発生させる。
【0013】
レーザダイシングは、典型的にパルスIRやグリーンレーザやUVレーザを用いて、半導体ウェハをダイシングすることを含んでいる。レーザダイシングは、UVレーザを用いる場合の約50ミクロンまでストリートの幅を減らす能力、カーブした軌道に沿ってウェハをダイシングする能力、または機械的に切断することを用いてダイシングできる以上に薄いシリコンウェハを効率的に切断する能力のような種々の利点を、半導体ウェハを機械的に切断する際に与える。例えば約75ミクロンの厚さを有するシリコンウェハは、約8Wのパワーで動作するDPSS UVレーザと約35ミクロンの幅を有する切り口を形成するような120mm/秒の切断スピードでダイシングすることができる。しかし、半導体ウェハをダイシングするレーザの1つの欠点は、破片およびくずの形成であり、この両方はウェハに付着し、取り除くのが困難である。半導体ウェハをダイシングするレーザの他の欠点は、加工物スループット率がレーザの出力能力によって制限されることである。
【0014】
したがって、必要なことは、高率のスループットで加工物の高速レーザ加工を行い、UV、グリーンレーザ、およびCOレーザを用いてビアおよび/またはホールの形成を行い、UV、グリーンレーザ、IRを用いて半導体ウェハを効率的かつ正確にダイシングする、方法および装置である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、材料除去速度および加工物スループットが増大し、処理品質が改善されるように、(1)単一および複数の層への加工物におけるビアおよび/またはホールのレーザ加工と、(2)半導体ウェハのダイシングの速度および/または効率を改善する方法およびレーザ装置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の方法およびレーザ装置は、加工物から迅速に材料の除去を行う。本発明の方法は、加熱エネルギを光線の形態で加工物上のターゲット位置に供給し、寸法安定性を十分に維持しながら温度を上昇させることを必要としない。加工物のターゲット部が加熱されると、レーザビームが加熱されたターゲット位置に入射するように向けられる。レーザビームは、組み合わされると、加工物からターゲット材料を除去するのに適切な波長、ビームスポットサイズ、1パルス当りのエネルギ、パルス幅およびパルス繰り返し率によって特徴づけられる加工レーザ出力を好適に有する。ターゲット位置における加工レーザ出力と加熱エネルギとの組み合わされた入射は、加工レーザ出力が、ターゲット材料が加熱されない場合に実現可能な材料除去速度よりも高い材料除去速度でターゲット材料の部分を除去することができるようにする。
【0017】
本発明の第1の好適な実施例は、(1)ダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、発光ダイオードアレイ、IRレーザ、ファイバレーザ、UVレーザ、CO
レーザ、あるいはこれら組み合わせのうちの1つを用いて、局所的にターゲット位置を加熱することと、(2)UVレーザ、IRレーザ、グリーンレーザ、およびCOレーザのうちの1つを用いて、加工レーザ出力(ターゲット材料への入射がホールまたはビアを形成するためにターゲット位置材料の除去を行う)を出射することとを含んでいる。このビアは、ブラインドビアまたはスルーホールビアである。加工レーザ出力は、IR、UV、またはグリーン光のスペクトルのうち1つにおける波長を有する固体レーザによって好適に出射される。他の好適な実施例においては、加工レーザ出力が、約9.2ミクロンと約10.6ミクロンとの間の波長を有するCOレーザによって出射される。
【0018】
本発明の第2の好適実施例は、(1)ダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、個体レーザ、ファイバレーザ、発光ダイオードアレイ、またはそれらの組み合わせのうちの1つを用いて、局所的にターゲット位置を加熱することと、(2)UVレーザ、グリーンレーザ、IRレーザのうちの1つを用いて、加工レーザ出力(ターゲット材料への入射がターゲット位置の材料除去を行い、半導体ウェハの加工物をダイシングする)を出射することとを含んでいる。加工レーザ出力は、約200nmと1600nmとの間の波長を有するモードロックされた、またはQスイッチの固体レーザによって好適に出射される。
【発明の効果】
【0019】
好適な実施例において、加熱源は連続モード(CW)または準連続モードにある。加熱源は比較的低強度の出力であれば、材料が加熱するためにのみ用いられるが、加工レーザはより高い強度の出力で、材料除去を実現することができる。例えば、パルス加工レーザの平均出力は8Wで、加熱源は8WのCWパワーを送るとき、ターゲット材料に向けられる全エネルギは効率的に2倍になる。その結果、加工物スループット率の増加は、約50%と100%との間にあると推定される。
【0020】
加熱エネルギをターゲット位置にあるターゲット材料に照射することは、形成されたホール、ビア、ストリートまたは切り口の品質に悪影響を与えることなく、加工物のスループットを改善する。この理由は、(1)加熱源が、熱影響域(HAZ)および/または寸法歪み領域の形成を最少にして、ターゲット位置のみを加熱することと、(2)加熱源が、ターゲット材料の温度を上昇させるために主に用いられ、ターゲット材料の融解除去が、ターゲット材料への加工レーザ出力の入射によって主に行われることである。更に、ターゲット材料の温度が上昇する、あるレーザ波長に対する吸収率が増加する。例えば、シリコンウェハは808nmの波長で光を容易に吸収するため、808nmの波長で作用するダイオードレーザをシリコンウェハのターゲット材料位置に入射させるように向けさせることは、加熱エネルギをレーザからターゲット材料に送り、したがってターゲット位置のターゲット材料の温度を効率的に上昇させる。この温度の上昇は、加工レーザ出力のシリコンウェハの吸収を改善し、この加工レーザ出力は、例えば、1064nmの波長で作用するモードロックされたIRレーザによって出射される。この加工を用いると、モードロックされたIRレーザは、ストリートおよび切り口の品質に所望に増加させながら、ターゲット材料をより効果的に除去することができる。
