説明

建設機械

【課題】 部品点数を増大することなくフロア部材の乗降口の位置に滑止め部を設け、組立作業性、生産性等を向上する。
【解決手段】 フロア部材6の左側を覆うサイドカバー18を設け、このサイドカバー18には、乗降口10を通って運転席11に乗り降りするときに掛けた足が滑るのを防止する滑止め部18Cを一体成形する構成としている。従って、サイドカバー18をフロア部材6に取付ける作業だけで滑止め部18Cを乗降口10の位置に配設することができる。これにより、ボルト止め、溶接、接着等の取付作業を省略することができ、また部品点数の増大も抑えることができる。また、サイドカバー18は、樹脂成形加工を用いて容易に成形することができる。また、繊維強化プラスチック等を用いることにより、耐久性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば小型な油圧ショベル、油圧クレーン等として用いて好適な建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と該運転席の前側に位置してオペレータの足を乗せる足乗せ板とを有するフロア部材とを備えている。また、フロア部材の足乗せ板の左,右方向のうち、例えば運転席が載置された左側の端部は、オペレータがフロア部材に乗降するための乗降口となっている。
【0004】
そして、オペレータが運転席に搭乗する場合には、オペレータは、例えば下部走行体を構成する履帯上に乗り、この履帯上から乗降口に足を掛けてフロア部材の足乗せ板上に乗り込むようにしている。
【0005】
ここで、油圧ショベルは、泥濘地等で作業を行うことがあり、このような作業現場ではオペレータの靴底にぬかるんだ泥が付着する。これにより、オペレータが運転席に乗り降りするときに掛けた足が滑ることがある。
【0006】
そこで、油圧ショベルには、フロア部材から1段下がった位置に乗降するときに足を掛けるステップを設け、このステップには掛けた足が滑らないように滑止め手段を設ける構成としたものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−291069号公報
【特許文献2】特開2004−124511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献1,2の発明による油圧ショベルは、フロア部材から1段下がった位置に乗降時に足を掛ける中間のステップを設け、このステップに滑止め手段を設ける構成としている。このため、乗降口とは異なる位置にステップを別個に設け、このステップに滑止め手段を設ける必要があるから、滑止め手段を設けるために必要となる部品の数が増大してしまい、組立作業性の低下、製造コストの増大を招いてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、部品点数を増大することなくフロア部材の乗降口に滑止め部を設けることにより、組立作業性等を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と該運転席の前側に位置してオペレータの足を乗せる足乗せ板とを有するフロア部材とを備え、該フロア部材の足乗せ板の左,右方向の少なくとも一側端部が該フロア部材に乗降するための乗降口としている。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記フロア部材には、前記乗降口が位置する側面部位を覆う外装カバーを設け、該外装カバーには、前記フロア部材に乗降するときに足の滑りを止めるための滑止め部を一体成形する構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明によると、前記外装カバーは、前記フロア部材の側面を覆う側面板部と、該側面板部の上面に形成されフロア部材の足乗せ板の端縁に沿って延びる上面部と、該上面部に沿って凹凸状に設けられた前記滑止め部とにより形成し、前記外装カバーは樹脂材料を用いて成形したことにある。
【0013】
請求項3の発明によると、前記外装カバーは、前記フロア部材に対して着脱可能に取付ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、フロア部材に乗降するときには、乗降口の位置に設けた外装カバーに足を掛けることになる。この外装カバーには滑止め部を設けているから、足を滑らすことなくフロア部材に乗り降りすることができる。この場合、滑止め部は外装カバーに一体成形しているから、外装カバーを成形するときとほぼ同じ成形加工で滑止め部が設けられた外装カバーを成形することができる。この結果、部品点数の増大を抑えつつ、滑止め部の取付作業を省略できるから、乗降口に滑止め部を簡単に設けることができ、組立作業性の向上、生産コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、側面板部、上面部および滑止め部からなる外装カバーを樹脂材料を用いて成形することにより、外装カバーに滑止め部を一体成形することができる。これにより、樹脂材料を用いて簡単かつ安価に製造することができる。