説明

建造物の冷却材及び冷却方法

【課題】
水が蒸発するときに奪う気化熱を利用し、建造物を冷却するより安価で、漏水の危険性が少なく、水平面、傾斜面および垂直面に利用できる適用範囲が広い建造物冷却材の開発が課題である。これら性質を持つ建造物冷却材を開発するために、冷却材全体への水の分配が均一にできる材料の開発とその応用技術の開発が課題である。
【解決手段】
上記課題を、吸水性、浸潤性と飽和透水性を増強した、屋上面はもちろんのこと、傾斜面や壁面に利用できる建造物冷却材の開発と、温帯地方や熱帯地方にかかわらず省エネに有効な冷却に優れた効果を発揮する工法の開発により解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の冷却材及び冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の省エネのため、様々な対策が採られている。たとえば、反射率の高い塗料で塗装することにより、太陽熱を反射させる方法がある。この方法は熱線の入射量を減らす効果はあるが太陽熱により温まった物体を冷ます効果はない。
【0003】
水の気化熱で建築物や舗装面を冷却する方法として打ち水、保水ブロックあるいは屋上緑化がある。打ち水は効果が高いとして試みられているが与えた水が流れ去るため、多量の水を必要とする上効果が持続しない、保水ブロックは保水量が少ない、屋上緑化は重量が重く植栽管理が必要であるという欠点がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−166210号公報の保水性舗装構造および保水機能は舗装本体の下部および側面下部を不透水層に覆われていることを記載している。しかし、使用する骨材が砂や砂利などの殆んど間隙を含んでいない材料であるため空隙率が10〜30%と少ないため、夏季には貯水量が少なく冷却持続期間が短いという欠点がある。給水するにしてもブロックの浸潤性が良くないため、均一に敷設した給水チューブや散水による表面全面への給水あるいは下部の貯水部への給水になるため施工が煩雑になる。
【0005】
【特許文献2】特願2005−299276号は、水だめを作りその内部に間隙が多い素材を充填し大量の水を貯水する方法であった。この方法は貯水量が多いものの、水だめを作るため工事が煩雑になる、屋上に用いた場合防水層が一旦壊れたら漏水害が大きい、水を貯えることができない傾斜部や壁面に使用することができない、という欠点があった。
【0006】
このようなことから、水が蒸発するときに奪う気化熱を利用し、建造物を冷却するより安価で、漏水の危険性が少なく、傾斜部や壁面など適用範囲が広い冷却材の開発が待たれていた。これら性質を持つ冷却材を開発するために、冷却材全体への水の分配が均一にできる冷却材材料の開発とその応用技術の開発が待たれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の問題点を解決するための課題は、吸水性、浸潤長を増強した建造物冷却材材料を開発することと、その材料を応用した屋上面はもちろんのこと、傾斜面や壁面に利用でき、しかも、温帯地方や熱帯地方にかかわらず省エネに有効な冷却・保温に優れた効果を発揮する材料および工法の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1発明は、吸水性が20mm以上、浸潤長が10cm以上、飽和透水係数が10−4m/sec以上の板状材料であることを特徴とする建造物冷却材をその解決手段とするものである。
【0009】
また、本発明の第2発明は、第1発明の建造物冷却材が親水性の粒状物にバインダーを混合し成形した板状材料、ソフトセラミックスあるいは連続気泡をもつ発泡材料であることを特徴とする建造物冷却材をその解決手段とするものである。
【0010】
また、本発明の第3発明は、吸水性が20mm以上、浸潤長が10cm以上、飽和透水係数が10−4m/sec以上の吹きつけ物を形成できることを特徴とする建造物冷却用発泡樹脂吹き付け材をその解決手段とするものである。
【0011】
また、本発明の第4発明は、第1〜3発明の建造物冷却材をスレート板、金属板、合成樹脂板に積層し補強したことあるいは下地材への取り付け用の孔もしくは治具を付属したことを特徴とする建造物冷却材をその解決手段とするものである。
【0012】
