説明

形状計測方法、形状計測装置、プログラム及び記録媒体

【課題】被検物の裏面からの不要反射光の影響を除去して、被検物の被検面の形状を高精度に計測すること。
【解決手段】記憶制御部161は、理想被検面での反射による第1の基準反射光スポットの位置及び光量分布をHDD133に記憶させる。更に、記憶制御部161は、理想裏面での反射による第2の基準反射光スポットの位置及び光量分布をHDD133に記憶させる。取得部162は、被検面からの第1の反射光スポット及び裏面からの第2の反射光スポットを含む画像データをカメラ110から取得する。フィッティング部165は、HDD133に記憶された第1及び第2の基準反射光スポットの光量分布を合成させる。フィッティング部165は、その合成光の光量分布が、実際の合成光の光量分布と一致するように、第1及び第2の基準反射光スポットをフィッティングさせる。計算部166は、フィッティング結果に基づいて被検面の形状を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて被検物の被検面の形状を高精度に計測する形状計測方法、形状計測装置、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度な光学部品の形状計測や波面収差計測には光を用いた計測方法が一般に用いられている。非球面形状の加工では光学素子形状を計測して設計形状との差を求め、そのデータを用いて修正加工することが必要である。近年、非球面光学素子の非球面量は大きくなる傾向にある。また自由曲面光学素子も使われている。
【0003】
このような光学素子の形状計測方法としてシャック・ハルトマン法が有力である(特許文献1参照)。図11に、従来の形状計測装置を示す。被検物は被検面1aを有する反射鏡1である。測定光を出射する光源7と参照光を出射する光源10とが、ハーフミラープリズム2を挟んで配置されている。光源7とハーフミラープリズム2との間には、ピンホール板8及びレンズ9が順次配置され、光源10とハーフミラープリズム2との間にはピンホール板11及びレンズ12が順次配置されている。
【0004】
また、反射鏡1と、コリメータレンズ3及びシャック・ハルトマンセンサ4とが、光源7,10の光の出射方向に直交するように、ハーフミラープリズム2を挟んで配置されている。反射鏡1、ピンホール板8、レンズ9、ピンホール板11、レンズ12は、照明光軸15と測定系の光軸13の交点にピンホール像が結像するように配置されている。また、交点は被検面1aの近軸曲率中心とする。シャック・ハルトマンセンサ4は、マイクロレンズアレイ5と、撮像部としてのCCDカメラ6とからなる。マイクロレンズアレイ5は、アレイ状に配置された複数のマイクロレンズからなる。
【0005】
以上の構成で、光源7から出射された照明光は、ピンホール板8を通過した後、レンズ9でハーフミラープリズム2に集光され、ハーフミラープリズム2で反射鏡1側に反射される。反射鏡1に導かれた照明光は、被検面1aで反射され、ハーフミラープリズム2を通過してコリメータレンズ3で平面波となる。マイクロレンズアレイ5は、コリメータレンズ3からの光束をレンズ要素毎に分割してCCDカメラ6の画上に結像させる。マイクロレンズアレイ5への入射光束が平面波であれば結像点はマイクロレンズアレイ5の光軸14−i(iはマイクロレンズの順次番号)上になる。被検面1aとマイクロレンズアレイ5とは共役とする。被検面1aとマイクロレンズアレイ5は共役であるので、マイクロレンズアレイ5の一つのレンズ要素は被検面1aの一つの領域に対応する。被検面1aの一領域にスロープエラーがあるとその一領域のスロープエラーの平均値に依存して、その一領域に対応するレンズ要素の結像点が基準結像点からずれる。光源10から出射された参照光は、参照光はハーフミラープリズム2によって測定光路に導光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2534170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のシャック・ハルトマン法を用いた形状計測方法では、被検物の被検面が鏡面であり、被検物の裏面からの反射光がないものを前提としている。したがって、被検物がレンズ等であり、被検物の裏面からの反射光がある場合、被検面(表面)からの反射光と裏面からの反射光が同時にシャック・ハルトマンセンサに入射し、カメラには被検物の両面からの反射光スポットが形成されることとなる。このため、被検面からの反射光の光スポットの位置の検出精度が低下し、被検物の被検面の形状の計測精度が低下していた。
【0008】
そこで、本発明は、被検物の被検面の形状を高精度に計測することができる形状計測方法、形状計測装置、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を被検物の被検面に導くと共に、前記被検物から反射した光を平行光として出力する光学系と、アレイ状に配置され、前記光学系から出力された平行光を結像面に結像させる複数のレンズを有するレンズアレイと、前記レンズアレイの結像面に配置された撮像部と、前記撮像部に接続された演算処理手段と、を備えた形状計測装置を用いた形状計測方法において、前記演算処理手段が、前記被検面の理想形状である理想被検面での反射により前記結像面に結像される第1の基準反射光スポットの位置及び光量分布を記憶装置に記憶させると共に、前記被検面とは反対側の裏面の理想形状である理想裏面での反射により前記結像面に結像される第2の基準反射光スポットの位置及び光量分布を前記記憶装置に記憶させる記憶工程と、前記演算処理手段が、前記被検面からの第1の反射光スポット及び前記裏面からの第2の反射光スポットを含む画像データを前記撮像部から取得する取得工程と、前記演算処理手段が、前記記憶装置に記憶された前記第1の基準反射光スポットの光量分布と前記記憶装置に記憶された