説明

帯状部材の継ぎ目形状測定方法とその装置及び変位量計測装置

【課題】測定装置もしくは帯状部材を移動させることなく、帯状部材の継ぎ目形状を精度よく測定する。
【解決手段】レーザー照射手段12によりカーカスプライ20の表面にコードの延長方向に直交する方向に延長するライン光を入射角45°で照射し、その反射光のうちの前面散乱光R1を撮影手段13で直接受光し、正反射光R2を第1の光学素子14で反射させ側面散乱光R3を第3の光学素子15で反射させてそれぞれ撮影手段13に受光させる構成とすることで、前面散乱光R1による画像である上面像G1と、正反射光R2による画像である正面像G2と側面散乱光R3による画像である側面像G3とを撮影し、撮影された上面像G1と正面像G2と側面像G3とを用いてカーカスプライ20の継ぎ目部分を含む照射部を3方位から見たときの変位量h1,h2及びh3を求め、変位量h1,h2及びh3を用いてカーカスプライ20の照射部の厚さを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カーカスプライ等の帯状部材の継ぎ目の形状を測定する方法とその装置、及び、帯状部材の継ぎ目形状の測定に好適に用いられる変位量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成型ドラムに巻き付けられたカーカスプライ等の帯状のタイヤ構成部材の長さを測定する装置としては、図6(a),(b)に示すような、2次元変位センサーを用いた帯状部材の測長装置30が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この測長装置30は、ライン状のレーザー光を照射するレーザー光源31aと被測定物の表面で反射されたレーザー光を受光してレーザー光の照射部を撮影するCCDカメラ31bと撮影された画像から被測定物表面の変位量を計測する変位量計測手段31cとを備えた2次元変位センサー31を用い、所定の速度で回転する成型ドラム41に貼り付けられた帯状のタイヤ構成部材42に、前記タイヤ構成部材42の長手方向に対して所定の角度傾斜したラインビームを照射しながら、前記タイヤ構成部材42の照射部からの反射光を受光して照射部の画像を得、変位量計測手段32にて、照射部の画像からタイヤ構成部材42の成型ドラム41表面からの変位量を計測して求められたタイヤ構成部材42の始端42a及び終端42bの位置からタイヤ構成部材42の長さを算出する。
2次元変位センサー31は、レーザー光の照射部に前記タイヤ構成部材42の段差部分が存在すると、反射光の方向が変化するので、この段差の位置を検出することで、始端42a及び終端42bの位置を検出することができる。
このとき、成型ドラム41にエンコーダー33を取り付けるとともに、制御手段34を設けて、成型ドラム41が所定角度だけ回転する毎に2次元変位センサー31による検出結果をサンプリングすることにより、タイヤ構成部材42の段差部分を繰り返し検出すれば、タイヤ構成部材42の段差部分の幅方向の位置情報を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2006/019070 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、後工程において成型ドラム41を拡幅させる時に円筒状に巻き付けられたタイヤ構成部材42の継ぎ目が開かないようにするため、継ぎ目を圧着するようにしている。継ぎ目の圧着は、作業員が押圧ローラーにて継ぎ目部分を押圧して手直しするか、もしくは、ローラーホルダーに回転自在に取付けられた押圧ローラーを継ぎ目に押し付けながら継ぎ目に沿って自動的に移動させる圧着装置を用いて行われる。
また、タイヤ構成部材42の継ぎ目の凸量(ジョイント量)が小さい場合や、継ぎ目の一部が浮いている場合には、後工程にて継ぎ目が開いてしまう可能性があるため、予め、継ぎ目形状を検査しておく必要があった。
【0005】
従来は、圧着前に測長装置30で測定した帯状のタイヤ構成部材42の長さから継ぎ目の凸量を算出し、この算出された継ぎ目の凸量から継ぎ目が開く可能性があるか否かを判定していたが、圧着により継ぎ目の状態が圧着前とズレることがあるため、継ぎ目の凸量から継ぎ目が開いてしまうか否かを正確に判定することは困難であった。
また、前記継ぎ目の凸量による判定に加えて、圧着後に作業員が継ぎ目の状態を目視で確認することも行っていたが、外観からでは圧着後には継ぎ目の下の辺の位置(始端の位置)が不明なため、継ぎ目形状を正確に検査することは困難であった。
