説明

形状計測装置

【課題】小型の計測対象物Sから大型の計測対象物Sまで、そのサイズに関係なく形状を感度良く高精度に計測することができる形状計測装置1を提供する。
【解決手段】光源21からの光を平行光に変換し、当該平行光を計測対象物Sに照射する、長手方向に連続して設けられた2つ以上のシリンドリカルフレネルレンズ22と、前記長手方向と直交する方向に前記シリンドリカルフレネルレンズ22と前記計測対象物Sとを相対的に移動させる移動機構と、前記計測対象物Sに遮られずに通過した前記平行光を集光する集光レンズ31と、前記集光レンズ31により集光された光を検出して電気信号に変換する受光部32と、前記受光部32からの電気信号に基づいて、前記計測対象物Sの形状の一部又は全部を認識する形状認識部4と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物の形状を計測するための形状計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の形状計測装置として特許文献1に示すものがある。具体的にこのものは、計測対象物に対して平行光を照射する光照射部と、光照射部から照射された平行光のうち、計測対象物に遮られずに通過した平行光を受光する受光部と、受光部において受光した平行光の情報に基づいて、計測対象物の概略形状を認識する形状認識部と、を備えている。そして、この光照射部は、LED等の光源と、当該光源からの光を平行光に変換する屈折部とを備えている。この形状計測装置の屈折部としては、フレネルレンズ又はシリンドリカルレンズが挙げられている。
【0003】
そして、この形状計測装置を用いて大型の計測対象物の形状を計測するためには、図2に示すように、屈折部を2つ以上連続して設ける必要がある。
【0004】
しかしながら、屈折部としてシリンドリカルレンズを用いた場合、加工精度が良く平行度の良い平行光を作り出すことができるが、高価であり、シリンドリカルレンズの個数を増やしてしまうことによって、形状計測装置の製造コストがかかってしまうという問題がある。
【0005】
一方、屈折部としてフレネルレンズを用いた場合、加工精度の問題から、フレネルレンズにより平行光に変換された照射光は、フレネルレンズの端部近傍から射出された平行光は、進行方向に向かって広がってしまうという問題がある。そうすると、隣接するフレネルレンズから射出された平行光が、互いに干渉してしまい、フレネルレンズの接続部近傍では計測対象物を検出することができない、又は検出感度が悪くなるという問題がある(図2中、中央部の不感帯)。また、フレネルレンズの接触部とは反対側の端部から射出された平行光は、集光レンズにより集光されず、受光部に受光されないという問題もある(図2中、左右端の不感帯)。さらに、計測対象物の高さの違いによる遮光幅に違いが出ることから、計測した形状に誤差が生じてしまうという問題もある。
【0006】
その上、このような問題があると、計測対象物の載置場所を考慮する必要があり、作業性を低下させてしまうという問題もある。
【特許文献1】特開2007−24795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、装置の製造コストを安価にしつつ、小型の計測対象物から大型の計測対象物まで、そのサイズに関係なく形状を感度良く高精度に計測することができる形状計測装置を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る形状計測装置は、光源からの光を平行光に変換し、当該平行光を計測対象物に照射する、長手方向に連続して設けられた2つ以上のシリンドリカルフレネルレンズと、前記長手方向と直交する方向に前記シリンドリカルフレネルレンズと前記計測対象物とを相対的に移動させる移動機構と、前記計測対象物に遮られずに通過した前記平行光を集光する集光レンズと、前記集光レンズにより集光された光を検出して電気信号に変換する受光部と、前記受光部からの電気信号に基づいて、前記計測対象物の形状の一部又は全部を認識する形状認識部と、を具備することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、2つ以上の連接したシリンドリカルフレネルレンズを用いて光源からの光を平行光に変換しているので、各シリンドリカルフレネルレンズから射出された平行光が互いに干渉することがない。また、シリンドリカルフレネルレンズ同士の接触部とは反対側の端部から射出される平行光も広がることがなく、計測対象物に遮られずに通過した平行光の平行度を保ったまま受光部に導くことができる。よって、装置の製造コストを安価にしつつ、計測対象物の大小に関係なく、また、計測対象物の移動位置や載置位置などに関係なく、その形状を感度良く高精度に計測することができる。
【0010】
