説明

弁開度制御システム

【課題】開又は閉指令を、開度に対応した時間、出力することで、弁を目標開度に操作する場合、目標開度近くで開/閉方向の反転動作を頻繁に繰り返すことなく、目標開度とすることが可能な弁開度制御システムを提供する
【解決手段】弁11を所望の開度に開閉制御する弁開度制御システムであって、弁11の開閉速度に基づき、設定された所望の目標開度に達するまでの開又は閉指令の出力時間を出力時間演算手段17で求め、 この出力時間の間、出力手段と18により弁11に開又は閉指令を出力する。この際、弁11の実測開度を開度制御手段19に入力し、この実測開度と目標開度との差が、予め設定した不感帯の範囲に入ると、弁11に対する開又は閉指令の出力を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、上水道および下水道処理設備等に用いられる弁を、ディジタル出力にて開度制御する弁開度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、上水道および下水道処理設備等、流体を取り扱う各種のプラントには多くの弁が用いられ、その開度制御が行われている。従来、弁開度制御は、操作を行う弁に対して、コントローラ(PLC)のアナログ出力モジュールから0−20mA(0−5V)のアナログ操作信号を出力している。この場合、アナログ出力を受け付ける弁が高価になってしまい、コスト低減を考えた場合に不利となることがある。例えば、4−20mAを開度0−100%とした場合、開度50%にしたい場合は、12mAを与えれば、50%の開度を得ることができる。したがって、制御としては使いやすい。しかし、12mAのアナログ信号を開閉操作用モータの駆動電流値に変換するマイコンが弁毎に必要となり、コストは高価となる。
【0003】
そこで、アナログ出力ではなく、ディジタル出力(開又は閉指令)を用い、その出力時間を管理することにより、所望の弁開度に制御することが考えられた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このように、ディジタル出力により弁駆動モータを単に正転又は逆転させ、その出力時間により弁開度を制御する方法では、弁は高価なマイコンを必要とせず、コスト的に有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−272325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このディジタル出力を必要な時間のみ出力して弁の開度制御を行う方法では、操作対象弁が慣性などにより目標開度で止まらない場合がある。特に最近の弁は、開閉速度が高速化しており、このような高速開閉する弁では目標開度で停止させることが困難であった。目標開度を行き過ぎた場合は修正のために閉方向に反転操作し、閉方向に行き過ぎた場合は開方向に反転操作する、修正操作を多数回繰り返さなければならず、弁自体、及び制御用のリレーなどを劣化、故障させる原因となる。
【0007】
このため、課題は、開又は閉指令のためのディジタル信号を、開度に対応した時間、出力することで、弁を目標開度に操作する場合、目標開度近くで開/閉方向の反転動作を多数繰り返すことなく、容易に目標開度とすることが可能な弁開度制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態によれば、弁を所望の開度に開閉制御する弁開度制御システムであって、前記弁の開閉速度に基づき、設定された所望の目標開度に達するまでの開又は閉指令の出力時間を求める出力時間演算手段と、この出力時間演算手段によって求められた出力時間の間、前記弁に開又は閉指令を出力する出力手段と、前記弁の実測開度を入力し、この実測開度と前記目標開度との差が、予め設定した不感帯の範囲に入ると、前記弁に対する開又は閉指令の出力を停止させる開度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る弁開度制御装置を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1はこの実施の形態の全体構成を示している。図1において、制御対象となる弁11は、上下水道処理設備や海水淡水化プラントなど、流体を取り扱う図示しない各種のプラントに設けられており、開閉駆動用のモータ12と、その開度に応じたアナログ信号を出力する開度センサー13とを有する。
【0012】
コントローラ(PLC)15は、弁11を所望の開度に開閉制御するもので、目標開度設定手段16、出力時間演算手段17、出力手段18、開度制御手段19、及び不感帯設定手段20を有する。
【0013】
目標開度設定手段16は、弁11を所望の開度に操作すべく、目標開度が設定される。この目標開度は、オペレータの操作により手動設定されたり、プラントの予め設定されたシーケンス上で、必要とする開度に自動設定されたりする。出力時間演算手段17は、弁11の、既知の値である開閉速度に基づき、現状の開度から設定された所望の目標開度に達するまでの操作信号の出力時間を求める。出力手段18は、出力時間演算手段17によって求められた時間の間、弁11に対して開又は閉指令を出力する。また、この開又は閉指令は後述する表示装置22へも出力される。開度制御手段19は、弁11の実測開度を開度センサー13から入力し、この実測開度と目標開度との差が、不感帯設定手段20により予め設定された不感帯の範囲に入ると、弁11に対する開又は閉指令の出力を停止させる。
【0014】