また、圧着後に継ぎ目の凸量を再度計測することも考えられるが、成型ドラム41を静止させた状態で撮影すると、タイヤ構成部材42の辺が浮いている場合には、レーザー光の光路の関係で影になる部位が発生するため、成型ドラム41を回転させて複数回異なる角度で継ぎ目部分を撮影する必要があった。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、測定装置もしくは帯状部材を移動させることなく、帯状部材の継ぎ目形状を精度良く測定する方法と装置、及び、この装置に用いられる変位量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に記載の発明は、レーザー光を照射するレーザー照射手段を用いて帯状部材の継ぎ目にライン状のレーザー光を照射し、前記レーザー光の照射部(レーザー光が当たっているライン状の部分)の画像を撮影手段で撮影し、前記撮影された画像のデータから前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測し、前記計測された凹凸量に基づいて、前記帯状部材の継ぎ目形状を測定する帯状部材の継ぎ目形状測定方法であって、前記レーザー光を前記帯状部材の法線方向(帯状部材の表面に垂直な方向)対して傾けて照射するとともに、前記帯状部材からの正反射光を前記撮影手段に結像させる第1の光学素子を設けるか、または、前記レーザー光の散乱光のうちの前記帯状部材の法線方向への散乱光である前面散乱光を前記撮影手段に結像させる第2の光学素子を設けるか、または、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子の両方を設けて、前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像とを撮影し、前記撮影された正反射光による画像と前記前面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目形状を測定することを特徴とする。
これにより、帯状部材の継ぎ目を上面側と前面側の2方向から見た画像を得ることができるので、帯状部材の継ぎ目に影が発生した場合でも、継ぎ目の形状を精度良く測定することができる。
また、このように、上面側の画像と前面側の画像とを用いて継ぎ目の形状を測定することにより、継ぎ目の始端と終端と高さの差を精度良く求めることができるので、帯状部材の後端部のコードが先端に位置しているか否か(コードを被覆しているゴムだけが伸びている状態か否か)についても確実に判定することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記帯状部材からの正反射光を前記撮影手段に結像させる第1の光学素子設けるか、または、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光を前記撮影手段に結像させる第3の光学素子設けるか、または、前記第1の光学素子と前記第3の光学素子の両方を設けて、前記正反射による画像と前記側面散乱光による画像とを撮影し、前記撮影された正反射光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目形状を測定することを特徴とする。
これにより、帯状部材の継ぎ目を上面側と側面側の2方向から見た画像を得ることができるので、帯状部材の継ぎ目に影が発生した場合でも、継ぎ目の形状を精度良く測定することができる。
特に、側面側から撮影した画像を用いることにより、継ぎ目の始端と終端との間の隙間の有無を精度良く測定することができるので、成型ドラムの拡径時に継ぎ目の開きが発生するか否かを確実に判定することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記撮影手段を、前記帯状部材からの正反射光の反射方向、前記レーザー光の散乱光のうちの前記帯状部材の法線方向への散乱光である前面散乱光の反射方向、もしくは、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光の反射方向のいずれかの反射方向に設置するとともに、前記撮影手段が設置された方向以外の方向に反射または散乱されるレーザー光を前記撮影手段に結像させる光学素子を設けて、前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを撮影し、前記撮影された正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目形状を測定することを特徴とする。