【0021】
COレーザを用いて、薄い銅板におけるスルーホールビアの形成が、追加の例を与える。CO波長範囲内における、レーザエネルギの銅板の低吸収は、典型的に当業者にビア形成へのチャレンジを与える。COレーザエネルギ(たとえば、808nmのダイオードレーザ波長)の波長よりも極めて短い波長を有する加熱エネルギを薄い銅板のターゲット位置へ入射するように向けることによって、薄い銅板の温度が効率的に上昇されうる。この上昇した温度において、COレーザエネルギと薄い銅板との組み合わせは、COレーザによって出射する加工出力が、薄い銅板において高品質のビアを形成するように、改善される。
【0022】
本発明の更なる目的および利点は、以下の好適な実施例の詳細な説明から明らかであり、図面に基づいて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1aおよび1bは、本発明の方法に従って加工物をレーザ加工するように構成されたレーザ装置8aおよび8bの2つの好適な実施例の概略図である。
【0024】
図1aにおいて、加工レーザ10は、加工物20のターゲット材料18上のターゲット位置16に入射するように、光軸の第1の部分14および光軸の第2の部分15に沿って伝播する出力加工ビーム12を出射する。加工ビーム12は、ミラー22で反射し、対物レンズ24を経て伝播し、この対物レンズは加工ビーム12をターゲット位置16の微小スポットにフォーカスさせる。2つの光源26は、加熱エネルギ源として機能し、ターゲット材料18上のターゲット位置16に入射するように光軸の第2の部分15に対して鋭角をなす別々の光路に沿って伝播する加熱光ビーム28を出射する。加熱光ビーム28は、加熱エネルギをターゲット材料18に与え、その温度を上昇させ、加工ビーム12が加工物20に、より効率的にレーザ加工することを可能にする。加工レーザ10が加工物20におけるビアを形成するために用いられる場合、ビーム位置決め装置30(図3)は、加工ビーム12をらせん状、同心円状、トレパンパターン(trepan pattern)状に移動し、ターゲット位置16にビアを形成する。加熱光源26またはその光線配向装置(図示されない)は、加熱光源26によって発生される加熱光ビーム28が、加工ビーム12と同時に動くように、ビーム位置決め装置30に取り付けることができる。
【0025】
加熱光ビーム28によって送られる加熱エネルギは、ターゲット材料18の寸法安定性を維持しながら、ターゲット位置16におけるターゲット材料18の温度を上昇させる。加工ビーム12は、組み合わせるとターゲット材料18のレーザ加工に適当である、波長、ビームスポットサイズ、1パルスあたりのエネルギ、パルス幅、およびパルス繰り返し率によって特徴づけられる。ターゲット位置16に加工ビーム12を照射する前に、あるいはその際に、ターゲット材料18の温度を上昇させることは、材料除去速度を増加させる。
【0026】
図1bにおいて、レーザ装置8bは以下の点に関してレーザ装置8aと異なる。加工レーザ10の加工ビーム12および単一加熱光源26の加熱光ビーム28は、光軸の第2の部分15に沿って、対物レンズ24を経て、ターゲット材料18のターゲット位置16に入射するように伝播する。ミラー22は、加熱光ビーム28の透過を容易にし、加工ビーム12を反射するビームコンバイナを好適に含んでいる。1つの典型的で好適なビームコンバイナは、加工レーザ出力波長とともに使用する高反射(HR)コーティングおよび加熱源波長とともに使用する、高透過(HT)コーティングのような特別なコーティングである。ビームコンバイナが与える1つの利点は、ビームが分極化することを必要とせず、したがって加熱源および加工レーザの1つあるいは両方が線形的に分極化されなければ、加熱源または加工レーザによって出射される光ビームへの出力損失はほとんどないということである。対物レンズ24が加工ビーム12と加熱光ビーム28とがターゲット材料18に入射する前にそれらをフォーカスする。レーザ装置8bは、加工レーザ10と、加熱光源26と光学要素22とを配置する。
【0027】
加熱源26の主な目的は、ターゲット材料18の温度を上昇させることであるので、使用者は、加工レーザ10のパラメータよりも、加熱源26の動作パラメータ(スポットサイズおよび波長のような)を選択することにおいて、大きい柔軟性を有する。したがって、好適な加熱源の種類は、レーザ装置および加工物20のタイプにおいて実現される加工レーザ10の種類に典型的に依存している。1つの好適な実施において、加熱源26は、ターゲット材料位置への加工レーザ出力との組み合わせ入射の際に、約1Hzと約200Hzとの間の繰り返し率を有する加熱エネルギを出射する。
【0028】
本発明は、種々のレーザ加工を行い、種々の加工物のターゲット材料をレーザ加工することに用いることができる。第1の好適な実施例において、加熱エネルギおよび加工レーザ出力の組み合わされた入射は、単一または複数の層の加工物においてホールおよび/またはビアを形成する。加工レーザ出力は、以下の加工レーザのうちの1つによって好適に発生する。すなわちUVレーザ、IRレーザ、グリーンレーザ、およびCOレーザである。加熱エネルギは、以下の光源のうちの1つによって好適に発生する。すなわちダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、発光ダイオードのアレイ、IR固体レーザ、UV固体レーザ、COレーザ、ファイバレーザ、およびそれらの組み合わせである。
