説明

層パターン製造方法、配線製造方法、電子機器の製造方法

【課題】微細化された層パターンを、精度よく安定して形成できる製造方法を提供するこ
と。
【解決手段】層パターン製造方法は、基板上に位置する第1の層と前記第1の層上に位置
する第2の層とを形成することで、前記第1の層と前記第2の層とによって区画された領
域を前記基板上に形成するステップ(a)と、吐出装置の吐出部から前記領域に液状の材
料を吐出するステップ(b)と、を含む。そして、前記液状の材料に対する前記第1の層
の撥液性は、前記材料に対する前記第2の層の撥液性よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層パターン製造方法に関し、特に電子機器における配線の製造に好適な層パ
ターン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット技術を用いて電気的導通配線を形成する方法が知られている(例えば特
許文献1)。上記方法によれば、溶融したハンダ材料または銀ペーストを基板に直接パタ
ーン配置し、その後、熱処理やレーザ光照射を行って膜パターンに変換する。
【0003】
【特許文献1】特開2000−216330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年デバイスを構成する回路の高密度化が進み、これに応じて、例えば、配線もより微
細化されている。上述したインクジェット技術を用いた膜パターン形成方法では、吐出さ
れた液滴が着弾後に基板上で広がるため、この結果、微細な膜パターンを安定的に形成す
ることが容易でない場合がある。特に、形成すべき配線の幅が液滴の大きさより小さい場
合には、配線を形成することが容易でない。
【0005】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、微細化された膜パ
ターンを、精度よく安定して形成できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の層パターン製造方法は、基板上に位置する第1の層と前記第1の層上に位置す
る第2の層とを形成することで、前記第1の層と前記第2の層とによって区画された領域
を前記基板上に形成するステップ(a)と、吐出装置の吐出部から前記領域に液状の材料
を吐出するステップ(b)と、を含み、前記液状の材料に対する前記第1の層の撥液性は
、前記材料に対する前記第2の層の撥液性よりも低い。
【0007】
上記構成によって、微細化された層パターンを、精度よく安定して形成できる。液状の
材料を吐出すべき領域が、前記第1の層と前記第2の層とによって区画されているため、
この結果、吐出された材料が、不必要に基板上で広がらないからである。
【0008】
さらに、第2の層が第1の層より高い撥液性を呈するため、区画された領域に着弾した
直後の配線材料111の液滴は、第2の層を超えて領域の外へ流れず、第1の層に流れる
。このため、より塗布が安定する。
【0009】
好ましくは、前記ステップ(a)は、前記領域が、第1の幅を有する第1の部分と前記
第1の幅よりも狭い第2の幅を有する第2の部分と、を有するように、前記第1の層と前
記第2の層を形成するステップ(c)を含み、前記ステップ(b)は、前記第1の部分に
のみ前記材料を吐出するステップ(d)を含む。
【0010】
さらに好ましくは、前記第1の層は、前記液状の材料に対して親液性を有する。
【0011】
上記構成によって、基板に近い層、すなわち第1の層、が親液性を有するため、狭幅領
域38Bと狭幅領域38Bとに配線材料が吐出されなくても、狭幅領域38Aに着弾した
配線材料111が狭幅領域38Bと狭幅領域38Cに流れ込む。なぜなら、第1の層によ
って毛細管現象が生じるからである。
【0012】
本発明は種々の態様で実現することが可能であり、例えば、配線製造方法や電子機器の
製造方法として実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、プラズマ表示装置の製造方法、液晶表示装置の製造方法、およびエレ
クトロルミネッセンス表示装置の製造方法に適用した場合を例に取り、図面を参照しつつ
説明する。なお、以下に示す実施例は、特許請求の範囲に記載された発明の内容を何ら限
定するものではない。また、以下の実施例に示す構成のすべてが、特許請求の範囲に記載
された発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【実施例1】
【0014】
本発明をプラズマ表示装置の製造方法に適用した例を説明する。
【0015】
図1(a)に示すように、プラズマ表示装置10はそれぞれがY軸方向に延びる複数の
アドレス電極14と、複数のアドレス電極14に信号を与えるアドレス電極駆動回路14
Dと、それぞれがX軸方向に延びる複数の表示スキャン電極26と、複数の表示スキャン
電極26に信号を与える表示スキャン電極駆動回路26Dと、を備えている。ここでいう
X軸方向およびY軸方向は互いに直交する方向であり、後述する吐出装置におけるノズル
がステージに対し相対移動する方向と同じである。
【0016】
複数のアドレス電極14は、プラズマ表示装置の背面基板に設けられている。また、複
数の表示スキャン電極26は、プラズマ表示装置の前面基板に設けられている。なお、プ
ラズマ表示装置10は、前面基板に設けられた複数の表示電極も備えているが、図1では
、説明を平易にする目的で省略されている。背面基板、前面基板、および複数の表示電極
については後述する。
【0017】
図1(b)に示すように、アドレス電極14同士の間隔は、ほぼ300μmである。ま
た、複数のアドレス電極14のそれぞれは、広幅部14Aと、狭幅部14Bと、を有して
いる。広幅部14Aの幅はほぼ20μmである。狭幅部14Bの幅はほぼ5μmである。
本実施例では、複数のアドレス電極14のそれぞれは、狭幅部14Bを介してアドレス電
極駆動回路14Dに接続されている。後述するように、アドレス電極14は、基体に設け
られた被吐出部18(図8)に、インクジェット装置などの吐出装置を用いて液状の配線
材料を吐出することで形成されている。
【0018】
本実施例のアドレス電極14は、本発明の「層パターン」または「配線」の一例である

【0019】
図2に示す製造装置1は、基体における被吐出部18(図8)に配線を形成する装置で
ある。具体的には、製造装置1は、被吐出部18のすべてに液状の配線材料111を塗布
する吐出装置100と、被吐出部18上の配線材料111を乾燥させる乾燥装置150と
、配線材料111を再度加熱(ポストベーク)するオーブン160と、を備えている。さ
らに製造装置1は、吐出装置100、乾燥装置150、オーブン160の順番に基体を搬
送する搬送装置170も備えている。
【0020】
図3に示すように、吐出装置100は、液状の配線材料111を保持するタンク101
と、チューブ110を介してタンク101から配線材料111が供給される吐出走査部1
02と、を備える。吐出走査部102は、それぞれが液状の配線材料を吐出可能な複数の
ヘッド114(図4)を有するキャリッジ103と、キャリッジ103の位置を制御する
第1位置制御装置104と、支持基板12を保持するステージ106と、ステージ106
の位置を制御する第2位置制御装置108と、制御部112と、を備えている。タンク1
01と、キャリッジ103における複数のヘッド114と、はチューブ110で連結され
ており、タンク101から複数のヘッド114のそれぞれに液状の配線材料111が圧縮
空気によって供給される。
【0021】
本実施例における液状の配線材料111は、本発明の「液状の材料」の一例である。液
状の材料とは、ノズルから吐出可能な粘度を有する材料をいう。この場合、材料が水性で
あると油性であるとを問わない。ノズルから吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十
分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。
【0022】
第1位置制御装置104はリニアモータを備えており、制御部112からの信号に応じ
て、キャリッジ103をX軸方向、およびX軸方向と直交するZ軸方向に沿って移動させ
る。第2位置制御装置108はリニアモータを備えており、制御部112からの信号に応
じて、X軸方向およびZ軸方向の両方と直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動
させる。ステージ106はX軸方向およびY軸方向の双方と平行な平面を有していて、こ
の平面上に基体10A(図8)を固定できるように構成されている。ステージ106が基
体10Aを固定するので、ステージ106は被吐出部18、18G、18Bの位置を決定
できる。なお、本実施例の基体10Aは、受容基板の一例である。
【0023】
