説明

平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器、及び平衡型高周波回路

【課題】平衡型端子を有するアンテナ共用器において、平衡型端子における同相信号成分の漏洩が大きいという問題があった。
【解決手段】平衡型高周波フィルタ101は、平衡型高周波素子102と移相回路103とにより構成される。移相回路103は伝送線路104により構成され、出力端子間に配置される。伝送線路104は、長さが略λ/2(λは送信周波数帯の周波数における波長)に設定された、同相信号成分に対して所定の周波数で共振する直列共振回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器、及び平衡型高周波回路における同相信号低減方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信の発展に伴い、使用されるデバイスの高性能化、小型化が期待されている。RF段に使用されるフィルタに関しては、従来より、弾性表面波フィルタが広く用いられている。また、近年では、FBAR(Film Bulk AcousticResonator)を梯子型に接続することにより構成される帯域フィルタが期待されている。このようなRF段に使用されるフィルタや半導体素子に関しては、デバイス間のクロストークなどに対する雑音特性の良好化を目的として、平衡化(バランス化)が進み、良好なバランス特性が求められている。
【0003】
以下、従来の平衡型高周波デバイスのバランス特性改善について説明する。平衡型高周波デバイスのバランス特性改善に関しては、所望波を通す通過帯域、例えば、受信フィルタでは受信通過帯域のバランス特性を改善するための移相回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。まず、従来の平衡型高周波デバイスの一例として、従来の弾性表面波フィルタについて説明する。図17に示すのは、平衡型入出力端子を有する弾性表面波フィルタ1701の構成図である。図17において、弾性表面波フィルタ1701は、圧電基板1702上に、第1、第2、第3のインターディジタルトランスデューサ電極(以下、IDT電極とする)1703、1704、1705と第1、第2の反射器電極1706、1707とにより構成される。第1のIDT電極1703の一方の電極指は出力端子OUT1に接続され、第1のIDT電極1703の他方の電極指は出力端子OUT2に接続される。また、第2、第3のIDT電極1704、1705の一方の電極指を入力端子INに接続し、他方を接地する。以上の構成とすることにより、不平衡型−平衡型入出力端子を有する弾性表面波フィルタを実現することができる。また、図17の弾性表面波フィルタにおいて、入出力端子のインピーダンスはそれぞれ50Ωと設計されている。図18に示すのは、図17で示した従来の900MHz帯の弾性表面波フィルタの特性図である。図18において、(a)は通過特性であり、(b)は通過帯域(925MHzから960MHzまで)における振幅バランス特性であり、(c)は通過帯域における位相バランス特性である。図18において、TxはGSMシステムで使用される送信周波数帯であり、RxはGSMシステムで使用される受信周波数帯である。ここで、通過特性とは、平衡型端子における差動信号成分の特性であり、通過帯域は、受信周波数帯Rxとしている。図18より、通過帯域において、振幅バランス特性は−0.67dB〜+0.77dB、位相バランス特性は−6.3°〜+9.4°と大きく劣化している。
【0004】
ここで、振幅バランス特性とは、入力端子INと出力端子OUT1との信号振幅と、入力端子INと出力端子OUT2との信号振幅との振幅差を表したものであり、この値が零となればバランス特性の劣化はない。また、位相バランス特性とは、入力端子INと出力端子OUT1との信号位相と、入力端子INと出力端子OUT2との信号位相との位相差の180°からのずれを表したものであり、この値が零となればバランス特性の劣化はない。
【0005】
次に、従来の平衡型高周波デバイスにおけるバランス特性に関して、従来の移相回路について説明する。図19に従来の平衡型高周波デバイス1901の構成を示す。図19において、平衡型高周波デバイス1901は、平衡型高周波素子1902と移相回路1903とにより構成される。移相回路1903は伝送線路1904により構成され、出力端子間に配置される。ここで、伝送線路1904の長さはλ/2(λは受信周波数帯の周波数における波長)である。図20に示すのは、平衡型高周波デバイス1901の特性である。図20において、(a)は通過特性であり、(b)は通過帯域の振幅バランス特性であり、(c)は通過帯域の位相バランス特性である。図20において、TxはGSMシステムで使用される送信周波数帯であり、RxはGSMシステムで使用される受信周波数帯である。ここで、通過特性とは、平衡型端子における差動信号成分の特性であり、通過帯域は、受信周波数帯Rxとしている。図18に示す従来の特性に比べて、バランス特性は大幅に改善されており、ほぼ理想状態に近い特性となっている。
【特許文献1】特開2003−338724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の技術では、平衡型高周波デバイスは、通過帯域内の特性に着目してバランス特性を改善するための移相回路であり、通過帯域外の特性に関しては着目されていなかった。平衡型高周波デバイスとしての平衡型高周波素子が半導体デバイスの入力側に接続される場合においては、通過帯域内だけでなく、通過帯域外の特性も重要となる。特に、平衡型高周波素子が受信フィルタにおいては、受信周波数帯内だけでなく、送信周波数帯の特性が重要となる。
【0007】
図21に示すのは、図17で示した弾性表面波フィルタ1701における送信周波数帯(880MHz〜915MHz)の同相信号成分の特性である。ここで、同相信号成分の特性とは、平衡型高周波素子の入力側から出力側への同相信号成分の漏洩のことを言う。図21に示すように、送信周波数帯の同相信号成分は−30dB程度であり、図18の送信周波数帯の減衰量より大きい周波数帯域が存在する。これは、平衡型高周波素子の差動信号成分の通過特性にて、送信周波数帯における送信信号を抑圧しても、同相信号成分の漏洩によって、平衡型高周波素子の後段に接続される低雑音増幅器やミキサなどの半導体デバイスの飽和や歪みの原因となり、通信機器としての感度劣化の原因となる。特に、アンテナ共用器においては、送信信号の減衰量、送受間のアイソレーションを大きくする必要があり、この送信周波数帯の同相信号成分の漏洩を小さくする必要があるという。このように、従来の平衡型高周波デバイスにおいては、出力側の平衡型端子に漏洩する同相信号成分が大きいという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、送信周波数帯における同相信号成分の小さい平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器を提供することを目的とする。また、そのような平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器を用いた平衡型高周波回路、通信機器を提供することを目的とする。また、送信周波数帯における同相信号成分を小さくする平衡型高周波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の平衡型高周波フィルタは、少なくとも1つの平衡型端子有する平衡型高周波素子と移相回路とを備えた平衡型高周波フィルタであって、前記平衡型高周波フィルタは、平衡型高周波素子の通過帯域である第1の周波数帯と平衡型高周波素子の減衰帯域である第2の周波数帯とを有し、前記移相回路は、前記平衡型端子間に電気的に接続され、同相信号成分に対して所定の周波数において共振する直列共振回路であって、前記直列共振回路の共振周波数が第2の周波数帯に設定されている。
