説明

帯電部材、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】長期間の使用においても画像異常などの問題を引き起こさない、耐久性の高いプロセスカートリッジと、そのようなプロセスカートリッジを可能とする帯電部材を提供する。
【解決手段】像担持体に向けて付勢されかつ前記像担持体と平行に保持される長尺の本体部と該本体部の両端付近に突出して設けられかつ該像担持体に当接して該本体部を該像担持体の表面から間隔をあけた状態に保つ空隙保持部材とにより構成された帯電部材において、前記2つの空隙保持部材の前記長さ方向のうちの一方側の面が、それぞれ前記長さ方向に対して同じ角度で斜めとなる斜面部とされており、前記帯電部材がその本体部の長さ方向に移動可能に保持されている帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式において、像担持体に対して近接配置される帯電部材、このような帯電部材を有するプロセスカートリッジ、及び、かかるプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザビームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の機器には、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。
【0003】
以下、帯電部材として導電性部材を用いた画像形成装置(プリンタ)のプロセスカートリッジの構成・動作について説明する。
【0004】
図1は電子写真方式の画像形成装置の概略図である。図1について説明すると、11は静電潜像が形成される像担持体(静電潜像担持体)、12は接触あるいは近接配置されて帯電処理を行う帯電部材(帯電ローラ)、13はレーザ光あるいは原稿の反射光等の露光、14は像担持体上の静電潜像にトナー15を付着させるトナー担持体(現像ローラ)、16は感光体上のトナー像を記録媒体17に転写処理する転写部材(転写ローラ)、18は転写処理後の感光体をクリーニングするためのクリーニング部材(ブレード)である。なお、19は感光体上に残留したトナーがクリーニング部材により除去された排トナー、200は現像装置、210はクリーニング装置を示す。
【0005】
なお、図1では、説明に必要な機能ユニットのみ記載し、その他のユニットは省略してある。
【0006】
画像形成装置では次のようにして、画像の形成を行う。
1.帯電ローラ(帯電部材)が、感光体の表面を所望の電位に帯電する。
2.露光装置が、感光体に画像光を投射して、所望の画像に対応する静電潜像を感光体上に形成する。
3.現像ローラが、静電潜像をトナーによって現像し、感光体上にトナー像(顕像)を形成する。
4.転写ローラが、感光体上のトナー像を、記録紙に転写する。
5.クリーニング装置が、転写されず像担持体上に残留したトナーを清掃する。
6.転写ローラによって、トナー像を転写された記録紙は、不図示の定着装置へと搬送される。定着装置は、トナーを加熱及び加圧して記録紙上に定着する。
上記の1から6の手順を繰り返すことによって、記録紙上に所望の画像が形成されていく。
【0007】
このように、帯電ローラを用いた帯電方式として、感光体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式があるが、接触帯電方式には以下のような問題がある。
【0008】
1.帯電ローラ跡(帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、被帯電体の表面に付着移行するために起こる)。
2.帯電音(帯電ローラに交流電圧を印加したときに被帯電体に接触している帯電ローラが振動するために起こる)。
3.感光体上のトナーが帯電ローラに付着することによる帯電性能の低下(特に上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる)。
4.帯電ローラを構成している物質の感光体への付着。
5.感光体を長期停止したときに生ずる、帯電ローラの永久変形。
【0009】
このような問題を解決する方法として、帯電ローラを感光体に近接させる、近接帯電方式が考案されている(特開平3−240076号公報、特開平4−358175号公報、特開平5−107871号公報等)。さらに、特開2005−91818公報では、抵抗調整層の両端部に空隙保持部材を圧入する構成でかつ、空隙保持部材と抵抗調整層を同時加工(除去加工)を行うことにより、空隙を精密に制御することが可能となった。
【0010】
ところで、このような非接触帯電方式では、接触帯電部材に対して、ギャップ変動による抵抗むらが発生しやすく、この帯電むらを防止するために、直流電圧に高圧の交流電圧を重畳した電圧を印加している。非接触帯電方式での空隙の不均一性は、ローラ表面汚れ、像担持体汚染の進行、およびローラ汚れから起因する帯電不均一性等に対して大きく影響する。さらに、重畳された交流電圧により、像担持体と帯電部材の間で、放電生成物等のローラ汚れの原因となる汚染物質が帯電部材に蓄積される。そのため、非接触帯電においては、微小ギャップをできるだけ大きくとることが好ましい。さらに、ギャップに対する帯電余裕度が大きければ大きいほど良い。
【0011】
現状、帯電部材の導電化に用いられている導電性付与材としては、ケッチンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、また、導電性付与材としてイオン導電性物質も用いることができ、このようなイオン導電性物質としては例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等がある。