また、樹脂材料からなる滑止め部は、錆びる心配がない上に、形状を容易に変更することができ最適な滑止め効果を得ることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、フロア部材に外装カバーを取付けることにより、乗降口の位置に滑止め部を簡単に設けることができる。一方、外装カバーを取外すことにより、容易に交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、オフセット式の作業装置を備えたキャノピ仕様の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1において、1は建設機械としてのキャノピ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側で、左,右の中間位置に俯仰動可能に設けられたオフセット式の作業装置4とにより大略構成されている。また、下部走行体2は、駆動輪2Aと遊動輪2Bとの間に履帯2Cを巻回してなるクローラ式の走行体として構成されている。
【0019】
また、作業装置4は、基端側が後述する旋回フレーム5の前部側に俯仰動可能に支持されたロアブーム4Aと、該ロアブーム4Aの先端に左,右方向に揺動可能に連結されたアッパブーム4Bと、該アッパブーム4Bの先端に左,右方向に揺動可能に連結されたアーム支持部材4Cと、該アーム支持部材4Cの先端に上,下方向に回動可能に連結されたアーム4Dと、該アーム4Dの先端に回動可能に取付けられたバケット4Eと、ブームシリンダ4F、アームシリンダ4G、バケットシリンダ4Hとにより大略構成されている。また、ロアブーム4A先端部とアーム支持部材4Cとの間には、ロアブーム4Aに対してアーム4Dを常時平行に保持するリンク機構4Jが設けられている。
【0020】
そして、作業装置4は、アーム4Dをロアブーム4Aに対して左,右方向に平行移動(オフセット)させ、この状態でロアブーム4Aを俯仰動させつつアーム4D、バケット4Eを回動させることにより、側溝等の掘削作業を行うことができる。
【0021】
一方、上部旋回体3は、下部走行体2の車幅内でほぼ旋回できるように、上方からみて略円形状に形成されている。また、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、エンジン(図示せず)、フロア部材6、運転席11、外装カバー17、サイドカバー18等により大略構成されている。
【0022】
5は支持構造体をなすほぼ円形状の旋回フレームで、該旋回フレーム5の後部側にはエンジンが左,右方向に延在する横置き状態で搭載されている。また、旋回フレーム5には、制御弁、作動油タンク、燃料タンク(いずれも図示せず)等が設けられている。
【0023】
6はフロア部材を示し、該フロア部材6は、エンジンの前側に位置して旋回フレーム5上の左側に設けられている。このフロア部材6は、前側部位に設けられた後述のフロア前支持部15を支持点として後側がチルトアップ、チルトダウン可能(傾転可能)に構成されている。また、フロア部材6は、図3に示す如く、後述の足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8、運転席台座9等により大略構成されている。
【0024】
7は後述する運転席11の前側に設けられた足乗せ板を示し、該足乗せ板7は、運転席11に着座したオペレータの足を乗せるもので、その足元に敷設されている。また、足乗せ板7は、左,右方向に長尺なほぼ長方形状に板体からなり、その左側端縁は、図2、図3に示すように円弧状に形成されている。また、足乗せ板7の左側端縁には、後部に位置して後側取付板7Aが設けられ、該後側取付板7Aにはねじ孔7A1が形成されている。さらに、足乗せ板7の前,後方向の中間位置には、L字状の中間ブラケット7Bが設けられ、該中間ブラケット7Bにはねじ孔7B1が形成されている。
【0025】
8は足乗せ板7の前端に取付けられたレバー・ペダル取付板を示している。このレバー・ペダル取付板8は、左,右方向に延びる板体として形成され、その左側は足乗せ板7の左側の円弧に連続するように前側に向けて右側に傾斜している。また、レバー・ペダル取付板8には、後述の走行用レバー・ペダル12等が取付けられている。
【0026】
また、レバー・ペダル取付板8の前端には、前側建屋取付板8Aが取付けられ、該前側建屋取付板8Aは、後述のフロア前支持部15を介して旋回フレーム5の前側に回動可能に支持されている。一方、前側建屋取付板8Aの上側には後述するキャノピ14の前側部位が取付けられる。さらに、前側建屋取付板8Aの左端部側には、下向きに延びる前側ブラケット8Bが設けられ、該前側ブラケット8Bにはねじ孔8B1が形成されている。
【0027】
9は足乗せ板7の後側に設けられ、運転席11を支持する運転席台座を示している。この運転席台座9は、その下側にエンジン等を入り込ませるために、後側が高くなるステップ状に形成されている。そして、運転席台座9の後側は後側建屋取付板9Aとなり、該後側建屋取付板9Aには後述のキャノピ14の後側部位が取付けられる。