前記第2の基準反射光スポットの光量分布とを合成した合成光の光量分布が、前記第1の反射光スポットの光量分布と前記第2の反射光スポットの光量分布とを合成した合成光の光量分布と一致するように、前記第1の基準反射光スポット及び前記第2の基準反射光スポットをフィッティングさせるフィッティング工程と、前記演算処理手段が、前記フィッティング工程でフィッティングさせた前記第1の基準反射光スポットの位置に基づいて前記被検面の形状を計算する計算工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検物の裏面からの反射光スポットが撮像部に到達しても、被検物の裏面からの反射光の影響を除去できるので、被検物の被検面の形状を高精度に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る形状計測装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】コンピュータシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】カメラで撮像された画像データの説明図であり、(a)は画像データにおける第1の反射光スポット及び第2の反射光スポットを示す図、(b)は一つのマイクロレンズ領域の光スポットを示す図である。
【図4】コンピュータシステムの機能ブロック図である。
【図5】コンピュータシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】選択工程における選択動作を説明するための図であり、(a)はマイクロレンズ領域毎に区画した場合を示しており、(b)は隣り合う第1の反射光スポットの間隔の半分で区画した場合を示している。
【図7】フィッティング工程におけるフィッティング動作を説明するための図であり、(a)はフィッティング前、(b)はフィッティング後を示している。
【図8】本発明の第1実施形態に係る形状計測装置を用いた形状計測方法で計測した実験結果を示す図である。(a)は被検面及び裏面からの反射光スポットの合成光の部分の画像を示す図、(b)は表裏面からの反射光スポット間の距離に対するスポット位置検出誤差量を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る形状計測装置の概略構成を示す説明図である。
【図10】コンピュータシステムの機能ブロック図である。
【図11】従来の形状計測装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る形状計測装置の概略構成を示す説明図である。被検物120は、光透過性を有する部材で形成されている。この被検物120は、光透過性を有する光学素子であり、例えばレンズ等である。形状計測装置100は、被検物120の被検面(表面)120aの形状を計測するためのものである。形状計測装置100は、光源101、光学系102、シャック・ハルトマンセンサ103、制御装置としてのコンピュータシステム104、及びモニタ105を備えている。
【0014】
光学系102は、レンズ106、ビームスプリッタ107及びレンズ108を有している。シャック・ハルトマンセンサ103は、レンズアレイとしてのマイクロレンズアレイ109と、撮像部としてのカメラ110とを有している。
【0015】
光源101は、レーザ光源でも良いし低コヒーレンス光源や白色光源でも良い。光学系102は、光源101から出射された光を被検物120の被検面120aに導くと共に、被検物120から反射した光を平行光として出力するものである。詳述すると、光源101、レンズ106、ビームスプリッタ107及びレンズ108は、直列に並べて配置されている。レンズ108の出力側には、被検物120が、被検面120aをレンズ108に対向させて配置されている。レンズ106は、光源101から出射された球面波の光を平行光に変換する。ビームスプリッタ107は、入射した光を透過させる成分と、直角に反射させる成分とに分割するものである。レンズ108は、ビームスプリッタ107を通過した平行光を球面波の光に変換して被検物120の被検面120aに照射すると共に、被検物120の被検面120a及び裏面120bから反射した光を平行光にしてビームスプリッタ107に出力する。
【0016】
光源101から出射される光の光軸に直交する方向であって、ビームスプリッタ107において被検物120から戻ってきた光が反射する側には、シャック・ハルトマンセンサ103が配置されている。
【0017】
シャック・ハルトマンセンサ103のマイクロレンズアレイ109は、複数のマイクロレンズ(レンズ)111を有しており、これらマイクロレンズ111がアレイ状に配置されて構成されている。マイクロレンズアレイ109は、光学系102から出力された平行光(本実施形態では、ビームスプリッタ107から出力された平行光)を、各マイクロレンズ111で結像面に結像させるものである。具体的には、各マイクロレンズ111により異なる位置にそれぞれ反射光スポットが結像されるが、これら反射光スポットを含む面が結像面となる。この結像面には、カメラ110が配置されている。
【0018】
カメラ110は、撮像素子として例えばCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサを有するカメラであり、この撮像素子の撮像面が結像面と一致するように配置されている。このカメラ110には、コンピュータシステム104が接続されている。コンピュータシステム104は、カメラ110から画像データを取得するように構成されている。
【0019】
図2は、コンピュータシステム104のハードウェア構成を示すブロック図である。コンピュータシステム104は、演算処理手段としてのCPU130、ROM131、RAM132、HDD133、記録ディスクドライブ134及び各種のインターフェース135,136,137を備えている。CPU130は、これらROM131、RAM132、HDD133、記録ディスクドライブ134及び各種のインターフェース135,136,137が、バス138を介して相互に通信可能に接続されている。