第1位置制御装置104は、さらに、Z軸方向に平行な所定の軸の回りでキャリッジ1
03を回転させる機能も有する。Z軸方向とは、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に
平行な方向である。第1位置制御装置104によるキャリッジ103のZ軸方向に平行な
軸の回りの回転によって、受容基板上に固定された座標系におけるX軸およびY軸を、X
軸方向およびY軸方向とそれぞれ平行にできる。本実施例では、X軸方向およびY軸方向
は、ともにステージ106に対してキャリッジが相対移動する方向である。本明細書では
、第1位置制御措置104および第2位置制御装置108を「走査部」と表記することも
ある。
【0024】
キャリッジ103およびステージ106は上記以外の平行移動および回転の自由度をさ
らに有している。ただし、本実施例では、上記自由度以外の自由度に関する記載は説明を
平易にする目的で省略されている。
【0025】
制御部112は、配線材料111を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処
理装置から受け取るように構成されている。制御部112の詳細な機能は、後述する。
【0026】
図4に示すように、キャリッジ103は、互いに同じ構造を有する複数のヘッド114
を保持している。ここで、図4は、キャリッジ103をステージ106側から観察した図
であり、このため図面に垂直な方向がZ軸方向である。本実施例では、キャリッジ103
には4個のヘッド114からなる列が2列配置されている。それぞれのヘッド114の長
手方向とX軸方向との間の角度ANは0°になるように、ヘッド114のそれぞれがキャ
リッジ103に固定されている。ただし、変形例で説明するように、この角度ANは可変
である。
【0027】
図5に示すように、配線材料111を吐出するためのヘッド114は、それぞれがヘッ
ド114の長手方向に延びる2つのノズル列116を有している。ノズル列116とは、
180個のノズル118が一列に並んだ列のことである。ノズル列116の方向をノズル
列方向HXと表記する。ノズル列方向HXに沿ったノズル118の間隔は、約140μm
である。また、図5において、1つのヘッド114における2つのノズル列116は、互
いに半ピッチ(約70μm)だけ互いにずれて位置している。さらに、ノズル118の直
径は、およそ27μmである。上述したように、ヘッド114の長手方向とX軸方向との
間の角度が角度ANだから、ノズル列方向HX、すなわち180個のノズル118が一列
に並ぶ方向とX軸方向との間の角度も角度ANである。なお、複数のノズル118のそれ
ぞれの端部は、上記X軸方向およびY軸方向で定義される仮想的な平面上に位置している
。また、ヘッド114がほぼZ軸と平行に材料を吐出できるように、複数のノズル118
のそれぞれの形状が調整されている。
【0028】
図6(a)および(b)に示すように、それぞれのヘッド114は、インクジェットヘ
ッドである。より具体的には、それぞれのヘッド114は、振動板126と、ノズルプレ
ート128と、を備えている。振動板126と、ノズルプレート126と、の間には、タ
ンク101から孔131を介して供給される液状の配線材料111が常に充填される液た
まり129が位置している。また、振動板126と、ノズルプレート128と、の間には
、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と
、1対の隔壁122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ1
20はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル11
8の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122の間に位置する供給口
130を介して、液たまり129から配線材料111が供給される。
【0029】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置す
る。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極12
4A、124Bと、を含む。この1対の電極124A、124Bに駆動電圧を与えること
で、対応するノズル118から液状の配線材料111が吐出される。
【0030】
制御部112(図3)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立な信号を与える
ように構成されている。このため、ノズル118から吐出される配線材料111の体積は
、制御部112からの信号に応じてノズル118毎に制御される。さらに、ノズル118
のそれぞれから吐出される配線材料111の体積は、0pl〜42pl(ピコリットル)
の間で可変である。このため、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作
を行わないノズル118と、を設定することでもできる。
【0031】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、
キャビティに対応する振動子124と、を含んだ部分を、吐出部127と表記することも
ある。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部1
27を有する。上述のように本実施例では、キャリッジ103はヘッド114を保持する
。一方、ヘッド114のそれぞれは複数の吐出部127を有している。このため、本明細
書では、キャリッジ103が複数の吐出部127を保持すると表記することもある。
【0032】
吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出
部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有して
いてもよい。
【0033】
上述のように、キャリッジ103は第1位置制御装置104(図3)によってX軸方向
およびZ軸方向に移動させられる。一方、ステージ106(図3)は第2位置制御手段1
08(図3)によってY軸方向に移動させられる。この結果、第1位置制御装置104お
よび第2位置制御装置108によって、ステージ106に対してキャリッジ103が相対
移動する。より具体的には、これらの動作によって、複数のヘッド114、複数のノズル
列116、または複数のノズル118は、ステージ106上で位置決めされた被吐出部1
8に対してZ軸方向に所定の距離を保ちながらX軸方向およびY軸方向に相対的に移動、
すなわち相対的に走査する。さらに具体的には、ヘッド114は、ステージに対してX軸
方向およびY軸方向に相対走査するとともに、複数のノズル118から材料を吐出する。
本発明では、被吐出部18に対してノズル118をY軸方向に走査して、被吐出部18に
対してノズル118から材料を吐出してもよい。「相対走査」とは吐出する側とそこから
の吐出物が着弾する側(被吐出部18側)の少なくとも一方を他方に対して走査すること
を含む。また、相対走査と材料の吐出との組合せを指して「塗布走査」と表記することも
ある。
【0034】
次に、制御部112の構成を説明する。図7の機能ブロック図に示すように、制御部1
12は、入力バッファメモリ200と、記憶手段202と、処理部204と、走査ドライ
バ206と、ヘッドドライバ208と、を備えている。バッファメモリ202と処理部2
04とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と記憶手段202とは、相互に
通信可能に接続されている。処理部204と走査ドライバ206とは相互に通信可能に接
続されている。処理部204とヘッドドライバ20とは相互に通信可能に接続されている
。また、走査ドライバ206は、第1位置制御手段104および第2位置制御手段108
と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッドドライバ208は、複数のヘッド11
4のそれぞれと相互に通信可能に接続されている。
【0035】
入力バッファメモリ200は、外部情報処理装置から配線材料111の吐出を行うため
の吐出データを受け取る。吐出データは、基体10A上のすべての被吐出部18の相対位
置を表すデータと、すべての被吐出部18に所望の厚さの配線材料111を塗布するまで
に必要となる相対走査の回数を示すデータと、被吐出部上の着弾位置を示すデータと、吐
出動作を行うノズル118を指定するデータと、吐出動作を行わないノズル118を指定
するデータと、を含む。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給
し、処理部204は吐出データを記憶手段202に格納する。図7では、記憶手段202
