説明

嵌合の詰まり状態を修正する嵌合装置

【課題】嵌合ワークの姿勢を被嵌合ワークに嵌合可能になるように短時間で適切に修正する。
【解決手段】ロボットにより把持される嵌合ワーク(60)を、力制御によって被嵌合ワーク(50)に嵌合する嵌合装置(10)は、嵌合ワークの制御点に働く力とモーメントとを検出する力検出手段(3)と、嵌合時に、嵌合ワークと被嵌合ワークとの間に詰まりが生じているか否かを判定する判定手段(12)と、判定手段により詰まりが生じていると判定された場合には、嵌合ワークが被嵌合ワークに進入した距離に応じて制御点の位置を変更して、嵌合方向に対して垂直な方向において嵌合ワークを被嵌合ワークに押付け、それにより、変更後の前記制御点に基づいて前記嵌合ワークの姿勢を修正する変更手段(13)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットにより把持される嵌合ワークを、力制御により被嵌合ワークに嵌合する嵌合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想的なコンプライアンスを構成することによりRCC(remotecenter compliance)を模した制御則を用いて嵌合作業を行うことが従来より行われている。特許文献1には、ロボットのハンドにより把持された棒状の嵌合ワークを被嵌合ワークの嵌合穴に嵌合させる一つの手法が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される手法によれば、嵌合ワークを被嵌合ワークに押付け、その際に作用する力およびモーメントを制御周期毎に検出し、それらが目標量になるように制御している。
【0004】
さらに、特許文献2には、ディスクの穴をスピンドルに嵌合させる技術が開示されている。特許文献2によれば、ディスクの穴とスピンドルとの間に大きなずれが嵌合方向に対して垂直な方向に存在する場合には、嵌合方向の力に加えて、嵌合方向に対して垂直な方向の力を発生させて、ディスクを斜方向に移動させる。これにより、ずれを解消しつつディスクがスピンドルに嵌合する。
【特許文献1】特公平4−43744号公報
【特許文献2】特開平4−25325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1において嵌合ワークが被嵌合ワークに二点で嵌合する場合を考える。この場合には、二点に作用する力は互いに反対方向の成分を含んでいるので、これら二点に作用する力の合力は、それぞれの力よりも小さくなる。従って、合力から得られるモーメントも小さくなる。このモーメントがロボットの振動などによる外乱よりも小さい場合には、モーメントに基づいて嵌合ワークの姿勢を変更するのが困難な事態が生じうる。従って、嵌合ワークの姿勢を修正するのに必要とされる時間が大幅に延びることになる。さらに、二点に作用する力が同じ大きさで且つ互いに反対方向である場合には、モーメントがゼロになり、この場合には、時間をかけても嵌合ワークの姿勢を適切に変更するのは不可能である。
【0006】
また、特許文献2の技術を棒状の嵌合ワークを被嵌合ワークの嵌合穴に嵌合させるのに適用することが考えられる。しかしながら、特許文献2には、嵌合方向の力とは別の力を、嵌合方向に対して垂直などの方向に発生させるかまでは開示されていない。従って、適切でない方向の力を嵌合ワークに作用させ、かえって嵌合ワークの位置/姿勢誤差が大きくなることにもなりかねない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、嵌合ワークと被嵌合ワークとの間に詰まりが生じた場合に、嵌合ワークの姿勢を短時間で適切に修正することのできる、嵌合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、ロボットにより把持される嵌合ワークを、力制御によって被嵌合ワークに嵌合する嵌合装置において、前記嵌合ワークの制御点に働く力とモーメントとを検出する力検出手段と、嵌合時に、前記嵌合ワークと前記被嵌合ワークとの間に詰まりが生じているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により詰まりが生じていると判定された場合には、前記嵌合ワークが前記被嵌合ワークに進入した距離に応じて前記制御点の位置を変更して、嵌合方向に対して垂直な方向において前記嵌合ワークを前記被嵌合ワークに押付け、それにより、変更後の前記制御点に基づいて前記嵌合ワークの姿勢を修正する変更手段とを具備した、嵌合装置が提供される。
【0009】
