差圧成形装置、及び、差圧成形シート製造方法
【課題】離型時の差圧成形シートの変形を抑止しながら差圧成形のサイクルタイムを短縮することを課題とする。
【解決手段】シート保持部２１を有するシート保持手段２０と、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の一面Ｓ１ａに対向した凹部３２を有する閉空間形成体３０と、凹部３２に対向した成形型４０と、を用い、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させてシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１を形成し、閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させ、成形前空間ＳＰ１の圧力よりもシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側の圧力が低くなる差圧を設けてシートＳ１を成形型４０に密接させ、成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側を大気圧以上にするとともに成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれる成形後空間ＳＰ２を減圧して大気圧未満とし、閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させて成形シートＳ２を離型する。
【解決手段】シート保持部２１を有するシート保持手段２０と、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の一面Ｓ１ａに対向した凹部３２を有する閉空間形成体３０と、凹部３２に対向した成形型４０と、を用い、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させてシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１を形成し、閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させ、成形前空間ＳＰ１の圧力よりもシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側の圧力が低くなる差圧を設けてシートＳ１を成形型４０に密接させ、成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側を大気圧以上にするとともに成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれる成形後空間ＳＰ２を減圧して大気圧未満とし、閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させて成形シートＳ２を離型する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置、及び、差圧成形シート製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
真空成形や圧空成形等の差圧成形は、加熱された被成形シートの一面側と他面側の圧力に差を設ける熱成形として知られている。
被成形シートの差圧成形法として、特開昭４８−１０１６５号公報に冷蔵庫扉の内板の真空成形法が開示されている。この真空成形法では、加熱されたプラスチックシートを上部型と下部型との間に置き、上部型でプラスチックシートの上面を密閉的に覆い、上部型内の空気を排除することによりプラスチックシートを上部型側に吸引し、その後、上部型と下部型とを近付けて型締めし、次いで下部型の孔から空気を排除して下部型にプラスチックシートを吸引している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開昭４８−１０１６５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
下部型から成形シートを離型するために下部型の孔から離型エアを吹き出すと、成形シートが下部型から一部のみしか離れず、縁部が挟持された成形シートから下部型を離間させる時に成形シートが変形することがある。成形シートの変形を防ぐために下部型の離間速度を下げると、成形のサイクルタイム（cycle time）が増えてしまう。
【０００５】
以上を鑑み、本発明は、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成するため、本発明は、成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させる差圧成形手段と、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する離型手段とを備えることを特徴とする。
【０００７】
また、本発明は、成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させ、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする。
【０００８】
シートの一面と閉空間形成体の凹部とで囲まれた成形前空間の圧力よりもシートの他面側の圧力が低くなる差圧によりシートが成形型に密接すると、成形シートの他面側が大気圧以上にされるとともに成形シートの一面と凹部とで囲まれる成形後空間が減圧されて大気圧未満とされ、閉空間形成体と成形型とが離間する。成形シートの他面側が大気圧以上で成形後空間が大気圧未満とされるので、成形シートの一面の広い範囲が閉空間形成体側に吸引される。この状態で閉空間形成体と成形型とが離間し、成形型から成形シートが離型される。
【０００９】
成形シートの一面の広い範囲が成形型とは反対側に吸引されるので、成形型から離れる力が成形シートの広い範囲に加わる。従って、離型時の成形シートの変形が抑止される。また、成形シートの変形を抑止するために成形型の離間速度を下げなくてもよい。
従って、本発明の差圧成形装置及び差圧成形シート製造方法は、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【００１０】
ここで、上記差圧成形には、真空成形、圧空成形、真空と圧空を併用する圧空真空成形、が含まれる。
上記シート保持手段には、シートの縁部を突き刺して保持する突き刺し手段、シートの縁部を把持して保持するクランプ手段、等が含まれる。
上記閉空間形成体で形成される成形前空間及び成形後空間は、常時密閉された空間ではなく、圧力を変えるためのエア経路が接続された空間を意味する。従って、上記閉空間形成体で形成される成形前空間及び成形後空間は、減圧経路、圧空経路、大気への開放と大気からの遮断とを切り替える経路、等が接続されてもよい。
上記圧力は、絶対圧とする。
上述した、成形前空間の圧力よりもシートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けることには、シートの他面側を減圧すること、成形前空間に圧空を供給すること、シートの他面側を減圧しながら成形前空間に圧空を供給すること、のいずれも含まれる。
上述した、成形シートの一面と凹部とで形成される成形後空間には、差圧成形後にシート保持部と閉空間形成体とが離間した後に近接して再び形成される空間が含まれる。
上述した、成形シートの他面側を大気圧以上にすることには、成形シートの他面側を大気に開放すること、成形シートの他面側に圧空を供給すること、のいずれも含まれる。
上述した、成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに成形後空間を減圧して大気圧未満にすることには、成形シートの他面側を大気圧以上にするのと成形後空間を減圧するのを同時に行うこと、成形シートの他面側を大気圧以上にした後に成形後空間を減圧すること、成形後空間を減圧した後に成形シートの他面側を大気圧以上にすること、のいずれも含まれる。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１に係る発明によれば、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形装置を提供することができる。
請求項２に係る発明では、凸部を有する成形型を用いた差圧成形シートの品質を向上させることができる。
請求項３、請求項４、請求項６に係る発明では、差圧成形シートの品質を向上させることができる。
請求項５に係る発明では、連続成形に好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項７に係る発明では、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項８に係る発明では、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
請求項９に係る発明では、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置２を有する差圧成形品製造システム１を例示する正面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置２を例示する正面図である。
【図３】（ａ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０の要部を例示する平面図、（ｂ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０をＡ１−Ａ１の位置で切断したときの垂直端面を例示する図、である。
【図４】成形部３を例示する垂直断面図である。
【図５】上テーブル３８とともに閉空間形成体３０を例示する底面図である。
【図６】下テーブル４８とともに成形型４０を例示する平面図である。
【図７】クランプ部材５０を例示する平面図である。
【図８】差圧成形装置２の電気回路構成の概略を例示するブロック図である。
【図９】差圧成形装置２の動作を例示するタイミングチャートである。
【図１０】クランプ部材５０と閉空間形成体３０とでシートＳ１を挟んだ状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１１】成形前空間ＳＰ１を減圧した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１２】閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させてシートＳ１を差圧成形した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１３】成形シートＳ２に向かって冷却用エアＣＡ１を吹き付けながらシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１４】冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止してシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１５】成形後空間ＳＰ２を減圧してシート保持部２１と成形型４０とを離間させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１６】クランプ部材５０と閉空間形成体３０とを離間させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１７】離型された成形シートＳ２の外観を例示する斜視図である。
【図１８】変形例において成形前空間ＳＰ１を減圧した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１９】変形例に係る成形部３を例示する垂直断面図である。
【図２０】変形例に係る差圧成形装置の電気回路構成の概略を例示するブロック図である。
【図２１】変形例に係る差圧成形装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【図２２】変形例に係る差圧成形装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
（１）差圧成形品製造システムの説明：
図１は、本発明の一実施形態に係る差圧成形装置２を有する差圧成形品製造システム１を例示する正面図である。図２は、差圧成形品製造システム１に含まれる差圧成形装置２を例示する正面図である。ここで、図１，２の左から右へ向かう方向がシートＳ１，Ｓ２の搬送方向Ｄ１であり、左側がシートＳ１，Ｓ２の上流側、右側がシートＳ１，Ｓ２の下流側である。
差圧成形品製造システム１は、シート供給装置４、シート保持手段２０、シート加熱装置１０、成形部３、トリミング装置５、製品搬送装置６、を備え、制御盤８０の制御に従って動作する。
【００１４】
シート供給装置４は、所定のシートストック位置ＬＳ１に積み重ねられた被成形シートＳ１を一枚ずつ所定のシート供給位置Ｌ１へ搬送する。シート保持手段２０は、シート供給装置４で搬送されたシートＳ１をシート供給位置Ｌ１で保持し、所定の差圧成形位置Ｌ２まで所定の搬送方向Ｄ１へ搬送する。シート加熱装置１０は、シート供給位置Ｌ１と差圧成形位置Ｌ２との間に設置され、搬送中のシートＳ１を加熱する。成形部３は、加熱されたシートＳ１を差圧成形し、図１７に示すような差圧成形シートＳ２を離型してトリミング装置５へ送り出す。トリミング装置５は、差圧成形シートＳ２の縁部を所定の大きさに切断するトリミングを行い、得られる差圧成形品（製品Ｓ３）を製品搬送装置６の方へ送り出す。製品搬送装置６は、製品Ｓ３を所定の取出位置へ搬送する。シート供給装置４のシート供給動作、シート保持手段２０のシートを保持して搬送する動作、成形部３の成形動作、トリミング装置５のトリミング動作、及び、製品搬送装置６の製品搬送動作は、同期して間欠的に行われる。
【００１５】
（２）差圧成形装置の説明：
差圧成形装置２は、成形可能なシートＳ１を差圧成形して離型する。図２〜１６に示す差圧成形装置２は、シートＳ１に対していわゆる圧空真空成形、すなわち、真空と圧空を併用する差圧成形を行う。むろん、差圧成形装置２は、シートＳ１に対して真空成形のみ行ってもよいし、シートＳ１に対して圧空成形のみを行ってもよい。
差圧成形装置２の基本部分は、シート保持手段２０、閉空間形成体３０、成形型４０、差圧成形手段６０、離型手段７０、からなる。図１，２に例示した差圧成形装置２は、閉空間形成体３０及び成形型４０が成形部３に含まれるとともに、差圧成形手段６０及び離型手段７０が成形部３と制御盤８０とで構成されている。
【００１６】
シート保持手段２０は、シートＳ１をシート保持部２１で保持する。閉空間形成体３０は、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の一面Ｓ１ａに対向した凹部３２を有する。成形型４０は、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側に配置され、凹部３２に対向している。差圧成形手段６０は、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させてシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１を形成し、閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させ、成形前空間ＳＰ１の圧力よりもシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側の圧力が低くなる差圧を設けてシートＳ１を成形型４０に密接させる。ここでいう圧力は、絶対圧である。離型手段７０は、成形型４０に密接した成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側を大気圧以上にするとともに該成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれる成形後空間ＳＰ２を減圧して大気圧未満とし、閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させて成形シートＳ２を離型する。これにより、離型時の差圧成形シートＳ２の変形が抑止され、差圧成形のサイクルタイムが短くて済む。
