説明

弾性波デバイス

【課題】信頼性の高い弾性波デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、絶縁性基板11と、弾性波を励振する振動部22を有し、振動部22が絶縁性基板11と対向し、かつ振動部22が空隙51に露出するように、絶縁性基板11の上面に実装された弾性波デバイスチップ20と、振動部22を囲むように設けられ、絶縁性基板11と弾性波デバイスチップ20とを接合する接合部と、を具備し、接合部は、半田32と、半田32より高い融点を有しかつ絶縁性基板11の上面のコプラナリティより大きな厚さを有する金属層42と、を積層して形成されている弾性波デバイスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器等にフィルタ、デュプレクサ等として用いられる弾性波デバイスには、小型化が要求されている。弾性波デバイスに用いる弾性波素子としては、圧電基板上にIDT(Inter Digital Transducer)を形成した弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子、圧電膜を電極で挟んだ圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)等がある。例えば、特許文献1には、弾性表面波素子がベース基板上にフェイスダウン構成をもって、実装及び搭載される構成において、圧電基板上に設けられたIDT等を、当該圧電基板の周縁部に配設された半田からなる接合部材を用いて気密封止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−64599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の弾性波デバイスでは、前記封止用半田及び/又は、かかる封止用半田と併用される半田バンプ電極により、IDT電極指間の短絡、及び/又は特性の悪化等が生じる可能性があった。本発明は上記課題に鑑み、信頼性の高い弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板と、弾性波を励振する振動部を有し、前記振動部が前記基板と対向し、かつ前記振動部が空隙に露出するように、前記基板の上面に実装された弾性波デバイスチップと、前記振動部を囲むように設けられ、前記基板と前記弾性波デバイスチップとを接合する接合部と、を具備し、前記接合部は、半田と、前記半田より高い融点を有しかつ前記基板の上面のコプラナリティより大きな厚さを有する高融点材と、を積層して形成されている弾性波デバイスである。本発明によれば、信頼性の高い弾性波デバイスを提供することができる。
【0006】
上記構成において、前記高融点材は、前記半田より大きな厚さを有する構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に弾性波デバイスの信頼性を高めることができる。
【0007】
上記構成において、前記基板の前記弾性波デバイスチップと対向する面に設けられた金属層を具備し、前記高融点材は、前記半田よりも、前記弾性波デバイスチップに近い側に設けられ、前記半田は前記金属層と接触し、前記金属層は前記高融点材よりも高い半田濡れ性を有し、前記高融点材は前記基板よりも高い半田濡れ性を有する構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に弾性波デバイスの信頼性を高めることができる。
【0008】
上記構成において、前記接合部は、前記振動部を完全に囲む構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に弾性波デバイスの信頼性を高めることができる。
【0009】
上記構成において、前記基板と前記弾性波デバイスチップとを電気的に接合し、前記半田と、前記高融点材とを積層して形成された電極を具備する構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に弾性波デバイスの信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信頼性の高い弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、比較例に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図2】図2は、実施例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図3】図3(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスが備える弾性波デバイスチップを例示する平面図である。図3(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスが備える絶縁性基板を例示する平面図である。