【0012】
後者のイオン導電物質は、分子レベルによる分散(溶解)が可能なので斑点画像といった異常放電、耐リーク性において有利である。
【0013】
特開2008−11872公報で提案された技術では、イオン導電系表層を有する帯電材料を用いることで、耐ローラ汚れ性が向上した。さらに、特開2009−271131号公報ではイオン導電系導電性材料を用いながら低抵抗化を図れる材料系が提案され、ギャップに対する帯電余裕度が大きく向上した。
【0014】
しかしながら、イオン導電性非接触帯電方式では、長期間の電圧印加により帯電部材の基材、表層共に、そして、特にその表層はクリーナによる摺動で磨耗しやすい。耐電部材に付着する表面汚れはクリーナによる摺動によりその汚染源と共に除去されるので影響を受けにくいものの、表層の摩耗により表層と像担持体との距離が長期間の使用に従って大きくなるために帯電機能が徐々に低下していく傾向があり、この点での耐久性が十分ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記のように長期間の使用においても画像異常などの問題を引き起こさない、耐久性の高いプロセスカートリッジと、そのようなプロセスカートリッジを可能とする帯電部材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は上記課題を解決するために特願2010−115432(未公開)において、帯電部材に互いに硬度の異なる2組の空隙保持部材を設け、軟質な材料から構成された空隙保持部材を使用によって摩耗させることにより、帯電部材と像担持体とのギャップの差の発生を吸収させ、使用開始初期、および、長期間使用時での、帯電不良や帯電不均一に伴う画質劣化、画像不良を防止する技術を提案している。
【0017】
しかしながら、この技術でも、上記のように空隙保持部材から発生する磨耗粉が像担持体と帯電部材表面との間に入りこむことで異常放電を起こし、帯電部材表面の汚れを促進し、あるいは、劣化を早める。さらに、軟質な空隙保持部材の偏磨耗等による急激な破壊による帯電機能の不安定化が懸念される。
【0018】
このような検討を経て本発明者等は本発明に至った。
すなわち、本発明の帯電部材は、請求項1に記載の通り、像担持体に向けて付勢されかつ前記像担持体と平行に保持される長尺の本体部と該本体部の両端付近に突出して設けられかつ該像担持体に当接して該本体部を該像担持体の表面から間隔をあけた状態に保つ空隙保持部材とにより構成された帯電部材において、前記2つの空隙保持部材の前記長さ方向のうちの一方側の面が、それぞれ前記長さ方向に対して同じ角度で斜めとなる斜面部とされていることを特徴とする帯電部材である。
【0019】
また、本発明の帯電部材は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の本発明の帯電部材において、前記長さ方向のうちの他方側の前記空隙保持部材の斜面部に接する前記本体部部分に凹部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の帯電部材は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の帯電部材において、前記帯電部材に、前記本体部と平行で、かつ、前記像担持体に対して最近接したときに前記本体部に当接する最近接時当接部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明のプロセスカートリッジは請求4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の帯電部材と前記像担持体とを有し、前記像担持体が、前記2つの斜面部と平行でかつ該2つの斜面部とそれぞれ接する斜面を備えて突出して設けられた2つの接触凸部を有しており、前記帯電部材がその本体部の長さ方向に移動可能に保持されており、かつ、前記帯電部材がその本体部の長さ方向に移動可能に保持されていることを特徴とすることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0022】
本発明の画像形成装置は、請求項5に記載の通り、請求項4に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0023】
実際に帯電部材を長期間用いた場合に、最適とされる帯電部材と像担持体との距離(空隙)についての本発明者等による検討の結果を、図2を用いて説明する。
【0024】
空隙の最適な値を破線で、許容できる範囲をハッチングで示した。許容できる範囲を越えた場合、すなわち、空隙が大きすぎる場合(図中ハッチングより上の部分)では帯電部材表面が像担持体に到達するまでの距離が長くなることで、パッシェンの法則における放電開始電圧が大きくなって異常放電が発生しやすくなり、このとき帯電部材表面から像担自体表面に対して局所的な放電破壊を起こしやすくなる。
【0025】
一方、許容できる範囲より小さい場合、すなわち、空隙が小さすぎる場合(図中ハッチングより下の部分)では、重畳電流により帯電部材表面と像担自体表帯電部材表面との間を浮遊している汚染物質が蓄積しやすくなる。
【0026】
すなわち、空隙が小さいと、帯電部材から像担持体まで、放電エネルギーが小さくても像担持体を有効に帯電させることができる。しかし、帯電部材と像担持体との間の空間が狭くなり、この空間の空気の流通が悪くなってしまう。そのために、放電空間で形成された放電生成物がこの空間内に滞留し、画像形成後も放電空間に多量に残留して、帯電部材の表面と像担持体の表面とに付着して、これら表面の汚れやこれら表面に固着を引き起こして帯電不良となる原因となり、このとき形成される画像に帯電不均一に起因するすじが発生する。