集光レンズの構成を簡単且つ小型化させて装置全体を小型化にしつつ、さらに加工精度の観点を考慮すると、前記集光レンズが、シリンドリカルフレネルレンズであることが望ましい。また、受光光学系の光学配置を簡単に構成するとともに、ユニット化する等して種々のサイズに対応できるようにするためには、前記集光レンズが、2つ以上の受光側シリンドリカルフレネルレンズからなり、前記各受光側シリンドリカルフレネルレンズが、前記照射側シリンドリカルフレネルレンズ毎に対応して設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、小型の計測対象物から大型の計測対象物まで、そのサイズに関係なく感度良く形状を計測することができる形状計測装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の形状計測装置1の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図1は本実施形態の形状計測装置1の概略構成図である。
【0013】
<装置構成>
【0014】
本実施形態に係る形状計測装置1は、例えば計測対象物Sから発生する放射線を検出するための放射線検出装置とともに放射線検出システムを構成するものである。なお、放射線検出装置は、例えばプラスチックシンチレータ、NaIシンチレータなどの放射線センサを備え、当該放射線センサからの検出信号は、後述する情報処理装置に出力される。
【0015】
具体的にこのものは、図1に示すように、計測対象物Sが移動する移動空間MSを鉛直方向から挟み込むように設けられた照射光学系2及び受光光学系3と、計測対象物Sを搬送する搬送部と、受光光学系3からの検出信号に基づいて、前記計測対象物Sの形状を認識する形状認識部4と、を備えている。なお、移動空間MSは、照射光学系2及び受光光学系3との間に形成される空間である。
【0016】
照射光学系2は、半導体レーザ等の光源21と、光源21からの光をライン光に変換するロッドレンズ(図示しない)と、ライン光に変換された光源21からの光を平行光に変換するシリンドリカルフレネルレンズ22(以下、照射側シリンドリカルフレネルレンズ22という。)と、を備えている。
【0017】
照射側シリンドリカルフレネルレンズ22は、複数個(本実施形態では4個)設けられ、それら照射側シリンドリカルフレネルレンズ22は、図2に示すように、長手方向及び短手方向にそれぞれ2個連続して設けられ、全体として平面視矩形形状をなすものである。つまり、4つの照射側シリンドリカルフレネルレンズ22の光射出面が同一方向を向くように、且つ、長手方向に並べられた2つの照射側シリンドリカルフレネルレンズ22において、長手方向を向く一方の端面同士が互いに接触するように設けられ、短手方向に並べられた2つの照射側シリンドリカルフレネルレンズ22において、短手方向を向く一方の端面同士が互いに接触するように設けられている。照射側シリンドリカルフレネルレンズレンズ22の長手方向の大きさは、例えば500mmであり、各照射側シリンドリカルフレネルレンズ22に形成されたフレネル形成溝の延伸方向は、計測対象物Sの進行方向と平行である。また、本実施形態では、1つの照射側シリンドリカルフレネルレンズ22に対して1つの光源21及びロッドレンズが設けられている。このような構成により、各照射側シリンドリカルフレネルレンズ22毎に、ユニット化することが可能となり、種々の計測対象物Sのサイズに合わせて調整することが可能になる。
【0018】
受光光学系3は、計測対象物Sに遮られずに通過した平行光を集光する集光レンズ31と、集光レンズ31により集光された光を受光して、受光した光の強度を電気信号に換える受光部32とを備えている。
【0019】
搬送部は、移動空間MS内に計測対象物Sを搬送するものであり、照射側シリンドリカルフレネルレンズ22の長手方向と直交する方向に計測対象物Sを移動させるものである(図2参照)。この搬送部により、計測対象物Sの進行方向は、シリンドリカルフレネルレンズ22の長手方向に対して直交する。なお、図1においては、紙面と垂直な方向が進行方向である。この搬送部が、照射側シリンドリカルフレネルレンズ22と計測対象物Sとを相対的に移動させる移動機構として機能する。搬送部の具体的な構成としては、例えば、計測対象物Sが載置されるプレートPと、プレートPを搬送する搬送機構(図示しない)とを備えている。プレートPは、光を透過させる透明体又は実質的に光を透過させる金網などで構成されている。搬送機構としては、例えば複数の搬送ローラと、当該ローラを駆動するローラ駆動部とからなる。
【0020】
集光レンズ31は、前記照射光学系2と同様に、シリンドリカルフレネルレンズ(以下、受光側シリンドリカルフレネルレンズという。)を複数個(本実施形態では4個)長手方向に連続して設けて形成されている。
【0021】