これにより、1台の撮影手段で継ぎ目を3つの方向から見た画像を得ることができるので、継ぎ目の形状を精度良く測定することができる。したがって、帯状部材の継ぎ目の状態が正常な状態か否かを確実に判定することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の帯状部材の継ぎ目形状測定方法において、前記帯状部材がコードをトリートゴムで被覆したトリート部材である場合には、前記レーザー光の入射角度(レーザー光の方向と帯状部材の法線方向とを含む平面内におけるレーザー光の方向と帯状部材の法線方向との成す角度)を45°〜65°とし、かつ、前記レーザー光のラインの延長方向と前記コードの延長方向とが直交するように、前記レーザー光を照射することを特徴とする。
トリート部材の表面には、内部にコードがある部分が凸部で内部にコードがない部分が凹部となるような凹凸が存在し、かつ、凹凸の谷部と傾斜部とに光沢があるので、本発明のように、レーザー光の入射角度を45°〜65°とし、レーザー光のラインの延長方向とコードの延長方向とが直交するようにレーザー光を照射すれば、凹凸の谷部からの反射光と傾斜部とからの反射光とを効果的に受光できる。したがって、良好な輝度の画像を得ることができ、継ぎ目形状の測定精度を更に向上させることができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の帯状部材の継ぎ目形状測定方法を実現させるための装置であって、帯状部材の継ぎ目にライン状のレーザー光を照射するレーザー照射手段と、前記レーザー光の前記帯状部材からの反射光を受光して前記レーザー光の照射部の画像を撮影する撮影手段と、前記画像から前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測する凹凸量計測手段と、前記凹凸量計測手段で計測された凹凸量に基づいて、前記帯状部材の継ぎ目形状を測定する形状測定手段と、前記レーザー光の前記帯状部材からの反射光(正反射光と散乱光のいずれか)を反射する光学素子とを備えるととともに、
レーザー照射手段が前記帯状部材の法線方向に対して傾いた方向にレーザー光を照射し、前記撮影手段が、前記帯状部材からの正反射光の反射方向、前記レーザー光の散乱光のうちの前記帯状部材の法線方向への散乱光である前面散乱光の反射方向、もしくは、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光の反射方向のいずれかの反射方向に設置され、前記光学素子を、撮影手段の方向に反射されるレーザー光以外の反射光または散乱光を前記撮影手段にそれぞれ結像させるように配置し、変位量計測手段が、前記撮影手段で撮影された前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測することを特徴とする。
これにより、継ぎ目の形状を精度良く測定することができる帯状部材の継ぎ目形状測定装置を提供することができる。また、本発明の帯状部材の継ぎ目形状測定装置を用いれば、継ぎ目の状態が正常か否かを確実に判定することができる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の帯状部材の継ぎ目形状測定装置であって、前記帯状部材がコードをトリートゴムで被覆したトリート部材である場合には、前記レーザー光の入射角度を45°〜65°とし、前記レーザー光のラインの延長方向が前記コードの延長方向とが直交するように、前記レーザー光を照射することを特徴とする。
これにより、反射光の強度が向上するので、継ぎ目の凹凸量の測定精度を更に向上させることができる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、被検体表面にライン状のレーザー光を照射するレーザー照射手段と、前記レーザー光の被検体からの反射光を受光して前記レーザー光の照射部の画像を撮影する撮影手段と、前記画像から前記被検体表面の変位量を計測する変位量計測手段とを備えた変位量計測装置であって、前記撮影手段と前記被検体表面との間には光学素子が配置され、レーザー照射手段は前記被検体の法線方向に対して傾いた方向からレーザー光を照射し、前記撮影手段は、前記被検体からの正反射光の反射方向、前記レーザー光の散乱光のうちの前記被検体表面の法線方向への散乱光である前面散乱光の反射方向、もしくは、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光の反射方向のいずれかの反射方向に設置され、前記光学素子は、前記撮影手段が設置された方向以外の方向に反射または散乱されるレーザー光を前記撮影手段に結像させるように配置され、変位量計測手段は、前記撮影手段で撮影された前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記被検体の変位量を計測することを特徴とする。
