説明

廃熱利用装置

【課題】ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上と内燃機関の出力向上とのどちらを優先させるかを選択可能な廃熱利用装置を提供する。
【解決手段】実施例1の廃熱利用装置は、エンジン5と、エンジン5に対して加圧空気を供給するターボチャージャ7とを有する駆動系1aと、これに用いられるランキンサイクル3aとを備えている。ランキンサイクル3aは、第2電動ポンプP2と、加圧空気ボイラ21と、膨張機23と、第1〜3熱交換器25〜27と、レシーバ29と、配管31〜41と、開閉弁V1〜V6とを有している。この廃熱利用装置では、開閉弁V1〜V6等により、第1熱交換器25の下流でレシーバ29を接続する場合と、第2熱交換器26の下流でレシーバ29を接続する場合とを切り替えることが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に従来の廃熱利用装置が開示されている。特許文献1の図5に開示された廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、内燃機関としてのエンジンと、過給器としてのターボチャージャとを有している。このターボチャージャは、エンジンに対して吸気系流体としての加圧空気を供給する。ランキンサイクルは、ポンプと、加圧空気ボイラと、冷却水ボイラと、膨張機と、凝縮器と、ポンプから加圧空気ボイラ、冷却水ボイラ及び膨張機を経て凝縮器に作動流体を循環させる配管とを有している。
【0003】
また、特許文献2に開示された廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、内燃機関としてのエンジンと、エンジンで生じた排気の一部を吸気系流体である還流排気としてエンジンに還流させる排気還流路とを有している。ランキンサイクルは、ポンプと還流排気ボイラと膨張機と凝縮器と配管とを有している。還流排気ボイラは、還流排気と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱する。配管は、ポンプ、還流排気ボイラ、膨張機及び凝縮器の順で作動流体を循環させる。
【0004】
これらの廃熱利用装置では、吸気系流体としての加圧空気や還流排気が高温となることから、加圧空気ボイラや還流排気ボイラにおける熱交換により作動流体を好適に加熱することが可能である。このため、これらの廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーの量が大きくなっている。
【0005】
また、これら廃熱利用装置では、加圧空気ボイラが加圧空気に対するインタークーラとして機能し、また、還流排気ボイラが還流排気に対する冷却装置として機能することから、専用のインタークーラや冷却装置を別途設ける必要がなく、小型化されているとともに、構造が簡素化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−8224号公報
【特許文献2】特開2007−239513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の加圧空気や還流排気のような吸気系流体は、エンジン等の内燃機関に対して冷却されつつ吸気されることが求められる。ここで、加圧空気を冷却すれば、内燃機関の出力を向上させることが可能となり、還流排気を冷却すれば、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることが可能となるためである。
【0008】
しかし、上記の各廃熱利用装置では、凝縮器がすぐにポンプに接続されているため、加圧空気ボイラや還流排気ボイラに流入する作動流体の温度がほぼ凝縮温度となり、吸気系流体である加圧空気や還流排気を十分に冷却し難い。
【0009】
このため、凝縮器とポンプとの間にレシーバ及びサブクーラを設けることが考えられる。この場合、レシーバによって凝縮器の下流の作動流体を確実に液化し、サブクーラによって液化した作動流体を冷却できる。このため、加圧空気ボイラや還流排気ボイラに流入する作動流体の温度を確実に下げることができ、加圧空気や還流排気を好適に冷却することが可能となる。
【0010】
しかしながら、この場合、内燃機関の出力にかかわらず、凝縮器及びサブクーラが一定の放熱を行うだけである。このため、ランキンサイクルにおいて、作動流体が不必要に冷却されることもあり、回収するエネルギーが少なくなる。また一方で、内燃機関の出力向上等のために加圧空気や還流排気のより一層の冷却が必要な場合、すなわち、加圧空気や還流排気に対する冷却要求が大きい場合であっても、それに見合う温度まで加圧空気や還流排気を冷却できない場合も生じる。このため、内燃機関の出力等が不十分となってしまう。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上と内燃機関の性能向上とのどちらを優先させるかを選択可能な廃熱利用装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の廃熱利用装置は、内燃機関を有する駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えた廃熱利用装置において、
前記ランキンサイクルは、前記作動流体を配管に沿って循環させるポンプと、
該ポンプの下流に該配管によって接続され、前記内燃機関に対して冷却されつつ吸気される吸気系流体と前記作動流体との間で熱交換を行うボイラと、
該ボイラの下流に該配管によって接続され、該作動流体を膨張させる膨張機と、
該膨張機の下流に該配管によって接続されているとともに自己の下流が該ポンプに該配管によって接続され、該作動流体を凝縮するとともに過冷却する熱交換手段とを備え、
該熱交換手段は、該作動流体を凝縮するコンデンサ部と、
該コンデンサ部の下流に接続され、液体状の該作動流体を貯留するレシーバと、
該レシーバの下流に接続され、液体状の該作動流体を過冷却するサブクール部と、
コンデンサ部及び該サブクール部の割合を変更する切替手段とを有し、
前記吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、
該判断手段が判断した該冷却要求量に応じて、該切替手段の制御を行う制御手段とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0013】
本発明の廃熱利用装置はランキンサイクルを備えている。このランキンサイクルは、駆動系に用いられ、作動流体を循環させる。このランキンサイクルは、ポンプと、ボイラと、膨張機と、配管とを有している。ボイラでは、吸気系流体と作動流体が熱交換を行う。ここで、吸気系流体とは、上記のように、内燃機関に対して冷却されつつ吸気されることが求められる流体を指す。
【0014】
これにより、この廃熱利用装置では吸気系流体の冷却と作動流体の加熱とを行うことが可能となる。このため、この廃熱利用装置におけるランキンサイクルでは、作動流体の圧力エネルギーが大きくなり、ランキンサイクルで回収可能なエネルギーの量が多くなる。なお、この回収可能なエネルギーとしては、例えば、圧力エネルギーを基に発電した電力や内燃機関に回生される動力等が挙げられる。
【0015】
また、この廃熱利用装置では、ボイラが吸気系流体に対する冷却装置として機能する。これにより、この廃熱利用装置では、吸気系流体の密度を大きくさせた状態で内燃機関に吸気されることが可能となる。このため、この廃熱利用装置では、内燃機関に対して、多くの吸気系流体を吸気させることが可能となる。
【0016】
さらに、この廃熱利用装置は、熱交換手段を備えている。この熱交換手段はコンデンサ部、レシーバ、サブクール部及び切替手段を有している。コンデンサ部では、膨張機を経た作動流体を凝縮する。レシーバでは、コンデンサ部を経た作動流体を気液分離させつつ、液体状の作動流体を受液室内に貯留する。サブクール部は、液体状の作動流体の過冷却を行う。切替手段は、コンデンサ部及びサブクール部の割合を変更する。
【0017】
これにより、この廃熱利用装置では、レシーバによってコンデンサ部の下流の作動流体を確実に液化し、サブクール部によって作動流体の過冷却を確保することができる。
【0018】
また、この廃熱利用装置は、吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、判断手段が判断した冷却要求量に応じて、上記の切替手段の制御を行う制御手段を備えている。ここで、判断手段が判断した吸気系流体に対する冷却要求量が小さければ、吸気系流体の温度をさほど下げなくても、内燃機関が必要とする量の吸気系流体を供給できる。つまり、この場合、ランキンサイクルにおいて、ボイラに流入する作動流体の温度をさほど低くする必要がない。このため、このような場合には、制御手段は切替手段を制御し、熱交換手段において、サブクール部よりもコンデンサ部の割合を大きくする。これにより、この廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおいて作動流体が不必要に冷却されることを抑制でき、回収するエネルギーの量を多くすることができる。
【0019】
他方、判断手段が判断した吸気系流体に対する冷却要求量が大きければ、ランキンサイクルにおいて、ボイラに流入する作動流体の温度をさらに低くする必要がある。このような場合には、制御手段は切替手段を制御し、熱交換手段において、コンデンサ部よりもサブクール部の割合を大きくする。これにより、レシーバによって液化された作動流体をサブクール部において十分に冷却できる。これにより、ランキンサイクルでは十分に冷却された作動流体をボイラに流入させることができるため、ボイラでの熱交換により、吸気系流体を十分に冷却できる。このため、この廃熱利用装置では、内燃機関に対してより多くの吸気系流体を供給し、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。なお、この場合、熱交換手段においてコンデンサ部が減少することから、ランキンサイクルで回収可能となるエネルギーの量は減少する。
【0020】
したがって、本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上と内燃機関の性能向上とのどちらを優先させるかを選択可能である。
【0021】
本発明の廃熱利用装置におけるランキンサイクルは、吸気系流体と作動流体とで熱交換を行う上記のボイラの他に、例えば内燃機関の廃熱と作動流体とで熱交換が可能な冷却水ボイラ等を有していても良い。この場合、複数のボイラによって作動流体を加熱することが可能となり、廃熱利用装置がより高性能となる。
【0022】
コンデンサ部とサブクール部との割合を変更するに当たっては、例えば、コンデンサ部として機能する熱交換器の個数と、サブクール部として機能する熱交換器の個数とに差を設けることが挙げられる。また、コンデンサ部として機能する熱交換器の大きさと、サブクール部として機能する熱交換器の大きさとに差を設けることによっても行うことができる。さらに、熱交換器において、コンデンサ部として機能する放熱面の面積と、サブクール部として機能する放熱面の面積とに差を設けることによっても行うことができる。また、これらを組み合わせて行うこともできる。
【0023】
本発明の廃熱利用装置において、熱交換手段は、膨張機の下流に配管によって直列に接続され、自己の下流がポンプに配管によって接続された複数の熱交換器と、少なくとも一つのレシーバとを有し得る。そして、切替手段は、レシーバをいずれの熱交換器の下流の配管に接続するかを切り替え可能であることが好ましい(請求項2)。
【0024】
この場合、レシーバの上流側に位置する熱交換器がコンデンサ部として機能し、レシーバの下流に接続された熱交換器がサブクール部として機能する。このため、この廃熱利用装置では、制御手段が切替手段を制御し、いずれの熱交換器の下流でレシーバを接続させるかによって、コンデンサ部として機能する熱交換器とサブクール部として機能する熱交換器とを変更することが可能となる。
【0025】
これにより、この廃熱利用装置では、判断手段が判断した吸気系流体に対する冷却要求量が小さければ、コンデンサ部として機能する熱交換器を増やし、サブクール部として機能する熱交換器を減らすことで、作動流体の不必要な冷却を抑制して、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーを多くすることが可能となる。一方、判断手段が判断した吸気系流体に対する冷却要求量が大きい場合には、コンデンサ部として機能する熱交換器を減らし、サブクール部として機能する熱交換器を増やすことで、吸気系流体を十分に冷却して、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。
【0026】
上記の構成の廃熱利用装置では、熱交換器の個数が二以上であれば、ランキンサイクル、ひいては廃熱利用装置の大きさの他、目標とする作動流体の温度等に応じて適宜変更することができる。さらに、各熱交換器の種類は同一であっても良く、相違していても良い。また、例えば、放熱面積の異なる2つの熱交換器を用意し、レシーバの下流にいずれの熱交換器を接続させるかを切り替えることによっても、上記の効果を奏することが可能となる。
【0027】
上記の廃熱利用装置において、各熱交換器は、膨張機の下流に配管によって接続された第1熱交換器と、第1熱交換器の下流に配管の一部である第1接続管によって接続された第2熱交換器と、第2熱交換器の下流に該配管の一部である第2接続管によって接続された第3熱交換器とからなり得る。そして、切替手段は、駆動系における所定値以上の出力要求により、第1熱交換器と第2熱交換器との間でレシーバを配管に接続させる場合と、第2熱交換器と第3熱交換器との間でレシーバを配管に接続させる場合とを切り替え可能であることが好ましい(請求項3)。
【0028】
より具体的には、レシーバは一つであり得る。また、切替手段は、第1接続管から分岐し、レシーバの上流に接続される第1分岐管と、第2接続管から分岐し、レシーバの上流に接続される第2分岐管と、第1分岐管より下流で第1接続管に帰還し、レシーバの下流に接続された第1帰還管と、第2分岐管より下流で第2接続管に帰還し、レシーバの下流に接続された第2帰還管と、作動流体が第2熱交換器に流入する場合と第1分岐管に流入する場合とを切替可能な第1切替弁と、作動流体が第3熱交換器に流入する場合と第2分岐管に流入する場合とを切替可能な第2切替弁と、作動流体が第1帰還管に流入する場合と第2帰還管に流入する場合とを切替可能な第3切替弁とを有し得る。そして、制御手段は、第1切替弁、第2切替弁及び第3切替弁を制御可能であり得る(請求項4)。