【0020】
ROM131には、CPU130を動作させるための各種のプログラム150が格納されている。CPU130は、ROM131に格納されたプログラム150に基づいて各種処理を実行する。このプログラム150は、記憶制御処理プログラム151、画像取得処理プログラム152、判別処理プログラム153、選択処理プログラム154、フィッティング処理プログラム155及び形状計算処理プログラム156を有している。RAM132は、CPU130の処理結果を一時的に記憶するためのものである。HDD133は、記憶装置であり、光学系102の設計値、マイクロレンズアレイ109の設計値、被検物120の設計値等のデータを予め記憶している。また、HDD133は、CPU130による演算結果等のデータをCPU130の指令の下で記憶するものである。
【0021】
カメラ110は、インターフェース135に接続されており、カメラ110に撮像された画像データがバス138に出力される。また、モニタ105は、インターフェース136に接続されており、モニタ105には、各種画像が表示される。インターフェース137は、書き換え可能な不揮発性メモリや外付けHDD等の外部記憶装置140が接続可能に構成されている。記録ディスクドライブ134は、記録ディスク141に記録された各種データを読み出すことができる。
【0022】
以上の構成で、図1に示す光源101から射出された光は、レンズ106により平行光に変換され、ビームスプリッタ107に入射する。ビームスプリッタ107を通過した光はレンズ108で再び球面波に変換される。球面波は被検物120の被検面120a及び裏面120bで反射される。反射された光はレンズ108で再び平面波に戻された後、ビームスプリッタ107で反射され、シャック・ハルトマンセンサ103のマイクロレンズアレイ109へ入射する。マイクロレンズアレイ109に入射した光はそれぞれのマイクロレンズ111で集光されカメラ110上に光スポット群を形成する。
【0023】
光スポット群を含む画像データはコンピュータシステム104に取り込まれ、それぞれの光スポット光量重心が求められ、光スポットの位置が検出され、モニタ105に結果が表示される。この際、マイクロレンズアレイ109に入射する波面が平面波であれば、光スポットの位置はマイクロレンズ111各々の光軸112−i(iはマイクロレンズの順次番号)上になる。被検面120aとマイクロレンズアレイ109は共役に配置されている。よってマイクロレンズアレイ109の一つのレンズ要素は被検面120aの一つの領域に対応している。被検面120aの一つの領域にスロープエラーがあるとその一つの領域のスロープエラーの平均値に依存して、その一領域に対応するマイクロレンズ111の光スポット位置が基準位置からずれる。コンピュータシステム104のCPU130は、参照平面波による基準光スポット位置と被検面120aからの反射した光スポット位置とを比較して入射光の波面収差を求めることで被検面120aの基準からの誤差を計算する。光スポットの基準位置は平面波だけでなく、ピンホール回折光による球面波や測定原器からの反射光の光スポットとしても良い。測定原器からの反射光を基準とした場合、測定結果は原器形状からの差分になる。
【0024】
以上は被検面120aからの反射光について述べたが、実際には被検面120aを通過して被検物120の反対側に形成された裏面120bで反射してシャック・ハルトマンセンサ103に入射する光もある。図3(a)は、カメラ110により撮像された画像データにおける第1の反射光スポット及び第2の反射光スポットを示している。シャック・ハルトマンセンサ103に入射した光は、カメラ110の撮像面(結像面)上に、被検面120aからの第1の反射光スポット201とともに裏面120bからの第2の反射光スポット202が作られる。
【0025】
このとき一つのマイクロレンズ領域の光スポットは図3(b)のようになる。被検面120aからの第1の反射光スポット201の光量分布204と、裏面120bからの第2の反射光スポット202の光量分布206とから、カメラ110上で得られる合成光は、光量分布207のようになる。この光量分布207の重心から計算される反射光スポットの位置208は、本来の被検面120aからの第1の反射光スポット201の位置203とずれが生じている。特に、両面の曲率が近いメニスカス形状のレンズに関しては第1の反射光スポット(表面反射光スポット)と第2の反射光スポット(裏面反射光スポット)との位置が近接するため、裏面反射の影響は大きくなる。
【0026】
そこで本第1実施形態では、コンピュータシステム104のCPU130が、ROM131に記憶されているプログラム150に基づいて動作することにより、被検面120aからの反射光スポット201を判別して、被検面120aの形状を計算するものである。以下、プログラム150に基づくCPU130の動作について具体的に説明する。図4は、コンピュータシステム104の機能ブロック図であり、図5は、コンピュータシステム104の動作を示すフローチャートである。
【0027】
CPU130は、ROM131に格納されたプログラム150(151〜156)を実行することで、図5に示す各処理を実行する。このとき、CPU130は、プログラム150により、図4に示す記憶制御部161、取得部162、判別部163、選択部164、フィッティング部165、及び計算部166として機能する。具体的には、CPU130は、記憶制御処理プログラム151を実行することで、記憶制御部161として機能する。また、CPU130は、画像取得処理プログラム152を実行することで、取得部162として機能する。また、CPU130は、判別処理プログラム153を実行することで、判別部163として機能する。また、CPU130は、選択処理プログラム154を実行することで、選択部164として機能する。また、CPU130は、フィッティング処理プログラム155を実行することで、フィッティング部165として機能する。また、CPU130は、形状計算処理プログラム156を実行することで計算部166として機能する。
