説明

廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉、並びに該溶融炉における制御方法及び装置

【課題】 廃棄物を処理対象とした溶融炉の着火性を改善し、低カロリーの熱分解ガスであっても速やかに着火し、且つ炉内温度を高温に維持して円滑な溶融処理を可能とした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉、並びにこの制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ガス化により発生した熱分解ガス34が、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナ61から炉内に導入されるようにし、前記熱分解ガスバーナ61に、火炎を常時噴出する種火バーナ62が設けられ、該種火バーナ62が、熱分解ガスバーナの炉内開口に向けて火炎を噴出するように配置されるとともに、該種火バーナの噴出方向と前記熱分解ガスバーナの軸線との為す角度が90°以下となるように配置され、また前記溶融炉の炉壁に設けられた補助燃料バーナ63が、炉内の熱分解ガス旋回流により形成される仮想円65の接線方向に向けて補助燃料を噴出するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物をガス化溶融する技術に関し、特に、低カロリーの廃棄物であっても確実に着火、溶融することができる廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉、並びに該溶融炉における制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市ごみを始めとして不燃ごみ、焼却残渣、汚泥、埋立ごみ等の廃棄物まで幅広く処理できる装置としてガス化溶融装置が知られている。ガス化溶融装置は、廃棄物を熱分解してガス化するガス化炉と、該ガス化炉の下流側に設けられ、ガス化炉にて生成された熱分解ガスを高温燃焼し、ガス中の灰分を溶融スラグ化する溶融炉と、該溶融炉から排出される排ガスを燃焼する二次燃焼室とを備えており、廃棄物の資源化、減容化及び無害化を図るために、溶融炉からスラグを取り出して路盤材等の土木資材として再利用したり、二次燃焼室から排出される排ガスから廃熱を回収して発電を行うなどしている(特許文献1等)。
【0003】
このようなガス化溶融装置では、ガス化炉にて発生した灰分を含む熱分解ガスが溶融炉に導入され、熱分解ガスのエネルギーにより高温となった該溶融炉内でガス中の灰分が溶融スラグ化される。しかし、溶融炉の熱分解ガス供給口近傍は、温度上昇過程での遷移温度域においてクリンカが付着することがあり、クリンカが成長すると熱分解ガス供給口や炉内燃焼室が閉塞する惧れがある。
そこで、特許文献2(特開2003−4214号公報)では、溶融炉の上部側壁に設けた生成ガス(熱分解ガス)導入口の近傍であって、該溶融炉の1次燃焼室の内側壁面に先端部が開口する複数個の燃焼用ガス供給ノズルと、溶融炉の天井壁面に先端部が開口する複数個の燃焼用ガス供給ノズルを設け、これらの燃焼用ガス供給ノズルから燃焼用ガス、即ち、酸素富活空気若しくは酸素を供給するガス化溶融炉が開示されている。これにより、生成ガスと燃焼用ガスの混合が促進され、速やかに昇温が可能となり、クリンカの壁面への付着を防止できる。
【0004】
上記したように、溶融炉ではガス化炉にて発生した灰分を炉内で確実に溶融スラグ化することが求められており、このため溶融炉内は、灰の溶流点である1200〜1500℃に維持される必要がある。
粉状廃棄物溶融炉を例に挙げると、安定な高温燃焼を達成するために、特許文献3(特許第2505561号公報)では図15(a)、(b)に示すような構成を有する溶融炉を提案している。図15(b)は、(a)のII−II線断面図である。この溶融炉は、軸線がほぼ鉛直な円筒状で上部が円錐状に絞られた炉本体71と、該炉本体71の下部に設けられ、炉本体の切線方向に向いたノズルを有する汚泥バーナ72と、炉本体71の下端に設けられたスラグ流出口74と、炉本体71の上端に接続され、炉本体よりも小径で上方に延びるガス出口75と、を備えており、炉本体71の上部円錐角θが45°を超え75°未満、ガス出口75の内径dと炉本体の内径Dとの比が0.2を超え0.6未満となるように構成されている。さらに、図15(b)に示される横断平面図のように、該溶融炉には汚泥バーナ72とは異なる炉内壁面に、汚泥重油混焼バーナ73が設けられている。汚泥重油混焼バーナ73からは汚泥と燃焼補助のための重油とが炉本体内に吹き込まれ、炉内温度を維持するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−144402号公報
【特許文献2】特開2003−4214号公報
【特許文献3】特許第2505561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の粉状廃棄物溶融炉と同様に、ガス化溶融装置においても炉内を高温に維持するために補助燃料が利用されることが多い。しかしながら、特許文献3にて処理対象とされる汚泥は、おおよそ5000kcal/kg程度のカロリーを保有するのに対して、ガス化炉で生成された熱分解ガスは800〜1000kcal/m程度と極めて低く、補助燃料の使用量が増大してしまうという問題があった。また、熱分解ガスは低カロリーであるため着火性が悪く、着火性の改善のために補助燃料を使用すると、さらに燃料使用量が増大し、環境負荷、ランニングコストが増大するという問題があった。
また、特許文献2では、燃焼用ガス供給ノズルが生成ガス供給口とは異なる位置に設けられているため、生成ガスと燃焼用ガスとの混合が不十分となる場合があり、燃焼が円滑に行われず炉内温度の低下を招く惧れがある。また、特許文献2は生成ガス供給口近傍に付着するクリンカを防止することを主目的としているため、上記したような低カロリーの廃棄物を処理する場合において、着火性の問題は解消されない。
