説明

弾性ローラ成形金型、および弾性ローラ成形方法

【課題】脱型時の剥離性が良好な状態を長期にわたって維持することが可能な弾性ローラ成形金型を提供する。
【解決手段】上端開口と、下端開口と、円筒形状の内部空間と、を備えた母型2と、母型2の上端開口に取り付けられ、母型2の内部空間に配置される芯材8の上端を支持する第1の駒3と、母型2の下端開口に取り付けられ、芯材8の下端を支持する第2の駒4と、を有し、第1の駒3を母型2の上端開口に取り付けたときに、第1の駒3と母型2との間に、第1の空隙7aと、第1の接触面6aと、が母型2の周方向に連続して形成され、第2の駒4を母型2の下端開口に取り付けたときに、第2の駒4と母型2との間に、第2の空隙7bと、第2の接触面6bと、が母型2の周方向に連続して形成され、少なくとも前記内部空間と、前記第1の空隙と、前記第2の空隙と、を構成する面に離型膜を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に組み込まれる弾性ローラを成形するための弾性ローラ成形金型、および弾性ローラ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の小型化、高画質化および低価格化の要求に伴い、画像形成装置に組み込まれているトナー供給ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の機能性ローラは、高精度化および低価格化が要求されている。この要求に応えるために、これらの機能性ローラの品質を向上または維持しながら製造コストを下げる努力がなされている。
【0003】
図7は、従来の弾性ローラ成形金型の一実施形態を示す断面図である。
【0004】
図7に示す弾性ローラ成形金型101では、円筒形状の内部空間105を有する母型102と芯材108が駒103、104により支持されている。母型102の内部空間105は、材料を充填するための内部空間である。この材料は、駒104に設けられた注入口(不図示)より内部空間105に圧入され、これにより、芯材108の周囲に材料が積層された弾性層が成形される。
【0005】
弾性ローラ成形金型101では、母型102で成形された弾性ローラを脱型する時の剥離性を向上させるために、母型102の内面にフッ素樹脂などからなる離型膜(コーティング層)が形成されている。一般に、フッ素樹脂などからなる離型膜は、金属と比較して格段に柔らかく、耐摩耗性が低い。そのため、母型102と駒103との接触面106a、および母型102と駒104との接触面106bのように、成形工程において接触を繰り返す面では、形成された離型膜はすぐに磨耗してしまう。磨耗が進行すると、接触面106a、106bには材料が付着しやすくなり、その結果、成形品の形状や性能に悪影響を及ぼす。
【0006】
そこで、上述したような問題を解決するための弾性ローラ成形金型が特許文献1に開示されている。この弾性ローラ成形金型では、母型の内面のうち、母型と駒とが接触を繰り返す接触面には耐久性被膜が形成され、実際に弾性ローラを成形する面には離型膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−96004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された弾性ローラ成形金型では、耐久性被膜によって、母型と駒とが接触する接触面の磨耗を防止できるという効果を奏する。しかし、特許文献1に開示された弾性ローラ成形金型には、耐久性被膜と離型膜の境界部分が存在する。離型膜が形成されている母型の内面には材料が充填されるので、耐久性被膜と離型膜の境界部分に、材料が付着する可能性が高い。付着した材料を除去しようとすると、耐久性被膜および離型膜が損傷し、剥離することが考えられる。これらの膜が剥離すると、成形金型から成形品(ローラ)を脱型する時の剥離性が悪化するので成形品の品質低下が懸念される。
【0009】
本発明は、脱型時の剥離性が良好な状態を長期にわたって維持することが可能な弾性ローラ成形金型、および弾性ローラの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明の弾性ローラ成形金型は、上端開口と、下端開口と、円筒形状の内部空間と、を備えた母型と、前記母型の前記上端開口に取り付けられ、前記母型の前記内部空間に配置される芯材の上端を支持する第1の駒と、前記母型の前記下端開口に取り付けられ、前記芯材の下端を支持する第2の駒と、を有し、前記第1の駒を前記母型の前記上端開口に取り付けたときに、前記第1の駒と前記母型との間に、前記内部空間に隣接する第1の空隙と、該第1の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第1の駒と前記母型とが接触する第1の接触面と、が前記母型の前記周方向に連続して形成され、前記第2の駒を前記母型の前記下端開口に取り付けたときに、前記第2の駒と前記母型との間に、前記内部空間に隣接する第2の空隙と、該第2の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第2の駒と前記母型とが接触する第2の接触面と、が前記母型の前記周方向に連続して形成され、少なくとも前記内部空間と、前記第1の空隙と、前記第2の空隙と、を構成する面に離型膜を有している。
