説明

廃棄物の熱分解、炭化・ガス化方法及び装置

【目的】廃基板や廃電池・金属等とゴムやプラスチックの混合廃棄物を熱分解(乾留)する方法及び装置を提供すること。プラスチックや紙くず、繊維くず、木屑等や、有機性廃棄物である食品残渣、食品汚泥 、し尿汚泥、下水 汚泥、蓄糞等、及びこれらを含んだ混合廃棄物を、炭化・ガス化する方法および装置を提供すること。
【構成】外部間接加熱方式の熱分解炉で廃棄物を加熱し、廃棄物中の樹脂分の気化終了後昇温する際に、加熱管若しくは電熱体を熱分解炉内に装備して廃棄物を直接加熱する内部直接加熱方式により加熱する。廃棄物を熱分解する連続式熱分解炉において、熱分解炉を複数段に分割し、最終段を内部直接加熱方式とし、他は外部間接加熱方式とすることで廃棄物温度の段階的コントロールを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃基板や廃電池・金属等とゴムやプラスチックの混合廃棄物を熱分解(乾留)する方法及び装置に関する。また、プラスチックや紙くず、繊維くず、木屑等や、有機性廃棄物である食品残渣、食品汚泥 、し尿汚泥、下水 汚泥、蓄糞等、及びこれらを含んだ混合廃棄物を、炭化・ガス化する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃基板や廃電池、金属とゴムやプラスチックの混合廃棄物より貴金属、金属を回収する方法として、焼却のうえ焼却残渣から貴金属や金属を回収するという手段が採られていた。
【0003】
この方法には貴金属の一部が溶融飛散し歩留まりが悪いとう難点がある。また、金属が酸化するため酸化鉄や酸化銅等になり付加価値が下がるという難点がある。
【0004】
そこで空気を遮断した還元雰囲気中での熱分解(乾留)方式による回収方法の開発が進められている。
【0005】
一方、有機性廃棄物である食品残渣や食品汚泥、し尿汚泥、下水汚泥、蓄糞、ブラスチック、木屑、紙くず、繊維屑、木屑等、及びこれらを含んだ混合廃棄物は燃焼や焼却によって処理されてきた。しかし係る方法にはダイオキシン類発生の恐れがあり、燃焼や焼却に変わる方法として廃棄物の熱分解処理の開発が進められている。
【0006】
上記の熱分解方式処理に用いられる熱分解炉として、ガス化溶融炉やロータリーキルン式熱分解炉などが開発され使用されている。この中で空気を遮断して還元雰囲気中で熱分解する方式には、鍋や釜のように鉄板の外側から火炎や燃焼排ガスによって加熱する外部間接加熱方式と、バーナを内装した加熱管若しくは電熱体を熱分解炉内に装備して廃棄物を直接加熱する内部直接加熱方式とがある。
【0007】
前記外部間接加熱方式を用いた熱分解炉として、本発明者は外部間接加熱方式である炭化炉(熱分解炉)とガス燃焼炉を配置し、熱分解炉にて発生する乾留ガスをガス燃焼炉で燃焼させ、この燃焼排ガスを熱分解炉の外筒内に回し熱分解炉内筒の廃棄物を加熱すると同時に燃焼排ガスによって高温蒸気を作りこれを熱分解炉に導入し、炉内の空気を追い出し炉内を還元雰囲気にすると共に熱分解を促進する方法と装置を開発している(特許第2967975号)。
【0008】
また、内部直接加熱方式を用いた熱分解炉として、本発明者等は熱分解炉の内部に加熱管或いは電気ヒータを配置し廃棄物を直接加熱すると同時に、廃熱を利用し高温蒸気を作り、これを熱分解炉に導入し炉内の空気を追い出し還元雰囲気にすると共に熱分解を促進する方法と、乾留ガスを回収しガス燃料として利用する方法及び乾留ガスを利用した発電方法及び装置を開発している(特開2007−297527号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2967975号公報
【特許文献2】特開2007−297527号公報