これにより、1個のレーザー照射手段と1個の撮影手段とを用いて、正反射光による画像と前面散乱光による画像と側面散乱光による画像とを得ることができるので、被検体の表面形状などを計測する、安価でかつ精度の高い変位量計測装置を提供できる。
【0014】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯状部材の継ぎ目形状測定装置の概要を示す図である。
【図2】変位量計測装置の構成を示す図である。
【図3】照射部の画像を示す図である。
【図4】レーザー光の照射方向と反射光及び散乱光との関係を示す図である。
【図5】帯状部材の長手方向とコードの延長方向とが異なるプライを撮影するときのレーザー、カメラ、及び、光学素子の配置を説明するための図である。
【図6】従来の2次元変位センサーを用いた帯状部材の測長装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は本実施の形態に係わる帯状部材の継ぎ目形状測定装置(以下、継ぎ目形状測定装置という)10の概要を示す図で、図2は、変位量計測装置11の構成を示す図である。
継ぎ目形状測定装置10は、レーザー照射手段12と撮影手段13と第1及び第3の光学素子14,15と変位量計測手段16とを備えた変位量計測装置11と、継ぎ目形状測定手段17と圧着不良判定手段18とを備える。
なお、図1において、符号20は成型ドラム19に巻き回されたカーカスプライ、符号21はカーカスプライ20の継ぎ目、符号21aは始端、符号21bは終端である。
なお、測定時には、成型ドラム19は静止状態にあるものとする。
また、変位量計測装置11は、カーカスプライ20の巻き始め側に設置される。
【0018】
ここで、本例のカーカスプライ20のコード20Cの延長方向をカーカスプライ20の長手方向に直交する方向としたとき、レーザー照射手段12は、このカーカスプライ20の表面に、図1,2のラインLで示す、カーカスプライ20の長手方向と平行な方向に延長するラインビームを、反射光量が最も大きくなる臨界角度(約45°)から照射するよう配置される。すなわち、レーザー照射手段12は、図2の矢印mcで示す、カーカスプライ20のコード20Cの延長方向に直交する方向に延長するレーザー光(ライン光)Lを、入射角度45°でカーカスプライ20の表面に照射する。
第1の光学素子14は、カーカスプライ20の前面、すなわち、レーザー光の入射光Iとカーカスプライ20の法線nとで作る平面内で、かつ、法線nに対して入射光Iの方向と線対称な方向の延長上に配置されて、カーカスプライ20の表面で反射された正反射光R2を、撮影手段13に結像させる。
第3の光学素子15は、カーカスプライ20の側面、すなわち、レーザー光の入射光Iとカーカスプライ20の法線とで作る平面と平行な面内に配置されて、カーカスプライ20の表面で反射された散乱光のうちの前記平行な面に向かう散乱光である側面散乱光R3を、撮影手段13に結像させる。
本例では、第1及び第3の光学素子14,15をそれぞれプリズムで構成した。
なお、本願発明では光学素子は2個しか使用しない。すなわち、本例の変位量計測装置11は、レーザー光の散乱光のうちの法線n方向への散乱光である前面散乱光を撮影手段13に結像させる第2の光学素子は必要なく、光学素子としては、第1及び第3の光学素子14,15のみを備えている。
【0019】
撮影手段13は、光軸がカーカスプライ20の法線方向となるように、カーカスプライ20の法線方向に配置されて、散乱光のうちのカーカスプライ20の法線方向への散乱光である前面散乱光R1を直接受光して結像させるとともに、第1の光学素子14からの正反射光R2と、第3の光学素子15からの側面散乱光R3とを受光して結像させる。
このように、撮影手段13は、前面散乱光R1と正反射光R2と側面散乱光R3とを受光してCCD素子などの受光素子が2次元的に配列された図示しない受光面に結像させるので、例えば、図3に示すような、カーカスプライ20の前面散乱光R1による画像である上面像G1と、正反射光R2による画像である正面像G2と側面散乱光R3による画像である側面像G3とを得ることができる。
本例では、変位量計測装置11をカーカスプライ20の巻き始め側に設置しているので、カーカスプライ20の継ぎ目21の上面像G1と正面像G2と側面像G3とを画像を精度良く撮影することができる。