また、本発明の第5発明は、第1〜4発明の建造物冷却材表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性素材で被覆したことを特徴とする建造物冷却材をその解決手段とするものである。
【0013】
また、本発明の第6発明は、第1、2、3、5の建造物冷却材の一方の面を不透湿性素材で被覆したことを特徴とする建造物冷却材をその解決手段とするものである。
【0014】
また、本発明の第7発明は、第1〜4、6発明の建造物冷却材の敷設表面に透湿防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で被覆したことあるいは第5発明の建造物冷却材を用いたことを特徴とする建造物冷却方法をその解決手段とするものである。
【0015】
また、本発明の第8発明は、第1〜6発明の建造物冷却材を陶磁器、スレート、金属、合成樹脂製材料およびそれらの複合材で外気と通気可能な資材を用い屋根あるいは壁面に固定したことを特徴とする建造物冷却方法をその解決手段とするものである。
【0016】
また、本発明の第9発明は、第7、8発明において強制排気手段を設けたことを特徴とする建造物冷却方法をその解決手段とするものである。
【0017】
また、本発明の第10発明は、屋根、屋上面に第2発明の親水性の粒状物とバインダーとの混合物を塗布し積層したことあるいは親水性の粒状物を予め散布・転圧した造成面上に粒状物とバインダーとの混合物を打設し浸透性の高い層を設けたことあるいはそれら表面を透湿・防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で覆ったことを特徴とする建造物冷却方法をその解決手段とするものである。
【0018】
また、本発明の第11発明は、路床表面もしくはその上に敷設したシート面上に、第10発明に示した親水性の粒状物を散布・転圧することにより造成面を作り、その面上に粒状物とバインダーとの混合物を打設し浸透性の高い層を設けたことあるいはそれら表面を透湿・防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で覆ったことを特徴とする建造物冷却方法をその解決手段とするものである。
【0019】
また、本発明の第12発明は、第1〜11発明において建造物冷却材に給水したことを特徴とする建造物冷却方法をその解決手段とするものである。
【0020】
また、本発明の第13発明は、第12発明において温度及び/あるいは水分検知により排気速度あるいは給水量を制御したことを特徴とする建造物冷却方法をその解決手段とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第1発明は、吸水性が20mm以上、浸潤長が10cm以上、飽和透水係数が10−4m/sec以上の板状材料であることを特徴とする建造物冷却材である。
【0022】
本発明は建造物冷却材中に保水した水が蒸発する際に奪う気化熱を利用し建築物や土木構造物などの建造物を冷却するものである。したがって、建造物冷却材内に保水あるいは供給できる水量が多いと冷却効果維持期間が長くなり、保水された水が冷却材全体を均一分布すると全面が均一に冷却される。
【0023】
蒸発水量を増やす方法として、建造物冷却材内にできるだけ多くの雨水を保水できるようにする方法あるいは外部から上水等を供給する方法がある。前者は保水能力を上げることにより達成できる。後者の場合、建造物冷却材を均一に濡らす必要があり、建造物冷却材の吸水性、浸潤性、飽和透水係数を一定値以上とすることにより達成することができる。これら性質と高い保水性を合わせ持たせた建造物冷却材は、雨水と上水等の給水を利用して建造物を冷却することができる。
【0024】
本発明の建造物冷却材は板状のもので、強度、重量、保水可能量あるいはコストを考えると5〜40mmの厚さのものが取り扱いやすい。本発明での板状は平板状、波板状あるいは表面に任意の凹凸を有する形状である。
【0025】
浸潤長が10cm以上であると潅水間隔が20cmである市販潅水チューブを用い建造物冷却材面を均一に濡らすことができるので浸潤長は10cm以上あることが望ましい。20cm以上であるとより素早く均一に濡らすことができるのでより好ましい。
【0026】
飽和透水係数は10−4m/secであると、水は垂直方向に1分間で2.4cm移動し、1時間に144cm以上移動するので、10−4m/sec以上であることが好ましく、傾斜面を迅速に移動させるためには10−3m/sec以上であることがより好ましい。
【0027】