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、廃棄物を処理対象としたガス化溶融装置の着火性を改善し、低カロリーの熱分解ガスであっても速やかに着火し、且つ炉内温度を高温に維持して円滑な溶融処理を可能とした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉、並びに該溶融炉における制御方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉において、
前記熱分解ガスバーナに、火炎を常時噴出する種火バーナが設けられ、
前記種火バーナが、前記熱分解ガスバーナの炉内開口に向けて火炎を噴出するように配置されるとともに、該種火バーナの噴出方向と前記熱分解ガスバーナの軸線との為す角度が90°以下となるように配置されることを特徴とする。このとき、好適には前記角度は80°未満であると良い。
【0009】
本発明によれば、熱分解ガスバーナに上記構成の種火バーナを設け、該種火バーナを常時点火しておくことにより、低カロリーの熱分解ガスであっても着火を促進することが可能である。また、別個に補助燃料バーナを設けた場合、この補助燃料使用量を大幅に低減でき、延いては装置全体のランニングコストを大幅に削減することが可能となる。
【0010】
また、前記種火バーナが、熱分解ガスバーナ周面の水平位置若しくは水平位置より上方に配置されることを特徴とする。
これにより、熱分解ガスに伴送されるチャー等の固形物が落下して、種火バーナのノズル孔を閉塞することを防止できる。
【0011】
また、廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉において、
前記熱分解ガスバーナには、該熱分解ガスバーナ内に燃焼空気を供給する燃焼空気供給孔が設けられていることを特徴とする。
尚、前記燃焼空気には、空気、酸素、若しくは酸素富化空気等が用いられる。
本発明によれば、熱分解ガスバーナ内に燃焼空気を吹き込むことにより、バーナ内で熱分解ガスと燃焼空気が予混合されるため、燃焼空気が混合された熱分解ガスを溶融炉内で瞬時に燃焼させることができる。従って、溶融炉内の燃焼を促進し、より短時間で完全燃焼を実現することができる。
また、前記燃焼空気供給孔が前記熱分解ガスバーナの周面に複数設けられるとともに、前記燃焼空気供給孔に連通する燃焼空気ヘッダが設けられることを特徴とする。
これにより、燃焼空気が分散して熱分解バーナ内に供給されるため、燃焼空気と熱分解ガスがより効果的に混合され、燃焼が促進される。
【0012】
さらに、前記燃焼空気供給孔が前記熱分解ガスバーナ周面の同一円周上に複数設けられ、該同一円周上の燃焼空気供給孔列が、前記熱分解ガスバーナの軸線方向に異ならせて複数段設けられ、隣接する燃焼空気供給孔列の供給孔が交互に配置されるようにしたことを特徴とする。これにより、熱分解ガスと燃焼空気の混合性がより一層向上する。
さらにまた、前記燃焼空気供給孔が前記熱分解ガスバーナ周面の同一円周上に複数設けられ、該同一円周上の燃焼空気供給孔列が、前記熱分解ガスバーナの軸線方向に異ならせて複数段設けられるとともに、各燃焼空気供給孔列に対して夫々独立した燃焼空気ヘッダが設けられることを特徴とする。このように、夫々独立した燃焼空気ヘッダを有する構成とすることにより、燃焼空気の必要量に応じて夫々の供給孔から供給する空気量を容易に調整することが可能となる。
【0013】
また、前記熱分解ガスバーナが、炉内の熱分解ガス旋回流により形成される仮想円の接線方向に向けて熱分解ガスを噴出するように配置されることを特徴とする。
これにより、旋回流を円滑に形成することができ、燃焼が促進される。
【0014】
また、前記溶融炉の炉壁に一又は複数の補助燃料バーナが設けられ、
前記補助燃料バーナが、炉内の熱分解ガス旋回流により形成される仮想円の接線方向に向けて補助燃料を噴出するように配置されることを特徴とする。
本発明のごとく、熱分解ガスバーナから噴出するガスにより形成される旋回流径と同一の旋回流径をもつように吹出口を向けた補助燃料バーナを設けることにより、低カロリーな熱分解ガスの着火を促進させることができる。
【0015】
また、前記補助燃料バーナが、前記熱分解ガスバーナの近傍に配置されるとともに、前記熱分解ガス旋回流の旋回方向に対して前記熱分解ガスバーナより上流側に配置されることを特徴とする。
さらに、前記補助燃料バーナの噴出方向と前記熱分解ガスバーナの軸線との為す角度が、20°を越え90°以下であることが好適である。
このように、補助燃料バーナを、熱分解ガスバーナの旋回流上流側で且つ該熱分解ガスバーナの近傍に設けることによって、より低カロリーな熱分解ガスであっても、補助燃料バーナの火炎により熱分解ガスの着火を促進し、速やかに燃焼させることができる。また、本発明によれば、熱分解ガスバーナからの熱分解ガスの噴流により、補助燃料バーナの噴出孔が磨耗することを防止できる。
【0016】
さらにまた、前記熱分解ガスバーナ及び前記補助燃料バーナが複数設けられる場合であって、前記複数の熱分解ガスバーナが略等間隔で配置されるとともに前記複数の補助燃料バーナが略等間隔で配置され、前記熱分解バーナ同士あるいは前記補助燃料バーナ同士が隣接しないように配置されるようにしたことを特徴とする。
これにより、熱分解ガスバーナからの熱分解ガスの噴流により、補助燃料バーナの噴出孔が磨耗することを防止できる。また、本構成のような配置とすることにより、炉内の旋回流が形成されやすくなる。
【0017】
また、廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法において、
前記熱分解ガスバーナに設けられた種火バーナにより常時火炎を噴出するとともに、炉壁に設けられた補助燃料バーナにより補助燃料及び燃焼空気を炉内に適宜噴出するようにし、