はRAMである。
【0036】
処理部204は、記憶手段202内の吐出データに基づいて、被吐出部18に対するノ
ズル列116の相対位置を示すデータを走査ドライバ206に与える。走査ドライバ20
6はこのデータに応じた駆動信号を第1位置制御手段104および第2位置制御手段10
8に与える。この結果、被吐出部18に対してノズル列116が走査される。一方、処理
部204は、記憶手段202に記憶された吐出データに基づいて、対応するノズル118
からの吐出タイミングを示すデータをヘッドドライバ208に与える。ヘッドドライバ2
08はこのデータに基づいて、配線材料111の吐出に必要な駆動信号をヘッド114に
与える。この結果、ノズル列116における対応するノズル118から液状の配線材料1
11が吐出される。
【0037】
制御部112は、少なくともCPU、ROM、RAMを含んだコンピュータであっても
よい。この場合には、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフ
トウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハー
ドウェア)によって実現されてもよい。
【0038】
以上の構成によって、吐出装置100Rは、制御部112に与えられた吐出データに応
じて、配線材料111の塗布走査を行う。
【0039】
次に、アドレス電極14の製造方法を説明する。まず、ガラス基板などの支持基板12
をUV洗浄する。そして、図8(a)に示すように、支持基板12の一方の面の全面を覆
うようにスピンコート法を用いて、黒顔料が分散された熱硬化型アクリル樹脂(すなわち
樹脂ブラック)を2μm程度の厚さに塗布する。このことで、支持基板12上に樹脂ブラ
ック層20Aを形成する。さらに樹脂ブラック層20Aの全面を覆うようにフッ素系ポリ
マーがブレンドされたネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを塗布することで、
樹脂ブラック層20A上にレジスト層20Bを形成する。
【0040】
次に、レジスト層20Bと樹脂ブラック層20Aとをパターニングする。具体的には、
図8(b)に示すように、アドレス電極14が形成されるべき領域に対応した部位に遮光
部ABを有するフォトマスクPM1を介して、レジスト層20Bに光hνを照射する。そ
して、所定のエッチング液を用いてエッチングすることで、光hνが照射されていない複
数の部分、すなわち複数のアドレス電極14に対応する複数の部分のレジスト層20Bと
、樹脂ブラック層20Aと、を取り除く。そのことによって、図8(c)に示すように、
後に形成されるべきアドレス電極14を囲む形状を有する樹脂ブラック層20Cとレジス
ト層20Dとが、支持基板12上に得られる。
【0041】
このように、支持基板12上に位置する樹脂ブラック層20Cと樹脂ブラック層20C
上に位置するレジスト層20Dとを形成することで、樹脂ブラック層20Cとレジスト層
20Dとによって区画された領域(つまり被吐出部18)を支持基板12上に形成する。
本実施例では、樹脂ブラック層20Cが本発明の「第1の層」に対応し、レジスト層20
Dが発明の「第2の層」に対応する。
【0042】
本明細書では、このような形状を有する樹脂ブラック層20Cと、樹脂ブラック層20
C上に位置するレジスト層20Dとを合わせて、バンク20と表記することもある。この
表記によれば、樹脂ブラック層20Cとレジスト層20Dとを含むバンク20を形成する
ことで、バンク20によって区画された領域、すなわち被吐出部18、が支持基板12上
に形成される。なお、本実施例において、「バンク」とは、「隔壁」、「仕切り部」など
を含む用語である。
【0043】
図8(f)に示すように、被吐出部18は、アドレス電極14の形状とほぼ同じ形状を
有している。このため、被吐出部18は、アドレス電極14の広幅部14Aに対応する広
幅領域18Aと、アドレス電極14の狭幅部14Bに対応する狭幅領域18Bと、を有し
ている。広幅領域18Aの幅は、ほぼ20μmであり、狭幅領域18Bの幅は、ほぼ5μ
mである。本実施例では、支持基板12と、支持基板12上に形成された被吐出部18と
、を合わせて、基体10Aと表記することもある。
【0044】
次に、製造装置1における吐出装置100のステージ106上に基体10Aを固定する
ことで、ステージ106上に被吐出部18を位置決めする。この場合、被吐出部18の長
手方向がY軸方向と平行になるように、ステージ106上で基体10Aを固定する。そし
て、ノズル118のX座標が、被吐出部18のX座標に一致するように、キャリッジ10
3およびステージ106の少なくとも一方を移動させる。この場合、複数のノズル118
のX座標のそれぞれが、複数の被吐出部18のX座標に同時に一致するように、ノズル列
方向HXとX軸方向との間の角度ANを設定しておくことが好ましい。そうすれば、1つ
の走査期間の間に、複数の被吐出部18を同時に塗布走査できるからである。
【0045】
図8(d)および(g)に示すように、吐出装置100は、1つの走査期間の間に、対
応するノズル118から被吐出部18に液状の配線材料111を吐出する。この場合、図
8(d)および(g)に示すように、吐出装置100は、被吐出部18のうち、広幅領域
18Aにのみに対して所定の間隔で液状の配線材料111を吐出する。なお、ノズル11
8から吐出された直後の配線材料の液滴をX軸方向およびY軸方向で決まる平面に投影し
た場合、その投影された液滴の半径はほぼ20μmである。つまり、液滴の半径は、広幅
領域18Aの幅とほぼ同じである。
【0046】
ところで、本明細書において「走査期間」とは、キャリッジ103の一辺がY軸方向に
沿って走査範囲の一端(または他端)から他端(または一端)まで相対移動を1回行う期
間を意味する。さらに、本実施例において「走査範囲」とは、複数の被吐出部18の全て
に配線材料111を塗布するまでに、キャリッジ103の一辺が相対移動する範囲を意味
する。しかしながら、場合によっては用語「走査範囲」は、1つのノズル118が相対移
動する範囲を意味することもあるし、1つのノズル列116が相対移動する範囲を意味す
ることもあるし、1つのヘッド114が相対移動する範囲を意味することもある。なお、
キャリッジ103、ヘッド114、またはノズル118が相対移動するとは、被吐出部1
8に対するこれらの相対位置が変わることである。このため、キャリッジ103、ヘッド
114、またはノズル118が絶対静止して、被吐出部18のみがステージ106によっ
て移動する場合であっても、キャリッジ103、ヘッド114、またはノズル118が相
対移動すると表現する。
【0047】
液状の配線材料111とは、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液である。導電性
微粒子としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含
有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子など
が用いられる。
【0048】
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティング
して使うこともできる。導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては
、例えばキシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。
【0049】
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmよ
り大きいと、ノズル118に目詰まりが生じる場合がある。また、1nmより小さいと、
導電性微粒子に対するコーテイング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割
合が過多となり、この結果、導電性が低下する。
【0050】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであ
れば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブ
タノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラ
デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロ
ナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、
またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチ
レングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチ
レングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2
−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエー
テル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−
ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極
性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出
法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物
、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を
挙げることができる。
【0051】
本実施例では、上記の液状の配線材料111に対して、レジスト層20Dは撥液性を呈
する。さらに、液状の配線材料111に対する樹脂ブラック層20Cの撥液性は、配線材
料111に対するレジスト層20Dの撥液性よりも低い。むしろ、樹脂ブラック層20C
は、液状の配線材料111に対して親液性を呈する。これらの理由は、レジスト層20D
にはフッ素ポリマーがブレンドされており、一方、樹脂ブラック層20Cはフッ素系ポリ
マーを含有しないからである。一般に、フッ素を含む樹脂の表面は、フッ素を含まない樹
脂の表面よりも、上記分散媒を含む配線材料に対して高い撥液性を呈する。一方、フッ素
を含まない樹脂の多くは、上記液状の配線材料に対して親液性を示す。
【0052】
レジスト層20Dが相対的に高い撥液性を呈するため、被吐出部18に着弾した直後の
液滴は、レジスト層20Dを超えて被吐出部18の外へ流れず、樹脂ブラック層20Cの
方に流れ落ちる。また、支持基板12に近い層、すなわち樹脂バンク層20C、が親液性
を呈するため、狭幅領域18Bに配線材料111が吐出されなくても、狭幅領域18Aに
着弾した配線材料111が狭幅領域18Bに流れ込む。なぜなら、樹脂バンク層20Cに
よって毛細管現象が生じるからである。さらに、所望の撥液性を示す層と親液性を示す層
とからバンク20が形成されているため、バンクを撥液化または親液化するための表面改
質工程が不要になる。例えばテトラフルオロメタンを処理がガスとするプラズマ処理や酸
素プラズマ処理が不要になる。
【0053】
本実施例では、液状の材料に対して撥液性を示す層の材料として、フッ素系ポリマーが
ブレンドされたネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを用いている。感光特性は
、ネガ型に限定されず、ポジ型であってもよい。また、本実施例では、液状の材料に対し
て親液性を示す層の材料として、黒顔料が分散された熱硬化型アクリル樹脂(樹脂ブラッ
ク)を用いている。しかしながら、樹脂ブラック以外にも、感光性ポリイミド、アクリル
系レジスト、エポキシ系レジストが、親液性を示す層として利用できる。
【0054】
なお、分散媒の性質によっては、フッ素ポリマーを含まない材料の方が配線材料111
に対して撥液性を呈する場合もある。このような場合には、配線材料に含まれる分散媒に
応じて、所望の撥液性と、所望の親液性と、が得られるように、材料を選択すればよい。
【0055】
以上の吐出方法によって、図8(e)および(h)に示すように、広幅領域18Aだけ
でなく、狭幅領域18Bにも配線材料の層が塗布される。
【0056】
基体10Aの被吐出部18のすべてに配線材料111の層が形成された場合には、搬送
装置170が基体10Aを乾燥装置150内に位置させる。そして、被吐出部18上の配
線材料111を完全に乾燥させることで、被吐出部18にアドレス電極14を得る。次に
搬送装置170は、支持基板12を、オーブン160内に位置させる。その後、オーブン
160は複数のアドレス電極14を再加熱(ポストベーク)する。再加熱後の広幅部14
Aの厚さおよび狭幅部14Bの厚さは、ともにほぼ2μmである。
【0057】
以上の工程によって、支持基板12上に複数のアドレス電極14が形成される。その後
、公知の薄膜形成工程やパターニング工程などを利用して、アドレス電極14が形成され
た基体10Aから、図9に示すプラズマ表示装置10を得る。
【0058】
図9は、製造装置1によって製造されたアドレス電極14を備えたプラズマ表示装置1
0の模式図である。プラズマ表示装置10は、背面基板10Bと、前面基板10Cと、を
備えている。
【0059】
背面基板10Bは、上述の支持基板12と、支持基板12上にストライプ状に形成され
た複数のアドレス電極14と、アドレス電極14を覆うように形成された誘電体ガラス層
16と、格子状の形状を有するとともに複数の画素領域を規定する隔壁21と、を含む。
隔壁21で囲まれるセル(つまり画素領域)には、赤、緑、青のいずれかの光を発光可能
な蛍光層17が塗布されている。複数の画素領域はマトリクス状に位置しており、複数の
画素領域が形成するマトリクスの列のそれぞれは、複数のアドレス電極14のそれぞれに
対応する。
【0060】
前面基板10Cは、ガラス基板28と、ガラス基板28上で互いに平行にパターニング
された表示電極25および表示スキャン電極26と、表示電極25および表示スキャン電
極26とを覆うように形成された誘電体ガラス層24と、誘電体ガラス層24上に形成さ
れたMgO保護層22と、を有する。背面基板10Bと前面基板10Cとは、背面基板1
0Bのアドレス電極54と、前面基板10Cの表示電極25・表示スキャン電極26とが
、互いに直交するように位置合わせされている。各隔壁21で囲まれるセル(画素領域)
には、所定の圧力で放電ガス29が封入されている。なお、図10においては、バンク2
0は取り除かれているが、バンク20をプラズマ表示装置10内に残してもよい。
【0061】
本実施例では、プラズマ表示装置10におけるアドレス配線14の製造方法を説明した
が、本実施例の製造方法がプラズマ表示装置10の表示電極25や表示スキャン電極26
など他の配線に適用されても、上述の効果と同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0062】
本発明を液晶表示装置の製造方法に適用した例を説明する。なお、以下で説明するよう
に、実施例2の被吐出部の形状と実施例1の被吐出部の形状とが異なる点を除いて、実施
例2は実施例1と基本的に同じである。
【0063】
図10(a)に示すように、液晶表示装置30はそれぞれがX軸方向に延びる複数のゲ
ート線34と、複数のゲート線34に信号を与えるゲート線駆動回路34Dと、それぞれ
がY軸方向に延びる複数のソース線46と、複数のソース線46に信号を与えるソース線
駆動回路46Dと、複数のスイッチング素子44と、複数の保持容量CPと、複数の画素
容量LCと、を備えている。ここでいうX軸方向およびY軸方向は互いに直交しており、
実施例1において説明したように、吐出装置100におけるノズル118がステージに対
し相対移動する方向と同じである。また、後述するように、複数のゲート線34および複
数のソース線46は、液晶表示装置30の素子側基板に設けられている。素子側基板につ
いては、後述する。
【0064】
それぞれのスイッチング素子44のゲート電極44Gおよびドレイン電極44Dは、対
応するゲート線34およびソース線46にそれぞれ接続されている。また、それぞれのス
イッチング素子44のソース電極44Sは、画素容量LCの一部である画素電極36(図
12)および保持容量CPの一部である電極の双方に接続されている。
【0065】
図10(b)に示すように、ゲート線34同士の間隔は、ほぼ300μmである。複数
のゲート線34のそれぞれは、広幅部34Aと、狭幅部34Bと、を有している。広幅部
34Aの幅、すなわち長手方向と直交する方向の長さ、は、狭幅部34Bの幅よりも長い
。広幅部34Aはそれぞれのゲート線34における部分のうちのX軸方向に延びるストラ
イプ状の部分である。広幅部34Aの幅はほぼ20μmである。狭幅部34Bは、広幅部
34AからY軸方向に突き出た部分であり、スイッチング素子44のゲート電極44Gで
もある。狭幅部34Bの幅は、ほぼ10μmである。後述するように、ゲート線34は、
基体に設けられた被吐出部38(図11)に、インクジェット装置などの吐出装置を用い
て液状の配線材料を吐出することで形成されている。具体的には、ゲート線34は、実施
例1で説明した製造装置1(図2)によって形成されている。
【0066】
本実施例のゲート電極34は、本発明の「層パターン」または「配線」の一例である。
【0067】
次に、ゲート線34の製造方法を説明する。まず、ガラス基板などの支持基板32をU
V洗浄する。そして、図11(a)に示すように、支持基板32の一方の面の全面を覆う
ように、スピンコート法を用いて黒顔料が分散された熱硬化型アクリル樹脂(すなわち樹