【0028】
これら各部161〜166の機能について、図4及び図5を参照しながら具体的に説明する。はじめに、記憶制御部161(CPU130)は、HDD133から、被検物120の設計値301、光学系102の設計値302、及びマイクロレンズアレイ109の設計値303のデータを読み出す。次いで、記憶制御部161は、これら読み出した設計値301,302,303を用いて、光源101で出射されてから理想形状の理想被検面で反射してカメラ110に至るまでの光の光線追跡を行う。
【0029】
さらに記憶制御部161は、HDD133から読み出した設計値301,302,303を用いて、光源101で出射されてから理想形状の理想裏面で反射してカメラ110に至るまでの光の光線追跡を行う。つまり、記憶制御部161は、被検物120の両面120a,120bについて、これら設計値に基づいて光線追跡を実施する。被検物120の設計値301は形状誤差等のない場合を想定した理想状態での値であるので、光線追跡による反射光スポットはスロープエラーがないとした場合(つまり基準)となる。
【0030】
したがって、記憶制御部161は、光線追跡の結果から、被検面120aの理想形状である理想被検面での反射によるカメラ110上(即ち、結像面)での第1の基準反射光スポット401の位置403を求める。さらに、記憶制御部161は、光線追跡の結果から、裏面120bの理想形状である理想裏面での反射によるカメラ110上(即ち、結像面)での第2の基準反射光スポット402の位置405を求める(S1)。このとき記憶制御部161は、これら第1の基準反射光スポット401の位置403及び第2の基準反射光スポット402の位置405のデータをHDD133に記憶させる。このように、被検面120a及び裏面120bの設計値を用いて光線追跡を行うことで、理想被検面及び理想裏面で反射して結像される反射光スポットを正確に計算することができる。
【0031】
更に、記憶制御部161は、第1の基準反射光スポット401の光量分布404と第2の基準反射光スポット402の光量分布406とをHDD133に記憶させる(S2)。各基準反射光スポットの光量分布404,406は、ガウシアン分布に従うものとする。つまり、記憶制御部161は、位置403,405を中央値とするガウシアン分布となる光量分布404,406を計算し、計算結果をHDD133に記憶させる。なお、これら光量分布404,406はガウシアン分布に限定されない。
【0032】
以上の記憶制御部161の動作で、ステップS1,S2では、理想被検面での反射により結像面に結像される第1の基準反射光スポット401の位置403及び光量分布404がHDD133に記憶される。また、理想裏面での反射により結像面に結像される第2の基準反射光スポット402の位置405及び光量分布406がHDD133に記憶される。なお、これらデータの記憶動作は、この順番に限らず、どの順番で行ってもよい。
【0033】
記憶制御部161によるステップS1,S2(記憶工程)の動作は、次回以降の形状測定で今回と同一種の被検物であれば、次回からは記憶制御部161による記憶工程の処理動作を省略することができる。
【0034】
次に、取得部162(CPU130)は、被検面120aからの第1の反射光スポット201及び裏面120bからの第2の反射光スポット202を含む画像データIをカメラ110から取得する(S3:取得工程)。
【0035】
次に、判別部163(CPU130)は、取得した画像データIにおいて、HDD133に記憶された第1の基準反射光スポット401の位置403に対して、被検面120aの形状誤差に起因する位置ずれ量の範囲を設定する。同様に、判別部163は、取得した画像データIにおいて、HDD133に記憶された第2の基準反射光スポット402の位置405に対して、裏面120bの形状誤差に起因する位置ずれ量の範囲を設定する。そして判別部163は、画像データIから、光量が極大値(ピーク値)となる光スポットを反射光スポットとして抽出する。
【0036】
判別部163は、被検面120aの形状誤差に起因する位置ずれ量の範囲内にある反射光スポットを、被検面120aからの第1の反射光スポット201と判別する。また、裏面120bの形状誤差に起因する位置ずれ量の範囲内にある反射光スポットを、裏面120bからの第2の反射光スポット202と判別する(S4:判別工程)。これにより、判別部163は、被検物120に形状誤差があっても、第1の反射光スポット201と第2の反射光スポット202とを判別することができる。
【0037】
形状誤差による光スポット位置ずれ量は、光線追跡を用いてもよいし、想定される形状誤差によるスロープエラーと光学系の倍率から求めてもよいし、手動で選択してもよい。スロープエラーと光学系の倍率から求める場合は、スロープエラーによる反射光の反射角度がシャック・ハルトマンセンサ103上では光学系102の倍率分大きくなってマイクロレンズ111に入射することから計算ができる。なお、位置ずれ量の範囲内に光スポットがない場合は、被検物120が想定外の形状誤差を有しているため、判別部163は、エラーである旨を外部機器であるモニタ105に出力し、表示させる。
【0038】
次に、選択部164(CPU130)は、被検面120aからの光スポットに対して、被検面120aからの光スポットの位置を光量重心から求める際に考慮すべき裏面120bからの反射光スポットを選択する(S5:選択工程)。つまり、選択部164は、画像データIにおいて、ステップS4で判別した第1の反射光スポット201に近接する第2の反射光スポット202を選択する。その際、各反射光スポット201に対して、それぞれに近接する第2の反射光スポット202を選択する。