【0010】
本構成によって、第2の周波数帯における同相信号成分を低減することができる。
【0011】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記第1の周波数帯は受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は送信周波数帯であることが好ましい。
【0012】
上記構成によって、送信周波数帯における同相信号成分を低減することができ、後段に接続される低雑音増幅器やミキサの飽和や歪みを改善することができ、さらには、高感度な通信機器を提供することができる。
【0013】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記移相回路は伝送線路を備えた構成であって、前記伝送線路は第2の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることが好ましい。
【0014】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記移相回路は少なくとも2つの伝送線路を備えた構成であって、前記伝送線路の一方は第2の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、前記伝送線路の他方は前記一方の伝送線路とは長さが異なっており、前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることが好ましい。
【0015】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記移相回路は少なくとも3つのインピーダンス素子を備えた構成であって、平衡型端子間に第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とが直列に接続されており、前記第1のインピーダンス素子と前記第2のインピーダンス素子との接続点は、第3のインピーダンス素子を介して接地される構成であって、前記第1のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成され、前記第2のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成されることが好ましい。
【0016】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子はコンデンサであって、前記第3のインピーダンス素子はインダクタであることが好ましい。
【0017】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子はインダクタであって、前記第3のインピーダンス素子はコンデンサであることが好ましい。
【0018】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子の前記第1の周波数帯におけるインピーダンスが、前記平衡型端子における一方の特性インピーダンス値で規格化した値が3以上となるように設定されていることが好ましい。
【0019】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記平衡型高周波素子が弾性表面波フィルタにより構成されていることが好ましい。
【0020】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記平衡型高周波素子がFBARを用いたフィルタにより構成されていることが好ましい。
【0021】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記平衡型高周波フィルタは、平衡型端子を有する低雑音増幅器の入力側に接続されていることが好ましい。
【0022】
また、上記平衡型高周波フィルタにおいては、前記平衡型高周波フィルタは、平衡型端子を有するミキサの入力側に接続されていることが好ましい。
【0023】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明のアンテナ共用器は、請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタを備えている。
【0024】
また、上記アンテナ共用器においては、前記平衡型高周波フィルタは前記アンテナ共用器における受信フィルタであって、前記第1の周波数帯は前記アンテナ共用器における受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は前記アンテナ共用器における送信周波数帯であることが好ましい。
【0025】
また、上記アンテナ共用器においては、前記アンテナ共用器は、平衡型端子を有する低雑音増幅器の入力側に接続されていることが好ましい。
【0026】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の平衡型高周波回路は、平衡型端子を有する低雑音増幅器と、平衡型端子を有するミキサと、移相回路とを備えた平衡型高周波回路であって、前記平衡型高周波回路において、第1の周波数帯は所望波の周波数帯域であり、第2の周波数帯は妨害波の周波数帯域であり、前記移相回路は前記低雑音増幅器と前記ミキサとを接続する平衡型線路間に配置される構成であって、前記移相回路は、前記平衡型端子間に電気的に接続され、同相信号成分に対して所定の周波数において共振する直列共振回路であって、前記直列共振回路の共振周波数が第2の周波数帯に設定されている。
【0027】
本構成によって、第2の周波数帯における同相信号成分を低減することができる。
【0028】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1の周波数帯は受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は送信周波数帯であることが好ましい。
【0029】
上記構成によって、送信周波数帯における同相信号成分を低減することができ、後段に接続される低雑音増幅器やミキサの飽和や歪みを改善することができ、さらには、高感度な通信機器を提供することができる。
【0030】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1の周波数帯は受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は送信周波数帯であるであることが好ましい。
【0031】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記移相回路は伝送線路を備えた構成であって、前記伝送線路は第2の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることが好ましい。
【0032】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記移相回路は少なくとも3つのインピーダンス素子を備えた構成であって、平衡型端子間に第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とが直列に接続されており、前記第1のインピーダンス素子と前記第2のインピーダンス素子との接続点は、第3のインピーダンス素子を介して接地される構成であって、前記第1のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成され、前記第2のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成されることが好ましい。
