説明

形状測定装置

【課題】高精度の測定を効率よく行うことができる。
【解決手段】形状測定装置11において、光学式センサ22が、所定の波長域の測定光を被検物12に照射し、被検物12および光学式センサ22は、測定光の波長域の光を遮断し、測定光の波長域以外の光を透過可能な透過窓32および33を有した筐体14に収納されている。また、透過窓32および33は、測定光の波長域の光を反射または吸収することができる。本発明は、例えば、光学的な手法により物体の形状を三次元的に計測する三次元計測装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関し、特に、高精度の測定を効率よく行うことができるようにした形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体を撮像して取得した画像に基づいて、その物体の形状を測定する測定方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、測定の対象となる物体にスペクトルパターンを照射し、そのスペクトルパターンの照射方向とは異なる方向から、スペクトルパターンが照射されている物体を撮像することにより、物体の三次元的な位置を測定する測定方法が開示されている。また、特許文献1には、物体の三次元的位置を精度良く知ろうとするときには、測定光であるスペクトルパターン以外の光を全て遮断することができる特殊な環境が望まれることが示唆されており、特許文献1では、そのような特殊な環境を設定しなくてもよい測定方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、工場外からの外来光が測定面に照射されないように遮蔽板を設けて外来光を遮蔽し、部品に穿設された貫通孔の位置をコントラストに基づいて測定する測定方法が開示されている。
【0005】
これらの測定方法では、スペクトルパターンなどの測定光が観察者から見えるようになっているため、観察者は、物体に照射されている測定光により測定箇所を把握することができる。しかしながら、そのため、外来光の影響を完全に排除することができず、物体に照射されたスペクトルパターンのエッジがぼけたり、部品のコントラストを正確に測定することができないことがあり、より高精度な測定を行うことは困難であった。
【0006】
また、例えば、外来光の影響を排除するために、測定対象の物体の周囲を完全に遮蔽した場合には、観察者が測定箇所を視認することができなくなり、測定の不必要な箇所まで測定されてしまうことがある。これにより、測定作業の効率が悪くなり、測定のスループットが低下する。
【0007】
【特許文献1】特開平3−87607号公報
【特許文献2】特開昭63−243802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の測定方法では、外来光の影響を排除して高精度で測定を行いつつ、スループットが高い測定を行うことが困難であった。即ち、高精度の測定を効率よく行うことが困難であった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高精度の測定を効率よく行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の形状測定装置は、被検物の形状を測定する形状測定装置であって、所定の波長域の測定光を前記被検物に照射する照射手段と、前記被検物および前記照射手段を収納し、前記測定光の波長域の光を遮断し、前記測定光の波長域以外の光を透過可能な透過部を少なくとも一部に有した筐体とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の形状測定装置においては、照射手段により、所定の波長域の測定光が被検物に照射され、被検物および照射手段は、測定光の波長域の光を遮断し、測定光の波長域以外の光を透過可能な透過部を少なくとも一部に有した筐体に収納される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の形状測定装置によれば、高精度の測定を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した形状測定装置の一実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【0015】
図1において、形状測定装置11は、光学的な手法により物体の形状を三次元的に計測する三次元計測装置であり、被検物12を測定する測定機構13と、測定機構13を収納可能な筐体14とを備えて構成される。なお、図1では、筐体14を透過させて、筐体14に収納されている測定機構13が図示されている。
【0016】
測定機構13では、定盤21に被検物12が載置され、光学式センサ22により被検物12の形状が光学的な手法で検出される。
【0017】
光学式センサ22は、Zステージ23の下方の先端に装着され、Zステージ23が、コラム25の梁部24に対してZ軸方向に移動することにより、光学式センサ22のZ軸方向の位置が調整される。梁部24は、X軸方向に延びるように配置されており、Zステージ23が梁部24の長手方向に自走することで、光学式センサ22のX軸方向の位置が調整される。
【0018】
コラム25は、梁部24の両端を脚部により支持するコ字形状をしており、一方の脚部が定盤21上に設けられたガイド26によりY軸方向に案内され、コラム25が、Y軸方向に移動することにより、光学式センサ22のY軸方向の位置が調整される。なお、コラム25の脚部のうち、ガイド26が設けられていない側の脚部の下端は、エアーガイドとなっている。
【0019】
このように、光学式センサ22は、Zステージ23とコラム25とにより、定盤21に対して水平方向(X−Y方向)および垂直方向(Z方向)の任意の位置に移動可能とされている。
【0020】