【００１７】
成形可能なシートＳ１は、熱可塑性シートなど差圧成形可能な種々の被成形シートを用いることができ、熱可塑性樹脂等の樹脂のみからなる樹脂シートでも、樹脂に充てん材等の添加剤が添加された材質からなるシートでもよく、単層シートでも、異なる材質をラミネートした積層シートでもよい。シートＳ１の素材には、ポリエチレン（Polyethylene）、ポリプロピレン（Polypropylene）、ポリスチレン（Polystyrene）、ポリ塩化ビニル（Poly (vinyl chloride)）、ＡＢＳ樹脂（Acrylonitrile-butadiene-styrene resin）、ポリエチレンテレフタレート（Poly (ethylene terephthalate)）、ポリカーボネート（Polycarbonate）、等を利用可能である。
以下、シートＳ１に熱可塑性シートを用いるものとして説明する。
【００１８】
本実施形態の差圧成形品製造システム１は、製品Ｓ３として冷蔵庫の樹脂製内箱等の厚物を製造するのに好適な構成を有している。本実施形態の差圧成形装置２は、厚み１ｍｍ以上の厚物シートを差圧成形するのに好適な構成を有している。厚物シートの厚みは、１〜５ｍｍ程度など様々な厚みとすることが可能である。むろん、厚み１ｍｍ未満の薄物シートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
また、厚物シートに好適な本実施形態の差圧成形装置２は、１回の差圧成形に必要な長さに切断されたカットシートを差圧成形するのに好適な構成を有している。むろん、ロール状シートなど連続シートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
【００１９】
本実施形態の差圧成形装置２は、さらに、シート加熱装置１０及びクランプ部材５０を備える。シート加熱装置１０は、シート供給位置Ｌ１から差圧成形位置Ｌ２へ搬送される途中のシートＳ１を加熱して軟化させる。クランプ部材５０は、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の他面Ｓ１ｂと成形型４０との間で閉空間形成体３０における凹部３２の周囲３３に対向し、シートＳ１を閉空間形成体３０とで挟持することが可能である。
【００２０】
次に、本実施形態の差圧成形装置２をより具体的に説明する。
シート加熱装置１０は、ヒーター１１を有し、搬送中の熱可塑性のシートＳ１を溶融しない範囲で軟化する温度以上に輻射加熱する。ヒーター１１は、シートＳ１を加熱軟化させることができる加熱能力があればよく、シートＳ１の性質に応じて加熱能力を設定すればよい。
【００２１】
シート保持手段２０は、シート供給位置Ｌ１でシート保持部２１によりシートＳ１を保持してシート加熱装置１０へ搬送し、加熱されたシートＳ１をさらに閉空間形成体３０と成形型４０との間の差圧成形位置Ｌ２へ搬送する。
【００２２】
図３（ａ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０の要部を上から見て示し、図３（ｂ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０をＡ１−Ａ１の位置で切断したときの垂直端面を例示している。ここで、シートの搬送方向Ｄ１と直交する図３（ａ）の上下方向をシートＳ１，Ｓ２の幅方向Ｄ２とする。
本実施形態のシート保持手段２０は、図８に示す保持部駆動装置２５でシート保持部２１をレール２２に沿って駆動する。シート保持部２１は、上方へ突出した突き刺し部を有する下保持部材２１ａ，２１ａと、該突き刺し部の受け入れ部を有する上保持部材２１ｂ，２１ｂとを備え、下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとでシートＳ１の幅方向Ｄ２の両縁部Ｓ１ｃ，Ｓ１ｃを突き刺して保持する。シート保持部２１は、一対のレール２２，２２に沿ってシート供給位置Ｌ１と差圧成形位置Ｌ２との間を水平に移動する。レール２２，２２は、長手方向を搬送方向Ｄ１に向けて設置され、シート加熱装置１０を通り、下保持部材２１ａ，２１ａを移動可能に支持している。
【００２３】
すなわち、シート保持手段２０は、シート供給位置Ｌ１で下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとを近接させてシートの両縁部Ｓ１ｃ，Ｓ１ｃを突き刺して保持し、この状態のシート保持部２１をシート加熱装置１０に通して差圧成形位置Ｌ２へ水平移動させる。シート保持部２１に保持されたシートＳ１は、搬送中にシート加熱装置１０で加熱されて軟化する。また、シート保持手段２０は、差圧成形シートＳ２の離型後に下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとを離間させ、この状態のシート保持部２１をシート供給位置Ｌ１に戻す。従って、本差圧成形装置２は、連続成形に好適である。
むろん、シート保持手段２０は、上述した突き刺し手段の他、シートの縁部を把持して保持するクランプ手段等でもよい。
【００２４】
シートの搬送方向Ｄ１は、水平方向としてシートが安定して搬送されるようにしているが、水平方向から上方向や下方向へずれた方向でも、鉛直上方向でも、鉛直下方向でもよい。
【００２５】
閉空間形成体３０は、図２，４，５に示すように、差圧成形位置Ｌ２にあるときのシートＳ１の一面Ｓ１ａに対向する凹部３２を有し、該シートの一面Ｓ１ａ側に配置されている。閉空間形成体３０は、下面に凹部３２の開口３２ａを有する箱状に形成され、凹部３２の周囲３３となる下面がクランプ部材５０とでシートＳ１を挟む挟持面３３ａとされている。差圧成形前にシートＳ１を凹部３２内で予備膨張させるため、閉空間形成体３０と成形型４０とが近接したときに凹部３２の内面と成形型４０の成形面４２ａとの間に空間が生じるようにされている。すなわち、凹部３２の内面形状は成形面４２ａの形状とは異なっており、凹部３２の内面が間隔を空けて成形面４２ａを覆うようにされている。このような内面形状の凹部３２が閉空間形成体３０に設けられていることにより、凹部３２内に膨出するシートＳ１が凹部３２の内面に接触せず、良好な差圧成形が行われる。
閉空間形成体３０の上部には、凹部３２から上負圧供給エア回路６１及び上圧空供給エア回路６２に繋がる差圧供給エア経路３４と、凹部３２から上開放エア回路６３に繋がる開放エア経路３５とが形成されている。
【００２６】
閉空間形成体３０は、閉空間形成体側テーブルとなる上テーブル３８の下面に取り付けられて固定されている。上テーブル３８は、上下双方向へ移動可能に設けられ、閉空間形成体駆動装置３９に駆動される。閉空間形成体駆動装置３９は、差圧成形位置Ｌ２にあるシート保持部２１に対して上テーブル３８を近接及び離間させる。
【００２７】
成形型４０は、図２，４，６に示すように、凹部３２に対向した凸部４２を有する雄型とされ、差圧成形位置Ｌ２にあるときのシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側に配置されている。成形型の凸部４２の表面は、シートＳ１を密接させる成形面４２ａとされている。成形面４２ａには、下負圧供給エア回路６４、下開放エア回路６５、及び、離型エア供給回路７１に繋がるエア経路４４の孔４４ａが形成されている。本実施形態の成形型４０は、凸部４２を有する型本体４１が基部材４３に取り付けられて固定されている。
【００２８】
成形型４０は、型側テーブルとなる下テーブル４８の上面に取り付けられて固定されている。下テーブル４８は、上下双方向へ移動可能に設けられ、成形型駆動装置４９に駆動される。成形型駆動装置４９は、閉空間形成体３０に対して下テーブル４８を近接及び離間させる。
【００２９】
クランプ部材５０は、図２，４，７に示すように、シート保持部２１で保持されて差圧成形位置Ｌ２にあるときのシートＳ１の他面Ｓ１ｂと成形型４０との間に設置され、閉空間形成体３０における凹部３２の周囲３３に対向している。クランプ部材５０は、成形型の凸部４２を通すための開口５１を有する枠状に形成され、開口５１の周囲となる上面が閉空間形成体３０とでシートＳ１を挟む挟持面５２とされている。
【００３０】
クランプ部材５０は、上下双方向へ移動可能に設けられ、クランプ部材駆動装置５９に駆動される。クランプ部材駆動装置５９は、閉空間形成体３０に対してクランプ部材５０を近接及び離間させる。シートＳ１が閉空間形成体３０とクランプ部材５０とで挟まれて差圧成形されるので、高品質の差圧成形シートＳ２が得られる。
【００３１】
なお、テーブル３８，４８及びクランプ部材５０を上下方向へ移動させる機構は、ボールねじ機構としているものの、ラックとピニオンを組み合わせた機構、リンク機構、クランク機構、油圧シリンダのようなシリンダを用いた機構、等でもよい。
また、シート保持部２１、閉空間形成体３０、成形型４０、及び、クランプ部材５０の主要部分は、金属等で形成することができる。
【００３２】
差圧成形手段６０は、各種駆動装置３９，４９，５９、各種エア回路６１〜６５、制御盤８０、等で構成される。上負圧供給エア回路６１は、閉空間形成体の凹部３２に繋がるエア経路３４に接続され、成形前空間ＳＰ１や成形後空間ＳＰ２を減圧することが可能である。上負圧供給エア回路６１は、単に真空圧を供給するのみならず、インバータ制御により成形前空間ＳＰ１や成形後空間ＳＰ２に供給する負圧（真空圧を含む）を調整可能である。上圧空供給エア回路６２は、エア経路３４に接続され、成形前空間ＳＰ１や成形後空間ＳＰ２に圧空を供給することが可能である。上開放エア回路６３は、閉空間形成体の凹部３２に繋がるエア経路３５に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。下負圧供給エア回路６４は、成形面４２ａに繋がるエア経路４４に接続され、シートＳ１の他面Ｓ１ｂ側を減圧することが可能である。下負圧供給エア回路６４は、単に真空圧を供給するのみならず、インバータ制御によりシートの他面Ｓ１ｂ側に供給する負圧を調整可能である。下開放エア回路６５は、エア経路４４に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。
【００３３】
差圧成形手段６０は、まず、図１０に示すように、差圧成形位置Ｌ２に加熱されたシートＳ１が搬送されたときにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させるとともに凹部３２の周囲３３となる部分のシートＳ１をクランプ部材５０と閉空間形成体３０とで挟んでシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１を形成する。成形前空間ＳＰ１は、常時密閉された空間ではなく、エア経路３４，３５が接続された空間を意味する。
【００３４】
次に、図１１に示すように、差圧成形手段６０は、成形前空間ＳＰ１を減圧してシートＳ１の他面Ｓ１ｂを凹ませる。成形前空間ＳＰ１に供給する負圧は、大気圧（約０．１ＭＰａ）よりも低くされ、絶対圧で、例えば、０．０５ＭＰａ以下、０．０４ＭＰａ以下、０．０３ＭＰａ以下、０．０２ＭＰａ以下、０．０１ＭＰａ以下、とされる。
【００３５】
さらに、差圧成形手段６０は、閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させてシートＳ１の凹んだ他面Ｓ１ｂに凸部４２を挿入させる。さらに、図１２に示すように、差圧成形手段６０は、シートＳ１の他面Ｓ１ｂ側を減圧するとともに成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１を供給し、成形前空間ＳＰ１の圧力よりもシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側の圧力が低くなる差圧を設ける。シートの他面Ｓ１ｂ側に供給する負圧は、大気圧よりも低くされ、絶対圧で、例えば、０．０５ＭＰａ以下、０．０４ＭＰａ以下、０．０３ＭＰａ以下、０．０２ＭＰａ以下、０．０１ＭＰａ以下、とされる。成形前空間ＳＰ１に供給する圧空ＰＡ１の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、０．２〜２ＭＰａ程度とされる。
以上により、シートＳ１は、成形型の成形面４２ａに密接し、差圧成形される。シートの他面Ｓ１ｂを凹ませて成形型の凸部４２を挿入させる差圧成形が行われるので、凸部を有する成形型を用いた高品質の差圧成形シートが得られる。シートＳ１の差圧成形は、圧空真空成形のみならず、シートの他面Ｓ１ｂ側を減圧する真空成形のみでもよいし、成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１を供給する圧空成形のみでもよい。成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１が供給されることにより、高品質の差圧成形シートＳ２が得られる。
【００３６】
離型手段７０は、各種駆動装置３９，４９，５９、上負圧供給エア回路６１、上開放エア回路６３、下開放エア回路６５、離型エア供給回路７１、冷却エア供給手段７５、制御盤８０、等で構成される。離型エア供給回路７１は、成形面４２ａに繋がるエア経路４４に接続され、成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側に圧空を供給することが可能である。
冷却エア供給手段７５は、閉空間形成体３０の凹部３２から成形型４０に向かって冷却用エアＣＡ１を吹き付けるための冷却エア供給回路７６を有し、制御盤８０の制御に従って動作する。冷却エア供給回路７６は、閉空間形成体３０の側面に取り付けられ、成形面４２ａに密着した成形シートＳ２に向かって凹部３２内から斜め下方へ冷却用エアＣＡ１を吹き付ける。冷却用エアＣＡ１は、成形シートＳ２が固化する温度のエアであればよく、外気を用いているが、冷却装置で冷却したエアを用いてもよい。
【００３７】
離型手段７０は、まず、図１３に示すように、成形型４０に密接した成形シートＳ２に向かって冷却エア供給手段７５から冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させる。冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させることには、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始するのとシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させるのを同時に行うこと、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始した後にシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させること、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させた後に冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始すること、のいずれも含まれる。
差圧成形後の成形シートＳ２が冷却されるので、離型時の成形シートＳ２の変形が抑制され、高品質の成形シートＳ２が得られる。
【００３８】
次に、図１４に示すように、離型手段７０は、冷却エア供給手段７５からの冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させて成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれた成形後空間ＳＰ２を形成する。冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させることには、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するのとシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させるのを同時に行うこと、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止した後にシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させること、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させた後に冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止すること、のいずれも含まれる。
