説明

弁開閉装置及び真空処理装置

【課題】塑性変形させることがないため全閉状態を再現性よく一定の流量のガスを調整できるようにする。
【解決手段】内部に気体の流路3が形成され、流路にピストン6を有する弁体2と、弁体が離接する弁座4とが配され、弁体と弁座とが離接することにより気体の流量が制御される弁開閉装置であって、ピストンの移動を制御し、弁体と弁座が接触している場合に、弁体が弁座を所定の圧力以下で押す駆動体9を具備する。この弁開閉装置を具備する真空処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スパッタリング装置あるいはCVD装置による薄膜形成用のプロセスガス、または、主に、表面処理装置等に使用される、基板へのエッチングにおけるエッチングガス、あるいはガス分析装置に使用される処理ガスなどの配管に使用される弁開閉装置及びそれを用いた真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程等の成膜装置で使用するガス供給量は、成膜の製品品質を大きく左右するため、一定な流量を保証することが求められる。
【0003】
しかしながら、弁開閉装置を構成する弁体が弁座に接触して処理ガスの流路を塞いだ状態(以下、全閉状態という。)にする際、弁体の駆動を手動で行われ処理ガスが供給される容器の圧力表示で調整されることが多いため、弁体が弁座に所定以上に強く押し付けられることがあり、そのため弁座が塑性変形を起こし弁体と弁座の接触状態が変わってしまうという課題があった。
【0004】
この種の弁開閉装置としては、特許文献1がある、ここでは弁体の駆動を手動で行うことの記載がある。
【特許文献1】特開平11−82787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述の課題に鑑み、弁体が弁座を強く押し付けることが無く、従って、塑性変形させることがないため再現性よく一定の流量のガスを調整できる弁開閉装置及び真空処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁開閉装置は、内部に気体の流路が形成され、該流路にピストンを有する弁体と、該弁体が離接する弁座とが配され、該弁体と該弁座とが離接することにより該気体の流量が制御される弁開閉装置であって、
前記弁体と前記弁座が接触している場合に、前記弁体が前記弁座を所定の圧力以下で押すように、前記ピストンの移動を制御する駆動体を具備する弁開閉装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弁体が弁座を強く押し付けることが無く、塑性変形させることがないため再現性よく一定の流量のガスを調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態の弁開閉装置について説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態の弁開閉装置を示す断面図である。弁開閉装置は、例えば、処理ガスによる成膜、エッチング等またはガス分析処理等が行われる真空容器と処理ガスの供給を繋ぐ配管との間に接続される。
【0010】
弁開閉装置は、装置本体1内で弁体2が弁座4に対して上下移動することで、弁体と弁座との離接が制御され、流路3を流れる処理ガスの流量(リーク量)を調整する。すなわち、ピストン6が上方に移動することにより、弁体2が弁座4に対して上方向に移動し、流路3を流れる処理ガスの流量を増やすことができる。一方、ピストン6が下方に移動することにより、弁体2が弁座4に対して下方向に移動し、流路3を流れる処理ガスの流量を減少させることができる。ベローズシール10は流路3と弁開閉装置の内部とを仕切る役割を担う。
【0011】
ばね5は、ピストン6の先端が作用体7に接触するようにピストン6を上方に押し上げている。そして、ばね5は、ピストン6の直進運動を安定させる役割を担う。作用体7は、支持点8を支点にして、上面(図中右側の上面)がステッピングモーター等からなる駆動体9と連結され、下面(図中左側の下面)がピストン6の先端に突き当たっており、てこの原理によりピストンの上下移動の制御が可能となっている。リニアガイド11は駆動体9の位置を確認し、調整を行うためのものである。駆動体9は作用体7の一方を上下に直線移動できればよく、ここではステッピングモーターと、該ステッピングモーターの回転を直線運動に変える部材(例えば、ステッピングモーターにギアを取り付け、回転を直線運動に変える部材としてそのギアとかみ合う小型ジャッキを用いる)とで構成している。