【0029】
好適な単層加工物は、一般工業および医療用の薄い銅板、電気的応用において用いられるポリイミド板、および他の金属片(アルミニウム、スチール、熱可塑性プラスチックのような)を含んでいる。好適な多層加工物は、マルチチップモジュール(MCM)、回路基板、または半導体集積回路のパッケージを含んでいる。図2は、層34、36、38、および40を含む任意の種類の典型的な多層加工物20を示している。層34および38は、限定されないが、アルミ、銅、金、モリブデン、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銀、チタン、タングステン、窒化金属、あるいはそれらの組み合わせのような金属を含む好適には、金属層である。金属層34および38は、約9μmと約36μmとの間の厚さを好適に有するが、それらは9μmよりも薄く、あるいは72μm程度の厚さである。
【0030】
層36は標準的な有機誘電体材料(ベンゾシクロブタン(BCB)、ビスマレイミド トリアジン(BT)、カードボード(cardboard)、シアン酸塩エステル、エポキシ、フェノール、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリマ合金、あるいはそれらの組み合わせのような)を好適に含んでいる。それぞれの、有機誘電体層36は、金属層34と38よりも典型的に薄い。有機誘電体層36の好適な厚さは、約30μmと約400μmとの間にあるが、有機誘電体層36は1.6mm程度の厚さを有するスタック内に設けることができる。
【0031】
有機誘電体層36は、薄い補強部材層40を含むことができる。補強部材層40は、ファイバマットを含んでいるか、有機誘電体層36の中に織り込められるか分散される、例えばアラミドファイバ、セラミックス、またはガラスの分散した粒子を含んでいる。補強部材層40は、典型的に有機誘電体層36よりもかなり薄く、約1μmおよび約10μmの間の厚さを有することができる。当業者は、補強材料もまた、有機誘電体層36の中に粉末として導入することができることを理解するであろう。この粉末状の補強材料を含む補強部材層40は、不連続で不均一である。
【0032】
当業者は、層34,36,38,および40が、内部的に不連続で、不均一であり、水準に達していないことを理解する。金属、有機誘電体、および補強部材のいくつかの層を有するスタックは、2mmより大きい合計厚さを有することができる。図2に一例として示される任意の加工物20は、5つの層を有するが、本発明は、単層基板を含んで、所望の数の層を有する加工物に対して実施できる。
【0033】
加工レーザ10は、UVレーザ、IRレーザ、グリーンレーザ、またはCOレーザとすることができる。好適な加工レーザ出力は、約0.01μJおよび約1Jとの間のパルスエネルギを有する。好適なUV加工レーザは、Nd:YAG、Nd:YLF、Nd:YAP、Nd:YVO4、またはイッテルビウム、ホルシウム、またはエルビウムがドープされたYAGクリスタルの様な固体レーザ含んだQスイッチUV DPSSレーザである。このUVレーザは、355nm(3倍周波数のNd:YAG)、266nm(4倍周波数のNd:YAG)、または213nm(5倍周波数のNd:YAG)のような波長の調波的に発生されたUVレーザ出力を好適に与える。典型的な市販のUV DPSSレーザは、Lightwave Electronics of Mountain View, Californiaによって製造されるModel LWEQ302(355nm)である。
【0034】
好適なCO加工レーザ22は、約9μmと約11μmとの間の波長で動作するパルスCOレーザすることができる。典型的な市販のパルスCOレーザは、Coherent-DEOS of Bloomfield, Connecticutによって製造されるModel Q3000のQスイッチレーザ(9.3μm)である。COレーザは、金属層34および38にビアを効率的に穴あけすることができないので、CO加工レーザで穴あけされる多層加工物20は、金属層34および38がないか、ターゲット位置16がUVレーザで事前に穴あけされ、または、誘電体層36を露出するように、例えば化学エッヂングのような別の加工を用いて事前にエッヂングするように準備される。
【0035】
第1の実施例における第1の好適な例は、加工レーザ10が、ビア形成を行うために用いられる上述のUV DPSSレーザであり、加熱源26は連続波(CW)またはレーザ出力変調器を含んだ準CWダイオードレーザ、またはダイオード駆動電流変調器である。ダイオードレーザは好適に、約600nmと1600nmとの間の波長、および約0.01Wと約1000Wとの間、更に好適には約20Wと約100Wとの間の出力レベルで動作する、単一または複数のダイオードレーザである。ダイオードレーザは好適に、約600nmと約1600nmとの間の波長で動作する単一または複数のダイオードレーザであり、約0.01Wと約1000Wとの間の出力レベルであり、更に好適には約20Wと約100Wとの間にある。このCWダイオードレーザは、約780nmと約950nmとの間の波長を有するレーザ出力を好適に発する。