受光側シリンドリカルフレネルレンズ31は、照射側シリンドリカルフレネルレンズ22毎に対応して設けられ、その長手方向の軸が照射側シリンドリカルフレネルレンズ22の長手方向の軸と略平行になるように設けられている。また、受光側シリンドリカルフレネルレンズ31は、照射側シリンドリカルフレネルレンズ22と同一である。つまり、移動空間MSに計測対象物Sが無い場合、照射側シリンドリカルフレネルレンズ22から射出された平行光は、ほぼ全ての平行光が受光側シリンドリカルフレネルレンズ31に入射する。このように、集光レンズ31として受光側シリンドリカルフレネルレンズを用いているので、集光レンズ31の構成を簡単且つ小型化することができ、さらに、加工精度の点から高精度に集光することができる。
【0022】
受光部32はラインセンサであり、具体的には、受光素子であるCCDを直線状に配置して構成されるCCDカメラである。これらの複数のCCDは、受光した光の強度に基づいて、電気信号を出力するものである。また、CCDは、計測対象物Sの形状を認識するために十分な分解能を備えるように十分小さな受光素子を集めて構成される。なお、図1中33は、集光レンズ31により集光された光を精度良くCCDに集光させるためのレンズである。
【0023】
また、受光部32は、集光レンズ31である2つの受光側シリンドリカルフレネルレンズ毎に対応して設けられている。このような構成により、各照射側シリンドリカルフレネルレンズ22毎に、ユニット化することが可能となり、種々の計測対象物Sのサイズに合わせて調整することが可能になる。
【0024】
形状認識部4は、CPU、内部メモリ、入出力インタフェース、AD変換器等からなる汎用又は専用のコンピュータからなる情報処理装置であり、当該情報処理装置は、前記内部メモリの所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPUやその周辺機器等が作動することにより、受光部32からの検出信号に基づいて計測対象物Sの形状を認識するものである。
【0025】
具体的には、形状認識部4は、搬送手段による計測対象物Sの搬送速度と、受光部32で受光した光の強度に基づく電気信号とから、計測対象物Sの幅方向についての形状を算出する。
【0026】
<本実施形態の効果>
【0027】
このように構成した本実施形態に係る形状計測装置1によれば、2つ以上の連接した照射側シリンドリカルフレネルレンズ22を用いて光源21からの光を平行光に変換しているので、各照射側シリンドリカルフレネルレンズ22から射出された平行光が互いに干渉することがない。したがって、従来のフレネルレンズを連続して設けた場合に生じる不感帯の問題を解決することができる。また、照射側シリンドリカルフレネルレンズ22同士の接触部とは反対側の端部から射出される平行光も広がることがない。したがって、計測対象物Sに遮られずに通過した平行光の平行度を保ったまま受光部32に導くことができる。よって、装置1の製造コストを安価にしつつ、計測対象物Sの大小に関係なく、また、計測対象物Sの移動空間MS中の移動位置やプレートPへの載置位置などに関係なく、その形状を感度良く高精度に計測することができる。
【0028】
<その他の変形実施形態>
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0030】
例えば、前記実施形態では、縦方向(鉛直方向)に照射光学系及び受光光学系を設けて、計測対象物の幅方向の形状を認識するものであったが、その他、横方向(左右方向)に照射光学系及び受光光学系を設けて、計測対象物の高さ方向の形状を認識するようにしても良い。この場合、横方向に設ける照射光学系及び受光光学系の構成は、前記実施形態の照射光学系及び受光光学系と同じである。
【0031】
また、情報処理装置は、内部メモリの所定領域に予め計測対象物の基本形状に相当する複数の形状データを記憶しており、前述のようにして特定された計測対象物の幅方向についての形状(輪郭)と、高さ方向についての形状(輪郭)とから、計測対象物全体の形状が、記憶した形状データのいずれに対応するかを認識する。この計測対象物の形状を特定する処理は、計測対象物の幅方向および高さ方向についての形状から、計測対象物全体の形状を特定し、前記各形状データの表す形状と最も近似するものを選択することで行われる。このような近似するための手法は、複数の物体の立体的な近似度合いを測定するためのプログラムを用いた演算処理を利用して行われる。
【0032】
また、情報処理装置は、形状認識部により計測対象物の形状を特定した後に、その大きさと、配置位置を特定する機能を備えている。すなわち、計測対象物の形状が、前記基本形状のいずれかに特定された後に、幅方向および高さ方向の外郭を表す電気信号から、計測対象物の大きさが特定された基本形状の何倍の大きさに相当するかを演算により求めて、計測対象物の大きさを特定している。さらに、計測対象物が、所定位置に搬送された際にどの面を上方に向けた状態で配置されているかを併せて特定する。
