説明

工事規制器材

【課題】カラーコーンよりも安全性、機能性、操作性、携帯性を向上させた新たな工事規制器材を提供すること。
【解決手段】工事規制部材1は底板5と側板3で構成される。側板3は、底板5から上方に設けられ、弾性を有する材質で形成される。底板5の、側板3との接続部である凸部6も弾性を有する。側板3の前面13には反射材7が設けられ、反射部を形成する。側板3の上部には穴部が設けられ、取っ手9が形成される。工事規制器材1は、外力により側板3が倒れるように変形し、外力の解放後に形状が復元し元の位置に戻る。例えば、路面17に設置された工事規制器材1は走行する車両によって踏まれた場合、側板3や凸部6が倒れるように変形する。そして、車両の通過後に側板3等が起き上がり、元の位置に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の工事規制に用いられる工事規制器材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や工事現場等において、進入禁止、駐車禁止等の各種の工事規制に使用されている最も使用頻度の高い規制器材は、カラーコーンである。一般的なカラーコーンでは、底板上に錐状のカラーコーン本体が設けられる。特許文献1には、このようなカラーコーンの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、底板上に錐状の本体を設置した従来の一般的なカラーコーンは、(1)重心が高く、勾配の大きな箇所に設置した場合や強風時に転倒する場合がある。(2)通行車両が接触すると転倒し、二次被害を誘発する。(3)場合によっては、ダンプ等のタイヤハウスへの巻き込まれや持ち去りが発生する。(4)反射面が曲面であることから、反射材の反射効率が悪い。(5)設置・撤去時に掴む先端が持ちにくく滑りやすく、供用車線へ落下すると二次被害を誘発する。(6)積み重ねが可能であるが狭い規制資器材車の荷台の中で嵩張る。(7)人力で運搬する場合も両手が必要で数個しか持ち運びできない。(8)反射材が汚損した場合に視認しにくくなる等の課題を有している。
【0005】
特許文献1記載のカラーコーンは、先端に把持用の凹部を設け運搬作業を容易にしたものであるが、カラーコーンにはその他様々な課題があることは上記したとおりである。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、従来のカラーコーンよりも安全性、機能性、操作性、携帯性を向上させた新たな工事規制器材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明は、底板部と、反射部を有する側板部とにより略L字状に形成され、前記側板部は外力により倒れ、前記外力の解放により元の位置に戻ることを特徴とする工事規制器材である。
【0008】
本発明の工事規制器材は、底板部に側板部を設けて略L字状に形成され、側板部が外力により倒れても外力の解放後に元の位置に戻るため、通行車両が接触しても衝撃を受け流し、車両通過後に元の位置に復帰する。そのため、車両が接触しても工事規制器材は転倒し転がらず、二次被害を誘発しない。また、車両への巻き込まれや持ち去りも防止できる。また、底板部を重ねて効率的に積み重ねができ、省スペース化が可能である。さらに、上部を側板部のみで構成するので、重心を低くすることが容易であり、勾配の大きな箇所に設置した場合や強風時にも転倒しにくい。加えて、平板状の側板部に反射部を設けるので、従来のようにコーンの曲面を反射部とする場合に比べ、反射効率が良くなる。
【0009】
また、前記側板部が透光部を有し、前記底板部に発光装置が設けられ、前記発光装置から放射される光が前記透光部を照射するようにしてもよい。これにより、工事規制部材の発光・点滅が可能となり、視認性をさらに向上させ、多少汚損した場合でも視認性を保つことができるので、工事規制器材の設置による安全性を高めることが可能になる。
【0010】
前記側板部と、前記底板部と前記側板部の接続部の少なくともいずれかが弾性を有するようにすることが望ましい。これにより、外力の解放後に側板部が確実に元の位置に戻るようになる。
【0011】
また、前記側板部の上部には、穴部が形成される。これにより、穴部を掴んで持ち運びでき、誤って落としたりすることがなくなる。さらに、複数の工事規制器材の穴部を重ねて持つことで、人力で運搬する場合に片手で複数個を持ち運ぶことができ、運搬作業も効率化する。
【0012】
前記底板部の底面には、必要に応じてすべり止めが設けられる。これにより、設置時の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のカラーコーンよりも安全性、機能性、操作性、携帯性を向上させた新たな工事規制器材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】工事規制器材1を示す図
【図2】複数の工事規制器材1を積み重ねた状態を示す図
【図3】工事規制器材1aを示す図
【図4】工事規制器材1bを示す図
【図5】工事規制器材1cを示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、工事規制器材1の概要を示す図である。図1の(a)図は、工事規制器材1の斜視図である。図1の(b)図は、路面17に設置した工事規制器材1の通常時の側面図である。図1の(c)図は、路面17に設置した工事規制器材1の変形時の側面図である。
