説明

差動装置及び不整地走行四輪車

【課題】後輪用差動装置において、切換待機機構を備えた後輪用差動装置をユニット化する。
【解決手段】左右の後輪車軸18の差動を許容する後輪用差動機構と、差動を許容するアンロック状態と差動を禁止するロック状態とを切換えるためのシフトスリーブ20と被係合スリーブ部とから成るドッグ歯式のロック機構と、後輪用差動機構を収容するケーシング11と、前記ロック機構の切換えを操作する手元操作部と、後輪用差動機構を収容するケーシング11と、手元操作部により切換操作が行われたときに、被係合スリーブにシフトスリーブ20が係合するように付勢力を加える、及び、被係合スリーブとシフトスリーブ20との係合を解除するように付勢力を加える、切換待機機構30と、を備えた後輪用差動装置において、切換待機機構30が、ケーシング11に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
左右の車軸の差動を許容する差動機構と、前記差動のアンロック状態とロック状態とを切換えるための切換手段と、前記差動機構を収容するケーシングと、を備えた差動装置、及び、前記差動装置を備えた不整地走行四輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右の後輪車軸の差動を許容する後輪用差動機構を備えた後輪用差動装置が知られている。後輪用差動装置は、ドッグ歯式のロック機構を利用して、前記差動のアンロック状態とロック状態とを切換えるように構成されているものがある。例えば、特許文献1に記載される技術がある。
【0003】
図5は、後輪用差動機構を示す従来の後輪用差動装置10の断面図である。後輪用差動装置10は、ケーシング11の内部に、後輪用差動機構を収容している。後輪用差動機構において、左右の後輪車軸18、19間の差動がアンロックされて(許容されて)いる。差動がアンロックされているとき、左右の後輪に掛かる負荷に応じて、後輪車軸18、19及び差動歯車箱12の回転速度が変化する。
【0004】
後輪用差動装置10は、差動のアンロック状態とロック状態とを切換えるためのドッグ歯式のロック機構を備えている。ロック機構は、被係合スリーブ部24と、シフトスリーブ20と、で構成されている。ここで、被係合スリーブ部24は、差動歯車箱12の一部である。シフトスリーブ20は、右後輪車軸18の軸上に、スプライン嵌合によって設けられている。シフトスリーブ20は、右後輪車軸18に沿って移動自在である。このため、シフトスリーブ20が被係合スリーブ部24に噛み合うと、差動がロックされる。また、シフトスリーブ20が被係合スリーブ部24から外れると、差動がアンロックされる。
【0005】
シフトスリーブ20の操作機構が、次のように構成されている。まず、ケーシング11の内部には、シフト軸233、入力レバー231及び出力レバー32が設けられている。シフト軸233の両端には、入力レバー231及び出力レバー32が固定されている。出力レバー32のピン32aは、シフトスリーブ20の溝20bに常に係合している。このため、入力レバー231が回動すると、シフトスリーブ20が右後輪車軸18に沿って移動する。
【0006】
図6は、従来の後輪用差動装置10の一部を示す平面図である。図6において、入力レバー231は、ケーシング11の外側に配置されている。入力レバー231には、ケーブル201の一端が接続されている。
【0007】
図7は、従来の操作機構の構成を示す構成分解図である。操作機構は、運転席に配置されている。運転席には、回動軸202が設けられている。回動軸202には、操作レバー(操作部)28及びアーム203を合わせた一体物が、回動自在に設けられている。アーム203の先端には、連結具204が回動自在に設けられている。連結具204が、スプリング34を介して、ケーブル201の端部に連結されている。また、操作レバー28の先端には、指でつかむためのノブ29が固定されている。
【0008】
操作レバー28は、U字状のガイド溝205を通過するように設けられている。U字の両端位置にそれぞれ、ロック指令位置A1とアンロック指令位置A2とが設けられている。このため、操作レバー28は、下側のロック指令位置A1から上側のアンロック指令位置A2までの範囲内で回動すると共に、ロック指令位置A1及びアンロック指令位置A2で静止する。ここで、ロック指令は前記差動のロックを指令することを意味し、アンロック指令は前記差動のアンロックを指令することを意味する。