【特許文献3】特開2002−38165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許第2967975号に係る炭化炉(熱分解炉)にて廃基板や廃電池・金属等とゴムやプラスチックの混合廃棄物を熱分解して貴金属や金属を回収する場合、熱分解炉の温度を一旦300〜400℃に上げ、プラスチックや樹脂分を気化させた後、さらに550〜600℃に上げ金属等に付着したススなどの不純物を熱分解除去する操作が必要になる。
【0011】
ところが熱分解炉の温度を急激に上げると気化量が増大し、この気化ガスが燃焼炉に導かれて燃焼するため燃焼排ガスの熱量が増加し、この燃焼排ガスが熱分解炉の外筒に回るため、内筒内の廃棄物の温度を上げ、この繰り返しにより気化量と共に温度が暴走し炉を破損する恐れがある。
【0012】
また、廃棄物に内装されているプラスチックや樹脂が急激に気化・膨張し、破裂・爆発する等の危険がある。
【0013】
そこで係る暴走が起こらないよう徐々に温度を上げ、一旦300〜400℃で止め、付着しているプラスチックやゴムを数時間掛けてゆっくり気化させた後、さらに温度を550〜600℃に上げ金属等に付着したスス、炭化物などの不純物を熱分解除去する操作が必要になる。
【0014】
上記気化の最盛期には熱余りとなり暴走の危険が伴うが、気化が終了し、さらに温度を550〜600℃に上げる際は、別途燃料が必要になる。この際、加熱側(内壁)と受熱側(廃棄物)との温度差が少なくなり550〜600℃まで昇温するのに長時間を要し、燃料使用量が嵩むだけでなく、COの発生も増え低炭素化社会に適合しない。
【0015】
また、特許第2967975号に係る熱分解炉はバッチ式(廃棄物一括投入)であり、廃棄物の投入・排出に人手を必要とし煩雑であること、昇温・冷却に時間を要し、効率が悪く多量の処理ができないこと、廃棄物の中心部まで加熱するのに時間が掛かることなどの問題点を有する。そこで係る問題点を解消できる連続式熱分解炉の開発が望まれているが、温度を段階的にコントロールできる連続式熱分解炉は存在しない。
【0016】
プラスチックや紙くず、繊維くず、木屑等や、有機性廃棄物である食品残渣、食品汚泥 、し尿汚泥、下水 汚泥、蓄糞等、及びこれらを含んだ混合廃棄物を熱分解し、そこから発生した乾留ガスを精製し回収する方法の研究開発が進められている。
【0017】
係る方法として特開2002−38165号公報において、乾燥機にて発生した臭気性水蒸気を水蒸気加熱装置に導入し、外気より導入した空気と合わせて加熱脱臭し、高温となった蒸気及び空気を熱分解炉若しくは後流の改質炉或いは両炉に吹き込んで乾留ガスの一部を燃焼させ炉の温度を上げ、乾留ガス中のタールや油分を熱分解除去した後、冷却・洗浄し燃料ガスとして回収する方法が提示されている。
【0018】
この方法は、回収ガス中に乾留ガスが部分燃焼した燃焼排ガスが混じり、付加価値の少ない低発熱量のガスになること、洗浄されていない乾留ガスを燃焼させることからダイオキシン類発生が懸念される。
【0019】
本発明者等は、上記特開2007−297527号公報において、燃焼させない方式、すなわち熱分解炉および改質炉に加熱管若しくは電熱体を内装する内部直接加熱方式により熱分解炉内を昇温し、高温過熱蒸気を吹きつけ乾留ガスを発生させ、これを改質炉に導き、加熱管若しくは電熱体にてさらに温度を上げ、化1に示される水蒸気との水性ガス反応によりタールや油分を熱分解除去した後、冷却・洗浄し、ガス燃料として利用する方法および回収ガスを利用した発電方法及び装置を提示している。
【0020】
【化1】

【0021】
この方法は乾燥と熱分解を同一の熱分解炉で行うため熱分解炉および改質炉に多くの燃料を必要とし、水分の多い廃棄物あるいは気化量の少ない廃棄物より得た回収ガスでは賄いきれず、別途多量の燃料が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