【図4】図4(a)から図4(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図6】図6は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図7】図7は、実施例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図8】図8(a)から図8(c)は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図9】図9は、実施例2に係るモジュールを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
弾性波デバイスにおける問題を明らかにするため、本発明の実施例の説明の前に、比較例について説明する。
【0014】
比較例に係る弾性波デバイス100Rは、図1(a)に示すように、チップ支持基板110となる絶縁性基板111、電極112、封止用金属層113、ビア配線114、外部接続用端子115を具備している。絶縁性基板111は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂、又はセラミック等の絶縁基材からなり、多層基板又は単層の基板として構成される。電極112、封止用金属層113、ビア配線114、及び外部接続用端子115は、例えばタングステン(W)ペーストの焼結体等の金属から形成される。さらに電極112及び封止用金属層113は、ニッケル(Ni)層上に金(Au)層を形成されてなり、絶縁性基板111の上面(弾性波デバイスチップ120の搭載面)に配設されている。外部接続用端子115は、絶縁性基板111の下面に配設されている。ビア配線114は、絶縁性基板111を貫通し、電極112と外部接続用端子115とを電気的に接続する。封止用金属層113は、後述する弾性波デバイスチップ120の封止用金属層124に対応して、環状に配設されている。
【0015】
弾性波デバイスチップ120は、圧電基板121、圧電基板121の一方の表面に形成された振動部122、配線123、及び封止用金属層124を備える。圧電基板121は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)等の圧電体からなる。後述するように、振動部122は、IDT及び反射器を含み、弾性波を励振する。弾性波デバイスチップ120がSAWデバイスチップである場合、振動部122が絶縁性基板111と対向し、かつ振動部122が空隙151に露出して配設されるように、弾性波デバイスチップ120は絶縁性基板111の上面にフリップチップ(フェイスダウン)実装される。振動部122と絶縁性基板111との間の距離L1は、例えば数十μmである。空隙151の存在により、振動部122の振動は妨げられることはない。振動部122の振動を良好にするためには、距離L1が1μm以上であることが好ましい。
【0016】
振動部122、配線123、及び封止用金属層124は、例えば同じ金属層からなり、例えば厚さ200nmのアルミニウム銅(AlCu)合金等の金属からなる。なお、アルミニウム銅(AlCu)合金とは、アルミニウム(Al)と銅(Cu)とを含む合金である。配線123は、振動部122から導出・延在され、外部接続用端子部を含む。また封止用金属層124は、圧電基板121の弾性波デバイスチップ120の搭載面において周縁部近傍に沿って環状に配設され、振動部122及び配線123からは離間し(電気的には絶縁状態)、かつ振動部122及び配線123を囲んでいる。そして、前記配線123の外部接続用端子部の表面、及び封止用金属層124の表面には、金/チタン(Au/Ti)積層体からなる下地膜125及び下地膜126が選択的に配設されている。
【0017】
フリップチップ接続状態においては、弾性波デバイスチップ120の配線123の外部接続用端子部における下地膜125と、チップ支持基板110における電極112との間、封止用金属層124における下地膜126とチップ支持基板110の封止用金属層124との間は、それぞれ半田132により接続されている。弾性波デバイスチップ120における封止用金属層124とチップ支持基板110における封止用金属層113との間が半田132により相互接続されることにより、所謂シールリング(接合部)が形成され、前記弾性波デバイスチップ120の振動部122及び配線123は気密封止される。
【0018】
前記フリップチップ接続構造においては、図1(b)に示すように、絶縁性基板111に変形が生じることがある。特に絶縁性基板11は、絶縁性基材上に導電材からなる配線パターンが形成されており、半田リフロー工程等の熱履歴が加わることにより、異なる材料間の熱収縮差により、大きく変形することがある。
【0019】