筐体14は、外来光を遮断できる材質により形成されており、被検物12および光学式センサ22を外来光から遮蔽する。また、筐体14は、その正面側の壁部の略中央に、高さ方向の中央付近から底面まで開口する開口部が形成されており、その開口部にドア部31が開閉可能に設置されている。ドア部31の上側には、透過窓32が嵌め込まれている。また、筐体14の背面側の壁部の中央付近に、透過窓33が嵌め込まれている。
【0021】
透過窓32および33は、光学式センサ22が被検物12を測定する際に光学式センサ22の撮像素子が十分な感度を持つ波長域の光(以下、適宜、測定光と称する)を反射し、その他の波長域の光を透過する。例えば、光学式センサ22が、測定光として近赤外の波長域の光を使用する場合には、透過窓32および33は、近赤外の波長域の光を反射し、近赤外の波長以外の光である可視光を透過するような部材により構成される。
【0022】
透過窓32および33としては、例えば、ガラス基板にバンドパスフィルタの多層膜が形成された部材を採用することができる。透過窓32および33が、測定光の波長域の光を反射することにより、筐体14の内部には、測定光の波長域の光が入射することが防止される。
【0023】
次に、図2乃至図4を参照して、光学式センサ22について詳細に説明する。
【0024】
図2は、光学式センサ22の概略的な構成例を示す図である。
【0025】
図2に示すように、光学式センサ22は、被検物12(図1)に測定光を照射する照射ユニット41と、測定光が照射された被検物12を撮像する撮像ユニット42とを備えて構成されている。
【0026】
照射ユニット41は、図3に示すように、レーザ発光素子51、レンズ52、およびスリット板53を備えて構成されている。
【0027】
レーザ発光素子51は、所定の波長域のレーザ光を放射する発光素子であり、形状測定装置11では、レーザ発光素子51が放射するレーザ光のうちの、可視光域の中央以外の波長域のレーザ光が、被検物12の測定に用いられる測定光とされる。
【0028】
例えば、レーザ発光素子51は、近赤外の波長域のレーザ光を放射することができる。レーザ発光素子51が放射する近赤外の波長域のレーザ光(例えば、約680nmのレーザ光)は、撮像ユニット42に備えられている撮像素子の感度を有する波長域の光を含むものである。
【0029】
ところで、撮像素子が感度を十分に持つ波長帯域は、500nm以下、または620nm以上の波長範囲に含まれるようにするのが好ましく、更に好ましくは470nm以下、または650nm以上の波長域に含まれるようにすると好ましい。これらの波長域は、明視の比視度感度特性に基づき決定された測定光波長域であり、比視度感度が高い波長の光が透過窓32および33を通過しても測定精度に影響を与えず、透過窓32および33越しに見る被検物12が自然で見やすい効果を享受することができる。
【0030】
なお、レーザ発光素子51は、この撮像素子が感度を持つ波長域の光と、比視度感度が高い波長域の光とを放射できるものが好ましい。そこで、本実施の形態では、レーザ発光素子51として、近赤外の波長域と可視光の波長域との両方を放射することができるレーザ発光素子を用いてもよい。例えば、レーザ発光素子51が放射する可視光の波長域のレーザ光は、測定光が照射される領域をガイドするためのガイド光とされ、作業者が、測定箇所を確認する際に放射される。
【0031】
レンズ52は、レーザ発光素子51が放射するレーザ光を平行光にするコリメートレンズであり、スリット板53には、所定の間隔のスリットが形成されている。レーザ発光素子51から放射されるレーザ光は、レンズ52によりコリメートされ、スリット板53のスリットを通過することによりシート状に整形され、被検物12に照射される。
【0032】
撮像ユニット42は、図4に示すように、レンズ61および撮像素子62を備えて構成されている。
【0033】
レンズ61は、被検物12の像を撮像素子62の撮像面上に結像する。撮像素子62は、その撮像面上に結像された被検物12の像を画像データに光電変換する。即ち、撮像素子62は、被検物12からの反射光を受光して、被検物12の表面における測定光が照射された位置を撮像し、その結果得られる画像データを出力する。
【0034】
撮像ユニット42の撮像素子62から出力される画像データは、図示しない計測回路に供給される。また、その計測回路には、Zステージ23およびコラム25の位置を示す情報や、照射ユニット41から被検物12に照射される測定光の射出方向を示す情報などが供給され、計測回路は、それらの情報と、画像データから求められる測定光の到達位置とに基づいて、被検物12の形状を計測する。さらに、計測回路は、その形状を形状データに変換した後、CAD(Computer Aided Design)などの後段の装置に出力する。
【0035】
このように構成される形状測定装置11では、観察者は、例えば、ドア部31を開放して定盤21に被検物12を設置し、ドア部31を閉鎖した後、レーザ発光素子51に可視光の波長域のレーザ光を放射させる。上述したように、透過窓32および33は、測定光の波長域以外の光を透過することができるので、観察者は、透過窓32または33を介して、被検物12にレーザ光が照射される位置を視認することができる。
【0036】
これにより、観察者は、被検物12にレーザ光が照射される位置を確認しながら、Zステージ23およびコラム25の位置を調整して、所望の箇所に、レーザ光が正確に照射されるように設定すること、即ち、測定光が照射される測定箇所を設定することができる。
【0037】
即ち、例えば、被検物12が外来光から完全に遮蔽され、観察者が、レーザ光の照射箇所を視認することができないような場合には、測定結果に基づいて測定箇所を調整することを繰り返したり、測定が不要な箇所まで測定を行うことがあり、これにより、測定に時間がかかっていた。これに対し、形状測定装置11では、測定箇所を確実に設定し、不要な箇所が測定されないようにすることができるので、測定にかかる時間を短縮することができ、測定を効率よく行うことができる。
【0038】
その後、観察者は、レーザ発光素子51に測定光を放射させて、被検物12の形状の測定を行う。このとき、透過窓32および33は、測定光の波長域の光が筐体14の内部に入射することを防止するので、光学式センサ22は、外来光の影響を受けることなく被検物12の形状を測定することができる。これにより、形状測定装置11では、被検物12の形状を高精度に測定することができる。