【0027】
そのために、耐久性を考慮するならば、帯電部材と像担持体と空隙は最小で40μmは確保するが好ましい。このように空隙が小さくなり40μm程度になると、帯電部材の汚れ程度が支配的となって帯電部材寿命を決める。
【0028】
また、帯電部材を長期間用いた場合に重畳させるべきAC帯電バイアス電圧の変化について、図2に太い実線で示す。図示された値はMM環境下(すなわち23℃50%RH)での中心値であり、プロセスコントロール(主に、帯電に関わる帯電電位および電流値を検値しフィードバック制御する機構で構成される)により調整させることで、常に最適値に保つことができる。
【0029】
ここで、空隙保持部材と像担持体との距離を調整可能とし、空隙保持部材と像担持体との空隙Gは100μm以下、特に、50〜80μm程度に設定する。これにより、常温常湿環境での帯電装置の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。
【0030】
図示するようにプロセスカートリッジ使用開始から通紙枚数が200000(200K)枚(寿命1)まで(図中α部分)は空隙を累積通紙枚数の増加に従い徐々に狭めて当初80μm程度から45μm程度に変化させることで異常放電による破壊による寿命を来さない上で好ましい(この期間を「異常放電余裕度が支配的な段階」という)。
【0031】
そして、その後は帯電部材と像担持体との空隙を45μm程度に維持させて、帯電部材及び像担持体への汚れの付着を最小限に抑えつつ(帯電部材の汚れが支配的な段階)、帯電機能の低下が飽和する(寿命2)まで(図中β部分)、使用することで、プロセスカートリッジの寿命を最長とすることができる。
【0032】
ここで、本発明の帯電部材によれば、前記2つの空隙保持部材の前記長さ方向のうちの一方側の面が、それぞれ前記長さ方向に対して同じ角度で斜めとなる斜面部とされている帯電部材であり、前記像担持体が、前記2つの斜面部と平行でかつ該2つの斜面部とそれぞれ接する斜面を備えて突出して設けられた2つの接触凸部を有しており、かつ、前記帯電部材がその本体部の長さ方向に移動可能に保持されている構成のプロセスカートリッジに組み込むことにより、帯電部材と像担持体との空隙を上述した理想的なものに調整することができ、プロセスカートリッジの寿命を最長とすることができる。
【0033】
そして、請求項2に記載の帯電部材によれば、前記長さ方向のうちの他方側の前記空隙保持部材の斜面部に接する前記本体部部分に凹部が設けられていることにより、前記帯電部材が前記像担持体に対して近接する際に前記突出部が前記本体部に当接しないために、帯電部材と像担持体との距離の調整幅を大きくすることができ、最良な距離を保つことができて、長寿命なプロセスカートリッジとなる。
【0034】
請求項3に記載の帯電部材によれば、前記帯電部材に、前記本体部と平行で、かつ、前記像担持体に対して最近接したときに前記本体部に当接する最近接時当接部が設けられていることにより、帯電部材と像担持体との空隙を帯電部材の汚れが支配的な段階を通じて安定的に最適な空隙距離を維持させることができる。
【0035】
本発明のプロセスカートリッジは、上記帯電部材と前記像担持体とを有し、前記像担持体が、前記2つの斜面部と平行でかつ該2つの斜面部とそれぞれ接する斜面を備えて突出して設けられた2つの接触凸部を有しており、かつ、前記帯電部材がその本体部の長さ方向に移動可能に保持されているために帯電部材と像担持体との空隙を上述した理想的なものに調整することができ、プロセスカートリッジの寿命を最長とすることができる。
【0036】
本発明の画像形成装置は、上記のプロセスカートリッジを有しているので、長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】プロセスカートリッジをモデル的に示す図である。
【図2】本発明の原理を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置を示すモデル図である。
【図4】図3の画像形成装置の画像形成部の構成を示す概略図である。
【図5】本発明に係るプロセスカートリッジをモデル的に示す図である。
【図6】本発明のプロセスカートリッジで用いる、帯電部材(帯電ローラ)、像担持体の感光層領域、及び、画像領域、非画像領域の位置関係を示す概略図である。
【図7】電気抵抗調整層および凹部付近のモデル説明図(図7(a)及び図7(b))と、帯電部材の本体部と帯電部材との距離帯電部材の本体部と帯電部材との距離を変化させる原理について説明するモデル説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0039】
図3は本発明の帯電部材を用いる画像形成装置の構成を示す概略図である。図4は、図3の画像形成装置の画像形成部の構成を示す概略図である。
【0040】
この画像形成装置1は、表面に感光体層を有するドラム状であってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する個数分の像担持体61と、各像担持体61をほぼ一様に帯電する帯電装置100と、帯電された像担持体61にレーザ光で露光して静電潜像を形成する露光装置70と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を収容し、像担持体61上の静電潜像に対応するトナー像を形成する現像装置63と、像担持体61上のトナー像を転写する1次転写装置62と、像担持体61上のトナー像が転写されるベルト状の中間転写体50と、中間転写体50のトナー像を転写する2次転写装置51と、中間転写体50のトナー像が転写される記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置80と、さらに、像担持体61上に転写後残留するトナーを除去するクリーニング装置64とを備える。記録媒体は、記録媒体を収納する給紙装置21、22のひとつから、1枚ずつ搬送経路を搬送ローラでレジストローラ23まで搬送され、ここで、像担持体61上のトナー像と同期を計って転写位置に搬送される。