図1(b)では絶縁性基板111が湾曲した場合を図示しており、上面のコプラナリティL2は、例えば数μm〜20μm程度となる可能性がある。なお、コプラナリティとは、平坦性、又は共平面性ともいわれ、同一の平面内における最低点と最高点との高さの差を意味する。このように、コプラナリティが悪化した場合(コプラナリティが大きくなった場合)、絶縁性基板111と弾性波デバイスチップ120との間の距離L1が小さくなり、空隙151の確保が困難となる可能性がある。言い換えれば、振動部122が絶縁性基板111に接触する可能性がある。空隙151が確保されない場合、振動部122の振動が妨げられ、弾性波デバイスチップ120の特性が悪化する恐れがある。空隙151を確保する、すなわち距離L1を所定の値以上とするためには、前記配線123の外部接続用端子部及び封止用金属層124に配設される半田131及び半田132の量を増加させて、厚さを大きくすればよい。なお、厚さ方向は図1(a)の上下方向である。
【0020】
しかしながら、前記フリップチップ接続構造では、チップ支持基板110と弾性波デバイスチップ120とは、例えば弾性波デバイスチップ20をチップ支持基板110に押し付けることで、接合・一体化される。このとき、溶融状態にある半田131は、図1(b)に示すように横方向に広がる。特に、絶縁性基板11と圧電基板21との距離が小さくなるデバイスチップの中央付近の領域では、半田131が下地膜125を越えて大きく広がり、図1(b)の破線の円により囲んだ如く、振動部122及び/又は配線123にまで流動する場合がある。これにより、振動部122の振動が妨げられる恐れがある。また、IDTの電極指間、半田131同士、半田132同士、又は半田131と半田132との間において、短絡が発生する恐れがある。半田131及び半田132の量が多い場合、半田131及び半田132はより大きく広がることから、このような問題が生じやすい。
【0021】
また、半田131及び半田132による接合を実施する際に、フラックスを用いる場合がある。チップ支持基板110と弾性波デバイスチップ120との間の距離が小さくなった場合、飛散したフラックスが振動部122又は配線123に付着する恐れがある。フラックスの振動部122又は配線123への付着は、弾性波デバイスチップ120の特性の悪化を招来する。すなわち、チップ支持基板110となる絶縁性基板11の上面のコプラナリティが大きくなることで、弾性波デバイスの信頼性が低下する可能性がある。
【0022】
次に、実施例1について図2から図3(b)を用いて説明する。なお、図2は、図3(a)及び図3(b)に示すA−Aに沿った断面を図示する断面図である。
【0023】
実施例1に係る弾性波デバイス100は、図2に示すように、チップ支持基板10となる絶縁性基板11に、電極12、封止用金属層13、ビア配線14、外部接続用端子15を具備している。絶縁性基板11は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂、又はセラミック等の絶縁体からなり、例えば多層基板又は端層の基板から構成される。電極12及び封止用金属層13、ビア配線14、及び外部接続用端子15は、例えばWペーストの焼結体等の金属から形成されている。さらに電極12及び封止用金属層13は、ニッケル(Ni)層上に金(Au)層を形成されてなり、絶縁性基板11の上面(弾性波デバイスチップ20の搭載面)に配設されている。外部接続用端子15は、絶縁性基板11の下面に配設されている。ビア配線14は、絶縁性基板11を貫通して、電極12と外部接続用端子15とを電気的に接続する。また、封止用金属層13は、後述する弾性波デバイスチップ20における封止用金属層24に対応して環状に配設されている。
【0024】
弾性波デバイスチップ20は、圧電基板21と、その一方の表面に形成された振動部22、配線23及び封止用金属層24を具備している。圧電基板21は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)等の圧電体からなる。振動部22は、IDT及び反射器を含み、弾性波を励振する。弾性波デバイスチップ20がSAWデバイスチップである場合には、振動部22が前記絶縁性基板11と対向し、かつ空隙51に露出して配設されるように、弾性波デバイスチップ20は絶縁性基板11上面にフリップチップ(フェイスダウン)実装される。振動部22と絶縁性基板11との間の距離L1は、例えば数十μmである。空隙51の存在により、振動部22の振動は妨げられない。振動部22の振動を良好にするためには、距離L1が1μm以上であることが好ましい。
【0025】
振動部22、配線23、及び封止用金属層24は、例えば同じ金属層からなり、例えば厚さ200nmのアルミニウム銅(AlCu)合金等の金属からなる。配線23は、振動部22から延在・導出されて、その一部に外部接続用端子部23Aを含む。また封止用金属層24は、圧電基板21の弾性波デバイスチップ20の搭載面において、その周縁部近傍に沿って環状に配設され、前記振動部22及び配線23からは離間し(電気的には絶縁状態)、かつ振動部22及び配線23を囲んでいる。そして、前記配線23の外部接続用端子部の表面、及び封止用金属層24の表面には、金/チタン(Au/Ti)積層体からなる下地膜25及び下地膜26が選択的に配設されている。
【0026】
フリップチップ接続状態においては、前記弾性波デバイスチップ20における配線23の外部接続用端子部23Aにおける下地膜25と、チップ支持基板10における電極12との間は、前記下地膜25に接して配設された柱状電極41と、かかる柱状電極41と電極12との間に配設された半田31により接続されている。