【0011】
また、上述した目的を達成するために、本発明の弾性ローラ成形方法は、円筒形状の内部空間を有する母型と、前記母型の内部空間に配置される芯材の上端を支持する第1の駒と、前記芯材の下端を支持する第2の駒と、を用いるローラ成形方法において、前記第1の駒と前記第2の駒が前記芯材を前記内部空間で支持するように、前記第1の駒と前記第2の駒とを前記母型に取り付ける第1の工程と、前記第1の工程の後、前記内部空間に熱硬化性の材料を充填する第2の工程と、を有し、前記第1の工程では、前記母型と前記第1の駒との間に、前記内部空間に隣接する第1の空隙と、該第1の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第1の駒と前記母型とが接触する第1の接触面と、が前記母型の周方向に連続して形成され、かつ前記母型と前記第2の駒との間に、前記内部空間に隣接する第2の空隙と、該第2の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第2の駒と前記母型とが接触する第2の接触面と、が前記母型の前記周方向に連続して形成され、少なくとも前記内部空間と、前記第1の空隙と、前記第2の空隙と、を構成する面に離型膜を有している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1および第2の接触面と、実際に材料が充填される母型の内部空間とが、第1および第2の空隙でそれぞれ隔てられている。そのため、第1および第2の接触面に材料が付着しにくくなる。これにより、第1および第2の接触面には離型膜が必要なくなり、第1および第2の空隙を構成する面に施した離型膜は母型と駒との接触がないため損傷が小さく離型膜が剥離しにくくなる。よって、脱型時の剥離性が良好な状態を長期にわたって維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の弾性ローラ成形金型の一実施形態を示す断面図である。
【図2】空隙が接触面よりも上方に形成されている弾性ローラ成形金型の比較の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の弾性ローラ成形金型を用いて成形された弾性ローラの斜視図である。
【図4】成形金型の中心軸に対して平行な空隙が設けられている弾性ローラ成形金型の一実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の弾性ローラ成形金型の他の実施形態を示す断面図である。
【図6】比較例の弾性ローラ成形金型の実施形態を示す断面図である。
【図7】従来の弾性ローラ成形金型の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の弾性ローラ成形金型の一実施形態を示す断面図である。図1(a)は、本実施形態の弾性ローラ成形金型1の断面図である。図1(b)は、図1(a)において円A1で囲まれた領域の拡大断面図であり、図1(c)は、図1(a)において円A2で囲まれた領域の拡大断面図である。
【0015】
弾性ローラ成形金型1は、円筒形状の内部空間を有する母型2と、母型2の内部空間5を内部空間5の中心軸Bに沿って延びている芯材8と、母型2の両端部に設けられ、芯材8を支持する一対の第1の駒3および第2の駒4と、を有している。第1の駒3は、芯材8の上端を支持し、母型2の内部空間5に入り込んで、母型2の上端開口を塞ぐように配置されている。一方、母型2の下端開口を塞ぐように配置されている第2の駒4は、上端部が開口した円筒状であり、芯材8の下端を支持している。
【0016】
図1(a)に示すように、母型2の上端側の内面および下端側の外面は、それぞれテーパ状に形成されており、これらの面に対向する第1の駒3の外面および第2の駒4の内面も、それぞれテーパ状に形成されている。これらが互いに接触することで、第1の接触面6aと、第2の接触面6bとが形成されている。なお、各接触面は、気密性を有していない。
【0017】