【００３９】
さらに、離型手段７０は、成形型４０から圧空（離型エアＲＡ１）を供給するとともに成形後空間ＳＰ２を減圧し、図１５に示すように閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させて成形シートＳ２を離型する。離型エアＲＡ１を供給するとともに成形後空間ＳＰ２を減圧することには、離型エアＲＡ１の供給と成形後空間ＳＰ２の減圧を同時に行うこと、離型エアＲＡ１を供給した後に成形後空間ＳＰ２を減圧すること、成形後空間ＳＰ２を減圧した後に離型エアＲＡ１を供給すること、のいずれも含まれる。離型エアＲＡ１の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、０．２〜２ＭＰａ程度とされる。成形後空間ＳＰ２に供給する負圧は、大気圧よりも低くされ、絶対圧で、例えば、０．０５ＭＰａ以下、０．０４ＭＰａ以下、０．０３ＭＰａ以下、０．０２ＭＰａ以下、０．０１ＭＰａ以下、とされる。下開放エア回路６５を大気に開放していれば、離型エアＲＡ１の供給を省略してもよい。
【００４０】
差圧成形シートＳ２は、離型後、下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとの離間によりシート保持部２１の保持から解放され、差圧成形位置Ｌ２からトリミング装置５へ搬送されて、縁部が所定の大きさに切断される。得られる製品Ｓ３は、製品搬送装置６へ搬送され、さらに所定の取出位置へ搬送される。成形シートＳ２を解放したシート保持部２１は、差圧成形位置Ｌ２からシート供給位置Ｌ１に戻される。
【００４１】
なお、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接及び離間させる際には、閉空間形成体３０のみを移動させているが、シート保持部２１と閉空間形成体３０の両方を移動させてもよいし、シート保持部２１のみを移動させてもよい。
クランプ部材５０と閉空間形成体３０とを近接及び離間させる際には、クランプ部材５０と閉空間形成体３０の両方を移動させているが、クランプ部材５０のみを移動させてもよいし、閉空間形成体３０のみを移動させてもよい。
成形型４０と閉空間形成体３０とを近接及び離間させる際には、成形型４０と閉空間形成体３０の両方を移動させているが、成形型４０のみを移動させてもよいし、閉空間形成体３０のみを移動させてもよい。
【００４２】
図８は、制御盤８０を中心とした差圧成形装置２の電気回路構成を示している。制御盤８０には、シート加熱装置１０、シート保持部２１、各種駆動装置２５，３９，４９，５９、各種エア回路６１，６２，６３，６４，６５，７１，７６、等が電気的に接続されている。制御盤８０は、該制御盤全体の動作を制御する中央制御回路８１、シート加熱装置１０の温度を制御するシート加熱制御部８２ａ、シート保持部２１の保持動作を制御するシート保持制御部８２ｂ、保持部駆動装置２５の動作を制御する保持部駆動制御部８２ｃ、閉空間形成体駆動装置３９の動作を制御する閉空間形成体駆動制御部８２ｄ、成形型駆動装置４９の動作を制御する成形型駆動制御部８２ｅ、クランプ部材駆動装置５９の動作を制御するクランプ部材駆動制御部８２ｆ、上負圧供給エア回路６１の動作を制御する上負圧供給制御部８２ｇ、上圧空供給エア回路６２の動作を制御する上圧空供給制御部８２ｈ、上開放エア回路６３の動作を制御する上開放制御部８２ｉ、下負圧供給エア回路６４の動作を制御する下負圧供給制御部８２ｊ、下開放エア回路６５の動作を制御する下開放制御部８２ｋ、離型エア供給回路７１の動作を制御する離型エア供給制御部８２ｌ、冷却エア供給回路７６の動作を制御する冷却エア供給制御部８２ｍ、情報出力部８４、操作部８５、等を備えている。
【００４３】
中央制御回路８１は、内部のバスに、ＣＰＵ（Central Processing Unit）８１ａ、半導体メモリ８１ｂ，８１ｃ、タイマ回路８１ｄ、不揮発性メモリ８１ｅ、等が接続された回路とされている。ＣＰＵ８１ａは、ＲＯＭ（Read Only Memory）８１ｂや不揮発性メモリ８１ｅに記録された制御プログラムに基づいてＲＡＭ（Random Access Memory）８１ｃをワークエリアとして利用しながら差圧成形装置２の各部を制御する。
情報出力部８４は、例えばディスプレイや音声出力器やプリンタで構成され、利用者から操作入力を受け付けた各種設定の内容や差圧成形装置２の運転状況を表す各種情報を表示等により出力する。操作部８５は、例えば複数のボタンで構成され、利用者から操作入力を受け付ける。
【００４４】
（３）差圧成形装置の動作、並びに、作用及び効果：
本実施形態の制御盤８０は、図９に示すタイミングチャートに従って製品Ｓ３を製造する処理を行う。ここで、タイミングt1〜t14が差圧成形手段６０に対応し、タイミングt15〜t25が離型手段７０に対応している。以下、差圧成形装置２の動作、並びに、作用及び効果を説明する。
なお、図４に示すように、閉空間形成体３０は所定の離間位置Ｌ１１にあり、クランプ部材５０は所定の離間位置Ｌ１２にあり、成形型４０は所定の離間位置Ｌ１３にあり、エア回路６１，６２，６４，７１，７６は動作しておらず、開放エア回路６３，６５は遮断状態であるものとする。
【００４５】
まず、制御盤８０は、保持部駆動装置２５でシート保持部２１をシート供給位置Ｌ１に移動させ、シート保持部２１にシートＳ１を保持させる。次に、制御盤８０は、シート保持部２１をシート加熱装置１０へ移動させる。シート保持部２１に保持されたシートＳ１がシート加熱装置１０で加熱されて軟化すると（タイミングt1）、制御盤８０は、保持部駆動装置２５でシート保持部２１を差圧成形装置２へ移動させる（タイミングt2〜t4）。これにより、加熱軟化したシートＳ１が差圧成形位置Ｌ２へ搬送される。図４には、シートＳ１を搬送している途中のタイミングt3における成形部３の様子が示されている。
【００４６】
シートＳ１を搬送している途中から、制御盤８０は、閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８を所定の近接位置Ｌ１４まで下降させるとともにクランプ部材駆動装置５９でクランプ部材５０を所定の近接位置Ｌ１５まで上昇させる（タイミングt3〜t5）。これにより、図１０に示すように、差圧成形位置Ｌ２に加熱されたシートＳ１が搬送されたときにシート保持部２１と閉空間形成体３０とが近接して凹部３２の周囲３３となる部分のシートＳ１が近接位置Ｌ１５のクランプ部材５０と近接位置Ｌ１４の閉空間形成体３０とで挟まれ、シートの一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１が形成される。
むろん、上テーブル３８の下降タイミングとクランプ部材５０の上昇タイミングは、ずれていてもよい。
【００４７】
その後、制御盤８０は、上負圧供給エア回路６１で成形前空間ＳＰ１に負圧を供給して成形前空間ＳＰ１を減圧させる（タイミングt6〜t7）。すると、図１１に示すように、シートの他面Ｓ１ｂが上方へ凹む。成形前空間ＳＰ１を減圧した後、制御盤８０は、上開放エア回路６３を開放状態に切り替えて成形前空間ＳＰ１を大気に開放させ（タイミングt8〜t10）、成形前空間ＳＰ１を大気に開放している最中に成形型駆動装置４９で下テーブル４８を所定の近接位置Ｌ１６まで上昇させる（タイミングt9〜t12）。成形前空間ＳＰ１を大気に開放しても即座にはシートＳ１が下がってこないので、図１１に示すように、下テーブル４８が上昇を開始する時点でシートの他面Ｓ１ｂは凹んでいる。下テーブル４８に固定された成形型４０が上昇すると、閉空間形成体３０と成形型４０とが近接し、シートＳ１の凹んだ他面Ｓ１ｂに凸部４２が挿入する。図１２は、成形型４０が近接位置Ｌ１６まで上昇していることを示している。
【００４８】
制御盤８０は、上開放エア回路６３を遮断状態に切り替えて成形前空間ＳＰ１を大気から遮断したタイミングt10の後、下テーブル４８が上昇している最中に、下負圧供給エア回路６４で成形面４２ａに負圧を供給させ、シートの他面Ｓ１ｂ側の減圧を開始させる（タイミングt11）。このとき、成形面４２ａに比較的弱い負圧を作用させる副真空引きを行った後、成形面４２ａに強い負圧を作用させる本真空引きを行ってもよい。
以上によりシートＳ１が成形型４０の成形面４２ａに密接することになるが、成形型４０の上昇が完了したタイミングt12の後、制御盤８０は、図１２に示すように、上圧空供給エア回路６２で成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１を供給してさらにシートＳ１を成形面４２ａに密接させる（タイミングt13〜t14）。圧空ＰＡ１の供給時には閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させる向きの強い力が生じるため、タイミングt13の前に閉空間形成体３０と成形型４０とを型締めし、タイミングt14の後に閉空間形成体３０と成形型４０とを型締めから解放してもよい。このようにして、シートＳ１が差圧成形され、成形型４０上に成形シートＳ２が形成される。
【００４９】
制御盤８０は、圧空ＰＡ１の供給を停止するタイミングt14において下開放エア回路６５を開放状態に切り替えてシートの他面Ｓ１ｂ側を大気に開放させる。むろん、圧空ＰＡ１の供給の停止タイミングと他面Ｓ１ｂ側の大気への開放タイミングは、ずれていてもよい。その後、制御盤８０は、成形型４０に密接した成形シートＳ２に向かって冷却エア供給回路７６から冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始させる（タイミングt15）。また、制御盤８０は、閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８を所定の中間位置Ｌ１７まで上昇させ（タイミングt16〜t17）、成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれた成形後空間ＳＰ２を大気に開放する。図１３は、閉空間形成体３０が中間位置Ｌ１７まで上昇していることが示されている。これにより、閉空間形成体の凹部３２から冷却用エアＣＡ１の吹き付けが開始した状態でシート保持部２１と閉空間形成体３０とが離間する。
【００５０】
その後、制御盤８０は、冷却エア供給回路７６からの冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するとともに閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８を近接位置Ｌ１４まで下降させる（タイミングt18〜t19）。すると、図１４に示すように、シート保持部２１と閉空間形成体３０とが近接し、成形シートの一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれた成形後空間ＳＰ２が再び形成される。制御盤８０は、閉空間形成体３０を近接位置Ｌ１４とするタイミングt19において下開放エア回路６５を遮断状態に切り替える。むろん、閉空間形成体３０の近接タイミングと下開放エア回路６５の遮断状態への切り替えタイミングは、ずれていてもよい。また、制御盤８０は、下負圧供給エア回路６４からの負圧の供給を停止させる（タイミングt20）。
【００５１】
その後、制御盤８０は、図１４に示すように、離型エア供給回路７１で成形型４０から離型エアＲＡ１を供給させるとともに、上負圧供給エア回路６１で成形後空間ＳＰ２に負圧を供給させて成形後空間ＳＰ２を減圧させる（タイミングt21〜t23）。このとき、比較的弱い離型エアを供給した後、比較的強い離型エアを供給してもよい。また、制御盤８０は、タイミングt21〜t23の途中において成形型駆動装置４９で下テーブル４８の下降を開始させる（タイミングt22）。すると、図１５に示すように、閉空間形成体３０と成形型４０とが離間し、図１７に示すような成形シートＳ２が離型する。このとき、成形シートの他面Ｓ２ｂ側が大気圧以上で成形後空間ＳＰ２が大気圧未満とされるので、成形シートの一面Ｓ２ａの広い範囲が閉空間形成体３０側に吸引され、成形型４０から離れる力が成形シートＳ２の広い範囲に加わる。従って、離型時の成形シートＳ２の変形が抑止される。また、成形シートＳ２の変形を抑止するために成形型４０の離間速度を下げなくてもよい。
【００５２】
制御盤８０は、下テーブル４８を離間位置Ｌ１３まで下降させるタイミングt22〜t24の間に、閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８の上昇を開始させるとともにクランプ部材駆動装置５９でクランプ部材５０の下降を開始させる（タイミングt23）。むろん、上テーブル３８の上昇開始タイミング、クランプ部材５０の下降開始タイミング、離型エアＲＡ１の供給停止タイミング、及び、成形後空間ＳＰ２の減圧終了タイミングは、ずれていてもよい。そして、制御盤８０は、図１６に示すように、上テーブル３８を離間位置Ｌ１１まで上昇させるとともにクランプ部材５０を離間位置Ｌ１２まで下降させる（タイミングt25）。むろん、上テーブル３８の上昇タイミングとクランプ部材５０の下降タイミングは、ずれていてもよい。
【００５３】
その後、制御盤８０は、シート保持部２１に成形シートＳ２の保持を解放させ、図示しない搬送装置で該成形シートＳ２をトリミング装置５へ送り出す。また、制御盤８０は、保持部駆動装置２５でシート保持部２１を差圧成形位置Ｌ２からシート供給位置Ｌ１に戻す。一方、トリミング装置５は、搬入された成形シートＳ２の縁部を所定の大きさに切断し、形成される製品Ｓ３を製品搬送装置６へ送り出す。製品搬送装置６は、搬入された製品Ｓ３を所定の取出位置へ搬送する。
以上で製造の１サイクルが終了し、以下、タイミングt1〜t25が繰り返されることにより、連続してシートＳ１から差圧成形シートＳ２が形成され、連続して製品Ｓ３が製造される。
【００５４】
以上説明したように、本実施形態の差圧成形装置２及び差圧成形シート製造方法は、離型時、成形シートの一面Ｓ２ａの広い範囲が成形型４０とは反対側に吸引されるので、成形型４０から離れる力が成形シートＳ２の広い範囲に加わる。従って、本実施形態の技術によると、離型時の成形シートＳ２の変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能となる。
【００５５】
（４）変形例：
本発明は、種々の変形例が考えられる。
上述した動作の各タイミングの順番は、適宜、変更可能である。例えば、シート搬送終了のタイミングt4以降にタイミングt3の上テーブル３８の下降やクランプ部材５０の上昇を開始してもよい。上テーブル３８の下降終了やクランプ部材５０の上昇終了のタイミングt5以前にタイミングt6の成形前空間ＳＰ１の減圧を開始してもよい。成形前空間ＳＰ１の減圧終了のタイミングt7以前にタイミングt8の成形前空間ＳＰ１の大気開放を行ってもよい。成形前空間ＳＰ１の大気開放終了のタイミングt10以降にタイミングt9の下テーブル４８の上昇を開始してもよい。下テーブル４８の上昇終了のタイミングt12以降にタイミングt11の成形面４２ａの負圧供給を開始してもよい。成形面４２ａの負圧供給開始のタイミングt11以前にタイミングt13の成形前空間ＳＰ１の圧空供給を開始してもよい。成形前空間ＳＰ１の圧空供給終了やシートの他面Ｓ１ｂ側の大気開放のタイミングt14以前にタイミングt15の冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始してもよい。冷却用エアＣＡ１の吹き付け終了のタイミングt18以前に、タイミングt19の下開放エア回路６５の遮断状態への切り替えを行ったり、タイミングt20の成形面４２ａの負圧供給停止を行ったりしてもよい。
【００５６】
上述した各部材は、複数の部材が組み合わされて構成されてもよい。
成形型は、基部材４３と型本体４１とから構成する以外にも、型側テーブルに直接取り付けられる型のみで構成されてもよい。