【0029】
ここで、第1〜3切替弁としては、例えば分岐弁や開閉弁等を採用することができる他、フラッパ等を採用することもできる。
【0030】
特に、第1切替弁は、第1分岐管を開閉する第1分岐開閉弁と、第1接続管を開閉する第1接続開閉弁とからなり得る。また、第2切替弁は、第2分岐管を開閉する第2分岐開閉弁と、第2接続管を開閉する第2接続開閉弁とからなり得る。そして、第3切替弁は、第1帰還管を開閉する第1帰還開閉弁と、第2帰還管を開閉する第2帰還開閉弁とからなることが好ましい(請求項5)。このように、第1〜3切替弁について、それぞれ第1、2分岐管や第1、2接続管や第1、2帰還管を開閉させる各開閉弁とすることで、廃熱利用装置の構造を簡素化することが可能となる。
【0031】
また、上記の廃熱利用装置において、レシーバは、第1レシーバ及び第2レシーバからなり得る。また、切替手段は、第1接続管から分岐し、第1レシーバの上流に接続される第1分岐管と、第2接続管から分岐し、第2レシーバの上流に接続される第2分岐管と、第1分岐管より下流で第1接続管に帰還し、第1レシーバの下流に接続された第1帰還管と、第2分岐管より下流で第2接続管に帰還し、第2レシーバの下流に接続された第2帰還管と、作動流体が第2熱交換器に流入する場合と第1分岐管に流入する場合とを切替可能な第1切替弁と、作動流体が第3熱交換器に流入する場合と第2分岐管に流入する場合とを切替可能な第2切替弁とを有し得る。そして、制御手段は、第1切替弁及び第2切替弁を制御可能であり得る(請求項6)。
【0032】
この場合においても、第1、2切替弁としては、例えば分岐弁や開閉弁等を採用することができる他、フラッパ等を採用することもできる。
【0033】
特に、第1切替弁は、第1分岐管を開閉する第1分岐開閉弁と、第1接続管を開閉する第1接続開閉弁とからなり得る。そして、第2切替弁は、第2分岐管を開閉する第2分岐開閉弁と、第2接続管を開閉する第2接続開閉弁とからなることが好ましい(請求項7)。
【0034】
このように、第1、2切替弁について、それぞれ第1、2分岐管や第1、2接続管を開閉させる開閉弁とすることで、廃熱利用装置の構造を簡素化することが可能となる。
【0035】
また、本発明の廃熱利用装置において、熱交換手段はサブクールコンデンサを有し得る。このサブクールコンデンサは、内部に第1ヘッド室が形成された第1ヘッドと、内部に第2ヘッド室が形成された第2ヘッドと、第1ヘッド室と第2ヘッド室とを連通するように第1ヘッドと第2ヘッドとに接続される3本以上のチューブと、第1ヘッド室内に設けられ、第1ヘッド室を第1主室と第1副室とに区画する第1ピストンと、第2ヘッド室内に設けられ、第2ヘッド室を第2主室と第2副室とに区画する第2ピストンと、第1ピストン及び第2ピストンを駆動可能な駆動手段と、第1主室又は第2主室と第1副室又は第2副室とに連通し、収容室が形成されたレシーバとを有し得る。そして、該第1ピストン、該第2ピストン及び該駆動手段が前記切替手段とされていることも好ましい(請求項8)。
【0036】
この場合、第1ピストン及び第2ピストンを駆動させることにより、第1ヘッド室における第1主室と第1副室との割合と、第2ヘッド室における第2主室と第2副室との割合とが変化することとなる。これにより、サブクールコンデンサにおいて、コンデンサ部として機能するチューブの本数と、サブクール部として機能するチューブの本数とを変更することが可能となる。これにより、判断手段が判断した吸気系流体に対する冷却要求量が小さければ、コンデンサ部として機能するチューブの本数を増やし、サブクール部として機能するチューブの本数を減らすことで、作動流体の不必要な冷却を抑制して、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーを多くすることが可能となる。一方、判断手段が判断した吸気系流体に対する冷却要求量が大きければ、コンデンサ部として機能するチューブの本数を減らし、サブクール部として機能するチューブの本数を増やすことで、吸気系流体を十分に冷却して、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。
【0037】
また、本発明の廃熱利用装置において、熱交換手段は、内部に第1ヘッド室が形成された第1ヘッドと、内部に第2ヘッド室が形成された第2ヘッドと、第1ヘッド室と第2ヘッド室とを連通するように第1ヘッドと第2ヘッドとに接続される3本以上のチューブと、第2ヘッド室に連通し、収容室が形成されたレシーバと、収容室の容積を変更可能な容積変更手段とを有し得る。そして、容積変更手段が前記切替手段とされていることも好ましい(請求項9)。
【0038】
この場合も、収容室の容積を変更することにより、コンデンサ部として機能するチューブの割合と、サブクール部として機能するチューブの割合とを変更することが可能となる。これにより、この廃熱利用装置でも、判断手段が判断した吸気系流体に対する冷却要求量に応じて、コンデンサ部として機能するチューブの割合と、サブクール部として機能するチューブの割合とを適宜変更することで、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーを多くしたり、内燃機関の性能を高くしたりすることが可能となる。
【0039】
本発明の廃熱利用装置において、判断手段は、吸気系流体に対する冷却要求量について、種々の手段によって判断することが可能である。例えば、本発明の廃熱利用装置は、内燃機関に対する出力要求を検出可能な出力要求検出手段を備え得る。そして、判断手段は、出力要求検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することが好ましい(請求項10)。
【0040】
また、本発明の廃熱利用装置は、ボイラから流出する吸気系流体の温度を検出可能な第1温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第1温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項11)。
【0041】
また、本発明の廃熱利用装置は、ボイラに流入する作動流体の温度を検出可能な第2温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第2温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項12)。
【0042】
また、本発明の廃熱利用装置は、ボイラに流入する吸気系流体の温度を検出可能な第3温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第3温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項13)。
【0043】
また、本発明の廃熱利用装置は、ポンプに流入する作動流体の温度を検出可能な第4温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第4温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項14)。
【0044】
また、本発明の廃熱利用装置は、膨張機の下流からポンプの上流までの作動流体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え得る。そして、判断手段は、圧力検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項15)。
【0045】
これらのように、内燃機関に対する出力要求の他、ボイラから流出又はボイラに流入する吸気系流体の温度、ボイラ又はポンプに流入する作動流体の温度、膨張機の下流からポンプの上流までの作動流体の圧力(凝縮圧力)に基づくことで、判断手段は吸気系流体に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となる。このため、これらの廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上と内燃機関の性能向上とのどちらを優先させるかについて、より好適に選択可能となる。
【0046】
本発明の廃熱利用装置は、ポンプに流入する作動流体の温度及び圧力を検出可能な作動流体状態検出手段を備え得る。そして、制御手段は、作動流体状態検出手段が検出した作動流体状態検出値に基づき、ポンプにおいて作動流体がキャビテーションを生じないように切替手段の制御を行うことが好ましい(請求項16)。
【0047】
この場合、サブクール部において作動流体の過冷却を確保しつつ、ポンプで作動流体がキャビテーションを生じさせることを防止できる。このため、この廃熱利用装置では、ポンプの損傷を防止することが可能となり、耐久性を高くすることが可能となる。
【0048】
また、制御手段は、冷却要求量に相当する冷却要求検出値を判断するとともに、冷却要求検出値と作動流体状態検出値とのうちで大きい方に応じて、切替手段の制御を行うことが好ましい(請求項17)。
【0049】
この場合、この廃熱利用装置では、耐久性を高くしつつ、吸気系流体に対する冷却要求も満たすことが可能となる。このため、この廃熱利用装置では、耐久性の向上と内燃機関の性能向上とを両立させることが可能となる。
【0050】
本発明の廃熱利用装置において、駆動系が有する内燃機関としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の他、種々の形式のエンジンを採用することができる。また、これらのエンジンはモータを組み合わせたハイブリッドエンジンでも良い。さらに、これらのエンジンは空冷式でも水冷式でも良い。
【0051】
また、駆動系は、内燃機関に対して吸気系流体である加圧空気を供給する過給器を有し得る。そして、ボイラは、加圧空気と作動流体との間で熱交換を行う加圧空気ボイラであり得る(請求項18)。
【0052】
この場合、過給器によって内燃機関に加圧空気が供給されることで、内燃機関の出力が向上する。ここで、加圧空気は、冷却によりその密度が増大させつつ内燃機関に吸気されることが求められることから吸気系流体に該当する。この廃熱利用装置では、加圧空気ボイラにおいて作動流体と熱交換を行うことで、加圧空気を冷却し、その密度を高くすることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、内燃機関に対してより多くの加圧空気を供給可能となり、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。この過給器としては、ターボチャージャやスーパーチャージャ等を採用することができる。なお、過給器は複数であっても良い。
【0053】
また、駆動系は、内燃機関で生じた排気の一部を吸気系流体である還流排気として内燃機関に還流させる排気還流路を有し得る。そして、ボイラは、還流排気と作動流体との間で熱交換を行う還流排気ボイラであり得る(請求項19)。
【0054】
この場合、排気還流路により、排気の一部が内燃機関に吸気(還流)されることで、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることが可能となる。ここで、還流排気も冷却によりその密度を増大させつつ内燃機関に還流されることが求められることから吸気系流体に該当する。そして、この廃熱利用装置では、還流排気ボイラにおいて作動流体と熱交換を行うことで、還流排気を冷却し、その密度を高くすることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、内燃機関に対して好適に還流排気を還流させることが可能となり、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0055】
本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上と内燃機関の性能向上とのどちらを優先させるかを選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図2】実施例1の廃熱利用装置に係り、第2熱交換器の下流でレシーバに作動流体を流入させた状態を示す模式構造図である。
【図3】実施例1の廃熱利用装置に係り、第1熱交換器の下流でレシーバに作動流体を流入させた状態を示す模式構造図である。
【図4】実施例2の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図5】実施例2の廃熱利用装置に係り、第2レシーバに作動流体を流入させた状態を示す模式構造図である。
【図6】実施例2の廃熱利用装置に係り、第1レシーバに作動流体を流入させた状態を示す模式構造図である。
【図7】実施例3の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図8】実施例3の廃熱利用装置に係り、駆動系に対する出力要求が小さい場合におけるサブクールコンデンサを示す断面図である。
【図9】実施例3の廃熱利用装置に係り、駆動系に対する出力要求が大きい場合におけるサブクールコンデンサを示す断面図である。
【図10】実施例4の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図11】実施例4の廃熱利用装置に係り、駆動系に対する出力要求が小さい場合におけるサブクールコンデンサを示す断面図である。
【図12】実施例4の廃熱利用装置に係り、駆動系に対する出力要求が大きい場合におけるサブクールコンデンサを示す断面図である。
【図13】実施例5の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明を具体化した実施例1〜5を図面を参照しつつ説明する。
【0058】
(実施例1)
実施例1の廃熱利用装置は、車両に搭載され、図1に示すように、車両の駆動系1aに用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3aと、制御装置11aとを備えている。なお、制御装置11aが判断手段及び制御手段に相当している。
【0059】