すなわち、本発明による変位量計測装置11では、1台の撮影手段13で、図4(a)に示すような、前面散乱光R1の反射方向に撮影手段13を設置して得られる上面像G1だけでなく、図4(b)に示すような、正反射光R2の反射方向に撮影手段13’を設置して得られる画像と同じ画像である正面像G2、図4(c)に示すような、側面散乱光R3の反射方向に撮影手段13’’を設置して得られる画像と同じ画像である側面像G3とを得ることができる。
【0020】
凹凸量計測手段である変位量計測手段16は、撮影手段13で撮影された上面像G1と正面像G2と側面像G3とを用いてカーカスプライ20の継ぎ目21の3方位から見た形状を計測する。具体的には、カーカスプライ20の長手方向をx軸、幅方向をy軸、厚み方向(法線方向)をz軸とし、カーカスプライ20がない状態での成型ドラム19の表面を変位量の原点とすると、上面像G1を用いて計測した変位量h1(xk,yk)と正面像G2を用いて計測した変位量h2(xk,yk)と側面像G3を用いて計測した変位量h3(xk,yk)とがそれぞれ、カーカスプライ20を上面、正面、及び、側面から見たときの継ぎ目21の厚さとなる。したがって、後述するように、一つの方位から見たときには影になって計測できなかった部位の変位量を他の方位から見た画像から計測した変位量で補間することができるので、正確な継ぎ目形状を得ることができる。
なお、(xk,yk)は照射されたレーザー光の座標で、xkの範囲はライン状のレーザー光の当たっている長さで、ykは継ぎ目形状測定装置10の位置(レーザー光の中心位置)の座標である。
【0021】
継ぎ目形状測定手段17は、例えば、輝度の高い正面像における変位量h2(xk,yk)をカーカスプライ20の長手方向に繋げるとともに、影になって計測できなかった箇所を上面像における変位量h1(xk,yk)と側面像における変位量h3(xk,yk)で補間してライン状のレーザー光の当たっている継ぎ目部分の変位量h(xk,yk)を求めることで、継ぎ目部分の形状を測定する。
なお、図1に示すように、継ぎ目形状測定装置10をカーカスプライ20の幅方向であるy方向に移動させながら変位量h1(x,y),変位量h2(x,y)及び変位量h3(x,y)を計測すれば、カーカスプライ20の継ぎ目部分の3次元形状を求めることができる。
圧着不良判定手段18は、継ぎ目形状測定手段17で測定された継ぎ目部分の3次元形状と、予め設定された継ぎ目21の凹凸規格とを比較して継ぎ目21の良否を判定する。
後工程で継ぎ目21が開く可能性がある場合、もしくは圧着後既に開いている場合には不良品と判定する。
図1は、カーカスプライ20の端部がオーバーラップしている場合、すなわち、継ぎ目21のオーバーラップ量である凸量を測定して継ぎ目21の良否を判定する場合を例示しているが、始端21aと終端21bとの間に隙間があるときには、前記隙間の大きさである継ぎ目21の凹量を求めて継ぎ目21の良否を判定する。
【0022】
次に、本例の継ぎ目形状測定装置10を用いてカーカスプライ20の継ぎ目形状を測定する方法について説明する。
まず、継ぎ目形状測定装置10を、レーザー光を成型ドラム19に巻き回されたカーカスプライ20の表面に入射角45°で照射させるように配置する。そして、レーザー照射手段12により、カーカスプライ20のコード20Cの延長方向に直交する方向に延長するライン光をカーカスプライ20の表面に照射する。ライン光の照射範囲は、カーカスプライ20の始端21aと終端21bとを含む。
カーカスプライ20の表面で反射されたレーザー光の反射光のうち、カーカスプライ20の法線方向に反射された反射光(前面散乱光R1)は直接撮影手段13に入射する。また、反射角45°である正反射光R2は、第1の光学素子14で反射されて撮影手段13に入射し、カーカスプライ20の側面方向に反射された側面散乱光R3は第3の光学素子15で反射されて撮影手段13に受光される。これにより、撮影手段13の受光面には、カーカスプライ20の前面散乱光R1による画像である上面像G1と、正反射光R2による画像である正面像G2と側面散乱光R3による画像である側面像G3とが結像する。
【0023】
本例の継ぎ目形状測定装置10では、撮影手段13で撮影された上面像G1と正面像G2と側面像G3とを用いてカーカスプライ20の継ぎ目部分を含む照射部を3方位から見たときの変位量h1(xk,yk),変位量h2(xk,yk)及び変位量h3(xk,yk)を求めた後、輝度の最も高い正面像における変位量h2(xk,yk)を用いてカーカスプライ20の照射部の厚さh(xk,yk)を求める。このとき、影になって計測できなかった箇所、具体的には、変位量h2(xk,yk)が求められなかった箇所については、前記変位量h2(xk,yk)に代えて、上面像G1における変位量h1(xk,yk)や側面像G3における変位量h3(xk,yk)を照射部の厚さh(xk,yk)とすることで、影になって計測できなかった箇所の変位量h2(xk,yk)の欠落部分を補間する。