【0027】
一方、弾性波デバイスチップ20における下地膜26と、チップ支持基板10における封止用金属層13との間は、前記下地膜26に接して配設された金属層42(高融点材)と、かかる金属層42と封止用金属層13との間に配設された半田32により接続されている。
【0028】
弾性波デバイスチップ20における封止用金属層24とチップ支持基板10における封止用金属層13との間が、金属層42と半田32とにより相互接続されることにより、所謂シールリング(接合部)が形成され、弾性波デバイスチップ20の振動部22及び配線23は気密封止される。
【0029】
前記図2に示す弾性波デバイス100における、チップ支持基板10及び弾性波デバイスチップ20それぞれの対向面における各部位の配置の一例を図3(a)及び図3(b)に示す。
【0030】
図3(a)に示すように、弾性波デバイスチップ20のチップ支持基板10への対向面である圧電基板21の表面には、振動部22、配線23、柱状電極41及び金属層42が設けられている。柱状電極41の上端面、つまりチップ支持基板10への対向面には、半田31が配設されている。振動部22は、IDT22A及び反射器22Bを含んでいる。一方、金属層42は所定の厚さを有し、圧電基板21の表面の周縁部近傍に沿って環状に配設され、振動部22、配線23及び柱状電極41から離間し(電気的には絶縁状態)、かつ振動部22、配線23及び柱状電極41を囲んでいる。金属層42の上端面、すなわちチップ支持基板10への対向面には、半田32が配設されている。
【0031】
一方、図3(b)に示すように、チップ支持基板10である絶縁性基板11の弾性波デバイスチップ20への対向面には、電極12及び封止用金属層13が配設されている。電極12は、弾性波デバイスチップ20の柱状電極41と対応する位置に配設されている。封止用金属層13は、弾性波デバイスチップ20の金属層42に対応して、環状に配設されている。
【0032】
かかる構成において、振動部22及び配線23は、例えば厚さ200nmのアルミニウム(Al)合金等の金属からなる。下地膜25及び下地膜26は、例えば厚さ100nmのチタン(Ti)層上に、厚さ200nmの金(Au)層を積層して構成される。柱状電極41、及び金属層42は、例えば銅(Cu)等、半田31及び半田32を構成する半田材よりも高い融点を有する材料から形成される。半田31及び半田32は例えば錫/銀(Sn/Ag)合金等の金属からなる半田材により形成される。前記柱状電極41、及び金属層42それぞれの厚さは例えば50μmが選択される。
【0033】
前記実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法について図4(a)から図6を用いて説明する。
【0034】
図4(a)から図5は、前記弾性波デバイスチップ20の製造工程を示す。なお、ここでは、圧電基板上に2個の弾性波デバイスチップが実装される状態を例示する。まず、大判の圧電基板21Aの一方の主面上に、例えばスパッタリング法を用いて、例えばアルミニウム合金(アルミニウム(Al)を主成分として銅(Cu)等を添加した合金)からなるアルミニウム合金層43を形成する。アルミニウム合金層43を形成した後、例えばドライエッチング法により、前記アルミニウム合金層43を選択的に除去し、振動部22を含む弾性波デバイス領域を複数個形成する。このとき、それぞれの振動部22に連続する配線23は形成されない(図4(a)参照)。
【0035】
次いで、前記アルミニウム合金層43上に、選択的にフォトレジスト層(図示せず)を形成した後、例えば蒸着法により、チタン(Ti)及び金(Au)を順次積層する。しかる後、リフトオフ法により、金(Au)/チタン(Ti)積層体を選択的に除去し、下地膜25及び下地膜26を形成する(図4(b)参照)。
【0036】
次いでフォトレジスト層(図示せず)をマスクとして、例えば電解メッキ法により、下地膜25及び下地膜26上に、銅(Cu)層及び半田層を順次被着・積層する。このとき、前記アルミニウム合金層43は電解メッキ用の給電層として機能する。しかる後、前記フォトレジスト層を除去し、前記フォトレジスト層を除去し、前記下地膜25上に銅(Cu)からなる柱状電極41及び半田31を、下地膜26上に銅(Cu)からなる金属層42及び半田32を形成する(図4(c)参照)。柱状電極41の直径D1は例えば50μmΦである。
【0037】
次いで、所謂ウェットエッチング法を適用して、前記アルミニウム合金層43に対し再度パターニング処理を施し、前記振動部22に連続する配線23、及び封止用金属層24を選択的に形成する(図5(a)参照)。かかる構成において、配線23と封止用金属層24との間は分離され、電気的に絶縁状態となる。しかる後、前記圧電基板21Aにダイシング処理を施し、個々の弾性波デバイスチップ20に分離する(図5(b)参照)。
【0038】