成形型に、アンダーカット（Under Cut）部を有する差圧成形シートを離型するため可動型の駆動回路を設けてもよい。この場合、成形型に成形シートが密接しているときに駆動回路で可動型を退避させると、成形シートを離型することができる。
閉空間形成体３０は、成形前空間を減圧してシートの他面を凹ませるものに限定されず、成形前空間を減圧しないものであってもよい。例えば、成形型に雌型を用いる場合、成形前空間を増圧してシートの他面を膨らませてもよい。この場合でも、離型時に成形後空間を減圧することにより、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
被成形シートは、カットシート以外にも、連続シートとされてもよい。
【００５７】
１枚のカットシートから形成する製品は、一つのみならず、複数でもよい。
図１８は、１枚のシートＳ１から複数の製品を形成する変形例の差圧成形装置において成形前空間ＳＰ１を減圧した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。本変形例の閉空間形成体３０は、シートＳ１の他面Ｓ１ｂを凹ませる箇所を複数とするための分割部材３７を備えている。本変形例の成形型４０の凸部４２は、シートの他面Ｓ１ｂにおいて凹んだ箇所のそれぞれに挿入するように分割されている。本差圧成形装置でシートＳ１を差圧成形し、得られる差圧成形シートＳ２をトリミング装置で分割すると、複数の製品が得られる。
【００５８】
また、閉空間形成体３０と成形型４０の位置関係を逆にすることも可能である。
図１９は、閉空間形成体３０をシートＳ１の下側に配置し成形型４０をシートＳ１の上側に配置した変形例の差圧成形装置において成形部３を例示する垂直断面図である。本変形例では、閉空間形成体３０を固定したテーブル３８が下テーブルとされ、成形型４０を固定したテーブル４８が上テーブルとされている。また、本変形例では、クランプ部材が設けられていない。クランプ部材が無くても、近接した閉空間形成体３０の凹部３２とシートＳ１の一面Ｓ１ａとで囲まれる成形前空間を減圧することができれば、本発明を適用可能である。例えば、閉空間形成体３０において凹部３２の周囲となる面３３ａに粘着性の材料を設けたり、シートの一面Ｓ１ａに粘着性の材料層を設けたりすることにより、容易に成形前空間を減圧することができる。
【００５９】
図２０は、図１９に示す成形部３を有する差圧成形装置の電気回路構成の一例を示している。本変形例では、上負圧供給エア回路６１の代わりに下負圧供給エア回路１６１が設けられ、上負圧供給制御部８２ｇの代わりに下負圧供給制御部１８２ｇが設けられ、上開放エア回路６３の代わりに下開放エア回路１６３が設けられ、上開放制御部８２ｉの代わりに下開放制御部１８２ｉが設けられ、下負圧供給エア回路６４の代わりに上負圧供給エア回路１６４が設けられ、下負圧供給制御部８２ｊの代わりに上負圧供給制御部１８２ｊが設けられ、下開放エア回路６５の代わりに上開放エア回路１６５が設けられ、下開放制御部８２ｋの代わりに上開放制御部１８２ｋが設けられている。
【００６０】
また、本変形例では、クランプ部材駆動装置や下圧空供給エア回路や離型エア供給回路や冷却エア供給回路が設けられていない。上圧空供給エア回路６２に相当する下圧空供給エア回路が無くても、上負圧供給エア回路１６４によりシートＳ１を差圧成形することが可能である。離型エア供給回路が無くても、下負圧供給エア回路１６１により成形シートを離型することが可能である。冷却エア供給回路が無くても、成形シートが固化等により変形し難くなっていれば、成形シートを離型することが可能である。
【００６１】
さらに、本変形例では、シート加熱装置や保持部駆動装置が設けられていない。シート加熱装置が無くても、例えば、外部の加熱装置でシートＳ１を軟化させると、シートＳ１を差圧成形することができる。保持部駆動装置が無くても、軟化したシートＳ１を差圧成形位置でシート保持部に保持させると、差圧成形位置でシートＳ１を差圧成形することができる。
さらに、本変形例では、制御盤８０にシート保持部２１が接続されていない。シート保持部２１の保持動作が制御されなくても、作業者がシートＳ１をシート保持部に保持させることにより、シートＳ１を差圧成形することができる。
【００６２】
図２１は、図２０に示す差圧成形装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。本変形例の制御盤８０は、まず、閉空間形成体３０を固定した下側のテーブル３８を所定の近接位置まで上昇させてシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間を形成させる（タイミングt3〜t5）。次に、制御盤８０は、成形前空間ＳＰ１を減圧してシートＳ１の他面Ｓ１ｂを下方へ凹ませる（タイミングt6〜t7）。さらに、制御盤８０は、成形前空間ＳＰ１を大気に開放させ（タイミングt8）、成形型４０を固定した上側のテーブル４８を所定の近接位置まで下降させてシートＳ１の凹んだ他面Ｓ１ｂに凸部４２を挿入させる（タイミングt9〜t12）。さらに、制御盤８０は、上側のテーブル４８が下降している最中にシートの他面Ｓ１ｂ側の減圧を開始させ（タイミングt11）、シートＳ１を成形型４０に密接させる。
【００６３】
さらに、制御盤８０は、成形後空間ＳＰ２を大気から遮断し（タイミングt14）、成形面４２ａへの負圧の供給を停止させ（タイミングt20）、成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側を大気に開放させるとともに成形後空間を減圧させる（タイミングt21〜t23）。また、制御盤８０は、成形型４０を固定した上側のテーブル４８を所定の離間位置まで上昇させて成形シートＳ２を離型させる（タイミングt22〜t24）。さらに、制御盤８０は、閉空間形成体３０を固定した下側のテーブル３８を所定の離間位置まで下降させる（タイミングt23〜t25）。
本変形例でも、離型時、成形シートＳ２の他面側が大気圧で成形後空間が大気圧未満とされるので、成形シートＳ２の一面の広い範囲が閉空間形成体３０側に吸引され、成形型４０から離れる力が成形シートＳ２の広い範囲に加わる。従って、本変形例によっても、離型時の成形シートＳ２の変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能となる。
【００６４】
むろん、図２２に示す変形例のタイミングチャートのように、閉空間形成体３０をシートＳ１の上側に配置し成形型４０をシートＳ１の下側に配置しても同様にしてシートＳ１を差圧成形して離型することができる。図２２の例では、下テーブル４８の上昇開始タイミングt9の後に成形前空間ＳＰ１が大気に開放され（タイミングt8）、成形面４２ａへの負圧供給の停止タイミングt20の後に成形後空間ＳＰ２が大気から遮断されている（タイミングt14）。むろん、本変形例でも、動作の各タイミングの順番は、適宜、変更可能である。
【００６５】
また、成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置されて前記凹部に対向した成形型と、を用い、前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させ、前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する基本構成のみでも、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
すなわち、独立請求項に係る構成要件のみからなる差圧成形装置及び差圧成形シート製造方法でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【００６６】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、離型時の差圧成形シートの変形を抑止しながら差圧成形のサイクルタイムを短縮することが可能な技術を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【００６７】
１…差圧成形品製造システム、２…差圧成形装置、
３…成形部、４…シート供給装置、５…トリミング装置、６…製品搬送装置、
１０…シート加熱装置、１１…ヒーター、
２０…シート保持手段、２１…シート保持部、
２５…保持部駆動装置、
３０…閉空間形成体、３２…凹部、３２ａ…開口、３３…凹部の周囲、３３ａ…挟持面、
３４，３５…エア経路、
３７…分割部材、
３８，４８…テーブル、
３９…閉空間形成体駆動装置、
４０…成形型、４１…型本体、４２…凸部、４２ａ…成形面、４３…基部材、
４４…エア経路、４４ａ…孔、
４９…成形型駆動装置、
５０…クランプ部材、５１…開口、５２…挟持面、
５９…クランプ部材駆動装置、
６０…差圧成形手段、
６１…上負圧供給エア回路、６２…上圧空供給エア回路、６３…上開放エア回路、
６４…下負圧供給エア回路、６５…下開放エア回路、
７０…離型手段、７１…離型エア供給回路、
７５…冷却エア供給手段、７６…冷却エア供給回路、
８０…制御盤、
ＣＡ１…冷却用エア、
Ｄ１…シートの搬送方向、Ｄ２…シートの幅方向、
Ｌ１…シート供給位置、Ｌ２…差圧成形位置、
Ｌ１１，Ｌ１２，Ｌ１３…離間位置、Ｌ１４，Ｌ１５，Ｌ１６…近接位置、
Ｌ１７…中間位置、
ＰＡ１…圧空、ＲＡ１…離型エア、
Ｓ１…シート、Ｓ１ａ…シートの一面、Ｓ１ｂ…シートの他面、Ｓ１ｃ…縁部、
Ｓ２…成形シート、Ｓ２ａ…成形シートの一面、Ｓ２ｂ…成形シートの他面、
ＳＰ１…成形前空間、ＳＰ２…成形後空間。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置、及び、差圧成形シート製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
真空成形や圧空成形等の差圧成形は、加熱された被成形シートの一面側と他面側の圧力に差を設ける熱成形として知られている。
被成形シートの差圧成形法として、特開昭４８−１０１６５号公報に冷蔵庫扉の内板の真空成形法が開示されている。この真空成形法では、加熱されたプラスチックシートを上部型と下部型との間に置き、上部型でプラスチックシートの上面を密閉的に覆い、上部型内の空気を排除することによりプラスチックシートを上部型側に吸引し、その後、上部型と下部型とを近付けて型締めし、次いで下部型の孔から空気を排除して下部型にプラスチックシートを吸引している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開昭４８−１０１６５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
下部型から成形シートを離型するために下部型の孔から離型エアを吹き出すと、成形シートが下部型から一部のみしか離れず、縁部が挟持された成形シートから下部型を離間させる時に成形シートが変形することがある。成形シートの変形を防ぐために下部型の離間速度を下げると、成形のサイクルタイム（cycle time）が増えてしまう。
【０００５】
以上を鑑み、本発明は、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成するため、本発明は、成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させる差圧成形手段と、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する離型手段とを備えることを特徴とする。
【０００７】
また、本発明は、成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させ、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする。
【０００８】
シートの一面と閉空間形成体の凹部とで囲まれた成形前空間の圧力よりもシートの他面側の圧力が低くなる差圧によりシートが成形型に密接すると、成形シートの他面側が大気圧以上にされるとともに成形シートの一面と凹部とで囲まれる成形後空間が減圧されて大気圧未満とされ、閉空間形成体と成形型とが離間する。成形シートの他面側が大気圧以上で成形後空間が大気圧未満とされるので、成形シートの一面の広い範囲が閉空間形成体側に吸引される。この状態で閉空間形成体と成形型とが離間し、成形型から成形シートが離型される。
【０００９】
成形シートの一面の広い範囲が成形型とは反対側に吸引されるので、成形型から離れる力が成形シートの広い範囲に加わる。従って、離型時の成形シートの変形が抑止される。また、成形シートの変形を抑止するために成形型の離間速度を下げなくてもよい。
従って、本発明の差圧成形装置及び差圧成形シート製造方法は、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【００１０】
ここで、上記差圧成形には、真空成形、圧空成形、真空と圧空を併用する圧空真空成形、が含まれる。
上記シート保持手段には、シートの縁部を突き刺して保持する突き刺し手段、シートの縁部を把持して保持するクランプ手段、等が含まれる。
上記閉空間形成体で形成される成形前空間及び成形後空間は、常時密閉された空間ではなく、圧力を変えるためのエア経路が接続された空間を意味する。従って、上記閉空間形成体で形成される成形前空間及び成形後空間は、減圧経路、圧空経路、大気への開放と大気からの遮断とを切り替える経路、等が接続されてもよい。
上記圧力は、絶対圧とする。
上述した、成形前空間の圧力よりもシートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けることには、シートの他面側を減圧すること、成形前空間に圧空を供給すること、シートの他面側を減圧しながら成形前空間に圧空を供給すること、のいずれも含まれる。
上述した、成形シートの一面と凹部とで形成される成形後空間には、差圧成形後にシート保持部と閉空間形成体とが離間した後に近接して再び形成される空間が含まれる。
上述した、成形シートの他面側を大気圧以上にすることには、成形シートの他面側を大気に開放すること、成形シートの他面側に圧空を供給すること、のいずれも含まれる。
上述した、成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに成形後空間を減圧して大気圧未満にすることには、成形シートの他面側を大気圧以上にするのと成形後空間を減圧するのを同時に行うこと、成形シートの他面側を大気圧以上にした後に成形後空間を減圧すること、成形後空間を減圧した後に成形シートの他面側を大気圧以上にすること、のいずれも含まれる。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１に係る発明によれば、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形装置を提供することができる。
請求項２に係る発明では、凸部を有する成形型を用いた差圧成形シートの品質を向上させることができる。
請求項３、請求項４、請求項６に係る発明では、差圧成形シートの品質を向上させることができる。
請求項５に係る発明では、連続成形に好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項７に係る発明では、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形装置を提供することができる。
請求項８に係る発明では、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
請求項９に係る発明では、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮するのに好適な差圧成形シート製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置２を有する差圧成形品製造システム１を例示する正面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る差圧成形装置２を例示する正面図である。