【0033】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子はコンデンサであって、前記第3のインピーダンス素子はインダクタであることが好ましい。
【0034】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子はインダクタであって、前記第3のインピーダンス素子はコンデンサであることが好ましい。
【0035】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子の前記第1の周波数帯におけるインピーダンスが、前記平衡型端子における一方の特性インピーダンス値で規格化した値が3以上となるように設定されていることが好ましい。
【0036】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の平衡型高周波回路は、平衡型線路を有する回路基板と移相回路とを備えた平衡型高周波回路であって、前記平衡型高周波回路において、第1の周波数帯は所望波の周波数帯域であり、第2の周波数帯は妨害波の周波数帯域であり、前記移相回路は前記回路基板上に実装される構成であって、前記移相回路は、前記平衡型線路間に電気的に接続され、同相信号成分に対して所定の周波数において共振する直列共振回路であって、前記直列共振回路の共振周波数が第2の周波数帯に設定されている。
【0037】
本構成によって、第2の周波数帯における同相信号成分を低減することができる。
【0038】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1の周波数帯は受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は送信周波数帯であることが好ましい。
【0039】
上記構成によって、送信周波数帯における同相信号成分を低減することができ、後段に接続される低雑音増幅器やミキサの飽和や歪みを改善することができ、さらには、高感度な通信機器を提供することができる。
【0040】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記移相回路は伝送線路を備えた構成であって、前記伝送線路は第1の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることが好ましい。
【0041】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記移相回路は少なくとも3つのインピーダンス素子を備えた構成であって、平衡型端子間に第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とが直列に接続されており、前記第1のインピーダンス素子と前記第2のインピーダンス素子との接続点は、第3のインピーダンス素子を介して接地される構成であって、前記第1のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成され、前記第2のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成されることが好ましい。
【0042】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子はコンデンサであって、前記第3のインピーダンス素子はインダクタであることが好ましい。
【0043】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子はインダクタであって、前記第3のインピーダンス素子はコンデンサであることが好ましい。
【0044】
また、上記平衡型高周波回路においては、前記第1、及び第2のインピーダンス素子の前記第1の周波数帯におけるインピーダンスが、前記平衡型端子における一方の特性インピーダンス値で規格化した値が3以上となるように設定されていることが好ましい。
【0045】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の通信機器は、請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタを用いている。
【0046】
上記構成によって、送信周波数帯における同相信号成分を低減することができ、後段に接続される低雑音増幅器やミキサの飽和や歪みを改善することができ、さらには、高感度な通信機器を提供することができる。
【0047】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の通信機器は、請求項13または14に記載のアンテナ共用器を用いている。
【0048】
上記構成によって、送信周波数帯における同相信号成分を低減することができ、後段に接続される低雑音増幅器やミキサの飽和や歪みを改善することができ、さらには、高感度な通信機器を提供することができる。
【0049】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の通信機器は、請求項16または17に記載の平衡型高周波回路を用いている。
【0050】
上記構成によって、送信周波数帯における同相信号成分を低減することができ、後段に接続される低雑音増幅器やミキサの飽和や歪みを改善することができ、さらには、高感度な通信機器を提供することができる。
【0051】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の通信機器は、請求項23または24に記載の平衡型高周波回路を用いている。
【0052】
上記構成によって、送信周波数帯における同相信号成分を低減することができ、後段に接続される低雑音増幅器やミキサの飽和や歪みを改善することができ、さらには、高感度な通信機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器によれば、送信周波数帯における同相信号成分の小さい平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器を実現することができる。また、そのような平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器を用いた平衡型高周波回路、通信機器を提供することができる。また、送信周波数帯における同相信号成分を小さくする平衡型高周波回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0055】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの構成図である。図1において、平衡型高周波フィルタ101は、平衡型高周波素子102と移相回路103とにより構成される。移相回路103は伝送線路104により構成され、出力端子間に配置される。ここで、伝送線路104の長さはλ/2(λは送信周波数帯の周波数における波長)とする。ここで、送信周波数帯は、GSMシステムで使用されている送信周波数帯(880〜915MHz)としている。
【0056】