駆動系1aは、内燃機関としてのエンジン5と、過給器としてのターボチャージャ7と、ラジエータ9とを有している。エンジン5は、公知の水冷式ガソリンエンジンである。エンジン5の内部には冷却液としてのLLC(ロングライフクーラント)が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン5には、このウォータジャケットとそれぞれ連通する流出口5aと流入口5bとが形成されている。さらに、エンジン5には、排気を排出する排気口5cと、後述する加圧空気を吸入する吸気口5dとが形成されている。
【0060】
ターボチャージャ7及びラジエータ9もそれぞれ公用品が採用されている。ターボチャージャ7は、エンジン5から生じた排気によって作動され、エンジン5に対し、車外の空気を加圧した加圧空気を供給する。また、ラジエータ9には、その内部に冷却液を流入させる流入口9aと、冷却液を流出させる流出口9bとが形成されている。ラジエータ9は、その内部を流通する冷却液と車外の空気との間で熱交換を行う。さらに、ラジエータ9の近傍には、電動ファン9cが設けられている。この電動ファン9cは、制御装置11aと電気的に接続されている。
【0061】
エンジン5とターボチャージャ7とは配管13〜15によって接続されている。また、配管14と配管15とには後述する加圧空気ボイラ21が接続されている。配管13は内部を排気が流通可能となっており、エンジン5の排気口5cとターボチャージャ7とに接続されている。一方、配管14及び配管15は内部を吸気系流体である加圧空気が流通可能となっている。配管14はターボチャージャ7と、加圧空気ボイラ21の第1流入口21aとに接続されている。配管15は加圧空気ボイラ21の第1流出口21bと、エンジン5の吸気口5dとに接続されている。
【0062】
さらに、ターボチャージャ7には、配管16、17の各一端側が接続されている。配管16の他端側は、図示しないマフラと接続されている。配管17の他端側は図示しない車両のエアインテークに開口している。配管16は、ターボチャージャ7を介して配管13と連通している。同様に、配管17は、ターボチャージャ7を介して配管14と連通している。
【0063】
一方、エンジン5とラジエータ9とは配管18、19によって接続されている。配管18、19は内部を冷却液が流通可能となっている。配管18は、エンジン5の流出口5aと、ラジエータ9の流入口9aとに接続されている。配管19は、ラジエータ9の流出口9bと、エンジン5の流入口5bとに接続されている。配管19には、第1電動ポンプP1が設けられている。この第1電動ポンプP1は、制御装置11aに電気的に接続されている。なお、第1電動ポンプP1は、配管18に設けられても良い。
【0064】
ランキンサイクル3aは、第2電動ポンプP2と、加圧空気ボイラ21と、膨張機23と、第1〜3熱交換器25〜27と、レシーバ29と、配管30〜41と、開閉弁V1〜V6とを有している。配管30〜41には、作動流体としてのHFC134aが流通可能となっている。
【0065】
これらのうち、第2電動ポンプP2がポンプに相当している。この第2電動ポンプP2は、制御装置11aに電気的に接続されている。また、配管36〜39及び開閉弁V1〜V6が切替手段に相当している。さらに、配管34が第1接続管に相当しており、配管35が第2接続管に相当している。また、配管36及び配管37がそれぞれ第1分岐管及び第2分岐管に相当しており、配管38及び配管39がそれぞれ第1帰還管及び第2帰還管に相当している。そして、開閉弁V1及び開閉弁V2がそれぞれ第1分岐開閉弁及び第1接続開閉弁に相当しており、開閉弁V3及び開閉弁V4がそれぞれ第2分岐開閉弁及び第2接続開閉弁に相当しており、開閉弁V5及び開閉弁V6がそれぞれ第1帰還開閉弁及び第2帰還開閉弁に相当している。
【0066】
加圧空気ボイラ21には、第1流入口21a及び第1流出口21bと、第2流入口21c及び第2流出口21dとが形成されている。また、加圧空気ボイラ21内には、両端側でそれぞれ第1流入口21a及び第1流出口21bと連通する第1通路21eと、両端側でそれぞれ第2流入口21c及び第2流出口21dと連通する第2通路21fとが設けられている。この加圧空気ボイラ21では、第1通路21e内の加圧空気と、第2通路21f内の作動流体との熱交換により、加圧空気の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0067】
膨張機23には、その内部に作動流体を流入させる流入口23aと、作動流体を流出させる流出口23bとが形成されている。膨張機23では、加圧空気ボイラ21を経て加熱された作動流体を膨張させることにより回転駆動力を発生させる。この膨張機23には図示しない公知の発電機が接続されている。発電機は膨張機23の駆動力によって発電を行い、図示しないバッテリに電力を充電する。
【0068】
第1熱交換器25には、その内部に作動流体を流入させる流入口25aと、作動流体を流出させる流出口25bとが形成されている。第1熱交換器25は、その内部を流通する作動流体と車外の空気との間で熱交換を行い、加圧空気ボイラ21を経て加熱された作動流体を放熱させて冷却させる。つまり、第1熱交換器25は、作動流体に対する凝縮器、すなわち、コンデンサ部として機能する。また、第1熱交換器25の近傍には電動ファン25cが設けられている。この電動ファン25cは制御装置11aに電気的に接続されている。
【0069】
第2熱交換器26及び第3熱交換器27も第1熱交換器25と同一の構成であり、第2熱交換器26には、その内部に作動流体を流入させる流入口26aと、作動流体を流出させる流出口26bとが形成されている。同様に、第3熱交換器27には、その内部に作動流体を流入させる流入口27aと、作動流体を流出させる流出口27bとが形成されている。また、第2熱交換器26及び第3熱交換器27の近傍には、それぞれ電動ファン26c、27cが設けられている。これらの電動ファン26c、27cも制御装置11aに電気的に接続されている。
【0070】
また、第2熱交換器26は、ランキンサイクル3aにおいて、後述するレシーバ29との位置関係により、コンデンサ部として機能する他、サブクール部としても機能する。一方、第3熱交換器27は、サブクール部として機能する。
【0071】
レシーバ29は、自身に対して作動流体の循環方向の上流となる位置に流入口29aが形成されており、自身に対して作動流体の循環方向の下流となる位置に流出口29bが形成されている。また、レシーバ29の内部には受液室29cが形成されている。レシーバ29は、流入口29aから流入した作動流体を気体と液体とに分離させる。そして、レシーバ29は、液状体となった作動流体を受液室29c内に貯留するとともに、貯留した作動流体を流出口29bから順に流出させる。
【0072】
これらの第2電動ポンプP2、加圧空気ボイラ21、膨張機23、第1〜3熱交換器25〜27及びレシーバ29は、配管30〜41によって接続されている。具体的には、第3熱交換器27の流出口27bと、第2電動ポンプP2とは配管30によって接続されている。第2電動ポンプP2と、加圧空気ボイラ21の第2流入口21cとは配管31によって接続されている。加圧空気ボイラ21の第2流出口21dと、膨張機23の流入口23aとは配管32によって接続されている。膨張機23の流出口23bと第1凝縮器25の流入口25aとは配管33によって接続されている。第1凝縮器25の流出口25bと第2凝縮器26の流入口26aとは配管34によって接続されている。そして、第2凝縮器26の流出口26bと第3凝縮器27の流入口27aとは配管35によって接続されている。
【0073】
また、配管34には、配管36及び配管38の各一端側が接続されている。同じく配管35には、配管37及び配管39の各一端側が接続されている。配管36及び配管37の各他端側は、配管40の一端側と接続されている。配管40の他端側はレシーバ29の流入口29aに接続されている。また、配管38及び配管39の各他端側は、配管41の一端側と接続されている。配管41の他端側はレシーバ29の流出口29bに接続されている。
【0074】
このランキンサイクル3aでは、第2電動ポンプP2を作動させることにより、作動流体は、図2及び図3に示すように、第2電動ポンプP2から加圧空気ボイラ21、膨張機23を経て第1熱交換器25に至ることとなる。そして、最終的に第3熱交換器27を経て第2電動ポンプP2に至る順で配管30〜41内を循環する。
【0075】
つまり、ランキンサイクル3aにおける作動流体の流通方向において、第2電動ポンプP2の下流に加圧空気ボイラ21が配置されており、加圧空気ボイラ21の下流に膨張機23が配置されている。また、膨張機23の下流に第1熱交換器25が直列に配置されており、第1熱交換器25の下流に第2熱交換器26が直列に配置されている。そして、第2熱交換器26の下流に第3熱交換器27が直列に配置されており、第3熱交換器27の下流に第2電動ポンプP2が配置されている。
【0076】
図1に示すように、開閉弁V1〜V6は、開閉動作により、自身の下流に作動流体を流通させる場合と流通させない場合とを切り替えることが可能な切替弁である。これらの開閉弁V1〜V6は、いずれも制御装置11aに電気的に接続されている。
【0077】
開閉弁V1は配管36に設けられている。開閉弁V2は、配管34において、配管36が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の下流であって、配管38が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の上流の位置に設けられている。また、開閉弁V3は配管37に設けられている。開閉弁V4は、配管35において、配管37が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の下流であって、配管39が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の上流の位置に設けられている。そして、開閉弁V5は配管38に設けられており、開閉弁V6は配管39に設けられている。
【0078】
制御装置11aは、電動ファン9c、25c、26c、27cの各作動制御を行うことで、冷却液又は作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行う。また、制御装置11aは、第1、2電動ポンプP1、P2の作動制御を行う。さらに、制御装置11aは、車両のECU等(図示略)から受信した信号によって車両のアクセル開度を検知可能に構成されており、このアクセル開度に基づき、エンジン5に対する出力要求を検出可能となっている。また、制御装置11aは、エンジン5に対する出力要求に基づいて、加圧空気に対する冷却要求量を冷却要求検出値として判断する。そして、制御装置11aは、この冷却要求検出値に基づき、各開閉弁V1〜V6について、個別に開閉制御を行う。これにより、制御装置11aは、配管34とレシーバ29の流入口29aとを連通させる場合と、配管35とレシーバ29の流入口29aとを連通させる場合とを切り替える。
【0079】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0080】
図2に示すように、車両が駆動されることにより、駆動系1aではエンジン5が作動する。これにより、排気口5cから排出された排気が配管13、ターボチャージャ7及び配管16を経てマフラから車外に排出される(同図の一点鎖線矢印参照)。この際、排気に依ってターボチャージャ7が作動される。これにより、車外の空気が配管17よりターボチャージャ7に吸引され、圧縮される。この空気は加圧空気として、配管14、加圧空気ボイラ21の第1通路21e及び配管15を経てエンジン5の吸気口5dよりエンジン5内へ吸入される(同図の二点鎖線矢印参照)。
【0081】
また、制御装置11aは、第1、2電動ポンプP1、P2及び電動ファン9c、25c、26c、27cをそれぞれ作動させる。これにより、駆動系1aでは、エンジン5の冷却を行った冷却液が流出口5aより流出して、配管18を経てラジエータ9の流入口9aよりラジエータ9の内部に至る。そして、ラジエータ9の内部の冷却液は、ラジエータ9の周りの空気と熱交換、すなわち、放熱されて冷却される。この際、制御装置11aは電動ファン9cの作動量を適宜変更して、冷却液を好適に放熱させる。放熱されて冷却された冷却液は流出口9bから流出し、配管19を経てエンジン5の流入口5bからエンジン5内に流入してエンジン5の冷却を行う(同図の破線矢印参照。)。
【0082】
一方、ランキンサイクル3aでは、制御装置11aが各開閉弁V1〜V6の開閉制御を行う。ここで、エンジン5に対する出力要求が所定値(検知したアクセル開度が所定値)以下の場合には、制御装置11aは加圧空気に対する冷却要求検出値(冷却要求量)が閾値以下であると判断し、それに応じて各開閉弁V1〜V6の開閉制御を行う。具体的には、制御装置11aは開閉弁V2、V3、V6については開制御を行い、開閉弁V1、V4、V5、について閉制御を行う。これらにより、配管35に対して配管37及び配管39が連通され、配管34に対して配管36及び配管38が非連通とされる。こうして、配管35とレシーバ29の流入口29aとが連通、すなわち、レシーバ29が配管35に接続した状態となる。
【0083】
これにより、同図の実線矢印に示すように、第2電動ポンプP2によって吐出された作動流体は、配管31を経て加圧空気ボイラ21の第2流入口21cから第2通路21fに至る。そして、作動流体は加圧空気ボイラ21において加圧空気との熱交換が行われる。この際、第1通路21eを流通する加圧空気はターボチャージャ7によって圧縮されることにより約150°C程度の熱を有しているため、第2通路21fを流通する作動流体は、一定程度の温度に加熱される。一方、第1通路21eを流通する加圧空気は、第2通路21fを流通する作動流体に対して放熱を行うため、一定程度冷却された状態でエンジン5に至ることとなる。
【0084】
こうして、加圧空気ボイラ21よって加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口21dから流出し、配管32を経て膨張機23の流入口23aから膨張機23内へ至る。そして、高温高圧の作動流体は膨張機23内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機23に接続された発電機は発電を行う。
【0085】
膨張機23内で減圧された作動流体は流出口23bから流出し、配管33を経て第1熱交換器25の流入口25aから第1熱交換器25内へ至る。そして、第1熱交換器25内の作動流体は、第1熱交換器25の周りの空気に放熱を行い、冷却される。この際、制御装置11aは電動ファン25cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させる。冷却された作動流体は流出口25bから流出し、配管34を経て第2熱交換器26の流入口26aから第2熱交換器26内へ至る。