第1の接触面6aに沿って隣接する位置には第1の空隙7aが母型2の周方向に連続して形成されている(図1(b)参照)。また、第2の接触面6bに沿って隣接する位置には、第2の空隙7bが母型2の周方向に連続して形成されている(図1(c)参照)。第1の空隙7aおよび第2の空隙7bには、母型2の内部空間5に材料が充填される時に、内部空間5に存在する空気を、第1および第2の接触面6a、6bを通じて外部方向へ逃がす役割がある。第1の空隙7aは、母型上端側内面のテーパ面と、前記テーパ面に対向する第1の駒3の壁面とで構成され、一端が内部空間5に向かって開口し、他端が第1の接触面6aに接している。一方、第2の空隙7bは、母型下側外面のテーパ面と、前記テーパ面対向する第2の駒4の壁面とで構成され、一端が内部空間5に向かって開口し、他端が第2の接触面6bに接している。第1の空隙7aおよび第2の空隙7bを構成しているすべての面には、母型2の内面と同様に離型膜20が形成されている。
【0018】
弾性ローラ成形金型1では、第1の接触面6aおよび第2の接触面6bが気密性を有していないため、成形過程において、第1の空隙7aおよび第2の空隙7bに熱硬化性の材料が滲入してくる。しかし、この材料は、母型2からの熱を受けて第1の空隙7a内および第2の空隙7b内で硬化して留まることになる。そのため、材料自体が、第1の空隙7aおよび第2の空隙7bを閉鎖するシール材となって、成型金型外部へ向けて材料の漏出することを阻止する。これにより、第1の接触面6aおよび第2の接触面6bに材料が付着することを防げるようになる。したがって、内部空間5の密閉性を良好な状態に保ち、成型品の不良発生を減少させることができる。また、母型2の内面に形成されている離型膜は母型2と、第1の駒3および第2の駒4の接触が無いため損傷が抑制されるので剥離しにくくなり、長期にわたり良質な成形品を安定して成形することが可能となる。さらに、第1の接触面6aおよび第2の接触面6bに適宜耐磨耗処理を施すことも可能となる。
【0019】
第1の空隙7aおよび第2の空隙7bに求められる機能は、各空隙内に滲入してきた材料が第1の接触面6aおよび第2の接触面6bに到達する前に、材料を各空隙内で硬化させることである。そのためには、母型2の内部空間5から各空隙への材料滲入時の流動抵抗を大きくするとともに、材料に母型2からの熱を確実に伝えて材料自体の硬化を促進することが必要となる。したがって、第1の空隙7aおよび第2の空隙7bの大きさや形状は、使用する材料の熱特性、硬化特性、粘度等によって決定されることになる。各空隙の大きさおよび形状とは、具体的に、第1および第2の駒3、4と母型2との間隔8aや第1および第2の接触面6a、6bと内部空間5との間隔である空間長さ8bを示す(図1(b)参照)。
【0020】
第1および第2の接触面6a、6bに材料を付着させないためには、第1および第2の空隙7a、7bは、間隔8aを芯材8の外面から母型2の内面までの距離R(図1(a)参照)よりも狭くするのが好ましい。これは、間隔8aを狭くすることで、母型2の内部空間5から第1および第2の空隙7a、7bへ材料が滲入しにくくなるとともに、母型2の熱を確実に材料に伝熱することができるからである。また、空間長さ8bは長いほうが好ましい。これは、空間長さ8bを長くすることで、第1および第2の空隙7a、7b内に滲入した材料を硬化させる時間を稼ぐことができ、この材料が第1および第2の接触面6a、6bに到達することを阻止できるからである。ただし、間隔8aを極端に狭くすると、金型加工の難易度が上がり、ひいてはコスト高に繋がってしまう。また、金型管理が容易ではなくなる。したがって、間隔8aは、必要以上に狭くすることは避け、使用する材料により適宜選択すればよい。
【0021】
なお、第1の空隙7aは、第1の接触面6aよりも下方に形成されていることが望ましい。また、第2の空隙7bは、第2の接触面6bよりも下方に形成されていることが望ましい。これは、例えば、第2の空隙7bが第2の接触面6bよりも上方に形成されている場合(図2参照)、材料の粘度によっては第2の接触面6bに材料が付着する場合があるからである。これは、材料の重力および表面張力と第2の空隙7b内の空気の浮力が関係で、材料が第2の空隙7bに滲入した時に、第2の空隙7bの形成場所が第2の接触面6bの上方の方が下方の場合に比べ材料が第2の接触面6bに到達しやすくなるからである。使用する材料の粘度が低い場合は、材料付着に関して各空隙が各接触面よりも下方に形成されていることが特に有効である。
【0022】
また、母型2の内面および第1および第2の空隙7a、7bをそれぞれ構成する第1の駒3、第2の駒4に形成されている離型膜20は、特に限定されるものではなく、少なくとも2回以上の成形において離型性を維持できる膜であればよい。例えば、一般に公知であるフッ素樹脂等からなるコーティング層を使用することができる。また、ここでは、離型膜と表記したが、母型2の材料自体に離型性を有するフッ素樹脂等を用いてもよい。ただし、離型膜の役割は、単に離型性を向上させるだけでなく、ローラ弾性層の表面状態の調整もしているため、離型膜は、離型性とローラ弾性層の表面状態を維持する機能とを有する必要がある。
【0023】