【図３】（ａ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０の要部を例示する平面図、（ｂ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０をＡ１−Ａ１の位置で切断したときの垂直端面を例示する図、である。
【図４】成形部３を例示する垂直断面図である。
【図５】上テーブル３８とともに閉空間形成体３０を例示する底面図である。
【図６】下テーブル４８とともに成形型４０を例示する平面図である。
【図７】クランプ部材５０を例示する平面図である。
【図８】差圧成形装置２の電気回路構成の概略を例示するブロック図である。
【図９】差圧成形装置２の動作を例示するタイミングチャートである。
【図１０】クランプ部材５０と閉空間形成体３０とでシートＳ１を挟んだ状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１１】成形前空間ＳＰ１を減圧した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１２】閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させてシートＳ１を差圧成形した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１３】成形シートＳ２に向かって冷却用エアＣＡ１を吹き付けながらシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１４】冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止してシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１５】成形後空間ＳＰ２を減圧してシート保持部２１と成形型４０とを離間させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１６】クランプ部材５０と閉空間形成体３０とを離間させた状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１７】離型された成形シートＳ２の外観を例示する斜視図である。
【図１８】変形例において成形前空間ＳＰ１を減圧した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。
【図１９】変形例に係る成形部３を例示する垂直断面図である。
【図２０】変形例に係る差圧成形装置の電気回路構成の概略を例示するブロック図である。
【図２１】変形例に係る差圧成形装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【図２２】変形例に係る差圧成形装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
（１）差圧成形品製造システムの説明：
図１は、本発明の一実施形態に係る差圧成形装置２を有する差圧成形品製造システム１を例示する正面図である。図２は、差圧成形品製造システム１に含まれる差圧成形装置２を例示する正面図である。ここで、図１，２の左から右へ向かう方向がシートＳ１，Ｓ２の搬送方向Ｄ１であり、左側がシートＳ１，Ｓ２の上流側、右側がシートＳ１，Ｓ２の下流側である。
差圧成形品製造システム１は、シート供給装置４、シート保持手段２０、シート加熱装置１０、成形部３、トリミング装置５、製品搬送装置６、を備え、制御盤８０の制御に従って動作する。
【００１４】
シート供給装置４は、所定のシートストック位置ＬＳ１に積み重ねられた被成形シートＳ１を一枚ずつ所定のシート供給位置Ｌ１へ搬送する。シート保持手段２０は、シート供給装置４で搬送されたシートＳ１をシート供給位置Ｌ１で保持し、所定の差圧成形位置Ｌ２まで所定の搬送方向Ｄ１へ搬送する。シート加熱装置１０は、シート供給位置Ｌ１と差圧成形位置Ｌ２との間に設置され、搬送中のシートＳ１を加熱する。成形部３は、加熱されたシートＳ１を差圧成形し、図１７に示すような差圧成形シートＳ２を離型してトリミング装置５へ送り出す。トリミング装置５は、差圧成形シートＳ２の縁部を所定の大きさに切断するトリミングを行い、得られる差圧成形品（製品Ｓ３）を製品搬送装置６の方へ送り出す。製品搬送装置６は、製品Ｓ３を所定の取出位置へ搬送する。シート供給装置４のシート供給動作、シート保持手段２０のシートを保持して搬送する動作、成形部３の成形動作、トリミング装置５のトリミング動作、及び、製品搬送装置６の製品搬送動作は、同期して間欠的に行われる。
【００１５】
（２）差圧成形装置の説明：
差圧成形装置２は、成形可能なシートＳ１を差圧成形して離型する。図２〜１６に示す差圧成形装置２は、シートＳ１に対していわゆる圧空真空成形、すなわち、真空と圧空を併用する差圧成形を行う。むろん、差圧成形装置２は、シートＳ１に対して真空成形のみ行ってもよいし、シートＳ１に対して圧空成形のみを行ってもよい。
差圧成形装置２の基本部分は、シート保持手段２０、閉空間形成体３０、成形型４０、差圧成形手段６０、離型手段７０、からなる。図１，２に例示した差圧成形装置２は、閉空間形成体３０及び成形型４０が成形部３に含まれるとともに、差圧成形手段６０及び離型手段７０が成形部３と制御盤８０とで構成されている。
【００１６】
シート保持手段２０は、シートＳ１をシート保持部２１で保持する。閉空間形成体３０は、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の一面Ｓ１ａに対向した凹部３２を有する。成形型４０は、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側に配置され、凹部３２に対向している。差圧成形手段６０は、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させてシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１を形成し、閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させ、成形前空間ＳＰ１の圧力よりもシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側の圧力が低くなる差圧を設けてシートＳ１を成形型４０に密接させる。ここでいう圧力は、絶対圧である。離型手段７０は、成形型４０に密接した成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側を大気圧以上にするとともに該成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれる成形後空間ＳＰ２を減圧して大気圧未満とし、閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させて成形シートＳ２を離型する。これにより、離型時の差圧成形シートＳ２の変形が抑止され、差圧成形のサイクルタイムが短くて済む。
【００１７】
成形可能なシートＳ１は、熱可塑性シートなど差圧成形可能な種々の被成形シートを用いることができ、熱可塑性樹脂等の樹脂のみからなる樹脂シートでも、樹脂に充てん材等の添加剤が添加された材質からなるシートでもよく、単層シートでも、異なる材質をラミネートした積層シートでもよい。シートＳ１の素材には、ポリエチレン（Polyethylene）、ポリプロピレン（Polypropylene）、ポリスチレン（Polystyrene）、ポリ塩化ビニル（Poly (vinyl chloride)）、ＡＢＳ樹脂（Acrylonitrile-butadiene-styrene resin）、ポリエチレンテレフタレート（Poly (ethylene terephthalate)）、ポリカーボネート（Polycarbonate）、等を利用可能である。
以下、シートＳ１に熱可塑性シートを用いるものとして説明する。
【００１８】
本実施形態の差圧成形品製造システム１は、製品Ｓ３として冷蔵庫の樹脂製内箱等の厚物を製造するのに好適な構成を有している。本実施形態の差圧成形装置２は、厚み１ｍｍ以上の厚物シートを差圧成形するのに好適な構成を有している。厚物シートの厚みは、１〜５ｍｍ程度など様々な厚みとすることが可能である。むろん、厚み１ｍｍ未満の薄物シートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
また、厚物シートに好適な本実施形態の差圧成形装置２は、１回の差圧成形に必要な長さに切断されたカットシートを差圧成形するのに好適な構成を有している。むろん、ロール状シートなど連続シートの差圧成形にも、本発明を適用可能である。
【００１９】
本実施形態の差圧成形装置２は、さらに、シート加熱装置１０及びクランプ部材５０を備える。シート加熱装置１０は、シート供給位置Ｌ１から差圧成形位置Ｌ２へ搬送される途中のシートＳ１を加熱して軟化させる。クランプ部材５０は、シート保持部２１で保持されたシートＳ１の他面Ｓ１ｂと成形型４０との間で閉空間形成体３０における凹部３２の周囲３３に対向し、シートＳ１を閉空間形成体３０とで挟持することが可能である。
【００２０】
次に、本実施形態の差圧成形装置２をより具体的に説明する。
シート加熱装置１０は、ヒーター１１を有し、搬送中の熱可塑性のシートＳ１を溶融しない範囲で軟化する温度以上に輻射加熱する。ヒーター１１は、シートＳ１を加熱軟化させることができる加熱能力があればよく、シートＳ１の性質に応じて加熱能力を設定すればよい。
【００２１】
シート保持手段２０は、シート供給位置Ｌ１でシート保持部２１によりシートＳ１を保持してシート加熱装置１０へ搬送し、加熱されたシートＳ１をさらに閉空間形成体３０と成形型４０との間の差圧成形位置Ｌ２へ搬送する。
【００２２】
図３（ａ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０の要部を上から見て示し、図３（ｂ）はシートＳ１を保持したシート保持手段２０をＡ１−Ａ１の位置で切断したときの垂直端面を例示している。ここで、シートの搬送方向Ｄ１と直交する図３（ａ）の上下方向をシートＳ１，Ｓ２の幅方向Ｄ２とする。
本実施形態のシート保持手段２０は、図８に示す保持部駆動装置２５でシート保持部２１をレール２２に沿って駆動する。シート保持部２１は、上方へ突出した突き刺し部を有する下保持部材２１ａ，２１ａと、該突き刺し部の受け入れ部を有する上保持部材２１ｂ，２１ｂとを備え、下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとでシートＳ１の幅方向Ｄ２の両縁部Ｓ１ｃ，Ｓ１ｃを突き刺して保持する。シート保持部２１は、一対のレール２２，２２に沿ってシート供給位置Ｌ１と差圧成形位置Ｌ２との間を水平に移動する。レール２２，２２は、長手方向を搬送方向Ｄ１に向けて設置され、シート加熱装置１０を通り、下保持部材２１ａ，２１ａを移動可能に支持している。
【００２３】
すなわち、シート保持手段２０は、シート供給位置Ｌ１で下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとを近接させてシートの両縁部Ｓ１ｃ，Ｓ１ｃを突き刺して保持し、この状態のシート保持部２１をシート加熱装置１０に通して差圧成形位置Ｌ２へ水平移動させる。シート保持部２１に保持されたシートＳ１は、搬送中にシート加熱装置１０で加熱されて軟化する。また、シート保持手段２０は、差圧成形シートＳ２の離型後に下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとを離間させ、この状態のシート保持部２１をシート供給位置Ｌ１に戻す。従って、本差圧成形装置２は、連続成形に好適である。
むろん、シート保持手段２０は、上述した突き刺し手段の他、シートの縁部を把持して保持するクランプ手段等でもよい。
【００２４】
シートの搬送方向Ｄ１は、水平方向としてシートが安定して搬送されるようにしているが、水平方向から上方向や下方向へずれた方向でも、鉛直上方向でも、鉛直下方向でもよい。
【００２５】
閉空間形成体３０は、図２，４，５に示すように、差圧成形位置Ｌ２にあるときのシートＳ１の一面Ｓ１ａに対向する凹部３２を有し、該シートの一面Ｓ１ａ側に配置されている。閉空間形成体３０は、下面に凹部３２の開口３２ａを有する箱状に形成され、凹部３２の周囲３３となる下面がクランプ部材５０とでシートＳ１を挟む挟持面３３ａとされている。差圧成形前にシートＳ１を凹部３２内で予備膨張させるため、閉空間形成体３０と成形型４０とが近接したときに凹部３２の内面と成形型４０の成形面４２ａとの間に空間が生じるようにされている。すなわち、凹部３２の内面形状は成形面４２ａの形状とは異なっており、凹部３２の内面が間隔を空けて成形面４２ａを覆うようにされている。このような内面形状の凹部３２が閉空間形成体３０に設けられていることにより、凹部３２内に膨出するシートＳ１が凹部３２の内面に接触せず、良好な差圧成形が行われる。
閉空間形成体３０の上部には、凹部３２から上負圧供給エア回路６１及び上圧空供給エア回路６２に繋がる差圧供給エア経路３４と、凹部３２から上開放エア回路６３に繋がる開放エア経路３５とが形成されている。
【００２６】
閉空間形成体３０は、閉空間形成体側テーブルとなる上テーブル３８の下面に取り付けられて固定されている。上テーブル３８は、上下双方向へ移動可能に設けられ、閉空間形成体駆動装置３９に駆動される。閉空間形成体駆動装置３９は、差圧成形位置Ｌ２にあるシート保持部２１に対して上テーブル３８を近接及び離間させる。
【００２７】
成形型４０は、図２，４，６に示すように、凹部３２に対向した凸部４２を有する雄型とされ、差圧成形位置Ｌ２にあるときのシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側に配置されている。成形型の凸部４２の表面は、シートＳ１を密接させる成形面４２ａとされている。成形面４２ａには、下負圧供給エア回路６４、下開放エア回路６５、及び、離型エア供給回路７１に繋がるエア経路４４の孔４４ａが形成されている。本実施形態の成形型４０は、凸部４２を有する型本体４１が基部材４３に取り付けられて固定されている。
【００２８】
成形型４０は、型側テーブルとなる下テーブル４８の上面に取り付けられて固定されている。下テーブル４８は、上下双方向へ移動可能に設けられ、成形型駆動装置４９に駆動される。成形型駆動装置４９は、閉空間形成体３０に対して下テーブル４８を近接及び離間させる。
【００２９】
クランプ部材５０は、図２，４，７に示すように、シート保持部２１で保持されて差圧成形位置Ｌ２にあるときのシートＳ１の他面Ｓ１ｂと成形型４０との間に設置され、閉空間形成体３０における凹部３２の周囲３３に対向している。クランプ部材５０は、成形型の凸部４２を通すための開口５１を有する枠状に形成され、開口５１の周囲となる上面が閉空間形成体３０とでシートＳ１を挟む挟持面５２とされている。
【００３０】
クランプ部材５０は、上下双方向へ移動可能に設けられ、クランプ部材駆動装置５９に駆動される。クランプ部材駆動装置５９は、閉空間形成体３０に対してクランプ部材５０を近接及び離間させる。シートＳ１が閉空間形成体３０とクランプ部材５０とで挟まれて差圧成形されるので、高品質の差圧成形シートＳ２が得られる。
【００３１】
なお、テーブル３８，４８及びクランプ部材５０を上下方向へ移動させる機構は、ボールねじ機構としているものの、ラックとピニオンを組み合わせた機構、リンク機構、クランク機構、油圧シリンダのようなシリンダを用いた機構、等でもよい。
また、シート保持部２１、閉空間形成体３０、成形型４０、及び、クランプ部材５０の主要部分は、金属等で形成することができる。
【００３２】
差圧成形手段６０は、各種駆動装置３９，４９，５９、各種エア回路６１〜６５、制御盤８０、等で構成される。上負圧供給エア回路６１は、閉空間形成体の凹部３２に繋がるエア経路３４に接続され、成形前空間ＳＰ１や成形後空間ＳＰ２を減圧することが可能である。上負圧供給エア回路６１は、単に真空圧を供給するのみならず、インバータ制御により成形前空間ＳＰ１や成形後空間ＳＰ２に供給する負圧（真空圧を含む）を調整可能である。上圧空供給エア回路６２は、エア経路３４に接続され、成形前空間ＳＰ１や成形後空間ＳＰ２に圧空を供給することが可能である。上開放エア回路６３は、閉空間形成体の凹部３２に繋がるエア経路３５に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。下負圧供給エア回路６４は、成形面４２ａに繋がるエア経路４４に接続され、シートＳ１の他面Ｓ１ｂ側を減圧することが可能である。下負圧供給エア回路６４は、単に真空圧を供給するのみならず、インバータ制御によりシートの他面Ｓ１ｂ側に供給する負圧を調整可能である。下開放エア回路６５は、エア経路４４に接続され、大気への開放と大気からの遮断とを切り替えることが可能である。