【0086】
第2熱交換器26内の作動流体は、第2熱交換器26の周りの空気に放熱を行い、より冷却される。この際も、制御装置11aは電動ファン26cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させる。冷却された作動流体は、第2熱交換器26の流出口26bから流出した後、配管35から分岐して、配管37及び配管40を経てレシーバ29の流入口29aからレシーバ29内に至ることとなる。この作動流体は、レシーバ29において、気体と液体とに分離され、液体状となった作動流体が受液室29c内に貯留される。その後、液体状の作動流体は流出口29bから流出し、配管41及び配管39を経て配管35に合流した後、第3熱交換器27の流入口27aから第3熱交換器27内に至ることとなる。つまり、第2熱交換器26の流出口26bから流出した作動流体は、配管35に設けられた開閉弁V4を迂回して、第3熱交換器27に至ることとなる。
【0087】
第3熱交換器27内の作動流体は、第3熱交換器27の周りの空気に放熱を行い、更に冷却される。この際も制御装置11aは電動ファン27cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させる。ここで、第3熱交換器27は、レシーバ29によって液化された作動流体を冷却する。つまり、この場合、第1、2熱交換器25、26がコンデンサ部として機能し、第3熱交換器27がサブクール部として機能することとなる。こうして、冷却された作動流体は流出口27bから流出し、配管31を経て、再び加圧空気ボイラ21に至ることとなる。
【0088】
一方、エンジン5に対する出力要求が所定値を超えた場合、すなわち、検知したアクセル開度が所定値を超えた場合、加圧空気に対する冷却要求量が大きくなる。エンジン5の出力を高めるためにはより多くの加圧空気をエンジン5に供給する必要があり、そのためには加圧空気をより冷却してその密度を高くすることが必要となる。このため、加圧空気ボイラ23において加圧空気をより冷却することが求められるからである。そして、エンジン5に対する出力要求に基づき、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合、制御装置11aは、これに応じた各開閉弁V1〜V6の開閉制御を行う。具体的には、図3に示すように、開閉弁V1、V4、V5については開制御を行い、開閉弁V2、V3、V6について閉制御を行う。これらにより、配管34に対して配管36及び配管38が連通され、配管35に対して配管37及び配管39が非連通とされる。こうして、配管34とレシーバ29の流入口29aとが連通、すなわち、レシーバ29が配管34に接続した状態となる。
【0089】
この場合、第1熱交換器25において冷却された作動流体は、第1熱交換器25の流出口25bから流出した後、配管34から分岐して、配管36及び配管40を経てレシーバ29の流入口29aからレシーバ29内に至ることとなる。そして、液体状の作動流体は流出口29bから流出し、配管41及び配管38を経て配管34に合流した後、第2熱交換器26の流入口26aから第2熱交換器26内に至ることとなる。つまり、第1交換器25の流出口25bから流出した作動流体は、配管34に設けられた開閉弁V2を迂回して、第2交換器26に至ることとなる。
【0090】
そして、第2熱交換器26内の作動流体は、第2熱交換器26の周りの空気に放熱を行い、ここで、第2熱交換器26は、レシーバ29によって液化された作動流体を冷却することとなる。このように冷却された後、第2熱交換器26の流出口26bから流出した作動流体は、配管35を経て、第3熱交換器27の流入口27aから第3熱交換器27内に至ることとなる。そして、作動流体は、第3熱交換器27において、更に冷却されこととなる。
【0091】
つまり、この場合、第1熱交換器25がコンデンサ部として機能し、第2熱交換器26及び第3熱交換器27がサブクール部として機能することとなる。このため、図2に示す状態と比較して、作動流体はより冷却された状態、すなわち、外気温により近い温度となる。
【0092】
これらのように、この廃熱利用装置におけるランキンサイクル3aでは、加圧空気ボイラ21において、加圧空気と作動流体とが熱交換を行うことで、作動流体を加熱することができる。一方、ターボチャージャ7における加圧空気の熱を作動流体に移動させて加圧空気の温度を効果的に下げることができる。このため、この廃熱利用装置では、加圧空気ボイラ21が加圧空気に対するインタークーラとして機能し、エンジン5に対して、多くの加圧空気を供給することが可能となっている。
【0093】
また、この廃熱利用装置におけるランキンサイクル3aは、第1〜3熱交換器25〜27と、レシーバ29と、配管36〜39と、開閉弁V1〜V6とを有している。これらの第1〜3熱交換器25〜27は、膨張機23の下流に配管33〜35よって直列に接続され、第3熱交換器27の下流が第2電動ポンプP2に配管31によって接続されている。開閉弁V1〜V6は、加圧空気に対する冷却要求検出値に応じて制御装置11aによって開閉制御され、レシーバ29を第1熱交換器25又は第2熱交換器26のいずれの下流の配管34又は35に接続するかを切り替え可能である。このため、この廃熱利用装置では、第2熱交換器26がレシーバ29よりも上流となった場合、第1熱交換器25と第2熱交換器26とがコンデンサ部として機能する。そして、第3熱交換器27がサブクール部として機能することとなる。一方、第2熱交換器26がレシーバ29よりも下流となった場合、この廃熱利用装置では、第1熱交換器25がコンデンサ部として機能し、第2熱交換器26と第3熱交換器27とがサブクール部として機能することとなる。
【0094】
ここで、エンジン5に対する出力要求が小さい場合には、加圧空気の温度をさほど下げなくても、エンジン5には出力要求に応じた量の加圧空気を供給できる。つまり、この場合、ランキンサイクル3aにおいて、加圧空気ボイラ21に流入する作動流体の温度をさほど低くする必要がない。このため、この廃熱利用装置では、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値以下であると制御装置11aが判断した場合、開閉弁V1〜V6の各制御について、上記の図2に示す状態とすることで、第1、2熱交換器25、26をコンデンサ部として機能させる。これにより、図3に示す各状態と比較して、コンデンサ部として機能する熱交換器を増やし、サブクール部として機能する熱交換器を減らす。つまり、図2に示す状態の廃熱利用装置では、過冷却を行うのは第3熱交換器27のみとなることから、サブクール部よりもコンデンサ部の割合が大きい。これにより、ランキンサイクル3aにおいて作動流体が不必要に冷却されることを抑制でき、回収する電力量を多くすることができる。
【0095】
他方、エンジン5に対する出力要求が大きくなり、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合、制御装置11aは開閉弁V1〜V6の各制御について、上記の図3に示す状態とする。これにより、この廃熱利用装置では、レシーバ29によってコンデンサ部(第1熱交換器25)の下流の作動流体を液化し、サブクール部(第2熱交換器26及び第3熱交換器27)によって過冷却する。つまり、この状態の廃熱利用装置では、コンデンサ部よりもサブクール部の割合が大きくなる。これにより、第2熱交換器26及び第3熱交換器27では、液化した作動流体を外気温度近くまで冷却できる。このため、加圧空気ボイラ21に流入する作動流体の温度を十分に下げることができ、加圧空気を好適に冷却することが可能、すなわち、加圧空気に対する冷却要求量が大きい場合であっても、その冷却要求量を満たすことが可能となる。これにより、エンジン5の出力が高くなり、エンジン5に対する出力要求を満たすことができる。なお、この場合、コンデンサ部として機能するのは第1熱交換器25のみとなることから、ランキンサイクル3aにおいて回収可能な電力量は減少する。
【0096】
また、この廃熱利用装置では、エンジン5に対する出力要求に基づくことで、制御装置11aは加圧空気に対する冷却要求量、ひいては、加圧空気に対する冷却要求検出値を正確に判断することが可能となっている。
【0097】
したがって、実施例1の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクル3aにおける電力の回収量の向上とエンジン5の出力向上とのどちらを優先させるかを選択可能である。
【0098】
また、この廃熱利用装置では切替手段として配管36〜39及び開閉弁V1〜V6を採用していることから、構造を簡略化しつつ、製造コストの低廉化も実現している。
【0099】
(実施例2)
実施例2の廃熱利用装置は、実施例1の廃熱利用装置におけるランキンサイクル3aを一部変更して構成している。図4に示すように、実施例2の廃熱利用装置におけるランキンサイクル3aは、第2電動ポンプP2と、加圧空気ボイラ21と、膨張機23と、第1〜3熱交換器25〜27と、第1レシーバ43と、第2レシーバ45と、配管30〜39と、開閉弁V1〜V4とを有している。なお、配管34〜39及び開閉弁V1〜V4が切替手段に相当している。
【0100】
第1レシーバ43及び第2レシーバ45は同一の構成である。また、これらは、実施例1の廃熱利用装置におけるレシーバ29と同一の構成である。つまり、第1レシーバ43及び第2レシーバ45は、共に自身に対して作動流体の循環方向の上流となる位置に流入口43a、45aが形成されており、自身に対して作動流体の循環方向の下流となる位置に流出口43b、45bが形成されている。また、第1レシーバ43及び第2レシーバ45のそれぞれの内部には受液室43c、45cが形成されている。
【0101】
配管34には、配管36及び配管38の各一端側が接続されている。同じく配管35には、配管37及び配管39の各一端側が接続されている。配管36の他端側は第1レシーバ43の流入口43aに接続されている。また、配管37の他端側は第2レシーバ45の流入口45aに接続されている。一方、配管38の他端側は第1レシーバ43の流出口43bに接続されている。そして、配管39の他端側は第2レシーバ45の流出口45bに接続されている。
【0102】
開閉弁V1は配管36に設けられている。開閉弁V2は、配管34において、配管36が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の下流であって、配管38が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の上流の位置に設けられている。また、開閉弁V3は配管37に設けられている。開閉弁V4は、配管35において、配管37が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の下流であって、配管39が接続された箇所よりも作動流体の循環方向の上流の位置に設けられている。この廃熱利用装置における他の構成は実施例1の廃熱利用装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0103】
この廃熱利用装置では、エンジン5に対する出力要求が小さく、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値以下であると制御装置11a判断した場合、図5に示すように、制御装置11aは開閉弁V2、V3については開制御を行い、開閉弁V1、V4については閉制御を行う。これにより、この廃熱利用装置では、第1熱交換器25及び第2熱交換器26において冷却された作動流体は、配管35から分岐して、配管37を経て第2レシーバ45の流入口45aから第2レシーバ45内に至ることとなる。そして、第2レシーバ45において液体状となった作動流体は、流出口45bから流出し、配管39を経て配管35に合流した後、第3熱交換器27の流入口27aから第3熱交換器27内に至ることとなる。つまり、第2熱交換器26の流出口26bから流出した作動流体は、配管35に設けられた開閉弁V4を迂回して、第3熱交換器27に至ることとなる。これにより、この廃熱利用装置では、第1、2熱交換器25、26がコンデンサ部として機能し、第3熱交換器27がサブクール部として機能する。このため、後述の図6に示す状態と比較して、サブクール部よりもコンデンサ部の割合が大きくなる。このため、この状態の廃熱利用装置では、ランキンサイクル3aにおいて作動流体が不必要に冷却されることを抑制でき、回収する電力量を多くすることができる。
【0104】
他方、エンジン5に対する出力要求が大きく、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合には、図6に示すように、制御装置11aは開閉弁V1、V4については開制御を行い、開閉弁V2、V3については閉制御を行う。これにより、この廃熱利用装置では、配管34と配管36とが連通され、配管35に対して配管38が非連通とされる。つまり、配管34と第1シーバ43の流入口43aが連通、すなわち、第1レシーバ43が配管34に接続した状態となる。
【0105】
このため、第1熱交換器25おいて冷却された作動流体は、配管34から配管36を経て第1レシーバ43の流入口43aから第1レシーバ43内に至ることとなる。そして、第1レシーバ43において液体とされた作動流体は、流出口43bから流出し、配管38を経て配管34に合流した後、第2熱交換器26の流入口26aから第2熱交換器26内に至ることとなる。つまり、第1熱交換器25の流出口25bから流出した作動流体は、配管34に設けられた開閉弁V2を迂回して、第2熱交換器26に至ることとなる。第2熱交換器26において冷却された作動流体は、第3熱交換器27において更に冷却される。
【0106】
上記の図3に示す状態と同様、この図6に示す状態では、第1熱交換器25がコンデンサ部として機能し、第2熱交換器26及び第3熱交換器27がサブクール部として機能する。このため、この状態の廃熱利用装置では、図5に示す状態と比較して、コンデンサ部よりもサブクール部の割合が大きくなり、作動流体は外気温近くまでより冷却された状態となる。このため、この状態の廃熱利用装置では、加圧空気ボイラ21において、加圧空気を十分に冷却できる。これにより、エンジン5に対してより多くの加圧空気を供給することができ、エンジン5の出力は高くなる。このため、エンジン5に対する出力要求が大きく、加圧空気に対する冷却要求量が大きい場合であっても、その冷却要求量を満たすことができる。この廃熱利用装置における他の作用効果は、実施例1の廃熱利用装置と同様である。