【0009】
運転者がロック指令位置A1からアンロック指令位置A2に操作レバー28を移動させると(図7)、スプリング34を介して、ケーブル201が押し出される。この結果、出力レバー32が回転して、シフトスリーブ20がロック位置P1からアンロック位置P2に移動する(図5)。一方、運転者がアンロック指令位置A2からロック指令位置A1に操作レバー28を移動させると(図7)、スプリング34を介して、ケーブル201が引っ張られる。この結果、出力レバー32が回転して、シフトスリーブ20がアンロック位置P2からロック位置P1に移動する(図5)。
【0010】
シフトスリーブ20と被係合スリーブ部24とは、ドッグ歯式のロック機構を構成している。このため、操作レバー28がロック指令位置A1に操作されたタイミングに、シフトスリーブ20と被係合スリーブ部24とが噛み合わないことがある。
【0011】
そこで、操作レバー28とシフトスリーブ20との間に、スプリング34が設けられている。シフトスリーブ20が被係合スリーブ部24に噛み合うことができず、操作レバー28の移動にシフトスリーブ20が追従できないときは、スプリング34が伸びる。この結果、シフトスリーブ20が被係合スリーブ部24に噛み合うようになるまで、スプリング34がケーブル201を引っ張り続け、シフトスリーブ20をロック位置P1側へ付勢する。このようにして、スプリング34によって、切換待機機構が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−82610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、スプリング34によって構成される切換待機機構は、操作レバー28側に設けられていた。このため、後輪用差動装置10の構成部品が、ケーシング11内と、ケーシング11から離れた操作レバー28の周辺とに、分離されていた。この結果、切換待機機構を備えた後輪用差動装置10のユニット化が阻害されていた。
【0014】
本発明は、後輪用差動装置において、切換待機機構を備えた後輪用差動装置をユニット化することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の差動装置は、左右の車軸の差動を許容する差動機構と、前記差動を許容するアンロック状態と、前記差動を禁止するロック状態と、を切換えるための、係合部材と被係合部材とからなる切換手段と、前記切換手段の切換えを操作する操作部と、前記差動機構を収容するケーシングと、前記操作部により切換操作が行われたときに、前記被係合部材と前記係合部材とが係合するように付勢力を加える、及び/又は、前記被係合部材と前記係合部材との係合を解除するように付勢力を加える、切換待機機構と、を備えた、差動装置において、前記切換待機機構が、前記ケーシングに支持されている。
【0016】
差動装置に係わる発明は、更に、次の構成(a)〜(c)を採用することが好ましい。
【0017】
(a)前記切換待機機構が、前記操作部に連動する入力レバーと、前記係合部材に連動する出力レバーと、前記入力レバー及び前記出力レバーをそれぞれ回動自在に支持するシフト軸と、前記入力レバーと前記出力レバーとを連結する弾性部材と、からなっている。
【0018】
(b)前記切換待機機構が、前記操作部の切換操作に応じて前記入力レバーを前記シフト軸周りで正逆方向に回動させるアクチュエータを更に有しており、前記アクチュエータが、前記ケーシングに支持されている。
【0019】
(c)前記切換待機機構が、前記ケーシングに収容されている。
【0020】
本発明の不整地走行四輪車は、左右一対の前車輪と、左右一対の後車輪と、前記前車輪と前記後車輪との間にキャビンフレームにより形成されると共に、前記操作部を含む運転操作部及びシートを収納する、キャビンと、を備えている、不整地走行四輪車であって、前記一対の後車輪間の差動を許容するように、本発明の前記差動装置を設けている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の差動装置によれば、切換待機機構を備えた差動装置のユニット化が実現されている。したがって、差動装置の汎用性が向上している。また、車体レイアウトの自由度が増している。