すなわち1番目の発明においては、制御点を変更すると共に、嵌合ワークを嵌合方向に対して垂直な方向に押付けるようにしている。これにより、嵌合ワークは新たな制御点回りに回動するので、嵌合ワークの姿勢を嵌合に適した位置に修正することができる。また、制御点を変更しているので、嵌合前の初期の位置/姿勢誤差が大きい場合であっても、これを修正することが可能である。なお、制御点が嵌合ワークの底面の中心に位置決めされる場合には、制御点の位置を嵌合ワークの進入距離の半分だけ嵌合ワークの中心線方向に変更するのが好ましい。
【0010】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記判定手段は、前記力検出手段により検出された力とモーメントとに基づいて、詰まりが生じているか否かを判定する。
すなわち2番目の発明においては、検出されたモーメントが所定の値よりも小さい場合には、嵌合ワークが回転できないために詰まりが生じたと判定することができる。すなわち、比較的簡易な手法により、詰まりを判定できる。
【0011】
3番目の発明によれば、1番目の発明において、さらに、前記嵌合ワークの位置を所定周期毎に検出する位置検出手段を具備し、前記判定手段は、前記位置検出手段により検出された前記嵌合ワークの位置の嵌合方向における時間変化に基づいて、詰まりが生じているか否かを判定する。
すなわち3番目の発明においては、所定周期毎に検出された位置の時間変化が所定の値よりも小さい場合には、嵌合ワークが移動していないので詰まりが生じたと判定することができる。すなわち、比較的簡易な手法により、詰まりを判定できる。
【0012】
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、前記判定手段により詰まりが生じていると判定された場合には、前記変更手段は、前記嵌合ワークを嵌合方向に対して垂直な少なくとも一つの方向に押付けるようにした。
すなわち4番目の発明においては、嵌合ワークを押付けた方向に対して垂直な方向回りにおける嵌合ワークの位置/姿勢誤差を修正できる。なお、嵌合ワークを押付けた方向の反対方向にも嵌合ワークを押付けて位置/姿勢誤差をさらに修正してもよい。さらに、嵌合ワークを押付けた方向および嵌合方向の両方に対して垂直な方向に、嵌合ワークをさらに押付けるのが好ましい。
【0013】
5番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、前記判定手段により詰まりが生じていると判定された場合には、前記変更手段は、前記嵌合ワークの嵌合方向に対して垂直な方向への押付作用を前記嵌合ワークの周方向に順次行うようにした。
すなわち5番目の発明においては、嵌合ワークの押付動作を回転させているので、あらゆる方向における位置/姿勢誤差を容易に修正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づく嵌合装置の略図である。図1に示される嵌合装置10は、ロボット1とロボット制御ユニット11とを含んでいる。ロボット1は、六軸構成の垂直多間接型ロボットである。ロボット1のロボットアーム2の先端には、ハンド4が取付けられている。図示されるように、ロボットアーム2とハンド4との間には、力センサ3が配置されている。力センサ3は嵌合ワーク60の制御点P(後述する)に作用する力および/またはモーメントを検出する。
【0015】
ロボット1および力センサ3はロボット制御ユニット11に接続されている。ロボット制御ユニット11はデジタルコンピュータであり、嵌合装置10のロボット1全体の動作を制御する。また、ロボット制御ユニット11は、嵌合時に、後述する嵌合ワーク60と被嵌合ワーク50との間に詰まりが生じているか否かを判定する判定手段12を含んでいる。
【0016】
さらに、ロボット制御ユニット11は変更手段13を含んでいる。変更手段13は、判定手段12により詰まりが生じていると判定された場合には、嵌合ワーク60が被嵌合ワーク50に進入した距離に応じて嵌合ワーク60の制御点の位置を変更して、嵌合方向に対して垂直な方向において嵌合ワーク60を被嵌合ワーク50に押付けるようにする。
【0017】
なお、図面には示さないものの、ロボット制御ユニット11は、所定の手法により作成された位置指令に基づいてロボット1に対して位置指令を実行する位置制御部を有している。さらに、ロボット制御ユニット11は、力センサ3により検出された力検出値と所定の手法により作成された位置指令または力指令とに基づいて、ロボット1に対して力指令を実行する力制御部を有している。
【0018】
図1においては、円柱型の嵌合ワーク60がロボット1のハンド4により把持されている。そして、嵌合ワーク60に嵌合可能な嵌合穴51を備えた被嵌合ワーク50が嵌合ワーク60に対面して配置されている。図1においては、被嵌合ワーク50は保持具32によって支持台30上の所定の位置に固定されている。なお、図示されるように、被嵌合ワーク50の嵌合穴51の中心方向(嵌合方向)をZ軸とし、このZ軸に垂直な面内にX軸およびY軸を配置する。
【0019】