【0028】
一方、フロア部材6の左側に設けられた足乗せ板7の後側取付板7A、中間ブラケット7B、レバー・ペダル取付板8の前側ブラケット8Bには、後述するサイドカバー18が着脱可能にボルト止めされる。
【0029】
ここで、10はフロア部材6の足乗せ板7の左側端部に設けられた乗降口を示している。この乗降口10は、オペレータがフロア部材6に乗り込むときに最初に足を掛け、フロア部材6から降りるときに最後に足を掛ける足乗せ板7の出入口を構成している。詳しく述べると、乗降口10は、運転席11と走行用レバー・ペダル12との間でフロア部材6の足乗せ板7上の左側端部に画成されている。
【0030】
11はフロア部材6の運転席台座9上に設けられた運転席(図1、図2参照)で、該運転席11は、オペレータが着座するものである。また、運転席11の前側には、走行用レバー・ペダル12が配設され、運転席11の左,右両側には、作業用レバー13(左側のみ図示)が配設されている。
【0031】
14はフロア部材6上に設けられた建屋としてのキャノピで、該キャノピ14は、運転席11の上方および右側方を覆うものである。また、キャノピ14は、運転席11を右側方から覆う右側面部14Aと、運転席11を上方から覆う上面部14Bとにより大略構成されている。また、キャノピ14は、右前ピラー14C、左後ピラー14D、右後ピラー(図示せず)を有する3柱キャノピとして構成されている。
【0032】
そして、キャノピ14は、右前ピラー14Cがフロア部材6を構成するレバー・ペダル取付板8の前側建屋取付板8Aに取付けられ、左後ピラー14D、右後ピラーが運転席台座9の後側建屋取付板9Aに取付けられている。
【0033】
15はフロア部材6の前部に設けられた2組のフロア前支持部(図3参照)を示している。このフロア前支持部15は、旋回フレーム5の前端部にフロア部材6の前側部位を傾転可能に支持するもので、左,右方向に離間して配設されている。また、2組のフロア前支持部15は、旋回フレーム5の前部に取付けられる支持台15Aと、該支持台15Aを挟むようにレバー・ペダル取付板8の前側建屋取付板8Aに取付けられた2枚の取付ブラケット15Bと、前記支持台15Aに各取付ブラケット15Bを回動可能に連結するピン15Cとにより大略構成されている。
【0034】
これにより、各フロア前支持部15は、そのピン15Cを支持点としてフロア部材6、キャノピ14を上側ないし前側にチルトアップさせたり、下側ないし後側にチルトダウンさせたりすることができる。
【0035】
16は旋回フレーム5の後端部に設けられたカウンタウエイトで(図1参照)、該カウンタウエイト16は、作業装置4との重量バランスをとるものである。また、カウンタウエイト16は、円弧状に湾曲して左,右方向に延びる凸湾曲形状をなし、後述の外装カバー17等と一緒にエンジン等の機器類を覆っている。
【0036】
17は上部旋回体3の周囲等に設けられた外装カバーで、該外装カバー17は、カウンタウエイト16の左前側を覆う左後カバー17Aと、該左後カバー17Aの前側下部から旋回フレーム5の左側を覆う左スカートカバー17Bと、エンジンの後側を覆うエンジンカバー17Cと、旋回フレーム5の右側を覆う右スカートカバーと、右側の作動油タンク、燃料タンク等を覆うタンクカバー(いずれも図示せず)と、後述のサイドカバー18とを含んで構成されている。
【0037】
次に、18は乗降口10が位置するフロア部材6の左側に設けられたサイドカバーで、該サイドカバー18は、外装カバー17の一部をなしている。また、サイドカバー18は、図1、図2に示すように、フロア部材6の足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8の左側が外部に露出しないように覆い隠す化粧カバーを構成している。これにより、サイドカバー18は、図4、図5に示すように、円弧状に形成された足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8の左側端縁に沿うように円弧状に湾曲して形成されている。また、サイドカバー18は、運転席11に乗降するときに踏み付けられる乗降口10の位置に配置されるものであるから、オペレータに繰返し踏まれたとしても破損し難い高強度な材料、例えばガラス繊維入りポリプロピレン等の繊維強化プラスチック等を用いて成形されている。
【0038】
そして、サイドカバー18は、フロア部材6の足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8の左側面に沿って円弧状に湾曲し該足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8の左側面を覆う側面板部18Aと、該側面板部18Aの上面から足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8上に被さるように右側(円弧の内側)延びた狭幅な上面部18Bと、該上面部18Bに沿って凹凸状に設けられた滑止め部18Cとにより大略構成されている。
【0039】