建造物冷却材の吸水性が20mm以上で浸潤長が10cm以上であると、建造物冷却材を水平に設置し上面から市販潅水チューブで水を25ml/minの滴下速度で注水しても冷却材下面から水が滴下することなく、水は水平方向に移動し周囲を徐々に湿らせつつ、板状材料中を水平方向に浸潤する。つまり、滴下点から水が広く浸潤するため板への均一給水が容易である。
【0028】
この性質を持つ建造物冷却材は、給水し続けている限り板状材料内部を水が上方から下方へ均一に移動するため、上部のみに給水点を設け給水しても広く、建造物冷却材全体を濡らすことができる。したがって、給水方法を極めて簡単にすることができる。
【0029】
この性質がある建造物冷却材を傾斜面に使用しても水は傾斜面下方だけでなく水平方向あるいは傾斜面上方にも拡がるので均一に分布する。建造物冷却材の上方から給水すれば均一に濡れるので、あえて建造物冷却材内部に水が通りやすい溝あるいは空間を作らなくても水は均一に分布する。しかし、飽和透水係数が低い場合は溝あるいは空間が必要となる。
【0030】
冷却材は冷却材中の小間隙と大間隙内に分布する。小間隙中の水は冷却材の吸水性により強く吸着しているため移動速度が遅く重力により流下しない。しかし、大間隙中の水は重力により流下するため移動速度が速い。したがって、吸水性が高く、しかも、飽和透水係数が高い材料は、小間隙が飽和するまでの間は吸着力により吸水し、飽和するとはじめて水が大間隙中を重力により速やかに下方に流下するので、傾斜面や壁面に使用する場合、水の急速な均一分配に適している。
【0031】
一方、吸水性が低く浸潤長が低い場合、緩勾配の場所に用い上部から給水すると、水は冷却材の下部に敷設した建築材面例えば野地板表面に滴下し、その面で水道を作り不均一に流れることになる。したがって、冷却材中へは、その水道から再吸水されるという分配方法になるため、水道周辺部分が強く濡れ不均一に水が分布することになる。また、建造物冷却材中に水が浸透しにくくなるため、水は表面を流下し均一分配が困難となる。
【0032】
本建造物冷却材は水だめを作り、その内部に充填する粒子間の間隙中に貯水する方法でなく、粒子内の間隙に水を粒子の吸着力により吸着し保水する方式なので、一旦防水層が壊れても漏水することはない。
【0033】
また、本発明の建造物冷却材は吸水性が高く、浸潤性が高いので、一定速度以下で給水する限り、建造物冷却材が水で飽和するまでは周辺に水が移動し、水が重力の作用で板状材料の下面から滴下することはないため、漏水を防ぐことができる。
【0034】
吸水性は20mm以上であると板厚が20mmのものでも上面まで吸水し均一に濡れるので、吸水性は20mm以上であることが好ましい。より好ましくは40mm以上である。
【0035】
保水性が20%以上であると建造物冷却材の板厚が1cmと使用しやすい薄さの資材であっても2mm以上保水できるので、1日の蒸発量2mm以上を補うための給水回数を1日2回以下にすることができる。より好ましくは30%以上である。保水量は板厚を厚くすることによって増やすことができる。外部から給水する場合は保水性が低くても吸水性、浸潤性、飽和透水係数が高いと、給水により建造物を効率的に冷却することができる。
【0036】
ここに示す吸水性はJISL1907の繊維製品の吸水性試験方法のバイレックス法に準じた方法で測定した水の上昇高さである。浸潤長の測定方法は次のようである。厚さ2cmの50cm角の試験片を4隅で保持し水平に保ち、上方中央部から水を滴下する。滴下流速は一般的な潅水チューブの潅水速度である25ml/minとした。滴下開始後10分後に水が水平方向に浸潤した距離を測定し、浸潤長とした。飽和透水係数は農林水産技術会議監修の土壌物理測定法により測定した。保水性は厚さ2cmで20cm角の試験片を水中に浸漬した後、垂直に立てかけ下部から水が殆ど滴下しなくなった時点での体積含水率%である。
【0037】
第2発明は、第1発明の建造物冷却材が親水性の粒状物にバインダーを混合し成形した板状材料、ソフトセラミックスあるいは連続気泡をもつ発泡材料であることを特徴とする建造物冷却材である。
【0038】
本発明の建造物冷却材に適する親水性の粒状物は珪藻土焼成物、抗火石、軽石、クリンカーアッシュ、パーライト等であり、バインダーとしてはセメント系固化材である。また、間隙率が高いソフトセラミックスを使うことができる。さらに、連続気泡をもつ発泡材料は発泡尿素樹脂あるいは発泡ウレタン等の表面に親水基を露出させ親水性を高めたものが適している。建造物冷却材は吸水性、浸潤性、飽和透水係数が高いものであれば、これら材料に限定されるものではない。