図1に示すように、工事規制器材1は、側板3、底板5等からなる。
【0016】
側板3は、底板5から上方に設けられ、底板5とあわせて略L字状の工事規制部材1を形成する。側板3は、例えば、先端に向かってやや先細となる台形状の面を有する厚さ5mm程度の板材であり、弾性を有する素材、例えばポリウレタンエラストマーで形成される。側板3は、例えば赤系統の色とする。側板3は、底板5の一辺に設けられた凸部6に接続される。
【0017】
底板5は、例えば、厚さが3cm程度の矩形の板材である。底板5は、ポリウレタンエラストマー等を用いて形成され、側板3との接続部である凸部6が弾性を有するものとする。また、工事規制器材1の安定のため重心を低くするべく適度な重さを有するものとする。なお、底板5の底面15には必要に応じて図示しないすべり止めを設けてもよい。すべり止めを設けることにより、路面設置時の安定性を高めることができる。
【0018】
側板3の前面13には反射材7が設けられ、これにより側板3の反射部が形成される。反射材7は、例えば白系統の色であり、側板3に塗布または貼付される。なお、反射部の形状は図1の(a)図に示すものに限ることはない。
また、側板3の上部には穴部が設けられ、これにより側板3に取っ手9が形成される。
【0019】
工事規制器材1では、外力により側板3が倒れるように変形し、外力の解放後に形状が復元し元の位置に戻る。路面17に設置された工事規制器材1は、図1の(b)図に示す矢印Aの方向に走行する車両によって踏まれた場合、外力が加わり図1の(c)図に示すように側板3および凸部6が路面17に向かって倒れるように変形する。そして、車両の通過後に外力が解放され、図1の(c)図に示す矢印Bの方向に側板3および凸部6が起き上がり、元の位置に戻る。
【0020】
図2は、複数の工事規制器材1を積み重ねた状態を示す図である。断面が略L字状である工事規制器材1は、図2に示すように、下段の工事規制器材1の底板5の入隅部に上段の工事規制器材1の底板5の出隅部を合わせることにより、複数の工事規制器材1の底板5を重ねスペースを取らず効率的に積み重ねできる。
また、取っ手9の穴部を重ねて持つことにより複数の工事規制器材1を片手で運搬できる。
【0021】
このように、第1の実施の形態によれば、底板5に側板3を設けてL字状に工事規制器材1を形成する。側板3や底板5と側板3との接続部に弾性をもたせてあるため、側板3が外力により倒れても、外力の解放後に元の位置に戻る。そのため、通行車両が接触しても衝撃を受け流し、車両通過後に元の位置に復帰する。従って、通行車両が接触しても工事規制器材1は転倒し転がらず、二次被害を誘発しない。また、ダンプ等のタイヤハウスなど車両への巻き込まれや持ち去りも防止できる。さらに、底板5を重ねて効率的に積み重ねができ、省スペース化が可能である。また、上部を側板3のみで構成するので、重心が低くすることが容易であり、勾配の大きな箇所に設置した場合や強風時にも転倒しにくい。加えて、平板状の側板3に反射材7を設けるので、反射面が平面となり、従来のようにコーンの曲面を反射部とする場合に比べ、反射効率が良くなる。
【0022】
また、側板3の上部に穴部を設け取っ手9とするので、穴部を掴むことにより持ち運びが容易になり、誤って落としたりすることがなくなる。さらに、複数の工事規制器材1の穴部を重ねて持つことで、人力で運搬する場合に片手で複数個を持ち運ぶことができ、運搬作業も効率化する。
【0023】
なお、本実施形態では、側板3と、側板3と底板5の接続部とに弾性を持たせ、形状の回復を行っているが、いずれかのみに弾性をもたせれば、工事規制部材1の形状の回復は可能である。
また、側板3と底板5をポリウレタンエラストマーなど同じ素材で構成し、一体成型により工事規制部材1を製造することも可能である。
【0024】
次に、第2の実施の形態について説明する。図3は、工事規制器材1aの概要を示す図である。図3の(a)図は、工事規制器材1aの斜視図である。図3の(b)図は、工事規制器材1aの側面図である。図3に示すように、第2の実施の形態の工事規制器材1aは、側板3a、底板5a、発光装置19等からなる。
【0025】
側板3aは前述の側板3と同様である。ただし、半透明の材料で形成され、反射材7以外の箇所が透光部7aとなる。
底板5aは前述の底板5と同様である。ただし、底板5aには発光装置19が埋め込まれる。
【0026】
工事規制器材1aでは、発光装置19から図3(b)の矢印Gで示す方向に放射される光が透光部7aを照射する。光の放射方向には光の進行が妨げられないようにしておく。例えば底板5aに空洞を設けたり、透明部分としたり、発光部を底板5aの上面に設けるなどする。
【0027】
工事規制器材1aは、第1の実施の形態の工事規制器材1と同様に、外力により側板3aが倒れるように変形し、外力の解放後に形状が復元し元の位置に戻る。従って、第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
さらに、底板5aに発光装置19を設けて側板3aの透光部7aに光を照射することにより、透光部7aの発光・点滅が可能となり、視認性がさらに向上し、側板3aが多少汚損した場合でも視認性を保つことができるので、工事規制部材1aの設置時の安全性が向上する。また、発光装置19を底板5aに埋め込むので、車両通過の際の破損も防止することができる。