そして、継ぎ目形状測定装置10を、図1の矢印に示すように、カーカスプライ20の幅方向であるy方向に移動させながら変位量h1(x,y),変位量h2(x,y)及び変位量h3(x,y)を計測してカーカスプライ20の継ぎ目部分の3次元形状を測定する。
【0024】
カーカスプライ20の継ぎ目形状の良否判定を行う際には、継ぎ目部分の3次元形状と、予め設定された継ぎ目の凹凸規格とを比較し、後工程で継ぎ目21が開く可能性があるか否かを判定する。
具体的には、カーカスプライ20の終端21bが巻回されたカーカスプライ20を覆っている場合には、カーカスプライ20の厚さをDとすると変位量h(xk,yk)はほぼ2Dとなる。この変位量h(xk,yk)は2Dである長さ(x方向の長さ)が予め設定された凸量(例えば、0.6mm)を下回る場合には、カーカスプライ20の後端部のコードが始端21aの先端まで達していないとして不良と判定する。
また、カーカスプライ20が正確に圧着されておらず、継ぎ目21の辺が浮いた状態になるときには画像では凹みができる。この場合には、カーカスプライ20の厚さをDとすると変位量h(xk,yk)はほぼ0(成型ドラム19の表面)となる。この変位量h(xk,yk)が0である長さ(x方向の長さ)が予め設定された凹量(例えば、0.5mm)よりも大きい場合には、継ぎ目21の始端21aと終端21bとの間に隙間が有るとして不良と判定する。
【0025】
このように、本実施の形態では、レーザー照射手段12によりカーカスプライ20の表面にカーカスプライ20のコードの延長方向に直交する方向に延長するライン光を入射角45°で照射し、その反射光のうちの前面散乱光R1を撮影手段13で直接受光し、正反射光R2を第1の光学素子14で反射させ側面散乱光R3を第3の光学素子15で反射させてそれぞれ撮影手段13に受光させる構成とすることで、カーカスプライ20の前面散乱光R1による画像である上面像G1と、正反射光R2による画像である正面像G2と側面散乱光R3による画像である側面像G3とを撮影し、撮影された上面像G1と正面像G2と側面像G3とを用いてカーカスプライ20の継ぎ目部分を含む照射部を3方位から見たときの変位量h1(xk,yk),h2(xk,yk)及びh3(xk,yk)を求め、この変位量h1(xk,yk),h2(xk,yk)及びh3(xk,yk)を用いてカーカスプライ20の照射部の厚さを求めるようにしたので、カーカスプライ20の継ぎ目部分の形状を精度良く測定することができる。
したがって、この測定された継ぎ目部分の3次元形状と、予め設定された継ぎ目の凹凸規格とを比較すれば、後工程で継ぎ目21が開く可能性があるか否かを適正に判定することができる。
【0026】
なお、前記実施の形態では、上面像G1と正面像G2と側面像G3とを用いてカーカスプライ20の継ぎ目部分の形状を計測したが、上面像G1と正面像G2、もしくは、正面像G2と側面像G3とを用いても継ぎ目部分の形状を精度良く測定することができる。
この場合には、前面散乱光R1と正反射光R2、もしくは、正反射光R2と側面散乱光R3とを用いているので、光学素子としては、第1の光学素子14、もしくは、第1の光学素子14と第3の光学素子15の両方が用いられる。なお、光学素子として第3の光学素子15のみを用い、上面像G1と側面像G3とからカーカスプライ20の継ぎ目部分の形状を計測することも可能であるが、一方の画像を輝度の高い正反射光R2による画像である正面像G2を用いる方が精度が高くなるので好ましい。
また、前記例では、撮影手段13を前面散乱光R1の反射方向に設置したが、正反射光R2の反射方向、もしくは、側面散乱光R3の反射方向に設置してもよい。なお、そのときには、他の反射光については、それぞれ、光学素子を用いて撮影手段13に結像させるようにすることはいうまでもない。
また、前記例では、成型ドラム19を静止させた状態でカーカスプライ20の継ぎ目部分の形状を計測したが、成型ドラム19を回転させて測定してもよい。なお、この場合には、カーカスプライ20の継ぎ目21は、成型ドラム19の周方向に回転するので、正面像G2と側面像G3のみを撮影すれば十分である。
【0027】
また、本発明の測定対象物はカーカスプライ20に限るものではなく、ベルトやトレッド等の帯状のタイヤ構成部材にも適用可能である。