1つの市販のCWダイオードは、ファイバカップリングと、808nm付近のレーザ波長と、約15W〜約30Wとの間の出力パワーとを有する、Spectra-Physics of Mountain View, Californiaによって製造されているFCシリーズのCWダイオードレーザである。他の好適な熱源26は、ファイバカップリング、約808nmのレーザ波長および約100Wと約1000Wとの間の出力パワーとを有する発光ダイオードのアレイである。典型的な市販の発光ダイオードのアレイは、Nuvonyx, Inc. of Bridgeton, Missouriによって製造されている。他の好適な加熱源26は、1064nmの波長、または532nmの第2調波で動作するCWまたはパルスNd:YAGレーザである。多数の安価なCWまたは準CWレーザは、容易に利用可能である。UV加工レーザビームを伝播し、またはフォーカスするのに用いられるほとんどの光要素が、可視スペクトルから近赤外線スペクトルに及ぶ波長に対して適切であるため、加熱源の波長はUVスペクトルであることを必要としない。
【0036】
第1の実施例における第2の好適な例において、加工レーザ10は約9.2ミクロンと約10.6ミクロンとの間の波長を有する上述のパルスCOレーザであり、加熱源26はCW COレーザ、パルスCOレーザ、またはレーザ出力変調器(レーザ装置が図1bに示されるように構成される)である。典型的な市販のCOレーザは、Coherent, Inc. of Santa Clara, Californiaによって製造される75Wまたは150WのDiamondシリーズのレーザである。加工レーザ10としてCOレーザ用いるとき、COレーザ出力を伝播しまたはフォーカスするために用いられる光要素は、可視から近赤外線スペクトルの波長においてあまり透明ではない。したがって、加熱源26によって出射される加熱エネルギの波長は、好適には約2ミクロンと約10.6ミクロンとの間にあり、この出力パワーは好適には約10Wと約200Wとの間にある。
【0037】
本発明の第1の実施例の第3の好適な例において、加工レーザ10は約9.2ミクロンと約10.6ミクロンとの間の波長を有するパルスCOレーザであり、加熱源26は固体レーザ、ファイバレーザ、ダイオードレーザ、あるいはそれらの組み合わせである。加熱源26によって出射される加熱エネルギの波長は、好適には約0.7ミクロンと約0.3ミクロンとの間にあり、この出力パワーは、好適には約10Wと約1000Wとの間にある。以上述べられるように、この実施例で用いる典型的な市販のパルスCOレーザは、Coherent-DEOS of Bloomfield, Connecticutによって製造されるModel Q3000(9.3μm)のQスイッチレーザである。典型的な加熱源は、ファイバカップリング、約808nmのレーザ波長、約15Wと約30Wとの間の出力パワーとを有するFCシリーズのCWダイオードレーザを含んでいる。典型的な市販のFCシリーズのCWダイオードレーザは、Spectra-Physics of Mountain View, Californiaによって製造されている。このCWダイオードレーザは、パルスモードで動作するように変調でき、加工レーザ10に同調できる。
【0038】
第1の実施例における第4の好適な例において、加工レーザ10はDPSSレーザであり、その加工レーザ出力は、IRスペクトル、グリーンスペクトル、UVスペクトルのうちの1つの波長(2.1ミクロンよりも小さい波長)を有する。典型的で好適な加熱源は、ファイバ結合、約808nmのレーザ波長、および約15Wと約30Wとの間の出力パワーとを有する上述のFCダイオードである。典型的な市販のUV DPSSグリーンレーザは、LightWave Electronics of Mountain View, Californiaによって製造されている、40kHzの繰り返し率で伝播される20Wのパワーを有するModel Q202レーザである。
【0039】
当業者は、固体レーザ、または種々の波長で動作するCOレーザが、本発明のレーザ装置において使用できることを理解している。種々のタイプのレーザキャビティ構成、固体レーザの調波的発生、固体レーザおよびCOレーザの両方に対するQスイッチ動作、ポンピングスキーム(pumping schemes)、およびCOレーザのためのパルス発生方法が当業者によく知られている。
【0040】
図2に示されるように、レーザ装置および本発明の方法とを用いて形成されたビアは、ブラインドビア90またはスルーホールビア92となることができる。スルーホールビア92は、多層加工物20の上面94から下面96まで延び、全ての層を貫通する。対照的に、ブラインドビア90は、多層加工物20の全ての層を貫通しない。
【0041】
本発明の第2の好適実施例において、加熱エネルギおよび加工レーザ出力の組み合わされた入射は、半導体ウェハを切断する。当業者は、種々の波長で動作する、種々の固体レーザ、またはIRレーザが、ウェハの切断を行うために本発明のレーザ装置において用いられることを理解しているが、加工レーザ出力は以下の加工レーザ出力のうちの1つによって好適に発生される。すなわち、UVレーザ、グリーンレーザ、IRレーザである。パルス幅およびパルス繰り返し率のようなレーザの動作パラメータは、これらのレーザのいずれが用いられるかに依存して変化するであろう。以下の光源のうち少なくとも1つによって、加熱エネルギが好適に発生される。すなわち、ダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、固体レーザ、ファイバレーザ、発光ダイオードのアレイ、またはそれらを組み合わせたもの。ダイシングするための好適な加工物は、シリコンウェハ、炭化シリコンおよび窒化シリコンとを含む他のシリコンを基にした材料、およびヒ化ガリウムのようなIII-V族とII-VI族の化合物である。