【0039】
具体的には、選択部164は、図6(a)に示すように、各マイクロレンズ111で結像される領域毎(領域R毎)に画像データIを区画する。そして、選択部164は、複数の第1の反射光スポット201の中から1つ(例えば、第1の反射光スポット201)を選択する。選択部164は、選択した第1の反射光スポット201と同一の領域R内に含まれる第2の反射光スポット202を選択する。このようにして第1の反射光スポット201と第2の反射光スポット202とが対応付けられる。この動作は、全ての第1の反射光スポット201(つまり、全ての領域R)について行う。
【0040】
また、この選択工程について、別の方法について説明する。まず、選択部164は、図6(b)に示すように、判別工程で判別した複数の第1の反射光スポット201の中から1つ(例えば第1の反射光スポット201)を選択する。そして、選択部164は、選択した第1の反射光スポット201に対して隣接する別の第1の反射光スポット201,201,201との間隔の半分以内にある領域を設定する。そして、選択部164は、この領域内にある第2の反射光スポット202を選択する。つまり、第1の反射光スポット201に対し、隣接する第1の反射光スポット201,201,201との距離の中間より近い位置にある第2の反射光スポット202が選択される。このようにして第1の反射光スポット201と第2の反射光スポット202とが対応付けられる。この動作は、全ての第1の反射光スポット201について行う。
【0041】
いずれの方法でも、第1の反射光スポット201に、計測に影響すると想定される第2の反射光スポット202を対応付けることができる。
【0042】
なお、第1の反射光スポット201と第2の反射光スポット202との重なり具合によっては、2つのピーク値が現れず、合成光のピーク値が、図3(b)に示すように1つとなる場合がある。この場合、ステップS4でこの合成光の反射光スポットに第1の反射光スポット201が対応付けられていたときには、この第1の反射光スポット201に対応付けられるべき第2の反射光スポット202がこの時点では存在しないことになる。しかし、シミュレーション上の第1の基準反射光スポット401と第2の基準反射光スポット402との対応関係により、実際の第1の反射光スポット201と第2の反射光スポット202との対応関係が判断できる。
【0043】
したがって、本第1実施形態では、選択部164は、HDD133に記憶された第1の基準反射光スポット401及び第2の基準反射光スポット402に対して、図6(a)又は図6(b)を用いて説明した処理と同様の処理を実行する。これにより、第1の基準反射光スポット401に第2の基準反射光スポット402が対応付けられる。
【0044】
選択部164は、この対応付けの結果に基づいて、各第1の反射光スポット201に対して、第1の反射光スポット201に対応付けられるべき第2の反射光スポット202が存在しているか否かを判断する。そして、選択部164は、第1の反射光スポット201に対応付けられるべき第2の反射光スポット202が存在していないものについては、この第1の反射光スポット201に対して、重なっている第2の反射光スポット202を選択して対応付ける。これにより、1つのピーク値しか存在しない合成光の光スポットに対しては、第1の反射光スポット201と第2の反射光スポット202とが対応付けられることになる。
【0045】
なお、第1の反射光スポット201と第2の反射光スポット202とが全て1:1で対応するものであれば、第1の基準反射光スポット401と第2の基準反射光スポット402との対応付けの処理を行わなくてもよい。
【0046】
次に、フィッティング部165(CPU130)は、HDD133から第1の基準反射光スポット401の光量分布404と第2の基準反射光スポット402の光量分布406とを読み出し、これらを合成した合成光の光量分布407を計算により求める。この結果を、図7(a)に示す。また、フィッティング部165は、画像データIから、判別工程で判別した第1の反射光スポット201の光量分布と選択工程で選択した第2の反射光スポット202の光量分布とを合成した合成光の光量分布207を抽出する。つまり、第1の反射光スポット201とこれに対応付けられている第2の反射光スポット202との合成光の光量分布207を抽出する。そして、フィッティング部165は、抽出した光量分布207と、求めた光量分布407とが一致するか否かを判断する。フィッティング部165は、一致していないと判断した場合は、第1の基準反射光スポット401の位置403及び第2の基準反射光スポット402の位置405をパラメータとして、光量分布207と光量分布407とが一致するまで、横座標方向に移動させる。つまり、フィッティング部165は、HDD133に記憶されている光スポット位置403,405を初期値として光量分布404,406をそれぞれカメラ面内で位置パラメータ(x、y)を変化させる。そして、フィッティング部165は、光量分布207と光量分布407とが一致するように、第1の基準反射光スポット401及び第2の基準反射光スポット402をフィッティングさせる(S6:フィッティング工程)。これによって、図7(b)に示すように、光量分布207と光量分布407とが一致する。
【0047】
次に、CPU130は、光量分布407をカメラ110で検出された光量分布207と一致するようフィッティングさせた後、フィッティングさせた第1の基準反射光スポット401の位置409を求める(S7)。この第1の基準反射光スポット401の位置409は、被検面120aからの第1の反射光スポット201の位置とみなせる。CPU130は、以上の動作全マイクロレンズ領域に対して実施する(S8)。
【0048】