図2(a)に示すのは、送信周波数帯における同相信号成分の特性である。ここで、λは904MHzに対応する長さとしている。また、平衡型高周波素子としては、図18で示した特性の弾性表面波フィルタを用いている。図2(a)により、図21で示した従来の特性に比べて同相信号成分の特性が大幅に低減されている。また、図2(b)に示すのは、図19の構成での送信周波数帯の同相信号成分の特性である。図2(b)では、伝送線路の長さは、λであり、受信周波数帯内の周波数である942.5MHzに対応する長さとしている。図2において、伝送線路の長さをλ/2とすることにより、従来よりも同相信号成分の特性が改善している。
【0057】
また、図3に示すのは、平衡型高周波デバイス101の特性である。図3において、(a)は通過特性であり、(b)は通過帯域の振幅バランス特性であり、(c)は通過帯域の位相バランス特性である。図3において、TxはGSMシステムで使用される送信周波数帯であり、RxはGSMシステムで使用される受信周波数帯である。ここで、通過特性とは、平衡型端子における差動信号成分の特性であり、通過帯域は、受信周波数帯Rxである。図3において、図18で示した従来の特性と比べてバランス特性は大幅に改善している。また、図20に示す従来の特性と比べてもほぼ同等の特性が得られている。
【0058】
以上の構成とすることにより、本発明の平衡型高周波フィルタは、移相回路としての伝送線路をλ/2として、その周波数を送信周波数帯内に設定することにより、受信周波数帯における通過特性、及びバランス特性を劣化させることなく、送信周波数帯における同相信号成分を小さくでき、通過帯域内、及び通過帯域外の特性の優れた平衡型高周波フィルタを実現することができる。
【0059】
なお、本実施の形態においては、平衡型高周波フィルタを構成する平衡型高周波素子として、弾性表面波フィルタを一例として説明したが、この構成に関してはこれに限るものではない。本発明においては、平衡型高周波素子から出力される送信周波数帯における同相信号成分を移相回路により低減するものであって、平衡型高周波素子としては、平衡型端子を有していれば、同様の効果が得られる。
【0060】
また、平衡型高周波素子としては、例えば、FBARを用いたフィルタであってもよい。図4にFBARの構成図を示す。図4において、FBAR401は基板402上に形成された下部電極403、圧電体薄膜404、上部電極405を含む構成である。下部電極の下方の基板402にはキャビティ406が設けられており、これによりエネルギー閉じ込め型の共振器を実現する。ここで、下部電極403、上部電極405はFBAR単体の入出力電極に対応する。基板402にはSi、サファイアなどが用いられる。また、下部電極403、上部電極405には、Al、Mo、Au、Cu、Tiなどが用いられる。また、圧電体薄膜404には、AlN、ZnOなどが用いられる。以上のような構成とすることにより、FBARが構成される。このFBARによる梯子型フィルタやモード結合型フィルタを本発明の平衡型高周波素子に適用することにより、平衡型高周波フィルタとして、本発明と同様の効果が得られる。また、FBARの構成に関しても、これに限るものではなく、例えば、音響ミラーを用いた構成であってもよい。
【0061】
また、本実施の形態においては、移相回路としての伝送線路を一つとして説明したが、これは、複数の伝送線路を組み合わせてもよい。図5に、本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの他の構成図を示す。図5において、平衡型高周波フィルタ501は、平衡型高周波素子502と移相回路503とにより構成される。移相回路503は伝送線路504、505により構成され、出力端子間に配置される。伝送線路504の長さはλ/2(ここで、λは送信周波数帯の周波数における波長)である。また、伝送線路504の長さはλ/2であり、λは送信周波数帯とは異なる周波数に対応する長さとすることにより、他の周波数における同相信号成分の特性を改善することができる。例えば、λを通過帯域である受信周波数帯の周波数とすれば、通過特性をさらに改善することができる。また、λを他システムの送信周波数帯とすれば、クロストークなどによる他システムからの同相信号成分の妨害波を低減することができる。このように、λの個数や周波数設定により複数のシステムの同相信号成分を低減することができる。
【0062】
また、本発明の平衡型高周波フィルタは、低雑音増幅器やミキサなどに接続されて用いられる。図6(a)は、平衡型高周波フィルタ101と低雑音増幅器601との構成を示す図である。移相回路103は平衡型高周波フィルタ101と低雑音増幅器601とを接続する平衡型端子間に接続される。以上の構成により、送信周波数帯の同相信号成分が低減でき、低雑音増幅器の飽和や歪みを低減でき、より高感度な通信機器が実現できる。また、図6(b)は、平衡型高周波フィルタ101と低雑音増幅器601、ミキサ602との構成を示す図である。移相回路103は低雑音増幅器601とミキサ602とを接続する平衡型端子間に接続される。以上の構成により、送信周波数帯の同相信号成分が低減でき、ミキサの歪みを低減でき、より高感度な通信機器が実現できる。
【0063】
また、本発明の第1の周波数帯は本実施の形態における受信周波数帯に対応し、本発明の第2の周波数帯は本実施の形態における送信周波数帯に対応する。また、本実施の形態においては、第1の周波数帯は通過帯域であり、第2の周波数帯は減衰帯域である。
【0064】
(実施の形態2)
以下、本発明の平衡型高周波フィルタの構成について、図面を用いて説明する。
【0065】
図7は、本発明の実施の形態2における平衡型高周波フィルタ701の構成図である。図7において、平衡型高周波フィルタ701は、平衡型高周波素子702と移相回路703とにより構成される。また、平衡型高周波素子702において、入力側の端子は不平衡型入出力端子である入力端子INであり、出力側の端子は平衡型端子である出力端子OUT1、OUT2である。
【0066】
移相回路703は、インピーダンス素子としてのコンデンサ704、705とインダクタ706とにより構成される。コンデンサ704、705は出力端子間に直列に接続され、コンデンサ704、705の接続点707はインダクタ706を介して接地される。このように、移相回路703は出力端子間に接続される構成となる。
【0067】
図7の移相回路において、平衡型高周波フィルタの通過特性である差動信号成分に関しては、コンデンサ704と705の接続点707は仮想接地点となるため、コンデンサ702、703の値を十分小さくすることにより、接地面に対するインピーダンスを大きくすることがき、差動信号成分は接地されることなく、出力端子OUT1、OUT2に伝達される。また、同相信号成分に関しては、コンデンサ704と705の接続点707は仮想接地点とならず、コンデンサ704とインダクタ706の一部、コンデンサ705とインダクタ706の一部とが所定の周波数において直列共振回路が形成される。移相回路703において、コンデンサの容量をC、インダクタのインダクタンスをL/2とすると、同相信号成分に関する直列共振回路の共振周波数は、f=1/(2π×(LC)1/2)とり、この周波数帯における同相信号成分は接地面に短絡される。
【0068】
図8(a)に示すのは、送信周波数帯における同相信号成分の特性である。ここで、直列共振回路の共振周波数fは送信周波数帯となるように、904MHzと設定しておいる。また、平衡型高周波素子としては、図18で示した特性の弾性表面波フィルタを用いている。図8(a)により、図21で示した従来の特性に比べて同相信号成分の特性が大幅に低減されている。また、図8(b)に示すのは、直列共振回路の共振周波数が受信周波数帯となるように、951MHzに設定した場合の送信周波数帯における同相信号成分の特性である。これより、直列共振回路の共振周波数を送信周波数帯内とすることにより、従来よりも同相信号成分の特性が改善している。