特許第2967975号に係る廃棄物の熱分解方法は、周囲から火炎や燃焼排ガスによって加熱する外部間接加熱方式である。この方式は廃棄物より発生する乾留ガスを燃やし、或いは燃やした後の燃焼排ガスによって加熱することから、他燃料が少なくてすみ省エネ効果が大きいものである。
【0023】
ところが、経済性から缶体に使用される材料はステンレス(Cr18−Ni8)程度であり、耐熱温度は常用800℃程度に過ぎない。従って、缶体外側の 入口燃焼排ガス温度を800℃ とし、出口燃焼排ガス温度 を400℃とすると、燃焼排ガスの平均温度は600℃となり、缶内の廃棄物を600℃以上に上げることは困難である。これ以下の温度、例えば550℃に上げるしても缶体と廃棄物の温度差が少なく、熱分解時間が大幅に長くなる欠点がある。
【0024】
外部間接加熱方式の場合、廃棄物への熱伝達は缶体内壁からの対流伝熱と輻射伝熱によってなされる。
【0025】
一般に対流伝熱量は下記数1に示される式によって表される。
【0026】
【数1】

【0027】
また輻射伝熱量は下記数2に示される式によって表される。
【0028】
【数2】

【0029】
いずれにしても伝熱量は温度差に比例し、温度差が少なくなれば伝熱量が少なくなり昇温に時間がかかることになる。
【0030】
この欠点を省くため、外部間接加熱方式の熱分解炉内に内部直接加熱方式である加熱管若しくは電熱体を配置し、外部間接加熱にて所定の温度に昇温しにくくなったことを検知した際に、バーナを内装した加熱管もしくは電熱体を起動することにより昇温時間の短縮を計ることが出来る。
【0031】
加熱管や電熱体にはセラミック、耐熱鋳鋼、耐熱合金が使用されるが、耐熱温度は使用する材料によって最高1200℃程度であり、廃棄物の温度も1000℃まで容易に上げることができる。また、この方式は加熱管や電熱体からの輻射伝熱を主に利用するが、輻射伝熱量は(B)式の如く加熱管や電熱体の表面温度と内筒内の温度差の4乗に比例することから、温度差によって大きな伝熱量が得られ昇温時間も大幅に短縮する。
【0032】
熱分解炉を複数段に分割し、最終段を内部直接加熱方式とし、他は外部間接加熱方式とし、外部間接加熱方式熱分解炉にて発生した乾留ガス及び炭化物を内部直接加熱方式熱分解炉に導入し、炉内に高温過熱蒸気を吹き込み、乾留ガス中のタール、油分を熱分解除去すると共に炭化物に高温過熱蒸気を吹き付け上記化1に示される水性ガス反応によりガス化率を高め、炭の蒸気賦活により良質な炭化物が得られるようにした。
【0033】
また、外部間接加熱方式分解炉には、廃熱ボイラーの排気を外筒に回し、内筒内の廃棄物を加熱することにより乾燥・熱分解を行う構造とし、廃熱ボイラーには加熱管の排気を導入し、不足分は回収ガス若しくは他燃料で補うものとした。
【発明の効果】
【0034】
段階的に温度を上げる必要のあるバッチ式熱分解炉において、廃棄物中のプラスチックや樹脂分は気化するが、気化最盛期には熱余りになり乾留ガス以外の他燃料は不要である。しかし、気化終了後昇温する際は他燃料を必要とし、しかも気化終了後の昇温時には内筒内壁と内筒内の温度差が少なくなり昇温時間が長くなる。ゆえに、この昇温時間中の燃料が無駄に消費され、COの排出量も多くなっている。
【0035】
そこで請求項1及び2記載に係る発明では、外部間接加熱方式と内部直接加熱方式とを併用し、気化終了の昇温時、内部直接加熱方式を起動し、もって昇時間の短縮を計り、燃料使用量及びCO排出量の削減を可能とした。
【0036】
請求項3及び4記載の発明は、熱分解炉を複数段に分割し、最終段を内部直接加熱方式とし、他は外部間接加熱方式にすることにより、連続式熱分解炉では困難とされていた廃棄物温度の段階的コントロールが可能となった。
【0037】
加熱管の排気を利用した廃熱ボイラの排気を、請求項3及び4記載の発明に係る外部間接加熱方式熱分解炉の外筒に回し、この熱によって廃棄物の乾燥・熱分解がほぼ達成されることから、廃棄物から回収される乾留ガスを代替することによって本装置で使用する燃料の8割り以上を削減できる。