脂ブラック)を塗布する。このことで、支持基板32上に樹脂ブラック層40Aを形成す
る。さらに樹脂ブラック層40Aの全面を覆うようにフッ素系ポリマーがブレンドされた
ネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを塗布することで、樹脂ブラック層40A
上にレジスト層40Bを形成する。
【0068】
次に、レジスト層40Bと樹脂ブラック層40Aとをパターニングする。具体的には、
図11(b)に示すように、ゲート線34が形成されるべき領域に対応した部位に遮光部
ABを有するフォトマスクPM2を介して、レジスト層40Bに光hνを照射する。そし
て、所定のエッチング液を用いてエッチングすることで、光hνが照射されていな複数の
部分、すなわち複数のゲート線34に対応する複数の部分のレジスト層40Bと、樹脂ブ
ラック層40Aと、を取り除く。そのことによって、図11(c)に示すように、後に形
成されるべきゲート線34を囲む形状を有する樹脂ブラック層40Cとレジスト層40D
とが、支持基板32上に得られる。
【0069】
このように、支持基板32上に位置する樹脂ブラック層40Cと樹脂ブラック層40C
上に位置するレジスト層40Dとを形成することで、樹脂ブラック層40Cとレジスト層
40Dとによって区画された領域(つまり被吐出部38)を支持基板32上に形成する。
本実施例では、樹脂ブラック層40Cが本発明の「第1の層」に対応し、レジスト層40
Dが発明の「第2の層」に対応する。
【0070】
本明細書では、このような形状を有する樹脂ブラック層40Cと、樹脂ブラック層40
C上に位置するレジスト層40Dとを合わせて、バンク40と表記することもある。この
表記によれば、樹脂ブラック層40Cとレジスト層40Dとを含むバンク40を形成する
ことで、バンク40によって区画された領域、すなわち被吐出部38、が支持基板32上
に形成される。
【0071】
図11(f)に示すように、被吐出部38は、ゲート線34の形状とほぼ同じ形状を有
している。このため、被吐出部38は、ゲート線34の広幅部34Aに対応する広幅領域
38Aと、ゲート線34の挟幅部34Bに対応する狭幅領域38Bと、を有している。広
幅領域38Aの幅は、ほぼ20μmであり、狭幅領域38Bの幅は、ほぼ10μmである
。本実施例では、支持基板32と、支持基板上に形成された被吐出部38と、を合わせて
、基体30Aと表記することもある。
【0072】
次に、製造装置1における吐出装置100のステージ106上に基体30Aを固定する
ことで、ステージ106上に被吐出部38を位置決めする。この場合、被吐出部38の長
手方向がY軸方向と平行になるように、ステージ106上で基体30Aを固定する。そし
て、ノズル118のX座標が、被吐出部38のX座標に一致するように、キャリッジ10
3およびステージ106の少なくとも一方を移動させる。この場合、複数のノズル118
のX座標のそれぞれが、複数の被吐出部38のX座標に同時に一致するように、ノズル列
方向HXとX軸方向との間の角度ANを設定しておくことが好ましい。そうすれば、1つ
の走査期間の間に、複数の被吐出部38を同時に塗布走査できるからである。
【0073】
なお、被吐出部38の形状に応じて、吐出装置100の制御部112に与えられる吐出
データは、実施例1の吐出データから変更されている。
【0074】
図11(d)および(g)に示すように、吐出装置100は、1つの走査期間の間に、
対応するノズル118から被吐出部38に液状の配線材料111を吐出する。この場合、
図11(d)および(g)に示すように、吐出装置100は、被吐出部38のうち、広幅
領域38Aにのみに対して所定の間隔で液状の配線材料111を吐出する。なお、ノズル
118から吐出された直後の配線材料の液滴をX軸方向およびY軸方向で決まる平面に投
影した場合、その投影された液滴の半径はほぼ20μmである。つまり、液滴の半径は、
広幅領域38Aの幅とほぼ同じである。
【0075】
本実施例では、液状の配線材料111に対して、レジスト層40Dは撥液性を呈する。
さらに、液状の配線材料111に対する樹脂ブラック層40Cの撥液性は、配線材料11
1に対するレジスト層40Dの撥液性よりも低い。むしろ、樹脂ブラック層40Cは、液
状の配線材料111に対して親液性を呈する。これらの理由は、レジスト層40Dにはフ
ッ素ポリマーがブレンドされており、一方、樹脂ブラック層40Cはフッ素系ポリマーを
含有しないからである。一般に、フッ素を含む樹脂の表面は、フッ素を含まない樹脂の表
面よりも、実施例1で説明した分散媒を含む配線材料に対して高い撥液性を呈する。一方
、フッ素を含まない樹脂の多くは、上記液状の配線材料に対して親液性を示す。
【0076】
レジスト層40Dが相対的に高い撥液性を呈するため、被吐出部38に着弾した直後の
配線材料111の液滴は、レジスト層40Dを超えて被吐出部38の外へ流れず、樹脂ブ
ラック層40Cの方に流れ落ちる。また、支持基板32に近い層、すなわち樹脂ブラック
層40C、が親液性を呈するため、狭幅領域38Bに配線材料が吐出されなくても、狭幅
領域38Aに着弾した配線材料111が狭幅領域38Bに流れ込む。なぜなら、樹脂ブラ
ック層40Cによって毛細管現象が生じるからである。さらに、所望の撥液性を示す層と
親液性を示す層とからバンク40が形成されているため、バンクを撥液化または親液化す
るための表面改質工程が不要になる。例えばテトラフルオロメタンを処理がガスとするプ
ラズマ処理や酸素プラズマ処理が不要になる。
【0077】
本実施例では、液状の材料に対して撥液性を示す層の材料として、フッ素系ポリマーが
ブレンドされたネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを用いている。感光特性は
、ネガ型に限定されず、ポジ型であってもよい。また、本実施例では、液状の材料に対し
て親液性を示す層の材料として、黒顔料が分散された熱硬化型アクリル樹脂を用いている
。しかしながら、樹脂ブラック以外にも、感光性ポリイミド、アクリル系レジスト、エポ
キシ系レジストが、親液性を示す層として利用できる。
【0078】
なお、分散媒の性質によっては、フッ素ポリマーを含まない材料の方が配線材料111
に対して撥液性を呈する場合もある。このような場合には、配線材料に含まれる分散媒に
応じて、所望の撥液性と、所望の親液性と、が得られるように、材料を選択すればよい。
【0079】
以上の吐出方法によって、図11(e)および(h)に示すように、広幅領域38Aだ
けでなく、狭幅領域38Bにも配線材料の層が塗布される。
【0080】
基体30Aの被吐出部38のすべてに配線材料111の層が形成された場合には、搬送
装置170が基体30Aを乾燥装置150内に位置させる。そして、被吐出部38上の配
線材料111を完全に乾燥させることで、被吐出部38にゲート線34を得る。次に搬送
装置170は、基体30Aを、オーブン160内に位置させる。その後、オーブン160
は複数のゲート線34を再加熱(ポストベーク)する。再加熱後の広幅部34Aの厚さお
よび狭幅部34Bの厚さは、いずれもほぼ2μmである。
【0081】
以上の工程によって、基体30A上に複数のゲート線34が形成される。その後、公知
の薄膜形成工程やパターニング工程などを利用して、ゲート線34が形成された基体30
Aから、図12に示す液晶表示装置30を得る。
【0082】
図12は、製造装置1によって製造されたゲート線34を備えた液晶表示装置30の模
式図である。液晶表示装置30は、素子側基板30Bと、前面基板30Cと、を備えてい
る。
【0083】
素子側基板30Bは、支持基板32の第1の面に設けられた偏光板31Pと、支持基板
32の第1の面に対向する第2の面上に形成された複数のゲート線34と、複数のゲート
線34を覆うように形成された酸化膜33と、酸化膜33と支持基板32とを覆うように
形成されたゲート絶縁膜42と、それぞれのゲート電極44Gを覆うようにゲート絶縁膜
42上に位置するそれぞれの半導体層35と、を備えている。さらに、素子側基板30B
は、対応する半導体層35上でゲート電極44Gの一部と重なるとともに、ゲート電極4
4Gに対応する領域上で互いに所定の距離だけ離れて位置するコンタクト層37Sおよび
コンタクト層37Dと、コンタクト層37S上に位置するソース電極44Sと、コンタク
ト層37D上に位置するドレイン電極44Dと、ドレイン電極44Dに接続されたソース
線46と、ソース電極44Sとドレイン電極44Dとソース線46を覆う保護膜39と、
保護膜39上に位置するポリイミドなどの層間絶縁層45と、層間絶縁層45上でマトリ
クス状に配置された複数の画素電極36と、複数の画素電極36と層間絶縁層45とを覆
う配向膜41Pとを備える。複数の画素電極36は、ITO(Indium-Tin Oxide)などの
光透過性を有する材料から形成されている。配向膜41Pには、所定の方向にラビング処