【0069】
また、図9に示すのは、平衡型高周波フィルタ701の特性である。図9において、(a)は通過特性であり、(b)は通過帯域の振幅バランス特性であり、(c)は通過帯域の位相バランス特性である。図9において、TxはGSMシステムで使用される送信周波数帯であり、RxはGSMシステムで使用される受信周波数帯である。ここで、通過特性とは、平衡型端子における差動信号成分の特性であり、通過帯域は、受信周波数帯Rxである。図9において、図18で示した従来の特性と比べてバランス特性は改善している。
【0070】
以上の構成とすることにより、本発明の平衡型高周波フィルタは、移相回路を3つのインピーダンス素子により構成し、同相信号成分に対して形成される直列共振回路の周波数を送信周波数帯内に設定することにより、送信周波数帯における同相信号成分を小さくでき、通過帯域内、及び通過帯域外の特性の優れた平衡型高周波フィルタを実現することができる。
【0071】
なお、本実施の形態における移相回路は、図10に示すような回路構成でもよい。図10において、移相回路1001は、インピーダンス素子としてのインダクタ1002、1003とコンデンサ1004とにより構成される。インダクタ1002、1003は出力端子間に直列に接続され、インダクタ1002、1003の接続点1005はコンデンサ1004を介して接地される。このように、移相回路1001は出力端子間に接続される構成となる。
【0072】
図10の移相回路において、平衡型高周波フィルタの通過特性である差動信号成分に関しては、インダクタ1002と1003の接続点1005は仮想接地点となるため、インダクタ1002、1003の値を十分大きくすることにより、接地面に対するインピーダンスを大きくすることがき、差動信号成分は接地されることなく、出力端子OUT1、OUT2に伝達される。また、同相信号成分に関しては、インダクタ1002と1003の接続点1005は仮想接地点とならず、インダクタ1002とコンデンサ1004の一部、インダクタ1002とコンデンサ1004の一部とが所定の周波数において直列共振回路が形成される。移相回路1001において、インダクタのインダクタンスをL、コンデンサの容量を2×Cとすると、同相信号成分に関する直列共振回路の共振周波数は、f=1/(2π×(LC)1/2)となり、この周波数帯における同相信号成分は接地面に短絡される。
【0073】
なお、移相回路703においては、コンデンサの容量が大きいと、差動信号成分に関するインピーダンスが小さくなり、差動信号成分が短絡されてフィルタのロスの原因となる。コンデンサ704、705のインピーダンスを変化させた場合におけるフィルタの通過特性の評価を行った。図11(a)に示すのは、コンデンサ702、703の受信周波数帯におけるインピーダンスを端子の特性インピーダンスで割った規格化インピーダンスに対するロスの値である。ここでは、平衡型出力端子の特性インピーダンスは50Ωであるので、それぞれの端子の特性インピーダンスは25Ωとしている。図11(a)より、規格化インピーダンスが3より小さい範囲で、ロスが劣化している。なお、図8、図9の特性は、規格化インピーダンスが6.8の場合の特性である。
【0074】
また、移相回路1001においては、インダクタのインダクタンスが小さいと、差動信号成分に関するインピーダンスが小さくなり、差動信号成分が短絡されてフィルタのロスの原因となる。インダクタ1002、1003のインピーダンスを変化させた場合におけるフィルタの通過特性の評価を行った。図11(b)に示すのは、インダクタ1002、1003の受信周波数帯におけるインピーダンスを端子の特性インピーダンスで割った規格化インピーダンスに対するロスの値である。ここでは、平衡型出力端子の特性インピーダンスは50Ωであるので、それぞれの端子の特性インピーダンスは25Ωとしている。図11(b)より、規格化インピーダンスが3より小さい範囲で、ロスが劣化している。
【0075】
以上より、通過帯域における規格化インピーダンスに関しては、3以上とすることが好ましい。
【0076】
また、本実施の形態においては、平衡型高周波フィルタを構成する平衡型高周波素子として、弾性表面波フィルタを一例として説明したが、これに限るものではない。本発明においては、平衡型高周波素子から出力される送信周波数帯における同相信号成分を移相回路により低減するものであって、平衡型高周波素子としては、平衡型端子を有していれば、同様の効果が得られる。平衡型高周波素子としては、例えば、FBARを用いたフィルタであってもよい。
【0077】
また、本実施の形態における移相回路に関しては、差動信号成分に対する整合回路を含む構成としてもよい。
【0078】
また、本実施の形態における移相回路を、図6で示したような構成に適用してもかまわない。この場合においても、同相信号成分を低減して、低雑音増幅器やミキサの特性を向上させるという効果は同様であり、より高感度な通信機器が実現できる。
【0079】
また、本発明の第1の周波数帯は本実施の形態における受信周波数帯に対応し、本発明の第2の周波数帯は本実施の形態における送信周波数帯に対応する。また、本実施の形態においては、第1の周波数帯は通過帯域であり、第2の周波数帯は減衰帯域である。
【0080】
(実施の形態3)
以下、本発明のアンテナ共用器の構成について、図面を用いて説明する。
【0081】
図12は、本発明の実施の形態3におけるアンテナ共用器の構成図である。図12において、アンテナ共用器1201は、送信フィルタ1202、受信フィルタ1203、移相回路1204とにより構成される。受信フィルタ1203の出力側は平衡型端子であり、平衡型端子間に移相回路1204が接続される。移相回路1204は、図1の構成と同様であり、伝送線路104により構成され、出力端子間に配置される。伝送線路104の長さはλ/2(ここで、λは送信周波数帯の周波数における波長)である。
【0082】
以上の構成とすることにより、本発明のアンテナ共用器は、受信フィルタ1203からの送信周波数帯における同相信号成分の漏洩を低減できる。
【0083】
なお、本実施の形態においては、移相回路としての伝送線路を一つとして説明したが、これは、複数の伝送線路を組み合わせてもよい。
【0084】
また、移相回路1204に関しては、図13に示すように、図7と同様の構成の移相回路703を用いてもかまわない。この場合においても、移相回路703により形成される直列共振回路の共振周波数を送信周波数帯内とすることにより、受信フィルタ1203からの送信周波数帯における同相信号成分の漏洩を低減できる。また、移相回路1204は、図10で示した移相回路1001を用いてもよい。また、このように、インピーダンス素子を用いて形成する場合には、差動信号成分に対する仮想接地面までの規格化インピーダンスは3以上とすることが好ましい。
【0085】
また、本実施の形態においては、送信フィルタ1202、受信フィルタ1203の構成は、特に限定されるものではない。これらは、弾性表面波フィルタを用いたものであっても、FBARを用いたものであってもよい。
【0086】
また、本実施の形態における移相回路に関しては、差動信号成分に対する整合回路を含む構成としてもよい。
【0087】
また、本発明の第1の周波数帯は本実施の形態における受信周波数帯に対応し、本発明の第2の周波数帯は本実施の形態における送信周波数帯に対応する。また、本実施の形態においては、第1の周波数帯は所望波の周波数帯であり、第2の周波数帯は妨害波の周波数帯である。
【0088】