上記工程を経て形成された弾性波デバイスチップ20を絶縁性基板11上にフリップチップ実装する(図6参照)。実装するための半田リフロー処理は、例えば低酸素濃度雰囲気中で、絶縁性基板11と弾性波デバイスチップ20とを対向させ、加熱及び加圧することで行われる。このときの処理温度は、半田は溶融し、かつ柱状電極41及び金属層42は溶融しない温度が選択される。かかる半田リフロー処理により、前記半田31及び半田32は溶融し、半田31は電極12上に、半田32は封止用金属層13上に濡れ広がる。濡れ広がった半田31及び半田32が固化することで、絶縁性基板11と弾性波デバイスチップ20とは接合・一体化される。柱状電極41及び金属層42は溶融せず、その厚さを維持する。
【0039】
次に、絶縁性基板11が変形(湾曲)し、コプラナリティの悪化が生じた場合における、実施例1に係る弾性波デバイス100の特徴について説明する。コプラナリティの悪化が生じた絶縁性基板11に弾性波デバイスチップ20が搭載された状態を図7に示す。
【0040】
図7に示すように、弾性波デバイスチップ100Sにあっては、所定の厚さを有する柱状電極41及び金属層42が存在するため、絶縁性基板11が弾性波デバイスチップ20側に凸状に変形した場合でも、絶縁性基板11の表面と弾性波デバイスチップ20の表面との距離は十分な大きさに維持される。このため、空隙51は確保される。また、図7に破線の円で囲んだように、柱状電極41が所定の厚さを有するため、半田31が柱状電極41の外表面に沿って濡れ広がる距離も大きくなる。同様に、金属層42も所定の厚さを有することから、半田32が金属層42の外表面に沿って濡れ広がる距離も大きくなる。従って、かかる半田31及び半田32が弾性波デバイスチップ20の配線23まで流動することは抑制され、さらに振動部22まで到達することは大きく抑制される。柱状電極41及び金属層42が銅(Cu)から形成されている場合、錫銀(SnAg)系半田の濡れ性は低いため、かかる点からも半田の濡れ広がりはより抑制される。
【0041】
実施例1によれば、電極12及びシールリングには、半田31及び半田32と、絶縁性基板11の上面のコプラナリティの変動量(製造後に見込まれる量)よりも厚い柱状電極41及び金属層42が設けられている。このため、絶縁性基板11が変形した場合でも空隙51は確保される。また、半田31は柱状電極41に、半田32は金属層42にそれぞれ濡れ広がる。このため、半田31及び半田32の振動部22又は配線23への接触は抑制され、半田同士の接触も抑制される。また、絶縁性基板11と弾性波デバイスチップ20との距離が大きいため、接合処理の際、フラックスを適用した場合であっても、飛散したフラックスが振動部22等に付着することは抑制される。このため、振動部22の振動は妨げられない。従って、弾性波デバイスの特性の悪化、及び短絡は抑制され、信頼性の高い弾性波デバイスを得ることができる。
【0042】
半田31は、コプラナリティによりバラつく電極12と柱状電極41との距離の変動を吸収する量が求められる。半田32は、封止用金属層13と柱状電極41との距離の変動を吸収する量が求められる。また、柱状電極41及び金属層42は、半田31及び半田32よりも厚いことが好ましい。半田31及び半田32の厚さとは、弾性波デバイス100の製造後(半田リフロー後)の厚さを指し、空隙51が位置するチップ内側の柱状電極41と電極12との間に形成される半田の厚さ、又は金属層42と封止用金属層13との間に形成される半田の厚さを指す。柱状電極41及び金属層42が厚いことにより、溶融した半田31及び半田32の濡れ広がる範囲が柱状電極41及び金属層42の各々に留まりやすくなり、かつ絶縁性基板11及び圧電基板21には濡れ広がりにくくなる。このことにより、弾性波デバイスの信頼性を効果的に高めることができる。なお、圧電基板21の上に半田が濡れ広がった場合でも、振動部22に到達しなければ問題はない。
【0043】
電極12及び封止用金属層13は、柱状電極41及び金属層42よりも高い半田濡れ性を有する。また、柱状電極41及び金属層42は、絶縁性基板11及び圧電基板21よりも高い半田濡れ性を有する。このため、半田31は、絶縁性基板11及び圧電基板21よりも柱状電極41に濡れ広がりやすい。また半田32は、絶縁性基板11及び圧電基板21よりも金属層42に濡れ広がりやすい。つまり、半田31及び半田32の濡れ広がる範囲は、それぞれ柱状電極41及び金属層42に留まりやすい。従って、半田31及び半田32が絶縁性基板11及び圧電基板21に濡れ広がることは抑制される。これにより、短絡、及び半田31及び半田32の振動部22又は配線23への接触は、効果的に抑制される。また半田31同士、半田32同士、半田31及び半田32が接触することも抑制される。
【0044】