なお、帯状のタイヤ構成部材がトリート部材である場合には、レーザー光の入射角度を45°〜65°とすることが好ましい。これにより、正反射光の輝度を十分に確保することができるので、継ぎ目形状の測定精度を向上させることができる。このとき、ライン光の延長方向としては、トリート部材のコードとに直交する方向になるようにレーザー光を照射することが好ましい。すなわち、ベルトなどはコードの延長方向が長手方向(巻回し方向)と交差するが、この場合、レーザー光は、図5に示すように、ベルト25の長手方向と直交する方向ではなく、コード25Cとに直交する方向になるように照射する。
また、前記例では、第1及び第3の光学素子14,15をそれぞれプリズムで構成したが、複数のミラーを組み合わせて構成してもよい。
【0028】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、簡単な構成で、帯状部材の継ぎ目の形状を容易にかつ正確に測定することができるので、継ぎ目の良否判定を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
10 帯状部材の継ぎ目形状測定装置、11 変位量計測装置、
12 レーザー照射手段、13 撮影手段、14 第1の光学素子、
15 第3の光学素子、16 変位量計測手段、17 継ぎ目形状測定手段、
18 圧着不良判定手段、19 成型ドラム、20 カーカスプライ、
21 継ぎ目、21a 始端、21b 終端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を照射するレーザー照射手段を用いて帯状部材の継ぎ目にライン状のレーザー光を照射し、前記レーザー光の照射部の画像を撮影手段で撮影し、前記撮影された画像のデータから前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測し、前記計測された凹凸量に基づいて、前記帯状部材の継ぎ目形状を測定する帯状部材の継ぎ目形状測定方法において、
前記レーザー光を前記帯状部材の法線方向に対して傾けて照射するとともに、
前記帯状部材からの正反射光を前記撮影手段に結像させる第1の光学素子を設けるか、または、前記レーザー光の散乱光のうちの前記帯状部材の法線方向への散乱光である前面散乱光を前記撮影手段に結像させる第2の光学素子を設けるか、または、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子の両方を設けて、前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像とを撮影し、
前記撮影された正反射光による画像と前記前面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目形状を測定することを特徴とする帯状部材の継ぎ目形状測定方法。
【請求項2】
レーザー光を照射するレーザー照射手段を用いて帯状部材の継ぎ目にライン状のレーザー光を照射し、前記レーザー光の照射部の画像を撮影手段で撮影し、前記撮影された画像のデータから前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測し、前記計測された凹凸量に基づいて、前記帯状部材の継ぎ目形状を測定する帯状部材の継ぎ目形状測定方法において、
前記レーザー光を前記帯状部材の法線方向に対して傾けて照射するとともに、
前記帯状部材からの正反射光を前記撮影手段に結像させる第1の光学素子を設けるか、または、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光を前記撮影手段に結像させる第3の光学素子を設けるか、または、前記第1の光学素子と前記第3の光学素子の両方を設けて、前記正反射光による画像と前記側面散乱光による画像とを撮影し、
前記撮影された正反射光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目形状を測定することを特徴とする帯状部材の継ぎ目形状測定方法。
【請求項3】
レーザー光を照射するレーザー照射手段を用いて帯状部材の継ぎ目にライン状のレーザー光を照射し、前記レーザー光の照射部の画像を撮影手段で撮影し、前記撮影された画像のデータから前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測し、前記計測された凹凸量に基づいて、前記帯状部材の継ぎ目形状を測定する帯状部材の継ぎ目形状測定方法において、
前記レーザー光を前記帯状部材の法線方向に対して傾けて照射し、