【0033】
なお、形状認識部において認識された計測対象物の形状と、計測対象物を構成する材質の密度等の情報とから算出された形状対象物のおおよその重量が、重量測定部において測定された計測対象物の重量を大きく下回る場合は、情報処理装置はこの計測対象物Sの内部に空洞が存在すると判断する。
【0034】
このように、計測対象物Sの形状や大きさ、配置位置といった、計測対象物の形態を特定することで、所定位置に搬送された計測対象物の表面と、放射線検出装置に備えられた放射線センサとのおおよその距離を求めることができる。そして、この距離に基づいて、計測対象物の表面から発生する放射線が、放射線検出装置の備える放射線センサにおいて検出されるまでに減衰した減衰量を算出し、この算出した減衰量から、放射線センサにおいて検出した放射線の強度を補正する。
【0035】
また、前記実施形態の受光光学系3において、集光レンズ及び受光部との間に拡散板及び広角レンズを更に設けても良い。このとき、拡散板は、例えばすりガラスからなる半透明の板状体であり、照射光学系から照射された平行光のうち、計測対象物によって遮られずに透過した光を拡散させるものである。このように、集光レンズによる集光された光をさらに集光させることができるので、ラインセンサの構成を小さくすることができる。さらに、形状計測装置1の大きさをコンパクトにすることが可能となる。
【0036】
また、計測対象物によって遮られずに透過した光のうち、計測対象物の外郭近傍を通過した光が、回折することによって計測対象物の形状がぼやける状態になることがあるが、前述のように拡散板を用いることで、回折した光のうち、計測対象物の外郭を表す光以外を拡散させることができる。これによって、受光部において受光する、計測対象物の外郭を示すための光のS/N比が向上し、より明確に計測対象物の形態を認識することができる。わかりやすく言えば、物体を光源との間において直接見ても、光源からの光が物体の周囲から回り込んで、その輪郭がはっきりしないのに対し、影絵の原理で、スリガラスや障子に写る物体の陰をみることで、その輪郭がはっきり認識できるのと同様の原理である。
【0037】
さらに、前記実施形態の照射側シリンドリカルフレネルレンズは、4個設けられているが、これに限られない。つまり、本発明の効果を奏するためには、複数個の照射側シリンドリカルフレネルレンズが、長手方向を向く一方の端面同士が互いに接触するように設けられていれば良い。
【0038】
前記実施形態の移動機構は、搬送部により構成されているが、その他、計測対象物に対して、照射光学系及び受光光学系を移動させる光学系駆動部により構成しても良い。また、前記実施形態の搬送部及び光学系駆動部の両方により構成しても良い。
【0039】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る形状計測装置の模式的構成図。
【図2】同実施形態における照射側シリンドリカルフレネルレンズの構成及び計測対象物の進行方向を示す図。
【図3】従来の形状計測装置の模式的構成図。
【符号の説明】
【0041】
1・・・・形状計測装置
21・・・光源
S・・・・計測対象物
22・・・シリンドリカルフレネルレンズ
31・・・集光レンズ
32・・・受光部
4・・・・形状認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を平行光に変換し、当該平行光を計測対象物に照射する、長手方向に連続して設けられた2つ以上の照射側シリンドリカルフレネルレンズと、
前記長手方向と直交する方向に前記シリンドリカルフレネルレンズと前記計測対象物とを相対的に移動させる移動機構と、
前記計測対象物に遮られずに通過した前記平行光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズにより集光された光を検出して電気信号に変換する受光部と、
前記受光部からの電気信号に基づいて、前記計測対象物の形状の一部又は全部を認識する形状認識部と、を具備する形状計測装置。
【請求項2】
前記集光レンズが、2つ以上の受光側シリンドリカルフレネルレンズからなり、前記各受光側シリンドリカルフレネルレンズが、前記照射側シリンドリカルフレネルレンズ毎に対応して設けられている請求項1記載の形状計測装置。
【請求項3】
前記受光部が、前記受光側シリンドリカルフレネルレンズ毎に設けられている請求項2記載の形状計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−288057(P2009−288057A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140615(P2008−140615)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】