図3(a)及び図3(b)において説明したように、封止用金属層24は、振動部22を囲むように、圧電基板21の外周に沿って設けられている。このため、例えば半田リフロー工程において温度が上昇した場合、圧電基板21に大きな圧力が加わる可能性がある。実施例1によれば、金属層42が半田31及び半田32より大きな厚さを有することにより、圧電基板21に加わる応力が分散される。また、柱状電極41が圧電基板21を支える柱として機能するため、圧電基板21に加わる応力は緩和される。これにより、圧電基板21の破損が抑制されるため、効果的に弾性波デバイスの信頼性を高めることができる。なお、柱状電極41以外に、応力を緩和するためのダミー電極を設けてもよい。図2及び図3(a)において、柱状電極41は金属層42の内側に設けられていたが、柱状電極41が金属層42よりも外側に設けられていてもよい。また、金属層42のさらに外側に、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド等の樹脂、又は半田、ニッケル(Ni)等の金属からなる封止材を設けてもよい。
【0045】
絶縁性基板11は、例えばセラミック、樹脂、又はガラス等の絶縁体からなる。また絶縁性基板11以外に、例えばシリコン(Si)等からなる半絶縁性基板、ニッケル(Ni)、42アロイ、コバール(KOVAR)、ステンレス等の金属からなる導電性基板、タンタル酸リチウム(LiTaO)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)等の圧電体からなる圧電基板、又はフレキシブルプリント基板等のプリント基板を基板として用いてもよい。
【0046】
振動部22及び配線23は、アルミニウム銅(AlCu)以外に、例えば銅(Cu)合金、金(Au)、チタン(Ti)等、他の金属からなるとしてもよい。振動部22及び配線23各々の厚さは、例えば厚さ100〜500nmとしてもよい。下地膜25及び下地膜26は、金/チタン(Au/Ti)以外に、例えば銅(Cu)合金、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)等の金属からなるとしてもよい。下地膜25及び下地膜26各々の厚さは、例えば例えば厚さ50〜1000nmとしてもよい。半田31及び半田32は、錫/銀(Sn/Ag)合金以外に、例えば錫(Sn)、及び錫/銀(Sn/Ag)合金以外の錫(Sn)合金等の金属からなるものを用いてもよい。半田31及び半田32の厚さT2は例えば1〜30μm、直径D2は例えば15〜250μmとすることができる。柱状電極41及び金属層42は、銅(Cu)以外に、金(Au)、ニッケル(Ni)、金錫(AuSn)、銅錫(CuSn)等の金属からなるとしてもよいし、銀(Ag)又は銅(Cu)等を含む導電性ペーストの焼結体からなるとしてもよい。柱状電極41の厚さT1は例えば5〜300μm、直径D1は例えば10〜200μmとしてもよい。さらに、金属層42の代わりに、例えば樹脂と、樹脂の外側を覆う金属膜を用いてもよい。金属膜は、金(Au)、銅(Cu)、又はニッケル(Ni)等からなる。材料を変更した場合でも、柱状電極41及び金属層42が半田31及び半田32よりも高い融点を有していればよい。
【0047】
このように、柱状電極41と、金属層42とは、異なる材料からなるとしてもよい。しかしながら、柱状電極41と、金属層42とは同一の材料を用いることにより、両者を同じ工程で形成することができる。従って、柱状電極41と、金属層42とは同じ材料により形成することが好ましい。また、半田32及び金属層42が導電体である場合、金属層42は弾性波デバイスチップ20をノイズから保護するシールドとして機能する。この場合、金属層42を接地電位に接続すればシールド効果は高まるので、弾性波デバイスチップ20上又は絶縁性基板11上の接地電極(不図示)と金属層42とを電気的に接続するとよい。金属層42は振動部22を完全に囲んでいなくてもよく、例えば金属層42の一部が開放されていてもよい。ただし、封止の気密性を高くし、かつ金属層42をシールドとして有効に機能させるためには、金属層42は振動部22を完全に囲んでいることが好ましい。
【0048】
次に実施例1の変形例について説明する。図8(a)から図8(c)は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。図4(a)から図5(b)に示した工程は、実施例1の変形例においても共通である。
【0049】
図8(a)に示すように、集合基板11Aに、複数の弾性波デバイスチップ20をフリップチップ実装する。図8(b)に示すように、例えばシードメタル(不図示)をスパッタリングにより形成した後、電解メッキにより例えばニッケル(Ni)からなる金属被覆層61を形成する。しかる後、図8(c)に示すように、集合基板11Aに対しダイシング処理を施し、複数の弾性波デバイス100Aを形成する。以上の工程により、実施例1の変形例に係る弾性波デバイス100Aが形成される。
【0050】