前記溶融炉内の温度を検出し、該温度に基づき、前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量、あるいは前記補助燃料バーナへ供給する補助燃料及び燃焼空気の流量のうち少なくとも何れか一方を制御することを特徴とする。
尚、前記燃焼空気には、空気、酸素、若しくは酸素富化空気等が用いられる。
【0018】
さらにこのとき、前記溶融炉内の温度が、予め設定された温度適正範囲の上限値を超える場合に、前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量を低減する第1の工程と、該溶融炉内の温度が前記温度適正範囲の下限値未満である場合に、前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量を増加する第2の工程と、該第2の工程にて増加した流量が、予め設定された種火バーナの流量適正範囲の最大値を超える場合には、前記補助燃料バーナを着火する第3の工程と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
このように、溶融炉内の温度に基づき、種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量及び/又は補助燃料バーナへ供給する補助燃料及び燃焼空気の流量を制御することによって、溶融炉温度を適正に保つことができ、且つ溶融炉への燃料供給量を低減することができ、ランニングコストの削減が可能となる。
【0020】
また、廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法において、
前記熱分解ガスバーナに設けられた種火バーナにより常時火炎を噴出するとともに、炉壁に設けられた補助燃料バーナにより補助燃料及び燃焼空気を炉内に適宜噴出するようにし、
前記溶融炉内の温度を検出し、該温度に基づき、前記種火バーナへ供給する燃焼空気の温度と前記補助燃料バーナへ供給する燃焼空気の温度のうち少なくとも何れか一方を制御することを特徴とする。
【0021】
このように、溶融炉内の温度に基づき、種火バーナへ供給する燃焼空気の温度及び/又は補助燃料バーナへ供給する燃焼空気の温度を制御することによって、溶融炉温度を適正に保つことができ、且つ溶融炉への燃料供給量を低減することができ、ランニングコストの削減が可能となる。
【0022】
また、廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御装置において、
前記熱分解ガスバーナに、常時火炎を噴出する種火バーナが設けられるとともに、補助燃料を炉内に適宜噴出する補助燃料バーナが炉壁に設けられた溶融炉であって、
前記溶融炉が、該溶融炉内の温度を検出する温度センサと、該検出された温度に基づき前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量を制御する種火バーナ制御手段と、該検出された温度及び前記種火バーナの流量に基づき、前記補助燃料バーナへ供給する補助燃料及び燃焼空気の流量を制御する補助燃料バーナ制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法において、
前記熱分解ガスバーナに設けられた種火バーナにより常時火炎を噴出するとともに、炉壁に設けられた補助燃料バーナにより適宜補助燃料と燃焼空気を炉内に噴出するようにし、
前記溶融炉内の温度を検出し、該温度に基づき、前記種火バーナへ供給する燃焼空気の温度と前記補助燃料バーナへ供給する燃焼空気の温度のうち少なくとも何れか一方を制御する手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上記載のごとく本発明によれば、低カロリーな廃棄物を処理対象とした場合であっても、溶融炉内の熱分解ガスの着火、燃焼を促進することができ、また、補助燃料の消費量を大幅に低減することができるため、ランニングコストを大幅に削減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例に係るガス化溶融装置を備えたシステムの全体構成図、図2は本実施例1に係る溶融炉のA−A線断面(図1)を示す概略図、図3はスワール数の定義を説明する図、図4〜図6は本実施例1に係る溶融炉の種火バーナの構成を示す図、図7〜図11は本実施例に係る溶融炉の熱分解ガスバーナの構成を示す図、図12は本実施例2に係るガス化溶融装置を備えたシステムの全体構成図、図13及び図14はガス化溶融装置の制御フロー図である。
【実施例1】
【0026】
[システムの全体構成]
図1を参照して、本実施例1に係るガス化溶融装置を備えたシステムの処理フローの一例につき説明する。
まず、各集積所より回収されたごみは不図示のごみピット内に蓄積され、、ごみピット内のごみはクレーンでごみホッパ10に投入され、必要に応じて粗破砕機で200mm以下に破砕された後に給じん機11へ投入される。破砕ごみは、給じん機11により流動床式ガス化炉12へ定量供給される。
ガス化炉12では、温度約120〜230℃、空気比0.2〜0.7程度の燃焼空気33が炉下部から吹き込まれ、炉内砂層温度が550〜650℃程度に維持されて、破砕ごみがガス化される。ここで、空気比=燃焼空気量/ごみを完全燃焼するのに必要な理論空気量である。
【0027】
破砕ごみはガス化炉12でガス化され、ガス、タール、チャー(炭化物)に分解される。タールは、常温では液体となる成分であるが、ガス化炉内ではガス状で存在する。
チャーは砂層内で徐々に微粉化され、ガス及びタールに同伴して溶融炉13へ導入される。以下、溶融炉13へ導入されるこれらの成分を総称して熱分解ガス34と呼ぶ。