図2は嵌合ワークおよび被嵌合ワークの拡大断面図である。図示されるように、被嵌合ワーク50に形成された嵌合穴51の端部には、面取部52が形成されている。図2に示される実施形態においては、面取部52の角度αは45°である。ただし、角度αは45°に限定されるものではなく、角度αの値が異なっていてもよい。また、嵌合ワーク60の底面における中心を制御点Pとして設定する。この制御点Pにおいて嵌合ワーク60に作用する力およびモーメントが算出され、またこの制御点Pは、本発明に基づく制御を行う際に嵌合ワーク60の位置/姿勢を修正するときの基準点となる。
【0020】
以下、本発明に基づく嵌合装置10の嵌合作業を説明する。はじめに、位置制御部による位置制御下においてロボット1のハンド4により嵌合ワーク60を把持する。次いで、把持された嵌合ワーク60を被嵌合ワーク50の嵌合穴51手前まで移動させる。その後、位置制御部による位置制御から力制御部による力制御に切り換える。以下の説明は、力制御下で行われるものとする。
【0021】
図3は、嵌合装置の動作を示すフローチャートである。次いで、図3のステップ100において、嵌合ワーク60を嵌合方向、つまりZ方向に押付ける。そして、ステップ101において、以下の式(1)から式(5)に示される計算を所定の制御周期毎に行い、嵌合ワーク60を制御する。
【数1】

これら式(1)から式(5)において、νDX、νDY、νDZ、ωDX、ωDY、ωDZはXYZ各方向における速度指令値およびそのまわりの角速度指令値である。F、F、F、M、Mは各方向における力およびそのまわりのモーメントの検出値である。さらに、G、G、G、G、Gは各方向における力制御ゲインを示し、Fは目標力、νは目標速度を表す。
【0022】
図4(a)および図4(b)は嵌合方向に押付ける際の嵌合ワークおよび被嵌合ワークの拡大断面図である。嵌合ワーク60を嵌合方向に押付けるときに、嵌合ワーク60の一部分が被嵌合ワーク50に接触すると、モーメントMが発生する(図4(a))。このモーメントMにより、嵌合ワーク60の位置/姿勢誤差が矢印MAで示される方向に修正される。この修正は、従来技術より行われている手法であり、嵌合ワーク60を嵌合方向に押付けることにより実施される。
【0023】
そして、ステップ102において、嵌合ワーク60が嵌合穴51の所定の深さまで進入したか否かを判定する。このことは、ロボット1のアームを駆動するサーボモータに取付けられたエンコーダ(図示しない)に基づいて行われる。嵌合ワーク60が所定の深さまで進入している場合には、嵌合作業が完了したと判断して処理を終了する。
【0024】
一方、所定深さまで進入していない場合には、ステップ103に進み、ロボット制御ユニット11の判定手段12が、嵌合ワーク60が被嵌合ワーク50に詰まったか否かを判定する。判定手段12は、以下の式(6)から式(10)に基づいて嵌合ワーク60の詰まりを判定する。
【数2】

ここで、T、Tは、それぞれ力およびモーメントが目標値に近づいたこと判断するための閾値である。また、ロボットの振動等に起因する外乱により詰まりの判定が困難である場合には、検出された力およびモーメントのデータにフィルタをかけてもよい。
【0025】
さらに、以下の式(11)から式(15)に基づいて、嵌合ワーク60の詰まりを判定してもよい。
【数3】

ここで、ν、ν、ν、ω、ωはロボットアームに装着したアクチュエータ位置から算出した各方向での実際の速度および角速度である。Tν、Tωはそれぞれ詰まりを判定するための速度および角速度の閾値である。外乱により正確な判定が困難な場合には、実際の速度および角速度にフィルタをかけてもよい。さらに、エンコーダにより嵌合ワーク60の位置を制御周期毎に検出し、嵌合ワーク60の位置の嵌合方向における時間変化が所定値よりも小さい場合に、詰まりが生じたと判定するようにしてもよい。
【0026】
ステップ103において、詰まりが発生していると判定された場合にはステップ104に進み、嵌合ワーク60の嵌合方向への押付を停止する。なお、詰まりが発生していないと判定された場合には、ステップ100に戻り、処理を繰返す。
【0027】
次いで、図3に示されるステップ105において、ロボット制御ユニット11の変更手段13が嵌合ワーク60の制御点Pの位置を変更する。図5は、嵌合ワークおよび被嵌合ワークの他の拡大断面図である。図5においては、嵌合ワーク60の中心線K1が嵌合穴51の嵌合方向Zと角度θをなした状態で、嵌合ワーク60が被嵌合ワーク50に詰まっている。また、図5においては、嵌合ワーク60は距離D1だけ嵌合穴51内に進入している。
【0028】
変更手段13によって、制御点Pの位置は嵌合ワーク60の底面の中心から中心線K1に沿って上方に移動される。制御点Pの移動距離は、ゼロよりも大きくて進入距離D1よりも小さい。好ましくは、制御点Pの移動距離は進入距離D1の半分である。この場合には、嵌合方向に対して垂直ないずれの方向に嵌合ワーク60を被嵌合ワーク50に対して押付けたとしても、ほぼ同じ大きさのモーメントが嵌合ワーク60に作用して、嵌合ワーク60の位置/姿勢誤差を同程度に修正できる。