次に、計算部166(CPU130)は、第1の基準反射光スポット401の位置409に基づいて被検面120aの形状を計算する(S9:計算工程)。具体的に説明すると、参照平面波を用いたときにカメラ110上に結像される光スポットの位置(つまり、位置403)のデータが、基準位置のデータとして、予めHDD133に記憶されている。計算部166は、HDD133から読み出した基準位置と、フィッティングさせた第1の基準反射光スポット401の位置409とを比較して入射光の波面収差を求めることで、被検面120aの基準からの誤差を計算する。計算部166は、計算した誤差から被検面120aの形状を計算する。なお、光スポットの基準位置は平面波だけでなく、ピンホール回折光による球面波や測定原器からの反射光の光スポットとしても良い。また、測定原器からの反射光を基準とした場合、測定結果は原器形状からの差分になる。次に、CPU130は、被検面120aの形状の計算結果を、外部機器であるモニタ105に出力し、モニタ105は、その結果を表示する。
【0049】
実際に本第1実施形態の方法で計測した実験結果を図8に示す。これは一つのマイクロレンズ111について計算したものであり、マイクロレンズ111は焦点距離5mm、直径150μmの平凸レンズを用いたものである。CCDカメラ110のピッチを7.2μmとして被検面120aからの反射光と裏面120bの反射光が入った場合の光量重心検出によるスポット位置誤差を示している。図8(a)には、CCDカメラ110上で被検面120aからの反射光スポットと、裏面120bからの反射光スポットとの合成の光量分布を示している。図8(b)には、従来の光量重心検出で求めた場合の光スポット位置誤差と、本特許の方法を用いた場合の光スポット位置誤差を示している。従来の方法では二つのスポット間の距離が大きくなるに連れ、誤差が大きくなっているが、本第1実施形態の方法では、スポット間距離によらず、従来よりも誤差が小さい。
【0050】
以上、本第1実施形態によれば、被検物120の裏面120bからの反射光スポットがカメラ110に到達しても、被検物120の裏面120bからの反射光の影響を除去することができる。つまり、フィッティング操作を行うことにより、裏面120bからの光スポットの影響を受けずに被検面120aからの光スポット位置を求めることができる。したがって、被検物120の被検面120aの形状を高精度に計測することができる。
【0051】
なお、本第1実施形態の方法以外に、被検物の裏面を、被検物の屈折率に近い液体に接触させることにより、被検物の裏面からの反射光を低減させることも考えられる。例えば、被検物が板ガラス(屈折率1.5)の場合、液体には、グリセリン(屈折率1.473)やパラフィン(屈折率1.48)が用いられる。しかし、この方法では、被検物の裏面を液体に接触させているので、被検物の裏面が液体で汚れることになり、計測後に被検物を洗浄する必要がある。さらに被検物の屈折率に合わせて屈折率の異なる液体を用意する必要があるためコストが増加する。
【0052】
これに対し、本第1実施形態では、形状計測の際に被検物120の裏面120bを液体に接触させる必要がないので、計測後に被検物120から液体を除去する洗浄作業を行う必要がない。したがって、液体の洗浄作業を省略できる分、被検物120の被検面120aの形状を計測するのに要する時間を短縮することができ、またコストを下げることができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る形状計測装置、及び形状計測装置を用いた形状計測方法について詳細に説明する。上記第1実施形態では、記憶制御部として機能するCPUが、被検物の設計値に基づき、理想形状の理想被検面及び理想裏面からの反射光スポットを計算し、計算結果を記憶装置に記憶させる場合について説明した。本第2実施形態では、原器を用いて反射光スポットを測定し、測定結果を記憶装置に記憶させる場合について説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る形状計測装置の概略構成を示す説明図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本第2実施形態における形状計測装置100Aのコンピュータシステム104Aのハードウェア構成は、上記第1実施形態のコンピュータシステム104と同様である。したがって、コンピュータシステム104Aのハードウェア構成の図示を省略するが、本第2実施形態では、コンピュータシステム104Aの機能、即ちプログラムに基づく動作が、上記第1実施形態と異なる。
【0055】
本第2実施形態では、被検物120の測定に先立って、被検物120の代わりに、第1の原器501及び第2の原器504を被測定対象として用いる。本第2実施形態では、記憶制御処理プログラム151(図2)が上記第1実施形態と異なる。即ち、図5に示すフローチャートのステップS1,S2(記憶工程)の処理動作が異なる。図10は、コンピュータシステム104Aの機能ブロック図である。CPU130は、プログラム中の記憶制御処理プログラムを実行することにより記憶制御部161Aとして機能する。
【0056】
まず、理想被検面に対応する面502のみが光反射するように構成された原器を第1の原器501とし、理想裏面に対応する面506のみが光反射するように構成された原器を第2の原器504として用いる。
【0057】
第1の原器501は、表面502が被検物の理想形状と等しい形状の原器であり、裏面503に反射防止を施してある。この原器501の裏面503は、砂ずり面、黒塗りまたは硝材と概略等しい屈折率を持つマッチングオイルが塗布されており、裏面503からの反射がない。なお、裏面反射の防止方法はこれに限らず他の方法でもかまわない。
【0058】
第2の原器504は、裏面506からの光のみを反射する裏面反射原器である。第2の原器504は、裏面506が被検物の理想形状と等しい形状で、表面505に反射防止膜を施すことで裏面506からの反射光のみを反射するよう構成されている。