【0039】
なお、本発明での粒状物は日本工業規格で定義している粗砂区分である粒径0.25mm以上の材を重量比で80%以上含む材料を指す。
【0040】
本発明の建造物冷却材の補強材として、金属製、ビニロン製、ガラス繊維性ネットあるいは繊維を使うと建造物冷却材の強度を高めることができる。補強材はこれら材料に限定されるものではない。
【0041】
第3発明は、吸水性が20mm以上、浸潤長が10cm以上、飽和透水係数が10−4m/sec以上の吹きつけ物を形成できることを特徴とする建造物冷却用発泡樹脂吹き付け材である。
【0042】
第2発明の連続気泡をもつ発泡材料を原料とする建造物冷却用吹き付け材である。
【0043】
本発明で用いる吹きつけ材として表面を親水加工した発泡尿素樹脂、発泡ウレタン樹脂があげられる。
【0044】
第4発明は、第1〜3発明の建造物冷却材をスレート板、金属板、合成樹脂板に積層し補強したことあるいは下地材への取り付け用の孔もしくは治具を付属したことを特徴とする建造物冷却材である。
【0045】
第1、2、3発明の建造物冷却材は間隙率が高い素材からできているため、強度が弱い。したがって、壁面や屋根面に直接固定するには、板状材料自体の強度が材の支持や風圧力に耐えることができない。そのため、強度が強いスレート板、金属板、合成樹脂板に板状の建造物冷却材を積層するあるいは親水性の粒状物とバインダーとの混合物や連続気泡をもつ発泡材料を塗布し積層することにより強度を増すことができる。
【0046】
また、これら建造物冷却材は下地材に取り付ける場合、釘やネジによる穿孔に対する強度が弱いため、建造物冷却材に予め孔を設けるか、孔にコルクを充填する等の取り付け用治具を設けることにより、建造物冷却材を釘あるいはネジにより安全に下地材に取り付けることができる。
【0047】
第1〜4発明の建造物冷却材を用いると、屋上あるいは屋根面では雨水を利用し建造物を冷却することができる。
【0048】
第5発明は、第1〜4発明の建造物冷却材表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性素材で被覆したことを特徴とする建造物冷却材である。
【0049】
第1〜4発明の素材は吸水性、浸潤性ともに高いため、水が均一に分布するため、素材全体が平均的に濡れ、均一に気化熱を奪うため冷却材として適している。しかし、温帯地方で用いる場合、夏季の冷房に適しているが、冬季には雨水等が材中に侵入し気化熱を奪うため建造物を冷やす逆効果がある。
【0050】
本発明では冷却材表面を熱反射性があり透湿防水性がある素材で被覆する。この素材により、建造物冷却材中への雨水の浸入を阻止し、水蒸気は排出できる。このため、夏季には建造物冷却材中へ水を給水することにより冷却し、夏季以外の冷却を必要としない季節には給水しないため、建造物冷却材は乾燥し冷気からの断熱層となる。当然のことながら、給水しない期間は材料が乾燥状態に保たれるので気化熱で熱を奪われることがない。
【0051】
本発明の建造物冷却材を用いると、屋上あるいは屋根面では雨水を利用し建造物を冷却することはできないものの、必要性に応じ冷却時期を制御することができる。
【0052】
建造物冷却材の厚さが薄い場合は給水間隔が短くなり、厚い場合は長くなる。
【0053】
図1に屋上面に建造物冷却材を設置した一形態の断面図を示す。屋上のコンクリートの表面に、防水材を敷設し、その上建造物冷却材を敷設する。建造物冷却材の表面に透湿防水材を被覆し、その上に給水用ドリップ管を配置している。
【0054】
第6発明は、第1、2、3、5の建造物冷却材の一方の面を不透湿性素材で被覆したことを特徴とする建造物冷却材である。
【0055】
第1、2、3発明の建造物冷却材は材中に保水しても、下面から水が滴り落ちることはないが、材中全体に浸潤しているため材と接している部分はどうしても濡れることになる。屋根の野地板や壁面のように乾燥状態を保ちたい場所では、冷却材の一方の面を不透湿性素材で被覆することにより、野地板や壁面を濡らしたり、湿気を与えたりすることがないため、建築物を乾燥状態に保つ上で好ましい。また、冷却板の裏面に溝を作り背面の材料から発生する湿気を排気できるようにすることも乾燥状態を保つために効果的である。
【0056】
第7発明は、第1〜4、6発明の建造物冷却材の敷設表面に透湿・防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で被覆したことあるいは第5発明の建造物冷却材を用いたことを特徴とする建造物冷却方法である。