前記撮影手段を、前記帯状部材から正反射光の反射方向、前記レーザー光の散乱光のうちの前記帯状部材の法線方向への散乱光である前面散乱光の反射方向、もしくは、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光の反射方向のいずれかの反射方向に設置し、
更に、前記撮影手段が設置された方向以外の方向に反射または散乱されるレーザー光を前記撮影手段に結像させる光学素子を設けて、前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを撮影し、
前記撮影された正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目形状を測定することを特徴とする帯状部材の継ぎ目形状測定方法。
【請求項4】
前記帯状部材がコードをトリートゴムで被覆したトリート部材である場合には、前記レーザー光の入射角度を45°〜65°とし、かつ、前記レーザー光のラインの延長方向と前記コードの延長方向とが直交するように前記レーザー光を照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯状部材の継ぎ目形状測定方法。
【請求項5】
帯状部材の継ぎ目にライン状のレーザー光を照射するレーザー照射手段と、前記レーザー光の前記帯状部材からの反射光を受光して前記レーザー光の照射部の画像を撮影する撮影手段と、前記画像から前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測する凹凸量計測手段と、前記凹凸量計測手段で計測された凹凸量に基づいて、前記帯状部材の継ぎ目形状を測定する形状測定手段とを備えた帯状部材の継ぎ目形状測定装置であって、
前記レーザー光の前記帯状部材からの反射光を反射する光学素子を備え、
レーザー照射手段は前記帯状部材の法線方向に対して傾いた方向からレーザー光を照射し、
前記撮影手段は、前記帯状部材からの正反射光の反射方向、前記レーザー光の散乱光のうちの前記帯状部材の法線方向への散乱光である前面散乱光の反射方向、もしくは、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光の反射方向のいずれかの反射方向に設置され、
前記光学素子は、前記撮影手段の方向に反射されるレーザー光以外の反射光または散乱光を前記撮影手段にそれぞれ結像させるように配置され、
前記凹凸量計測手段は、前記撮影手段で撮影された前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記帯状部材の継ぎ目の凹凸量を計測することを特徴とする帯状部材の継ぎ目形状測定装置。
【請求項6】
前記帯状部材がコードをトリートゴムで被覆したトリート部材である場合には、前記レーザー光の入射角度を45°〜65°とし、かつ、前記レーザー光のラインの延長方向が前記コードの延長方向とが直交するように、前記レーザー光を照射することを特徴とする請求項5に記載の帯状部材の継ぎ目形状測定装置。
【請求項7】
被検体表面にライン状のレーザー光を照射するレーザー照射手段と、前記レーザー光の被検体からの反射光を受光して前記レーザー光の照射部の画像を撮影する撮影手段と、前記画像から前記被検体表面の変位量を計測する変位量計測手段とを備えた変位量計測装置であって、
前記撮影手段と前記被検体表面との間には光学素子が配置され、
レーザー照射手段は前記被検体の法線方向に対して傾いた方向からレーザー光を照射し、
前記撮影手段は、前記被検体からの正反射光の反射方向、前記レーザー光の散乱光のうちの前記被検体表面の法線方向への散乱光である前面散乱光の反射方向、もしくは、前記レーザー光の散乱光のうちの前記レーザー光の入射光と正反射光との作る平面に垂直な方向もしくは前記垂直な方向を含む面内において前記平面に交差する方向に散乱される散乱光である側面散乱光の反射方向のいずれかの反射方向に設置され、
前記光学素子は、前記撮影手段が設置された方向以外の方向に反射または散乱されるレーザー光を前記撮影手段に結像させるように配置され、
変位量計測手段は、前記撮影手段で撮影された前記正反射光による画像と前記前面散乱光による画像と前記側面散乱光による画像とを用いて前記被検体の変位量を計測することを特徴とする変位量計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220254(P2012−220254A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83820(P2011−83820)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】