【0059】
上記第1実施形態のステップS1,S2(図5)の代わりに、本第2実施形態では、記憶制御部161Aが、原器501,504を測定してその測定結果を記憶装置であるHDD133に記憶させる。詳述すると、記憶制御部161Aは、第1の原器501で反射してカメラ110で撮像された画像データIに含まれる反射光スポットを、第1の基準反射光スポット401として、第1の基準反射光スポット401の位置403及び光量分布404を測定する。測定後は第1の原器501を第2の原器504に入れ換える。次に、記憶制御部161Aは、第2の原器504で反射してカメラ110で撮像された画像データIに含まれる反射光スポットを第2の基準反射光スポット402として、第2の基準反射光スポット402の位置405及び光量分布406を測定する。なお、これらの測定順番に限らず、先に第2の原器504を測定した後、第1の原器501を測定するようにしてもよい。記憶制御部161Aは、これら測定結果を記憶装置であるHDD133に記憶させる。なお、各部162から166として機能するCPUの動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0060】
以上より、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。そして、本第2実施形態では、原器501,504を測定することで、設計値を用いて表面反射光と裏面反射光のカメラ110上での光スポット位置を算出するのと同等に、それぞれの反射光スポットの位置及び光量分布を精度良く求めることができる。
【0061】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0062】
上記実施形態では、第1及び第2の基準反射光スポットの位置及び光量分布を記憶装置としてHDD133に記憶させたが、記憶装置としてはHDD133に限定するものではく、書き込み可能な記憶装置であれば、いかなる記憶装置でもよい。例えばRAM132、外部記憶装置140(例えばUSBメモリやメモリカード等の書き換え可能な不揮発性メモリ、外付けHDD等)、又は記録ディスクドライブ134に設置された記録ディスク141等の記憶装置であってもよい。記録ディスク141としては、CD−R等の書き込み可能な記録ディスクであれば、いかなる記録ディスクでもよい。これら以外にも、例えば、フレキシブルディスク,光ディスク,光磁気ディスク,磁気テープ,EEPROM,シリコンディスク等であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体がROM131である場合について説明したが、これに限定するものではなく、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、いかなる記録媒体であってもよい。例えば、プログラムがHDD133、外部記憶装置140、記録ディスク141等に記録されていてもよい。外部記憶装置140としては、例えばUSBメモリやメモリカード等の不揮発性メモリ、外付けHDD等を用いることができ、記録ディスク141としては、例えばCD−ROM,CD−R,DVD−ROMを用いることができる。これら以外にも、例えば、フレキシブルディスク,光ディスク,光磁気ディスク,磁気テープ,EEPROM,シリコンディスク等であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を、システムあるいは装置に供給してもよい。そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の目的が達成される。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0065】
また、上記実施形態におけるプログラムを、ネットワークを介してダウンロードしてコンピュータにより実行するようにしてもよい。
【0066】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施形態の機能が実現されるだけに限定するものではない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0067】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれてもよい。そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施形態の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
100,100A…形状計測装置、101…光源、102…光学系、109…マイクロレンズアレイ(レンズアレイ)、110…カメラ(撮像部)、120…被検物、120a…被検面、120b…裏面、130…CPU(演算処理手段)、150…プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、前記光源から出射された光を被検物の被検面に導くと共に、前記被検物から反射した光を平行光として出力する光学系と、アレイ状に配置され、前記光学系から出力された平行光を結像面に結像させる複数のレンズを有するレンズアレイと、前記レンズアレイの結像面に配置された撮像部と、前記撮像部に接続された演算処理手段と、を備えた形状計測装置を用いた形状計測方法において、
前記演算処理手段が、前記被検面の理想形状である理想被検面での反射により前記結像面に結像される第1の基準反射光スポットの位置及び光量分布を記憶装置に記憶させると共に、前記被検面とは反対側の裏面の理想形状である理想裏面での反射により前記結像面に結像される第2の基準反射光スポットの位置及び光量分布を前記記憶装置に記憶させる記憶工程と、