また、本発明のアンテナ共用器を低雑音増幅器に接続すれば、低雑音増幅器の送信周波数帯域の同相信号成分による飽和や歪みを抑えることができ、より高感度な通信機器が実現できる。
【0089】
(実施の形態4)
以下、本発明の平衡型高周波回路の構成について、図面を用いて説明する。
【0090】
図14は、本発明の実施の形態4における平衡型高周波回路の構成図である。図14(a)において、平衡型高周波回路1401は、低雑音増幅器1402、ミキサ1403、移相回路1404とにより構成される。低雑音増幅器1402の出力側は平衡型端子であり、低雑音増幅器1402に接続されるミキサ1403の入力側は平衡型端子であり、この平衡型端子間に移相回路1404が接続される。移相回路1404は、図1の構成と同様であり、伝送線路104により構成され、出力端子間に配置される。伝送線路104の長さはλ/2(ここで、λは送信周波数帯の周波数における波長)である。
【0091】
以上の構成とすることにより、本発明の平衡型高周波回路は、低雑音増幅器1402からの送信周波数帯における同相信号成分の漏洩を低減でき、ミキサ1403の送信周波数帯における同相信号成分による飽和を抑えることができ、より高感度な通信機器が実現できる。
【0092】
なお、本実施の形態においては、移相回路としての伝送線路を一つとして説明したが、これは、複数の伝送線路を組み合わせてもよい。
【0093】
また、移相回路1402に関しては、図14(b)に示すように、図7と同様の構成の移相回路703を用いてもかまわない。この場合においても、移相回路703により形成される直列共振回路の共振周波数を送信周波数帯内とすることにより、低雑音増幅器1402からの送信周波数帯における同相信号成分の漏洩を低減できる。また、移相回路1402は、図10で示した移相回路1001を用いてもよい。また、このように、インピーダンス素子を用いて形成する場合には、差動信号成分に対する仮想接地面までの規格化インピーダンスは3以上とすることが好ましい。
【0094】
また、本実施の形態における移相回路に関しては、差動信号成分に対する低雑音増幅器やミキサの整合回路を含む構成としてもよい。
【0095】
また、本発明の第1の周波数帯は本実施の形態における受信周波数帯に対応し、本発明の第2の周波数帯は本実施の形態における送信周波数帯に対応する。また、本実施の形態においては、第1の周波数帯は所望波の周波数帯であり、第2の周波数帯は妨害波の周波数帯である。
【0096】
(実施の形態5)
以下、本発明の平衡型高周波回路の構成について、図面を用いて説明する。
【0097】
図15は、本発明の実施の形態5における平衡型高周波回路の構成図である。図15において、平衡型高周波回路1501は、回路基板1502上に実装された、送信増幅器1503、送信フィルタ1504、スイッチ1505、受信フィルタ1506、低雑音増幅器1507、ミキサ1508、移相回路1509とにより構成される。送信回路から出力される送信信号は、送信増幅器1502、送信フィルタ1503、スイッチ1504を介してアンテナ端子ANTに出力される。このような平衡型高周波回路1501は、主に、時分割送受信のシステムの通信機器に用いられる。また、アンテナ端子ANTより入力された受信信号は、スイッチ1504、受信フィルタ1506、受信増幅器1507、ミキサ1508を介して受信回路に入力される。ここで、受信増幅器1507は平衡型であり、スイッチ1504は不平衡型であるので、受信フィルタ1506は不平衡−平衡型入出力端子を有する構成となる。移相回路1509は、図1の構成と同様であり、伝送線路104により構成され、出力端子間に配置される。伝送線路104の長さはλ/2(ここで、λは送信周波数帯の周波数における波長)である。
【0098】
以上の構成とすることにより、本発明の平衡型高周波回路は、低雑音増幅器1402からの送信周波数帯における同相信号成分の漏洩を低減でき、低雑音増幅器1507の送信周波数帯における同相信号成分による飽和を抑えることができる。
【0099】
なお、本実施の形態においては、移相回路としての伝送線路を一つとして説明したが、これは、複数の伝送線路を組み合わせてもよい。
【0100】
また、移相回路1509に関しては、図7と同様の構成の移相回路703を用いてもかまわない。この場合においても、移相回路703により形成される直列共振回路の共振周波数を送信周波数帯内とすることにより、低雑音増幅器1502からの送信周波数帯における同相信号成分の漏洩を低減できる。また、移相回路1509は、図10で示した移相回路1001を用いてもよい。また、このように、インピーダンス素子を用いて形成する場合には、差動信号成分に対する仮想接地面までの規格化インピーダンスは3以上とすることが好ましい。
【0101】
また、本実施の形態においては、移相回路を低雑音増幅器1506の入力側に配置しているが、これは、低雑音増幅器1506とミキサ1507との間に配置してもかまわない。これにより、さらに送信周波数帯の同相信号成分の漏洩を低減でき、ミキサの飽和を抑えることができる。
【0102】
また、本実施の形態における移相回路に関しては、差動信号成分に対する整合回路を含む構成としてもよい。
【0103】
また、平衡型高周波回路1501において、送信と受信とを切り換える手段としてスイッチ1505を用いて説明したが、これは、図16に示すように、アンテナ共用器1602を用いた平衡型高周波回路1601であっても構わない。ここで、アンテナ共用器1602は送信フィルタ1603と受信フィルタ1604とにより構成されるこのような平衡型高周波回路1601は、主に、同時送受信のシステムの通信機器に用いられる。
【0104】
また、本実施の形態の平衡型高周波回路においては、回路基板上に本発明の移相回路を形成しているが、これは、受信フィルタ1506や低雑音増幅器1507、ミキサ1508、アンテナ共用器1602に内蔵されていてもかまわない。
【0105】
また、本実施の形態においては、送信フィルタ1504、受信フィルタ1506の構成やアンテナ共用器1602を構成する送信フィルタ1603、受信フィルタ1604の構成は、特に限定されるものではない。これらは、弾性表面波フィルタを用いたものであっても、FBARを用いたものであってもよい。
【0106】
また、本実施の形態における移相回路に関しては、差動信号成分に対する整合回路を含む構成としてもよい。
【0107】
また、本発明の第1の周波数帯は本実施の形態における受信周波数帯に対応し、本発明の第2の周波数帯は本実施の形態における送信周波数帯に対応する。また、本実施の形態においては、第1の周波数帯は所望波の周波数帯であり、第2の周波数帯は妨害波の周波数帯である。
【0108】
また、本実施の形態においては、本発明の平衡型高周波回路を通信機器に適用することにより、同相信号成分による送信妨害波を抑圧でき、より高感度な通信機器を実現することができる。
【0109】
なお、本実施の形態において、移相回路としての伝送線路の長さをλ/2(ここで、λは送信周波数帯の周波数における波長)としたが、共振周波数を送信周波数帯内に設定できればよく、多少のずれは許容できる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明にかかる平衡型高周波フィルタ、アンテナ共用器、及び平衡型高周波回路は、同相信号成分を低減できる高周波デバイスとして有用である。また、高周波モジュールや通信機器などの用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの構成図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの同相信号成分の特性図(b)従来の平衡型高周波デバイスの同相信号成分の特性図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの通過特性図(b)本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの振幅バランス特性図(c)本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの位相バランス特性図