また、サイドカバー18の側面板部18Aには、足乗せ板7の後側取付板7Aに設けられたねじ孔7A1に対応する後側位置に円形状に凹陥したねじ座18Dが形成されている。また、側面板部18Aの中間には、足乗せ板7の中間ブラケット7Bに設けられたねじ孔7B1に対応する位置に円形状に凹陥したねじ座18Eが形成されている。さらに、側面板部18Aの前端部には、レバー・ペダル取付板8の前側ブラケット8Bに設けられたねじ孔8B1に対応する位置にコ字状に凹陥したねじ座18Fが形成されている。
【0040】
さらに、サイドカバー18の上面部18Bに一体的に設けられた滑止め部18Cは、乗降口10を通ってフロア部材6に乗り降りするときに掛けた足が泥水等により滑るのを防止するものである。従って、滑止め部18Cは、乗降するときに自然に足が掛かる位置、即ち、サイドカバー18の長さ方向の途中位置で乗降口10に対応した前,後方向の範囲に配設されている。
【0041】
そして、滑止め部18Cは、サイドカバー18の上面部18Bに沿って凹凸状に設けられている。即ち、滑止め部18Cは、上面部18Bに沿って列設された複数個の凸部18C1と、該各凸部18C1間に配置された凹部18C2とにより構成されている。これにより、滑止め部18Cは、靴底が濡れて滑りやすい場合でも、各凸部18C1を靴底に係合させることにより掛けた足が滑るのを防止することができる。また、複数個の凸部18C1は、当該各凸部18C1間に凹部18C2を有することにより、横滑りしようとする靴底にも係合することができる。
【0042】
ここで、サイドカバー18は、側面板部18A、上面部18Bおよび滑止め部18Cを樹脂材料を用いて一体成形することにより形成しているから、例えば滑止め部を別個に設けた場合に比較し、ボルト止め、溶接、接着等の取付作業を省略することができる。また、樹脂材料を用いて成形した滑止め部18Cは、金属材料から形成した場合のように錆びが発生することがない。
【0043】
そして、サイドカバー18をフロア部材6に取付ける場合には、図2、図3に示すように、サイドカバー18をフロア部材6を構成する足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8の左側端縁に沿って配置する。この状態で、サイドカバー18のねじ座18Dに挿通したボルト19を足乗せ板7の後側取付板7Aに設けられたねじ孔7A1に螺着し、ねじ座18Eに挿通したボルト19を中間ブラケット7Bのねじ孔7B1に螺着し、ねじ座18Fに挿通したボルト19をレバー・ペダル取付板8の前側ブラケット8Bに設けられたねじ孔7B1に螺着する。
【0044】
これにより、サイドカバー18は、フロア部材6の左側の側面部位を覆う位置に取付けることができ、該サイドカバー18の滑止め部18Cは、乗降口10の位置となる足乗せ板7の左側端部に配設することができる。
【0045】
なお、図2において、20はフロア部材6のレバー・ペダル取付板8の前部に取付けられたフロントカバーで、該フロントカバー20は、フロア前支持部15等を覆い隠すものである。また、21は足乗せ板7、レバー・ペダル取付板8を上側から覆うように設けられたフロアマットを示している。
【0046】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0047】
まず、フロア部材6に乗り込む場合に、オペレータは、乗降口10が設けられた上部旋回体3の左側に位置して下部走行体2の履帯2C上に乗り、この履帯2C上からフロア部材6の足乗せ板7上に乗り込んで運転席11に着座する。このときに、オペレータは、乗降口10を通る自然な乗降動作の中でフロア部材6の左側に設けられたサイドカバー18に足を掛ける。このサイドカバー18には、凹凸状の滑止め部18Cを設けているから、オペレータは、滑止め部18Cに靴底を係合させることにより、足を滑らせることなくフロア部材6上に乗り込むことができる。また、フロア部材6から足を滑らせることなく降りることもできる。
【0048】
そして、運転席11に着座したオペレータは、走行用レバー・ペダル12を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業用レバー13を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、フロア部材6の左側を覆うサイドカバー18を設け、該サイドカバー18には、乗降口10を通って運転席11に乗り降りするときに掛けた足が滑るのを防止する滑止め部18Cを一体成形する構成としている。従って、サイドカバー18をフロア部材6に取付ける作業だけで滑止め部18Cを乗降口10の位置に配設することができる。
【0050】
この結果、例えば滑止め部を別個に設けた場合に比較し、ボルト止め、溶接、接着等の取付作業を省略することができ、また部品点数の増大も抑えることができるから、組立作業性の向上、生産コストの低減を図ることができる。
【0051】