【0029】
図5から分かるように、厳密にいえば、中心線K1における制御点Pの移動距離は0.5×D1×cosθであるが、実際にはθ≒0であるので、制御点Pの移動距離として、0.5×D1を採用してよい。
【0030】
次いで、図3のステップ106およびステップ107において、嵌合ワーク60を嵌合方向に対して垂直に被嵌合ワーク50に押付ける。図6(a)は、嵌合ワーク60の端面図である。図6(a)において矢印A1で示されるように、はじめに、嵌合ワーク60を被嵌合ワーク50に対して+X方向に押付ける。
【0031】
このときには、以下の式(16)〜式(20)に基づいて嵌合ワーク60を制御する。
【数4】

【0032】
図7(a)は姿勢修正時における嵌合ワークおよび被嵌合ワークの拡大断面図である。本発明においては、制御点Pの位置を制御点P’まで上方に移動させているので、嵌合ワーク60に対してモーメントが作用しやすい状態になっている。従って、+X方向への押付動作により、図示される力Fが嵌合ワーク60に作用して、制御点P’回りのモーメントMが嵌合ワーク60に作用する。これにより、嵌合ワーク60は実線で示される状態から破線で示される状態まで回動し、Y方向回りの位置/姿勢誤差が修正される。
【0033】
すなわち本発明においては、制御点Pを制御点P’まで変更しているので、押付動作時にモーメントが確実に作用するようになる。従来技術で説明したように嵌合ワーク60の二点に作用する力が同じ大きさで且つ互いに反対方向である場合であっても、本発明においては、モーメントを作用させて嵌合ワーク60の位置/姿勢誤差を修正できる。
【0034】
そして、図3のステップ108において、以下の式(21)〜式(25)の全てが満たされた場合には、+X方向への押付動作を終了する。
【数5】

これらのうち、式(21)は、押付方向(この場合には+X方向)の力が目標力に近くなったかどうかを表している。式(22)〜式(25)は、嵌合ワーク60の位置/姿勢誤差が修正され力/モーメントが0に近くなったかを表す。
【0035】
ここで、図7(a)等に示されるように嵌合ワーク60の姿勢がずれている場合には、モーメントMが作用するので、式(24)または式(25)は満たされない。そして図7(a)と同様な図8(a)に示されるように嵌合ワーク60の周面が被嵌合ワーク50の嵌合穴51に線接触するようになると、嵌合ワーク60の位置/姿勢誤差は解消する。この場合には、モーメントMが嵌合ワーク60に作用しないようになり、式(24)および式(25)を満たすようになる。
【0036】
これら式(21)〜式(25)が満たされるようになると、嵌合ワーク60のY方向回りの位置/姿勢誤差の修正が完了したと判断する。次いで、図6(a)において矢印A2で示される+Y方向に嵌合ワーク60を押付けて、嵌合ワーク60のX方向回りの位置/姿勢誤差を修正する。この場合にも、前述したのと同様な式に基づいて嵌合ワーク60が制御されると共に、押付動作の終了を判断するのが分かるであろう。
【0037】
その後、図6(a)において矢印A3で示される方向(−X方向)へ嵌合ワーク60を同様に押付け(図7(a)および図8(a)を参照されたい)、さらに、図6(a)において矢印A4で示される方向(−Y方向)へ嵌合ワーク60を同様に押付ける。これにより、嵌合ワーク60のX方向およびY方向回りにおける位置/姿勢誤差が修正される。なお、誤差がX方向回りまたはY方向回りのいずれかの姿勢においてのみ存在する場合であっても、押付動作によって新たな誤差が生じることはない。
【0038】
なお、矢印A1〜矢印A4への押付動作の順番または或る押付方向における押付回数は適宜変更してもよい。さらに、矢印A1および矢印A3のうちのいずれか一方、および矢印A2および矢印A4のうちのいずれか一方のみに方向へ嵌合ワーク60を押付ける場合であっても、嵌合ワーク60のX方向およびY方向回りにおける位置/姿勢誤差を修正することが可能である。
【0039】
全ての方向において嵌合ワーク60位置/姿勢誤差の修正が完了すると、ステップ100に戻る。そして、嵌合ワーク60を嵌合方向にさらに押付け、嵌合ワーク60が所定の深さに挿入されるまで処理を繰返す。つまり、嵌合ワーク60の詰まりが再び生じる度毎に、嵌合ワーク60の被嵌合ワーク50に対する押付作用を実施する。これにより、嵌合ワーク60を被嵌合ワーク50に適切に嵌合させられる。
【0040】
このように、本発明においては、制御点Pを制御点P’まで変更しているので、押付動作時にモーメントが嵌合ワーク60に確実に作用して、嵌合ワーク60の位置/姿勢誤差を修正することが可能である。さらに、上記した理由により、位置/姿勢誤差の修正に要する時間は短くて済む。さらに、嵌合前の初期許容位置/姿勢誤差が比較的大きい場合であっても、嵌合ワーク60を被嵌合ワーク50に嵌合させられるのが分かるであろう。