前記演算処理手段が、前記被検面からの第1の反射光スポット及び前記裏面からの第2の反射光スポットを含む画像データを前記撮像部から取得する取得工程と、
前記演算処理手段が、前記記憶装置に記憶された前記第1の基準反射光スポットの光量分布と前記記憶装置に記憶された前記第2の基準反射光スポットの光量分布とを合成した合成光の光量分布が、前記第1の反射光スポットの光量分布と前記第2の反射光スポットの光量分布とを合成した合成光の光量分布と一致するように、前記第1の基準反射光スポット及び前記第2の基準反射光スポットをフィッティングさせるフィッティング工程と、
前記演算処理手段が、前記フィッティング工程でフィッティングさせた前記第1の基準反射光スポットの位置に基づいて前記被検面の形状を計算する計算工程と、を備えたことを特徴とする形状計測方法。
【請求項2】
前記演算処理手段が、前記画像データにおいて、前記記憶装置に記憶された前記第1の基準反射光スポットの位置に対して、前記被検面の形状誤差に起因する位置ずれ量の範囲内にある光スポットを、前記被検面からの第1の反射光スポットと判別し、前記記憶装置に記憶された前記第2の基準反射光スポットの位置に対して、前記裏面の形状誤差に起因する位置ずれ量の範囲内にある光スポットを、前記裏面からの第2の反射光スポットと判別する判別工程を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の形状計測方法。
【請求項3】
前記演算処理手段が、前記画像データにおいて、前記判別工程で判別した第1の反射光スポットに近接する第2の反射光スポットを選択する選択工程を更に備え、
前記フィッティング工程では、前記演算処理手段が、前記記憶装置に記憶された前記第1の基準反射光スポットの光量分布と前記記憶装置に記憶された前記第2の基準反射光スポットの光量分布とを合成した合成光の光量分布が、前記判別工程で判別した第1の反射光スポットの光量分布と前記選択工程で選択した第2の反射光スポットの光量分布とを合成した合成光の光量分布と一致するように、前記第1の基準反射光スポット及び前記第2の基準反射光スポットをフィッティングさせることを特徴とする請求項2に記載の形状計測方法。
【請求項4】
前記選択工程では、前記演算処理手段が、前記各レンズで結像される領域毎に前記画像データを区画し、前記判別工程で判別した前記第1の反射光スポットと同一の領域内に含まれる第2の反射光スポットを選択することを特徴とする請求項3に記載の形状計測方法。
【請求項5】
前記選択工程では、前記演算処理手段が、前記判別工程で判別した前記第1の反射光スポットにおいて隣接する別の第1の反射光スポットとの間隔の半分以内にある第2の反射光スポットを選択することを特徴とする請求項3に記載の形状計測方法。
【請求項6】
前記記憶工程では、前記演算処理手段が、前記被検物、前記光学系及び前記レンズアレイの設計値から、前記第1の基準反射光スポット及び前記第2の基準反射光スポットの位置及び光量分布を求めて、前記記憶装置に記憶させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の形状計測方法。
【請求項7】
前記理想被検面に対応する面のみが光反射するように構成された原器を第1の原器とし、前記理想裏面に対応する面のみが光反射するように構成された原器を第2の原器とし、
前記記憶工程では、前記演算処理手段が、前記第1の原器で反射して前記撮像部で撮像された反射光スポットを前記第1の基準反射光スポットとして、前記第1の基準反射光スポットの位置及び光量分布を測定すると共に、前記第2の原器で反射して前記撮像部で撮像された反射光スポットを前記第2の基準反射光スポットとして、前記第2の基準反射光スポットの位置及び光量分布を測定し、測定結果を前記記憶装置に記憶させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の形状計測方法。
【請求項8】
光を出射する光源と、前記光源から出射された光を被検物の被検面に導くと共に、前記被検物から反射した光を平行光として出力する光学系と、アレイ状に配置され、前記光学系から出力された平行光を結像面に結像させる複数のレンズを有するレンズアレイと、前記レンズアレイの結像面に配置された撮像部と、前記撮像部に接続された演算処理手段と、を備えた形状計測装置において、
前記演算処理手段は、
前記被検面の理想形状である理想被検面での反射により前記結像面に結像される第1の基準反射光スポットの位置及び光量分布を記憶装置に記憶させると共に、前記被検面とは反対側の裏面の理想形状である理想裏面での反射により前記結像面に結像される第2の基準反射光スポットの位置及び光量分布を前記記憶装置に記憶させておき、
前記被検面からの第1の反射光スポット及び前記裏面からの第2の反射光スポットを含む画像データを前記撮像部から取得し、
前記記憶装置に記憶された前記第1の基準反射光スポットと前記記憶装置に記憶された前記第2の基準反射光スポットとを合成した合成光の光量分布が、前記第1の反射光スポットと前記第2の反射光スポットとを合成した合成光の光量分布と一致するように、前記第1の基準反射光スポット及び前記第2の基準反射光スポットをフィッティングさせ、
フィッティングさせた前記第1の基準反射光スポットの位置に基づいて前記被検面の形状を計算する、ことを特徴とする形状計測装置。
【請求項9】
コンピュータに請求項1乃至7のいずれか1項に記載の形状計測方法を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−40843(P2013−40843A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177664(P2011−177664)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】