【0042】
本発明の第2の好適な実施例の方法およびレーザ装置は、ターゲット材料を加熱するためにより少ない加工レーザ出力パワーの利用を可能にし、それによって、ターゲット材料をダイシングするのに、より多くの加工レーザ出力パワーを利用可能にする。したがって、この方法およびレーザ装置によって、ターゲット材料除去効率を増大させ、加工物スループットを結果的に増加させる。
【0043】
ウェハダイシングを行うために本発明の方法を利用する1つの利点は、破片がより少なく発生することである。例えば約0.01psと約1nsとの間のパルス幅を有するモードロックされたIRレーザのような、短いパルス幅を有するIRレーザを用いるとき、より少ない再堆積破片が生成される。これは、ターゲット位置の温度の上昇がターゲット材料の吸収率(例えば、図4aおよび4bを見ると、増加した温度においてシリコンおよびアルミウムの増加した吸収率が、グラフ的に示されている)を増加し、これにより、より短いパルス幅およびより低いパスルエネルギを有する加工レーザの使用を容易にする。このタイプのレーザの使用は、結果として、除去された材料が加工物から取り除かれる高速度と、1個のパルス当りのシリコンウェハ材料除去の低い量を生じる。これらの両方は大きなサイズの破片の形成をより少なくする。破片はウェハ上にしばしば再堆積し、ストリートまたは切り口の品質を悪くするので、レーザ加工の際に作られる大きなサイズの破片の総量を制限することは、レーザ切断によるストリートまたは切り口の品質とを改善する。
【0044】
第2の実施例の第1の好適な例において、加工レーザは約200nmと約1600nmとの間の波長を有する加工レーザ出力を生成するモードロックされたレーザであり、加熱エネルギは以下の光源のうち少なくとも1つによって発生する。すなわち、ダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、ファイバレーザである。更に特別に、加工レーザは望ましくはモードロックされたIRレーザであり、このIRレーザは、任意の後続するパスルピッキングおよび増幅とを含み、以下のような光ビームを放射する。すなわち約1064nm以下の波長と、約0.01ピコ秒と約1000ピコ秒との間のパルス幅と、約1kHzと約150MHzとの間のパルス繰り返し率での約1Wと約50Wとの間の平均レーザパワーとを有する、典型的な市販のモードロックされたIRレーザは、Lumera Laser of Chemniz, Germanyによって製造されるStaccatoレーザである。このレーザの利用可能なIRパワーは、約15kHzと約50kHzとの間の繰り返し率および約10psのパルス幅に対して約20Wである。後続のパルスピッキングおよび増幅のない他の好適なモードロックされたIRレーザは、Alphalas of Goettingen, Germanyによって製造されたPicolasシリーズのレーザである。このレーザは、1064nmの波長と100MHzの繰り返し率と10psのパルス幅とでパワーを伝播する。より好適な加熱エネルギ源は、約0.7ミクロンと約2.2ミクロンとの間の波長を有する加熱エネルギ発するダイオードレーザである。
【0045】
モードロックされたIRレーザおよび加熱源の波長は異なるため、ビームコンバイナは、本発明の第2の実施例の好適な例に関連して、好適に用いられる。1つの典型的で好適なビームコンバイナは、モードロックされたレーザ波長でのHRおよび加熱源波長でのHTのような、特別のコーティングである。このビームコンバイナが与える1つの利点は、ビームが偏向されることを必要とせず、加熱源またはモードロックされたIRレーザ(そのうちの両方または一方が非偏向の放射を発する)によって放射される出力に対して大きい出力損失がない。
【0046】
本発明の第2の実施例の他の好適な例は、加工レーザがDPSS UVレーザ、DPSS IRレーザ、またはグリーンレーザである。好適な加熱源は、上述のダイオードレーザである。
【0047】
図3は、本発明の好適なレーザ加工装置42を示し、加熱源26は光伝播路48に沿って配置されたビーム拡大器44および46を経て伝播する加熱光ビーム28を出射する。ビーム折り曲げ光要素50は、加工レーザ10によって出射した加工ビーム12と組み合わされた出力52を、同軸状に結合し、形成するような方向に伝播するように反射する。加工レーザ10によって出射された加工ビーム12は、ビーム拡大器、ビーム路58に沿って配置されたアップ・コリメータレンズ要素54および56(例えば、2倍のビーム拡大率を有する)を含む種々の十分知られた光デバイスによって、拡大されコリメートされたパルスに変換される。この組み合わされた出力52は、ビーム位置決め装置30によって制御され、加工物20のターゲット位置16の小さな領域に入射するために、集束レンズ62によってフォーカスされる。
【0048】
当業者は、種々のビーム拡大率を、加工ビーム12および加熱光ビーム28の両方に用いることができる。加工ビーム12および加熱光ビーム28は、ターゲット位置16において同じビームスポットサイズを有する。好適なスポットサイズは、約1ミクロンと約200ミクロンとの間にある。加工ビーム12および加熱光ビーム28は、また種々のスポットサイズを有することができる。例えば、加熱ビームスポットサイズは、加工ビームスポットサイズの約50%と約1000%との間とすることができる。
【0049】