【0022】
構成(a)によれば、切換待機機構は、係合用及び係合の解除用の2つの異なる付勢力を、容易に提供できる。
【0023】
構成(b)によれば、切換待機機構及びアクチュエータを備え差動装置をユニット化できる。また、操作ケーブル等の配線上のロスを軽減できる。
【0024】
構成(c)によれば、泥や錆に対する耐久性が増大している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態の後輪用差動装置を備えた不整地走行四輪車の側面図である。
【図2】後輪用差動機構を示す後輪用差動装置の断面図である。
【図3】切換待機機構を右後輪車軸の軸方向から見た図である。
【図4】図2の要部(切換待機機構)拡大図である。
【図5】後輪用差動機構を示す従来の後輪用差動装置の断面図である。
【図6】従来の後輪用差動装置の一部を示す平面図である。
【図7】従来の操作機構の構成を示す構成分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[本実施形態の構成]
図1は、本実施形態の後輪用差動装置を備えた不整地走行四輪車1の側面図である。不整地走行四輪車1において、車台2の前部に左右の前輪3、3が配置され、車台2の後部に左右の後輪4、4が配置されている。車台2の中央部にはエンジン5が配置されている。エンジン5の動力は、変速装置から前輪用駆動軸及び後輪用駆動軸9をそれぞれ介して、前側の前輪用差動装置と後側の後輪用差動装置10とに分配される。エンジン5の上方には、シート6が配置されている。シート6の前方には、運転操作部7が配置されている。運転操作部7には、ハンドル27、手元操作部28等の操作手段が配置されている。また、キャビンフレーム8が、車台2に固定されている。キャビン60が、前車輪3、3と後車輪4、4との間でキャビンフレーム8により形成されると共に、運転操作部7及びシート6を収納している。
【0027】
図2は、後輪用差動機構を示す後輪用差動装置10の断面図である。後輪用差動装置10は、ケーシング11の内部に、後輪用差動機構を収容している。後輪用差動機構は、後輪用駆動軸9から左右の後輪車軸18、19に至る駆動伝達機構を指している。後輪用差動機構は、以下で説明するように、左右の後輪車軸18、19間の差動を許容する。後輪用駆動軸9の減速小歯車9aは、差動歯車箱12の減速大歯車21に、噛み合っている。ここで、差動歯車箱12は、減速大歯車21、左スリーブ部22、中央スリーブ部23、及び被係合スリーブ部24、を合わせて構成されている。差動歯車箱12の内部には、差動大歯車13、14と、差動小歯車15、16と、差動小歯車軸17と、が設けられている。差動大歯車13、14は、差動小歯車15、16と、噛み合っている。差動小歯車15、16は、差動歯車箱12に固定された差動小歯車軸17に、回転自在に設けられている。また、右差動大歯車13は右後輪車軸18に固定されており、左差動大歯車14は左後輪車軸19に固定されている。
【0028】
以上の構成において、旋回時など内輪と外輪とに速度差が生じたときに、タイヤが滑ることなく路面に追従するために、各差動小歯車15、16が差動小歯車軸17周りに回転し、左右の差動大歯車13、14の回転速度に差が生じる。すなわち、後輪用差動装置10は、左右の後輪車軸18、19の速度差、すなわち差動大歯車13、14の速度差を吸収しながら、後輪車軸18、19に動力を伝える。一方、直進時など左右の後輪4、4の速度差が生じないときには、各差動小歯車15、16が差動小歯車軸17周りに回転せず、左右の差動大歯車13、14の回転速度に差は生じない。すなわち、左右の後輪車軸18、19間に差動が発生していない。
【0029】