理が施されている。ソース電極44Sの一部に対応する部分には、コンタクトホール(不
図示)が設けられており、コンタクトホール内の導電性膜を介して画素電極36とソース
電極44Sとが接続されている。ゲート電極44G、酸化膜33、半導体層35、一対の
コンタクト層37Sとコンタクト層37Dと、ソース電極44S、ドレイン電極44Dは
、スイッチング素子44に対応し、画素領域毎に設けられている。なお、複数の画素電極
36のそれぞれに対応するそれぞれの領域が、画素領域である。
【0084】
前面基板30Cは、ガラス基板などの基板43の第1の面に設けられた偏光板31Sと
、基板43の第1の面に対向する第2の面上に位置するとともに、それぞれが複数の画素
領域のそれぞれに対応した複数の開口部を有するブラックマトリクス47と、ブラックマ
トリクス47上に形成されたバンク49Bと、バンク49Bによって仕切られた領域に位
置する複数のカラーフィルタ層49Fと、複数のカラーフィルタ層49Fとバンク49B
とを覆うオーバーコート層OCと、オーバコート層OC上に位置するとともに、複数の画
素電極36の全てを覆う対向電極36Cと、対向電極36Cを覆う配向膜41Sと、を備
えている。配向膜41Sには適切な方向にラビング処理が施されている。なお、配向膜4
1Pに施されたラビングの方向と、配向膜41Sに施されたラビングの方向とは、配向膜
41Pと配向膜41Sとの間で液晶分子が例えばTN(Twisted nematic)配向するよう
に、設定されている。
【0085】
素子側基板30Bと前面基板30Cとの間には、配向層41Pと配向層41Sとに接す
るように液晶層30Dが位置する。なお、図12においては、バンク40は取り除かれて
いるが、バンク40を液晶表示装置30内に残してもよい。
【0086】
本実施例では、液晶表示装置30におけるゲート線34の製造方法を説明したが、本実
施例の製造方法が液晶表示装置30のソース線46や保持容量用配線など他の配線に適用
されても、上述の効果と同様の効果が得られる。
【0087】
(実施例1および2の変形例)
実施例1および2において、プラズマ表示装置の製造方法および液晶表示装置の製造方
法をそれぞれ説明した。より具体的には、それぞれの表示装置における配線の製造方法を
説明した。ただし、実施例1および2の製造方法は、プラズマ表示装置および液晶表示装
置以外の電子機器の製造方法に適用されてもよい。具体的には、電子機器における配線で
あって、広幅部と狭幅部とを有する配線の製造方法に上記製造方法を適用すれば、実施例
1および実施例2において説明した効果と同様な効果が得られる。
【0088】
本明細書において「電子機器」とは、プラズマ表示装置、液晶表示装置、エレクトロル
ミネッセンス表示装置、FED(Field Emission display)やSED(Surface-Conducti
on Electron-Emitter Display)を含む電子放出素子を備えた画像表示装置などの表示装
置だけでなく、ICタグやRFID(Radio Frequency Identification)タグなどの無線
タグや、半導体装置なども含む用語である。
【実施例3】
【0089】
本発明をエレクトロルミネッセンス表示装置の製造装置に適用した例を説明する。
【0090】
図13(a)および(b)に示す基体50Aは、後述する製造装置2(図14)による
処理によって、エレクトロルミネッセンス表示装置50となる基板である。基体50Aは
、マトリクス状に配置された複数の被吐出部58R、58G、58Bを有する。
【0091】
具体的には、基体50Aは、支持基板52と、支持基板52上に形成された回路素子層
54と、回路素子層54上に形成された複数の画素電極56と、複数の画素電極56の間
に形成されたバンク60と、を有している。支持基板52は、可視光に対して光透過性を
有する基板であり、例えばガラス基板である。複数の画素電極56のそれぞれは、可視光
に対して光透過性を有する電極であり、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide)電極である
。また、複数の画素電極56は、回路素子層54上にマトリクス状に配置されており、そ
れぞれが画素領域を規定する。そして、バンク60は、格子状の形状を有しており、複数
の画素電極56のそれぞれを囲む。また、バンク60は、回路素子層54上に形成された
樹脂ブラック層60Cと、樹脂ブラック層60C上に位置するレジスト層60Dとからな
る。
【0092】
回路素子層54は、支持基板52上で所定の方向に延びる複数の走査電極と、複数の走
査電極を覆うように形成された絶縁膜62と、絶縁膜62上に位置するともに複数の走査
電極が延びる方向に対して直交する方向に延びる複数の信号電極と、走査電極および信号
電極の交点付近に位置する複数のスイッチング素子64と、複数のスイッチング素子64
を覆うように形成されたポリイミドなどの層間絶縁層65と、を有する層である。それぞ
れのスイッチング素子64のゲート電極64Gおよびドレイン電極64Dは、それぞれ対
応する走査電極および対応する信号電極と電気的に接続されている。層間絶縁層65上に
は複数の画素電極56が位置する。層間絶縁層65には、各スイッチング素子64のソー
ス電極64Sに対応する部位にスルーホール64Vが設けられており、このスルーホール
64V内の導電性膜を介して、スイッチング素子64と、対応する画素電極56と、が接
続されている。また、バンク60に対応する位置にそれぞれのスイッチング素子64が位
置している。つまり、図13(b)の紙面に垂直な方向から観察すると、複数のスイッチ
ング素子64のそれぞれは、バンク60に覆われるように位置している。
【0093】
基体50Aの画素電極56とバンク60とで規定される凹部(画素領域の一部)は、被
吐出部58R、被吐出部58G、被吐出部58Bに対応する。被吐出部58Rは、赤の波
長域の光線を発光する発光層211FRが形成されるべき領域であり、被吐出部58Gは
、緑の波長域の光線を発光する発光層211FGが形成されるべき領域であり、被吐出部
58Bは、青の波長域の光線を発光する発光層211FBが形成されるべき領域である。
【0094】
本実施例の発光層211FR、211FG、211FBは、本発明の「層パターン」の
一例である。
【0095】
図13(b)に示す基体50Aは、X軸方向およびY軸方向で規定される仮想平面と平
行に位置している。そして、複数の被吐出部58R,58G、58Bが形成するマトリク
スの行方向および列方向は、それぞれX軸方向およびY軸方向と平行である。基体50A
において、被吐出部58R、被吐出部58G、および被吐出部58Bは、X軸方向にこの
順番で周期的に並んでいる。一方、被吐出部58R同士はY軸方向に所定の間隔をおいて
1列に並んでおり、また、被吐出部58G同士はY軸方向に所定の間隔をおいて1列に並
んでおり、同様に、被吐出部58B同士はY軸方向に所定の間隔をおいて1列に並んでい
る。
【0096】
被吐出部58R同士のX軸方向に沿った間隔LRXは、ほぼ560μmである。この間
隔は、被吐出部58G同士のX軸方向に沿った間隔LGXと同じであり、被吐出部18B
同士のX軸方向に沿った間隔LBXとも同じである。また、被吐出部58RのX軸方向の
長さはほぼ100μmであり、Y軸方向の長さはほぼ300μmである。被吐出部58G
および被吐出部58Bも被吐出部58Rと同じ大きさを有している。被吐出部同士の上記
間隔および被吐出部の上記大きさは、40インチ程度の大きさのハイビジョンテレビにお
いて、同一色に対応する画素領域同士の間隔に対応する。
【0097】
図14に示す製造装置2は、図13の基体50Aの被吐出部58R,58G、58Bの
それぞれに対して、対応する発光材料を吐出する装置である。製造装置2は、被吐出部5
8Rのすべてに発光材料211Rを塗布する吐出装置200Rと、被吐出部58R上の発
光材料211Rを乾燥させる乾燥装置250Rと、被吐出部58Gのすべてに発光材料2
11Gを塗布する吐出装置200Gと、被吐出部58G上の発光材料211Gを乾燥させ
る乾燥装置250Gと、被吐出部58Bのすべてに発光材料211Bを塗布する吐出装置
200Bと、被吐出部58B上の発光材料Bを乾燥させる乾燥装置250Bと、を備えて
いる。さらに製造装置2は、吐出装置200R、乾燥装置250R、吐出装置200G、
乾燥装置250G、吐出装置200B、乾燥装置250Bの順番に基体50Aを搬送する
搬送装置270も備えている。
【0098】
図15に示す吐出装置200Rは、液状の発光材料211Rを保持するタンク201R
と、チューブ210Rを介してタンク201Rから発光材料211Rが供給される吐出走
査部102と、を備える。吐出走査部102の構成は、実施例1の吐出走査部102(図
3)の構成と同じであるため、同様な構成要素には同一の参照符号を付けるとともに、重