なお、反射材7を透光性も有するものとすることも可能で、この場合、側板3aの全体を透光部7aとすることができる。
【0028】
次に、第3の実施の形態について説明する。図4は、工事規制器材1bの側面図を示す。図4の(a)図は、路面17に設置した工事規制器材1bの通常時の側面図である。図4の(b)図は、路面17に設置した工事規制器材1bの変形時の側面図である。図4に示すように、第3の実施の形態の工事規制器材1bは、側板3b、底板5b、ヒンジ21、付勢手段23等からなる。
【0029】
側板3bは、側板3と同様である。ただし、ヒンジ21により、底板5bの一辺に接続される点で異なる。
底板5bは、底板5と同様である。ただし、凸部6の代わりにヒンジ21が設けられる点で異なる。
付勢手段23は、ヒンジ21とともに側板3bと底板5bの接続部を構成する。付勢手段23は、例えばバネなどの弾性部材であり、両端がそれぞれ側板3bの裏面と底板5bの上面に接続され、側板3bが立ち上がる方向に側板3bを付勢する。
【0030】
工事規制器材1bは、外力により側板3bが倒れ、外力の解放後に元の位置に戻る。路面17に設置された工事規制器材1bは、図4の(a)図に示す矢印Cの方向に走行する車両によって踏まれた場合、図4の(b)図に示すように側板3bがヒンジ21の部分で回転し倒れる。また、バネが縮むなど、付勢手段23も変形する。そして、車両の通過後に、付勢手段23の復元力により図4の(b)図に示す矢印Dの方向に回転して側板3bが起き上がり、元の位置に戻る。
従って、第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0031】
次に、第4の実施の形態について説明する。図5は、工事規制器材1cを示す図である。図5の(a)図は、路面17に設置した工事規制器材1cの通常時の側面図である。図5の(b)図は、路面17に設置した工事規制器材1cの変形時の側面図である。図5に示すように、第4の実施の形態の工事規制器材1cは、側板3c、底板5c等からなる。
【0032】
底板5cは、底板5と同様の部材である。凸部6は省略されているが、底板5と同様の凸部6を設けてもよい。
【0033】
側板3cは、側板3と同様であり、弾性を有する板状の部材である。ただし、下部に曲折部25が設けられる。曲折部25は、側板3cの前面13c側が凹部となるように形成されるが、裏面側が凹部となるように形成されてもよい。
【0034】
工事規制器材1cは、外力により側板3cが倒れるように変形し、外力の解放後に形状が復元し元の位置に戻る。路面17に設置された工事規制器材1cは、図5の(a)図に示す矢印Eの方向に走行する車両によって踏まれた場合、図5の(b)図に示すように側板3cが曲折部25の部分で大きく折れ曲がり、倒れるように変形する。そして、車両の通過後に、主に側板3の曲折部25の復元力により図5の(b)図に示す矢印Fの方向に側板3cが起き上がり、形状が復元して元の位置に戻る。
従って、第4の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0035】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0036】
1、1a、1b、1c………工事規制器材
3、3a、3b、3c………側板
5、5a、5b、5c………底板
7………反射材
7a………透光部
9………取っ手
15………底面
19……発光装置
21………ヒンジ
23………付勢手段
25………曲折部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部と、反射部を有する側板部とにより略L字状に形成され、
前記側板部は外力により倒れ、前記外力の解放により元の位置に戻ることを特徴とする工事規制器材。
【請求項2】
前記側板部は透光部を有し、
前記底板部に発光装置が設けられ、前記発光装置から放射される光が前記透光部を照射することを特徴とする請求項1記載の工事規制器材。
【請求項3】
前記側板部と、前記底板部と前記側板部の接続部の少なくともいずれかが弾性を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の工事規制器材。
【請求項4】
前記側板部の上部に穴部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の工事規制器材。
【請求項5】
前記底板部の底面に、すべり止めが設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の工事規制器材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−188843(P2012−188843A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52462(P2011−52462)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.カラーコーン
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【出願人】(507230382)首都高メンテナンス西東京株式会社 (4)
【Fターム(参考)】