前記ガス化炉12の炉底は、破砕ごみ投入口から不燃物排出口へ下向きに12.5°程度傾斜しており、ごみ中のびん・缶、瓦礫類等の不燃物は流動砂とともに不燃物排出口よりスムーズに抜き出される。抜き出された不燃物と流動砂は、振動篩等で篩い分けられた後、流動砂はガス化炉内へ戻される。篩分けられた不燃物のうち、鉄・アルミは有価物として回収され、その他の不燃物(主にガラス・瓦礫類)は粉砕してごみピットへ戻される。粉砕された不燃物は、熱分解ガス34に同伴してガス化炉12から溶融炉13へ導入され、スラグとして回収される。
【0028】
前記ガス化炉12の炉頂部より排出された熱分解ガス34は、ライニングダクトを経て前記溶融炉13の熱分解ガスバーナ61(図2参照)へ導入される。該熱分解ガスバーナ61で、熱分解ガス34は燃焼空気57と混合されて炉内に導入され、旋回流を形成する。このとき、燃焼空気57は空気比0.9〜1.1、好ましくは1.0程度であると良い。
前記溶融炉13では、熱分解ガス34と燃焼空気57の混合ガスが燃焼することにより炉内温度が1300〜1500℃に維持され、熱分解ガス中の灰分が溶融、スラグ化される。溶融したスラグは、溶融炉13の内壁面に付着、流下し、炉底部のスラグ出滓口から排出される。前記溶融炉13から排出されたスラグは、スラグ水砕水槽23で急冷され、スラグコンベア24により搬出されて水砕スラグとして回収される。回収された水砕スラグは、路盤材等に有効利用することが可能である。
尚、前記溶融炉13の内壁は、水冷管を埋設した水冷構造とし、水冷により冷却・固化したスラグのセルフコート層を炉内壁面に形成することにより、耐火材の侵食を防止するようになっている。
【0029】
一方、溶融炉13から排出された燃焼排ガスは、円錐状の広がり部を経由して、二次燃焼室14へ導入される。二次燃焼室14では、燃焼空気35が空気比1.2〜1.5となるように供給され、前記燃焼排ガス中の未燃分はここで完全燃焼される。
燃焼排ガスは、ボイラ15で熱回収されて、250℃程度まで冷却される。ボイラ15から排出された燃焼排ガスは、減温塔16へ導入され、直接水噴霧により150℃程度まで冷却される。減温塔16から排出された燃焼排ガスは、必要に応じて煙道で消石灰、活性炭が噴霧され、反応集塵装置17に導入される。
反応集塵装置17では、燃焼排ガス中の煤塵、酸性ガス、DXN類等が除去される。反応集塵装置17から排出された集塵灰は薬剤処理して埋立処分され、燃焼排ガスは蒸気式加熱器18で再加熱され、触媒反応装置でNOが除去される。
【0030】
以上が本実施例に係るガス化溶融装置を備えたシステムの処理フローであり、このシステムに適用される溶融炉の具体的な実施例は次の通りである。
[熱分解ガスバーナの構成]
図2に示されるように、本実施例に係る溶融炉13は、略円筒状の炉壁60を有し、該炉壁60に対して水平断面に一又は複数の熱分解ガスバーナ61が取付けられている。熱分解ガスバーナ61は、該バーナから導入される熱分解ガス34が、炉内を旋回する円65(以下、仮想円という)の接線方向に噴出するように配置される。
【0031】
前記熱分解ガスバーナ61の径は、スワール数が3〜10で、且つバーナ吹出流速が30m/sとなるように設定することが好ましい。このとき、スワール数の定義は以下の式で表される。
【数1】

尚、SW:スワール数[−]、d:仮想円径[m]、D:溶融炉内径[m]、m:ガス質量流量[kg/s]、r:仮想円半径[m]、R:溶融炉半径[m]、V:空塔速度[m/s]であり、Bはバーナ吹出方向、zは溶融炉鉛直軸方向である。
スワール数が上記した範囲内となるように熱分解ガスバーナ径を設定することにより、バーナ吹出口にスラグが付着し、閉塞する不具合を防止できる。
【0032】
[種火バーナの構成]
また、図2に示されるように、前記熱分解ガスバーナ61には、該バーナ61の吹出口中心部へ向かって火炎を噴出する種火バーナ62が設置されている。該種火バーナ62は、灯油等の液体燃料或いはプロパン等の気体燃料などの燃料を噴出し、これにより熱分解ガス34の着火が促進される。
前記種火バーナ62の構成を図4〜図6に示す。
図4に示す種火バーナ62は、熱分解ガスバーナ61の周面に配置される。該種火バーナ62は、燃料吹出方向が熱分解ガスバーナ61の吹出口中心部に略一致するように取付けられ、且つ、該種火バーナ62の軸線と熱分解ガスバーナ61の軸線により形成される角度θが90℃以下、好ましくは80°未満となるように取付けられる(図4(b)参照)。
さらに好適には、図4(c)に示されるように、種火バーナ62の取付位置を、熱分解ガスバーナ61の周面のうち、水平若しくはこれより上方に位置させる。即ち、種火バーナの鉛直方向取付位置は、熱分解ガスバーナ61に対する角度θが、0≦θ≦180°となるようにする。これにより、熱分解ガスに伴送されるチャー等の固形物が落下して、種火バーナ62のノズル孔を閉塞することを防止できる。
【0033】
図5に示す種火バーナ62は、熱分解ガスバーナ61の周面から貫挿され、該熱分解ガスバーナ61の内部にて該熱分解ガスバーナ61の軸線に略平行となるように屈曲して設けられている。該種火バーナ62の燃料吹出方向は、図4と同様に熱分解ガスバーナ61の吹出口中心部に略一致させる。
この構成では、種火バーナ62からの噴流が熱分解ガスの噴流を妨げることがなく、熱分解ガスの流れを円滑にすることが可能である。
図6は、熱分解ガスバーナ61の下流側から該バーナの吹出口に向けて種火バーナ62を配置した構成である。この構成においても、図5と同様に、熱分解ガスの流れを円滑にすることが可能である。
【0034】
[補助燃料バーナの構成]
ここで、本実施例に係る溶融炉13において、補助燃料バーナ63を設置する場合の構成につき図2を参照して説明する。
補助燃料バーナ63は、溶融炉13の炉壁60に一又は複数設けられる。該補助燃料バーナ63は、熱分解ガスバーナ61から噴出するガスの旋回流径と略同一の旋回流径を持つように配置される。即ち、補助燃料バーナ63の補助燃料吹出方向Yが熱分解ガスにより形成される仮想円65の接線となるように、該補助燃料バーナ63が配置される。
また、補助燃料バーナ63は、炉壁に対して同一高さに設けられる場合、熱分解ガスバーナ61の近傍で且つ旋回流上流側に設けられることが好ましい。