【図4】本発明の実施の形態1におけるFBARの構成図
【図5】本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの他の構成図
【図6】(a)本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの接続の構成を示す図(b)本発明の実施の形態1における平衡型高周波フィルタの他の接続の構成を示す図
【図7】本発明の実施の形態2における平衡型高周波フィルタの構成図
【図8】(a)本発明の実施の形態2における平衡型高周波フィルタの同相信号成分の特性図(b)従来の平衡型高周波デバイスの同相信号成分の特性図
【図9】(a)本発明の実施の形態2における平衡型高周波フィルタの通過特性図(b)本発明の実施の形態2における平衡型高周波フィルタの振幅バランス特性図(c)本発明の実施の形態2における平衡型高周波フィルタの位相バランス特性図
【図10】本発明の実施の形態2における移相回路の他の構成図
【図11】(a)図7で示した移相回路を用いた場合のロスと規格化インピーダンスの関係図(b)図10で示した移相回路を用いた場合のロスと規格化インピーダンスの関係図
【図12】本発明の実施の形態3におけるアンテナ共用器の構成図
【図13】本発明の実施の形態3におけるアンテナ共用器の他の構成図
【図14】(a)本発明の実施の形態4における平衡型高周波回路の構成図(b)本発明の実施の形態4における平衡型高周波回路の他の構成図
【図15】本発明の実施の形態5における平衡型高周波回路の構成図
【図16】本発明の実施の形態5における平衡型高周波回路の他の構成図
【図17】従来の弾性表面波フィルタの構成図
【図18】(a)従来の弾性表面波フィルタの通過特性図(b)従来の弾性表面波フィルタの振幅バランス特性図(c)従来の弾性表面波フィルタの位相バランス特性図
【図19】従来の平衡型高周波デバイスの構成図
【図20】(a)従来の平衡型高周波デバイスの通過特性図(b)従来の平衡型高周波デバイスの振幅バランス特性図(c)従来の平衡型高周波デバイスの位相バランス特性図
【図21】従来の平衡型高周波デバイスの同相信号成分の特性図
【符号の説明】
【0112】
101 平衡型高周波フィルタ
102 平衡型高周波素子
103 移相回路
104 伝送線路
401 FBAR
402 基板
403 下部電極
404 圧電体薄膜
405 上部電極
406 キャビティ
501 平衡型高周波フィルタ
502 平衡型高周波素子
503 移相回路
504 伝送線路
505 伝送線路
601 低増幅器雑音
602 ミキサ
701 平衡型高周波フィルタ
702 平衡型高周波素子
703 移相回路
704,705 コンデンサ
706 インダクタ
707 接続点
1001 移相回路
1002,903 インダクタ
1004 コンデンサ
1005 接続点
1201 アンテナ共用器
1202 送信フィルタ
1203 受信フィルタ
1204 移相回路
1401 平衡型高周波回路
1402 低雑音増幅器
1403 ミキサ
1404 移相回路
1501 平衡型高周波回路
1502 回路基板
1503 送信増幅器
1504 送信フィルタ
1505 スイッチ
1506 受信フィルタ
1507 低雑音増幅器
1508 ミキサ
1509 移相回路
1601 平衡型高周波回路
1602 アンテナ共用器
1603 送信フィルタ
1604 受信フィルタ
1701 弾性表面波フィルタ
1702 圧電基板
1703 第1のIDT電極
1704 第2のIDT電極
1705 第3のIDT電極
1706,1707 反射器電極
101 平衡型高周波デバイス
102 平衡型高周波素子
103 移相回路
104 伝送線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの平衡型端子有する平衡型高周波素子と移相回路とを備えた平衡型高周波フィルタであって、
前記平衡型高周波フィルタは、平衡型高周波素子の通過帯域である第1の周波数帯と平衡型高周波素子の減衰帯域である第2の周波数帯とを有し、
前記移相回路は、前記平衡型端子間に電気的に接続され、同相信号成分に対して所定の周波数において共振する直列共振回路であって、
前記直列共振回路の共振周波数が第2の周波数帯に設定されていることを特徴とする平衡型高周波フィルタ。
【請求項2】
前記第1の周波数帯は受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は送信周波数帯であることを特徴とする請求項1に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項3】
前記移相回路は伝送線路を備えた構成であって、
前記伝送線路は第2の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項4】
前記移相回路は少なくとも2つの伝送線路を備えた構成であって、
前記伝送線路の一方は第2の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、
前記伝送線路の他方は前記一方の伝送線路とは長さが異なっており、
前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることを特徴とする請求項3に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項5】
前記移相回路は少なくとも3つのインピーダンス素子を備えた構成であって、
平衡型端子間に第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とが直列に接続されており、
前記第1のインピーダンス素子と前記第2のインピーダンス素子との接続点は、第3のインピーダンス素子を介して接地される構成であって、
前記第1のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成され、
前記第2のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項6】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子はコンデンサであって、
前記第3のインピーダンス素子はインダクタであることを特徴とする請求項5に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項7】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子はインダクタであって、
前記第3のインピーダンス素子はコンデンサであることを特徴とする請求項5に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項8】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子の前記第1の周波数帯におけるインピーダンスが、前記平衡型端子における一方の特性インピーダンス値で規格化した値が3以上となるように設定されていることを特徴とする請求項6または7に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項9】