また、母型2の材質は、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、鉄等の鋼材にニッケルやクロム等のメッキを施した金属材料や、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、プリハードン鋼等の金属材料等を用いることが可能である。また、これら以外にも、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成樹脂やフッ素樹脂等の離型性が高い樹脂、セラミック等を使用することもできる。
【0024】
次に、本実施形態のローラ成形金型を用いたローラ成形方法について、図1を参照しながら説明する。
【0025】
まず、第1の駒3と第2の駒4とが芯材8を内部空間5で支持するように、第1のこま3と第2の駒4とを母型2に取り付ける(第1の工程)。このとき、第1の駒3と母型2との間には、上述した第1の空隙7aと第1の接触面6aが形成されている。さらに、第2の駒4と母型2との間には、上述した第2の空隙7bと第2の接触面6bが形成されている。
【0026】
その後、母型2の内部空間5に、第2の駒4に設けられた注入口(不図示)から熱硬化性の材料が注入すされる。注入された材料は、第1の駒3の方向(上方向)に向かって流動し、内部空間5の芯材8の周囲に充填されていく(第2の工程)。その後、母型2の温度を、第1の空隙7a内、および第2の空隙7b内に滲入した材料が第1、第2の接触面6a、6bに到達する前に硬化する温度を保つように制御する。
【0027】
母型2の熱により材料の硬化が完了し、第1の駒3および第2の駒4を芯材8から取り外し、硬化した材料を母型2から脱型すると、図3に示すように、芯材8を回転軸とし、弾性層10を備えている弾性ローラ50が成形されることになる。
【0028】
本実施形態では、第1および第2の空隙7a、7bを構成する面には離型膜20が形成されているため、各空隙に滲入した少量の材料は、容易に除去することができる。もちろん、材料の滲入は各空隙で食い止められる構造であるので、第1および第2の接触面6a、6bには材料付着等の汚れは発生しない。そのため、離型膜や金型に関する維持管理作業も大幅に削減することができ、コスト削減にも効果的となる。
【0029】
本実施形態の弾性ローラ成形金型を使用すれば、金型通りに弾性ローラを成形できるようになるので、振れ、真円度、円筒度が高精度になる。よって、成形された弾性ローラは、要求精度の厳しい画像形成装置用の弾性ローラとして使用することができる。もちろん精度要求がそれほど厳しくない一般弾性ローラとして使用してもよい。弾性ローラに機能を付加する場合は、芯材8の周囲に積層された弾性層の上に、各用途のための機能に応じた機能層を付与する。例えば、帯電ローラとして機能するための表層等を機能層として付与することで、高精度な画像形成装置用の帯電ローラを得ることができる。機能層を付与する方法としては、塗工や薄膜チューブの被覆を施す等の公知技術を利用することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、第1および第2の接触面6a、6bが中心軸Bに対して傾斜するように母型2、第1の駒3、および第2の駒4がテーパ状に形成されている。しかし、本発明では、各接触面の形状は特に限定されるものではなく、例えば、図4に示すような勾配のない円筒状でもよい。なお、図4(a)は、第1および第2の接触面6a、6bが中心軸Bに平行に形成されている弾性ローラ成形金型の一実施形態を示す断面図である。図4(b)は、図4(a)において円C1で囲まれた領域の拡大断面図であり、図4(c)は、図4(a)において円C2で囲まれた領域の拡大断面図である。
【0031】
弾性ローラ成形金型が図4に示すような構造であっても、第1の接触面6aと母型2の内部空間5との間に第1の空隙7a、第2の接触面6bと内部空間5との間に第2の空隙7bをそれぞれ形成することによって、各接触面への材料付着を阻止できる。
【0032】
(実施形態2)
図5は、本発明の弾性ローラ成形金型の他の実施形態を示す断面図である。以下、本実施形態の弾性ローラ成形金型11について説明する。なお、実施形態1で説明した弾性ローラ成形金型1と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
【0033】
弾性ローラ成形金型11は、図1に示す弾性ローラ成形金型1に比べ、発泡材料(例えば、熱硬化性ポリウレタン発泡体)を弾性ローラ成形用の材料として用いる場合に適している。発泡材料を用いてローラを成形する場合、弾性ローラ成形金型1では、材料を母型2の内部空間5へ圧入する方式なので、発泡時における発泡ムラを抑制するために高精度な圧力調整が要求される。そこで、弾性ローラ成形金型11では、予めカップ19に発泡材料を受けた後、第1の駒13、第2の駒14、および芯材18が取り付けられた母型12がカップ19の上部に取り付けられる。弾性ローラ成形金型11では、発泡材料を一旦カップ19で受けることによって、発泡材料が平衡状態となり、発泡時に発泡ムラが生じにくくなる。