好適なビーム位置決め装置30は、並進ステージ位置決め器66および高速位置決め器68を有している。並進ステージ位置決め器66は、加工物を支持し、ビームスポットの位置に対して“ステップおよびリピート”で加工物20の素早い動きを可能にする少なくとも2つのプラットフォームまたはステージを有している。他の好適な実施例(図示されていない)において、並進ステージ位置決め装置66は、スプリット軸装置であり、Yステージは加工物20を支持し動かし、Xステージは高速位置決め器68および対物レンズを支持し動かし、XステージとYステージとの間のZ方向寸法を調整できる。高速位置決め器68は、例えば、与えられた試験あるいは設計データに基づいて、単一のあるいは二重の加工動作を行うことができる、1対の検流計ミラーを有している。これらの位置決め器は、独立して動かすか、パネル化されたあるいはパネル化されないデータに応じて共に動くように調整できる。典型的で好適なビーム位置決め装置30は、Cutlerらの米国特許第5751585号明細書において記載されている。
【0050】
レーザコントローラ80は、Konecnyの米国特許第5453594号明細書において記載されているように、ビーム位置決め装置30の動きを好適に支持し、ビーム位置決め装置30の要素の動きに加工レーザ10の出射を同調させる。加工レーザ10の出射に対する加熱源26の同調もまた、レーザコントローラ80によって行うことができる。例えば、加工レーザ10がターゲット位置に出射されるときには、所定のパワーへのCWまたはパルス設定で、加熱源26をターンオンして、ターゲット位置16において加工レーザ10の出射が完了前、あるいはそれまでに、ターゲット位置16を加熱する、ビーム位置決め装置30が次のターゲット位置に動く。加熱源26の所定のパワーを、加熱源26のピーク出力を約50%と約100%との間に調整できる。
【0051】
図5a、5b、および5cは、加工ビーム12(図5a)と加熱光ビーム28(図5bと5c)のレーザ出力パワー波形の例を示す。
【0052】
図5aにおいて、レーザ出力波形100は、加工ビーム12の5つの細いパルス104の一連のセット102である。セット102におけるそれぞれのパルス104は、例えば、ビアの形成においてターゲット材料18の深さ方向のカッティング、またはストリートまたは切り口のスキャンダイシングを行う。パルス104の第2のセット102は、ターゲット材料18の深さ方向の除去を行い、種々のビアを形成するか、種々のストリートまたは切り口をスキャンダイシングする。パルス104の数と、セット102における隣接したパルス104の間の時間とは、ターゲット材料、およびビア、ストリート、または形成される切り口の種類に基づき選択される。隣接したパルスセット102の間の時間は、ビーム位置決め装置30が1つのターゲット位置16から別のターゲット位置16まで(ビアからビアまで、あるいはウェハダイシングによって形成される1つのストリートまたは、切り口の終点から、ウェハダイシングによって形成される連続するストリートまたは切り口の出発点までのような)レーザ加工ビーム12を、いかに速く動かせるかによって決定される。
【0053】
図5bにおいて、加熱エネルギ出力波形110は、一連の加熱光ビーム28の一定のパワー準CW波形112である。準CW波形112は、パルスセット102の1番目のパルス104の始まりから、5番目のパルス104の終わりまでの時間に一致して拡がるように定める。準CW波形は、パルスセット102の5番目のパルス104の終わる前に終了させることができる。
【0054】
処理時間は、(1)加工ビーム12がターゲット材料に入射する際の加工レーザ出力時間と、(2)加熱光ビーム28がターゲット材料18に入射する際の加熱エネルギ時間とを含んでいる。加熱エネルギ時間は、好適に加工レーザ出力時間の約50%と約100%との間に好適にある。
【0055】
図5cにおいて、加熱エネルギ出力波形120は、加熱光ビーム28の一連の減少したパワー準CW波形122である。加熱エネルギの出力波形120は、準CW波形122の各々が、処理時間中にパワーを減少する点で異なっている。加熱エネルギ出力波形110はまた、パルス幅および繰り返し率がレーザ装置および加工物の要件に基づく一連のパルス(図示せず)とすることができる。
【0056】
上述の多くの装置要素を含んだ1つの典型的な市販のUVレーザ装置は、Electro Scientific Industries, Inc. of Portland, Oregonによって製造されるModel 5310レーザ装置あるいはそのシリーズの他のレーザ装置である。上述の多くの装置要素を含んだ典型的な市販のCO レーザ装置は、Model 5385レーザ装置におけるModel Q3000COレーザ(9.3μm) またはそのシリーズの他の製品を、採用している。上述の多くの装置要素を含んだ典型的な市販のレーザダイシング装置は、Model 4410レーザ装置あるいはそのシリーズの他のレーザ装置である。
【0057】
当業者は、種々材料から成る種々の単一または複数の層の加工物に対し、変化するレーザパラメータ(パルス繰り返し率、1パルス当たりのエネルギ、およびビームスポットサイズのような)は、最良のビア形成スループットおよびビア品質を実現するために異なる加工工程の際にプログラムされることを理解している。例えば、これらの両方は、本特許出願の譲受人に譲渡された、Owenらの米国特許第5841099号明細書およびDunskyらの米国特許第6407363号明細書を参照されたい。当業者はまた、加熱源の動作パラメータ(パワー、エネルギ分布プロファイル、スポットサイズのようなもの)が、種々のレーザ加工の種々のステージの際に、一定のまたは変化した状態となることを理解するであろう。
【0058】