複する説明を省略する。また、吐出装置200Gの構成と吐出装置200Bの構成とは、
どちらも基本的に吐出装置200Rの構造と同じある。ただし、吐出装置200Rにおけ
るタンク201Rの代わりに、吐出装置200Gが発光材料211G用のタンクを備える
点で吐出装置200Gの構成は吐出装置200Rの構成と異なる。同様に、タンク201
Rの代わりに、吐出装置200Bが発光材料201B用のタンクを備える点で吐出装置2
00Bの構成は吐出装置200Rの構成と異なる。
【0099】
製造装置2を用いたエレクトロルミネッセンス表示装置50の製造方法を説明する。ま
ず、公知の製膜技術とパターニング技術とを用いて、支持基板52上に回路素子層54を
形成し、その後、回路素子層54上に複数の画素電極56をマトリクス状に形成する。
【0100】
まず、回路素子層54上および画素電極56上をUV洗浄する。そして、図16(a)
に示すように、回路素子層54上および画素電極56を覆うようにスピンコート法を用い
て、黒顔料が分散された熱硬化型アクリル樹脂(すなわち樹脂ブラック)を塗布する。こ
のことで、回路素子層54上および画素電極56上に樹脂ブラック層60Aを形成する。
さらに樹脂ブラック層60Aの全面を覆うようにフッ素系ポリマーがブレンドされたネガ
型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを塗布することで、樹脂ブラック層60A上に
レジスト層60Bを形成する。なお、本実施例では、回路素子層54および画素電極56
を含む部分を「回路基板」と表記することもある。
【0101】
次に、レジスト層60Bと樹脂ブラック層60Aとをパターニングする。具体的には、
図16(b)に示すように、発光層211FR、211FG、211FBが形成されるべ
き領域に対応する部位に遮光部ABを有するフォトマスクPM3を介して、レジスト層2
4Bに光hνを照射する。そして、所定のエッチング液を用いてエッチングすることで、
光hνが照射されていない部分、すなわち発光層211FR、211FG、211FBに
対応する部分のレジスト層60Bと、対応する樹脂ブラック層60Aとを取り除く。その
ことによって、図16(c)に示すように、後に形成されるべき発光層211FR、21
1FG,211FBを囲む形状を有する樹脂ブラック層60Cとレジスト層60Dとが、
回路基板上に得られる。
【0102】
このように、回路基板上に位置する樹脂ブラック層60Cと樹脂ブラック層60C上に
位置するレジスト層60Dとを形成することで、樹脂ブラック層60Cとレジスト層60
Dとによって区画された領域(つまり被吐出部58R、58G、58B)を前記基板上に
形成する。本実施例では、樹脂ブラック層60Cが本発明の「第1の層」に対応し、レジ
スト層60Dが発明の「第2の層」に対応する。
【0103】
本明細書では、このような形状を有する樹脂ブラック層60Cと、樹脂ブラック層60
C上に位置するレジスト層60Dとを合わせて、バンク60と表記することもある。この
表記によれば、樹脂ブラック層60Cとレジスト層60Dとを含むバンク60を形成する
ことで、バンク60によって区画された領域、すなわち被吐出部58R、58G、58B
が回路基板上に形成される。
【0104】
被吐出部58R,58G、58Bにおける画素電極56の上に、対応する正孔輸送層5
7R、57G、57Bを形成してもよい。正孔輸送層57R、57G、57Bが、画素電
極上56と、後述の発光層211RF、211GF、211BFと、の間に位置すれば、
エレクトロルミネッセンス表示装置の発光効率が高くなる。画素電極56の上に正孔輸送
層57R、57G、57Bを設ける場合には、正孔輸送層57R、57G、57Bと、バ
ンク60と、によって規定された凹部が、被吐出部58R、58G、58Bに対応する。
【0105】
なお、正孔輸送層57R、57G、57Bをインクジェット法により形成することも可
能である。つまり、吐出装置200を用いて、正孔輸送層37R、37G、37Bを被吐
出部58R,58G、58Bに設けてもよい。この場合、正孔輸送層57R、57G、5
7Bを形成するための材料を含む溶液を各画素領域ごとに所定量塗布し、その後、乾燥さ
せることにより正孔輸送層57R、57G、57Bを形成することができる。
【0106】
被吐出部58R,58G、58Bを有する基体50Aは、搬送装置270によって、吐
出装置200Rのステージ106に運ばれる。そして、図16(d)に示すように、吐出
装置200Rは、被吐出部58Rのすべてに発光材料211Rの層が形成されるように、
ヘッド114から発光材料211Rを吐出する。基体50Aの被吐出部58Rのすべてに
発光材料211Rの層が形成された場合には、搬送装置270が基体50Aを乾燥装置2
50R内に位置させる。そして、被吐出部58R上の発光材料211Rを完全に乾燥させ
ることで、被吐出部58R上に発光層211FRを得る。
【0107】
次に搬送装置270は、基体50Aを吐出装置200Gのステージ106に位置させる
。そして、吐出装置200Gは、被吐出部58Gのすべてに発光材料211Gの層が形成
されるように、ヘッド114から発光材料Gを吐出する。基体50Aの被吐出部58Gの
すべてに発光材料211Gの層が形成された場合には、搬送装置270が基体50Aを乾
燥装置250G内に位置させる。そして、被吐出部58G上の発光材料Gを完全に乾燥さ
せることで、被吐出部58G上に発光層211FGを得る。
【0108】
次に搬送装置270は、基体50Aを吐出装置200Bのステージ106に位置させる
。そして、吐出装置200Bは、被吐出部58Bのすべてに発光材料211Bの層が形成
されるように、ヘッド114から発光材料Bを吐出する。基体50Aの被吐出部58Bの
すべてに発光材料Bの層が形成された場合には、搬送装置270が基体50Aを乾燥装置
250B内に位置させる。そして、被吐出部58B上の発光材料211Bを完全に乾燥さ
せることで、被吐出部58B上に発光層211FBを得る。
【0109】
本実施例では、液状の発光材料211R、211G、211Bに対して、レジスト層6
0Dは撥液性を呈する。さらに、液状の発光材料211R、211G、211Bに対する
樹脂ブラック層60Cの撥液性は、発光材料211R、211G、211Bに対するレジ
スト層60Dの撥液性よりも低い。むしろ、樹脂ブラック層60Cは、液状の発光材料2
11R、211G、211Bに対して親液性を呈する。これらの理由は、レジスト層60
Dにはフッ素ポリマーがブレンドされており、一方、樹脂ブラック層60Cはフッ素系ポ
リマーを含有しないからである。一般に、フッ素を含む樹脂の表面は、フッ素を含まない
樹脂の表面よりも、上記分散媒を含む配線材料に対して高い撥液性を呈する。一方、フッ
素を含まない樹脂の多くは、上記液状の配線材料に対して親液性を示す。
【0110】
レジスト層60Dが相対的に高い撥液性を呈するため、被吐出部58R、58G、58
Bに着弾した直後の発光材料の液滴は、レジスト層60Dを超えて被吐出部58R、58
G、58Bの外へ流れず、樹脂ブラック層60Cの方に流れ落ちる。さらに、所望の撥液
性を示す層と親液性を示す層とからバンク60が形成されているため、バンクを撥液化ま
たは親液化するための表面改質工程が不要になる。例えばテトラフルオロメタンを処理が
ガスとするプラズマ処理や酸素プラズマ処理が不要になる。
【0111】
次に、図17に示すように発光層211FR,211FG、211FB、およびバンク
60を覆うように対向電極66を設ける。対向電極66は陰極として機能する。その後、
封止基板68と基体50Aとを、互いの周辺部で接着することで、図17に示すエレクト
ロルミネッセンス表示装置50が得られる。なお、封止基板68と基体50Aとの間には
不活性ガス69が封入されている。
【0112】
エレクトロルミネッセンス表示装置50において、発光層211FR、211FG、2
11FBから発光した光は、画素電極56と、回路素子層54と、支持基板52と、を介
して射出する。このように回路素子層54を介して光を射出するエレクトロルミネッセン
ス表示装置は、ボトムエミッション型の表示装置と呼ばれる。
【実施例4】
【0113】
上記実施例において、第1の層、第2の層を積層した構造による隔壁の例を示したが、
第1の層のみにより形成することも可能である。
【0114】
すなわち、第1の層のみで隔壁を形成し、隔壁の親液性/撥液性の度合いをコントロー
ルすることにより、前述の実施例1乃至3の構造と類似する構造を得ることができる。
【0115】
例えば、撥液処理する際、隔壁の下層部分を親液性が高くなるように、隔壁の上層部分
を下層部分よりも撥液性が高くなるように(すなわち撥液性とする)、処理することによ
り達成することができる。
【0116】
従って、1層の隔壁により形成したとしても、幅の広い領域へ液滴を塗布することによ
り、幅の狭い領域へ塗布した液が浸透し、線幅の狭い領域へも液を充填させることができ