【0034】
弾性ローラ成形金型11では、弾性ローラ成形金型1と同様に、第1の駒13が母型12に取り付けられたとき、母型12の内部空間15に隣接する第1の空隙17aと、第1の空隙17aを挟んで内部空間15から離れた第1の接触面16aとが形成される。また、第2の駒14が母型12に取り付けられたとき、母型12の内部空間15に隣接する第2の空隙17bと、第2の空隙17bを挟んで内部空間15から離れた第2の接触面16bとが形成される。さらに、内部空間15に隣接する第3の空隙17cと、第2の駒14の外面とカップ19の内面との接触面である第3の接触面16cとが形成される。
すなわち、弾性ローラ成形金型11では、弾性ローラ成形金型1と同様に、第1の駒13と母型12の内面とが接触する第1の接触面16aと、母型12の内部空間15とが、第1の空隙17aによって隔てられている。また、第2の駒13と母型2の外面とが接触する第2の接触面16bと、内部空間15とが、第2の空隙17bによって隔てられている。さらに、第3の接触面16cと、内部空間15とが、第3の空隙17cによって隔てられている。なお、第1〜第3の空隙17a〜17cの形状および大きさは、第1、第2の空隙7a、7bと同様である。
【0035】
したがって、弾性ローラ成形金型11においても、発泡材料が内部空間15の下部から上部に充填されていく際、発泡材料が第1〜第3の空隙17a〜17cに滲入しにくい構造となっている。そして、第1〜第3の空隙17a〜17cに侵入した発泡材料が第1〜第3の接触面16a〜16cに到達する前に発泡材料が硬化するように母型2の温度が制御される。これにより、第1〜第3の接触面16a〜16cへの材料付着を阻止できるので、離型膜が剥離しにくくなる。よって、脱型時の剥離性が良好な状態を長期にわたって維持することが可能となる。
【0036】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
本実施例では、図5に示すローラ成形金型11を用いる。
【0038】
本実施例において、母型12、第1の駒13、第2の駒14、およびカップ19の外径D1(図5参照)は、26mmとし、母型12の内径D2(図5参照)は、13mmとする。また、第1〜第3の空隙17a、17b、17cは、間隔8aが0.010mmで、空間長さ8bが10mmとなるようにそれぞれ形成されている。
【0039】
また、本実施例において、母型12の内面、各空隙17a、17b、17cを構成する第1および第2の駒13、14、およびカップ19の面には、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))が離型膜20として形成されている。なお、第1〜第3の接触面16a、16b、16cには、離型膜は形成されておらず、金属母体同士が接触している。
【0040】
さらに、本実施例において、母型12には、ステンレス鋼(SUS304)を用い、第1の駒13、第2の駒14、およびカップ19には、プリハードン鋼(HPM38)を用いている。
【0041】
次に、本実施例のローラ成形方法の手順について説明する。
【0042】
まず、混合ポリオールとして複数の材料を準備してそれらを混合する。その後、2種類のイソシアネートをNCOインデックス100となるように混合攪拌してローラ成形用の材料を生成する。
【0043】
次に、直径が5mmで長さが260mmの芯材18を内部空間15で支持するように、第1および第2の駒13、14を母型12に取り付け(第1の工程)、70℃に予熱する。その後、70℃に予熱したカップ19に混合攪拌した材料を注型し、直ちに、カップ19に第2の駒14を取り付ける。
【0044】
カップ19に注型した材料は、発泡材料であることから、自然発泡により内部空間15は材料で充填される(第2の工程)。その後、母型12を10分間、70℃に加熱することによって、材料を硬化させ、脱型する。すると、実施形態1と同様に弾性ローラ50(図3参照)が得られた。本実施例では、弾性ローラ50の弾性層外径は13mmであり、長さは220mmである。
【0045】
本実施例では、第1〜第3の空隙17a〜17cに滲入した発泡材料が各接触面16a、16b、16cに到達する前に硬化した状態で、成形を行うことができた。また、硬化した発泡材料も成形金型11から容易に脱型することができた。脱型後、第1〜第3の空隙17a〜17cにて発生する薄いバリが若干除去しにくい傾向が見られたが、母型12の内面における材料付着に起因した汚れは確認されなかった。この成形を繰り返し行っても、第1〜第3の接触面16a〜16cの汚れは確認されず、良好な成形を続行することができ、成形品にも特に影響は見られず、安定して良品を成形することができた。