前記平衡型高周波素子が弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項10】
前記平衡型高周波素子がFBARを用いたフィルタにより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項11】
前記平衡型高周波フィルタは、平衡型端子を有する低雑音増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項12】
前記平衡型高周波フィルタは、平衡型端子を有するミキサの入力側に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタ。
【請求項13】
請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタを備えたことを特徴とするアンテナ共用器。
【請求項14】
前記平衡型高周波フィルタは前記アンテナ共用器における受信フィルタであって、
前記第1の周波数帯は前記アンテナ共用器における受信周波数帯であり、
前記第2の周波数帯は前記アンテナ共用器における送信周波数帯であることを特徴とする請求項13に記載のアンテナ共用器。
【請求項15】
前記アンテナ共用器は、平衡型端子を有する低雑音増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする請求項14に記載のアンテナ共用器。
【請求項16】
平衡型端子を有する低雑音増幅器と、平衡型端子を有するミキサと、移相回路とを備えた平衡型高周波回路であって、
前記平衡型高周波回路において、第1の周波数帯は所望波の周波数帯域であり、第2の周波数帯は妨害波の周波数帯域であり、
前記移相回路は前記低雑音増幅器と前記ミキサとを接続する前記平衡型端子間に電気的に接続され、同相信号成分に対して所定の周波数において共振する直列共振回路であって、
前記直列共振回路の共振周波数が第2の周波数帯に設定されていることを特徴とする平衡型高周波回路。
【請求項17】
前記第1の周波数帯は受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は送信周波数帯であることを特徴とする請求項16に記載の平衡型高周波回路。
【請求項18】
前記移相回路は伝送線路を備えた構成であって、
前記伝送線路は第2の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることを特徴とする請求項16または17に記載の平衡型高周波回路。
【請求項19】
前記移相回路は少なくとも3つのインピーダンス素子を備えた構成であって、
平衡型端子間に第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とが直列に接続されており、
前記第1のインピーダンス素子と前記第2のインピーダンス素子との接続点は、第3のインピーダンス素子を介して接地される構成であって、
前記第1のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成され、
前記第2のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成されることを特徴とする請求項16または17に記載の平衡型高周波回路。
【請求項20】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子はコンデンサであって、
前記第3のインピーダンス素子はインダクタであることを特徴とする請求項19に記載の平衡型高周波回路。
【請求項21】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子はインダクタであって、
前記第3のインピーダンス素子はコンデンサであることを特徴とする請求項19に記載の平衡型高周波回路。
【請求項22】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子の前記第1の周波数帯におけるインピーダンスが、前記平衡型端子における一方の特性インピーダンス値で規格化した値が3以上となるように設定されていることを特徴とする請求項20または21に記載の平衡型高周波回路。
【請求項23】
平衡型線路を有する回路基板と移相回路とを備えた平衡型高周波回路であって、
前記平衡型高周波回路において、第1の周波数帯は所望波の周波数帯域であり、第2の周波数帯は妨害波の周波数帯域であり、
前記移相回路は前記回路基板上に実装される構成であって、
前記移相回路は、前記平衡型線路間に電気的に接続され、同相信号成分に対して所定の周波数において共振する直列共振回路であって、
前記直列共振回路の共振周波数が第2の周波数帯に設定されていることを特徴とする平衡型高周波回路。
【請求項24】
前記第1の周波数帯は受信周波数帯であり、前記第2の周波数帯は送信周波数帯であることを特徴とする請求項23に記載の平衡型高周波回路。
【請求項25】
前記移相回路は伝送線路を備えた構成であって、
前記伝送線路は第1の周波数帯における波長の略1/2の長さであって、前記移相回路は前記平衡型端子間に接続されることを特徴とする請求項23または24に記載の平衡型高周波回路。
【請求項26】
前記移相回路は少なくとも3つのインピーダンス素子を備えた構成であって、
平衡型端子間に第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とが直列に接続されており、
前記第1のインピーダンス素子と前記第2のインピーダンス素子との接続点は、第3のインピーダンス素子を介して接地される構成であって、
前記第1のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成され、
前記第2のインピーダンス素子と前記第3のインピーダンス素子とにより直列共振回路が形成されることを特徴とする請求項23または24に記載の平衡型高周波回路。
【請求項27】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子はコンデンサであって、
前記第3のインピーダンス素子はインダクタであることを特徴とする請求項26に記載の平衡型高周波回路。
【請求項28】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子はインダクタであって、
前記第3のインピーダンス素子はコンデンサであることを特徴とする請求項26に記載の平衡型高周波回路。
【請求項29】
前記第1、及び第2のインピーダンス素子の前記第1の周波数帯におけるインピーダンスが、前記平衡型端子における一方の特性インピーダンス値で規格化した値が3以上となるように設定されていることを特徴とする請求項27または28に記載の平衡型高周波回路。
【請求項30】
請求項1または2に記載の平衡型高周波フィルタを用いた通信機器。
【請求項31】
請求項13または14に記載のアンテナ共用器を用いた通信機器。
【請求項32】
請求項16または17に記載の平衡型高周波回路を用いた通信機器。
【請求項33】
請求項23または24に記載の平衡型高周波回路を用いた通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−129131(P2006−129131A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315448(P2004−315448)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】