【0038】
請求項3及び4記載の発明に係る外部間接加熱方式熱分解炉にて生成した乾留ガスおよび炭化物を内部直接加熱方式熱分解炉に導入し、さらに昇温し、高温過熱蒸気を吹き付けることにより乾留ガス中のタールや油分は熱分解し低分子化する。高分子の炭化水素も低分子化し、冷却・洗浄工程を経て、HやCOの多い良質なガス燃料として回収される。
【0039】
また、高温の炭化物に高温過熱蒸気を吹きつけ、化1で示される水性ガス反応によりガス化率を高め、炭の蒸気賦活により、より活性炭に近い良質な炭が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】請求項2記載の発明の実施例を示す管系統図。
【図2】熱分解炉の断面図。
【図3】請求項4記載の発明の実施例を示す管系統図。
【図4】外部間接加熱方式熱分解炉の断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
一、 先ず、請求項1及び2に係る熱分解装置につき図1、図2に基づいて概説する。
【0042】
請求項1及び2に係る熱分解装置は、廃棄物を熱分解する熱分解炉1と、熱分解炉1にて発生した乾留ガスを安全に燃焼させ、水若しくは飽和蒸気より600℃以上の高温蒸気を作るガス燃焼炉2と、燃焼排ガス中の粉塵を集塵して排出するサイクロン3の三つの機器より構成される。
【0043】
熱分解炉1は、外筒4、内筒5及び内筒5を支える架台6より構成される。外筒4は断熱材が内張若しくは外張され、外筒4と内筒5の間をガス燃焼炉2で燃焼した燃焼排ガスが流れ、内筒5を加熱する構造となっている。内筒5内には乾留ガス集合管7、加熱管若しくは電熱体8および高温蒸気噴射管9が内装される。また、内筒5の下部には、燃焼排ガスを排出する噴射孔を有した架台6が装備される。
【0044】
廃棄物は、内筒5の扉10を開け、籠11に入れられた状態で台車12と共にレール13上に載せられ押し込まれる。また、加熱管8にはバーナ14が装備されると共に、内筒5内の温度を制御する温度調節計15が装備されている。
【0045】
具体的な運転方法は以下のようなものである。
【0046】
先ず、廃棄物を内筒5内に投入後、立ち上げ用バーナ18、燃料弁19及びバーナ燃焼空気送風機20を起動する。
【0047】
温度調節計24により設定温度(約800℃)になるよう燃料弁19が調整される。燃焼排ガスは熱分解炉1の架台6の孔より排出し、内筒5を加熱後サイクロン3を通って大気に排気される。
【0048】
内筒5内の温度が上昇し約300〜400℃に至った段階で、廃棄物中のプラスチックや樹脂、ゴムの気化が始まり、気化したガスは乾留ガスとしてガス燃焼炉2に送り込まれる。
【0049】
ガス燃焼炉2では、酸素濃度調節計25により酸素濃度が5%以上になるよう調整され、しかも燃焼排ガスが設定温度(800℃)になるように、乾留ガス燃焼空気兼冷却空気送風機21により燃焼空気が送り込まれる。
【0050】
乾留ガスの熱量分、燃料弁19が絞られ燃料使用量が削減される。
【0051】
乾留ガスが熱余りとなり、設定温度(800℃)以上に上昇する際は、乾留ガス燃焼空気兼冷却空気送風機21により、設定温度になるように冷却空気が送り込まれる。
【0052】
また、気化量および温度の暴走を防ぐため、熱分解炉1の内筒5内の温度を検知し、温度調節計15により暴走防止用緊急放散弁23の開閉を制御し、設定温度(300〜400℃の間で任意に設定)になるように自動調節される。
【0053】
ガス燃焼炉2の温度がさらに上昇する際は暴走防止用冷却水弁22が開き、水噴射ノズル17より水噴射させ、温度調節計24により設定温度(800℃)になるよう調整される。
【0054】
時間経過により気化の終わりを検知して加熱管用バーナ14が自動的に起動し、最終の設定温度(550〜600℃)まで昇温される。