【0046】
(比較例1)
本比較例では、図6に示すローラ成形金型111を用いる。
【0047】
ローラ成形金型111の構成は、第1〜第3の空隙17a〜17cが形成されていない点を除いてローラ成形金型11と同様である。すなわち、ローラ成形金型111では、母型112の内部空間115と第1〜第3の接触面117a〜117cとが隣接している。各接触面116a〜116cおよび母型2の外面を除く部分に、実施例1と同じフッ素樹脂を離型膜として形成した。
【0048】
ローラ成形金型111を用いて、上述した実施例1と同様の手順で弾性ローラの成形を行うと、離型膜の剥離は確認できなかった。しかし、各接触面106a〜106cと離型膜との境界部分の材料付着が成形毎に積み重ねられ、脱型時に成形品の端部を引きちぎってしまう等の現象が発生した。これは、ローラ成形金型111は、ローラ成形金型11のように、内部空間115と第1〜第3の接触面117a〜117cとを隔てるもの(第1〜第3の空隙17a〜17c)が設けられていないからである。さらに、ローラ成形金型111では、付着した材料を除去するために清掃作業を行うと、処理した離型膜が削れてしまい、さらに材料が付着しやすくなるという悪循環が発生した。
【符号の説明】
【0049】
1 ローラ成形金型
2 母型
3 第1の駒
4 第2の駒
8 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口と、下端開口と、円筒形状の内部空間と、を備えた母型と、
前記母型の前記上端開口に取り付けられ、前記母型の前記内部空間に配置される芯材の上端を支持する第1の駒と、
前記母型の前記下端開口に取り付けられ、前記芯材の下端を支持する第2の駒と、を有し、
前記第1の駒を前記母型の前記上端開口に取り付けたときに、前記第1の駒と前記母型との間に、前記内部空間に隣接する第1の空隙と、該第1の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第1の駒と前記母型とが接触する第1の接触面と、が前記母型の周方向に連続して形成され、
前記第2の駒を前記母型の前記下端開口に取り付けたときに、前記第2の駒と前記母型との間に、前記内部空間に隣接する第2の空隙と、該第2の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第2の駒と前記母型とが接触する第2の接触面と、が前記母型の前記周方向に連続して形成され、
少なくとも前記内部空間と、前記第1の空隙と、前記第2の空隙と、を構成する面に離型膜を有している、弾性ローラ成形金型。
【請求項2】
前記第1の空隙および前記第2の空隙は、前記芯材の外面から前記母型の内面までの距離よりも狭い間隔で形成されている、請求項1に記載の弾性ローラ成形金型。
【請求項3】
前記第1の空隙は、前記第1の接触面よりも下方に形成され、かつ、前記第2の空隙は、前記第2の接触面よりも下方に形成されている、請求項1から請求項2までのいずれか1項に記載の弾性ローラ成形金型。
【請求項4】
上端開口と、下端開口と、円筒形状の内部空間と、を備えた母型と、前記母型の内部空間に配置される芯材の上端を支持する第1の駒と、前記芯材の下端を支持する第2の駒と、を用いる弾性ローラ成形方法において、
前記第1の駒と前記第2の駒が前記芯材を前記内部空間で支持するように、前記第1の駒と前記第2の駒とを前記母型に取り付ける第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記内部空間に熱硬化性の材料を充填する第2の工程と、を有し、
前記第1の工程では、前記母型と前記第1の駒との間に、前記内部空間に隣接する第1の空隙と、該第1の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第1の駒と前記母型とが接触する第1の接触面と、が前記母型の周方向に連続して形成され、かつ前記母型と前記第2の駒との間に、前記内部空間に隣接する第2の空隙と、該第2の空隙を挟んで前記内部空間から離れた位置で前記第2の駒と前記母型とが接触する第2の接触面と、が前記母型の前記周方向に連続して形成され、少なくとも前記内部空間と、前記第1の空隙と、前記第2の空隙と、を構成する面に離型膜を有している、ことを特徴とする弾性ローラ成形方法。
【請求項5】
前記材料が、熱硬化性ポリウレタン発泡体であることを特徴とする、請求項4に記載の弾性ローラ成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−98513(P2011−98513A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254867(P2009−254867)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】