さらに好適には、補助燃料バーナ63は、熱分解ガスバーナ61の燃焼ガス吹出方向Xに対して、該補助燃料バーナ63の補助燃料吹出方向Yの角度が20°を越え90°以下(20°<θ≦90°)となるように設けられると良い。
このように、補助燃料バーナ63を、熱分解ガスバーナ61の旋回流上流側で且つ該熱分解ガスバーナ61の近傍に設けることによって、より低カロリーな熱分解ガスであっても、補助燃料バーナ63の火炎により熱分解ガスの着火を促進し、速やかに燃焼させることができる。また、本構成によれば、熱分解ガスバーナ61からの熱分解ガスの噴流により、補助燃料バーナ63の噴出孔が磨耗することを防止できる。
【0035】
また、2つの補助燃料バーナ63を配置する場合の、別の実施例につき説明する。図2に示すように、炉中心を通り、互いに直交するx軸とy軸とにより分割される4領域に夫々象限を割り当て、図面右上を第1象限とした場合、反時計周りに夫々第2象限、第3象限、第4象限とする。補助燃料バーナ63は、異なる象限に位置するように設けられ、且つ隣接しない象限に夫々設置されるようにする。例えば、図示されるように第2象限に1つの補助燃料バーナ63が設けられた場合、もう一つの補助燃料バーナ53は第4象限に設けられる。
これにより、熱分解ガスバーナ61からの熱分解ガスの噴流により、補助燃料バーナ63の噴出孔が磨耗することを防止できる。また、本構成のような配置とすることにより、炉内の旋回流が形成されやすくなり好ましい。
尚、前記補助燃料バーナ64には灯油等の液体燃料或いはプロパン等の気体燃料などの燃料が供給され、溶融炉内温度が低化した場合、及び立上、立下時の温度維持に使用される。
【0036】
[燃焼空気の予混合]
次に、熱分解ガスバーナ61の予混合の実施例につき説明する。
本実施例の熱分解ガスバーナ61は、バーナ本体の円周面に複数のノズル孔が設けられ、そのノズル孔からバーナ内へ向けて燃焼空気が吹き込まれるようになっている。燃焼空気は、空気若しくは酸素、或いは酸素富化空気等を用いることができる。このとき、燃焼空気は空気比0.9〜1.1、好ましくは1.0程度であると良い。このように空気比を設定することにより、炉内温度を安定して高温に維持することが可能となる。
このように、熱分解ガスと燃焼空気が予めバーナ内で混合された後に溶融炉13内に吹き込むようにすることで、熱分解ガスと燃焼空気が十分に混合され、該熱分解ガスを炉内で瞬時に燃焼させることができる。
【0037】
予混合機構を備えた熱分解ガスバーナ61の具体的な実施例を図7〜図11に示す。
図7に示される熱分解ガスバーナ61は、外周面に円環状の燃焼空気ヘッダ611が設けられ、該燃焼空気ヘッダ611と熱分解ガスバーナ61は、複数の燃焼空気分散孔(燃焼空気供給孔)612によって連通されている。該燃焼空気分散孔612は、熱分解ガスバーナ61の周面に設けられ、該バーナ61の同一円周方向に沿って夫々所定間隔だけ離間して複数配置されている。本実施例ではこれらの複数の分散孔612は一段配置となっている。燃焼空気ヘッダ611内は常に正圧とし、熱分解ガスがヘッダ内に流入しないようにする。
このように、複数の燃焼空気分散孔612を設けることによって、熱分解ガスと燃焼空気が効果的に混合される。また、燃焼空気ヘッダ611を設けることにより、各燃焼空気分散孔612に対して均一に燃焼空気を送ることができる。
【0038】
図8は、図7に示される熱分解ガスバーナ61と同様に、外周面に円環状の燃焼空気ヘッダ611と、複数の燃焼空気分散孔612が設けられている。本実施例では、該燃焼空気分散孔612が同一円周上に配置された燃焼空気分散孔列が熱分解ガスバーナ61の軸線方向に異なる位置に2段設けられている。さらに図8(c−1)、(c−2)に示されるように、これらの燃焼空気分散孔612の位置が互いにずれるように交互に配置されている。
このように、燃焼空気分散孔列を複数段配置することによって、熱分解ガスと燃焼空気の混合効果をより一層向上させることができる。
【0039】
図9は、図7及び図8に示される熱分解ガスバーナ61と同様に、燃焼空気ヘッダ611と燃焼空気分散孔612が設けられた構成であるが、本実施例では、複数段に設けられた燃焼空気分散孔612a、612bの夫々に、独立した燃焼空気ヘッダ611a、611bが設けられている。
このように、夫々独立した燃焼空気ヘッダ611a、611bを有する構成とすることにより、燃焼空気の導入量に応じて夫々にヘッダ611a、611bに供給する空気量を調整することができる。例えば、燃焼空気の導入量が多い場合には、ヘッダ611a、611bともに略同量の燃焼空気を供給するようにし、燃焼空気の導入量が少ない場合には、ヘッダ611a若しくはヘッダ611bの何れか一方の燃焼空気供給量を低減する。
【0040】
図10は、熱分解ガスバーナ61の外周面から僅かに離間させて燃焼空気ヘッダ611が設けられる。該ヘッダ611は断面円形の円環状構造を有する。熱分解ガスバーナ61の周面には同一円周上に複数の燃焼空気分散孔が設けられ、該分散孔と前記燃焼空気ヘッダ611は夫々燃焼空気導入管613により接続される。
このように、断面円形の円環状構造を有する燃焼空気ヘッダ611を備えることにより、燃焼空気の圧損が低減され、円滑の燃焼空気の供給が可能となる。
【0041】
図11では、図10と同様に、断面円形の円環状構造を有する燃焼空気ヘッダ611を備えた構成となっているが、燃焼空気分散孔を図9と同様に複数段設け、夫々の段の分散孔に対して独立した燃焼空気ヘッダ611a、611bと、これらを接続する燃焼空気導入管613a、613bを設けている。これにより、燃焼空気の流量制御が容易となる。
また、図11(c)は、熱分解ガスバーナ61に対して燃焼空気導入管613を角度を持って設けている。該導入管613は、熱分解ガスバーナ61内に噴出した燃焼空気が旋回するように取り付けられる。これにより、燃焼空気と熱分解ガスがより一層混合し易くなる。尚、この構成は図10の熱分解ガスバーナ61にも適用可能である。