【0055】
請求項1及び2に係るガス燃焼炉2内には、水若しくは飽和蒸気を高温過熱蒸気にするコイル管16、気化量および温度の暴走を防止するための水噴射ノズル17および立ち上げ用のバーナ18が内装されている。
【0056】
また、ガス燃焼炉2の周囲には、立ち上げ用バーナ18の燃料弁19、バーナ燃焼空気送風機20、乾留ガス燃焼空気兼冷却空気送風機21、暴走防止用冷却水弁22、暴走防止用緊急放散弁23、温度を制御する温度調節計24および酸素濃度を制御する酸素濃度調節計25が装備されている。
【0057】
この発明によるサイクロン3は、燃焼排ガス中の煤塵を除塵してクリーンなガスとして大気中に排出する機能を持つものである。
二、 次に請求項3及び4記載の発明について図3、図4に基づき概説する。
【0058】
請求項3及び4記載の発明に係る連続式炭化・ガス化装置は、廃棄物を熱分解する一次外部間接加熱方式熱分解炉26と二次外部間接加熱方式熱分解炉27および最終段に内部直接加熱方式熱分解炉28が装備され、さらに水または飽和蒸気から高温過熱蒸気を作る廃熱ボイラー29と乾留ガスを除塵、冷却、洗浄してガス燃料として回収するための乾留ガス用サイクロン30、凝縮器31、洗浄塔32、誘引通風機33が備わっている。
【0059】
一次外部間接加熱方式熱分解炉26及び二次外部間接加熱方式熱分解炉27には、廃棄物を送るスクリュフィーダ34と廃棄物の乾燥、昇温、炭化・ガス化を促進する高温過熱蒸気噴射管35が内装されている。
【0060】
二次外部間接加熱方式熱分解炉27には、内部温度を調節する温度調節計36と排ガス逃し弁37が備えられる。この排ガス逃し弁37の調節により内部温度は300〜400℃の間で任意に設定される。
【0061】
最終段に装備される内部直接加熱方式熱分解炉28には、一次及び二次外部間接加熱方式熱分解炉26,27で炭化、ガス化した乾留ガスおよび炭化物を導入される。内部直接加熱方式熱分解炉28には、この導入された乾留ガスおよび炭化物を昇温するための加熱管若しくは電熱体38が内装され、さらには乾留ガスを熱分解し、また炭化物に吹き付けガス化率を高めるための高温過熱蒸気噴射管35が内装されている。なお、加熱管38にはバーナ40か装備される。
【0062】
廃熱ボイラー29には、加熱管38の排気が導入され、更には、不足を補うためのバーナ41が装備されている。
【0063】
具体的な運転方法は以下のようなものである。
【0064】
まず、廃棄物はホッパー42から投入される。ホッパー42の下部には空気侵入を防ぐための二重ダンパー若しくはロータリフィーダ43が装備され、これらを通った廃棄物は一次外部間接加熱方式熱分解炉26の内筒44に入り、スクリュフィーダによって二次外部間接加熱方式熱分解炉27に押し出される。
【0065】
この間廃棄物は内筒44と外筒45の間を流れる燃焼排ガスと高温過熱蒸気噴射管35より吹き付けられる高温過熱蒸気によって乾燥、昇温され、二次外部間接加熱方式熱分解炉27に送られる。
【0066】
廃基板、廃電池、金属とゴム、プラスチックの混合廃棄物より貴金属や金属を回収する場合、二次外部間接加熱方式熱分解炉27に導かれたこれら廃棄物は温度調節計36によって温度は300〜400℃の間で任意に設定され、二次外部間接加熱方式熱分解炉27を通る間、プラスチック、樹脂、ゴムはガス化し、残渣(貴金属、金属)と共に内部直接加熱方式熱分解炉28に送られる。
【0067】
乾留ガス及び残渣はさらに内部直接加熱方式熱分解炉28内に設けられた加熱管46により550〜600℃に加熱され、同時に高温過熱蒸気噴射管47より高温過熱蒸気が吹き付けられる。これにより乾留ガス中のタールや油分は、化1に示される水性ガス反応により熱分解された後、除塵、蒸縮、洗浄の工程経て燃料として回収されるか、代替燃料として直接、廃熱ボイラー29(ガス燃焼炉)に送り込まれる。
【0068】