【0041】
1次転写装置62は、像担持体61上の現像されたトナー像を中間転写体50の裏側からトナーの極性と反対の極性の電場を形成して、中間転写体50に転写する。その後、給紙装置22から搬送されてくる記録媒体と同期させて、再度2次転写装置51による転写で記録媒体上にトナー像を転写する。ここで、最初の転写が中間転写体50ではなく、記録媒体に直接転写する方式であっても良い。
【0042】
定着装置80は、記録媒体上のトナー像を、加熱及び/または加圧して記録媒体上にトナー像を固定して定着させる。ここでは、1対の加圧・定着ローラの間を通過させ、このときに熱・圧力をかけて、トナーの結着樹脂を溶融しながら定着させる。定着装置80は、ローラ状ではなく、ベルト状であっても良いし、ハロゲンランプ等で熱照射により定着させるものであっても良い。像担持体61のクリーニング装置64は、転写されずに像担持体61上に残留したトナーをクリーニングして除去し、次の画像形成を可能にする。クリーニング装置64は、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等のいずれの方式であっても良い。
【0043】
図5は、本発明に係るプロセスカートリッジの構成を示す概略図である。プロセスカートリッジとは、少なくとも、像担持体61と帯電装置100、クリーニング装置64を含むものであり、図4に示したように、現像装置63が含まれる場合もある。プロセスカートリッジは、それ自体が一体で画像形成装置に着脱自由なものである。
【0044】
帯電装置100は、帯電部材101と帯電部材101に電圧を印加する電源を備える。電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が好ましい。帯電部材101の層構成が不均一な部分がある場合には、直流電圧のみを印加すると像担持体61の表面電位が不均一になることがある。重畳した電圧では、帯電部材101表面が等電位となり、放電が安定して像担持体61を均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を像担持体61の帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電部材101に直流のみを印加した場合に像担持体61が帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、像担持体61から帯電部材101への逆放電が生じ、そのならし効果で像担持体61をより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は像担持体の周速度(プロセススピード)の7倍以上であることが望ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。
【0045】
この例では、補助クリーニング部材はブラシローラ、滑剤はステアリン酸亜鉛をブロック状に形成し、塗布部材であるブラシローラに、バネ等の加圧部材で加圧することにより、塗布ローラで固体潤滑剤ブロックから削り取った固体潤滑剤を像担持体へ塗布するような構成である。クリーニング部材はウレタンブレードを用いカウンター方式とした。また、帯電部材のクリーニング部材は、メラミン樹脂のスポンジローラを用いて、帯電部材(帯電ローラ)と連れ回りで回転させる方式とすることにより、帯電部材の表面の汚れを良好にクリーニングできる。
【0046】
図6は、本発明のプロセスカートリッジで用いる、帯電部材(帯電ローラ)、像担持体の感光層領域、及び、画像領域、非画像領域の位置関係を示す概略図である。
【0047】
像担持体は、像担持体61、像担持体61に対向し微少間隙Gを設けて配設される帯電部材(この例では帯電ローラ)101と、帯電部材を清掃するクリーニング部材102と、帯電部材101に電圧を印加する不図示の電源と、帯電部材101を像担持体に61に加圧して接触させる不図示の付勢用の加圧スプリングとを少なくとも備える。
【0048】
帯電部材101は、図5及び図6に示すように、像担持体61に微少間隙Gを持たせて対向して配設される。帯電部材101と像担持体61の間隙Gは、空隙保持部材103を帯電部材101の非画像形成領域に当接させて形成する。感光層領域に空隙保持部材を当接させることにより、感光層の塗布厚がばらついても、空隙のばらつきを防止することができる。
【0049】
帯電部材は図5に示すように、導電性支持体105と、この導電性支持体105上に形成された電気抵抗調整層104、さらに電気抵抗調整層上に設けられた表面層とからなる長尺の本体部の両端付近に、像担持体61に当接して本体部を像担持体の表面から間隔をあけた状態に保つ、本体部から鍔状ないしリング状に突出して設けられた空隙保持部材103をそれぞれ有する。詳細な説明は後述する。
【0050】
帯電部材101の形状は、像担持体61への最近接部から、像担持体61移動方向の上下流に漸次離間する曲面で形成されていると、像担持体61をより均一に帯電させることができる。従って、円柱状の形状で、曲面を有することで均一な像担持体61の帯電が可能になる。また、帯電部材101の放電している表面は強いストレスを受ける。放電が常に同じ面で発生するので、その劣化が促進され、さらに、削り落ちることがある。そのために、帯電部材101の全面を放電する面として使用できるのであれば、回転させることで、早期の劣化を防止し、結果として長期にわたって使用することができる。