【実施例2】
【0042】
図12に、本実施例2に係り、各種制御手段を備えたガス化溶融装置のシステムの全体構成図を示し、図13及び図14に該システムの制御フローを示す。尚、本実施例2において、図1に示した実施例1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
図12に示されるように、ガス化炉12の制御機構としては、該ガス化炉内の温度を制御する炉内温度制御装置50、52と、該ガス化炉12に供給する燃焼空気の温度を制御する空気温度制御装置51が設けられる。
前記炉内温度制御装置52は、ガス化炉内に設置された温度センサ39により検出された炉内温度に基づき、炉下部から供給される燃焼空気33の供給量を制御する。燃焼空気33の供給量は、ダンパ47の開度制御により調整される。該燃焼空気33は、ブロワ32により炉下部へと導かれるが、その経路において熱交換器31を介して所定温度まで昇温された後に炉内へ供給される。燃焼空気は熱交換器31にて蒸気36との熱交換により昇温されるが、このとき該熱交換器31の下流側の燃焼空気33の温度を温度センサ37により検出し、空気温度制御装置51によって前記検出した温度に基づいて熱交換器31への蒸気供給量をダンパ38により制御し、温度調整を行う。尚、前記熱交換器31へ導入する蒸気36は、二次燃焼室14の後段のボイラ15で生成された蒸気を使用する。
ごみの発熱量が低く、燃焼空気33の供給量が最大値を超えた場合、炉内温度制御装置50によって、給じん機モータ30を制御し、給じん機11からガス化炉12へ投入する破砕ごみの供給量を減少させる。
ごみの発熱量が高く、燃焼空気33の供給量が最小値未満となった場合、空気温度制御装置51によってダンパ38を制御し、蒸気36の流量を減少し、燃焼空気33の温度を下げる。
【0043】
一方、溶融炉13の制御機構としては、該溶融炉内の温度を制御する炉内温度制御装置54と、該溶融炉13に供給する燃焼空気57の温度を制御する空気温度制御装置53と、該溶融炉13及び二次燃焼室14へ供給する燃焼空気57、37の供給量を制御するO濃度制御装置55が設けられる。
前記炉内温度制御装置54は、溶融炉内に設置された温度センサ40により検出された炉内温度に基づき、補助燃料58の供給量をバルブ41により制御して、炉内の温度制御を行う。
【0044】
また、炉内温度は燃焼空気57の温度及び酸素濃度にも依存するため、これらを空気温度制御装置53及びO濃度制御装置55にて夫々制御する。
前記空気温度制御装置53では、炉内温度制御装置54からの制御指令に基づき、燃焼空気57の温度を調整する。これは、燃焼空気57を昇温する熱交換器31への蒸気36の供給量をダンパ43の開度調整により制御し、燃焼空気57の温度を設定する。このとき、熱交換器31の下流側の燃焼空気57の温度を温度センサ42により検出し、該温度に基づいたフィードバック制御も加えると良い。
【0045】
また、O濃度制御装置55では、反応集塵装置17後段の排ガス成分をセンサ44により検出し、前記燃焼空気57及び燃焼空気37の流量を検出して、溶融炉内で好適な燃焼が行われるように、ダンパ46、49を開度制御して燃焼空気57、37の炉内供給量を調整する。
これらの制御により、溶融炉13及び二次燃焼室14内の燃焼状態を好適に維持し、NOx、DXN類等の有害物質の発生を防止するようにしている。
【0046】
次に、実施例1に示した種火バーナ62、補助燃料バーナ63による溶融炉13の燃焼制御方法を図13及び図14に示す。
図13に示されるように、まず、溶融炉内に設置した温度センサ40により炉内温度を計測し、該溶融炉温度を、溶融炉の適正温度範囲の上限値Hと比較する(S1)。溶融炉温度が上限値Hより高い場合には、種火バーナ62の流量を低減する(S2)。バーナ流量が最小値であるか否かを判断し(S3)、最小値である場合には後述する図14のフローに移行する。最小値でない場合には、本フローの最初に戻り同様の処理を行う。
一方、溶融炉温度が上限値Hより低い場合には、さらに溶融炉温度を適正温度範囲の下限値Lと比較し(S4)、該温度が下限値Lより低い場合には、種火バーナ62流量を増加し(S5)、現在のバーナ流量が流量適正範囲の最大値を超えているか否かを判断する(S6)。バーナ流量が最大値を越えている場合には、補助燃料バーナ63を着火し(S7)、再度、溶融炉温度と下限値Lを比較する(S8)。補助燃料バーナ63を使用しても未だ溶融炉温度が下限値Lより低い場合は、さらに補助燃料バーナ流量を増加(S9)し、溶融炉温度を下限値Lとの比較(S8)に戻る。
【0047】
一方、溶融炉温度と上限値Hとの比較(S8)で、溶融炉温度が下限値Lより高い場合には、上限値Hと比較し(S10)、上限値Hより高い場合、即ち炉温を上げすぎた場合には種火バーナ62流量を低減する(S11)。そして、バーナ流量が最小値であるか否かを判断し(S12)、最小値である場合には補助バーナ63を消火する(S13)。最小値でない場合、及び溶融炉温度と上限値Hの比較(S10)にて上限値Hより低い場合は、溶融炉温度を下限値Lとの比較(S8)に戻る。また補助バーナ63を消火(S13)した後は、本フローの最初に戻る。
【0048】
図14に示すフローは、図13において、バーナ流量が最小値であるか否かを判断し(S3)、最小値であった場合に適用される。この場合、溶融炉温度と上限値Hを比較し(S14)、上限値Hより低い場合には本フローの最初に戻り、上限値Hより高い場合、即ち炉温が適正でない場合には、二次送風機の空気温度を低下して燃焼空気57の温度を低下させる(S15)。その後、今度は溶融炉温度と下限値Lを比較し(S16)、下限値Lより高い場合には本フローの最初に戻り、下限値Lより低い場合、即ち炉温が適正でない場合には、二次送風機の空気温度を上昇して燃焼空気57の温度を上昇させる(S17)。さらに、二次送風機の空気温度が上限であるか否かを判断し、上限である場合には、図13に示すフローの最初に戻る。上限でない場合には、本フローの最初に戻る。