後輪用差動装置10は、差動のアンロック状態とロック状態とを切換えるためのドッグ歯式のロック機構を備えている。ロック機構は、被係合スリーブ部24と、シフトスリーブ20と、で構成されている。シフトスリーブ20は、右後輪車軸18の軸上に、スプライン嵌合によって設けられている。シフトスリーブ20は、右後輪車軸18の軸方向に移動可能であるが、右後輪車軸18に対して回動しない。また、シフトスリーブ20に多数のドッグ歯20aが形成されており、被係合スリーブ部24にもドッグ歯20aと同数あるいは整数倍のドッグ歯24aが形成されている。ドッグ歯20aの全体とドッグ歯24aの全体とが、右後輪車軸18の軸において、対向している。シフトスリーブ20がロック位置P1にあるとき、ドッグ歯20a、24a同士の噛み合いによって、シフトスリーブ20が被係合スリーブ部24に係合する。また、シフトスリーブ20がアンロック位置P2にあるとき、シフトスリーブ20は被係合スリーブ部24に係合しない。なお、ロック位置P1及びアンロック位置P2は、右後輪車軸18の軸上におけるシフトスリーブ20の位置を指している。シフトスリーブ20が被係合スリーブ部24に係合すると、差動歯車箱12と右後輪車軸18とが一体に回動する。これにより、両差動小歯車15、16が差動小歯車軸17に対して回転不能に固定される。このため、左右の後輪4、4に掛かる負荷の差に関係無く、左右の差動大歯車13、14は、常に同一速度で回転する。すなわち、差動がロックされる。
【0030】
次に、シフトスリーブ20の操作機構、特に操作機構に含まれる切換待機機構30を、説明する。図3は、切換待機機構30を右後輪車軸18の軸方向から見た図である。図4は、図2の要部(切換待機機構30)拡大図である。
【0031】
図3において、シフトスリーブ20の操作機構は、運転操作部7上の手元操作部28(図1)と、電動アクチュエータ50と、切換待機機構30と、から構成されている。この手元操作部28として、手動レバー、シーソー式電気スイッチ、又は押しボタンスイッチ等が採用される。電動アクチュエータ50は、電動モータ40と、減速機構44と、アクチュエータ出力軸41と、から構成されている。電動モータ40と減速機構44は、積み重ならないように配置されるのが、高さを低くする点で好ましい。手元操作部28の操作によって電動アクチュエータ50が駆動され、電動アクチュエータ50の動力が切換待機機構30を介して、シフトスリーブ20に伝達される。この結果、シフトスリーブ20がロック位置P1(図2)とアンロック位置P2(図2)との間を移動する。以下、手元操作部28からシフトスリーブ20に至る操作機構の各部を、順に説明する。
【0032】
手元操作部28と電動アクチュエータ50とは電気的に接続されている。手元操作部28の操作に基づいて、電動アクチュエータ50の電動モータ40が駆動され、減速機構44により減速された電動モータ40の回転動力によって、アクチュエータ出力軸41が所定の回転範囲だけ正逆方向に回動する。
【0033】
図4において、アクチュエータ出力軸41には、ピン42が固定されている。ピン42の外側には、ローラー43が回動自在に設けられている。ここで、ピン42の軸心位置M42は、アクチュエータ出力軸41の軸心位置M41に対して、偏心している。このため、アクチュエータ出力軸41が回動すると、ローラー43が軸心位置M41の周りを円運動する。ローラー43は、切換待機機構30の入力レバー31に接続されている。
【0034】
図3において、切換待機機構30を説明する。切換待機機構30は、入力レバー31と、出力レバー32と、シフト軸33と、スプリング34と、を備えている。シフト軸33には、入力スリーブ35と出力スリーブ36とがそれぞれ回動自在に設けられている。入力スリーブ35には入力レバー31が固定されており、出力スリーブ36には出力レバー32が固定されている。このため、シフト軸33は、入力レバー31及び出力レバー32をそれぞれ回動自在に支持している。スプリング34の両端部は、それぞれ、入力レバー31の中央部に形成された孔31aと、出力レバー32の中央部に形成された孔32aとに、係止されている。つまり、入力レバー31と出力レバー32とがスプリング34によって連結されている。
【0035】
入力レバー31は、手元操作部28の操作に連動するように、次のように構成されている。入力レバー31にはガイド溝31bが形成されており、ガイド溝31b内にローラー43が挿入されている。ガイド溝31bは、シフト軸33の径方向に沿って形成された長孔である。また、ガイド溝31bの短手幅は、ローラー43の外径にほぼ等しい。このため、アクチュエータ出力軸41の回転駆動によってローラー43が軸心位置M41周りに回動すると、入力レバー31がシフト軸33の周りで回動する。
【0036】