【0051】
<電気抵抗調整層について>
電気抵抗調整層は高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層の体積固有抵抗は106〜109Ωcmであることが望ましい。109Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、106Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光体全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
【0052】
電気抵抗調整層に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS,ABS)、ポリアミド、ポリカーボーネート(PC)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であり好ましい。
【0053】
その熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また、導電性部材として、高い印加電圧を掛ける際には、電子伝導系導電剤の場合、局所的に電気の流れやすい経路が形成さるため、像担持体へのリーク電流が発生し、帯電部材の場合、異常画像である白・黒ポチ画像が発生する。ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が20〜70重量%、高分子型イオン導電剤が80〜20重量%とする必要がある。
【0054】
さらに、抵抗値を調整するために、電解質(塩)を添加することも可能である。塩としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩が挙げられる。導電剤は物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。
【0055】
導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるためには、相溶化剤を添加することにより、導電材料のミクロ分散が可能になるため、相溶化剤を適宜使用しても構わない。その他、物性を損なわない範囲において、酸化防止剤等の添加剤を使用しても構わない。
【0056】
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料を混合し二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。
電気抵抗調整層としての導電性支持体上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体に前記、導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0057】
導電性支持体上に電気抵抗調整層のみを形成して導電性部材を構成すると、電気抵抗調整層にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層に表面層を形成することで、防止することができる。
【0058】
<表面層について>
表面層を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また表面層の抵抗調整層上への形成は、上記表面層構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行う。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
【0059】
表面層材料は、硬化剤を併用する2液性塗料にすることより、耐環境性、非粘着性、離型性を高めることができる。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシアネート系樹脂を用いることが有効である。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。さらに、官能基(OH基)1当量に対して硬化剤の配合量を変えることで表層の架橋密度を比較的、自由に変更でき、調節できる。
【0060】
表面層材料は、トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂、あるいはシリコン、フッ素がグラフト化された樹脂が良好である。
【0061】
導電性部材は電気特性(抵抗値)が重要であるため、表面層を導電性にする必要がある。特に、イオン導電性の形成方法は、樹脂材料中に導電性付与材(電解質塩)を分散することにより可能である。イオン導電性にするためには、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の過塩素酸アルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、チルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩等の含フッ素有機アニオン塩類、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等が挙げられる。その中でも、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムを用いることで低抵抗が可能となる。
【0062】