【0041】
図6(b)等に示される別の実施形態においては、押付作用を嵌合ワーク60の周方向に順次行うようにしてもよい。この場合には、以下の式(26)から式(31)に基づいて嵌合ワーク60を制御し、それにより、嵌合ワーク60の押付動作を一回転させる。
【数6】

なお、式(31)の文字tは、押付方向の変更を開始してからの時間を表す。つまり、これらの式においては、嵌合ワーク60の押付作用は20秒かけて嵌合ワーク60の周面に沿って順次行われる。この時間が経過したら嵌合方向に対して垂直な方向への押付動作を終了する。
【0042】
なお、式(26)〜式(30)は、+X方向から開始して周方向に順次押付ける場合を表しているが、他の方向から開始することも可能である。また、嵌合ワーク60の周面に沿った順次の押付作用の時間、押付作用の移動方向などを適宜変更してよいのは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に基づく嵌合装置の略図である。
【図2】嵌合ワークおよび被嵌合ワークの拡大断面図である。
【図3】本発明に基づく嵌合装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】(a)嵌合方向に押付ける際の嵌合ワークおよび被嵌合ワークの拡大断面図である。(b)嵌合方向に押付ける際の嵌合ワークおよび被嵌合ワークの他の拡大断面図である。
【図5】嵌合ワークおよび被嵌合ワークの他の拡大断面図である。
【図6】(a)嵌合ワークの端面図である。(b)嵌合ワークの他の端面図である。
【図7】(a)姿勢修正時における嵌合ワークおよび被嵌合ワークの拡大断面図である。(b)姿勢修正時における嵌合ワークおよび被嵌合ワークの他の拡大断面図である。
【図8】(a)姿勢修正時における嵌合ワークおよび被嵌合ワークの拡大断面図である。(b)姿勢修正時における嵌合ワークおよび被嵌合ワークの他の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ロボット
2 ロボットアーム
3 力センサ(力検出手段)
4 ハンド
10 嵌合装置
11 ロボット制御ユニット
12 判定手段
13 変更手段
30 支持台
32 保持具
50 被嵌合ワーク
51 嵌合穴
52 面取部
60 嵌合ワーク
P、P’ 制御点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットにより把持される嵌合ワークを、力制御によって被嵌合ワークに嵌合する嵌合装置において、
前記嵌合ワークの制御点に働く力とモーメントとを検出する力検出手段と、
嵌合時に、前記嵌合ワークと前記被嵌合ワークとの間に詰まりが生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により詰まりが生じていると判定された場合には、前記嵌合ワークが前記被嵌合ワークに進入した距離に応じて前記制御点の位置を変更して、嵌合方向に対して垂直な方向において前記嵌合ワークを前記被嵌合ワークに押付け、それにより、変更後の前記制御点に基づいて前記嵌合ワークの姿勢を修正する変更手段とを具備した、嵌合装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記力検出手段により検出された力とモーメントとに基づいて、詰まりが生じているか否かを判定する、請求項1に記載の嵌合装置。
【請求項3】
さらに、前記嵌合ワークの位置を所定周期毎に検出する位置検出手段を具備し、
前記判定手段は、前記位置検出手段により検出された前記嵌合ワークの位置の嵌合方向における時間変化に基づいて、詰まりが生じているか否かを判定する、請求項1に記載の嵌合装置。
【請求項4】
前記判定手段により詰まりが生じていると判定された場合には、前記変更手段は、前記嵌合ワークを嵌合方向に対して垂直な少なくとも一つの方向に押付けるようにした、請求項1から3のいずれか一項に記載の嵌合装置。
【請求項5】
前記判定手段により詰まりが生じていると判定された場合には、前記変更手段は、前記嵌合ワークの嵌合方向に対して垂直な方向への押付作用を前記嵌合ワークの周方向に順次行うようにした請求項1から3のいずれか一項に記載の嵌合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58218(P2010−58218A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225854(P2008−225854)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】