【００３３】
差圧成形手段６０は、まず、図１０に示すように、差圧成形位置Ｌ２に加熱されたシートＳ１が搬送されたときにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させるとともに凹部３２の周囲３３となる部分のシートＳ１をクランプ部材５０と閉空間形成体３０とで挟んでシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１を形成する。成形前空間ＳＰ１は、常時密閉された空間ではなく、エア経路３４，３５が接続された空間を意味する。
【００３４】
次に、図１１に示すように、差圧成形手段６０は、成形前空間ＳＰ１を減圧してシートＳ１の他面Ｓ１ｂを凹ませる。成形前空間ＳＰ１に供給する負圧は、大気圧（約０．１ＭＰａ）よりも低くされ、絶対圧で、例えば、０．０５ＭＰａ以下、０．０４ＭＰａ以下、０．０３ＭＰａ以下、０．０２ＭＰａ以下、０．０１ＭＰａ以下、とされる。
【００３５】
さらに、差圧成形手段６０は、閉空間形成体３０と成形型４０とを近接させてシートＳ１の凹んだ他面Ｓ１ｂに凸部４２を挿入させる。さらに、図１２に示すように、差圧成形手段６０は、シートＳ１の他面Ｓ１ｂ側を減圧するとともに成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１を供給し、成形前空間ＳＰ１の圧力よりもシートＳ１の他面Ｓ１ｂ側の圧力が低くなる差圧を設ける。シートの他面Ｓ１ｂ側に供給する負圧は、大気圧よりも低くされ、絶対圧で、例えば、０．０５ＭＰａ以下、０．０４ＭＰａ以下、０．０３ＭＰａ以下、０．０２ＭＰａ以下、０．０１ＭＰａ以下、とされる。成形前空間ＳＰ１に供給する圧空ＰＡ１の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、０．２〜２ＭＰａ程度とされる。
以上により、シートＳ１は、成形型の成形面４２ａに密接し、差圧成形される。シートの他面Ｓ１ｂを凹ませて成形型の凸部４２を挿入させる差圧成形が行われるので、凸部を有する成形型を用いた高品質の差圧成形シートが得られる。シートＳ１の差圧成形は、圧空真空成形のみならず、シートの他面Ｓ１ｂ側を減圧する真空成形のみでもよいし、成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１を供給する圧空成形のみでもよい。成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１が供給されることにより、高品質の差圧成形シートＳ２が得られる。
【００３６】
離型手段７０は、各種駆動装置３９，４９，５９、上負圧供給エア回路６１、上開放エア回路６３、下開放エア回路６５、離型エア供給回路７１、冷却エア供給手段７５、制御盤８０、等で構成される。離型エア供給回路７１は、成形面４２ａに繋がるエア経路４４に接続され、成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側に圧空を供給することが可能である。
冷却エア供給手段７５は、閉空間形成体３０の凹部３２から成形型４０に向かって冷却用エアＣＡ１を吹き付けるための冷却エア供給回路７６を有し、制御盤８０の制御に従って動作する。冷却エア供給回路７６は、閉空間形成体３０の側面に取り付けられ、成形面４２ａに密着した成形シートＳ２に向かって凹部３２内から斜め下方へ冷却用エアＣＡ１を吹き付ける。冷却用エアＣＡ１は、成形シートＳ２が固化する温度のエアであればよく、外気を用いているが、冷却装置で冷却したエアを用いてもよい。
【００３７】
離型手段７０は、まず、図１３に示すように、成形型４０に密接した成形シートＳ２に向かって冷却エア供給手段７５から冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させる。冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させることには、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始するのとシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させるのを同時に行うこと、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始した後にシート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させること、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを離間させた後に冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始すること、のいずれも含まれる。
差圧成形後の成形シートＳ２が冷却されるので、離型時の成形シートＳ２の変形が抑制され、高品質の成形シートＳ２が得られる。
【００３８】
次に、図１４に示すように、離型手段７０は、冷却エア供給手段７５からの冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させて成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれた成形後空間ＳＰ２を形成する。冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するとともにシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させることには、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するのとシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させるのを同時に行うこと、冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止した後にシート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させること、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接させた後に冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止すること、のいずれも含まれる。
【００３９】
さらに、離型手段７０は、成形型４０から圧空（離型エアＲＡ１）を供給するとともに成形後空間ＳＰ２を減圧し、図１５に示すように閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させて成形シートＳ２を離型する。離型エアＲＡ１を供給するとともに成形後空間ＳＰ２を減圧することには、離型エアＲＡ１の供給と成形後空間ＳＰ２の減圧を同時に行うこと、離型エアＲＡ１を供給した後に成形後空間ＳＰ２を減圧すること、成形後空間ＳＰ２を減圧した後に離型エアＲＡ１を供給すること、のいずれも含まれる。離型エアＲＡ１の圧力は、大気圧よりも高くされ、絶対圧で、例えば、０．２〜２ＭＰａ程度とされる。成形後空間ＳＰ２に供給する負圧は、大気圧よりも低くされ、絶対圧で、例えば、０．０５ＭＰａ以下、０．０４ＭＰａ以下、０．０３ＭＰａ以下、０．０２ＭＰａ以下、０．０１ＭＰａ以下、とされる。下開放エア回路６５を大気に開放していれば、離型エアＲＡ１の供給を省略してもよい。
【００４０】
差圧成形シートＳ２は、離型後、下保持部材２１ａ，２１ａと上保持部材２１ｂ，２１ｂとの離間によりシート保持部２１の保持から解放され、差圧成形位置Ｌ２からトリミング装置５へ搬送されて、縁部が所定の大きさに切断される。得られる製品Ｓ３は、製品搬送装置６へ搬送され、さらに所定の取出位置へ搬送される。成形シートＳ２を解放したシート保持部２１は、差圧成形位置Ｌ２からシート供給位置Ｌ１に戻される。
【００４１】
なお、シート保持部２１と閉空間形成体３０とを近接及び離間させる際には、閉空間形成体３０のみを移動させているが、シート保持部２１と閉空間形成体３０の両方を移動させてもよいし、シート保持部２１のみを移動させてもよい。
クランプ部材５０と閉空間形成体３０とを近接及び離間させる際には、クランプ部材５０と閉空間形成体３０の両方を移動させているが、クランプ部材５０のみを移動させてもよいし、閉空間形成体３０のみを移動させてもよい。
成形型４０と閉空間形成体３０とを近接及び離間させる際には、成形型４０と閉空間形成体３０の両方を移動させているが、成形型４０のみを移動させてもよいし、閉空間形成体３０のみを移動させてもよい。
【００４２】
図８は、制御盤８０を中心とした差圧成形装置２の電気回路構成を示している。制御盤８０には、シート加熱装置１０、シート保持部２１、各種駆動装置２５，３９，４９，５９、各種エア回路６１，６２，６３，６４，６５，７１，７６、等が電気的に接続されている。制御盤８０は、該制御盤全体の動作を制御する中央制御回路８１、シート加熱装置１０の温度を制御するシート加熱制御部８２ａ、シート保持部２１の保持動作を制御するシート保持制御部８２ｂ、保持部駆動装置２５の動作を制御する保持部駆動制御部８２ｃ、閉空間形成体駆動装置３９の動作を制御する閉空間形成体駆動制御部８２ｄ、成形型駆動装置４９の動作を制御する成形型駆動制御部８２ｅ、クランプ部材駆動装置５９の動作を制御するクランプ部材駆動制御部８２ｆ、上負圧供給エア回路６１の動作を制御する上負圧供給制御部８２ｇ、上圧空供給エア回路６２の動作を制御する上圧空供給制御部８２ｈ、上開放エア回路６３の動作を制御する上開放制御部８２ｉ、下負圧供給エア回路６４の動作を制御する下負圧供給制御部８２ｊ、下開放エア回路６５の動作を制御する下開放制御部８２ｋ、離型エア供給回路７１の動作を制御する離型エア供給制御部８２ｌ、冷却エア供給回路７６の動作を制御する冷却エア供給制御部８２ｍ、情報出力部８４、操作部８５、等を備えている。
【００４３】
中央制御回路８１は、内部のバスに、ＣＰＵ（Central Processing Unit）８１ａ、半導体メモリ８１ｂ，８１ｃ、タイマ回路８１ｄ、不揮発性メモリ８１ｅ、等が接続された回路とされている。ＣＰＵ８１ａは、ＲＯＭ（Read Only Memory）８１ｂや不揮発性メモリ８１ｅに記録された制御プログラムに基づいてＲＡＭ（Random Access Memory）８１ｃをワークエリアとして利用しながら差圧成形装置２の各部を制御する。
情報出力部８４は、例えばディスプレイや音声出力器やプリンタで構成され、利用者から操作入力を受け付けた各種設定の内容や差圧成形装置２の運転状況を表す各種情報を表示等により出力する。操作部８５は、例えば複数のボタンで構成され、利用者から操作入力を受け付ける。
【００４４】
（３）差圧成形装置の動作、並びに、作用及び効果：
本実施形態の制御盤８０は、図９に示すタイミングチャートに従って製品Ｓ３を製造する処理を行う。ここで、タイミングt1〜t14が差圧成形手段６０に対応し、タイミングt15〜t25が離型手段７０に対応している。以下、差圧成形装置２の動作、並びに、作用及び効果を説明する。
なお、図４に示すように、閉空間形成体３０は所定の離間位置Ｌ１１にあり、クランプ部材５０は所定の離間位置Ｌ１２にあり、成形型４０は所定の離間位置Ｌ１３にあり、エア回路６１，６２，６４，７１，７６は動作しておらず、開放エア回路６３，６５は遮断状態であるものとする。
【００４５】
まず、制御盤８０は、保持部駆動装置２５でシート保持部２１をシート供給位置Ｌ１に移動させ、シート保持部２１にシートＳ１を保持させる。次に、制御盤８０は、シート保持部２１をシート加熱装置１０へ移動させる。シート保持部２１に保持されたシートＳ１がシート加熱装置１０で加熱されて軟化すると（タイミングt1）、制御盤８０は、保持部駆動装置２５でシート保持部２１を差圧成形装置２へ移動させる（タイミングt2〜t4）。これにより、加熱軟化したシートＳ１が差圧成形位置Ｌ２へ搬送される。図４には、シートＳ１を搬送している途中のタイミングt3における成形部３の様子が示されている。
【００４６】
シートＳ１を搬送している途中から、制御盤８０は、閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８を所定の近接位置Ｌ１４まで下降させるとともにクランプ部材駆動装置５９でクランプ部材５０を所定の近接位置Ｌ１５まで上昇させる（タイミングt3〜t5）。これにより、図１０に示すように、差圧成形位置Ｌ２に加熱されたシートＳ１が搬送されたときにシート保持部２１と閉空間形成体３０とが近接して凹部３２の周囲３３となる部分のシートＳ１が近接位置Ｌ１５のクランプ部材５０と近接位置Ｌ１４の閉空間形成体３０とで挟まれ、シートの一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間ＳＰ１が形成される。
むろん、上テーブル３８の下降タイミングとクランプ部材５０の上昇タイミングは、ずれていてもよい。
【００４７】
その後、制御盤８０は、上負圧供給エア回路６１で成形前空間ＳＰ１に負圧を供給して成形前空間ＳＰ１を減圧させる（タイミングt6〜t7）。すると、図１１に示すように、シートの他面Ｓ１ｂが上方へ凹む。成形前空間ＳＰ１を減圧した後、制御盤８０は、上開放エア回路６３を開放状態に切り替えて成形前空間ＳＰ１を大気に開放させ（タイミングt8〜t10）、成形前空間ＳＰ１を大気に開放している最中に成形型駆動装置４９で下テーブル４８を所定の近接位置Ｌ１６まで上昇させる（タイミングt9〜t12）。成形前空間ＳＰ１を大気に開放しても即座にはシートＳ１が下がってこないので、図１１に示すように、下テーブル４８が上昇を開始する時点でシートの他面Ｓ１ｂは凹んでいる。下テーブル４８に固定された成形型４０が上昇すると、閉空間形成体３０と成形型４０とが近接し、シートＳ１の凹んだ他面Ｓ１ｂに凸部４２が挿入する。図１２は、成形型４０が近接位置Ｌ１６まで上昇していることを示している。
【００４８】
制御盤８０は、上開放エア回路６３を遮断状態に切り替えて成形前空間ＳＰ１を大気から遮断したタイミングt10の後、下テーブル４８が上昇している最中に、下負圧供給エア回路６４で成形面４２ａに負圧を供給させ、シートの他面Ｓ１ｂ側の減圧を開始させる（タイミングt11）。このとき、成形面４２ａに比較的弱い負圧を作用させる副真空引きを行った後、成形面４２ａに強い負圧を作用させる本真空引きを行ってもよい。
以上によりシートＳ１が成形型４０の成形面４２ａに密接することになるが、成形型４０の上昇が完了したタイミングt12の後、制御盤８０は、図１２に示すように、上圧空供給エア回路６２で成形前空間ＳＰ１に圧空ＰＡ１を供給してさらにシートＳ１を成形面４２ａに密接させる（タイミングt13〜t14）。圧空ＰＡ１の供給時には閉空間形成体３０と成形型４０とを離間させる向きの強い力が生じるため、タイミングt13の前に閉空間形成体３０と成形型４０とを型締めし、タイミングt14の後に閉空間形成体３０と成形型４０とを型締めから解放してもよい。このようにして、シートＳ１が差圧成形され、成形型４０上に成形シートＳ２が形成される。
【００４９】
制御盤８０は、圧空ＰＡ１の供給を停止するタイミングt14において下開放エア回路６５を開放状態に切り替えてシートの他面Ｓ１ｂ側を大気に開放させる。むろん、圧空ＰＡ１の供給の停止タイミングと他面Ｓ１ｂ側の大気への開放タイミングは、ずれていてもよい。その後、制御盤８０は、成形型４０に密接した成形シートＳ２に向かって冷却エア供給回路７６から冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始させる（タイミングt15）。また、制御盤８０は、閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８を所定の中間位置Ｌ１７まで上昇させ（タイミングt16〜t17）、成形シートＳ２の一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれた成形後空間ＳＰ２を大気に開放する。図１３は、閉空間形成体３０が中間位置Ｌ１７まで上昇していることが示されている。これにより、閉空間形成体の凹部３２から冷却用エアＣＡ１の吹き付けが開始した状態でシート保持部２１と閉空間形成体３０とが離間する。