【0107】
したがって、実施例2の廃熱利用装置によっても、ランキンサイクル3aにおける電力の回収量の向上とエンジン5の出力向上とのどちらを優先させるかを選択可能である。
【0108】
(実施例3)
実施例3の廃熱利用装置では、実施例1の廃熱利用装置における第1〜3熱交換器25〜27、レシーバ29及び開閉弁V1〜V6に替えて、図7に示すサブクールコンデンサ47が採用されている。また、サブクールコンデンサ47の近傍には、電動ファン47aが設けられている。この電動ファン47aは制御装置11aに電気的に接続されている。さらに、この廃熱利用装置は温度圧力センサ48を備えている。
【0109】
サブクールコンデンサ47は、配管65を介して膨張機23(流出口23b)と接続されているとともに、配管66を介して第2電動ポンプP2と接続されている。図8に示すように、サブクールコンデンサ47は、上下方向で垂直に延びる第1、2ヘッド49、51と、第1、2ヘッド49、51に対して水平に延びるチューブ53a〜53jと、第1、2ピストン55、57と、レシーバ59と、図7に示す駆動装置61とを有している。この駆動装置61が駆動手段に相当する。また、第1、2ピストン55、57及び駆動装置61が切替手段に相当している。
【0110】
図8に示すように、第1ヘッド49は、内部に上下に延びる第1ヘッド室49aと、第1ヘッド室49aに連通する挿通孔49bとが形成されている。この挿通孔49bにはシール材63aが設けられている。第1ヘッド室49a内には、挿通孔49bを介して第1ピストン55が上下動可能に設けられている。この第1ピストン55は、第1ピストンロッド55aと、第1ピストンロッド55aの一端側に接続された第1ピストンヘッド55bとで構成されている。
【0111】
この第1ピストンヘッド55bにより、第1ヘッド室49a内は、第1ピストンロッド55a側となる第1主室49cと、第1ピストンヘッド55b側となる第1副室49dとに区画されている。また、第1ヘッド49には、インレット49eとアウトレット49fとが形成されている。インレット49eは、第1ヘッド49の上方に形成されており、第1主室49cと連通している。このインレット49eには配管65が接続されている。一方、アウトレット49fは、第1ヘッド49の下方に形成されており、第1副室49dと連通している。このアウトレット49fには配管66が接続されている。
【0112】
第1ヘッド49と同様に、第2ヘッド51には、内部に上下に延びる第2ヘッド室51aと、第2ヘッド室51aに連通する挿通孔51bとが形成されている。この挿通孔51bにはシール材63bが設けられている。第2ヘッド室51a内には、挿通孔51bを介して第2ピストン57が上下動可能に設けられている。この第2ピストン57は、第2ピストンロッド57aと、第2ピストンロッド57aの一端側に接続された第2ピストンヘッド57bとで構成されている。
【0113】
この第2ピストンヘッド57bにより、第2ヘッド室51a内は、第2ピストンロッド57a側となる第2主室51cと、第2ピストンヘッド57b側となる第2副室51dとに区画されている。また、第2ヘッド51には、第2主室51cと連通する流出口51eと、第2副室51dと連通する流入口51fとが形成されている。
【0114】
各チューブ53a〜53jはそれぞれ等間隔で平行に配置されている。また、各チューブ53a〜53j間にはフィン67がそれぞれ設けられている。各チューブ53a〜53jは、一端側が第1ヘッド49と接続されており、第1ヘッド室49aと連通している。また、各チューブ53a〜53jの他端側は第2ヘッド51と接続されており、第2ヘッド室51aと連通している。すなわち、第1ヘッド49の第1ヘッド室49aと、第2ヘッド51の第2ヘッド室51aとは、チューブ53a〜53jを介して連通している。このサブクールコンデンサ47では、各チューブ53a〜53jはコンデンサ部及びサブクール部として機能する。なお、このサブクールコンデンサ47において、チューブ53a等の本数は3本以上であれば、その本数を適宜設計することが可能である。
【0115】
レシーバ59には、流入路59a及び流出路59bが設けられている。また、レシーバ59の内部には、流入路59a及び流出路59bと連通する受液室59cが形成されている。この受液室59cの下方部分は収容室59dとなっている。流入路59aは第2ヘッド51の流出口51eと接続されており、流出路59bは第2ヘッド51の流入口51fと接続されている。これにより、レシーバ59は第2ヘッド51と接続され、受液室59cと第2ヘッド室51aとが連通している。
【0116】
図7に示すように、駆動装置61は制御装置11aと電気的に接続されている。これにより、制御装置11aは駆動装置61の駆動制御を行う。また、この制御装置11aは、作動流体の飽和蒸気圧を記憶している。
【0117】
駆動装置61には、第1、2ピストン55、57の各他端側、より具体的には、第1、2ピストンロッド55a、57aの各他端側が接続されている。この駆動装置61は公知のギヤ機構及びモータ(いずれも図示を省略する。)によって構成されており、制御装置11aの制御を受けることで、図8に示す第1ヘッド室49a内及び第2ヘッド室51a内において、第1、2ピストン55、57をそれぞれ連動させつつ、上下動させる。
【0118】
温度圧力センサ48は制御装置11aと電気的に接続されている。この温度圧力センサ48は、作動流体状態検出手段として機能し、サブクールコンデンサ47を経て配管66を流通する作動流体の温度及び圧力、すなわち、第2電動ポンプP2に流入する作動流体の温度及び圧力を検出するとともに、その検出値を作動流体状態検出値として制御装置11aに向けて発信する。この廃熱利用装置における他の構成は実施例1の廃熱利用装置と同様である。
【0119】
この廃熱利用装置においても、実施例1の廃熱利用装置と同様、加圧空気ボイラ21において高温高圧となった作動流体が膨張機23において減圧される。そして、この作動流体は、流出口23bから配管65を経て、第1ヘッド49における第1主室49c内に流入する。この際、制御装置11aは電動ファン47aを作動させる。
【0120】
ここで、エンジン5に対する出力要求が小さく、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値以下であると制御装置11aが判断した場合には、制御装置11aは駆動装置61を制御し、第1、2ピストン55、57をそれぞれ連動させつつ、第1ヘッド室49a内及び第2ヘッド室51内の下方に移動させる。これにより、第1ヘッド室49a内において、第1主室49cの割合が第1副室49dよりも大きくなる。また、第2ヘッド室51a内も同様に、第2主室51cの割合が第2副室51dよりも大きくなる。このため、第1ヘッド49及び第2ヘッド51と接続するチューブ53a〜53jでは、第1副室49d及び第2副室51dと連通する割合よりも、第1主室49c及び第2主室51cと連通する割合が大きくなる。
【0121】
具体的には、チューブ53a〜53jのうち、チューブ53a〜53gが第1主室49c及び第2主室51cと連通し、チューブ5h〜53jが第1副室49d及び第2副室51dと連通することとなる。このため、同図の黒色実線矢印に示すように、配管65から第1主室49cに流入した作動流体は、チューブ53a〜53gを流通し、サブクールコンデンサ47の周りの空気に放熱されつつ、第2主室51cに流入することとなる。つまり、チューブ53a〜53jのうち、チューブ53a〜53gがコンデンサ部として機能する。
【0122】
第2主室53cに流入した作動流体は、レシーバ59の流入路59aを経て受液室59c内に至り、気液分離される。そして、液体状となった作動流体は収容室59dに貯留されるとともに、順に流出路59bから流出し、第2副室51d内に流入する。そして、この作動流体は、同図の白色実線矢印に示すように、チューブ5h〜53jを流通することで過冷却されつつ、第1副室49dに至る。つまり、チューブ53a〜53jのうち、チューブ53h〜53jがサブクール部として機能する。過冷却された作動流体は、第1ヘッド49から流出し、配管66を経て第2電動ポンプP2へ至る。
【0123】
他方、エンジン5に対する出力要求が大きく、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合、制御装置11aは駆動装置61を制御し、図9に示すように、第1、2ピストン55、57をそれぞれ連動させつつ、第1ヘッド室49a内及び第2ヘッド室51内の上方に移動させる。これにより、第1ヘッド室49a内において、第1副室49dの割合が第1主室49cよりも大きくなり、第2ヘッド室51a内では、第2副室51dの割合が第2主室51cよりも大きくなる。このため、チューブ53a〜53jでは、第1主室49c及び第2主室51cと連通する割合よりも、第1副室49d及び第2副室51dと連通する割合が大きくなる。
【0124】
具体的には、チューブ53a〜53jのうち、チューブ53a〜53cが第1主室49c及び第2主室51cと連通し、チューブ5e〜53jが第1副室49d及び第2副室51dと連通することとなる。このため、同図の黒色実線矢印に示すように、配管33から第1主室49cに流入した作動流体は、チューブ53a〜53cを流通して第2主室51cに流入することとなる。つまり、チューブ53a〜53jのうち、チューブ53a〜53cがコンデンサ部として機能する。
【0125】
レシーバ59を経て液体状となった作動流体は、同図の白色実線矢印に示すように、チューブ5e〜53jを流通することで過冷却されつつ、第1副室49dに至る。つまり、チューブ53a〜53jのうち、チューブ53e〜53jがサブクール部として機能する。過冷却された作動流体は、図8に示す状態と同様、第1ヘッド49から流出し、配管66を経て第2電動ポンプP2へ至る。
【0126】
このように、この廃熱利用装置におけるサブクールコンデンサ47では、第1ピストン53及び第2ピストン55を上下動させることにより、第1ヘッド室49aにおける第1主室49cと第1副室49dとの割合と、第2ヘッド室51aにおける第2主室51cと第2副室51dとの割合とが連動して変化することとなる。これにより、サブクールコンデンサ49において、コンデンサ部として機能するチューブ53a〜53jの本数と、サブクール部として機能するチューブチューブ53a〜53jの本数とを変更することが可能となっている。これにより、図8に示すように、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値以下であると制御装置11aが判断した場合には、コンデンサ部として機能するチューブ53a〜53jの本数を増やし、サブクール部として機能するチューブ53a〜53jの本数を減らす。つまり、サブクールコンデンサ47において、サブクール部よりもコンデンサ部の割合を大きくする。これにより、この廃熱利用装置では、作動流体の不必要な冷却を抑制して、ランキンサイクル3aにおいて回収可能なエネルギーを多くすることが可能となっている。一方、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合には、図9に示すように、コンデンサ部として機能するチューブ53a〜53jの本数を減らし、サブクール部として機能するチューブ53a〜53jの本数を増やす。つまり、サブクールコンデンサ47において、コンデンサ部よりもサブクール部の割合を大きくする。これにより、この廃熱利用装置では、加圧空気に対する冷却要求量が大きい場合であっても、その冷却要求量を満たすことが可能となり、加圧空気を十分に冷却することで、エンジン5の出力を高くすることが可能となっている。なお、この場合、ランキンサイクル3aにおいて回収可能な電力の量は減少する。
【0127】
また、この廃熱利用装置では、温度圧力センサ48によって検出された作動流体の温度及び圧力、すなわち、作動流体状態検出値と、記憶している飽和蒸気圧との比較を行う。そして、上記のように、サブクールコンデンサ47におけるコンデンサ部とサブクール部との割合を変化させるに当たって、制御装置11aは、加圧空気に対する冷却要求量に加えて、配管66を流通する作動流体の圧力が飽和蒸気圧以下とならないように駆動装置61を制御する。この際、制御装置11aは、加圧空気に対する冷却要求量(冷却要求検出値)と作動流体状態検出値との比較を行い、冷却要求検出値と作動流体状態検出値とのうちで、大きい方に応じて駆動装置61を制御する。こうして、この廃熱利用装置では、サブクールコンデンサ47におけるサブクール部での作動流体の過冷却を確保しつつ、第2電動ポンプP2で作動流体がキャビテーションを生じさせることを防止することが可能となっている。このため、この廃熱利用装置では、第2電動ポンプP2の損傷を防止することが可能となっており、耐久性を高くすることが可能となっている。さらに、この廃熱利用装置では、上記のように耐久性を高くしつつ、加圧空気に対する冷却要求も満たすことが可能となっている。つまり、この廃熱利用装置は、耐久性の向上と、エンジン5の性能向上とを両立させることが可能となっている。この廃熱利用装置における他の作用効果は、実施例1の廃熱利用装置と同様である。
【0128】
したがって、実施例3の廃熱利用装置によっても、ランキンサイクル3における電力の回収量の向上とエンジン5の出力向上とのどちらを優先させるかを選択可能である。
【0129】
(実施例4)
実施例4の廃熱利用装置は、実施例3の廃熱利用装置におけるサブクールコンデンサ47に替えて、図10に示すサブクールコンデンサ69が採用されている。また、サブクールコンデンサ69の近傍には、電動ファン69cが設けられている。この電動ファン69cは制御装置11aに電気的に接続されている。
【0130】
図11に示すように、サブクールコンデンサ69は、上下方向で垂直に延びる第1、2ヘッド71、73と、第1、2ヘッド71、73に対して水平に延びるチューブ75a〜75lと、レシーバ77と、ピストン79と、図10に示す駆動装置81とを有している。このピストン79及び駆動装置81が容積変更手段であり、切替手段に相当する。
【0131】