さらに、イオン導電の低抵抗化には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、またその共重合体等からなるポリエーテルポリオール類(エーテル酸素)が必要である。これらポリエーテルポリオール樹脂は、表面層(塗膜)を形成する全樹脂のうち、20〜70重量%の範囲が望ましく、35〜55重量%の範囲であることが最も望ましい。また、ポリエーテルポリオール中のポリエーテル酸素量としては、(エチレンオキサイド換算量;EO量)40重量%以上が望ましい。表層全体で考えると、ポリエーテルポリオール樹脂比率とEO量との積が25重量%以上であることが必要であり、45重量%程度であることが望ましい。
【0063】
電解質塩の添加量としては、塗膜(表面層)を形成する全樹脂のうち、1〜15重量%の範囲であることが望ましく、1.5〜10重量%の範囲であることが最も望ましい。
【0064】
電解質塩は、物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。
【0065】
<空隙について>
本発明において、帯電部材の本体部と帯電部材との距離、すなわち、空隙は、上述のように図2に示すように制御できるようにすることが必要である。
【0066】
<空隙保持部および空隙の形成方法>
空隙保持部103には、感光体との空隙を使用環境の影響を受けずに長期(経時)に渡って安定して形成することが求められ、そのためには、吸湿性が小さい材料が望ましい。また、トナー、及び、トナー添加剤が付着しにくいことや、感光体と当接し、摺動するために、感光体を摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。このような素材として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン、フッ素(PTFE)等があげられる。また、空隙保持部材は絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で1013Ωcm以上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体とのリーク電流の発生を防止するためである。
【0067】
本発明に係る帯電部材を用いるプロセスカートリッジにおける、帯電部材(の本体部)と像担持体と間の空隙調整について図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)を用いて説明する。
【0068】
長尺の像担持体61と、像担持体61に向けて付勢部材(この例では金属ばね)105aにより付勢されかつ像担持体61と平行に保持される、導電性支持体105と電気抵抗調整層104とにより構成される長尺の本体部とこの本体部の両端付近に設けられかつ像担持体61に当接して上記本体部を像担持体61の表面から間隔をあけた状態に保つ空隙保持部材103とにより構成された帯電部材と、を有するプロセスカートリッジであり、2つの空隙保持部材103の本体部の長さ方向のうちの一方側(この例では図中右側)の面が、それぞれ本体部の長さ方向に対して同じ角度(鋭角)で斜めとなる斜面部(円錐台部)103aがそれぞれ設けられ(図7(a)、及び、図7(b)参照)、前記像担持体61は、前記2つの空隙保持部材が接する部分に、斜面部103aと平行でかつ該2つの斜面部103aとそれぞれ接する斜面61bを備えて突出して設けられた2つの接触凸部61aを有し、かつ、帯電部材101がその本体部の長さ方向(図中左右方向)に移動可能に保持されている。
【0069】
このような構成により圧子106により図中左方向に帯電部材101を移動させる(図6(a)→図6(b)→図6(c)、及び図7、(c)参照)ことにより帯電部材101(の本体部)と像担持体61と間の空隙を小さく(この例では80μmを45μmに)することができる。
【0070】
このとき、帯電部材101が像担持体61に対して近接する際に突出部61aが本体部に当接しないようための凹部104bが本体部非画像形成領域に設けられているために帯電部材101と像担持体61と間の空隙調整の幅を大きくすることができる。
【0071】
さらにこの例では帯電部材101が像担持体61に対して最近接したとき(図6(c)参照)に像担持体61に当接する、前記本体部と平行な(同軸な)最近接時当接部103b(円柱状部)が設けられているために、この最近接した空隙が安定的に保持される。
【0072】
また、傾斜部の構成については、図7(a)及び図7(b)に示すように空隙保持部材の斜面部103aの傾斜高さA、切り込み長さBで傾斜(円錐台状部)を構成、および、図7(c)に示すように凹部104bの軸方向長さC、切り込み量Dとし、必要な空隙を凹部104bとして帯電部材側に形成する。
【0073】
凹部104んbの切り込み量Dとしては導電性支持体まで達する深さとしても構わないが、電気抵抗調整層上に形成する表面層をリーク防止の為に、凹部にも塗布をすることが好ましい。この例では凹部を帯電部材に設けたが、必要に応じて像担持体に設けても良い。
【0074】
図2中αで示された期間での空隙調節については、斜面部103aと斜面61bを有する突出部61aとの接触位置によって調整する。このとき、帯電部材は像担持体61に向けて付勢部材105aにより付勢されているので、空隙距離は安定している。
【0075】
傾斜高さ、スライド長さは、空隙距離の安定性を考慮してあらかじめ検討を行い、適宜決定される。なお、空隙を調整する上記圧子106の突き出し量はプロセスカートリッジでの画像処理量をカウントするカウント機構、および、帯電電位、電流値を同時に計測しフィードバックすることで、カウント機構に応じて接続されたCPU、CPUにインターフェースを介して接続されたステッピングモータないしアクチュエータなどの汎用手段を組み合わせて用いることで、制御することができる。
【実施例】
【0076】