【００５０】
その後、制御盤８０は、冷却エア供給回路７６からの冷却用エアＣＡ１の吹き付けを停止するとともに閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８を近接位置Ｌ１４まで下降させる（タイミングt18〜t19）。すると、図１４に示すように、シート保持部２１と閉空間形成体３０とが近接し、成形シートの一面Ｓ２ａと凹部３２とで囲まれた成形後空間ＳＰ２が再び形成される。制御盤８０は、閉空間形成体３０を近接位置Ｌ１４とするタイミングt19において下開放エア回路６５を遮断状態に切り替える。むろん、閉空間形成体３０の近接タイミングと下開放エア回路６５の遮断状態への切り替えタイミングは、ずれていてもよい。また、制御盤８０は、下負圧供給エア回路６４からの負圧の供給を停止させる（タイミングt20）。
【００５１】
その後、制御盤８０は、図１４に示すように、離型エア供給回路７１で成形型４０から離型エアＲＡ１を供給させるとともに、上負圧供給エア回路６１で成形後空間ＳＰ２に負圧を供給させて成形後空間ＳＰ２を減圧させる（タイミングt21〜t23）。このとき、比較的弱い離型エアを供給した後、比較的強い離型エアを供給してもよい。また、制御盤８０は、タイミングt21〜t23の途中において成形型駆動装置４９で下テーブル４８の下降を開始させる（タイミングt22）。すると、図１５に示すように、閉空間形成体３０と成形型４０とが離間し、図１７に示すような成形シートＳ２が離型する。このとき、成形シートの他面Ｓ２ｂ側が大気圧以上で成形後空間ＳＰ２が大気圧未満とされるので、成形シートの一面Ｓ２ａの広い範囲が閉空間形成体３０側に吸引され、成形型４０から離れる力が成形シートＳ２の広い範囲に加わる。従って、離型時の成形シートＳ２の変形が抑止される。また、成形シートＳ２の変形を抑止するために成形型４０の離間速度を下げなくてもよい。
【００５２】
制御盤８０は、下テーブル４８を離間位置Ｌ１３まで下降させるタイミングt22〜t24の間に、閉空間形成体駆動装置３９で上テーブル３８の上昇を開始させるとともにクランプ部材駆動装置５９でクランプ部材５０の下降を開始させる（タイミングt23）。むろん、上テーブル３８の上昇開始タイミング、クランプ部材５０の下降開始タイミング、離型エアＲＡ１の供給停止タイミング、及び、成形後空間ＳＰ２の減圧終了タイミングは、ずれていてもよい。そして、制御盤８０は、図１６に示すように、上テーブル３８を離間位置Ｌ１１まで上昇させるとともにクランプ部材５０を離間位置Ｌ１２まで下降させる（タイミングt25）。むろん、上テーブル３８の上昇タイミングとクランプ部材５０の下降タイミングは、ずれていてもよい。
【００５３】
その後、制御盤８０は、シート保持部２１に成形シートＳ２の保持を解放させ、図示しない搬送装置で該成形シートＳ２をトリミング装置５へ送り出す。また、制御盤８０は、保持部駆動装置２５でシート保持部２１を差圧成形位置Ｌ２からシート供給位置Ｌ１に戻す。一方、トリミング装置５は、搬入された成形シートＳ２の縁部を所定の大きさに切断し、形成される製品Ｓ３を製品搬送装置６へ送り出す。製品搬送装置６は、搬入された製品Ｓ３を所定の取出位置へ搬送する。
以上で製造の１サイクルが終了し、以下、タイミングt1〜t25が繰り返されることにより、連続してシートＳ１から差圧成形シートＳ２が形成され、連続して製品Ｓ３が製造される。
【００５４】
以上説明したように、本実施形態の差圧成形装置２及び差圧成形シート製造方法は、離型時、成形シートの一面Ｓ２ａの広い範囲が成形型４０とは反対側に吸引されるので、成形型４０から離れる力が成形シートＳ２の広い範囲に加わる。従って、本実施形態の技術によると、離型時の成形シートＳ２の変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能となる。
【００５５】
（４）変形例：
本発明は、種々の変形例が考えられる。
上述した動作の各タイミングの順番は、適宜、変更可能である。例えば、シート搬送終了のタイミングt4以降にタイミングt3の上テーブル３８の下降やクランプ部材５０の上昇を開始してもよい。上テーブル３８の下降終了やクランプ部材５０の上昇終了のタイミングt5以前にタイミングt6の成形前空間ＳＰ１の減圧を開始してもよい。成形前空間ＳＰ１の減圧終了のタイミングt7以前にタイミングt8の成形前空間ＳＰ１の大気開放を行ってもよい。成形前空間ＳＰ１の大気開放終了のタイミングt10以降にタイミングt9の下テーブル４８の上昇を開始してもよい。下テーブル４８の上昇終了のタイミングt12以降にタイミングt11の成形面４２ａの負圧供給を開始してもよい。成形面４２ａの負圧供給開始のタイミングt11以前にタイミングt13の成形前空間ＳＰ１の圧空供給を開始してもよい。成形前空間ＳＰ１の圧空供給終了やシートの他面Ｓ１ｂ側の大気開放のタイミングt14以前にタイミングt15の冷却用エアＣＡ１の吹き付けを開始してもよい。冷却用エアＣＡ１の吹き付け終了のタイミングt18以前に、タイミングt19の下開放エア回路６５の遮断状態への切り替えを行ったり、タイミングt20の成形面４２ａの負圧供給停止を行ったりしてもよい。
【００５６】
上述した各部材は、複数の部材が組み合わされて構成されてもよい。
成形型は、基部材４３と型本体４１とから構成する以外にも、型側テーブルに直接取り付けられる型のみで構成されてもよい。
成形型に、アンダーカット（Under Cut）部を有する差圧成形シートを離型するため可動型の駆動回路を設けてもよい。この場合、成形型に成形シートが密接しているときに駆動回路で可動型を退避させると、成形シートを離型することができる。
閉空間形成体３０は、成形前空間を減圧してシートの他面を凹ませるものに限定されず、成形前空間を減圧しないものであってもよい。例えば、成形型に雌型を用いる場合、成形前空間を増圧してシートの他面を膨らませてもよい。この場合でも、離型時に成形後空間を減圧することにより、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
被成形シートは、カットシート以外にも、連続シートとされてもよい。
【００５７】
１枚のカットシートから形成する製品は、一つのみならず、複数でもよい。
図１８は、１枚のシートＳ１から複数の製品を形成する変形例の差圧成形装置において成形前空間ＳＰ１を減圧した状態の成形部３を例示する垂直断面図である。本変形例の閉空間形成体３０は、シートＳ１の他面Ｓ１ｂを凹ませる箇所を複数とするための分割部材３７を備えている。本変形例の成形型４０の凸部４２は、シートの他面Ｓ１ｂにおいて凹んだ箇所のそれぞれに挿入するように分割されている。本差圧成形装置でシートＳ１を差圧成形し、得られる差圧成形シートＳ２をトリミング装置で分割すると、複数の製品が得られる。
【００５８】
また、閉空間形成体３０と成形型４０の位置関係を逆にすることも可能である。
図１９は、閉空間形成体３０をシートＳ１の下側に配置し成形型４０をシートＳ１の上側に配置した変形例の差圧成形装置において成形部３を例示する垂直断面図である。本変形例では、閉空間形成体３０を固定したテーブル３８が下テーブルとされ、成形型４０を固定したテーブル４８が上テーブルとされている。また、本変形例では、クランプ部材が設けられていない。クランプ部材が無くても、近接した閉空間形成体３０の凹部３２とシートＳ１の一面Ｓ１ａとで囲まれる成形前空間を減圧することができれば、本発明を適用可能である。例えば、閉空間形成体３０において凹部３２の周囲となる面３３ａに粘着性の材料を設けたり、シートの一面Ｓ１ａに粘着性の材料層を設けたりすることにより、容易に成形前空間を減圧することができる。
【００５９】
図２０は、図１９に示す成形部３を有する差圧成形装置の電気回路構成の一例を示している。本変形例では、上負圧供給エア回路６１の代わりに下負圧供給エア回路１６１が設けられ、上負圧供給制御部８２ｇの代わりに下負圧供給制御部１８２ｇが設けられ、上開放エア回路６３の代わりに下開放エア回路１６３が設けられ、上開放制御部８２ｉの代わりに下開放制御部１８２ｉが設けられ、下負圧供給エア回路６４の代わりに上負圧供給エア回路１６４が設けられ、下負圧供給制御部８２ｊの代わりに上負圧供給制御部１８２ｊが設けられ、下開放エア回路６５の代わりに上開放エア回路１６５が設けられ、下開放制御部８２ｋの代わりに上開放制御部１８２ｋが設けられている。
【００６０】
また、本変形例では、クランプ部材駆動装置や下圧空供給エア回路や離型エア供給回路や冷却エア供給回路が設けられていない。上圧空供給エア回路６２に相当する下圧空供給エア回路が無くても、上負圧供給エア回路１６４によりシートＳ１を差圧成形することが可能である。離型エア供給回路が無くても、下負圧供給エア回路１６１により成形シートを離型することが可能である。冷却エア供給回路が無くても、成形シートが固化等により変形し難くなっていれば、成形シートを離型することが可能である。
【００６１】
さらに、本変形例では、シート加熱装置や保持部駆動装置が設けられていない。シート加熱装置が無くても、例えば、外部の加熱装置でシートＳ１を軟化させると、シートＳ１を差圧成形することができる。保持部駆動装置が無くても、軟化したシートＳ１を差圧成形位置でシート保持部に保持させると、差圧成形位置でシートＳ１を差圧成形することができる。
さらに、本変形例では、制御盤８０にシート保持部２１が接続されていない。シート保持部２１の保持動作が制御されなくても、作業者がシートＳ１をシート保持部に保持させることにより、シートＳ１を差圧成形することができる。
【００６２】
図２１は、図２０に示す差圧成形装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。本変形例の制御盤８０は、まず、閉空間形成体３０を固定した下側のテーブル３８を所定の近接位置まで上昇させてシートＳ１の一面Ｓ１ａと凹部３２とで囲まれた成形前空間を形成させる（タイミングt3〜t5）。次に、制御盤８０は、成形前空間ＳＰ１を減圧してシートＳ１の他面Ｓ１ｂを下方へ凹ませる（タイミングt6〜t7）。さらに、制御盤８０は、成形前空間ＳＰ１を大気に開放させ（タイミングt8）、成形型４０を固定した上側のテーブル４８を所定の近接位置まで下降させてシートＳ１の凹んだ他面Ｓ１ｂに凸部４２を挿入させる（タイミングt9〜t12）。さらに、制御盤８０は、上側のテーブル４８が下降している最中にシートの他面Ｓ１ｂ側の減圧を開始させ（タイミングt11）、シートＳ１を成形型４０に密接させる。
【００６３】
さらに、制御盤８０は、成形後空間ＳＰ２を大気から遮断し（タイミングt14）、成形面４２ａへの負圧の供給を停止させ（タイミングt20）、成形シートＳ２の他面Ｓ２ｂ側を大気に開放させるとともに成形後空間を減圧させる（タイミングt21〜t23）。また、制御盤８０は、成形型４０を固定した上側のテーブル４８を所定の離間位置まで上昇させて成形シートＳ２を離型させる（タイミングt22〜t24）。さらに、制御盤８０は、閉空間形成体３０を固定した下側のテーブル３８を所定の離間位置まで下降させる（タイミングt23〜t25）。
本変形例でも、離型時、成形シートＳ２の他面側が大気圧で成形後空間が大気圧未満とされるので、成形シートＳ２の一面の広い範囲が閉空間形成体３０側に吸引され、成形型４０から離れる力が成形シートＳ２の広い範囲に加わる。従って、本変形例によっても、離型時の成形シートＳ２の変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮することが可能となる。
【００６４】
むろん、図２２に示す変形例のタイミングチャートのように、閉空間形成体３０をシートＳ１の上側に配置し成形型４０をシートＳ１の下側に配置しても同様にしてシートＳ１を差圧成形して離型することができる。図２２の例では、下テーブル４８の上昇開始タイミングt9の後に成形前空間ＳＰ１が大気に開放され（タイミングt8）、成形面４２ａへの負圧供給の停止タイミングt20の後に成形後空間ＳＰ２が大気から遮断されている（タイミングt14）。むろん、本変形例でも、動作の各タイミングの順番は、適宜、変更可能である。
【００６５】
また、成形可能なシートをシート保持部で保持するシート保持手段と、該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置されて前記凹部に対向した成形型と、を用い、前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させ、前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する基本構成のみでも、離型時の成形シートの変形を抑止しながら成形のサイクルタイムを短縮する効果が得られる。
すなわち、独立請求項に係る構成要件のみからなる差圧成形装置及び差圧成形シート製造方法でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【００６６】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、離型時の差圧成形シートの変形を抑止しながら差圧成形のサイクルタイムを短縮することが可能な技術を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【００６７】
１…差圧成形品製造システム、２…差圧成形装置、
３…成形部、４…シート供給装置、５…トリミング装置、６…製品搬送装置、
１０…シート加熱装置、１１…ヒーター、
２０…シート保持手段、２１…シート保持部、
２５…保持部駆動装置、
３０…閉空間形成体、３２…凹部、３２ａ…開口、３３…凹部の周囲、３３ａ…挟持面、
３４，３５…エア経路、
３７…分割部材、
３８，４８…テーブル、
３９…閉空間形成体駆動装置、
４０…成形型、４１…型本体、４２…凸部、４２ａ…成形面、４３…基部材、
４４…エア経路、４４ａ…孔、
４９…成形型駆動装置、
５０…クランプ部材、５１…開口、５２…挟持面、
５９…クランプ部材駆動装置、
６０…差圧成形手段、
６１…上負圧供給エア回路、６２…上圧空供給エア回路、６３…上開放エア回路、
６４…下負圧供給エア回路、６５…下開放エア回路、
７０…離型手段、７１…離型エア供給回路、
７５…冷却エア供給手段、７６…冷却エア供給回路、
８０…制御盤、
ＣＡ１…冷却用エア、
Ｄ１…シートの搬送方向、Ｄ２…シートの幅方向、
Ｌ１…シート供給位置、Ｌ２…差圧成形位置、
Ｌ１１，Ｌ１２，Ｌ１３…離間位置、Ｌ１４，Ｌ１５，Ｌ１６…近接位置、
Ｌ１７…中間位置、
ＰＡ１…圧空、ＲＡ１…離型エア、
Ｓ１…シート、Ｓ１ａ…シートの一面、Ｓ１ｂ…シートの他面、Ｓ１ｃ…縁部、
Ｓ２…成形シート、Ｓ２ａ…成形シートの一面、Ｓ２ｂ…成形シートの他面、
ＳＰ１…成形前空間、ＳＰ２…成形後空間。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させる差圧成形手段と、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する離型手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項２】
前記成形型は、前記閉空間形成体の凹部に対向した凸部を有し、
前記差圧成形手段は、前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形前空間を形成し、該成形前空間を減圧して前記シートの他面を凹ませ、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させて前記シートの凹んだ他面に前記凸部を挿入させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させることを特徴とする請求項１に記載の差圧成形装置。
【請求項３】