出力レバー32は、シフトスリーブ20に連動するように、次のように構成されている。シフトスリーブ20の外周面には溝20bが形成されている。溝20b内には、板状の係合片37が、挿入されている。一方、出力レバー32の先端部には、回動軸38が回動自在に設けられている。係合片37は、回動軸38に固定されている。このため、出力レバー32がシフト軸33周りで回動すると、係合片37に押されたシフトスリーブ20が、右後輪車軸18に沿って移動する。このとき、板状の係合片37が溝20b内を移動するが、係合片37の姿勢が溝20bの形成方向に沿って保たれている。
【0037】
以上構成により、ロック操作、つまりアンロック状態からロック状態への移行は、次のようにして行われる。手元操作部28の操作によって、電動アクチュエータ50が、入力レバー31をシフト軸33周りで、シフトスリーブ20がロック位置P1まで動く分だけ、回動させる。入力レバー31の回動は、スプリング34を介して出力レバー32に伝達される。このため、シフトスリーブ20がドッグ歯20aとドッグ歯24aとの干渉によってロック位置P1に移動できないときも、入力レバー31は回転できる。また、このとき、スプリング34が自然長さよりも縮められるので、スプリング34は、シフトスリーブ20をロック位置P1に向けて付勢する付勢力を得る。図4に、付勢力の方向Lが図示されている。この結果、シフトスリーブ20が被係合スリーブ部24に係合できるようになるまで、スプリング34がシフトスリーブ20をロック位置P1側へ付勢する。
【0038】
一方、アンロック操作、つまりロック状態からアンロック状態への移行は、ロック操作の逆である。アンロック操作において、電動アクチュエータ50が、入力レバー31をシフト軸33周りで、シフトスリーブ20がアンロック位置P2まで動く分だけ逆回転させる。ドッグ歯20aとドッグ歯24aとの係合が外れないときは、スプリング34は自然長さよりも伸びているので、スプリング34はシフトスリーブ20をアンロック位置P2に向けて付勢する付勢力を得る。この結果、ドッグ歯20aとドッグ歯24aとの係合が外れるまで、スプリング34がシフトスリーブ20をアンロック位置P2側へ付勢する。
【0039】
入力レバー31と出力レバー32とがスプリング34によって連結される構造については、上記構造に限定されず、例えば、入力レバー31及び出力レバー32のそれぞれにピンが立設され、各ピンがスプリングの両端部にそれぞれ係止されている構造であってもよい。
【0040】
また、入力レバー31とアクチュエータ出力軸41との連結構造については、上記構造に限定されず、上記出力レバー32とシフトスリーブ20との連結構造と同じ構造を採用したものであってもよい。すなわち、例えば、入力レバー31の外周面に溝が形成され、その溝内には、アクチュエータ出力軸41に形成されたピン42に回動自在に設けられた係合片が挿入された構造のものが挙げられる。
【0041】
スプリングの付勢力の活用については、ロック操作及びアンロック操作ともに、スプリングを縮める方向又はスプリングを広げる方向のいずれの付勢力を採用しても良い。
【0042】
図3において、切換待機機構30及び電動アクチュエータ50のレイアウトを説明する。ケーシング11内には、後輪用差動機構だけでなく切換待機機構30も、配置されている。ここで、ケーシング11は、ケーシング本体110と、板状の蓋体111と、板状のアクチュエータ取付部112と、を備えている。ケーシング本体110と蓋体111とを合わせると、ケーシング本体110の内部が被覆される。蓋体111には貫通孔111aが形成されており、貫通孔111aを介して、アクチュエータ出力軸41がケーシング本体110の内部に突出している。アクチュエータ取付部112は、ケーシング本体110と蓋体111の外側に固定されている。アクチュエータ取付部112には、電動モータ40及び減速機構44を備えた電動アクチュエータ50が固定されている。切換待機機構30及び電動アクチュエータ50は共に、ケーシング11に支持されている。電動アクチュエータ50は、ケーシング11上に配置されるのが、防汚の点で好ましい。
【0043】
[本実施形態の効果]
本実施形態の後輪用差動装置10では、切換待機機構30がケーシング11に支持されている。このため、切換待機機構30を備えた後輪用差動装置10のユニット化が実現されている。したがって、後輪用差動装置10の汎用性が向上している。また、車体レイアウトの自由度が増している。