【0012】
駆動体9が作用体7の図中右側の上面を下方に押すことにより、支持点8を支点にして、ピストン6が押し下げられ、弁体2は弁座4に対して下方向に押し下げられる。そして、弁体2は弁座4を押圧する。一方、駆動体9が作用体7の図中右側の上面を引き上げることにより、支持点8を支点にして、ピストン6が押し上げられ、弁体2を弁座4に対して上方向に押し上げる。なお駆動体9は作用体7の図中右側の下面と連結するように下面側に設けられてもよい。
【0013】
図2は本実施形態の弁開閉装置における、ステッピングモーターのモーターステップ数とヘリウムガスのリーク量(流量)との特性を示す図である。なお、1.00E-06は1.00×10-6を意味する。本実施形態の弁開閉装置のピストンを繰り返し上下移動させ、特性の経時変化を調べたが、塑性変形を起こすことなく再現性が確認された。本実施形態の弁開閉装置は、6.7×10-9Pa・m3/sec以上の流量の制御に特に好適に使用することができる。流量の上限は例えば1.5Pa・m3/sec以下である。また、弁体が弁座に接した後は、弁体が弁座を押圧する圧力が強くなると塑性変形を起こすことになる。従って、ステッピングモーターのモーターステップ数は接触後一定値以下となるように制御し、弁体が弁座を所定の圧力以下で押すようにする。
【0014】
駆動体9は、弁座4に加わる力を直接数値化できなくても、力を別の物理量(例えば、電気等)に換算できる機能を備えていればよい。従って、本実施形態では駆動体としてステッピングモーターと回転を直線移動に変える部材を用い、作用体を介してピストンを上下させているが、駆動体としてピエゾ素子等の他の手段を用いてもよい。また、本実施形態では作用体を用いてピストンを駆動しているが、直接駆動体によりピストンを駆動してもよい。
【0015】
この数値化された弁座4の力を塑性変形が生じない限度以下で使用することで、弁座4が変形することを防ぎ、再現性よく一定量の処理ガスを供給することができる。
【0016】
本実施形態の弁開閉装置は、弁体が弁座を押圧する力が所定の値になるような駆動体が具備されているため、弁座を塑性変形してしまうことが無く、処理ガスを一定量供給することができる。
【0017】
なお、本実施形態の弁開閉装置は、処理ガスの流量調整に限られること無く、減圧された容器の真空排気に適用することも可能である。
【0018】
以下、本実施形態の弁開閉装置を用いた真空処理装置について説明する。
【0019】
図3は真空処理装置の構成を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態の真空処理装置は、排気系20を備えたエッチングチャンバー2Dと、エッチングチャンバー2D内に設けられた基板ホルダー25と、エッチングチャンバー2D内に所定のガスを導入するガス導入手段26と、ガス導入手段26により導入されたガスにエネルギーを与えて基板ホルダー25を臨むエッチングチャンバー2D内の空間にプラズマPを形成するプラズマ形成手段27とを備えている。エッチングチャンバー2Dは、側壁部分にゲートバルブ21を備えた気密な真空容器である。
【0020】
ガス導入手段26は、プラズマ形成手段27によってプラズマ化されるガスをエッチングチャンバー2D内に導入するものである。ここでは、アルゴンガスをエッチングチャンバー2D内に導入するようになっている。アルゴンガスのプラズマ中では、アルゴンのイオンが生成され、このイオンが基板29に入射することでエッチングが行われる。ガス導入手段26は、具体的には、アルゴンガスを貯めた不図示のガスボンベ、ガスボンベとエッチングチャンバー2Dとを繋ぐ配管に設けたバルブや流量調整器等によって構成される。
【0021】
排気系20は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプを備えてエッチングチャンバー2D内を10−7Torr程度まで排気可能に構成される。
【0022】
基板ホルダー25は、基板29より大きな径の円盤状のホルダーステージ51と、ホルダーステージ51の上に設けられた高周波電極52と、ホルダーステージ51を支えるホルダー支柱53と、高周波電極52に高周波を導入するための高周波導入棒54とから主に構成されている。
【0023】
高周波電極52の周囲には、ホルダーシールド55が設けられている。
【0024】