多くの変形例を、これらの原理から逸脱することなく、本発明の上述の実施例の詳細に対してなし得ることが、当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1a】本発明により、ターゲット材料に加熱エネルギを照射し、加工レーザ出力を入射するように向けさせる、好適なレーザ装置の概略図である。
【図1b】本発明により、ターゲット材料に加熱エネルギを照射し、加工レーザ出力を入射するように向けさせる、好適なレーザ装置の概略図である。
【図2】本発明によって形成されたスルーホールビアおよびブラインドビアを有する多層加工物の拡大した断面側面図である。
【図3】本発明の典型的なレーザ装置の概略図である。
【図4a】シリコンおよびアルミニウムそれぞれの吸収係数を、温度の関数として示すグラフである。
【図4b】シリコンおよびアルミニウムそれぞれの吸収係数を、温度の関数として示すグラフである。
【図5a】加工レーザビーム出力波形の一例を示す。
【図5b】一定のおよび低下する出力強度を有する加熱光線波形の例を示す。
【図5c】一定のおよび低下する出力強度を有する加熱光線波形の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物のターゲット材料位置からターゲット材料を迅速に取り除くためにレーザ出力を用いる方法であって、前記レーザ出力は、前記ターゲット材料の一部を材料除去速度で取り除き、前記ターゲット材料は、温度と寸法安定性特性とによって特徴づけられており、
光ビームの形態での加熱エネルギを前記ターゲット材料位置に供給し、前記ターゲット材料の前記寸法安定性特性を十分に維持しながら、前記ターゲット材料の温度を上昇させるステップと、
前記ターゲット材料の除去を行うのに適切なレーザビームパラメータによって特徴づけられる加工レーザ出力を、前記ターゲット材料位置に入射するように方向づけるステップとを含み、前記ターゲット材料への、前記加工レーザ出力と前記加熱エネルギの前記との組み合わせた入射は、前記加工レーザ出力が、前記加熱エネルギの無い状態で前記加工レーザ出力によって実現される材料除去速度よりも高い材料除去速度で、前記ターゲット材料の一部を取り除くことを可能にする、レーザ出力を用いる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記方法は、ビアを前記加工物に形成するステップを含み、前記加工レーザ出力は、主にUVレーザ、IRレーザ、グリーンレーザ、COレーザよりなる群から選ばれる加工レーザによって発生され、前記加熱エネルギは、主にダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、発光ダイオードアレイ、ファイバレーザ、IRレーザ、UVレーザ、COレーザ、これらの組み合わせよりなる群から選ばれる光源によって発生される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記ビアは、ブラインドビアまたはスルーホールビアのうちの1つである、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記加工レーザ出力を、ダイオードポンプドQスイッチ固体レーザである加工レーザによって発生し、加工レーザの出力は、波長が2.1μmよりも小さく、約1nsと500nsとの間のパルス幅を有するような、IRスペクトルでの波長を有し、前記加熱エネルギは2.2μmよりも小さい波長を有する、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記加工レーザ出力を、ダイオードポンプドQスイッチ固体レーザである加工レーザによって発生し、前記加工レーザ出力は、波長が0.6μmよりも小さいようなグリーンスペクトルおよび紫外線スペクトルのうちの1つの調波出力を有し、前記加熱エネルギは2.2μmよりも小さい波長を有する、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、
前記加工レーザは、主としてパルスCOレーザとQスイッチCOレーザとよりなる群から選ばれ、前記加工レーザ出力は約9.2μmと約10.6μmミクロンとの間の波長を有し、前記光源はCOレーザであり、前記加熱エネルギは約9.2μmと約10.6μmとの間の波長を有する、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、
前記加工レーザは、主としてパルスCOレーザとQスイッチCOレーザとよりなる群から選ばれ、前記加工レーザ出力は約9.2μmと約10.6μmとの間の波長を有し、前記加熱エネルギは約0.7μmと約3μmとの間の波長を有し、前記光源は主として固体レーザ、ファイバレーザ、ダイオードレーザ、これら組み合わせよりなる群から選ばれる、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、
前記加工物は薄い銅板であり、前記加工レーザ出力は、主としてパルスCOレーザとQスイッチCOレーザとよりなる群から選ばれ、前記加熱エネルギは2.2μmより短い波長を有する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工物は半導体ウェハであり、前記方法は前記半導体ウェハをダイシングするステップを含み、前記加工レーザ出力を主としてUVレーザ、グリーンレーザ、IRレーザとよりなる群から選ばれる加工レーザによって発生し、前記加熱エネルギを主としてダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、固体レーザ、ファイバレーザ、発光ダイオードアレイ、これらの組み合わせよりなる群から選ばれる光源により発生する、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