第1ヘッド71は、内部に上下に延びる第1ヘッド室71aが形成されている。また、第1ヘッド71内には第1固定隔壁71bが形成されている。この第1固定隔壁71bにより、第1ヘッド室71aは、第1主室71cと第1副室71dとに区画されている。また、第1ヘッド71には、インレット71eとアウトレット71fとが形成されている。インレット71eは、第1ヘッド71の上方に形成されており、第1主室71cと連通している。このインレット71eには配管65が接続されている。一方、アウトレット71fは、第1ヘッド71の下方に形成されており、第1副室71dと連通している。このアウトレット71fには配管66が接続されている。
【0132】
第1ヘッド71と同様に、第2ヘッド73には、内部に上下に延びる第2ヘッド室73aが形成されている。また、第2ヘッド73内には第2固定隔壁73bが形成されている。この第2固定隔壁73bにより、第2ヘッド室73aは、第2主室73cと第2副室73dとに区画されている。また、第2ヘッド73には、流出口73eと流入口73fとが形成されている。流入口73eは、第2主室73cと連通している。一方、流出口73fは、第2ヘッド73の下方に形成されており、第2副室73dと連通している。
【0133】
各チューブ75a〜75lはそれぞれ平行に配置されている。また、図示を省略しているものの、各チューブ75a〜75l間には図8、9と同様のフィンが設けられている。図11に示すように、各チューブ75a〜75lは、一端側が第1ヘッド71と接続されており、第1ヘッド室71aと連通している。また、各チューブ75a〜75lの他端側は第2ヘッド73と接続されており、第2ヘッド室73aと連通している。すなわち、第1ヘッド71の第1ヘッド室71aと、第2ヘッド73の第2ヘッド室73aとは、チューブ75a〜75lを介して連通している。より具体的には、チューブ75a〜75lのうち、チューブ75a〜75iが第1主室71c及び第2主室73cと連通している。また、チューブ75a〜75lのうち、チューブ75j〜75lが第1副室71d及び第2副室73dと連通している。これらにより、このサブクールコンデンサ69では、チューブ75a〜75iにより上方熱交換部69aが構成され、チューブ75j〜75lにより下方熱交換部69bが構成されている。なお、このサブクールコンデンサ69においても、チューブ75a等の本数は3本であれば、その本数を適宜設計することが可能である。また、上方熱交換部69a及び下方熱交換部69bをそれぞれ構成するチューブ75a等の本数も適宜設計することが可能である。
【0134】
レシーバ77には、流入路77a及び流出路77bが設けられている。また、レシーバ77の内部には、流入路77a及び流出路77bと連通する受液室77cと、隔壁77dとが形成されている。さらに、レシーバ77には、受液室77cに連通する挿通孔77eが形成されている。挿通孔77eには、シール材63cが設けられている。
【0135】
流入路77aは第2ヘッド73の流出口73eと接続されており、流出路77bは第2ヘッド73の流入口73fと接続されている。これにより、レシーバ77は第2ヘッド73と接続され、受液室77cと第2ヘッド室73aとが連通している。
【0136】
受液室77c内において、レシーバ77の内壁と隔壁77dとの間には、挿通孔77eを介して上記のピストン79が上下動可能に設けられている。ピストン79は、ピストンロッド79aと、ピストンロッド79aの一端側に接続されたピストンヘッド79bとを有している。ピストンヘッド79bには、ピストンロッド79a側に延びてピストンロッド79aの一部を覆うスカート79cが設けられている。このピストンヘッド79b及びスカート79cの周囲には図示しないシール材が設けられており、ピストンヘッド79bと、レシーバ77の内壁及び隔壁77dとの間における気密性が確保されている。これにより、受液室77c内において、レシーバ77の内壁と隔壁77dとの間でピストンロッド79a側となる空間を除く部分が収容室77fとなっている。
【0137】
図10に示すように、駆動装置81は制御装置11aと電気的に接続されている。これにより、制御装置11aは駆動装置81の駆動制御を行う。
【0138】
駆動装置81には、ピストン79の他端側、より具体的には、ピストンロッド79aの他端側が接続されている。この駆動装置81も実施例3における駆動装置61(図7参照)と同様、公知のギヤ機構及びモータによって構成されており、制御装置11aの制御を受けることで、図11に示す受液室77c内において、ピストン79を上下動させる。この廃熱利用装置における他の構成は実施例1、3の廃熱利用装置と同様である。
【0139】
この廃熱利用装置においても、実施例3の廃熱利用装置と同様、膨張機23において減圧された作動流体が配管65を経て、第1ヘッド室71aにおける第1主室71c内に流入する。この際、制御装置11aは電動ファン69cを作動させる。
【0140】
第1主室71c内に流入した作動流体は、同図の黒色実線矢印に示すように、第2ヘッド73側に向かって、上方熱交換部69a(チューブ75a〜75j)内を流通する。この際、サブクールコンデンサ69の周りの空気に対する放熱等により、同図のドットハッチングで示すように、インレット71e(配管65)から遠い位置では、冷却された作動流体が液化することとなる。このため、上方熱交換部69aにおいてドットハッチングで示された部分では、実質的な過冷却が行われることとなる。つまり、このサブクールコンデンサ69における上方熱交換部69aでは、コンデンサ部として機能する領域と、サブクール部として機能し得る領域とが混在することとなる。
【0141】
第2ヘッド73(第2主室73c)に流入した作動流体は、流入路77aを経て受液室77cの収容室77fに至る。この際、作動流体は、上方熱交換部69aを流通する場合と異なり全て液体状となる。そして、流出路77bから第2副室73dに流出した作動流体は、同図の白色実線矢印に示すように、下方熱交換部69b(チューブ75j〜75l)を流通することで過冷却されつつ、第1副室71dに至る。つまり、このサブクールコンデンサ69では、下方熱交換部69bがサブクール部として機能する。過冷却された作動流体は、第1ヘッド71から流出し、配管66を経て第2電動ポンプP2へ至る。
【0142】
ここで、エンジン5に対する出力要求が小さく、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値以下であると制御装置11aが判断した場合には、制御装置11aが駆動装置81を制御することで、ピストン79が受液室77c内の下方に移動する。これにより、受液室77cでは、収容室77fの容積が大きくなる。これにより、上方熱交換部69a側で液化した作動流体が受液室77cに多く流入する。この結果、上方熱交換部69aでは、コンデンサ部として機能する領域が大きくなる。このため、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値以下である(加圧空気に対する冷却要求量が小さい)と制御装置11aが判断した場合におけるサブクールコンデンサ69では、上方熱交換部69aの約半分以上の領域がコンデンサ部として放熱を行い、上方熱交換部69aの残りの領域と、下方熱交換部69bとで作動流体の過冷却を行う。つまり、上方熱交換部69aにおいて、サブクール部よりもコンデンサ部の割合が大きくなる。
【0143】
他方、エンジン5に対する出力要求が大きく、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合には、制御装置11aが駆動装置81を制御することで、図12に示すように、ピストン79を受液室77c内の上方に移動させる。これにより、受液室77cでは、収容室77fの容積が小さくなる。これにより、受液室77cが満液となって、溢れた液相の作動流体が上方熱交換部69aの一部分を占める。そして、この部分はサブクール部として機能することとなる。この結果、上方熱交換部69aでは、コンデンサ部として機能する領域よりも、実質的にサブクール部として機能し得る領域が大きくなる。このため、加圧空気に対する冷却要求検出値が閾値を超えた(加圧空気に対する冷却要求量が大きい)と制御装置11aが判断した場合におけるサブクールコンデンサ69では、上方熱交換部69aの約3割の領域でコンデンサ部としての放熱が行われ、上方熱交換部69aの約7割の領域と、下方熱交換部69bとで作動流体の過冷却が行われることとなる。つまり、上方熱交換部69aにおいて、コンデンサ部よりもサブクール部の割合が大きくなる。
【0144】
このように、この廃熱利用装置におけるサブクールコンデンサ69では、ピストン79の上下動によって収容室77fの容積を変更することが可能となっている。このため、このサブクールコンデンサ69では、上方熱交換部69aにおいて、コンデンサ部として機能する領域と、実質的にサブクール部として機能する領域、すなわち、チューブ75a〜75iのうち、コンデンサ部として機能する部分の割合と、サブクール部として機能する部分の割合とを変更することが可能となっている。これにより、この廃熱利用装置では、サブクール部として機能する下方熱交換部69b(チューブ75j〜75l)を維持しつつ、加圧空気に対する冷却要求検出値に応じて、上方熱交換部69aにおいて、コンデンサ部として機能する割合と、実質的にサブクール部として割合とを適宜変更することで、ランキンサイクル3において回収可能なエネルギーを多くしたり、エンジン5の出力を高くしたりすることが可能となっている。
【0145】
また、この廃熱利用装置においても、サブクールコンデンサ69の上方熱交換部69aにおいて、コンデンサ部として機能する割合と、実質的にサブクール部として割合とを変更するにあたり、制御装置11aは、加圧空気に対する冷却要求検出値と作動流体状態検出値とのうちで、大きい方に応じて駆動装置61を制御することで、配管66を流通する作動流体の圧力が飽和蒸気圧以下とならないようにする。この廃熱利用装置における他の作用効果は、実施例1、3の廃熱利用装置と同様である。
【0146】
したがって、実施例4の廃熱利用装置によっても、ランキンサイクル3aにおける電力の回収量の向上とエンジン5の出力向上とのどちらを優先させるかを選択可能である。
【0147】
(実施例5)
実施例5の廃熱利用装置も車両に搭載され、図13に示すように、車両の駆動系1bに用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3bと、温度センサ83a〜83dと、圧力センサ83eと、制御装置11bとを備えている。なお、制御装置11bが判断手段及び制御手段に相当している。
【0148】
駆動系1bは、内燃機関としてのエンジン2と、排気路としての配管4と、排気還流路としての配管6a、6bと、空気導入路としての配管12とを有している。配管6aには温度センサ83dが設けられており、配管6bには、温度センサ83aと可変バルブ85とが設けられている。また、この駆動系1bは、実施例1の廃熱利用装置における駆動系1aと同様に、ラジエータ9、電動ファン9c、配管18、19及び第1電動ポンプP1を有している。電動ファン9c及び第1電動ポンプP1は、制御装置11bと電気的に接続されている。
【0149】
エンジン2は、公知の水冷式ディーゼルエンジンである。エンジン2には、排気を排出する排気口2aと、後述する混合空気を吸入する吸気口2bとが形成されている。また、このエンジン2の内部には冷却液が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン2には、このウォータジャケットとそれぞれ連通する流出口2cと流入口2dとが形成されている。
【0150】
配管4は、一端側が排気口2aと接続されており、他端側が図示しないマフラと接続されている。これにより、配管4は、エンジン2で生じた排気をその内部に流通させることでマフラに導くことが可能となっている。
【0151】
配管6aは一端側が配管4と接続されており、他端側が後述する還流排気ボイラ22の第1流入口22aと接続されている。また、配管6bは、一端側が還流排気ボイラ22の第1流出口22bと接続されており、他端側がエンジン2の吸気口2bと接続されている。配管12は、一端側が配管6bと接続されており、他端側が図示しない車両のエアインテークと接続されている。これにより、配管12は、車外の空気をその内部に流通させることで配管6bに導くことが可能となっている。そして、排気還流路である配管6a、6bは、配管4を流通する排気の一部をその内部に流通させることで、吸気系流体である還流排気と空気との混合空気としてエンジン2に還流させることが可能となっている。
【0152】
可変バルブ85は制御装置11bと電気的に接続されている。この可変バルブ85は、その開度を調整することにより配管4から配管6aに流入する排気の流量を調整可能である。
【0153】
温度センサ83a及び温度センサ83dは、それぞれ制御装置11bと電気的に接続されている。温度センサ83aは、第1温度検出手段として機能し、還流排気ボイラ22の第1流出口22bを流出し、配管6bを流通する還流排気の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11bに向けて発信する。また、温度センサ83dは、第3温度検出手段として機能し、配管6aを流通する還流排気、つまり、還流排気ボイラ22の第1流入口22aに流入する前の還流排気の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11bに向けて発信する。
【0154】
配管18は一端側がエンジン2の流出口2cと接続されており、他端側がラジエータ9の流入口9aと接続されている。また、配管19は一端側がラジエータ9の流出口9bと接続されており、他端側がエンジン2の流入口2dと接続されている。
【0155】
ランキンサイクル3bは、実施例4の廃熱利用装置におけるランキンサイクル3aに設けられていた加圧空気ボイラ21に替えて、還流排気ボイラ22を設けることで構成されている。なお、第2電動ポンプP2、温度圧力センサ48、電動ファン69c及び駆動装置81は、それぞれ制御装置11bと電気的に接続されている。
【0156】
還流排気ボイラ22には、第1流入口22a及び第2流出口22bと、第2流入口22c及び第2流出口22dとが形成されている。また、還流排気ボイラ22内には、両端側でそれぞれ第1流入口22a及び第1流出口22bと連通する第1通路22eと、両端側でそれぞれ第2流入口22c及び第2流出口22dと連通する第2通路22fとが設けられている。この還流排気ボイラ22では、第1通路22e内の還流排気と、第2通路22f内の作動流体との熱交換により、還流排気の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0157】