ホルダー支柱53は、内部が空洞になっている。そして、高周波導入棒54は、このホルダー支柱53の内部に配置されているとともに、ホルダーステージ51を貫通して先端が高周波電極52に達している。この高周波導入棒54の周囲は、円筒状の絶縁管56で覆われている。また、ホルダー支柱53内に位置する高周波導入棒54の部分の周囲には、アース管57が設けられている。アース管57と高周波導入棒54との間には絶縁管56が介在している。
【0025】
一方、基板ホルダー25の上方には、プラズマ形成空間を取り囲むシールド81が設けられている。プラズマ形成手段27は、基板ホルダー25内の高周波導入棒54及び高周波電極52を経由してエッチングチャンバー2D内のガスに高周波エネルギーを与えるようになっている。具体的には、プラズマ形成手段27は、基板ホルダー25内の高周波導入棒54に高周波電力を供給する高周波電源71と、高周波電源71からの高周波の供給路に設けられた整合器72とから主に構成されている。
【0026】
また、エッチングチャンバー2Dの上側には、磁石82が設けられている。磁石82は、基板9への前工程エッチングの分布を調整するものである。
【0027】
移動機構58は、基板ホルダー5のホルダー支柱53を保持した保持アーム581と、保持アーム581に連結された上下駆動源582とから主に構成されている。図3に示すように、エッチングチャンバー2Dの下面には開口が形成されており、ホルダー支柱53はこの開口に挿通されている。そして、ホルダー支柱53の下端には、アーム取り付け板583が固定されている。保持アーム581の先端は、このアーム取り付け板583に固定されている。
【0028】
上下駆動源582は、例えば保持アーム581が螺合する上下方向に長い精密ねじと、精密ねじを回転させるサーボモータ等から構成される。上下駆動源582が駆動すると、精密ねじが回転して保持アーム581が上下動する。
【0029】
本実施形態の弁開閉装置はガス導入手段を構成するバルブや流量調整器となり、また排気系を構成するバルブや流量調整器となる。本実施形態の弁開閉装置は配管の途中に取り付けたり、処理チャンバーに固定して取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、スパッタリング装置、CVD装置、表面処理装置等のガス導入系や排気系に使用される弁開閉装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の弁開閉装置を示す断面図である。
【図2】本実施形態の弁開閉装置における、ステッピングモーターのモーターステップ数と処理ガスのリーク量との特性を示す図である。
【図3】真空処理装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 装置本体
2 弁体
3 流路
4 弁座
5 ばね
6 ピストン
7 作用体
8 支持点
9 駆動体
10 ベローズシール
11 リニアガイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気体の流路が形成され、該流路にピストンを有する弁体と、該弁体が離接する弁座とが配され、該弁体と該弁座とが離接することにより該気体の流量が制御される弁開閉装置であって、
前記弁体と前記弁座が接触している場合に、前記弁体が前記弁座を所定の圧力以下で押すように、前記ピストンの移動を制御する駆動体を具備する弁開閉装置。
【請求項2】
前記駆動体は駆動量を数値化し、該数値に基づいて前記ピストンの移動量を制御することを特徴とする請求項1に記載の弁開閉装置。
【請求項3】
前記駆動体はステッピングモーターと、該ステッピングモーターの回転を直線運動に変える部材とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の弁開閉装置。
【請求項4】
6.7×10-9Pa・m3/sec以上の流量で使用されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の弁開閉装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弁開閉装置を具備した真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−68607(P2009−68607A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238039(P2007−238039)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(503421139)キヤノンアネルバテクニクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】