【0057】
第1〜4、6発明の建造物冷却材に対する透湿・防水性および/あるいは熱反射性仕上げ材として株式会社フッコウのライムコートを用いることができる。これらに限定されるものではない。
【0058】
第8発明は、第1〜6発明の建造物冷却材を陶磁器、スレート、金属、合成樹脂製材料およびそれらの複合材で外気と通気可能な資材を用い、屋根あるいは壁面に固定したことを特徴とする建造物冷却方法である。
【0059】
第1〜6発明の建造物冷却材は間隙率が高い素材からできているため、強い風圧力や外力に耐える強度を有していないため、壁面や屋根面に直接固定することは危険な場合がある。このような場合、強度が強い陶磁器、スレート、金属、合成樹脂製の材料で外気と通気可能な材料を外気側にして、建造物冷却材を建造物本体との間に挟み込むことにより、建造物冷却材を安全に取り付けることができる。
【0060】
また、外気と通気可能な材料として、瓦、屋根材、波板、折板、穴あき板、ネット等がある。
【0061】
屋根面上に建造物冷却材を設置した一形態の断面図を図2に示す。野地板の上に防水材を敷き、その上に建造物冷却材を敷設し、建造物冷却材の上部に給水ドリップホースを設置する。その後、建造物冷却材の表面に流し桟を設置してから、瓦桟、瓦を設置する。
【0062】
壁面に建造物冷却材を設置した一形態の断面図を図3に示す。内壁の外側に防水材を張り、その上に建造物冷却材を設置し、建造物冷却材の上部に給水ドリップホースを設置する。その後、外壁基材を固定し、その外に外壁下塗り材、表面化粧材を設置する。
【0063】
また、外壁基材の内側に防水材を張り、建造物冷却材を設置し、建造物冷却材の上部に給水ドリップホースを設置する。その後、内壁の外に防水材を張ることもできる。
【0064】
第9発明は、第7、8発明において強制排気手段を設けたことを特徴とする建造物冷却方法である。
【0065】
第8発明において蒸発量を多くするため、換気扇等を用い強制排気することにより冷却効果を高めることができる。
【0066】
第10発明は、屋根、屋上面に第2発明の親水性の粒状物とバインダーとの混合物を塗布し積層したことあるいは親水性の粒状物を予め散布・転圧した造成層の表面上に粒状物とバインダーとの混合物を打設し浸透性の高い層を設けたことあるいはそれら表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で覆ったことを特徴とする建造物冷却方法である。
【0067】
屋根、屋上面に第2発明の親水性の粒状物とバインダーとの混合物を塗布し積層したことあるいはその表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で被覆することにより、予め製造した建造物冷却材を用いることなく、建造物の対象部分に上記混合物を塗ることにより建造物を冷却用に被覆することができる。積層する厚さは気候条件によるが給水頻度を減らすために5mm以上とすることが好ましい。
【0068】
屋根、屋上面に親水性の粒状物を予め散布・転圧した造成面上に粒状物とバインダーとの混合物を表層として打設することにより多量保水可能で安価な建造物の冷却被覆を形成することができる。親水性の粒状物を予め散布・転圧する厚さは気象条件や冷却目的あるいは給水の有無に応じ決定することになるが、経済的には2〜20cmとすることが好ましい。
【0069】
表層に打設する層の浸透性は飽和透水係数が10−4m/sec以上であることが好ましい。使用する粒状物は、親水性粒状物以外に珪砂、ALC破砕物、さんご砂、川砂等が上げられるが、0039に定義する粒径の材料であればこの限りでない。使用材料は必要強度に応じて決定することになる。打設厚さは1〜3cmとすることが好ましい。
【0070】
第11発明は、路床表面もしくはその上に敷設したシート面上に、第10発明に示した親水性の粒状物を散布・転圧することにより造成層を作り、造成層の表面上に粒状物とバインダーとの混合物を打設し浸透性の高い層を設けたことあるいはそれら表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で覆ったことを特徴とする建造物冷却方法である。
【0071】
珪藻土焼成物、抗火石等の親水性の粒状物を散布・転圧することにより造成した造成土層は、多量の水を保水できるので歩道等の冷却に適している。