また、側面板部18A、上面部18Bおよび滑止め部18Cからなるサイドカバー18は、樹脂成形により形成しているから、樹脂成形加工を用いて容易に成形することができる。また、樹脂材料として繊維強化プラスチック等を用いることにより、オペレータに繰返し踏まれたとしても破損し難い強度を得ることができ、耐久性を向上することができる。しかも、樹脂材料からなる滑止め部18Cは、金属材料から形成した場合のように錆びが発生することがなく、見栄えを良好にすることができる。また、形状を容易に変更することができ最適な滑止め効果を得ることができる。
【0052】
さらに、サイドカバー18は、フロア部材6に対してボルト19を用いて着脱可能に取付ける構成としているから、サイドカバー18をフロア部材6に対して簡単に取付けることができる。また、ボルト19を緩めることにより、サイドカバー18を容易に交換することができる。
【0053】
なお、実施の形態では、建設機械としてオフセット式の作業装置4を備えたオフセット式油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図6に示す変形例による油圧ショベル31のように、スイング式の作業装置32を備えたスイング式油圧ショベルにも適用することができる。
【0054】
即ち、スイング式油圧ショベル31に設けられた作業装置32は、旋回フレーム33の先端部に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト32Aと、該スイングポスト32Aに俯仰動可能に取付けられたブーム32Bと、該ブーム32Bに取付けられたアーム32Cと、該アーム32Cに取付けられたバケット32Dと、各シリンダ32E,32F,32Gとにより大略構成されている。
【0055】
また、実施の形態では、サイドカバー18は、繊維強化プラスチック等の樹脂材料を用いた成形加工によって形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばサイドカバーをアルミニウム合金等の金属材料を用いて形成する構成としてもよい。
【0056】
また、実施の形態では、フロア部材6の足乗せ板7の左側端部を該フロア部材6に乗降するための乗降口10とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばフロア部材の右側に乗降口を設けた油圧ショベルに適用する構成としてもよい。また、特開平4−30032号公報に示すように、フロア部材の左,右両側に乗降口を設けた油圧ショベルに適用してもよい。
【0057】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベル、油圧クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態によるオフセット式油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】フロア部材、サイドカバー等を示す要部拡大の斜視図である。
【図3】フロア部材とサイドカバーとを分解した状態で示す分解斜視図である。
【図4】図3中のサイドカバーを単体で示す拡大斜視図である。
【図5】サイドカバーを単体で示す平面図である。
【図6】本発明の変形例によるスイング式油圧ショベルを示す正面図である。
【符号の説明】
【0059】
1,31 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4,32 作業装置
5,33 旋回フレーム
6 フロア部材
7 足乗せ板
10 乗降口
11 運転席
17 外装カバー
18 サイドカバー(外装カバー)
18A 側面板部
18B 上面部
18C 滑止め部
18C1 凸部
18C2 凹部
19 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と該運転席の前側に位置してオペレータの足を乗せる足乗せ板とを有するフロア部材とを備え、該フロア部材の足乗せ板の左,右方向の少なくとも一側端部が該フロア部材に乗降するための乗降口となった建設機械において、
前記フロア部材には、前記乗降口が位置する側面部位を覆う外装カバーを設け、
該外装カバーには、前記フロア部材に乗降するときに足の滑りを止めるための滑止め部を一体成形する構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記外装カバーは、前記フロア部材の側面を覆う側面板部と、該側面板部の上面に形成されフロア部材の足乗せ板の端縁に沿って延びる上面部と、該上面部に沿って凹凸状に設けられた前記滑止め部とにより形成し、前記外装カバーは樹脂材料を用いて成形してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記外装カバーは、前記フロア部材に対して着脱可能に取付ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−62598(P2007−62598A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252170(P2005−252170)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】