まず、実施例、比較例にかかる帯電部材に共通する、芯軸上の電気抵抗調整層の作製方法、及び、表面層の作製方法について述べる。
【0077】
導電性支持体としてSUM(ニッケルメッキ品)からなる芯軸(外径10mm、長さ350mm。ただし、両端から、後述するリング状の空隙保持部材が装入される位置までの範囲は直径が8mm)上に、ベースとなるABS樹脂(GR3000、電気化学工業製)25重量%、導電性を付与する樹脂成分として電解質塩含有ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)75重量%で合計100重量部とし、この100重量部に対して、ポリカーボネートーグリシジルメタクリレートースチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)を4重量部添加し、溶融混練した樹脂組成物をからなる樹脂組成物を、射出成形により外径13mmとなるように上記芯軸上に成形し電気抵抗調整層を得た。
【0078】
表面層は、後述する空隙保持部材を設けた後、電気抵抗調整層を帯電部材として必要な表面精度となるように切削あるいは研削加工した後に、トナー非付着性のアクリル変性シリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料製)20重量%、ポリエーテルポリオール樹脂(E540、旭硝子社製)50重量%、イソシアネート系硬化剤(T4、川上塗料製)24重量%、電解質塩としてビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸リチウム酢酸ブチル溶液(三光化学工業社製)5.5重量%、酢酸ブチル溶解カーボンブラックの分散液0.5重量%(REC−SM−23、レジノカラー工業社製)の100重量部に対して有機塩触媒0.5重量%(U−CAT− SA−1 、サンアプロ社製)添加することからなる塗料成分を調合し、酢酸ブチルとMEK(メチルエチルケトン)とからなる混合希釈溶媒で固形分を溶解させ、前記で作成した電気抵抗調整層上にスプレー塗布し、その後、乾燥機内で100℃に1.5時間保ち、塗料樹脂を加熱硬化させた。
【0079】
以下にそれぞれ、実施例、比較例にかかる帯電部材の空隙保持部材の形状、及び、凹部形状について説明する。
【0080】
<実施例1>
上記のように形成された電気抵抗調整層の両端部に切削加工による除去加工により外径が9mm、幅6.5mmの、細径となる細径部、および、段部を形成し、この細径部に外径13mm、内径9mm、幅6.5mmのリング状に成形した空隙保持部材(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製高密度ポリエチレン)を圧入した。
【0081】
次いで、切削加工によって空隙保持部材の外径を12.60mm、抵抗調整層の外径を12.48mmに同時仕上げを行った。その後、一方の空隙保持部材についてはその長尺の帯電部材の最近の端部側、他方の空隙保持部材についてはその長尺の帯電部材の中央部側に図7(a)における寸法A(形成される円錐台部の最大径と最小径との差)を1.5mm、寸法B(形成される円錐台部の高さ)を3mmとする切削加工、及び、他方の空隙保持部材の円錐台部に接してその長尺の帯電部材の中央側に凹部を図7(b)における寸法Cを3mmとし、深さを芯金(導電性支持体)が露出するまでとする切削加工をおこなった。
【0082】
次いで、抵抗調整層の表面、および、凹部の導電性支持体上に上述したように20μmの表面層を塗工によって形成して、実施例1に係る、空隙保持部材と表面層との段差が45μmの帯電部材を得た。
【0083】
<実施例2>
実施例1と同様にして、ただし、電気抵抗調整層の両端部に切削加工による除去加工により外径が12mm、幅6mmの、細径となる細径部、および、段部を形成し、細径部にリング状に成形した外径13mm、内径12mm、幅6mmの空隙保持部材(ノバテックLD LJ902、日本ポリケム社製低密度ポリエチレン)を圧入した。その後、実施例1と同様にして切削加工、表面層の塗工を行って、実施例1に係る帯電部材と同寸法の帯電部材を得た。
【0084】
<実施例3>
実施例2と同様にして、ただし、リング状に成形した外径13mm、内径12mm、幅6mmの空隙保持部材(ネオフロンNP−20、ダイキン工業社製フッ素樹脂(FEP:テトラフルオロエチレン・ヘキサ フルオロプロピレン共重合体))を用いて、実施例1に係る帯電部材と同寸法の帯電部材を得た。
【0085】
<実施例4>
実施例2と同様にして、ただし、リング状に成形した空隙保持部材の代わりに、細径部に50μm厚の軟質ポリプロピレンシート(ニューコンRタイプ;日本ポリプロ社製)を接着剤としてアルテコ社製アルテコタイプDシリーズを坪量が0.02mg/mm2となるように塗布しながら積層して外径13mmのリング状に形成した空隙保持部材を用い、また、抵抗調整層の外径を12.92mmになるように切削加工をおこなって、空隙保持部材と表面層との段差が45μmの帯電部材を得た。
【0086】
<比較例1>
実施例1同様にして、ただし、上記円錐台部及び上記凹部の形成を行わず、かつ、空隙保持部材の外径を12.70mm、抵抗調整層の外径を12.36mmとし抵抗調整層の表面に塗工により20μmの表面層を形成してし、空隙保持部材と表面層との段差が150μmの帯電部材を得た。
【0087】
<比較例2>
比較例1と同様に、ただし、上記空隙保持部材の外径を12.52mm、抵抗調整層の外径を12.42mmとし、抵抗調整層の表面に表面層を20μm塗工し、空隙保持部材と表面層との段差が30μmの帯電部材を得た。
<比較例3>
比較例1と同様に、ただし、空隙保持部材と表面層との段差が80μmの帯電部材を得た。
<比較例4>
比較例1と同様に、空隙保持部材と表面層との段差が45μmの帯電部材を得た。