【0044】
切換待機機構30が、弾性部材であるスプリング34を備えている。スプリング34は、2つの方向に付勢力を発揮できる。このため、切換待機機構30は、係合用及び係合の解除用の2つの異なる付勢力を、容易に提供できる。
【0045】
また、本実施形態の後輪用差動装置10では、電動アクチュエータ50が、ケーシング11に固定されている。このため、切換待機機構30及び電動アクチュエータ50を備えた後輪用差動装置10をユニット化できる。また、操作ケーブル等の配線上のロスを軽減できる。
【0046】
また、本実施形態の後輪用差動装置10では、切換待機機構30がケーシング11の内部に収容されている。このため、泥や錆に対する耐久性が増大している。
【0047】
本発明の差動装置は、差動機構とデフロック機構とを併せ持つ車両であれば、特に限定されずに、車両に採用可能である。特に、本発明の差動装置は、不整地走行四輪車の後車輪用に採用するのが好ましい。また、上記実施形態においては、シフトスリーブが後輪の右側車軸に配置されているものを紹介したが、この配置に限定されるものではない。シフトスリーブは、後輪の左側車軸に配置されていてもよい。また、入力レバーを回動させるアクチュエータは、上記実施形態における電動アクチュエータ50に限定されず、電磁式又は油圧式のアクチュエータも採用できる。
【符号の説明】
【0048】
10 後輪用差動装置
11 ケーシング
18 右後輪車軸
19 左後輪車軸
20 シフトスリーブ(係合部材)
24 被係合スリーブ(被係合部材)
30 切換待機機構
31 入力レバー
32 出力レバー
33 シフト軸
34 スプリング(弾性部材)
40 電動モータ
41 アクチュエータ出力軸
50 電動アクチュエータ
112 アクチュエータ取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車軸の差動を許容する差動機構と、
前記差動を許容するアンロック状態と、前記差動を禁止するロック状態と、を切換えるための、係合部材と被係合部材とからなる切換手段と、
前記切換手段の切換えを操作する操作部と、
前記差動機構を収容するケーシングと、
前記操作部により切換操作が行われたときに、前記被係合部材と前記係合部材とが係合するように付勢力を加える、及び/又は、前記被係合部材と前記係合部材との係合を解除するように付勢力を加える、切換待機機構と、
を備えた、差動装置において、
前記切換待機機構が、前記ケーシングに支持されている、ことを特徴とする差動装置。
【請求項2】
前記切換待機機構が、
前記操作部に連動する入力レバーと、
前記係合部材に連動する出力レバーと、
前記入力レバー及び前記出力レバーをそれぞれ回動自在に支持するシフト軸と、
前記入力レバーと前記出力レバーとを連結する弾性部材と、
からなっている、ことを特徴とする請求項1に記載の差動装置。
【請求項3】
前記切換待機機構が、前記操作部の切換操作に応じて前記入力レバーを前記シフト軸周りで正逆方向に回動させるアクチュエータを更に有しており、
前記アクチュエータが、前記ケーシングに支持されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の差動装置。
【請求項4】
前記切換待機機構が、前記ケーシングに収容されている、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の差動装置。
【請求項5】
左右一対の前車輪と、
左右一対の後車輪と、
前記前車輪と前記後車輪との間にキャビンフレームにより形成されると共に、前記操作部を含む運転操作部及びシートを収納する、キャビンと、
を備えている、不整地走行四輪車であって、
前記一対の後車輪間の差動を許容するように、請求項1〜4の何れか1つに記載の差動装置を設けた、ことを特徴とする不整地走行四輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−121458(P2011−121458A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280300(P2009−280300)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】