前記離型手段は、前記閉空間形成体の凹部から前記成形型に向かって冷却用エアを吹き付けるための冷却エア供給手段を有し、前記成形型に密接した前記成形シートに向かって前記冷却エア供給手段から前記冷却用エアの吹き付けを開始するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを離間させ、前記冷却エア供給手段からの前記冷却用エアの吹き付けを停止するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形後空間を形成し、該成形後空間を減圧し、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項４】
前記差圧成形手段は、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項５】
前記シートを加熱するためのシート加熱装置が設けられ、
前記シート保持手段は、所定のシート供給位置で前記シート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに前記閉空間形成体と前記成形型との間の差圧成形位置へ搬送し、
前記差圧成形手段は、前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形前空間を形成することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項６】
前記シート保持部で保持されたシートの他面と前記成形型との間で前記閉空間形成体における前記凹部の周囲に対向したクランプ部材が設けられ、
前記差圧成形手段は、前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させるとともに前記凹部の周囲となる部分の前記シートを前記クランプ部材と前記閉空間形成体とで挟んで前記成形前空間を形成することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項７】
成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置であって、
前記シートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記凹部に対向した凸部を有し、前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置された成形型と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面と前記成形型との間で前記閉空間形成体における前記凹部の周囲に対向したクランプ部材と、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させるとともに前記凹部の周囲となる部分の前記シートを前記クランプ部材と前記閉空間形成体とで挟んで前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間を減圧して前記シートの他面を凹ませ、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させて前記シートの凹んだ他面に前記凸部を挿入させ、前記シートの他面側を減圧するとともに前記成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させる差圧成形手段と、
前記閉空間形成体の凹部から前記成形型に向かって冷却用エアを吹き付けるための冷却エア供給手段を有し、前記成形型に密接した成形シートに向かって前記冷却エア供給手段から前記冷却用エアの吹き付けを開始するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを離間させ、前記冷却エア供給手段からの前記冷却用エアの吹き付けを停止するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形後空間を形成し、前記成形型から圧空を供給するとともに前記成形後空間を減圧し、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する離型手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項８】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させ、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【請求項９】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記凹部に対向した凸部を有し、前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置された成形型と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面と前記成形型との間で前記閉空間形成体における前記凹部の周囲に対向したクランプ部材と、を用い、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記凹部の周囲となる部分の前記シートを前記クランプ部材と前記閉空間形成体とで挟んで前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間を減圧して前記シートの他面を凹ませ、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させて前記シートの凹んだ他面に前記凸部を挿入させ、前記シートの他面側を減圧するとともに前記成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させ、
前記閉空間形成体の凹部から前記成形型に向かって冷却用エアを吹き付けるための冷却エア供給手段から前記成形型に密接した成形シートに向かって前記冷却用エアの吹き付けを開始するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを離間させ、前記冷却エア供給手段からの前記冷却用エアの吹き付けを停止するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形後空間を形成し、前記成形型から圧空を供給するとともに前記成形後空間を減圧し、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【請求項１】
成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
前記シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させる差圧成形手段と、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する離型手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項２】
前記成形型は、前記閉空間形成体の凹部に対向した凸部を有し、
前記差圧成形手段は、前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形前空間を形成し、該成形前空間を減圧して前記シートの他面を凹ませ、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させて前記シートの凹んだ他面に前記凸部を挿入させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させることを特徴とする請求項１に記載の差圧成形装置。
【請求項３】
前記離型手段は、前記閉空間形成体の凹部から前記成形型に向かって冷却用エアを吹き付けるための冷却エア供給手段を有し、前記成形型に密接した前記成形シートに向かって前記冷却エア供給手段から前記冷却用エアの吹き付けを開始するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを離間させ、前記冷却エア供給手段からの前記冷却用エアの吹き付けを停止するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形後空間を形成し、該成形後空間を減圧し、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項４】
前記差圧成形手段は、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項５】
前記シートを加熱するためのシート加熱装置が設けられ、
前記シート保持手段は、所定のシート供給位置で前記シート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに前記閉空間形成体と前記成形型との間の差圧成形位置へ搬送し、
前記差圧成形手段は、前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形前空間を形成することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項６】
前記シート保持部で保持されたシートの他面と前記成形型との間で前記閉空間形成体における前記凹部の周囲に対向したクランプ部材が設けられ、
前記差圧成形手段は、前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させるとともに前記凹部の周囲となる部分の前記シートを前記クランプ部材と前記閉空間形成体とで挟んで前記成形前空間を形成することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の差圧成形装置。
【請求項７】
成形可能なシートを差圧成形して離型する差圧成形装置であって、
前記シートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記凹部に対向した凸部を有し、前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置された成形型と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面と前記成形型との間で前記閉空間形成体における前記凹部の周囲に対向したクランプ部材と、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させるとともに前記凹部の周囲となる部分の前記シートを前記クランプ部材と前記閉空間形成体とで挟んで前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間を減圧して前記シートの他面を凹ませ、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させて前記シートの凹んだ他面に前記凸部を挿入させ、前記シートの他面側を減圧するとともに前記成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させる差圧成形手段と、
前記閉空間形成体の凹部から前記成形型に向かって冷却用エアを吹き付けるための冷却エア供給手段を有し、前記成形型に密接した成形シートに向かって前記冷却エア供給手段から前記冷却用エアの吹き付けを開始するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを離間させ、前記冷却エア供給手段からの前記冷却用エアの吹き付けを停止するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形後空間を形成し、前記成形型から圧空を供給するとともに前記成形後空間を減圧し、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型する離型手段とを備えることを特徴とする差圧成形装置。
【請求項８】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートをシート保持部で保持するシート保持手段と、
該シート保持部で保持されたシートの一面に対向した凹部を有する閉空間形成体と、
前記シート保持部で保持されたシートの他面側に配置され、前記凹部に対向した成形型と、を用い、
前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させ、前記成形前空間の圧力よりも前記シートの他面側の圧力が低くなる差圧を設けて前記シートを前記成形型に密接させ、
前記成形型に密接した成形シートの他面側を大気圧以上にするとともに該成形シートの一面と前記凹部とで囲まれる成形後空間を減圧して大気圧未満とし、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【請求項９】
成形可能なシートを差圧成形して成形シートを製造する差圧成形シート製造方法であって、
前記シートを加熱するためのシート加熱装置と、
所定のシート供給位置でシート保持部により前記シートを保持して前記シート加熱装置へ搬送し、加熱された前記シートをさらに所定の差圧成形位置へ搬送するシート保持手段と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの一面に対向する凹部を有し、該シートの一面側に配置された閉空間形成体と、
前記凹部に対向した凸部を有し、前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面側に配置された成形型と、
前記差圧成形位置にあるときの前記シートの他面と前記成形型との間で前記閉空間形成体における前記凹部の周囲に対向したクランプ部材と、を用い、
前記差圧成形位置に前記加熱されたシートが搬送されたときに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記凹部の周囲となる部分の前記シートを前記クランプ部材と前記閉空間形成体とで挟んで前記シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形前空間を形成し、該成形前空間を減圧して前記シートの他面を凹ませ、前記閉空間形成体と前記成形型とを近接させて前記シートの凹んだ他面に前記凸部を挿入させ、前記シートの他面側を減圧するとともに前記成形前空間に圧空を供給して前記シートを前記成形型に密接させ、
前記閉空間形成体の凹部から前記成形型に向かって冷却用エアを吹き付けるための冷却エア供給手段から前記成形型に密接した成形シートに向かって前記冷却用エアの吹き付けを開始するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを離間させ、前記冷却エア供給手段からの前記冷却用エアの吹き付けを停止するとともに前記シート保持部と前記閉空間形成体とを近接させて前記成形シートの一面と前記凹部とで囲まれた成形後空間を形成し、前記成形型から圧空を供給するとともに前記成形後空間を減圧し、前記閉空間形成体と前記成形型とを離間させて前記成形シートを離型することを特徴とする差圧成形シート製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【公開番号】特開２０１１−１７３２９６（Ｐ２０１１−１７３２９６Ａ）
【公開日】平成２３年９月８日（２０１１．９．８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−３８１４３（Ｐ２０１０−３８１４３）
【出願日】平成２２年２月２４日（２０１０．２．２４）
【出願人】（３０４０５０３６９）株式会社浅野研究所 (44)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年９月８日（２０１１．９．８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年２月２４日（２０１０．２．２４）
【出願人】（３０４０５０３６９）株式会社浅野研究所 (44)
【Ｆターム（参考）】
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