<像担持体の作製>
上記実施例の帯電部材とセットとして評価に用いた、図6にモデル的に示した、実施例に係る帯電部材の2つの斜面部と平行でかつ該2つの斜面部とそれぞれ接する斜面を備えて突出して設けられた2つの接触凸部を有している像担持体は次のように作製した。
【0088】
すなわち、接触凸部のない像担持体の接触凸部形成箇所にリング状の絶縁のプラスチックパイプをはめたのち、切削加工により面取り除去を行って接触凸部を形成した。
【0089】
また、比較例の帯電部材とセットとして評価に用いた像担持体は、2つの接触凸部を設けない以外は上記の像担持体と同様のものを用いた。
【0090】
<評価>
画像評価について説明する。実施例1〜4および比較例1〜4にかかるローラ状の帯電部材を、実施例1〜4にかかる帯電部材は上述の2つの接触凸部を有している像担持体とそれぞれ組み合わせ(このときに帯電部材の表面層と像担持体の表面との距離は初期が80μm、その後、図2の「空隙」の実線に沿って徐々に短くして通紙枚数が200000(200K)に達した後は45μmに設定。このときの重畳電圧も図2中実線の重畳電圧に従って制御した)、比較例1〜4に係る帯電部材は上述の接触凸部のない像担持体とそれぞれ組み合わせ(このときに帯電部材の表面層と像担持体表面との距離は150μm(このときの重畳電圧は3.0kV)、30μm(このときの重畳電圧は2.0kV)、80μm(このときの重畳電圧は2.5kV)、あるいは、45μm(このときの重畳電圧は2.0kV)となる)、図5にモデル的に示すプロセスカートリッジに搭載し、図3、4にモデル的に示した画像形成装置を使用して、画像評価を行った。
【0091】
帯電部材(ローラ)に印加した電圧はDC=−700V、AC=2.2kVpp(周波数=2kHz)とし、評価環境は室温環境23℃、60%RHとした。本条件で通紙開始直後、及び、500000枚通紙後の、ローラ異常に起因する画像異常の有無を確認した。
【0092】
実施例1〜4にかかる帯電部材を用いた場合、間隙は、図2に示す空隙量と対電部材の耐久寿命との関係の概図の破線部分に入り、通紙直後でも500000枚通紙後でも良好な画像が得られ、十分に良好な評価結果となった。
【0093】
しかし、比較例1にかかる帯電部材を用いた場合には、図2における、通紙開始直後から異常放電が発生する領域に該当し、初期の段階で帯電部材の帯電機能の余裕度の低さに起因する色ポチおよび黒ポチの異常画像およびむら画像が発生し、500000枚通紙後も同様であり、不十分な評価結果となった。
【0094】
また、比較例2に係る帯電部材を用いた場合には、図2におけるβ部分の帯電部材汚れの領域に入り、通紙開始直後こそ異常画像は生じなかったが、200000枚通紙前に、帯電部材表面の汚損・付着物質の影響で色ポチおよび黒ポチ、すじ画像の発生が確認され、不十分な評価結果となった。
【0095】
さらに、比較例3に係る帯電部材を用いた場合には300000枚通紙程度で画像にすじが生じ始め、比較例4に係る帯電部材を用いた場合には200000枚通紙程度で画像にすじが生じ始め、それぞれ不十分な評価結果となった。
【符号の説明】
【0096】
61 像担持体
61a 突出部
61b 斜面
101 帯電部材
103 空隙保持部材
103a 斜面部
103b 最近接時当接部
104 電気抵抗調整層
104b 凹部
105a 付勢部材
106 圧子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【特許文献1】特開平3−240076号公報
【特許文献2】特開平4−358175号公報
【特許文献3】特開平5−107871号公報
【特許文献4】特開2005−91818公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に向けて付勢されかつ前記像担持体と平行に保持される長尺の本体部と該本体部の両端付近に突出して設けられかつ該像担持体に当接して該本体部を該像担持体の表面から間隔をあけた状態に保つ空隙保持部材とにより構成された帯電部材において、
前記2つの空隙保持部材の前記長さ方向のうちの一方側の面が、それぞれ前記長さ方向に対して同じ角度で斜めとなる斜面部とされており、
前記帯電部材がその本体部の長さ方向に移動可能に保持されている
ことを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記長さ方向のうちの他方側の前記空隙保持部材の斜面部に接する前記本体部部分に凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記帯電部材に、前記本体部と平行で、かつ、前記像担持体に対して最近接したときに前記本体部に当接する最近接時当接部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帯電部材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の帯電部材と前記像担持体とを有し、
前記像担持体が、前記2つの斜面部と平行でかつ該2つの斜面部とそれぞれ接する斜面を備えて突出して設けられた2つの接触凸部を有しており、かつ、
前記帯電部材がその本体部の長さ方向に移動可能に保持されていることを特徴とする
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76888(P2013−76888A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217303(P2011−217303)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】