【0049】
このように、溶融炉13内の温度に基づき、種火バーナ62の流量及び補助燃料バーナ63の流量を制御することによって、溶融炉温度を適正に保つことができ、且つ溶融炉13への燃料供給量を低減することができ、ランニングコストの削減が可能となる。
また、本実施例では、種火バーナ62は常時点火しており、補助燃料バーナ63より大幅に少ない燃料で微小な火炎を形成しておくことにより、補助燃料バーナ63における燃料使用量を大幅に低減でき、延いては装置全体のランニングコストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例に係るガス化溶融装置を備えたシステムの全体構成図である。
【図2】本実施例1に係る溶融炉のA−A線断面(図1)を示す概略図である。
【図3】本実施例に適用されるスワール数の定義を説明する図である。
【図4】本実施例1に係る溶融炉の種火バーナの構成を示し、(a)は図1のA−A線断面図、(b)は種火バーナの取付け角度を示す図、(c)は(b)のB−B線断面図である。
【図5】図4とは別の構成を備えた種火バーナの構成を示す図である。
【図6】図4、図5とは別の構成を備えた種日バーナの構成を示す図である。
【図7】本実施例に係る溶融炉の熱分解ガスバーナの構成を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は(b)のC−C線断面図である。
【図8】図7とは別の構成を備えた熱分解ガスバーナの構成を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c−1)は(b)のD−D線断面図、(c−2)は(b)のE−E線断面図である。
【図9】図7、図8とは別の構成を備えた熱分解ガスバーナの構成を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c−1)は(b)のF−F線断面図、(c−2)は(b)のG−G線断面図である。
【図10】図7〜図9とは別の構成を備えた熱分解ガスバーナの構成を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)のH−H線断面図である。
【図11】図7〜図10とは別の構成を備えた熱分解ガスバーナの構成を示し、(a)は斜視図、(b−1)は(a)のI−I線断面図、(b−2)は(a)のJ−J線断面図、(c)は(b−1)の別の例を示すI−I線断面図である。
【図12】本実施例2に係るガス化溶融装置を備えたシステムの全体構成図である。
【図13】本実施例2に係る溶融炉の制御フロー図(1)である。
【図14】本実施例2に係る溶融炉の制御フロー図(2)である。
【図15】従来の粉状廃棄物溶融炉の構成を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のII−II線断面図である。
【符号の説明】
【0051】
12 ガス化炉
13 溶融炉
14 二次燃焼室
15 ボイラ
16 減温塔
17 反応集塵装置
18 蒸気式加熱器
34 熱分解ガス
40 炉内温度センサ
44、45 O濃度センサ
50 炉内温度制御装置
51 空気温度制御装置
52 炉内温度制御装置
53 空気温度制御装置
54 炉内温度制御装置
55 O濃度制御装置
60 炉壁
61 熱分解ガスバーナ
62 種火バーナ
63 補助燃料バーナ
65 仮想円
611、611a、611b 燃焼空気ヘッダ
612、612a、612b 燃焼空気分散孔(燃焼空気供給孔)
613、613a、613b 燃焼空気導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉において、
前記熱分解ガスバーナに、火炎を常時噴出する種火バーナが設けられ、
前記種火バーナが、前記熱分解ガスバーナの炉内開口に向けて火炎を噴出するように配置されるとともに、該種火バーナの噴出方向と前記熱分解ガスバーナの軸線との為す角度が90°以下となるように配置されることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項2】
前記種火バーナが、熱分解ガスバーナ周面の水平位置若しくは水平位置より上方に配置されることを特徴とする請求項1記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項3】
廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉において、
前記熱分解ガスバーナには、該熱分解ガスバーナ内に燃焼空気を供給する燃焼空気供給孔が設けられていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項4】
前記燃焼空気供給孔が前記熱分解ガスバーナの周面に複数設けられるとともに、前記燃焼空気供給孔に連通する燃焼空気ヘッダが設けられることを特徴とする請求項3記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項5】
前記燃焼空気供給孔が前記熱分解ガスバーナ周面の同一円周上に複数設けられ、該同一円周上の燃焼空気供給孔列が、前記熱分解ガスバーナの軸線方向に異なる位置に複数段設けられ、隣接する燃焼空気供給孔列の供給孔が交互に配置されるようにしたことを特徴とする請求項3若しくは4記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項6】
前記燃焼空気供給孔が前記熱分解ガスバーナ周面の同一円周上に複数設けられ、該同一円周上の燃焼空気供給孔列が、前記熱分解ガスバーナの軸線方向に異ならせて複数段設けられるとともに、各燃焼空気供給孔列に対して夫々独立した燃焼空気ヘッダが設けられることを特徴とする請求項3若しくは4記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項7】