【0039】
以上のように、形状測定装置11では、外来光の影響を受けないようにしつつ、測定が不必要な箇所の測定を行わないようにすることができるので、高精度な測定を効率よく行うことができる。
【0040】
また、形状測定装置11では、例えば、同じ形状の複数の被検物12を測定する際に、それぞれの被検物12が定盤21の同じ箇所に載置されるか、また、それぞれの被検物12で対応する箇所が測定されるかを透過窓32または33を介して容易に確認することができる。また、例えば、形状測定装置11による測定を制御する測定プログラムをティーチングにより作成する際にも、透過窓32または33を介して測定箇所を確認することで、測定光が測定箇所に照射されるように容易に設定することができ、測定プログラムを効率よく作成することができる。また、従来よりも測定誤差を少なくすることができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、透過窓32および33が、測定光の波長域の光を反射するように構成されているが、少なくとも筐体14の一部が測定光の波長域の光を反射または吸収して、その波長域の光が筐体14内に入射しないようにすればよく、例えば、筐体14自体が測定光の波長域の光を反射または吸収する部材で構成されていてもよい。また、ドア部31に透過窓32を設けるのではなく、ドア部31自体が測定光の波長域の光を反射または吸収する部材で構成されていてもよい。例えば、筐体14やドア部31などを、特開2007−211174号公報などに開示されているような、測定光の波長域の光を吸収する吸収剤が混入され、可視光を透過するアクリル樹脂で構成することができる。
【0042】
また、透過窓32および33としては、上述したようなガラス基板にバンドパスフィルタの多層膜が形成された部材の他、例えば、色ガラスなどのように、測定光を十分吸収するとともに、測定光の波長域以外の光を透過するような部材により構成してもよい。なお、透過窓32および33として、ガラス基板にバンドパスフィルタの多層膜が形成された部材を採用したときには、観察者が、透過窓32または33を介して測定箇所を視認する際に、色ガラスなどのように色が変わることがないので、より容易に作業を行うことができる。
【0043】
例えば、光学式センサ22が具備するレーザ発光素子51は、光学式センサ22が具備する撮像素子の感度を持つ帯域に合わせて発光帯域を持つ近赤外の波長域の光と、撮像素子の感度を持つ帯域から外れた可視光の波長域の光との2波長域のレーザ光を放射するものを使用していることにより測定位置を見やすくしているが、単に近赤外域の光だけを放射するレーザ発光素子を使用してもかまわない。この場合でも、レーザ発光素子が放射する光が、撮像素子の感度を持つ帯域から外れ、かつ、透過窓32および33の透過帯域に合致する波長成分を有していれば、測定位置は視認可能である。このような光により測定を行うことで、測定時に測定位置を確認することができ、より効率よく測定を行うことができる。
【0044】
また、必ずしも可視域の波長域の光を放射する光源を持たなくてもよい。さらには、可視域の光を放出する光源と、光学式センサ22が具備する撮像素子が感度を持つ帯域の光を放射する光源とを別々に備えたものでもよい。
【0045】
さらに、形状測定装置11において、筐体14が剛性を有する必要がない場合には、例えば、測定光を反射し、それ以外の波長域の光を透過する布やシートなどを筐体14の代わりに用いることができる。
【0046】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を適用した形状測定装置の一実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図2】光学式センサ22の概略的な構成例を示す図である。
【図3】照射ユニット41の概略的な構成例を示す図である。
【図4】撮像ユニット42の概略的な構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
11 形状測定装置, 12 被検物, 13 測定機構, 14 筐体, 21 定盤, 22 光学式センサ, 23 Zステージ, 24 梁部, 25 コラム, 26 ガイド, 31 ドア部, 32および33 透過窓, 41 照射ユニット, 42 撮像ユニット, 51 レーザ発光素子, 52 レンズ, 53 スリット板, 61 レンズ, 62 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の形状を測定する形状測定装置において、
所定の波長域の測定光を前記被検物に照射する照射手段と、
前記被検物および前記照射手段を収納し、前記測定光の波長域の光を遮断し、前記測定光の波長域以外の光を透過可能な透過部を少なくとも一部に有した筐体と
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記筐体が有する前記透過部は、前記測定光の波長域の光を反射または吸収する
ことを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記照射手段は、可視光域の中心以外の波長域の光を、前記測定光として用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記照射手段は、前記被検物に測定光を照射する領域をガイドするためのガイド光として、前記可視光域の光を照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−66182(P2010−66182A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234251(P2008−234251)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】