残渣(貴金属、金属)も同様に水性ガス反応により、付着しているススや不純物は熱分解され、未酸化の綺麗な状態で内部直接加熱方式熱分解炉28より排出される。
【0069】
また、プラスチックや紙くず、繊維くず、木屑等や、有機性廃棄物である食品残渣、食品汚泥 、し尿汚泥、下水 汚泥、蓄糞等、及びこれらを含んだ混合廃棄物の場合 、一次外部間接加熱方式熱分解炉26にて乾燥、昇温し、二次外部間接加熱方式熱分解炉27に送り込まれる。
【0070】
二次外部間接加熱方式熱分解炉27では、温度の設定は行わず上げうるまで温度を上げ、炭化・ガス化を進めた後、乾留ガス及び残渣(炭化物)を内部直接加熱方式熱分解炉28に導入し、内部に装備されている 加熱管 もしくは電熱体により700゛C以上に加熱し、同時に高温過熱蒸気噴射管39より高温過熱蒸気(800℃以上)を吹き付け乾留ガス中のタール、油分を水性ガス反応により熱分解しする。
【0071】
さらに炭化物から水性ガス反応により生成されたガスと共に除塵、凝縮、洗浄工程を経て燃料として回収されるか、直接、代替燃料として廃熱ボイラー(ガス燃焼炉)に導入される。また炭化物も高温過熱蒸気よる蒸気賦活により活性炭に近い性能を持つ炭化物が得られることになる。
【符号の説明】
【0072】
1 : 熱分解炉
2 : ガス燃焼炉
3 : サイクロン
4 : 外筒
5 : 内筒
6 : 架台
7 : 乾留ガス集合管
8 : 加熱管若しくは電熱体
9 : 高温蒸気噴射管
10 : 扉
11 : 籠
12 : 台車
13 : レール
14 : バーナ
15 : 温度調節計
16 : コイル管
17 : 水噴射ノズル
18 : バーナ
19 : 燃料弁
20 : バーナ燃焼空気送風機
21 : 乾留ガス燃焼空気兼冷却空気送風機
22 : 暴走防止用冷却水弁
23 : 暴走防止用緊急放散弁
24 : 温度調節計
25 : 酸素濃度調節計
26 : 一次外部間接加熱方式熱分解炉
27 : 二次外部間接加熱方式熱分解炉
28 : 内部直接加熱方式熱分解炉
29 : 廃熱ボイラー
30 : 乾留ガス用サイクロン
31 : 凝縮器
32 : 洗浄塔
33 : 誘引通風機
34 : スクリュフィダ
35 : 高温過熱蒸気噴射管
36 : 温度調節計
37 : 排ガス逃し弁
38 : 加熱管若しくは電熱体
39 : 高温過熱蒸気噴射管
40 : 加熱管用バーナ
41 : バーナ
42 : ホッパー
43 : 二重ダンパー若しくはロータリフィーダ
44 : 内筒
45 : 外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部間接加熱方式の熱分解炉で廃棄物を加熱し、廃棄物中の樹脂分の気化終了後昇温する際に、加熱管若しくは電熱体を熱分解炉内に装備して廃棄物を直接加熱する内部直接加熱方式により加熱する、廃棄物から貴金属及び金属を回収する方法。
【請求項2】
バッチ式熱分解炉において、外部間接加熱方式と内部直接加熱方式を併用したことを特徴とする熱分解炉。
【請求項3】
廃棄物を熱分解する連続式熱分解炉において、熱分解炉を複数段に分割し、最終段を内部直接加熱方式とし、他は外部間接加熱方式とすることで廃棄物温度の段階的コントロールを可能とした廃棄物の炭化・ガス化方法。
【請求項4】
廃棄物を熱分解する連続式熱分解炉において、熱分解炉を複数段に分割し、最終段を内部直接加熱方式とし、他は外部間接加熱方式としたことを特徴とする連続式熱分解炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80664(P2011−80664A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232365(P2009−232365)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(506150984)
【Fターム(参考)】