記加工レーザは、モードロックレーザであり、前記加工レーザ出力は、約10fsと1nsとの間のパルス幅を有するレーザパスルとして伝播し、前記加工レーザ出力は約200nmと約1600nmとの間の波長を有し、前記加熱エネルギは約0.7μmと約2.2μmとの間の波長を有し、前記光源は主としてダイオードレーザ、ダイオードレーザアレイ、ファイバレーザ、これらの組み合わせよりなる群から選ばれる、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工物は、複数の異なるターゲット材料位置を含み、前記加工レーザ出力は、前記異なるターゲット材料位置から、温度が前記加熱エネルギによって上昇されるターゲット材料を除去し、これによって前記異なるターゲット材料位置のターゲット材料を、前記加熱エネルギが無い状態で実現される加工物スループット率よりも高い加工物スループット率で除去する、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記光ビームは、前記ターゲット材料を照射するとき、光ビームスポットサイズを有し、前記加工レーザ出力は、前記ターゲット材料に入射するとき、加工レーザ出力スポットサイズを有し、前記光ビームスポットサイズは、前記加工レーザ出力スポットサイズの約50%と約1000%との間にある、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記光ビームは光ビーム波長を有し、前記加工レーザ出力は加工レーザ出力波長を有し、光ビーム組み合わせ光要素をさらに備え、前記光要素は前記光ビームおよび前記加工レーザ出力とを組み合わせ、前記光ビームが前記ターゲット材料を照射する前に前記光ビーム処理し、前記加工レーザ出力が前記ターゲット材料に入射する前に前記加工レーザ出力を処理し、前記光ビーム波長および前記加工レーザ出力波長は、前記光ビーム組み合わせ光要素の動作波長範囲内にある波長範囲を定める方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工物は多層材料である、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工レーザ出力と前記加熱エネルギとは、前記ターゲット材料位置に、複数の別個のビームステアリングおよびフォーカシング要素によって向けられる、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工レーザ出力は、約1μmと約200μmとの間のスポットサイズを有する、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工レーザ出力を、約1Hzと約150MHzとの間のパルス繰り返し率で一連のパルスを生成する加工レーザによって発生する、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工レーザ出力を、各々が約0.01μJと約1Jとの間のパルスエネルギを有する一連のパルスを生成する加工レーザによって発生する、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、
前記加熱エネルギは、前記ターゲット材料位置上に前記加工レーザ出力と組み合わされて入射する際に、エネルギの連続波を含む、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工レーザ出力と前記加熱エネルギとを、加工レーザ出力期間と過熱エネルギ期間のそれぞれの間に、前記ターゲット材料位置に供給し、前記加熱エネルギ期間は、前記加工レーザ出力期間の約50%と約100%との間にある方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、
前記加熱エネルギは、前記ターゲット材料位置に前記加工レーザ出力と組み合わされて入射する際に、約1Hzと約200kHzとの間の繰り返し率を有する一連のパルスを含む、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、
前記加熱エネルギは、約0.01Wと約1000Wとの間の平均出力を有する、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、
前記加熱エネルギは、前記ターゲット材料位置上に前記加工レーザ出力と前記加熱エネルギとが組み合わされて入射する際に、ピーク出力レベルの約50%と約100%との間で変調される加熱エネルギの出力レベルを有する、方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法であって、
前記加熱エネルギは、パルス光ビームの形態である、方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、
前記加工レーザを、一連のレーザビームパルスを生成する加工レーザによって発生する、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2007−508946(P2007−508946A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536791(P2006−536791)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/034903
【国際公開番号】WO2005/043699
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】