実施例1の変形例によれば、実施例1と同様に、弾性波デバイスの特性の悪化、及び短絡が抑制され、信頼性の高い弾性波デバイスを得ることができる。さらに、ニッケル(Ni)からなる金属被覆層61によりチップ全体を覆うことにより、気密性が高くなる。なお、実施例1においても、金属被覆層61を設けてもよい。なお、前記金属被覆層61に代えて、例えばエポキシ系樹脂等の樹脂を塗布し、樹脂被覆層を形成することにより、気密性を高めることもできる。さらに、前記図8(a)に示すように、集合基板11A上に複数の弾性波デバイスチップ20を搭載した後、複数の弾性波デバイスチップ20に対し、例えばトランスファモールド法、又は圧縮成形法等により、エポキシ樹脂等の封止用樹脂を一括して被覆することができる。その後、封止用樹脂と集合基板11Aとを一括してダイシング処理することで、複数の弾性波デバイスを形成することができる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、弾性波デバイスチップを利用したモジュールの例である。図9は、実施例2に係るモジュールを例示する断面図である。図2に示した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0052】
図9に示すように、実施例2に係るモジュール200においては、絶縁性基板11上に、2つの弾性波デバイスチップ20、2つのチップ部品71が搭載されている。チップ部品71は、半田72により絶縁性基板11に実装されている。チップ部品71は、例えばインダクタ、キャパシタ、IC(Integrated Circuit:集積回路)等である。そして、これらの弾性波デバイスチップ20及びチップ部品71は、エポキシ樹脂等からなる封止用樹脂73により被覆され、封止されている。
【0053】
モジュール200内に含まれる弾性波デバイスチップ20及びチップ部品71は、それぞれが単数又は複数である場合がある。モジュール200が複数の弾性波デバイスチップ20、又は複数のチップ部品71を備える場合、絶縁性基板11の面積が増加し、また絶縁性基板11に設けられた配線パターンが複雑化することがある。このような場合、絶縁性基板11上面のコプラナリティが悪化する可能性がある。しかしながら、弾性波デバイスチップ20が前述の如き電極構造を有することから、弾性波デバイスチップ20は特性の劣化を招かず、モジュールの信頼性を高めることができる。
【0054】
半田31、半田32及び半田72は、いずれも半田ペーストを用いて形成することができる。このため、モジュール200を簡単な工程で製造することができる。
【0055】
実施例1〜2においては、弾性波デバイスチップ20はSAWデバイスチップであるとしたが、弾性波デバイスチップ20を、例えば弾性境界波デバイスチップ、及びFBAR等、他の弾性波デバイスチップとしてもよい。FBARを用いる場合、圧電基板21の代わりに、例えばシリコンからなる基板を用いる。また、振動部22は、圧電薄膜と、圧電薄膜を挟む上部電極及び下部電極とが重なる領域である。
【0056】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
絶縁性基板 11
電極 12
弾性波デバイスチップ 20
圧電基板 21
振動部 22
IDT 22A
反射器 22B
配線 23
空隙 51
半田 31、32
柱状電極 41
金属層 42
チップ部品 50
弾性波デバイス 100、100A、100S
モジュール 200

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
弾性波を励振する振動部を有し、前記振動部が前記基板と対向し、かつ前記振動部が空隙に露出するように、前記基板の上面に実装された弾性波デバイスチップと、
前記振動部を囲むように設けられ、前記基板と前記弾性波デバイスチップとを接合する接合部と、を具備し、
前記接合部は、半田と、前記半田より高い融点を有しかつ前記基板の上面のコプラナリティより大きな厚さを有する高融点材と、を積層して形成されていることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記高融点材は、前記半田より大きな厚さを有することを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記基板の前記弾性波デバイスチップと対向する面に設けられた金属層を具備し、
前記高融点材は、前記半田よりも、前記弾性波デバイスチップに近い側に設けられ、
前記半田は前記金属層と接触し、
前記金属層は前記高融点材よりも高い半田濡れ性を有し、前記高融点材は前記基板よりも高い半田濡れ性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記接合部は、前記振動部を完全に囲むことを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記基板と前記弾性波デバイスチップとを電気的に接合し、前記半田と、前記高融点材とを積層して形成された電極を具備することを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の弾性波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−151698(P2012−151698A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9302(P2011−9302)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】