第2電動ポンプP2と、還流排気ボイラ22の第2流入口22cとは配管31によって接続されている。また、還流排気ボイラ22の第2流出口22dと、膨張機23の流入口23aとは配管32によって接続されている。
【0158】
温度センサ83bは、配管31に設けられている。また、温度センサ83c及び圧力センサ83dは、共に配管66に設けられている。これらの温度センサ83b、温度センサ83c及び圧力センサ83dは、それぞれ制御装置11bと電気的に接続されている。
【0159】
温度センサ83bは、第2温度検出手段として機能し、配管31を流通する作動流体、つまり、還流排気ボイラ22の第2流入口22cに流入する前の作動流体の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11bに向けて発信する。
【0160】
温度センサ83dは、第4温度検出手段として機能し、配管66を流通する作動流体、つまり、第2電動ポンプP2に流入する前の作動流体の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11dに向けて発信する。
【0161】
圧力センサ83eは、配管66を流通する作動流体の圧力、つまり、膨張機23の下流から第2電動ポンプP2の上流までの作動流体の圧力(凝縮圧力)を検出するとともに、その検出値を制御装置11bに向けて発信する。なお、上記の温度センサ83dや圧力センサ83eは、温度圧力センサ48と共通化させても良い。
【0162】
制御装置11bは、電動ファン9c、69cの各作動制御を行うことで、冷却液又は作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行うとともに、第1、2電動ポンプP1、P2及び可変バルブ85の作動制御を行う。さらに、制御装置11bは、温度センサ83a〜83dが検出した還流排気の温度、作動流体の温度及び作動流体の凝縮圧力に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を冷却要求検出値として判断する。また、制御装置11bも作動流体における飽和蒸気圧を記憶している。そして、制御装置11bは、還流排気の冷却要求検出値に基づき、駆動装置81の駆動制御を行う。この際、制御装置11bは、配管66を流通する作動流体の圧力が飽和蒸気圧以下とならないように駆動装置81を制御する。この廃熱利用装置における他の構成は実施例4の廃熱利用装置と同様である。
【0163】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0164】
車両が駆動されることにより、駆動系1bではエンジン2が作動する。これにより、排気口2aから排出された排気が配管4を経てマフラから車外に排出される。この際、制御装置11bが可変バルブ85の開度を調整することで、配管4を流通する排気の一部が配管6aに流入する。配管6aに流入した排気は還流排気として、第1流入口22aから還流排気ボイラ22内に流入し、第1通路22e内を流通して、第1流出口22bから配管6bに至る。配管6bを流通する還流排気は、配管12を経た車外の空気と混合され、混合空気として吸気口2bよりエンジン2内に還流する。
【0165】
また、制御装置11bは、第1、2電動ポンプP1、P2及び電動ファン9c、69cをそれぞれ作動させる。これにより、駆動系1bでは、実施例1の廃熱利用装置における駆動系1aと同様に、エンジン2の冷却を行った冷却液がラジエータ9の周りの空気と熱交換されて冷却されるとともに、この冷却された冷却液がエンジン2内に流入してエンジン2の冷却を行う。
【0166】
さらに、ランキンサイクル3bでは、第2電動ポンプP2によって吐出された作動流体が配管31を経て、還流排気ボイラ22の第2流入口22cから第2通路22fに至る。そして、作動流体は還流排気ボイラ22において還流排気と熱交換される。この際、第1通路22eを流通する還流排気は約500°C程度の熱を有しているため、第2通路22fを流通する作動流体は、好適に加熱される。一方、第1通路22eを流通する還流排気は、第2通路22fを流通する作動流体に対して放熱を行うため、一定程度冷却された後、空気との混合空気としてエンジン2に至ることとなる。
【0167】
還流排気ボイラ22よって加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口22dから流出し、配管32を経て膨張機23の流入口23aから膨張機23内へ至る。そして、高温高圧の作動流体は膨張機23内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機23に接続された発電機は発電を行う。減圧された作動流体は、サブクールコンデンサ69を経て第2電動ポンプP2に吸入され、再び吐出される。
【0168】
また、上記の温度センサ83a〜83d及び圧力センサ83eから発信された検出値に基づき、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求検出値(冷却要求量)を判断する。
【0169】
ここで、温度センサ83aから発信された検出値が小さい場合には、還流排気ボイラ22における熱交換において還流排気が十分に冷却されていると判断できる。このため、制御装置11bは、還流排気に対する冷却要求検出値が閾値よりも小さい、すなわち、還流排気に対する冷却要求量が小さいと判断する。
【0170】
同様に、温度センサ83dから発信された検出値が小さい場合には、還流排気の温度が低いと判断できる。このため、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量が小さいと判断する。
【0171】
同様に、温度センサ83b、温度センサ83、及び圧力センサ83eからそれぞれ発信された検出値が小さい場合には、作動流体の温度が低く、還流排気ボイラ22での還流排気の冷却能力が高くなることから、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量が小さいと判断する。
【0172】
これらの場合、ランキンサイクル3bにおいて、還流排気ボイラ22に流入する作動流体の温度をさほど低くする必要がない。このため、制御装置11bは、実施例4の廃熱利用装置において、エンジン5の出力要求が小さいと制御装置11aが判断した場合と同様に、駆動装置81の駆動制御を行う(図11参照)。
【0173】
これにより、この廃熱利用装置においてもサブクールコンデンサ69の上方熱交換部69aにおいて、サブクール部よりもコンデンサ部の割合が大きくなり、ランキンサイクル3bにおいて回収可能な電力の量を多くすることが可能となる。
【0174】
他方、温度センサ83aから発信された検出値が大きい場合には、還流排気ボイラ22における還流排気の冷却が足りていないこととなる。このため、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量が大きい、すなわち、還流排気に対する冷却要求検出値が閾値を超えたと判断する。
【0175】
同様に、温度センサ83dから発信された検出値が大きい場合には、還流排気の温度が高く、還流排気ボイラ22での還流排気の冷却量が不足することが予測される。このため、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。
【0176】
同様に、温度センサ83b、温度センサ83c及び圧力センサ83eからそれぞれ発信された検出値が大きい場合には、サブクールコンデンサ69を経ても作動流体の温度が十分に低くなっていないこととなる。これは、作動流体が還流排気ボイラ22において作動流体が高温に加熱されている、すなわち、還流排気ボイラ22において作動流体を加熱する熱源となる還流排気が高温になっていると判断できる。このため、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。
【0177】
これらの場合、還流排気ボイラ22に流入する作動流体の温度をより低くする必要があるため、制御装置11bは、実施例4の廃熱利用装置において、エンジン5の出力要求が大きいと制御装置11aが判断した場合と同様に、駆動装置81の駆動制御を行う(図12参照)。
【0178】
これにより、この廃熱利用装置においてもサブクールコンデンサ69の上方熱交換部69aにおいて、コンデンサ部の割合がサブクール部よりも大きくなる。こうして、この廃熱利用装置では、還流排気の冷却要求量を満たすことが可能となり、混合空気に占める還流排気の割合を多くすることが可能となる。このため、この廃熱利用装置では、配管4を経て最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることが可能となっている。
【0179】
また、この廃熱利用装置では、温度センサ83a〜83dが検出した還流排気や作動流体の温度と、圧力センサ83dが検出した作動流体の凝縮圧力とに基づくことで、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量、ひいては、還流排気に対する冷却要求検出値を正確に判断することが可能となっている。他の作用効果は実施例1、3、4の廃熱利用装置と同様である。
【0180】
したがって、実施例5の廃熱利用装置によっても、ランキンサイクル3bにおける電力の回収量の向上とエンジン2の性能向上とのどちらを優先させるかを選択可能である。
【0181】
以上において、本発明を実施例1〜5に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0182】
例えば、実施例1、2の廃熱利用装置において、温度圧力センサ48を設け、配管30を流通する作動流体の圧力が飽和蒸気圧以下とならないように、制御装置11aは開閉弁V1〜V6の開閉制御を行っても良い。この際、制御装置11aは、冷却要求検出値と作動流体状態検出値とのうちで、大きい方に応じて、開閉弁V1〜V6の開閉制御を行うことも良い。
【0183】
また、実施例1〜3の廃熱利用装置について、加圧空気ボイラ21に替えてランキンサイクル3aに還流排気ボイラ22を設けることで、これらの廃熱利用装置を駆動系1bに用いても良い。
【0184】
さらに、実施例5の廃熱利用装置における制御装置11bについて、車両のアクセル開度を検知可能であるとともに、このアクセル開度に基づき、エンジン2に対する出力要求を検出可能に構成しても良い。そして、このエンジン2に対する出力要求に基づいて、制御装置11bが還流排気に対する冷却要求検出値(冷却要求量)を判断する構成としても良い。この場合、温度センサ83a〜83d及び圧力センサ83eが検出した検出値と、エンジン2に対する出力要求とを組み合わせて制御装置11bは還流排気に対する冷却要求検出値を判断しても良い。また、温度センサ83a〜83d及び圧力センサ83eを設けず、制御装置11bは、エンジン2に対する出力要求のみで還流排気に対する冷却要求検出値を判断しても良い。
【0185】
また、実施例5の廃熱利用装置において、温度センサ83a〜83d及び圧力センサ83eのうち、いずれか一つのみを備える構成でも良く、任意に選択した温度センサ83a〜83dや圧力センサ83eを組み合わせて構成しても良い。
【0186】
さらに、実施例1〜4の廃熱利用装置において、温度センサ83a〜83dや圧力センサ83eを備えることで、これらの検出値を基に、加圧空気に対する冷却要求検出値を判断する構成としても良い。この場合、温度センサ83a〜83d及び圧力センサ83eを全て備えても良く、いずれか一つのみを備えても良い。また、任意に選択した組み合わせでも良い。また、制御装置11aは、エンジン5に対する出力要求及び温度センサ83a〜83dや圧力センサ83eが検出した検出値に基づいて加圧空気に対する冷却要求検出値を判断しても良く、温度センサ83a〜83dや圧力センサ83eの検出値を基に加圧空気に対する冷却要求検出値を判断しても良い。
【0187】
また、実施例1〜5の廃熱利用装置における制御装置11a、11bについて、車速を検知し、この車速に基づいて加圧空気や還流排気に対する冷却要求検出値を判断する構成しても良い。ここで、車速が一定速度を超えていれば、第1〜3熱交換器25〜27、サブクールコンデンサ47、69において作動流体が好適に放熱されることとなる。これにより、配管30や配管66を流通する作動流体の温度が低下する。換言すれば、配管30や配管66を流通する作動流体の凝縮圧力が低くなる。この場合、加圧空気ボイラ21において加圧空気を好適に冷却することが可能となり、同様に、還流排気ボイラ22において還流排気を好適に冷却することが可能となる。このため、制御装置11a、11bは、加圧空気又は還流排気に対する冷却要求が小さいと判断することが可能となる。一方、車速が一定速度よりも遅ければ、第1〜3熱交換器25〜27、サブクールコンデンサ47、69における作動流体の冷却能力が低下することから、配管30や配管66を流通する作動流体の温度(凝縮圧力)が高くなる。この場合には、加圧空気ボイラ21において加圧空気を十分に冷却することができなくなり、同様に、還流排気ボイラ22において還流排気を十分に冷却することができなくなる。このため、制御装置11a、11bは、加圧空気や還流排気に対する冷却要求が大きいと判断することが可能となる。なお、制御装置11a、11bは、検出した車速のみで加圧空気や還流排気に対する冷却要求検出値を判断する他、車速と、エンジン2、5に対する出力要求や温度センサ83a〜83dや圧力センサ83eが検出した検出値とを組み合わせることで、加圧空気や還流排気に対する冷却要求検出値を判断しても良い。
【0188】
さらに、実施例1〜4の廃熱利用装置において、還流排気ボイラ21に加えて、還流排気ボイラ22を設ける構成としても良い。同様に、実施例5の廃熱利用装置において、還流排気ボイラ22に加えて、加圧空気ボイラ21を設ける構成としても良い。
【0189】
また、実施例1〜5の廃熱利用装置において、冷却液と作動流体とで熱交換が可能なボイラ、エンジン2、5に対する潤滑油と作動流体とで熱交換が可能なボイラ、還流排気以外の排気と作動流体とで熱交換が可能なボイラ等を設ける構成としても良い。この場合、冷却液等のエンジン2、5の廃熱等によっても作動流体を加熱できるため、より好適に作動流体を加熱することが可能となり、ランキンサイクル3a、3bにおいて回収可能な電力量を多くすることが可能となる。さらに、作動流体との熱交換によって冷却液等を冷却することが可能となるため、ラジエータ9等を小型化させてもエンジン2、5を好適に冷却させることが可能となる。
【0190】