前記熱分解ガスバーナが、炉内の熱分解ガス旋回流により形成される仮想円の接線方向に向けて熱分解ガスを噴出するように配置されることを特徴とする請求項1若しくは3記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項8】
前記溶融炉の炉壁に一又は複数の補助燃料バーナが設けられ、
前記補助燃料バーナが、炉内の熱分解ガス旋回流により形成される仮想円の接線方向に向けて補助燃料を噴出するように配置されることを特徴とする請求項1若しくは3記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項9】
前記補助燃料バーナが、前記熱分解ガスバーナの近傍に配置されるとともに、前記熱分解ガス旋回流の旋回方向に対して前記熱分解ガスバーナより上流側に配置されることを特徴とする請求項8記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項10】
前記補助燃料バーナの噴出方向と前記熱分解ガスバーナの軸線との為す角度が、20°を越え90°以下であることを特徴とする請求項8若しくは9記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項11】
前記熱分解ガスバーナ及び前記補助燃料バーナが複数設けられる場合であって、前記複数の熱分解ガスバーナが略等間隔で配置されるとともに前記複数の補助燃料バーナが略等間隔で配置され、前記熱分解バーナ同士あるいは前記補助燃料バーナ同士が隣接しないように配置されるようにしたことを特徴とする請求項8記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉。
【請求項12】
廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法において、
前記熱分解ガスバーナに設けられた種火バーナにより常時火炎を噴出するとともに、炉壁に設けられた補助燃料バーナにより補助燃料及び燃焼空気を炉内に適宜噴出するようにし、
前記溶融炉内の温度を検出し、該温度に基づき、前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量、あるいは前記補助燃料バーナへ供給する補助燃料及び燃焼空気の流量のうち少なくとも何れか一方を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法。
【請求項13】
前記溶融炉内の温度が、予め設定された温度適正範囲の上限値を超える場合に、前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量を低減する第1の工程と、該溶融炉内の温度が前記温度適正範囲の下限値未満である場合に、前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量を増加する第2の工程と、該第2の工程にて増加した流量が、予め設定された種火バーナの流量適正範囲の最大値を超える場合には、前記補助燃料バーナを着火する第3の工程と、を備えたことを特徴とする請求項12記載の廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法。
【請求項14】
廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法において、
前記熱分解ガスバーナに設けられた種火バーナにより常時火炎を噴出するとともに、炉壁に設けられた補助燃料バーナにより補助燃料及び燃焼空気を炉内に適宜噴出するようにし、
前記溶融炉内の温度を検出し、該温度に基づき、前記種火バーナあるいは前記補助燃料バーナへ供給する燃焼空気の温度を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御方法。
【請求項15】
廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御装置において、
前記熱分解ガスバーナに、常時火炎を噴出する種火バーナが設けられるとともに、補助燃料を炉内に適宜噴出する補助燃料バーナが炉壁に設けられた溶融炉であって、
前記溶融炉が、該溶融炉内の温度を検出する温度センサと、該検出された温度に基づき前記種火バーナへ供給する燃料及び燃焼空気の流量を制御する種火バーナ制御手段と、該検出された温度及び前記種火バーナの流量に基づき、前記補助燃料バーナへ供給する補助燃料及び燃焼空気の流量を制御する補助燃料バーナ制御手段と、を備えたことを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御装置。
【請求項16】
廃棄物のガス化により発生した熱分解ガスが、炉壁に設けられた熱分解ガスバーナから炉内に導入されるようにした廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御装置において、
前記熱分解ガスバーナに、常時火炎を噴出する種火バーナが設けられるとともに、補助燃料を炉内に適宜噴出する補助燃料バーナが炉壁に設けられた溶融炉であって、
前記溶融炉が、該溶融炉内の温度を検出する温度センサと、該検出された温度に基づき前記種火バーナあるいは前記補助燃料バーナへ供給する燃焼空気の温度を制御する手段を備えたことを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置の溶融炉における制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−78239(P2007−78239A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266213(P2005−266213)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】