【0072】
路床が土壌もしくは砕石等を転圧した造成層である場合、造成層中の水は重力もしくは毛細管による吸引力により下方に浸透し、造成層中の保水量が減少する。一方、造成層の下部に浸透性がないシートを敷設した場合、水が浸透しないため造成層中の保水量は多くなる。また、浸透性がある不織布等のシートを敷設した場合も、造成層と下層の路床層との毛細管がそのシートにより断たれ、造成層中に保水された水は毛細管力により下方に流下しない。しかし、過剰になると浸透性シートを通して重力により流下する。このため歩道等の冷却期間を長くすることができるとともに、雨水を地中に還元できるため水循環上好ましい。
【0073】
第12発明は、第1〜11発明において建造物冷却材に給水したことを特徴とする建造物冷却方法である。
【0074】
第1〜11発明において建造物の冷却は雨水だけに頼らず冷却が必要な時点で建造物冷却材に給水することにより達成される。
【0075】
第13発明は、第12発明において温度及び/あるいは水分検知により排気速度あるいは給水量を制御したことを特徴とする建造物冷却方法である。
【0076】
第12発明において建造物冷却材あるいは冷却対象面の温度あるいは水分を計測し、排気速度あるいは給水量を温度により制御することにより、経済的で効果的に建造物を冷却できる。
【0077】
第1〜13発明において建造物冷却材に植物根やコケあるいは黴の成長抑制剤あるいは枯殺剤を混入することにより、雑草の繁茂やコケ、黴による被覆を防ぐことができる。
【0078】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0079】
粒径2mmの珪藻土焼成物2880gにセメント系固化材900gを加え混合した。その混合物に2000gの水を加え良く混合し、厚さ2cm縦50cm横50cmの型に打設し、加水後1日間放置した。この方法で厚さ2cm縦50cm横50cmの板状材料を作った。
【0080】
実施例1の板状材料の吸水性は繊維製品の吸水性試験方法JISL1907のバイレック方に準じた方法で測定すると65mmであった。保水性は46.4%、浸潤長は11cmであった。
【0081】
実施例1の配合割合で混合した珪藻土粒状物、固化材、水の混合物を容積が100cm3のコアに充填し固化した後で、飽和透水係数を測定した。飽和透水係数は4.5×10−4m/secであった。
【実施例2】
【0082】
実施例1の型内に不織布とポリエチレンフィルムを積層したシートを敷設した上に、実施例1と同様の方法で混合物を打設し、シート着き板状材料を作った。
【0083】
実施例2の板状材料は裏面に不織布積層フィルムが強固に付着していた。また、板状材料上面から給水しても裏面は濡れなかった。
【実施例3】
【0084】
粒径2mmの珪藻土焼成物2160gにセメント系固化材675gを加え混合した。その混合物に1500gの水を加え良く混合したものを、あらかじめ厚さ0.5cmのスレート板を入れた厚さ2cm縦50cm横50cmの型に打設し、加水後1日間放置した。この方法で厚さ1.5cm縦50cm横50cmのスレート板で補強された板状材料を作った。
【0085】
実施例3のスレート板積層板状材料の強度は強く、角材を30cm間隔で平行に置いた上に載せ、その中央部に体重60kgの人間が乗っても破壊しなかった。また、積層した板状材料は強固に折板屋根に取り付けることができた。
【実施例4】
【0086】
実施例2の板状材料に透湿防水仕上げ材ライムコートを厚さが5mmとなるよう塗布した。
【0087】
実施例4の板状材料を3%勾配の傾斜面に置き、その上部から散水した。水は表面を伝わって流れ板状材料内部を濡らすことはなかった。
【0088】
比較例1スレート板
【実施例5】
【0089】
実施例1、4の板状材料および比較例1のスレート板を水平面に置き、十分保水させた。上面から250wの赤外線ランプで照射し、実施例1、4の板状材料の表面、下面及びスレート表面の温度を経時的変化を測定し、図4に示す。
【0090】
図4に示したように、比較例のスレートの表面温度は64℃維持しているのに対して、実施例1、4の板状材料の表面、下面の温度は時間の経過に伴い、表面温度が徐々に上昇し、その後一定値に維持していた。これは板状材料内に含まれている水分蒸発したためである。
【0091】