さらに、実施例1、2の廃熱利用装置において、開閉弁V1、V2に替えて、第1熱交換器25の流出口25bから流出した作動流体について、配管34に流通させる場合と、配管36に流通させる場合とを切り替え可能な分岐弁を設けても良い。この場合、分岐弁は配管34と配管36との接続箇所に設けることが好ましい。同様に、開閉弁V3、V4に替えて、第2熱交換器26の流出口26bから流出した作動流体について、配管35に流通させる場合と、配管37に流通させる場合とを切り替え可能な分岐弁を設けても良い。この場合も分岐弁は配管35と配管37との接続箇所に設けることが好ましい。
【0191】
また、実施例1の廃熱利用装置において、開閉弁V5、V6に替えて、レシーバ29の流出口29bから流出した作動流体について、配管38に流通させる場合と、配管39に流通させる場合とを切り替え可能な分岐弁を設けても良い。この場合、分岐弁は配管38と配管39と配管41との接続箇所に設けることが好ましい。なお、これらの各分岐弁は制御手段11aと電気的に接続され、制御装置11aによって切り替え制御されることが好ましい。
【0192】
さらに、実施例4の廃熱利用装置において、ピストン79及び駆動装置81に替えて、圧力や熱等によって収容室77fの容積を変更させる容積変更手段(切替手段)を採用しても良い。この場合、例えば、ダイヤフラムやベローズ又はサーモスタット等を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は車両等に利用可能である。
【符号の説明】
【0194】
1a、1b…駆動系
2…エンジン(内燃機関)
3a、3b…ランキンサイクル
5…エンジン(内燃機関)
6a、6b…配管(排気還流路)
7…ターボチャージャ(過給器)
11a…制御装置(判断手段、制御手段、出力要求検出手段)
11b…制御装置(判断手段、制御手段)
21…加圧空気ボイラ
22…還流排気ボイラ
23…膨張機
25…第1熱交換器(熱交換器)
26…第2熱交換器(熱交換器)
27…第3熱交換器(熱交換器)
29…レシーバ
30〜33、40、41…配管
34…配管(切替手段、第1接続管)
35…配管(切替手段、第2接続管)
36…配管(切替手段、第1分岐管)
37…配管(切替手段、第2分岐管)
38…配管(切替手段、第1帰還管)
39…配管(切替手段、第2帰還管)
43…第1レシーバ(レシーバ)
45…第2レシーバ(レシーバ)
47…サブクールコンデンサ
48…温度圧力センサ(作動流体状態検出手段)
49…第1ヘッド
49a…第1ヘッド室
49c…第1主室
49d…第1副室
51…第2ヘッド
51a…第2ヘッド室
51c…第2主室
51d…第2副室
53a〜53j…チューブ
55…第1ピストン(切替手段)
57…第2ピストン(切替手段)
59…レシーバ
59c…受液室
59d…収容室
61…駆動装置(駆動手段、切替手段)
61…駆動装置(駆動手段、切替手段)
65、66…配管
71…第1ヘッド
71a…第1ヘッド室
73…第2ヘッド
73a…第2ヘッド室
75a〜75l…チューブ
77…レシーバ
77c…受液室
77d…収容室
79…ピストン(容積変更手段、切替手段)
81…駆動装置(容積変更手段、切替手段)
83a…温度センサ(第1温度検出手段)
83b…温度センサ(第2温度検出手段)
83c…温度センサ(第4温度検出手段)
83d…温度センサ(第3温度検出手段)
83e…圧力センサ(圧力検出手段)
P2…第2電動ポンプ(ポンプ)
V1…開閉弁(切替手段、第1分岐開閉弁)
V2…開閉弁(切替手段、第1接続開閉弁)
V3…開閉弁(切替手段、第2分岐開閉弁)
V4…開閉弁(切替手段、第2接続開閉弁)
V5…開閉弁(切替手段、第1帰還開閉弁)
V6…開閉弁(切替手段、第2帰還開閉弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えた廃熱利用装置において、
前記ランキンサイクルは、前記作動流体を配管に沿って循環させるポンプと、
該ポンプの下流に該配管によって接続され、前記内燃機関に対して冷却されつつ吸気される吸気系流体と前記作動流体との間で熱交換を行うボイラと、
該ボイラの下流に該配管によって接続され、該作動流体を膨張させる膨張機と、
該膨張機の下流に該配管によって接続されているとともに自己の下流が該ポンプに該配管によって接続され、該作動流体を凝縮するとともに過冷却する熱交換手段とを備え、
該熱交換手段は、該作動流体を凝縮するコンデンサ部と、
該コンデンサ部の下流に接続され、液体状の該作動流体を貯留するレシーバと、
該レシーバの下流に接続され、液体状の該作動流体を過冷却するサブクール部と、
コンデンサ部及び該サブクール部の割合を変更する切替手段とを有し、
前記吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、
該判断手段が判断した該冷却要求量に応じて、該切替手段の制御を行う制御手段とを備えていることを特徴とする廃熱利用装置。
【請求項2】
前記熱交換手段は、前記膨張機の下流に前記配管によって直列に接続され、自己の下流が前記ポンプに該配管によって接続された複数の熱交換器と、少なくとも一つの前記レシーバとを有し、
前記切替手段は、該レシーバをいずれの該熱交換器の下流の該配管に接続するかを切り替え可能である請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項3】
各前記熱交換器は、前記膨張機の下流に前記配管によって接続された第1熱交換器と、該第1熱交換器の下流に該配管の一部である第1接続管によって接続された第2熱交換器と、該第2熱交換器の下流に該配管の一部である第2接続管によって接続された第3熱交換器とからなり、
前記切替手段は、前記判断手段が判断した前記冷却要求量に応じて、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で該レシーバを前記配管に接続させる場合と、該第2熱交換器と前記第3熱交換器との間で該レシーバを該配管に接続させる場合とを切り替え可能である請求項2記載の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記レシーバは一つであり、
前記切替手段は、前記第1接続管から分岐し、該レシーバの上流に接続される第1分岐管と、前記第2接続管から分岐し、該レシーバの上流に接続される第2分岐管と、該第1分岐管より下流で該第1接続管に帰還し、該レシーバの下流に接続された第1帰還管と、該第2分岐管より下流で該第2接続管に帰還し、該レシーバの下流に接続された第2帰還管と、前記作動流体が前記第2熱交換器に流入する場合と該第1分岐管に流入する場合とを切替可能な第1切替弁と、該作動流体が前記第3熱交換器に流入する場合と該第2分岐管に流入する場合とを切替可能な第2切替弁と、該作動流体が該第1帰還管に流入する場合と該第2帰還管に流入する場合とを切替可能な第3切替弁とを有し、
前記制御手段は、該第1切替弁、該第2切替弁及び該第3切替弁を制御可能である請求項3記載の廃熱利用装置。
【請求項5】
前記第1切替弁は、前記第1分岐管を開閉する第1分岐開閉弁と、前記第1接続管を開閉する第1接続開閉弁とからなり、
前記第2切替弁は、前記第2分岐管を開閉する第2分岐開閉弁と、前記第2接続管を開閉する第2接続開閉弁とからなり、
前記第3切替弁は、前記第1帰還管を開閉する第1帰還開閉弁と、前記第2帰還管を開閉する第2帰還開閉弁とからなる請求項4記載の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記レシーバは、第1レシーバ及び第2レシーバからなり、
前記切替手段は、前記第1接続管から分岐し、該第1レシーバの上流に接続される第1分岐管と、前記第2接続管から分岐し、該第2レシーバの上流に接続される第2分岐管と、該第1分岐管より下流で該第1接続管に帰還し、該第1レシーバの下流に接続された第1帰還管と、該第2分岐管より下流で該第2接続管に帰還し、該第2レシーバの下流に接続された第2帰還管と、前記作動流体が前記第2熱交換器に流入する場合と該第1分岐管に流入する場合とを切替可能な第1切替弁と、該作動流体が前記第3熱交換器に流入する場合と該第2分岐管に流入する場合とを切替可能な第2切替弁とを有し、
前記制御手段は、該第1切替弁及び該第2切替弁を制御可能である請求項3記載の廃熱利用装置。
【請求項7】
前記第1切替弁は、前記第1分岐管を開閉する第1分岐開閉弁と、前記第1接続管を開閉する第1接続開閉弁とからなり、
前記第2切替弁は、前記第2分岐管を開閉する第2分岐開閉弁と、前記第2接続管を開閉する第2接続開閉弁とからなる請求項6記載の廃熱利用装置。
【請求項8】
前記熱交換手段はサブクールコンデンサを有し、
該サブクールコンデンサは、内部に第1ヘッド室が形成された第1ヘッドと、
内部に第2ヘッド室が形成された第2ヘッドと、
該第1ヘッド室と該第2ヘッド室とを連通するように該第1ヘッドと該第2ヘッドとに接続される3本以上のチューブと、
該第1ヘッド室内に設けられ、該第1ヘッド室を第1主室と第1副室とに区画する第1ピストンと、
該第2ヘッド室内に設けられ、該第2ヘッド室を第2主室と第2副室とに区画する第2ピストンと、
該第1ピストン及び該第2ピストンを駆動可能な駆動手段と、
該第1主室又は該第2主室と該第1副室又は該第2副室とに連通し、収容室が形成された前記レシーバとを有し、
該第1ピストン、該第2ピストン及び該駆動手段が前記切替手段とされている請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項9】
前記熱交換手段は、内部に第1ヘッド室が形成された第1ヘッドと、
内部に第2ヘッド室が形成された第2ヘッドと、
該第1ヘッド室と該第2ヘッド室とを連通するように該第1ヘッドと該第2ヘッドとに接続される3本以上のチューブと、
該第2ヘッド室に連通し、収容室が形成された前記レシーバと、
該収容室の容積を変更可能な容積変更手段とを有し、
該容積変更手段が前記切替手段とされている請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項10】
前記内燃機関に対する出力要求を検出可能な出力要求検出手段を備え、
前記判断手段は、該出力要求検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至9のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項11】
前記ボイラから流出する前記吸気系流体の温度を検出可能な第1温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第1温度検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至9のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項12】
前記ボイラに流入する前記作動流体の温度を検出可能な第2温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第2温度検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至9のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項13】
前記ボイラに流入する前記吸気系流体の温度を検出可能な第3温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第3温度検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至9のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項14】
前記ポンプに流入する前記作動流体の温度を検出可能な第4温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第4温度検出手段が検出した検出値に基づき、前記吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至9のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項15】
前記膨張機の下流から前記ポンプの上流までの前記作動流体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え、
前記判断手段は、該圧力検出手段が検出した検出値に基づき、前記吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至9のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項16】
前記ポンプに流入する前記作動流体の温度及び圧力を検出可能な作動流体状態検出手段を備え、
前記制御手段は、該作動流体状態検出手段が検出した作動流体状態検出値に基づき、前記ポンプにおいて該作動流体がキャビテーションを生じないように前記切替手段の制御を行う請求項1乃至9のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項17】
前記制御手段は、前記冷却要求量に相当する冷却要求検出値を判断するとともに、該冷却要求検出値と前記作動流体状態検出値とのうちで大きい方に応じて、前記切替手段の制御を行う請求項16記載の廃熱利用装置。
【請求項18】
前記駆動系は、前記内燃機関に対して前記吸気系流体である加圧空気を供給する過給器を有し、
前記ボイラは、該加圧空気と前記作動流体との間で熱交換を行う加圧空気ボイラである請求項1乃至17のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項19】
前記駆動系は、前記内燃機関で生じた排気の一部を前記吸気系流体である還流排気として該内燃機関に還流させる排気還流路を有し、
前記ボイとラは、該還流排気と前記作動流体との間で熱交換を行う還流排気ボイラである請求項1乃至17のいずれか1項記載の廃熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−79641(P2013−79641A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126545(P2012−126545)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】