表示装置22は、弁11が設けられたプラントを表す系統図をグラフィック表示するもので、例えば、コンピュータにより表示制御される表示画面等が用いられる。この系統図中には弁11を表すシンボルがグラフィック表示され、このシンボル近くには、この弁11が開動作中であるか、或いは閉動作中であるかを表す表示手段を配置する。出力手段18からの開又は閉指令は、これら表示手段を表示制御するものである。
【0015】
上記構成において、操作対象弁11を所望の開度に操作すべく、目標開度設定手段16に目標開度を設定すると、コントローラ15は、図2のフローチャートで示す処理により、まず、出力時間演算手段17が操作信号の出力時間を算出する。ここで、弁11の開閉時間(ストローク時間)は予め設定されており(ステップ201)、出力時間演算手段17はこの既知の開閉時間と、ステップ203で設定された目標開度とから、目標開度に達するまでの操作信号出力時間を算出する(ステップ204)。
【0016】
例えば、弁11の目標開度が50%の場合、前述した既知のフルストローク時間(弁の全閉から全開までの時間)から、現状開度から目標開度50%に達するまでの開または閉指令(操作信号)の出力時間を演算する。例えば、弁11の現状の開度が全閉であれば、開指令の出力時間は、フルストローク時間の50%となる。
【0017】
出力手段18は、このようにして求められた出力時間の間、開又は閉指令を操作対象弁11に出力する(ステップ205)。このため、弁11は開又は閉方向に駆動され、その開度は開度センサー13により実測される。この実測開度は開度制御手段18に入力され、目標開度と比較され、実測開度と目標開度との差が求められる。開度制御手段18には、不感帯設定手段20により、操作対象弁11に対応した不感帯が設定されており(ステップ202)、実測開度と目標開度との差の絶対値がこの不感帯の範囲に入ったかを判断する(ステップ206)。その結果、不感帯の範囲に入ると、出力手段18に対して開又は閉指令の出力を停止させる(ステップ207)。
【0018】
このように、不感帯を設定し、目標開度と実測開度との差が不感帯の範囲に入ると操作信号の出力を停止するようにしたので、目標開度に達してから操作信号を停止させる従来の場合のように、目標開度を大きく行き過ぎてしまうことを防止できる。すなわち、従来は操作信号の出力時間によっては、操作対象弁が慣性により目標開度で止まらない場合があり、開方向に行き過ぎた場合は閉指令を、閉方向に行き過ぎた場合は開指令の修正出力を繰り返すため、操作対象弁またはリレーなどを劣化、故障させる原因となっていた。しかし、この実施の形態では、不感帯を設けたことにより、このような修正のための頻繁な繰り返し操作を防止できる。
【0019】
本実施の形態でも、不感帯の範囲を超えて行き過ぎが生じることは考えられるが、このような場合でもその程度は小さく、次の修正用の反転操作により、容易に目標開度近くに収束することができる。
【0020】
ここで、不感帯は、一般的には、開閉速度が速い弁ほど慣性力も大きくなるため、不感帯は大きく設定する。通常、開度の2〜3%程度が考えられるが、弁の種類や、その開閉速度によって異なるので弁毎に現場で設定することが好ましい。この実施の形態では表示装置22における弁11のシンボル近くに、開動作中/閉動作中を表す表示手段を設けたので、この表示を目視しながら不感帯の設定操作を行えば、容易に最適な不感帯を設定することが可能となる。
【0021】
前記実施の形態では、目標開度は目標秋度設定手段16により手動設定、或いはシーケンス上の設定により行われていたが、本発明はこれに限定されず、目標開度は、PID制御の操作量に基づいて算出された値であってもよい。すなわち、コントローラ15が、例えば、プラント中のある流量をPID制御により一定に保つような制御を行っている場合、目標開度設定手段16に、PID制御の操作量を入力させ、かつ、この操作量から目標開度を得る演算機能を持たせたものとする。このように構成すれば、弁11の開度をPID制御により自動制御することも可能になる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
11・・・弁
12・・・駆動モータ
13・・・開度センサー
15・・・コントローラ
16・・・目標改組設定手段
17・・・出力時間演算手段
18・・・出力手段
19・・・開度制御手段
20・・・不感帯設定手段
22・・・表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁を所望の開度に開閉制御する弁開度制御システムであって、
前記弁の開閉速度に基づき、設定された所望の目標開度に達するまでの開又は閉指令の出力時間を求める出力時間演算手段と、
この出力時間演算手段によって求められた出力時間の間、前記弁に開又は閉指令を出力する出力手段と、
前記弁の実測開度を入力し、この実測開度と前記目標開度との差が、予め設定した不感帯の範囲に入ると、前記弁に対する開又は閉指令の出力を停止させる開度制御手段と、
を備えたことを特徴とする弁開度制御システム。
【請求項2】
前記目標開度は、PID制御の操作量に基づいて算出された値であることを特徴とする請求項1に記載の弁開度制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−194650(P2012−194650A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56598(P2011−56598)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】