また、赤外線ランプ照射36時間後に実施例1の表面温度はスレートの表面温度と同程度であり、実施例1の下面温度は62℃と表面温度よりも2℃低くなった。一方、実施例4の表面温度は53℃とスレートの表面温度よりも11℃低く、実施例4の下面温度は42.7℃と表面温度よりも21.3℃低くなった。このことから、実施例4の冷却効果が高いことを示した。
【0092】
本発明は建造物の水平面、傾斜面、壁面を問わず水の気化熱を利用し安価に冷却する材料を提供することができる。本発明は建設業分野に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】屋上面に建造物冷却材を設置した一形態の断面図である。
【図2】屋根面に建造物冷却材を設置した一形態の断面図である。
【図3】壁面に建造物冷却材を設置した一形態の断面図である。
【図4】実施例1、4の表面と下面温度および比較例1の温度変化を示したグラフである。
【符号の説明】
【0094】
1 透湿防水材
2 建造物冷却材
3 防水材
4 コンクリート
5 給水用ドリップ管
6 瓦
7 瓦桟
8 流し桟
9 防水材(下葺材)
10 野地板
11 化粧垂木
12 表面化粧材
13 外壁下塗り材
14 外壁基材
15 内壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性が20mm以上、浸潤長が10cm以上、飽和透水係数が10−4m/sec以上の板状材料であることを特徴とする建造物冷却材。
【請求項2】
請求項1の建造物冷却材が親水性の粒状物にバインダーを混合し成形した板状材料、ソフトセラミックスあるいは連続気泡をもつ発泡材料であることを特徴とする建造物冷却材。
【請求項3】
吸水性が20mm以上、浸潤長が10cm以上、飽和透水係数が10−4m/sec以上の吹きつけ物を形成できることを特徴とする建造物冷却用発泡樹脂吹き付け材。
【請求項4】
請求項1〜3の建造物冷却材をスレート板、金属板、合成樹脂板に積層し補強したことあるいは下地材への取り付け用の孔もしくは治具を付属したことを特徴とする建造物冷却材。
【請求項5】
請求項1〜4の建造物冷却材表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性素材で被覆したことを特徴とする建造物冷却材。
【請求項6】
請求項1、2、3、5の建造物冷却材の一方の面を不透湿性素材で被覆したことを特徴とする建造物冷却材。
【請求項7】
請求項1〜4、6の建造物冷却材の敷設表面に透湿防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で被覆したことあるいは請求項5の建造物冷却材を用いたことを特徴とする建造物冷却方法。
【請求項8】
請求項1〜6の建造物冷却材を陶磁器、スレート、金属、合成樹脂製材料およびそれらの複合材で外気と通気可能な資材を用い屋根あるいは壁面に固定したことを特徴とする建造物冷却方法。
【請求項9】
請求項7、8において強制排気手段を設けたことを特徴とする建造物冷却方法。
【請求項10】
屋根、屋上面に請求項2の親水性の粒状物とバインダーとの混合物を塗布し積層したことあるいは親水性の粒状物を予め散布・転圧した造成層の表面上に粒状物とバインダーとの混合物を打設し浸透性の高い層を設けたことあるいはそれら表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で覆ったことを特徴とする建造物冷却方法。
【請求項11】
路床表面もしくはその上にシートを敷設した面上に、請求項10に示した親水性の粒状物を散布・転圧することにより造成層を作り、造成層の表面上に粒状物とバインダーとの混合物を打設し浸透性の高い層を設けたことあるいはそれら表面を透湿防水性および/あるいは熱反射性塗料もしくは仕上げ材で覆ったことを特徴とする建造物冷却方法。
【請求項12】
請求項1〜11において建造物冷却材に給水したことを特徴とする建造物冷却方法。
【請求項13】
請求項12において温度及び/あるいは水分検知により排気速度あるいは給水量を制御したことを特徴とする建造物冷却方法。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−197914(P2007−197914A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14585(P2006−14585)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(390039907)株式会社クレアテラ (16)
【Fターム(参考)】