る。隔壁の材料は前述に示したような材料を用いることができる。
【0117】
更には、線幅の広い領域を塗布する際は、線幅方向に複数滴の液滴を滴下することによ
り描画することもできる。このような描画方法をとることにより、配線幅が広い領域への
塗布が早くできるとともに、充填も早くできる。更に、充填を早く行うことができるため
、線幅の狭い領域への液の充填も早く行うことができる。
【0118】
また、膜厚を厚く形成したい場合は、前述のような描画を複数回行うことができる。具
体的には、図示されているような描画を複数回行うこと、更には前述のように線幅方向に
複数的の液滴が滴下されるような描画方法を複数回行うこと、ができる。
【0119】
以上のような描画方法は前述に記載の実施例1乃至3のいずれにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】(a)は実施例1のプラズマ表示装置における配線の模式図であり、(b)はアドレス電極の模式図。
【図2】実施例1の製造装置を示す模式図。
【図3】実施例1の吐出装置を示す模式図。
【図4】実施例1のキャリッジを示す模式図。
【図5】実施例1のヘッドを示す模式図。
【図6】(a)および(b)は図5のヘッドにおける吐出部を示す模式図。
【図7】吐出装置における制御部の機能ブロック図。
【図8】(a)〜(h)は実施例1のアドレス配線の製造方法を示す模式図であり、(a)〜(e)は(f)のA−A’断面を示す図。
【図9】実施例1のプラズマ表示装置を示す模式図。
【図10】(a)は実施例2の液晶表示装置における配線の模式図であり、(b)はゲート線の模式図。
【図11】(a)〜(h)は実施例2のゲート線の製造方法を示す模式図であり、(a)〜(e)は(f)のB−B’断面を示す図。
【図12】実施例2の液晶表示装置を示す模式図。
【図13】(a)および(b)は実施例3の基体の断面および平面をそれぞれ示す模式図。
【図14】実施例3の製造装置を示す模式図。
【図15】実施例3の吐出装置を示す模式図。
【図16】(a)〜(d)は、実施例3のゲート線の製造方法を示す模式図。
【図17】実施例3のエレクトロルミネッセンス表示装置を示す模式図。
【符号の説明】
【0121】
1,2…製造装置、10A…基体、10B…背面基板、10C…前面基板、12…支持
基板、14…アドレス電極、14A…広幅部、14B…狭幅部、14D…アドレス電極駆
動回路、18…被吐出部、18A…広幅領域、18B…狭幅領域、16…誘電体ガラス層
、20…バンク、20A,20C…樹脂ブラック層、20B,20D…レジスト層、21
…隔壁、22…MgO(酸化マグネシウム)保護層、24…誘電体ガラス層、25…表示
電極、26…表示スキャン電極、28…ガラス基板、29…放電ガス、30…液晶表示装
置、30A…基体、30B…素子側基板、30C…前面基板、30D…液晶層、31P,
31S…偏光板、33…酸化膜、34…ゲート線、34A…広幅部、34B…狭幅部、3
4D…ゲート線駆動回路、35…半導体層、36…画素電極、36C…対向電極、37S
,37D…コンタクト層、38A…広幅領域、38B…狭幅領域、39…保護膜、40…
バンク、40A,40C…樹脂ブラック層、40B,40D…レジスト層、41P,41
S…配向膜、42…ゲート絶縁膜、43…基板、44…スイッチング素子、44G…ゲー
ト電極、44S…ソース電極、44D…ドレイン電極、44V…コンタクトホール、45
…層間絶縁層、46…ソース線、46D…ソース線駆動回路、47…ブラックマトリクス
、49B…バンク、49F…カラーフィルタ層、50A…基体、50…エレクトロルミネ
ッセンス表示装置、52…支持基板、54…回路素子層、56…画素電極、57R,57
G,57B…正孔輸送層、58R,58G,58B…被吐出部、60…バンク、60A,
60C…樹脂ブラック層、60B,60D…レジスト層、62…絶縁膜、64…スイッチ
ング素子、65…層間絶縁層、64G…ゲート電極、64S…ソース電極、64D…ドレ
イン電極、64V…スルーホール、66…対向電極、68…封止基板、69…不活性ガス
、101…タンク、102…吐出走査部、103…キャリッジ、104…第1位置制御装
置、108…第2位置制御装置、100…吐出装置、106…ステージ、110…チュー
ブ、111…配線材料、112…制御部、114…ヘッド、116…ノズル列、118…
ノズル、126…振動板、128…ノズルプレート、131…孔、129…液たまり、1
22…隔壁、120…キャビティ、124…振動子、124C…ピエゾ素子、124A,
124B…電極、127…吐出部、130…供給口、150…乾燥装置、160…オーブ
ン、170…搬送装置、211R,211G,211B…発光材料、211FR,211
FG,211FB…発光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に位置する第1の層と前記第1の層上に位置する第2の層とを形成することで、
前記第1の層と前記第2の層とによって区画された領域を前記基板上に一度に形成するス
テップ(a)と、
吐出装置の吐出部から前記領域に液状の材料を吐出するステップ(b)と、
を含み、
前記液状の材料に対する前記第1の層の撥液性は、前記材料に対する前記第2の層の撥
液性よりも低い、
層パターン製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の層パターン製造方法であって、
前記ステップ(a)は、前記領域が、第1の幅を有する第1の部分と前記第1の幅より
も狭い第2の幅を有する第2の部分と、を有するように、前記第1の層と前記第2の層を
形成するステップ(c)を含み、
前記ステップ(b)は、前記第1の部分にのみ前記材料を吐出するステップ(d)を含
む、
層パターン製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の層パターン製造方法であって、
前記第1の層は、前記液状の材料に対して親液性を有する、
層パターン製造方法。
【請求項4】
基板上に位置する第1の層と前記第1の層上に位置する第2の層とを形成することで、
前記第1の層と前記第2の層とによって区画された領域を前記基板上に一度に形成するス
テップ(a)と、
吐出装置の吐出部から前記領域に液状の配線材料を吐出するステップ(b)と、
を含み、
前記液状の配線材料に対する前記第1の層の撥液性は、前記配線材料に対する前記第2
の層の撥液性よりも低い、
配線製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の配線製造方法であって、
前記ステップ(a)は、前記領域が、第1の幅を有する第1の部分と前記第1の幅より
も狭い第2の幅を有する第2の部分と、を有するように、前記第1の層と前記第2の層を
形成するステップ(c)を含み、
前記ステップ(b)は、前記第1の部分にのみ前記配線材料を吐出するステップ(d)
を含む、
配線製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の配線製造方法であって、
前記第1の層は、前記液状の配線材料に対して親液性を有する、
配線製造方法。
【請求項7】
基板上に位置する第1の層と前記第1の層上に位置する第2の層とを形成することで、
前記第1の層と前記第2の層とによって区画された領域を前記基板上に一度に形成するス
テップ(a)と、
吐出装置の吐出部から前記領域に液状の材料を吐出するステップ(b)と、
を含み、
前記液状の材料に対する前記第1の層の撥液性は、前記材料に対する前記第2の層の撥
液性よりも低い、
電子機器の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の電子機器の製造方法であって
前記ステップ(a)は、前記領域が、第1の幅を有する第1の部分と前記第1の幅より
も狭い第2の幅を有する第2の部分と、を有するように、前記第1の層と前記第2の層を
形成するステップ(c)を含み、
前記ステップ(b)は、前記第1の部分にのみ前記材料を吐出するステップ(d)を含
む、
電子機器の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の電子機器の製造方法であって、
前記第1の層は、前記液状の材料に対して親液性を有する、
電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−60600(P2008−60600A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273501(P2007−273501)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【分割の表示】特願2003−327997(P2003−327997)の分割
【原出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】